特許第6874232号(P6874232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874232
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/12 20060101AFI20210510BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20210510BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F16K7/12 A
   F16K7/12 B
   F16K27/00 A
   F16K51/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-140032(P2016-140032)
(22)【出願日】2016年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-9667(P2018-9667A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】続 昭博
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−025171(JP,A)
【文献】 特開2012−077774(JP,A)
【文献】 特開2014−206542(JP,A)
【文献】 特開2010−121689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/12
F16K 27/00
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性材料からなり、弁室と前記弁室に連通する第一流路及び第二流路とが形成された弁本体と、導電性材料からなり、前記弁本体に連結されたボンネットと、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットとで挟持され、前記弁室を流れる流体に接触する第一ダイヤフラムと、前記ボンネットに接続された第一アース手段と、を備えていることを特徴とするダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
導電性材料からなり、前記弁本体の前記ボンネットに対向する位置に設けられたベースプレートと、導電性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットと前記ベースプレートとを貫通するとともに、前記弁本体と前記ボンネットと前記ベースプレートとを連結する連結部材と、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ベースプレートとの間に介在され、前記弁室を流れる流体に接触する第二ダイヤフラムと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記ボンネットに貫通孔が形成され、前記貫通孔には、前記連結部材が挿入されるとともに、前記第一アース手段の一端が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記弁本体に、導電性を有する第一配管と、導電性を有する第二配管と、が接続され、前記第一配管、及び前記第二配管をそれぞれ前記ボンネットとアース手段により接続したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記ボンネットが、炭素材料を含むポリプロピレンまたは炭素材料を含むポリフッ化ビニリデンからなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造、化学工場、食品などの各種産業分野における各種流体を移送するときに用いられるダイヤフラムバルブに関し、とりわけ、ダイヤフラムバルブの構成部品への帯電による、流路内周面への不純物の付着およびダイヤフラムバルブの周辺に配置された電子機器の破損を低減することができる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラムバルブは、その内部の流路を流体が流れると、流路内周面と流体との摩擦により静電気が発生することがある。発生した静電気により、ダイヤフラムバルブの構成部品には、電子が蓄積され、ダイヤフラムバルブが帯電した状態となり、種々の問題を招いていた。例えば、流路の内周面に電子が蓄積されると、流路内周面にパーティクルなどの不純物が付着しやすくなり、流路が汚染される恐れがあった。また例えば、ダイヤフラムバルブの外面に電子が蓄積されると、空気やダイヤフラムバルブを操作する人手を介して、電子がダイヤフラムバルブの周辺に設置された電子機器に放出され、電子機器が破損される危険性があった。
【0003】
そこで、従来、ダイヤフラムバルブの構成部品への帯電を抑止することができるダイヤフラムバルブとして、絶縁性材料からなり流路が形成された流路ボディと、絶縁性材料からなり流路を流れる流体に接触する隔膜と、を備え、流路の周囲の一部が薄肉部によって形成され、薄肉部の外面には導電層が形成されるとともに、導電層に電荷放出手段が接続されているダイヤフラムバルブが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この流体機器では、流体が流路を流れるときに流路内周面に蓄積された電子は、導電層と電荷放出手段とを通じてダイヤフラムバルブの外部に放出されるため、膜部表面に電子が蓄積されることを防ぐことができるとしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4990118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ダイヤフラムバルブでは、流路ボディに薄肉部が形成されているので、流路ボディの強度が低下するという問題があった。また、薄肉部は流路ボディに形成された凹部の底部に位置しているため、導電され難く、結果として内部に蓄電された電子が十分に放出されずにダイヤフラムバルブの帯電を解消できない恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、ダイヤフラムバルブの構成部品への帯電による、流路内周面への不純物の付着およびダイヤフラムバルブの周辺に配置された電子機器の破損を低減することができるダイヤフラムバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、弁室と前記弁室に連通する第一流路及び第二流路とが形成された弁本体と、導電性材料からなり、前記弁本体に連結されたボンネットと、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットとで挟持され、前記弁室を流れる流体に接触する第一ダイヤフラムと、前記ボンネットに接続された第一アース手段と、を備えていることを特徴とするダイヤフラムバルブが提供される。
【0008】
すなわち、請求項1の発明では、絶縁性材料からなる前記弁本体に導電性材料からなる前記ボンネットが連結され、前記ボンネットに第一アース手段が接続されているので、前記弁本体に蓄積された電子をダイヤフラムバルブの外部に確実に放出することができる。前記弁本体に蓄積された電子をダイヤフラムバルブの外部に放出することによって、前記第一流路、前記第二流路、前記弁室、前記第一ダイヤフラムへの不純物の付着を低減することができる。
【0009】
ここで、本発明では、体積抵抗率が1011Ωcm以上の物質を絶縁性材料とし、体積抵抗率が1010Ωcm以下の物質を導電性材料とする。
【0010】
請求項2の発明によれば、前記弁本体の前記ボンネットに対向する位置に設けられたベースプレートと、導電性材料からなり、前記弁本体と前記ボンネットと前記ベースプレートとを貫通するとともに、前記弁本体と前記ボンネットと前記ベースプレートとを連結する連結部材と、絶縁性材料からなり、前記弁本体と前記ベースプレートとの間に介在され、前記弁室を流れる流体に接触する第二ダイヤフラムと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラムバルブが提供される。
【0011】
すなわち、請求項2の発明では、絶縁性材料からなる前記弁本体を導電性材料からなる前記ボンネットと前記ベースプレートで挟持し、導電性材料からなる連結部材で連結しているので、より効果的に前記弁本体に蓄積された電子をダイヤフラムバルブの外部に放出することができる。
【0012】
また、前記弁室に二つのダイヤフラムを備えるダイヤフラムバルブにおいても、簡単かつ効果的に、前記弁本体に蓄積された電子をダイヤフラムバルブの外部に放出することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、前記ボンネットに貫通孔が形成され、前記貫通孔には、前記連結部材が挿入されるとともに、前記第一アース手段の一端が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のダイヤフラムバルブが提供される。
【0014】
すなわち、請求項3の発明では、前記ボンネットに形成され、前記連結部材を挿入する貫通孔に前記第一アース手段を接続することができるので、前記第一アース手段を接続する部位を新たに形成する必要がなく、前記第一アース手段を簡単に接続することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、前記弁本体に、導電性を有する第一配管と、導電性を有する第二配管と、が接続され、前記第一配管、及び前記第二配管をそれぞれ前記ボンネットとアース手段により接続したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のダイヤフラムバルブが提供される。
【0016】
すなわち、請求項4の発明では、前記第一配管、及び前記第二配管をそれぞれ前記ボンネットとアース手段により接続されているので、ダイヤフラムバルブの近傍でアース処理を行うことができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、前記ボンネットが、炭素材料を含むポリプロピレンまたは炭素材料を含むポリフッ化ビニリデンからなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のダイヤフラムバルブを提供することができる。
【0018】
すなわち、請求項5の発明では、前記ボンネットが炭素繊維や炭素粉末などの炭素材料を含むポリプロピレンまたはポリフッ化ビニリデンからなるので、耐薬品性、耐熱性に優れ、幅広い産業分野の配管に使用することができる。また、射出成形でボンネットを成形することができるので、生産性に優れる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1乃至請求項5に記載の発明によれば、ダイヤフラムバルブの構成部品への帯電による、流路内周面への不純物の付着およびダイヤフラムバルブの周辺に配置された電子機器の破損を低減することができるダイヤフラムバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブの閉状態を示す縦断面図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブの開状態を示す縦断面図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブに蓄積された電子の移動を説明する模式図である。
図4】本発明の第二の実施形態に係るダイヤフラムバルブの閉状態を示す縦断面図である。
図5】本発明の第二の実施形態に係るダイヤフラムバルブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態について図面に示す実施例を参照して説明するが、本発明が各実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0022】
[第一の実施形態]
図1〜3を参照して、本発明の第一の実施形態であるダイヤフラムバルブ1について説明する。図1は、第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブ1の閉状態を示す縦断面図である。図2は、第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブ1の開状態を示す縦断面図である。図3は第一の実施形態に係るダイヤフラムバルブ1に蓄積された電子の移動を説明する模式図である。第一の実施形態では、ダイヤフラムバルブ1は、弁本体2と、ボンネット3と、第一ダイヤフラム4と、を備え、ボンネット3の内部には第一ダイヤフラム4を上下へ駆動させる駆動部5が配置されている。また、弁本体2の上部にボンネット3が取り付けられている。
【0023】
弁本体2は、絶縁性材料であるポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)製である。弁本体2には、その上部中央に弁室6が形成されていると共に、弁室6に連通する第一流路7及び第二流路8が形成されている。第一流路7は、弁本体2の一方の側面に形成された第一開口9から続き、且つ弁室6の底部中央から弁室6に連通している。第一流路7の弁室6側の開口の周囲(弁室6の下方)には、第一ダイヤフラム4が接離するとともに、第一流路7を通る流体が弁室6へ導入可能な環状の弁座11が形成されている。第二流路8は、弁本体2の他方の側面に形成された第二開口10から続き、且つ弁室6の側面に連通している。本実施形態においては、第一開口9から第一流路7、弁室6および第二流路8を経て第二開口10に至る流路を内部流路12とする。
【0024】
ボンネット3は、導電性材料である炭素繊維強化ポリプロピレン(以下、C−PP)製である。ボンネット3は、弁本体2の上部に取り付けられる第一ボンネット13と、第一ボンネット13の上部に取り付けられる第二ボンネット14から構成されている。第一ボンネット13は、その上面に凹部15が形成されている。また、第一ボンネット13は、その底面にステム16が上下方向へ摺動可能に挿設される円筒部が形成されている。第二ボンネット14は、その上面に案内軸17が摺動可能に挿設される貫通孔が形成されている。また、第二ボンネット14の側面には突出部が形成され、この突出部には第一アース手段18が接続されている。第一ボンネット13の凹部15の内周面と第二ボンネット14の下面とで形成される空間には、第一ダイヤフラム4を駆動するための駆動部5が配置されている。なお、第一ボンネット13と第二ボンネット14とは連結部材であるステンレス鋼(以下、SUS)製のボルトおよびナットで弁本体2に一体的に連結されている(図示せず)。
【0025】
駆動部5は、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDF)製のピストン19と付勢部材として機能するSUS製のコイルばね20から構成されている。このとき、ボンネット3の内部空間(第一ボンネット13の凹部15の内周面と第二ボンネット14の下面とで形成される空間)は、シリンダとして機能し、ボンネット3は駆動部5の筐体として機能している。
【0026】
ピストン19は、ボンネット3の内周面に摺動可能に収容される鍔状のピストン本体21と、ピストン本体21から上方に向かって延出した案内軸17と、ピストン本体21から下方に向かって延出し、その下端に第一ダイヤフラム4が挿設されるステム16と、を有している。ピストン19は案内軸17及びステム16が弁座面に対して垂直となるように配置されている。
【0027】
ピストン本体21は、ボンネット3の内部空間を、ピストン本体21の上面(鍔状上面)とボンネット3の内周面とボンネット3の天井面によって囲まれた上部空間22と、ピストン本体21の下面(鍔状下面)とボンネット3の内周面とボンネット3の底面とによって囲まれた下部空間23とに区画している。ここで、第二ボンネット14には、上部空間22に連通する通気口24が形成されており、通気口24を通して上部空間22と外部との間で通気を行うことができる。また、第一ボンネット13には、下部空間23に連通する作動流体供給口25が形成されており、作動流体供給口25から下部空間23内へ作動流体を供給できるように構成されている。また、第二ボンネット14の下面とピストン本体21の上面との間には、コイルばね20が圧縮状態で配置されている。
【0028】
第一ダイヤフラム4は、絶縁性材料であるPTFE製で、弁体部26と膜部27とを備えている。弁体部26は、第一ダイヤフラム4の下面中央部に形成されている。弁体部26は、略角錐形状に形成されており、底面(角錐の頂部面)が弁座11に離接するように配置されている。膜部27は、弁体部26の基端部の外周から外径方向に延設されている。膜部27の外周部は、弁本体2と第一ボンネット13とで挟持固定されている。
【0029】
次に、図1〜2を参照して、ダイヤフラムバルブ1の動作を説明する。図1〜2に示されるように、作動流体供給口25から下部空間23に作動流体(空気)が供給されていない通常時は、駆動部5のピストン19がコイルばね20によって下方に付勢されて押し下げられる。この結果、弁体部26が弁座11に圧接されて、ダイヤフラムバルブ1が図1に示されているように閉状態となる。この状態で作動流体供給口25から下部空間23に作動流体を供給すると、作動流体の流体圧がピストン19の鍔部下面に上向きに作用し、ピストン19がコイルばね20の付勢力に抗して押し上げられる。このとき、上部空間22内の空気は通気口24から外部に放出される。この結果、弁体部26が弁座11から離間して、ダイヤフラムバルブ1が図2に示されているように開状態となる。そして、下部空間23に作動流体を供給することを停止すると、コイルばね20の付勢力により、再びピストン19が下方に押し下げられる。このとき、下部空間23内の空気は、作動流体供給口25から外部に放出される。この結果、弁体部26が弁座11に圧接して、ダイヤフラムバルブ1が図1に示されているように、閉状態となる。
【0030】
次に、図3を参照して、ダイヤフラムバルブ1の作用効果を説明する。図3に示されるように、ダイヤフラムバルブ1が開状態で、内部流路12に流体が流れると、内部流路12の内周面と流体との摩擦によって静電気が発生する。特に、流体が、有機溶剤のように導電性の低い、もしくは気泡を多く含有する、場合や、流体の流速が速い場合は、静電気が発生しやすくなる。さらに、第一ダイヤフラム4のように流体の流量を調整するために頻繁に作動する部分は、流体との摩擦が多くなるため静電気を発生しやすい。内部流路12に静電気が発生すると、内部流路12を構成する弁本体2と第一ダイヤフラム4に電子が蓄積される。特に、弁本体2と第一ダイヤフラム4が絶縁性材料で形成されていると、殊更、電子が蓄積されやすくなる。
【0031】
弁本体2や第一ダイヤフラム4に電子が蓄積されると、パーティクルなどの不純部が内部流路12の内周面に付着しやすくなり、内部流路12を汚染させる恐れがある。また、ダイヤフラムバルブ1では、内部流路12に流体を流しながら第一ダイヤフラム4を上下動させ、内部流路12を洗浄することがあるが、弁本体2や第一ダイヤフラム4に電子が蓄積された状態では、効果的な洗浄ができなくなる恐れがある。
【0032】
第一の実施形態では、導電性材料からなるボンネット3が弁本体2に連結されているため、弁本体2や第一ダイヤフラム4が絶縁性材料から形成されていても、弁本体2や第一ダイヤフラム4に蓄積された電子をボンネット3に移動させることができる。ボンネット3に移動した電子は、ボンネット3に接続された第一アース手段18を介して、ダイヤフラムバルブ1の外部に放出される。このように、第一の実施形態では、弁本体2や第一ダイヤフラム4に蓄積された電子を速やかに外部に放出することができるため、弁本体2や第一ダイヤフラム4に電子が蓄積されることを低減することができ、内部流路12にパーティクル等の不純物が付着することを低減することができる。
【0033】
また、ボンネット3が絶縁性材料で形成されている場合は、ボンネット3から電子が放出されにくく電子が蓄積されやすくなる。すなわち、ダイヤフラムバルブ1が帯電した状態になりやすい。この状態で、ダイヤフラムバルブ1を手動で操作すると、ダイヤフラムバルブ1の外面に蓄積された電子は操作者に移動する。電子を帯電した状態で、操作者が制御機器などの電子機器に触れると、操作者に移動した電子が電子機器に放出され、電子機器が破損する恐れがある。また、ダイヤフラムバルブ1の近傍に電子機器が配置されている場合は、ダイヤフラムバルブ1の外面に蓄積された電子が空気を介して直接電子機器に放出され、電子機器が破損する恐れがある。ダイヤフラムバルブ1に蓄積された電子による電子機器の破損は、湿度が低く調整されたクリーンルーム内や、配管部材やセンサーなどの電子機器が密集して配置された装置内で特に発生しやすい。
【0034】
第一の実施形態では、導電性材料からなるボンネット3が弁本体2に連結されているため、弁本体2や第一ダイヤフラム4に蓄積された電子を速やかにボンネット3に移動させることができる。ボンネット3に移動した電子は第一アース手段18に移動し、ダイヤフラムバルブ1の外部に放出される。このように、第一の実施形態では、弁本体2や第一ダイヤフラム4に蓄積された電子を速やかに外部に放出することができるため、ダイヤフラムバルブ1に電子が蓄積されることを低減することができ、ダイヤフラムバルブ1の周辺に配置された電子機器を破損させることを低減することができる。
【0035】
第一の実施形態では、ボンネット3のみを導電性材料で形成しているが、ボンネット3に限らず、ピストン19を導電性材料で形成してもよい。ボンネット3に加えてピストン19を導電性材料で形成した場合、導電性材料からなる構成部品が弁本体2や第一ダイヤフラム4のような絶縁性材料からなる構成部品に接触する面積が増加するとともに、ダイヤフラムバルブ1における導電性材料の占める体積が増加するため、より効果的に電子を放出することができる。
【0036】
[第二の実施形態]
次に、図4〜5を参照して、本発明の第二の実施形態であるダイヤフラムバルブである定圧弁51について説明する。図4は、第二の実施形態に係る定圧弁を示す縦断面図である。図5は、第二の実施形態に係る定圧弁の斜視図である。第二の実施形態では、定圧弁51は、弁本体2と、ボンネット3と、第一ダイヤフラム4と、連結軸68と、第二ダイヤフラム53と、ベースプレート52と、を備えている。ボンネット3の内側には、ばね受け67と、ピストン19と、コイルばね20と、が配置されている。また、弁本体2の上部にはボンネット3が取り付けられ、下部(ボンネット3に対向する位置)にはベースプレート52が取り付けられている。弁本体2とボンネット3とベースプレート52は、SUS製の連結部材であるボルトおよびナットによって一体的に連結されている(図示せず)。このとき、連結部材は、弁本体2とボンネット3とベースプレート52とを貫通してそれぞれと当接する、又はボンネット3とベースプレート52で弁本体2を挟持し、少なくともボンネット3とベースプレート52とに当接している。また、弁本体2には、第一配管54と、第二配管55とが接続されている。なお、図1〜3と同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施形態との相違点を主に説明する。
【0037】
弁本体2は、PTFE製である。弁本体2には、その中央部に上面および下面が開放された弁室6が形成されているとともに、弁室6に連通する第一流路7および第二流路8が形成されている。弁室6は弁室6の上部に形成される第一弁室56と、弁室6の下部に形成される第二弁室57と、第一弁室56と第二弁室57とを連通する連通流路58と、から構成されている。第一流路7は、弁本体2の一方の側面に形成された第一開口9から続き且つ第二弁室57に連通している。第二弁室57の上部には連結軸68の弁体部26が接離する弁座11が形成されている。第二流路8は、弁本体2の他方の側面に形成された第二開口10から続き且つ第一弁室56の側面に連通している。本実施形態においては、第一開口9から第一流路7、弁室6および第二流路8を経て第二開口10に至る流路を内部流路12とする。また、弁本体2の四隅には、弁本体2とボンネット3とベースプレート52とを連結するSUS製のボルトおよびナットを挿入するための貫通孔(図示せず)が形成されている。また、弁本体2の第一開口9には第一配管54が接続され、第二開口10には第二配管55が接続されている。第一配管54と第二配管55は、ボンネット3に取り付けられた第一接続コマ60、第二接続コマ61に、第一アース手段18、第二アース手段59を介して、それぞれ電気的に接続されている。
【0038】
ボンネット3は、導電性材料である炭素繊維強化ポリフッ化ビニリデン(以下、C−PVDF)製である。ボンネット3は、有底筒状体に形成されており、その内部は、空間が形成されている。ボンネット3の上部中央には、ボンネット3の内部に作動流体を給気するための作動流体供給口25が形成されている。ボンネット3の四隅には、弁本体2とボンネット3とベースプレート52とを連結するSUS製のボルトおよびナットを挿入するための貫通孔62が形成され、連結部材は、ボンネット3と当接している。また、二つの貫通孔62には、それぞれ第一接続コマ60、第二接続コマ61が圧入され、この第一接続コマ60、第二接続コマ61に、C−PP製の第一アース手段18、第二アース手段59がそれぞれ接続されている。前記ボンネット3に形成された前記貫通孔62に前記第一アース手段18、第二アース手段59を接続することができるので、前記第一アース手段18、第二アース手段59を接続する部位を新たに形成する必要がない。
【0039】
ベースプレート52は、C−PVDF製である。ベースプレート52の上部中央には凹部が形成され、凹部の底面には通気口が形成されている。ベースプレート52の四隅には、弁本体2とボンネット3とベースプレート52とを連結するSUS製のボルトおよびナットを挿入するための貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0040】
ピストン19は、C−PVDF製である。ピストン19は、ボンネット3の内部を上下動可能に配置されている。ピストン19は、鍔部と、鍔部の下部に設けられ下端部に第一ダイヤフラム4が螺設されるピストン軸と、から構成されている。ばね受け67は、C−PVDF製である。ばね受け67は、略筒状体に形成されており、その内部が2つの区画に仕切られており、上面側と下面側にそれぞれ凹部が形成されている。また、区画の中央部には第一ダイヤフラム4の円柱部63が上下へ摺動する貫通孔が形成されている。ばね受け67は、ボンネット3と弁本体2とで挟持固定されている。また、ばね受け67の上面側の凹部とピストン19の鍔部下面との間には、SUS製のコイルばね20が配置されている。
【0041】
第一ダイヤフラム4は、PTFE製で、円柱部63と膜部64を備えている。円柱部63の上端部にはピストン19が螺設され、下端部には連結軸68が螺設されている。膜部64は、円柱部63の基端部の外周から外径方向に延設されている。膜部64の外周部は、弁本体2とボンネット3とによって挟持固定されている。
【0042】
連結軸68は、PTFE製である。連結軸68の上端部には第一ダイヤフラム4が螺設され、下端部には弁体部26が形成されている。弁体部26は、連通流路58の内径より大径に形成されており、その周囲が弁座11に接するように第二弁室57内に配置されている。また、弁体部26の下端部には、第二ダイヤフラム53が螺設されている。
【0043】
第二ダイヤフラム53は、PTFE製であ、軸部65と、膜部66を備えている。軸部65の上端部は、連結軸68に螺設されている。膜部66は、軸部66の基端部の外周から外径方向に延設されている。膜部66は、弁本体2とベースプレート52とによって挟持固定されている。
【0044】
次に、図4〜5を参照して、定圧弁51の動作を説明する。図4〜5に示すように、連結軸68の弁体部26には、コイルばね20の力と、第一ダイヤフラム4下面の流体圧力とにより、上向きに付勢力が作用している。また、第一ダイヤフラム4上面の作動流体の圧力により下方に付勢力が作用している。なお、厳密には、弁体部26の下面と第二ダイヤフラム53の薄膜部68の上面とが流体圧力を受けているが、それらの受圧面積はほぼ等しく設定されているため、両者の力はほぼ相殺される。したがって、弁体部26は、上述の3つの力(コイルばね20の力、第一ダイヤフラム4の流体圧力、第一ダイヤフラム上面の作動流体の圧力)が釣り合う位置にて静止する。
【0045】
作動流体供給口25からボンネット3の内部に作動流体を供給し、作動流体の圧力を増加させると、第一ダイヤフラム4を押し下げる力が増加する。これにより、弁体部26と弁座11とが徐々に離れ、第一弁室56の圧力が増加する。反対に、作動流体の圧力を減少させると、弁体部26と弁座11とが徐々に近づき、第一弁室56の圧力が減少する。このように作動流体の圧力を調整することで、第一弁室56の圧力を任意に設定することができる。
【0046】
この状態で、定圧弁51の第一流路7側の流体圧力が増加すると、瞬間的に第一弁室56内の圧力も増加する。これにより、第一ダイヤフラム4の膜部64の上面に作用する作動流体による操作圧力よりも、第一ダイヤフラム4の膜部64の下面に流体によって作用する力の方が大きくなり、第一ダイヤフラム4は上方へ移動し、それに伴い弁体部26も上方へ移動する。このため、弁体部26と弁座11とが徐々に近づき、第一弁室56内の流体圧力が減少する。最終的には、弁体部26は上記3つの力が釣り合う位置まで移動し、静止する。
【0047】
一方、定圧弁51の第一流路7側の流体圧力が減少すると、瞬間的に第一弁室56内の圧力も減少する。これにより、第一ダイヤフラム4の膜部64の上面に作用する作動流体による操作圧力よりも、第一ダイヤフラム4の膜部64の下面に流体によって作用する力のほうが小さくなり、第一ダイヤフラム4は下方へ移動し、それに伴い弁体部26も下方へ移動する。このため、弁体部26が、弁座11から離れ、第一弁室56内の流体圧力が増加する。最終的には、弁体部26は上記3つの力が釣り合う位置まで移動し、静止する。
【0048】
次に、図4〜5を参照して、定圧弁51の作用効果を説明する。図5に示すように、第二の実施形態では、それぞれ絶縁性材料からなる弁本体2と第一ダイヤフラム4と第二ダイヤフラム53とは、それぞれ導電性材料からなるボンネット3とベースプレート52とで挟持されている。ボンネット3とベースプレート52は、それぞれに蓄積された電子が互いに移動可能なように、導電性材料からなる連結部材(ボルト、ナット)によって連結されている。従って、内部流路12で発生し、弁本体2と第一ダイヤフラム4と第二ダイヤフラム53とに蓄積された電子を、弁本体2の上面側および下面側の二方向から放出することができるので、弁本体2内に電子が蓄積されることを防ぐことができる。また、第二の実施形態では、ばね受け67とピストン19が導電性材料から形成されている。ばね受け67とピストン19は、ボンネット3に直接接触しているため、ボンネット3との間で電子の移動が可能とされている。従って、ばね受け67とピストン19とボンネット3とを導電性材料から形成することによって、弁本体2や第一ダイヤフラム4に蓄積された電子をより効果的にボンネット3に移動させることができる。ここで、弁本体2および第一ダイヤフラム4、第二ダイヤフラム53に過剰に蓄積された電子を外部に放出する仕組みは、第一の実施形態同様なので説明を省略する。
【0049】
また、第二の実施形態では、弁本体2にそれぞれ導電性材料からなる第一配管54と第二配管55とが接続されている。第一配管54と第二配管55は、それぞれ第一アース手段18、第二アース手段59を介して、ボンネット3に取り付けられた第一接続コマ60、第二接続コマ61にそれぞれ接続されている。第二の実施形態では、第一アース手段18、第二アース手段59を弁本体2に接続される第一配管54と第二配管55にそれぞれ接続しているので、第一アース手段18、第二アース手段59の長さを短くすることができ、施工が容易になる。
【0050】
また、第二の実施形態では、第一配管54、第二配管55と、ボンネット3と、を第一アース手段18、第二アース手段59でそれぞれ接続することによって、第一配管54と第二配管55とを導通させている。このように、第一配管54と第二配管55とを導通させることによって、第一配管54と第二配管55とをまとめてアース処理することができる。また、最終的にアースを行う場所が定圧弁51から離れていても第一アース手段18、第二アース手段59を引き回す必要がなく、施工が容易になる。
【0051】
本発明において、弁本体2は絶縁性材料であればよく、使用する条件や環境に適した物性を有する絶縁性材料であれば何れでも使用することができる。例えば、PTFE、PVDF、ポリ塩化ビニル(以下、PVC)、ポリエチレン(以下、PE)、ポリプロピレン(以下、PP)、などの樹脂が好適な絶縁性材料として挙げられる。また、本発明において、第一ダイヤフラム4、第二ダイヤフラム53の材質は、絶縁性材料であればよく、使用する条件や環境に適した物性を有する絶縁性材料を使用することができる。例えば、PTFE、PVDF、PVC、PE、PP、などの樹脂、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどのエラストマーが好適な絶縁性材料として挙げられる。
【0052】
本発明において、ボンネット3、ベースプレート52は導電性材料であればよく、使用する条件や環境に適した物性を有する導電性材料であれば何れでも使用することができる。例えば、SUSやアルミニウム、鉄などの金属、PTFE、PVDF、PVC、PE、PPなどの樹脂に金属や炭素などの導電性材料からなる繊維や粉末などを添加した導電性樹脂が好適な導電性材料として挙げられる。また、本発明において、ピストン19、コイルばね20、連結軸68、ばね受け67の材質は特に限定されることはなく、使用する条件や環境に適した物性を有する材料であれば何れでも使用することができる。例えば、SUSやアルミニウム、鉄などの金属、PTFE、PVDF、PVC、PE、PPなどの樹脂、樹脂に導電性材料を添加した導電性樹脂が好適な材料として挙げられる。
【0053】
本発明において、第一配管54、第二配管55は導電性を有する配管であれば、特に限定されることはなく、使用する条件や環境に適した配管であれば何れでも使用することができる。例えば、導電性材料で形成された配管や、配管内部または外部に導電性材料からなるワイヤーを付与したものなどが挙げられる。
【0054】
なお、上記第一の実施形態から第二の実施形態を任意に組み合わせてダイヤフラムバルブを構成してもよい。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施形態のダイヤフラムバルブに限定されない。
【符号の説明】
【0055】
1 ダイヤフラムバルブ
2 弁本体
3 ボンネット
4 第一ダイヤフラム
5 駆動部
6 弁室
7 第一流路
8 第二流路
9 第一開口
10 第二開口
11 弁座
12 内部流路
13 第一ボンネット
14 第二ボンネット
15 凹部
16 ステム
17 案内軸
18 第一アース手段
19 ピストン
20 コイルばね
21 ピストン本体
22 上部空間
23 下部空間
24 通気口
25 作動流体供給口
26 弁体部
27 膜部
51 定圧弁
52 ベースプレート
53 第二ダイヤフラム
54 第一配管
55 第二配管
56 第一弁室
57 第二弁室
58 連通流路
59 第二アース手段
60 第一接続コマ
61 第二接続コマ
62 貫通孔
63 円柱部
64 膜部
65 軸部
66 膜部
67 ばね受け
68 連結軸
図1
図2
図3
図4
図5