(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
濁度(単位:Helm)と糖質濃度(単位:g/100mL)との比〔濁度/糖質濃度〕が、50以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
糖質濃度が1.5g/100mL以下であり、且つ、酵母を用いたアルコール発酵の工程後に孔径30μm未満のフィルターを通す濾過を行わずに得られた、ビールテイスト飲料。
請求項1〜16のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料を製造する方法であって、下記工程(1)〜(2)を有し、工程(2)の後に孔径30μm未満のフィルターを通す濾過を行わない、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(1):各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、及び固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、発酵前液を得る工程。
・工程(2):前記発酵前液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.ビールテイスト飲料
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつアルコール含有又はノンアルコールの炭酸飲料をいう。そのため、「ビールテイスト飲料」には、麦芽、ホップ、及び水を原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる麦芽発酵飲料であるビールだけでなく、ビール風味を有する炭酸飲料をも包含する。つまり、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、特に断りが無い限り、エステルや高級アルコール(例えば、酢酸イソアミル、酢酸エチル、n−プロパノール、イソブタノール、アセトアルデヒド、カプロン酸エチル、リナロール、4−ビニルグアイアコール等)を含むビール香料が添加され、ビール風味を有するいずれの炭酸飲料をも包含する。
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、酵母を用いて発酵工程を経た発酵ビールテイスト飲料であってもよく、発酵工程を経ない非発酵ビールテイスト飲料であってもよいが、発酵ビールテイスト飲料であることが好ましい。
さらに、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール度数が1(v/v)%以上のアルコール含有ビールテイスト飲料であってもよく、アルコール度数が1(v/v)%未満のノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。なお、ノンアルコールビールテイスト飲料は、発酵工程を経た後、当該発酵工程で生じたアルコールを除去して製造されたノンアルコール発酵ビールテイスト飲料であってもよく、発酵工程を経ずにビール様の風味をもつように調製したノンアルコール非発酵ビールテイスト飲料であってもよい。
加えて、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、原料として麦芽を用いた麦芽使用ビールテイスト飲料であってもよく、麦芽を用いない麦芽不使用ビールテイスト飲料であってもよいが、麦芽使用ビールテイスト飲料が好ましく、大麦麦芽使用ビールテイスト飲料がより好ましい。
他に、本発明の一態様の発酵ビールテイスト飲料は、上面発酵酵母を用いた発酵工程を経て醸造されたエールビールテイスト飲料であってもよく、下面発酵酵母を用いた発酵工程を経て醸造されたラガービールテイスト飲料であってもよい。
そして、本発明の一態様の発酵ビールテイスト飲料は、スピリッツ、ウイスキー、焼酎などの蒸留酒を含有する、蒸留酒含有ビールテイスト飲料であってもよく、その中でも、スピリッツ含有ビールテイスト飲料が好ましい。
【0008】
これらの中でも、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、発酵ビールテイスト飲料であることが好ましく、アルコール含有発酵ビールテイスト飲料であることがより好ましく、麦芽使用発酵ビールテイスト飲料であることが更に好ましい。
【0009】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、糖質濃度が1.5g/100mL以下であり、且つ、濁度が22Helm以上である。
濁度が高いビールテイスト飲料は、旨味成分であるアミノ酸や高分子のタンパク質をはじめ、ビタミン、ミネラル、高分子の炭水化物及び酵母等も豊富に含まれているため、飲んだ際に風味のふくらみや華やかでフルーティーな香りが広がり、口当たりは良好な飲料となり得る。ただし、その一方で、濁度が高いビールテイスト飲料は、飲んだ際の爽快さに欠けるという問題を有している。
上記の問題を解決すべく、本発明者らは、様々な検討をしたところ、濁度が高いビールテイスト飲料において、濁度とのバランスを考慮しながら糖質濃度を低下させることで、口当たりの良好さは保持しつつも、飲んだ際の爽快さを向上させ得るという知見を得た。濁度が高いビールテイスト飲料は、旨味や香りがより豊かな飲料である。そのため、糖質を低減するような調整をすることは、濁度が高いビールテイスト飲料の特徴である旨味や香りを損なうことになり元来行われていなかった。しかしながら、本発明者らの検討の中で、濁度が高いビールテイスト飲料は、飲んだ際の爽快さが低下する要因が糖質にあるとの知見を得た。その知見を基にして、本発明では、あえて糖質濃度を低下させつつも、濁度を所定値以上に調整したビールテイスト飲料とすることで、口当たりの良好さと飲んだ際の爽快さのバランスに優れた飲料としている。
【0010】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の糖質濃度は、飲んだ後の爽快さに優れたビールテイスト飲料とする観点から、1.5g/100mL以下であるが、好ましくは1.2g/100mL以下、より好ましくは1.0g/100mL以下、より好ましくは0.8g/100mL以下、更に好ましくは0.7g/100mL以下、更に好ましくは0.6g/100mL以下、より更に好ましくは0.5g/100mL以下、より更に好ましくは0.4g/100mL以下、特に好ましくは0.3g/100mL以下である。
【0011】
なお、本明細書において、「糖質」とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号、一部改正平成25年9月27日消費者庁告示第8号)に基づく糖質をいい、具体的には、対象となる食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、アルコール分及び水分を除いたものを意味する。そのため、食品中の糖質の量は、当該食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量を控除することにより算定することができる。
ここで、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定することができる。具体的には、タンパク質の量は窒素定量換算法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法で測定し、食物繊維の量はプロスキー法で測定し、灰分の量は直接灰化法で測定し、水分の量は減圧加熱乾燥法で測定することができる。
【0012】
なお、本発明の一態様のビールテイスト飲料の糖質濃度は、酵素の種類、添加量、及び添加のタイミング、糖化液を調製する際の各温度領域の設定温度及び保持時間、発酵工程の諸条件(酵母の添加量及び添加のタイミング、発酵温度、発酵時間)等を適宜設定することで、調整することができる。
【0013】
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料の濁度は、低糖質濃度としつつも、口当たりが良好なビールテイスト飲料とする観点から、22Helm以上であるが、好ましくは24Helm以上、より好ましくは30Helm以上、より好ましくは40Helm以上、より好ましくは50Helm以上、更に好ましくは60Helm以上、更に好ましくは70Helm以上、更に好ましくは90Helm以上、より更に好ましくは110Helm以上、より更に好ましくは150Helm以上、より更に好ましくは190Helm以上、特に好ましくは220Helm以上であり、さらに、250Helm以上、300Helm以上、400Helm以上、500Helm以上、600Helm以上、700Helm以上、800Helm以上、900Helm以上、1000Helm以上、1200Helm以上、1400Helm以上、又は1600Helm以上としてもよい。
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料の濁度は、5000Helm以下、4500Helm以下、4000Helm以下、3500Helm以下、3000Helm以下、2500Helm以下、2200Helm以下、又は2000Helm以下としてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料において、濁度(単位:Helm)と糖質濃度(単位:g/100mL)との比〔濁度/糖質濃度〕は、口当たりの良好さと飲んだ際の爽快さのバランスに優れたビールテイスト飲料とする観点から、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、より好ましくは70以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは100以上、更に好ましくは130以上、更に好ましくは160以上、より更に好ましくは200以上、より更に好ましくは250以上、より更に好ましくは300以上、特に好ましくは400以上であり、さらに、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、1000以上、1500以上、2000以上、2500以上、又は3000以上としてもよく、また、好ましくは20000以下、より好ましくは17000以下、より好ましくは15000以下、更に好ましくは12000以下、更に好ましくは10000以下、より更に好ましくは9000以下、より更に好ましくは8000以下、特に好ましくは7000以下であり、さらに、6000以下、5000以下、4000以下、3000以下、又は2000以下としてもよい。
【0015】
本明細書において、「濁度」は、Analytica EBC, Method 9.29, Haze in beerに記載の方法により測定することができる。具体的には、測定対象の試料を0℃の恒温水槽に入れて48時間保持し、試料を均一にするために軽く撹拌し、気泡が消えるまで再び0℃の恒温水槽に入れて数分間保持してから、全混濁度の90°の値を「濁度」として読み取ることで測定することができる。
本発明の一態様のビールテイスト飲料の濁度は、例えば、酵母を用いたアルコール発酵の工程後に30μm未満のフィルターを通す濾過を行わないことで調整可能である。当該フィルターを通す濾過を行わないことで、酵母が含まれた飲料となる。飲料中に酵母が含まれていると濁度は上昇する傾向にある。
そのため、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、酵母を用いたアルコール発酵の工程後に孔径30μm未満のフィルターを通す濾過を行わずに得られた飲料であってもよい。
【0016】
また、酵母を用いたアルコール発酵の工程後の発酵液に対して熟成処理を経ることで、得られるビールテイスト飲料の濁度を高く調整することが可能である。この際に、熟成処理や遠心分離処理の諸条件を適宜調整することで、所望の濁度を有するビールテイスト飲料に調整可能である。
さらに、発酵工程前の糖化液を調整する際に、段階的に温度を上昇させて加熱処理を行うことでも、本発明の一態様のビールテイスト飲料の濁度を高く調整することができる。
【0017】
一方で、本発明の一態様のビールテイスト飲料の濁度を上記範囲で低く調整する方法としては、例えば、酵母を用いたアルコール発酵の工程後に得られた発酵液を、適当な条件にて遠心分離することによっても調整可能である。また、発酵液を熟成させる熟成処理の諸条件(熟成期間や熟成温度等)を調整することや、発酵液の一部を孔径30μm以上のフィルターを通す濾過を行うことでも調整可能である。
【0018】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、口当たりの良好さをより向上させたビールテイスト飲料とする観点から、酵母数は、好ましくは6cells/100mL以上、より好ましくは1.0×10
2cells/100mL以上、より好ましくは1.0×10
3cells/100mL以上、更に好ましくは1.0×10
4cells/100mL以上、更に好ましくは1.0×10
5cells/100mL以上、より更に好ましくは1.0×10
6cells/100mL以上、特に好ましくは1.0×10
7cells/100mL以上であり、また、好ましくは1.0×10
9cells/100mL以下であるが、7.0×10
8cells/100mL以下、5.0×10
8cells/100mL以下、3.0×10
8cells/100mL以下、又は、1.0×10
8cells/100mL以下としてもよい。
なお、本明細書において、「酵母数」は、Analytica EBC, Method 3.1.1.1, Haemocytometryに記載の方法により測定することができる。
【0019】
なお、本発明の一態様のビールテイスト飲料において、濁度が22Helm以上であれば、もしくは、酵母数が6cells/100mL以上であれば、酵母を用いたアルコール発酵の工程後に孔径30μm未満のフィルターを通す濾過を行なった飲料であってもよいが、当該フィルターを通す濾過を行わない飲料であることが好ましい。
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、例えば、酵母を用いたアルコール発酵の工程後に孔径30μm以上のフィルターを通す濾過を行なった飲料であってもよい。
さらに、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、例えば、発酵処理前の糖化液の調製の際に、原料として用いた麦芽等の原料粕を除去するために、所定の孔径のフィルターを通す濾過を行うことまでは制限されない。
【0020】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、灰分含有量は、口当たりの良好さと飲んだ際の爽快さのバランスに優れたビールテイスト飲料とする観点から、好ましくは0.001〜0.50g/100mL、より好ましくは0.005〜0.45g/100mL、更に好ましくは0.01〜0.40g/100mL、より更に好ましくは0.02〜0.35g/100mL、特に好ましくは0.025〜0.30g/100mLである。
なお、本明細書において、灰分含有量は、栄養表示基準に掲げる方法(具体的には直接灰化法)により測定することができる。
【0021】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、陰イオンの含有量は、口当たりの良好さと飲んだ際の爽快さのバランスに優れたビールテイスト飲料とする観点から、前記ビールテイスト飲料の全量基準で、好ましくは10〜3000質量ppm、より好ましくは30〜2500質量ppm、更に好ましくは50〜2000質量ppm、より更に好ましくは70〜1800質量ppm、特に好ましくは100〜1500質量ppmである。
なお、本明細書において、陰イオンの含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の「8.23 陰イオン」に記載の方法によって測定することができる。
【0022】
上記の灰分含有量及び陰イオンの含有量は、例えば、塩類を配合すること、及び、配合する塩類の配合量を適宜設定することで、上記範囲に調整することができる。
【0023】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、β−グルカンの含有量は、味のふくらみをより向上させたビールテイスト飲料とする観点から、前記ビールテイスト飲料の全量基準で、好ましくは5〜500質量ppm、より好ましくは10〜450質量ppm、更に好ましくは30〜400質量ppm、より更に好ましくは50〜350質量ppm、特に好ましくは100〜300質量ppmである。
なお、麦由来のβ−グルカンは濾過性を悪化させることが知られている。しかしながら、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、発酵液の濾過の工程が不要であるため、濾過性の悪化は問題とならない。そのため、本発明においては、β−グルカンの含有量が多いビールテイスト飲料でも生産性良く製造することができる。
なお、本明細書において、β−グルカンの含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の「8.28 高分子β−グルカン」に記載の方法によって測定することができる。
【0024】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のNIBEM−T値は、泡立ちの良さをより向上させたビールテイスト飲料とする観点から、好ましくは50秒以上、より好ましくは100秒以上、更に好ましくは150秒以上、より更に好ましくは180秒以上、特に好ましくは240秒以上である。
なお、本明細書において、NIBEM−T値は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の「8.29 泡 NIBEM−Tを用いた泡持ち測定法」に記載の方法によって測定することができる。
【0025】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、原麦汁エキス(O−Ex)濃度は、口当たりの良好さをより向上させたビールテイスト飲料とする観点から、好ましくは6.0質量%以上、より好ましくは6.5質量%以上、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは8.0質量%以上、より更に好ましくは8.5質量%以上、特に好ましくは9.0質量%以上であり、また、飲料に軽快な飲み口を付与し、飲みやすさをより良好とする観点から、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%以下、更に好ましくは16.0質量%以下、より更に好ましくは15.0質量%以下、特に好ましくは13.5質量%以下である。
なお、本明細書における「原麦汁エキス濃度」は、アルコール度数が1(v/v)%以上であるアルコール含有飲料においては、日本の酒税法におけるエキス分、すなわち、温度15℃の時において原容量100cm
3中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。また、アルコール度数が1(v/v)%未満のノンアルコール飲料においては、脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める分析法(BOCJビール分析法(日本醸造協会発酵、ビール酒造組合編集、2013年増補改訂版))に従い測定したエキス値(質量%)をいう。
【0026】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、総ポリフェノールの含有量は、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、良質な味わいを有し、よりビールらしいビールテイスト飲料とする観点から、好ましくは60質量ppm以上、より好ましくは65質量ppm以上、より好ましくは70質量ppm以上、更に好ましくは75質量ppm以上、より更に好ましくは80質量ppm以上、特に好ましくは85質量ppm以上であり、また、飲料の混濁安定性を良好とし、飲料に軽快な飲み口を付与して飲みやすさをより良好とする観点から、好ましくは300質量ppm以下、より好ましくは260質量ppm以下、更に好ましくは240質量ppm以下、より更に好ましくは220質量ppm以下、特に好ましくは200質量ppm以下である。
【0027】
本明細書において、「総ポリフェノールの含有量」とは、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)に含まれるポリフェノールの総量を意味する。
ポリフェノールとは、芳香族炭化水素の2個以上の水素がヒドロキシル基で置換された化合物を意味し、具体的には、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニン等が挙げられる。
【0028】
なお、本明細書において、総ポリフェノールの含有量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載されている方法によって測定することができる。
【0029】
総ポリフェノールの含有量は、例えば、大麦麦芽、麦芽のハスク(穀皮)等のポリフェノール含有量の多い原材料の使用量を調整することによって制御できる。
一般的に、ハスク(穀皮)がある麦芽等は、ポリフェノールの含有量が多く、大豆、酵母エキス、小麦、小麦麦芽等はポリフェノールの含有量が少ない。このような原材料を適宜選択し、使用量を調整することで、ポリフェノールの含有量を所望の範囲に調整することは可能である。
【0030】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の麦芽比率は、好ましくは50質量%以上であるが、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってもよく、また、100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%未満であってもよい。
本明細書において、「麦芽比率」とは、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。
【0031】
上述のとおり、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール含有ビールテイスト飲料であってもよく、ノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。
アルコール含有ビールテイスト飲料である場合における、本発明の一態様のビールテイスト飲料のアルコール度数としては、爽快な刺激を感じることができる飲料とする観点から、好ましくは3.0(v/v)%以上、より好ましくは4.0(v/v)%以上、より好ましくは4.6(v/v)%以上、更に好ましくは5.1(v/v)%以上、より更に好ましくは5.4(v/v)%以上、特に好ましくは5.7(v/v)%以上である。
また、飲みやすいビールテイスト飲料とする観点から、アルコール度数は、好ましくは20.0(v/v)%以下、より好ましくは15.0(v/v)%以下、更に好ましくは10.0(v/v)%以下である。
なお、本明細書において、アルコール度数は、体積/体積基準の百分率((v/v)%)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。
【0032】
なお、本発明の一態様のビールテイスト飲料において、アルコール度数を調製するために、アルコール成分として、さらに、穀物に由来するスピリッツを含有し、調整することも考えられる。
ここで、スピリッツとは、麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、麦芽又は必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させた後、更に蒸留して得られる酒類を意味する。
ただし、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、良質な味わいを有し、ビールらしいビールテイスト飲料とする観点から、スピリッツを含有しないことが好ましい。
【0033】
また、上記と同様の観点から、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、ビールであることが好ましい。
本明細書において、「ビール」とは、麦芽、ホップ、及び水を原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる飲料をいい、具体的には、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達で定義されたものを意味する。
つまり、本発明の一態様のビールテイスト飲料がビールである場合、上述のアルコール度数は、酵母を用いた発酵工程によって調整されている。
【0034】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の色は、特に限定されないが、通常のビールのような琥珀色や黄金色、黒ビールのような黒色、又は、無色透明であってもよく、あるいは着色料などを添加して、所望の色を付けてもよい。ビールテイスト飲料の色は、肉眼でも判別することができるが、全光線透過率や色度等によって規定してもよい。
【0035】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のpHは、特に限定されないが、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは3.0〜4.6、更に好ましくは4.0〜4.55である。ビールテイスト飲料のpHが4.5以下であれば、微生物の発生を抑制でき、pHが2.0以上であれば飲料の香味が向上し易い。
【0036】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、飲料が容器に詰められた態様であればよく、容器の例としては、例えば、ビン、ペットボトル、缶、又は樽が挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビン、ペットボトルが好ましい。
【0037】
1.1 原材料
本発明の一態様のビールテイスト飲料の主な原材料としては、水と共に麦芽を用いてもよく、また、麦芽を用いなくてもよい。さらに本発明の一態様のビールテイスト飲料は、原材料として、ホップを用いた飲料であってもよく、ホップを用いない飲料であってもよい。
その他に、保存料、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料又は苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等を用いてもよい。
【0038】
1.1.1 麦芽、麦芽以外の穀物
原材料として麦芽を用いる場合、当該麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいい、産地や品種は、いずれのものであってもよい。
本発明の一態様で用いる麦芽としては、大麦麦芽が好ましい。大麦麦芽は、日本のビールテイスト飲料の原料として最も一般的に用いられる麦芽の1つである。大麦には、二条大麦、六条大麦などの種類があるが、いずれを用いてもよい。さらに、通常麦芽のほか、色麦芽なども用いることができる。なお、色麦芽を用いる際には、種類の異なる色麦芽を適宜組み合わせて用いてもよいし、一種類の色麦芽を用いてもよい。
【0039】
また、麦芽と共に、麦芽以外の穀物を用いてもよい。
そのような穀物としては、例えば、麦芽には該当しない麦(大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等)、米(白米、玄米等)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんどう豆等)、そば、ソルガム、粟、ひえ、及びそれらから得られたデンプン、これらの抽出物(エキス)等が挙げられる。
【0040】
なお、麦芽を用いない場合には、炭素源を含有する液糖、麦芽以外の上述の穀物等のアミノ酸含有材料(例えば、大豆たんぱく等)としての窒素源を用いたビールテイスト飲料が挙げられる。
【0041】
1.1.2 ホップ
本発明の一態様でホップを用いる場合、当該ホップの形態としては、例えば、ペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキス等が挙げられる。また、用いるホップは、イソ化ホップ、還元ホップ等のホップ加工品を用いてもよい。
本発明の一態様でホップを用いる場合、ホップの添加量としては、適宜調製されるが、飲料の原材料の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.0001〜1質量%である。
【0042】
また、原材料としてホップを用いたビールテイスト飲料は、ホップに由来する成分であるイソα酸を含有した飲料となる。ホップを用いたビールテイスト飲料のイソα酸の含有量としては、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、0.1質量ppm超であってもよく、1.0質量ppm超であってもよい。
一方で、ホップを用いないビールテイスト飲料におけるイソα酸の含有量は、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、0.1質量ppm以下であってもよい。
なお、本明細書において、イソα酸の含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法により測定された値を意味する。
【0043】
1.1.3 保存料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、保存料を配合してなる飲料であってもよい。
本発明の一態様で用いる保存料としては、例えば、安息香酸;安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩;パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等の安息香酸エステル;二炭酸ジメチル等が挙げられる。また、保存料としては、強力サンプレザー(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、安息香酸ナトリウムと安息香酸ブチルの混合物)等の市販の製剤を用いてもよい。
これらの保存料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において保存料を配合する場合、当該保存料の配合量は、好ましくは5〜1200質量ppm、より好ましくは10〜1100質量ppm、更に好ましくは15〜1000質量ppm、より更に好ましくは20〜900質量ppmである。
【0045】
1.1.4 甘味料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに甘味料を配合してなる飲料としてもよい。
本発明の一態様で用いる甘味料としては、穀物由来のデンプンを酸又は酵素等で分解した市販の糖化液、市販の水飴等の糖類、三糖類以上の糖、糖アルコール、ステビア等の天然甘味料、人工甘味料等が挙げられる。
これらの甘味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの糖類の形態は、溶液等の液体であってもよく、粉末等の固体であってもよい。
また、デンプンの原料穀物の種類、デンプンの精製方法、及び酵素や酸による加水分解等の処理条件についても特に制限はない。例えば、酵素や酸による加水分解の条件を適宜設定することにより、マルトースの比率を高めた糖類を用いてもよい。その他、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース及びこれらの溶液(糖液)等を用いることもできる。
また、人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース等が挙げられる。
【0046】
水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナン等が挙げられ、安定性や安全性等の汎用性の観点から、難消化性デキストリン又はポリデキストロースが好ましい。
【0047】
1.1.5 苦味料、苦味付与剤
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに苦味料及び苦味付与剤から選ばれる1種以上を配合してなる飲料としてもよい。
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、苦味は、ホップによって付与してもよく、ホップと共に下記に示す苦味料又は苦味付与剤を用いてもよい。また、ホップを用いずに、ホップに代えて下記に示す苦味料又は苦味付与剤を用いてもよい。
苦味料又は苦味付与剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に苦味付与剤として用いられるものが使用でき、例えば、マンネンロウ、レイシ、姫茴香、杜松実、セージ、迷迭香、マンネンタケ、月桂樹、クワシン、カフェイン、アブシンチン、ナリンジン、柑橘抽出物、ニガキ抽出物、コーヒー抽出物、茶抽出物、ゴーヤ抽出物、ハス胚芽抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、レイシ抽出物、ローレル抽出物、セージ抽出物、キャラウェイ抽出物等が挙げられる。
これらの苦味料及び苦味付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
1.1.6 酸化防止剤
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに酸化防止剤を配合してなる飲料としてもよい。
酸化防止剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に酸化防止剤として用いられるものが使用でき、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びカテキン等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
1.1.7 香料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに香料を配合してなる飲料としてもよい。
香料としては、特に限定されず、一般的なビール香料を用いることができる。ビール香料は、ビール様の風味付けのために用いるものである。
ビール香料としては、エステルや高級アルコール等が挙げられ、具体的には、酢酸イソアミル、酢酸エチル、n−プロパノール、イソブタノール、アセトアルデヒド、カプロン酸エチル、リナロール、4−ビニルグアイアコール等が挙げられる。
これらの香料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
1.1.8 酸味料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに酸味料を配合してなる飲料としてもよい。
酸味料としては、酸味を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、酒石酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン又はそれらの塩が挙げられる。
これらの中でも、酒石酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、酒石酸、リン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、酢酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、酒石酸、リン酸、及び乳酸から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
これらの酸味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
1.1.9 塩類
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに塩類を配合してなる飲料としてもよい。
塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。
これらの塩類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、塩類の配合量は、灰分含有量及び陰イオンの含有量が上述の範囲となるように適宜調整することが好ましい。
【0052】
1.2 炭酸ガス
本発明の一態様のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスは、原材料に含まれる炭酸ガスを利用してもよく、また、炭酸水との混和または炭酸ガスの添加等で溶解させてもよい。
なお、ビールテイスト飲料の発酵工程にて生じた炭酸ガスをそのまま用いることができるが、適宜炭酸水を加えて、炭酸ガスの量を調製してもよい。
【0053】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の炭酸ガス濃度は、好ましくは0.30(w/w)%以上、より好ましくは0.35(w/w)%以上、更に好ましくは0.40(w/w)%以上で、より更に好ましくは0.42(w/w)%以上、特に好ましくは0.45(w/w)%以上であり、また、好ましくは0.80(w/w)%以下、より好ましくは0.70(w/w)%以下、更に好ましくは0.60(w/w)%以下、より更に好ましくは0.57(w/w)以下、特に好ましくは0.55(w/w)%以下である。
なお、本明細書において、炭酸ガス濃度は、対象となる飲料が入った容器を時々振りながら20℃の水槽に30分間以上浸して、当該飲料が20℃になるよう調整した後に、ガスボリューム測定装置(例えば、GVA−500(京都電子工業株式会社製)等)を用いて測定することができる。
【0054】
本発明の一態様のビールテイスト飲料が容器詰め飲料である場合、容器詰め飲料の炭酸ガス圧は、上記の炭酸ガス濃度となる範囲で適宜調整すればよいが、5.0kg/cm
2以下、4.5kg/cm
2以下、又は4.0kg/cm
2以下としてもよく、また、0.20kg/cm
2以上、0.50kg/cm
2以上、又は1.0kg/cm
2以上としてもよい。なお、これらの上限及び下限のいずれを組み合わせてもよく、例えば、飲料の炭酸ガス圧は、0.20kg/cm
2以上5.0kg/cm
2以下、0.50kg/cm
2以上4.5kg/cm
2以下、または、1.0kg/cm
2以上4.0kg/cm
2以下であってよい。
本明細書において、ガス圧とは、特別な場合を除き、容器内におけるガス圧をいう。
圧力の測定は、当業者によく知られた方法、例えば20℃にした試料をガス内圧計に固定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達したときの値を読み取る方法を用いて、または市販のガス圧測定装置を用いて測定することができる。
【0055】
1.3 その他の添加物
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、様々な添加物を添加してもよい。
そのような添加物としては、例えば、着色料、泡形成剤、発酵促進剤、酵母エキス、ペプチド含有物等のタンパク質系物質、アミノ酸等の調味料が挙げられる。
着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素などを用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパク、及び、コラーゲンペプチド等のペプチド含有物、酵母エキスなどを適宜使用することができる。
発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、例えば、酵母エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて使用することができる。
【0056】
1.4 容器詰飲料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、容器に詰められた容器詰飲料であってもよい。容器詰飲料にはいずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、ビン、缶、樽またはペットボトルが挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビンやペットボトルが好ましい。
【0057】
2 ビールテイスト飲料の製造方法
本発明の一態様のビールテイスト飲料の製造方法は、特に限定されないが、発酵工程を経て製造する方法であってもよく、発酵工程を経ずに製造する方法であってもよいが、原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する方法が好ましい。
具体的な本発明の一態様のビールテイスト飲料の製造方法としては、例えば、下記工程(1)〜(2)を有する方法が挙げられる。
・工程(1):各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、及び固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、発酵前液を得る工程。
・工程(2):前記発酵前液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程。
そして、本発明の一態様のビールテイスト飲料の製造方法は、さらに下記工程(3)を有する方法であることが好ましい。
・工程(3):工程(2)の後に、ビールテイスト飲料の濁度を調整する処理を行う工程。
【0058】
本発明の一態様においては、ビールテイスト飲料中に酵母を含有させて、濁度を調整する観点から、工程(2)の後に孔径30μm未満のフィルターを通す濾過を行わないことが好ましい。
なお、本発明の一態様においては、孔径30μm以上のフィルターを通す濾過を行ってもよく、行わなくてもよい。
【0059】
また、本発明の一態様においては、良質な味わいを有し、ビールらしい飲料を製造する観点から、穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有しないことが好ましい。
以下、本発明の一態様のビールテイスト飲料の製造方法における各工程について説明する。
【0060】
2.1 工程(1)
工程(1)は、各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、及び固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、発酵前液を得る工程である。
例えば、各種原材料として、麦芽を用いる場合には、水及び麦芽を含む各種原材料を仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を添加する。麦芽以外の各種原材料としては、ホップ、保存料、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料又は苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料、色素等の各種添加剤を加えてもよい。これらは、糖化処理を行う前に加えてもよく、糖化処理の途中で加えてもよく、糖化処理の終了後に加えてもよい。また、これらは、次工程のアルコール発酵後に加えてもよい。
【0061】
各種原材料の混合物は、加温し、原材料の澱粉質を糖化させて糖化処理を行う。
糖化処理の温度及び時間は、使用する麦芽の種類や、麦芽比率、水及び麦芽以外の原材料、使用する酵素の種類や量、最終的に得られる飲料の原麦汁エキス濃度等を考慮して適宜調整することが好ましい。例えば、本発明の一態様において、ビールテイスト飲料の糖質濃度及び濁度を上述の範囲に調整する観点から、糖化処理の温度は55〜75℃であり、糖化処理の時間は30〜240分であることが好ましい。
【0062】
なお、この糖化液は煮沸処理を行うことが好ましい。
この煮沸処理を行う際に、原材料としてホップや苦味料等を用いる場合には、これらを加えることが好ましい。ホップや苦味料等は、糖化液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
【0063】
煮沸処理終了後には、ワールプールに移送し、0〜20℃に冷却して、冷却液とした後、凝固タンパク等の固形分の除去処理を行うことが好ましい。当該処理により、原麦汁エキス濃度を上述の範囲に調整することができる。このようにして、発酵前液が得られる。
なお、本工程において、固形分の除去処理を行うために、所定の孔径(例えば、孔径30μm未満)のフィルターを通す濾過を行ってもよい。
【0064】
上記の糖化液の代わりに、麦芽エキスに温水を加えたものに、ホップや苦味料等を加えて煮沸処理を行い、発酵前液を調製してもよい。
また、各種原材料として、麦芽を使用しない場合には、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有原料としての窒素源、ホップ、食物繊維、保存料、甘味料、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味料、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製し、その液糖溶液に対して煮沸処理を行い、発酵前液を調製してもよい。
ホップを用いる場合には、煮沸処理前に加えてもよく、液糖溶液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
【0065】
2.2 工程(2)
工程(2)は、工程(1)で得られた発酵前液に、酵母を添加し、アルコール発酵を行う工程である。
本工程で用いる酵母は、製造すべき発酵飲料の種類、目的とする香味や発酵条件等を考慮して適宜選択することができ、上面発酵酵母を用いてもよく、下面発酵酵母を用いてもよい。
【0066】
酵母は、酵母懸濁液のまま原料液に添加してもよいし、遠心分離あるいは沈降により酵母を濃縮したスラリーを原液に添加してもよい。また、遠心分離の後、完全に上澄みを取り除いたものを添加してもよい。酵母の原液への添加量は適宜設定できるが、例えば、5.0×10
6cells/ml〜1.0×10
9cells/ml程度である。
【0067】
アルコール発酵を行う際の発酵条件は、適宜設定することができるが、ビールテイスト飲料の糖質濃度及びアルコール度数を上述の範囲に調整する観点から、発酵温度が5〜25℃であることが好ましい。また、ビールテイスト飲料の糖質濃度及びアルコール度数は、トランスグルコシダーゼ等の多糖分解酵素について種類、添加量及び添加のタイミングを適宜設定して調整することができ、また、必要に応じて、発酵工程の途中で発酵液の温度(昇温又は降温)もしくは圧力を変化させてもよい。
【0068】
アルコール発酵後は、ビールテイスト飲料中に酵母を含有させて、濁度を調整する観点から、工程(2)の後に孔径30μm未満のフィルターを通す濾過を行わないことが好ましく、必要に応じて水や上述の各種添加剤を加えてもよい。
【0069】
2.3 工程(3)
工程(3)は、工程(2)の後に、ビールテイスト飲料の濁度を調整する処理を行う工程である。
本工程でビールテイスト飲料の濁度を調整する方法としては、工程(2)の後に、発酵液を熟成させる熟成処理を施してもよい。発酵液を熟成させることで、濁度が高いビールテイスト飲料に調整することができる。
また、工程(2)を経て得られた発酵液に対して、遠心分離処理を施すことで、所定値以上の範囲にて、濁度を低く調整することも可能である。
【0070】
2.4 工程(4)、工程(5)
本発明の一態様において、ノンアルコール発酵ビールテイスト飲料を製造する場合には、さらに工程(4)及び(5)を行うことが好ましい。
・工程(4):工程(2)の後の発酵液からアルコール分を除去する工程。
・工程(5):工程(4)の後に炭酸ガスの量を調整する工程。
ノンアルコール発酵ビールテイスト飲料を製造する場合において、工程(3)は、工程(2)と工程(4)との間に行ってもよく、工程(4)と工程(5)との間に行ってもよく、工程(5)の後に行ってもよいが、少なくとも工程(4)の後に行うことが好ましい。
【0071】
工程(4)において、工程(2)の発酵工程によって生じたアルコール分を除去する方法としては、加熱処理により除去する方法が好ましい。加熱処理の条件としては、一般的なノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法と同様の条件を適用することができる。
また、工程(4)の後、溶液中からアルコール分が除去されると共に、炭酸ガスも除去されている。そのため、工程(5)によって、炭酸ガスの量を調整することが好ましい。
炭酸ガスの量を調整する方法としては、工程(4)を行った後の溶液と炭酸水との混和によって加えてもよく、または工程(4)を行った後の溶液に炭酸ガスを直接添加してもよい。
【0072】
このようにして得られた本発明の一態様のビールテイスト飲料は、所定の容器に充填され、製品として市場に流通する。
ビールテイスト飲料の容器詰め方法としては、特に限定されず、当業者に周知の容器詰め方法を用いることができる。容器詰め工程によって、本発明のビールテイスト飲料は容器に充填・密閉される。容器詰め工程には、いずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、「1.4 容器詰飲料」に記載の容器が挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【0074】
実施例1〜4、比較例1〜2
<飲料の調製>
粉砕した大麦麦芽及び多糖分解酵素を、40〜55℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、40〜55℃の低温領域、55〜70℃の中温領域、及び70〜85℃の高温領域のそれぞれの温度領域で所定時間(1分間〜60分間の範囲)保持しながら、段階的に昇温して、糖化液を調製した。その後、濾過して麦芽粕を除去し、麦汁を得た。なお、実施例3及び4では、得られた麦汁に対して、表1に示す麦芽比率となるようにショ糖を添加した。そして、それぞれの麦汁に、さらにホップを添加して煮沸を行い、煮沸後の麦汁を固液分離処理し、得られた清澄な麦汁を冷却し、酵母を添加して、発酵温度及び発酵時間、トランスグルコシダーゼ等の多糖分解酵素の添加量や添加のタイミングを調整して発酵液を調製した。発酵後、比較例1についてのみ、当該発酵液を孔径30μm未満のフィルターを通して濾過して酵母を取り除いた。一方で、実施例1〜4及び比較例2では、孔径30μm未満のフィルターを通す濾過処理をせずに、熟成処理及び遠心分離処理をその条件を調整しながら行い、飲料の濁度を表1に示す値となるように調整した。このようにして、ビールである試験用飲料をそれぞれ得た。
なお、それぞれの実施例及び比較例においては、酵素の種類、添加量及び添加のタイミング、糖化液を調製する際の各温度領域の設定温度及び保持時間等を適宜設定し、表1に示す糖質濃度、総ポリフェノール量及びアルコール度数となるようにそれぞれ調整した。
【0075】
<官能評価>
4℃程度まで冷却した実施例及び比較例で得た飲料について、日頃から訓練を受けた5人のパネラーが、各飲料の「口当たりの良さ」及び「飲んだ後の爽快さ」について、下記のスコア基準に基づき、5(最大値)〜1(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、5人のパネラーのスコアの平均値を算出した。結果を表1に示す。
なお、評価に際しては、下記基準「5」、「4」、「3」、「2」及び「1」に適合するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。また、表1のいずれの官能評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。
[口当たりの良さのスコア基準]
・「5」:口当たりの良さが非常に強く感じられる。
・「4」:口当たりの良さが強く感じられる。
・「3」:口当たりの良さが感じられる。
・「2」:口当たりの良さがあまり感じられない。
・「1」:口当たりの良さがほとんど感じられない。
[飲んだ後の爽快さのスコア基準]
・「5」:心地よい爽快さを非常に強く感じられる。
・「4」:心地よい爽快さを強く感じられる。
・「3」:心地よい爽快さが十分感じられる。
・「2」:爽快さがあまり感じられない。
・「1」:爽快さがほとんど感じられない。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より、実施例1〜4で調製したビールは、口当たりの良さ及び飲んだ後の爽快さのいずれもがバランスよく良好であった。一方で、比較例1で調製した飲料は、口当たりの良さが不十分であり、また、比較例2で調製した飲料は、口当たりの良さは良好であるものの、飲んだ後の爽快さが劣る結果となった。
【0078】
実施例5〜9、比較例3
<飲料の調製>
実施例3等と同様の糖化工程及び発酵工程を経て、発酵液を調製した。そして、比較例3についてのみ、当該発酵液を孔径30μm未満のフィルターを通して濾過して酵母を取り除いた。一方で、実施例5〜9は、孔径30μm未満のフィルターを通す濾過処理をせずに、熟成処理及び遠心分離処理をその条件を調整しながら行い、飲料の濁度を表2に示す値となるように調整した。
このようにして、ビールである試験用飲料をそれぞれ得た。
【0079】
<官能評価>
4℃程度まで冷却した実施例及び比較例で得た飲料について、日頃から訓練を受けた5人のパネラーが、各飲料の「口当たりの良さ」及び「飲んだ後の爽快さ」について、実施例1〜4及び比較例1〜2の飲料と同様に、上述のスコア基準に基づき、5(最大値)〜1(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、5人のパネラーのスコアの平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2より、実施例3及び5〜9で調製したビールは、口当たりの良さ及び飲んだ後の爽快さのいずれもがバランスよく良好であった。一方で、比較例3で調製した飲料は、口当たりの良さが不十分であった。
【0082】
実施例10〜12、比較例3
<飲料の調製>
実施例3等と同様の糖化工程及び発酵工程を経て、発酵液を調製した。そして、比較例4〜6については、当該発酵液を孔径30μm未満のフィルターを通して濾過して酵母を取り除いた。一方で、実施例10〜12は、孔径30μm未満のフィルターを通す濾過処理をせずに、熟成工程及び遠心分離処理をその条件を調整しながら行い、飲料の濁度を表3に示す値となるように調整した。
そして、硫酸マグネシウム等の各種塩類を添加して、灰分含有量及び陰イオンの含有量を表3に示す値となるように調整し、ビールである試験用飲料をそれぞれ得た。
【0083】
<官能評価>
4℃程度まで冷却した実施例及び比較例で調製した飲料について、日頃から訓練を受けた5人のパネラーが、各飲料の「口当たりの良さ」及び「飲んだ後の爽快さ」について、実施例1〜4及び比較例1〜2の飲料と同様に、上述のスコア基準に基づき、5(最大値)〜1(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、5人のパネラーのスコアの平均値を算出した。結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
表3より、実施例10〜12で調製したビールは、口当たりの良さ及び飲んだ後の爽快さのいずれもがバランスよく良好であった。一方で、比較例4〜6で調製した飲料は、口当たりの良さが不十分であった。
【0086】
実施例13、比較例7
<飲料の調製>
実施例3等と同様の糖化工程及び発酵工程を経て、発酵液を調製した。そして、比較例7については、当該発酵液を孔径30μm未満のフィルターを通して濾過して酵母を取り除いた。一方で、実施例13は、孔径30μm未満のフィルターを通す濾過処理をせずに、熟成工程及び遠心分離処理をその条件を調整しながら行い、飲料の濁度を表4に示す値となるようにすると共に、さらにβ−グルカンを添加して、β−グルカンの含有量を表4に示す値となるように調整した。
このようにして、ビールである試験用飲料をそれぞれ得た。
【0087】
<官能評価>
4℃程度まで冷却した実施例及び比較例で得た飲料について、日頃から訓練を受けた5人のパネラーが、各飲料の「味のふくらみ」及び「泡立ちの良さ」について、下記のスコア基準に基づき、5(最大値)〜1(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、5人のパネラーのスコアの平均値を算出した。結果を表4に示す。
なお、評価に際しては、下記基準「5」、「4」、「3」、「2」及び「1」に適合するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。また、表4のいずれの官能評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。
[味のふくらみのスコア基準]
・「5」:味のふくらみが非常に強く感じられる。
・「4」:味のふくらみが強く感じられる。
・「3」:味のふくらみが感じられる。
・「2」:味のふくらみがあまり感じられない。
・「1」:味のふくらみがほとんど感じられない。
[泡立ちの良さのスコア基準]
・「5」:泡立ちが非常に良い。
・「4」:泡立ちが程よく良い。
・「3」:泡立ちが普通である。
・「2」:泡立ちがやや悪い。
・「1」:泡立ちが非常に悪い。
【0088】
【表4】
【0089】
表4より、実施例13で調製した飲料は、比較例7で調製した飲料に比べて、「味のふくらみ」及び「泡立ちの良さ」の双方ともに優れた結果となった。