(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オレキシンは、覚醒状態、覚醒、食欲、食物摂取、認知、動機付け行動、報酬、気分およびストレスなど、多くの生理学的挙動の調節において重要な役割を果たす視床下部ニューロペプチドである。ヒポクレチン1とも称されるオレキシンAは、33のアミノ酸で構成されるペプチドであり、ヒポクレチン2とも称されるオレキシンBは、28のアミノ酸で構成されるペプチドである。両方とも、プレ−プロ−オレキシンと称される共通前駆体ペプチドから誘導される[Sakurai et al., Cell, 1998 Feb 20; 92(4):573-85、およびDe Lecea et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 1998 Jan 6;95(1):322-7)。オレキシンは、中枢神経系および末梢器官、例えば副腎、性腺および腸において広く分布される2つのオーファンG−タンパク質共役型受容体、オレキシン受容体1型(OX1R)およびオレキシン受容体2型(OX2R)に結合する。オレキシンAはOX1Rに優勢に結合する一方で、オレキシンBはOX1RおよびOX2Rの両方に結合できる。
オレキシンは、例えば情動および報酬、認知、衝動制御の調節、自律神経機能および神経内分泌機能、覚醒状態、警戒ならびに睡眠−覚醒の状態の調節を含めて、広範囲の行動の調節に関与する(Muschamp et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2014 Apr 22; 111(16):E1648-55;近年の概説については、Sakurai, Nat. Rev. Neurosci., 2014; Nov; 15(11):719-31; Chen et al., Med. Res. Rev., 2015; Jan;35(1):152-97; Gotter et al., Pharmacol. Rev., 2012, 64:389-420およびさらに多くのものを参照されたい)。
【0003】
小分子によるOX1RおよびOX2Rの二重拮抗作用は、不眠症の処置において臨床的に効力があり、このため、薬物スボレキサント、[[(7R)−4−(5−クロロ−1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)−7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル][5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]メタノン]は販売承認を受けている(Kishi et al., PLoS One, 2015; 10(8):e0136910)。二重オレキシン受容体アンタゴニストの睡眠誘発効果は、OX2Rを介して優勢に媒介され(Bonaventure et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., March 2015, 352, 3, 590-601)、一方、他の生理学的状態、例えば情動および報酬、認知、衝動制御、自律神経性機能および神経内分泌機能、覚醒状態ならびに警戒の調節は、むしろOX1Rを介して媒介される。
【0004】
それらの睡眠誘発効果により、二重OX1RおよびOX2Rアンタゴニストは、物質使用障害などの嗜癖、境界性人格障害などの人格障害、過食性障害などの摂食障害、または注意欠陥多動性障害において見られる通りの衝動制御欠如に関連した障害を処置することに適当でない。そのため、衝動制御欠如の処置のためのOX1R選択的アンタゴニストを提供することが望ましい。
様々な構造クラスのオレキシン受容体アンタゴニストは、Roecker et al.(J. Med. Chem. 2015, 59, 504-530)に概説されている。国際公開第03/051872号、国際公開第2013/187466号、国際公開第2016/034882号、国際公開第2017/129829号、およびBioorganic & Medicinal Chemistry 2015, 23, 1260-1275は、オレキシン受容体アンタゴニストを記載している。
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、予想外に極めて強力なOX1Rアンタゴニストであり(アッセイA)、
1)OX2受容体に対する高い選択性(アッセイB)、
2)ヒト肝臓ミクロソームにおける中程度から高い安定性(アッセイC)、および
3)全く無いまたは低いMDCK(メイディン−ダービー・イヌ腎臓)排出(アッセイD)
をさらに特徴とする、新規なN−(2,2−ジフルオロエチル)−N−[(ピリミジニルアミノ)プロパニル]アリール−カルボキサミド誘導体を提供する。
本発明の化合物は、以下の鍵となる薬力学的および薬物動態学的なパラメーター:
1)OX1Rアンタゴニストとしての効力、
2)OX2受容体に対する選択性、
3)ヒト肝臓ミクロソームにおける安定性、
4)MDCK排出、および
5)分布の体積
の組合せの点から、従来技術に開示されているものよりも優れている。
【0006】
ヒト肝臓ミクロソームにおける安定性は、好ましい薬物動態学的特性を有する薬物を選択および/または設計するという観点から、生体内転換に対する化合物の感受率を指す。多くの薬物にとっての代謝の主要部位は、肝臓である。ヒト肝臓ミクロソームは、シトクロムP450(CYP)を含有し、したがって、インビトロでの薬物代謝を研究するためのモデル系を表す。ヒト肝臓ミクロソームにおける安定性の増強は、より低いおよび頻繁でない患者の投薬を可能にし得る生物学的利用能の増加およびより長い半減期を含めて、いくつかの利点と関連する。したがって、ヒト肝臓ミクロソームにおける安定性の増強は、薬物のために使用されるべき化合物にとって好ましい特徴である。
【0007】
MDCKアッセイは、血液脳関門を通過するという化合物の潜在性に関する情報を提供する。透過性フィルター支持体上で成長させた極性化されたコンフルエントなMDCK−MDR1細胞単層にわたる透過性測定は、インビトロ吸収モデルとして使用され:MDCK−MDR1細胞単層にわたる化合物の見かけ透過係数(PE)は、頂端から基底(AB)および基底から頂端(BA)への輸送方向で測定される(pH7.4、37℃)。AB透過性(PEAB)は血液から脳内への薬物吸収を表し、BA透過性(PEBA)は脳から血液中へ戻る薬物排出を表し、受動的透過性、ならびに過剰発現されたヒトMDR1 P−gpによって優勢にMDCK−MDR1細胞上に発現される排出および取込み輸送体によって媒介される能動的輸送機序の両方を介する。両輸送方向における同一または同様の透過性は受動的透過を示し、ベクトルの透過性は追加の能動的輸送機序を指す。PEABよりも高いPEBA(PEBA/PEAB>5)は、MDR1 P−gpによって媒介される能動的排出の関与を示し、これは、十分な脳曝露を達成するという目標を損なうことがある。そのため、このアッセイは、さらなるインビボ試験に適用可能な化合物の選択のための貴重な支持を提供する。血液脳関門での排出によって制限されない高い透過性は、主にCNSにおいて作用する薬物のために使用されるべき化合物にとって好ましい特徴である。
【0008】
本発明の化合物は、それらがN−メチル−[ブタン−2−イル]アミノ部分の代わりに中央N−(2,2−ジフルオロエチル)−(プロパン−2−イル)アミノ部分を含有するという点において、国際公開第2016/034882号における実施例84および91(最も近い従来技術の化合物)と構造的に異なる。これらの構造差は、予想外にも、以下の鍵となる薬力学的および薬物動態学的なパラメーター:
1)OX1Rアンタゴニストとしての効力、
2)OX2受容体に対する選択性、
3)ヒト肝臓ミクロソームにおける安定性、
4)MDCK排出、および
5)分布の体積
の優れた組合せをもたらす。
OX1Rでのそれらの高い効力およびOX2Rに対する選択性により、本発明の化合物は、インビボモデルにおいて効力があること、および効力と眠気または睡眠などの所望されない効果との間に十分なウィンドウを有することの両方が予想される。
【0009】
鍵となる薬力学的および薬物動態学的なパラメーター(1〜5番)の優れた組合せにより、本発明の化合物は、適切な脳曝露を実証すること、ならびに中程度から低いインビボクリアランスを有し、したがって、より長い作用持続期間およびより高い忍容性を有することが予想される。その結果として、本発明の化合物は、ヒト使用に、より実現可能であるに違いない。
一般的定義
本明細書において具体的に定義されていない用語は、本開示および文脈に照らして、当業者によってそれらに与えられている意味が与えられるべきである。
【0010】
立体化学:
具体的に示されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲の全体にわたって、所与の化学式または名前は、互変異性体および全ての立体異性体、光学異性体および幾何異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオ異性体、E/Z異性体など)、およびそのラセミ体、ならびに別々のエナンチオマーの異なる割合での混合物、ジアステレオ異性体の混合物、または前述の形態のいずれかの混合物を包含し、ここで、こうした異性体およびエナンチオマーは、薬学的に許容される塩を含めた塩と同様に存在する。
塩:
「薬学的に許容される」という成句は、本明細書において、健全な医学的判断の範疇内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症なくヒトおよび動物の組織との接触における使用に適当であるとともに妥当な利益/リスク比に相応する、それらの化合物、材料、組成物および/または剤形を指すために用いられる。
【0011】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物が酸とともに塩を形成する、開示化合物の誘導体を指す。塩基部分を含有する親化合物とともに薬学的に許容される塩を形成する酸についての例としては、鉱酸または有機酸、例えばベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4−メチル−ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸または酒石酸が挙げられる。
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、こうした塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、十分な量の適切な塩基または酸と、水中であるいはエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールもしくはアセトニトリルまたはその混合物のような有機希釈剤中で反応させることによって調製することができる。
例えば本発明の化合物を精製または単離するのに有用であるような上に記述されているもの以外の酸の塩(例えば、トリフルオロアセテート塩)も、本発明の一部を構成する。
【0012】
生物学的アッセイ
略語:
IP1 D−Myo−イノシトール−1−ホスフェート
IP3 D−ミオ−イノシトール−1,4,5−トリホスフェート
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HBSS ハンクス平衡塩類溶液
BSA ウシ血清アルブミン
DMSO ジメチルスルホキシド
CHO チャイニーズハムスター卵巣
【0013】
細胞株において発現されたオレキシン受容体の活性化は、細胞内IP3濃度の増加をもたらす。IP3の下流代謝物のIP1は、受容体活性化に続いて細胞中に蓄積し、LiClの存在下で安定である。Lumi4−Tbクリプテート(Cisbio Bioassay.から市販されている)および適当な蛍光プレートリーダーを用いる均一時間分解蛍光科学技術を使用する。この機能的応答は、Trinquet et al. Anal. Biochem. 2006, 358, 126-135、Degorce et al. Curr. Chem. Genomics 2009, 3, 22-32に記載されている通り、検出可能および定量化可能である。この技法は、オレキシン受容体の薬理学的修飾を特徴付けるために使用される。
【0014】
化合物の生物学的活性は、以下の方法によって決定される:
A.OX1R効力のインビトロ試験:OX1R IP1
IP1測定を、全長ヒトオレキシン1受容体およびエクオリン発光タンパク質を安定して発現するCHO−K1細胞において行う。細胞を、37℃、95%湿度および5%のCO
2のインキュベーターの中にて、10%ウシ胎児血清を有するHam栄養混合物F12培地中で培養する。CHO−K1/hOx1細胞塊を、より大きい細胞数に拡大する。細胞をクライオ−バイアル中で凍結細胞として得て、使用まで−150℃で貯蔵する。解凍した後の細胞の生存能は、90%超である。
【0015】
アッセイに備えて、アッセイの24時間前に、細胞を37℃で解凍し、直ちに細胞培養培地で希釈する。遠心分離後、細胞ペレットを培地中に再懸濁し、次いで、アッセイプレート中に1ウェル当たり10000細胞/25μLの密度で分布する。プレートを1時間の間室温でインキュベートすることで、エッジ効果を低減した後に、それらを24時間の間37℃/5%のCO
2でインキュベートする。化合物を、DMSO中の8点系列希釈、ならびにアッセイにおいて1%の最終DMSO濃度を確実にするためのアッセイ緩衝液(20mMのHEPES、0.1%のBSAおよび50mMのLiClを有するHBSS、pH7.4)中への最終希釈ステップによって調製する。
【0016】
アッセイの当日に、プレート中の細胞を、60μLのアッセイ緩衝液で2回洗浄し(洗浄した後に、20μLの緩衝液がウェルに残った)、続いて、アッセイ緩衝液中に希釈された1ウェル当たり5μLの化合物を添加する。室温でのインキュベーションの15分後、アッセイ緩衝液中に溶解させた1ウェル当たり5μLのオレキシンAペプチド(最終濃度:0.5nMおよび/または50nM)をアッセイプレートに添加する。アッセイプレートを60分間37℃でインキュベートする。次いで、1ウェル当たり5μlの抗−IP1−クリプテートTb溶液および1ウェル当たり5μlのIP1−d2希釈物を添加し、プレートをさらに60分間、光保護されて室温でインキュベートする。EnVisionリーダー(PerkinElmer)を使用して、615nmおよび665nm(励起波長:320nm)での発光を測定する。665nmおよび615での発光の間の比をリーダーによって算出する。
8点の4パラメーター非線形曲線フィッティングならびにIC
50値およびHill勾配の決定を、正規の分析ソフトウェア、例えばAssayExplorer(Accelrys)を使用して行う。アゴニスト濃度非依存性パラメーターを確立するために、以下の等式を使用してKb値を算出する:IC
50/((2+(A/EC
50)
n)
1/n−1)(ここで、A=濃度アゴニスト、EC
50=EC
50アゴニスト、n=Hill勾配アゴニスト)(P. Leff, I. G. Dougall, Trends Pharmacol. Sci. 1993, 14(4),110-112を参照されたい)。
【0017】
B.OX2R効力のインビトロ試験:OX2R IP1
IP1測定を、全長ヒトオレキシン2受容体およびエクオリン発光タンパク質を安定して発現するCHO−K1細胞中で行う。細胞を、37℃、95%湿度および5%のCO
2のインキュベーターの中にて、10%のウシ胎児血清を有するHam栄養混合物F12培地中で培養する。CHO−K1/hOx2細胞塊を、より大きい細胞数に拡大する。細胞をクライオ−バイアル中で凍結細胞として得て、使用まで−150℃で貯蔵する。解凍した後の細胞の生存能は、90%超である。
アッセイに備えて、アッセイの24時間前に、細胞を37℃で解凍し、直ちに細胞培養培地で希釈する。遠心分離後、細胞ペレットを培地中に再懸濁し、次いで、アッセイプレート中に1ウェル当たり5000細胞/25μLの密度で分布する。プレートを1時間の間室温でインキュベートすることで、エッジ効果を低減した後に、それらを24時間の間37℃/5%のCO
2でインキュベートする。化合物を、DMSO中の8点系列希釈、ならびにアッセイにおいて1%の最終DMSO濃度を確実にするためにアッセイ緩衝液(20mMのHEPES、0.1%のBSAおよび50mMのLiClを有するHBSS、pH7.4)中への最終希釈ステップによって調製する。
【0018】
アッセイの当日に、プレート中の細胞を、60μLのアッセイ緩衝液で2回洗浄し(洗浄した後に20μL緩衝液がウェル中に残った)、続いて、アッセイ緩衝液中に希釈された1ウェル当たり5μLの化合物を添加する。室温でのインキュベーションの15分後、アッセイ緩衝液中に溶解させた1ウェル当たり5μLのオレキシンAペプチド(最終濃度:0.5nM)をアッセイプレートに添加する。アッセイプレートを60分間37℃でインキュベートする。次いで、1ウェル当たり5μlの抗−IP1−クリプテートTb溶液および1ウェル当たり5μlのIP1−d2希釈物をプレートの全てのウェルに添加し、プレートをさらに60分間、光保護されて室温でインキュベートする。EnVisionリーダー(PerkinElmer)を使用して、615nmおよび665nm(励起波長:320nm)での発光を測定する。665nmおよび615での発光の間の比をリーダーによって算出する。
【0019】
8点の4パラメーター非線形曲線フィッティングおよびIC
50値およびHill勾配の決定を、正規の分析ソフトウェア、例えばAssayExplorer(Accelrys)を使用して行う。アゴニスト濃度非依存性パラメーターを確立するために、以下の等式を使用してKb値を算出する:IC
50/((2+(A/EC
50)
n)
1/n−1)(ここで、A=濃度アゴニスト、EC
50=EC
50アゴニスト、n=Hill勾配アゴニスト)(P. Leff, I. G. Dougall, Trends Pharmacol. Sci. 1993, 14(4),110-112を参照されたい)。
アッセイA(OX1R)およびアッセイB(OX2R)からのKb値は、次いで、アゴニスト(オレキシンA)濃度に非依存性である選択性比を提供することができる。
【0020】
C.ヒト肝臓ミクロソームにおける代謝安定性の判定(ヒトのMST)
本発明による化合物の代謝安定性は、以下の通りに調査することができる:
試験化合物の代謝分解を、プールされたヒト肝臓ミクロソームを用いて37℃でアッセイする。1時点当たり100μLの最終インキュベーション体積は、室温でpH7.6のトリス緩衝液(0.1M)、MgCl
2(5mM)、ミクロソームタンパク質(1mg/mL)および試験化合物を1μMの最終濃度で含有する。37℃での短い予備インキュベーション期間に続いて、反応を、ベータ−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート、還元形態(NADPH、1mM)の添加によって開始し、異なる時点の後にアリコートを溶媒中に移すことによって停止させる。遠心分離(10000g、5分)後、上澄みのアリコートをLC−MS/MSによって親化合物の量についてアッセイする。半減期(t
1/2)を濃度−時間プロファイルの片対数プロットの勾配によって決定される。
【0021】
D.ヒトのMDR1遺伝子でトランスフェクトされたメイディン−ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞における排出の判定
MDCK−MDR1細胞単層にわたる該化合物の見かけ透過係数(PE)を、頂端から基底(AB)および基底から頂端(BA)の輸送方向で測定する(pH7.4、37℃)。AB透過性(PEAB)は血液から脳内への薬物吸収を表し、BA透過性(PEBA)は脳から血液中に戻る薬物排出を表し、受動的透過性、ならびに過剰発現されたヒトMDR1 P−gpによって優勢に、MDCK−MDR1細胞上で発現される排出および取込み輸送体によって媒介される能動的輸送機序の両方を介する。該AB透過性と、ヒトにおいて公知のインビトロ透過性および経口吸収を有する基準化合物のAB透過性との比較によって、該化合物を透過性/吸収クラスに割り当てる。両輸送方向における同一または同様の透過性は受動的透過を示し、ベクトル透過性は追加の能動的輸送機序を指す。PEABよりも高いPEBAは、MDR1 P−gpによって媒介される能動的排出の関与を示す。能動的輸送は、濃度−依存的に飽和可能である。
【0022】
MDCK−MDR1細胞(1〜2×10e5細胞/1cm2面積)を、フィルター挿入体(CostarトランスウェルポリカーボネートまたはPETフィルター、0.4μmの孔サイズ)上に播種し、7日間培養(DMEM)する。引き続いて、細胞を5mMの酪酸ナトリウムで、完全培地中にて2日間培養することによって、MDR1発現をブーストする。化合物を適切な溶媒(DMSOなど、1−20mMのストック溶液)中に溶解させる。ストック溶液をHTP−4緩衝液(128.13mMのNaCl、5.36mMのKCl、1mMのMgSO
4、1.8mMのCaCl
2、4.17mMのNaHCO
3、1.19mMのNa
2HPO
4×7H
2O、0.41mMのNaH
2PO
4×H2O、15mMのHEPES、20mMのグルコース、0.25%のBSA、pH7.4)で希釈することで、輸送溶液(0.1〜300μMの化合物、最終DMSO<=0.5%)を調製する。A−BまたはB−A透過性(3つのフィルターレプリケート)をそれぞれ測定するために、輸送溶液(TL)を頂端または側底のドナー側に適用する。レシーバー側は、ドナー側と同じ緩衝液を含有する。試料を、HPLC−MS/MSまたはシンチレーションカウンティングによる濃度測定のために、実験の開始および終了時にドナーから、および最大2時間までの間の様々な時間間隔でレシーバー側からも回収する。試料採取されたレシーバー体積を新鮮なレシーバー溶液と置き換える。
【0023】
生物学データ
【表1】
【0024】
本発明の化合物
本発明の全ての化合物の鍵となる生物学的特性(OX1RおよびOX2R効力、ヒト肝臓ミクロソームにおける安定性、ならびにMDCK排出を含める)と、それぞれ国際公開第2016/034882号における対応する最も近い従来技術の化合物との完全および詳細な比較は、表1に示されている。
【0025】
【表2】
【0026】
本発明の実施例1および2は、それがN−メチル−[ブタン−2−イル]アミノ部分の代わりに中央N−(2,2−ジフルオロエチル)−(プロパン−2−イル)アミノ部分を含有するという点において、国際公開第2016/034882号における実施例91、即ち最も近い従来技術化合物と構造的に異なる。さらに、実施例1は、フェニル環に異なる置換パターンを有する2個のフッ素原子を含有し、他方、実施例2は、フェニル環の異なる位置に1個のフッ素原子を含有する。これらの構造差は、予想外にも、OX1Rでより強力であるとともにより選択的であり、国際公開第2016/034882号における実施例91と比較した場合にヒト肝臓ミクロソームにおいて匹敵する代謝安定性およびMDCK排出を有する実施例1および2をもたらす。
【0027】
本発明の実施例3、4および5は、N−メチル−[ブタン−2−イル]アミノ部分の代わりに中央N−(2,2−ジフルオロエチル)−(プロパン−2−イル)アミノ部分を含有するという点において、国際公開第2016/034882号における実施例84、即ち最も近い従来技術の化合物と構造的に異なる。さらに、それらは、メチル置換ピリジル環の代わりにフッ素原子で、異なって置換されているフェニル環を含有する。これらの構造差は、予想外にも、より高い効力および選択性の増加、ならびに国際公開第2016/034882号における実施例84と比較した場合に匹敵するMDCK排出とともにヒト肝臓ミクロソームにおける有意により良好な安定性を実証する実施例3、4および5をもたらす。
【0028】
これらの結果は、本発明の化合物が、予想外にも、匹敵するまたはより高いミクロソーム安定性を有する、より強力なOX1Rアンタゴニストであり、それぞれ国際公開第2016/034882号に開示されている構造的に最も同様の実施例(最も近い従来技術の化合物)よりもOX2受容体に対して選択的であることを実証している。
【0029】
処置における使用/使用の方法
本発明は、OX1Rの拮抗作用が、以下に限定されないが、衝動制御欠如と関連する精神医学的および神経学的状態の処置および/または防止を含めて治療的利益である、疾患、障害および状態の処置において有用である化合物を対象とする。こうした衝動制御欠如は、物質使用障害を含めた嗜癖;境界性人格障害などの人格障害;過食性障害などの摂食障害;または注意欠陥多動性障害において見られる。本発明のさらなる態様によると、本発明の化合物は、覚醒状態/覚醒、食欲/食物摂取、認知、動機付け行動/報酬、気分およびストレスにおけるOX1R関連の病態生理学的障害の処置に有用である。
【0030】
それらの薬理効果を考慮すると、本発明の化合物は、以下からなるリストから選択される疾患または状態の処置における使用に適当である:
(1)物質乱用/依存/探索または嗜癖の処置または防止、ならびに再発防止(以下に限定されないが、薬物、例えばコカイン、アヘン剤、例えばモルヒネ、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、アンフェタミン、ニコチン/タバコおよび他の覚醒剤を含める)、アルコール依存症およびアルコール関連障害、薬物乱用もしくは嗜癖または再発、麻薬に対する耐性または麻薬の禁断症状、
(2)摂食障害、例えば過食、神経性過食症、神経性拒食症、他の特定摂取障害または摂食障害、肥満、過体重、悪液質、食欲/味覚障害、嘔吐、吐き気、プラダー・ウィリー症候群、過食症、食欲/味覚障害、
(3)注意欠陥多動性障害、行為障害、注意力不足および関連障害、睡眠障害、不安障害、例えば全般性不安障害、パニック障害、恐怖症、外傷後ストレス障害、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病およびジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、下肢静止不能症候群、認知症、ジスキネジー、重度精神遅滞、疾病分類学的実体、例えば脱抑制−認知症−パーキンソン症−筋萎縮症症候群、淡蒼球橋黒質変性症(pallido−ponto−nigral degeneration)を含めた神経変性障害、
(4)精神医学的または神経学的障害における認知機能不全、統合失調症、アルツハイマー病ならびに他の神経学的および精神医学的障害と関連する認知機能欠如、
(5)気分障害、双極性障害、躁病、うつ病、躁うつ病、境界性人格障害、反社会性の人格障害、攻撃性、例えば衝動的攻撃性、自殺傾向、前頭側頭型認知症、強迫性障害、精神錯乱、情動神経症/障害、抑うつ神経症/障害、不安神経症、気分変調性障害、
(6)性的障害、性機能不全、精神性的障害、
(7)衝動制御障害、例えば病的賭博、抜毛癖、間欠性爆発性障害、窃盗癖、放火癖、強迫性購買、インターネット嗜癖、性的衝動、
(8)睡眠障害、例えばナルコレプシー、時差ボケ、睡眠時無呼吸、不眠症、睡眠時異常行動、生物学的リズムおよび概日リズムの障害、精神医学的および神経学的障害と関連する睡眠妨害、
(9)任意の精神医学的および/または神経学的状態における、衝動性および/または衝動制御欠如および/または行動脱抑制の処置、防止および再発制御、
(10)人格障害、例えば境界性人格障害、反社会性人格障害、妄想性人格障害、統合失調質および統合失調型の人格障害、演技性人格障害、自己愛性人格障害、回避性人格障害、依存性人格障害、他の特定および非特定人格障害、
(11)神経学的疾患、例えば大脳浮腫および血管浮腫、例えばパーキンソン病およびアルツハイマー病のような大脳認知症、老年認知症;多発性硬化症、てんかん、側頭葉てんかん、薬物抵抗性てんかん、発作障害、脳卒中、重症筋無力症、脳脊髄炎のような脳および髄膜感染症、髄膜炎、HIV、ならびに統合失調症、妄想性障害、自閉症、情動障害およびチック障害。
本発明の化合物の適用可能な日用量は、0.1mg〜2000mgで変動することができる。
実際の薬学的に有効な量または治療用量は、患者の年齢および体重、投与の経路、ならびに疾患の重症度など、当業者によって知られている因子に依存する。いずれの場合においても、該薬物物質は、患者の状態に適切である薬学的に有効な量が送達されるのを可能にする用量および方式で投与されるべきである。
【0031】
医薬組成物
本発明の化合物を投与するのに適当な調製は、当技術分野における通常の技術者に明らかであり、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、サシェ剤、注射剤、吸入剤、散剤などが挙げられる。薬学的に活性な化合物の含有量は、全体としての組成物の0.1〜95質量%、好ましくは5.0質量%〜90質量%の範囲において変動することができる。
適当な錠剤は、例えば、本発明の化合物を公知の賦形剤、例えば不活性希釈剤、担体、崩壊剤、補助剤、界面活性剤、結合剤および/または滑沢剤と混合することによって、ならびに結果として得られた混合物をプレスすることで錠剤を形成することによって得ることができる。
併用療法
本発明による化合物は、処置が本発明の焦点にある適応症のいずれかの処置に関連して当技術分野において使用されることが知られている他の処置選択肢と組み合わせることができる。
【0032】
本発明による処置との組合せに適当であると考えられるような処置選択肢の中には以下がある:
− 抗うつ薬
− 気分安定薬
− 抗精神病薬
− 抗不安薬
− 抗てんかん薬
− 睡眠薬
− 向知性薬
− 刺激薬
− 注意欠陥多動性障害用非刺激薬
− 追加の向精神薬。
【実施例】
【0033】
実験項
略語のリスト
【表3】
【0034】
HPLC方法:
方法名:A
カラム:BEH C18 1.7mm 2.1×50mm
カラム供給元:Waters
【表4】
【0035】
方法名:B
カラム:Xselect CSH、2.5μm、4.6×50mm
カラム供給元:Waters
【表5】
【0036】
方法名:C
カラム:Xselect CSH フェニル−ヘキシル、4.6×50mm、2.5μm、
カラム供給元:Waters
【表6】
【0037】
方法名:D
カラム:Venusil、2.1×50mm、5μm
カラム供給元:Agilent Technoligies
【表7】
【0038】
方法名:E
カラム:Venusil、2.1×50mm、5μm
カラム供給元:Agilent Technoligies
【表8】
【0039】
中間体の調製
酸中間体
【表9】
【0040】
2−フルオロ−6−ピリミジン−2−イル−安息香酸A−4
【化1】
A−4は、上に記載されている手順に類似して調製される。ESI−MS:219[M+H]
+;HPLC(Rt):0.93分(方法E)。
【0041】
5−フルオロ−2−ピリミジン−2−イル−安息香酸A−5:
【化2】
ステップ1:ジオキサン中のA−5.1(20.0g、81.5mmol)、A−5.2(25.0g、93.5mmol)、PdCl
2(dppf)(3.7g、4.3mmol)およびKOAc(32.8g、317.4mmol)の混合物を、窒素雰囲気下にて2時間の間100℃で撹拌する。セライトを介して反応混合物を濾過し、EAで抽出する。有機相をH
2Oで洗浄し、乾燥させ、蒸発させる。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(100/0〜80/20のシクロヘキサン/EAを使用する)精製することで、22gのA−5.3が提供される。TLC(Rf):0.3(シリカゲル;9/1のシクロヘキサン/EA)。
ステップ2:2−メチル−THFおよびH
2Oの混合物中のA−5.3(12.0g、38.6mmol)、A−5.4(5.4g、46.3mmol)、PdCl
2(dppf)(1.37g、1.66mmol)およびNa
2CO
3(13.3g、124.4mmol)の混合物を、窒素雰囲気下にて80℃で終夜撹拌する。反応混合物をTBMEおよびH
2Oで処理し、セライトを介して濾過する。有機相を分離、乾燥および蒸発させる。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(3/1のPE/EAを使用する)精製することで、7.0gのA−5.5が提供される。TLC(Rf):0.3(シリカゲル;6/4のシクロヘキサン/EA)。
ステップ3:2−メチル−THFおよびH
2O(50mL)の3:1混合物中のA−5.5(3.5g、16.6mmol)の混合物に、NaOH(1.5g、36.6mmol)を添加し、70℃で2時間の間撹拌する。有機相を分離し、水性相をTBMEで抽出する。水性相をHCl(36%水溶液)でpH1に酸性化し、沈殿物を濾別する。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(20/1のDCM/MeOHを使用する)精製することで、2.1gのA−5が提供される。ESI−MS:219[M+H]
+;HPLC(Rt):3.42分(方法D)。
【0042】
アミン中間体の合成
N−((S)−2−アミノ−1−メチル−エチル)−N−(2,2−ジフルオロエチル)−3−フルオロ−2−ピリミジン−2−イル−ベンズアミドB−1:
【化3】
【0043】
ステップ1:乾燥DCM(15.0mL)中のTEA(11.1mL;79.9mmol)の溶液を、滴下により、乾燥DCM(15.0mL)中のB−1.1(3.0g、39.9mmol)およびB−1.2(6.0g、39.9mmol)の溶液に撹拌下で添加する。反応混合物をRTで終夜撹拌する。反応混合物に、飽和NH
4Cl水溶液(15.0mL)を添加し、DCMで抽出する。有機相を分離、乾燥および蒸発させることで、7.0gのB−1.3を得る。ESI−MS:189[M+H]
+;HPLC(Rt):0.86分(方法A)。
ステップ2:乾燥DMAおよび乾燥ACN中のA−2(2.1g、9.6mmol)、B−1.3(2.0g、10.6mmol)およびDIPEA(3.6mL、21.0mmol)の混合物に、窒素雰囲気下で、B−1.4(4.7g、16.9mmol)を添加し、反応混合物をRTで5時間の間撹拌する。反応混合物を冷H
2Oに注ぎ入れ、EAで抽出する。有機相を希釈クエン酸で洗浄し、乾燥させ、濃縮する。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(80/20/1のEA/n−ヘキサン/MeOHを使用する)精製することで、600mgのB−1.5が提供される。ESI−MS:389[M+H]
+;HPLC(Rt):1.30分(方法A)。
ステップ3:乾燥DMF(9.0mL)中のB−1.5(670mg、3.66mmol)に、NaH(110mg、2.75mmol)を0℃で添加する。30分後、B−1.6(710mg、1.82mmol)を0℃で添加する。反応混合物をRTに加温し、16時間撹拌する。反応混合物を冷NH
4Cl溶液に注ぎ入れ、EAで抽出する。有機相を分離、乾燥および蒸発させる。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(80/20のn−ヘキサン/EAを使用する)精製することで、670mgのB−1.7が提供される。ESI−MS:453[M+H]
+;HPLC(Rt):1.59分(方法A)。
ステップ4:乾燥THF(9.0mL)中のB−1.7(660mg、1.46mmol)に、B−1.8(1.6mL、1.60mmol)を撹拌下にて0℃で添加する。反応混合物を0℃で1時間の間撹拌する。溶媒を蒸発し、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(97/3のDCM/MeOHを使用する)精製することで、450mgのB−1.9が提供される。ESI−MS:339[M+H]
+;HPLC(Rt):0.76分(方法A)。
ステップ5:乾燥THF(3.6mL)中のB−1.9(370mg、7.09mmol)およびB−1.10(330μL、2.21mmol)に、B−1.11(350μL、1.62mmol)を滴下により窒素雰囲気下で添加する。反応混合物をRTで16時間の間撹拌する。溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(40/60/1のEA/n−ヘキサン/MeOHを使用する)精製することで、270mgのB−1.12が提供される。ESI−MS:364[M+H]
+;HPLC(Rt):1.03分(方法A)。
ステップ6:THF(15.0mL)およびH
2O(0.8mL)中のB−1.12(260mg、0.71mmol)に、B−1.13(500mg、1.91mmol)を窒素雰囲気下で添加し、反応混合物をRTで16時間の間撹拌する。反応混合物を蒸発させ、残留物をHCl(1M、水溶液)で処理し、EAで抽出する。有機相を分離する。水性相をNH
4OHでpH10〜11に塩基性化し、DCMで抽出する。有機相を乾燥および蒸発させることで、240mgのB−1を得る。ESI−MS:338[M+H]
+;HPLC(Rt):0.62分(方法A)。
【0044】
(S)−N
*2
*−(ジフルオロエチル)−N
*1
*(5−トリフルオロメチル−ピリミジン−2−イル)−プロパン−1,2−ジアミンB−2:
【化4】
ステップ1:乾燥THF(180mL)中のB−2.1(2.0g、11.4mmol)、B−2.2(2.2g、14.9mmol)およびPPh
3(3.9g、14.9mmol)の混合物に、滴下により0℃でN
2雰囲気下にて、DIAD(3.0mL、16.6mmol)を添加する。反応混合物をRTに加温し、16時間の間撹拌する。反応混合物を濃縮し、残留物を水で処理し、EAで抽出する。有機層を分離、乾燥および濃縮する。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(70/30のn−ヘキサン/EAの溶媒混合物を使用する)精製することで、3.4gのB−2.3を得る。ESI−MS:304[M+H]
+;HPLC(Rt):1.06分(方法A)。
ステップ2:乾燥DMF中のB−2.3(2.3g、7.56mmol)およびB−1.6(1.2mL、8.97mmol)に、NaH(60%、340mg、8.50mmol)を0℃でおよび窒素雰囲気下にて添加する。反応混合物をRTで16hの間撹拌する。反応混合物を冷NH
4Cl(水溶液)に注ぎ入れ、EAで抽出する。有機相をH
2Oで洗浄し、乾燥させ、蒸発させる。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(80/20のn−ヘキサン/EAの溶媒混合物を使用する)精製することで、1.6gのB−2.4を得る。ESI−MS:368;TLC(Rf):0.6(シリカゲル;PE/EA5/1)。
ステップ3:EtOH(150mL)中のB−2.4(13.5g、36.5mmol)およびヒドラジン水和物(9.30g、182.7mmol)の混合物を、RTで20時間の間撹拌する。反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させる。残留物をH
2O中に溶解させ、EAで抽出する。水性相をHCl(0.05M、水溶液)でpH6に酸性化し、濾過する。濾液を凍結乾燥することで、8.5gのB−2.5を得る。ESI−MS:239;TLC(Rf):0.5(シリカゲル;PE/EA5/1)。
ステップ4:乾燥NMP(25.0mL)中のB−2.5(4.0g、14.6mmol)およびDIPEA(2.74mL、16.0mmol)に、B−2.6(2.7g、14.6mmol)を添加し、反応混合物をマイクロ波中にて100℃で1時間の間撹拌する。反応混合物をH
2Oに注ぎ入れ、EAで抽出する。有機相を、希釈クエン酸(水溶液)で洗浄し、乾燥させ、蒸発させる。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(95/5〜60/40のシクロヘキサン/EAの溶媒混合物を使用する)精製することで、2.9gのB−2.7を得る。ESI−MS:384[M+H]
+;HPLC(Rt):1.32分(方法A)。
ステップ5:乾燥1,4−ジオキサン(5.0mL)中のB−2.7(2.9g、7.52mmol)に、HCl(ジオキサン中4M、10.0mL、40.0mmol)を添加し、反応混合物をRTで終夜撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、残留物をH
2OおよびNH
4OHで処理し、DCMで抽出する。有機相を乾燥および蒸発させることで、2.1gのB−2を得る。ESI−MS:284[M+H]
+;HPLC(Rt):1.01分(方法A)。
【0045】
本発明の化合物の調製
(実施例2)
【化5】
【0046】
CIP(65mg、0.23mmol)を、乾燥ACN(2.0mL)中のA−1(50mg、0.24mmol)、B−2(65mg、0.20mmol)およびDIPEA(110μL、0.64mmol)の撹拌混合物に添加し、反応混合物をRTで終夜撹拌する。反応混合物を濾過し、分取LCMSによって(NH
4OHを用いる溶媒勾配H
2O/ACNを使用する)精製することで、50mgの化合物実施例2を得る。ESI−MS:474[M+H]
+;HPLC(Rt):3.59分(方法B)。
【0047】
(実施例3)
【化6】
【0048】
NMP(10mL)中のB−1(730mg、2.16mmol)およびB−2.6(510mg、2.79mmol)の撹拌混合物に、DIPEA(520μL、3.04mmol)をRTで窒素雰囲気下にて添加する。反応物を100℃で1時間の間加熱する。冷却した後、反応物を水に注ぎ入れ、EAで抽出する。有機層を分離させ、クエン酸(希釈水溶液)で洗浄し、乾燥させ、濃縮する。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で(97/3の溶媒混合物DCM/MeOHを使用する)精製することで、820mgの実施例3を得る。ESI−MS:484[M+H]
+;HPLC(Rt):3.25分(方法C)。
【0049】
(実施例4)
【化7】
DIPEA(120μL、0.70mmol)を、乾燥DMA中のA−5(100mg、0.35mmol)およびB−2(90mg、0.41mmol)の撹拌混合物にRTで添加する。20分後、CIP(130mg、0.47mmol)を添加し、反応混合物を50℃で5時間の間撹拌した後に、RTに冷却し、終夜撹拌したまま放置した。混合物をH
2Oで処理し、EAで抽出する。有機相をH
2Oで洗浄し、乾燥させ、蒸発させる。残留物を分取LCMSによって(NH
4OHを用いる溶媒勾配H
2O/ACNを使用する)精製することで、60mgの化合物実施例4を得る。ESI−MS:485[M+H]
+;HPLC(Rt):3.53分(方法C)。
以下の実施例は、前に記載されている通りの対応する酸(酸中間体を参照されたい)およびアミン(アミン中間体を参照されたい)を使用する、上に記載されている手順に類似して調製される。実施例1について:反応はRTで終夜実施される。
【0050】
【表10】