(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂基材を用いた工業製品は、例えばパソコンの筺体や各種フィルム等の形状の違いはあるが広く普及している。これらの製造方法に共通することとして、製造ラインで塗装から乾燥までを一貫して行うという点が挙げられる。上記の様に製造ラインで塗装から乾燥までを一貫して行う際には、その工程に要する時間が生産性へと直結する。そのため、生産性を向上させるために上記工程を短時間で完了させる必要がある。
【0003】
短時間での乾燥を行う方法としては、例えば一液型のアクリル樹脂系塗料を用いる方法が挙げられる。しかし、基本的な技術情報として既に認知されている様に、一液型塗料は比較的短時間での乾燥が可能であるものの、密着性や耐薬品性等の塗膜物性が必ずしも十分ではない。この点を改善する方法としては、例えばアクリル樹脂とイソシアネート樹脂とを反応させる二液型塗料が知られているが、この場合、塗膜物性は良好であるものの、乾燥時にアクリル樹脂とイソシアネート樹脂とを反応させる必要があるために比較的乾燥時間が長く、また、塗料を調製して塗装するまでの間にも反応が進行するためにゲル化等が起こるといった貯蔵安定性の問題があるため、実際の使用は限られたものであった。
【0004】
二液型塗料を短時間で乾燥させる方法としては、乾燥温度を高温にする方法や比較的反応性の高い樹脂同士を組み合わせる方法がある。しかし、樹脂基材はその耐熱性の問題から、樹脂基材の材質や乾燥時間による違いはあるものの、一般的には高温での処理は困難である。そのため、現実的には塗料に用いる樹脂種の選択による解決が行われる。樹脂種としては、例えばエポキシ樹脂とアミン化合物等の硬化剤との組み合わせが広く知られているが、速乾性と貯蔵安定性とはトレードオフの関係にあり、これらの両立は一般的に困難である。この課題を解決する方法として、例えば硬化剤の表面を微粒子で覆うことで貯蔵安定性を向上させる方法(例えば、特許文献1、2)が報告されているが、この方法では微粒子が塗膜中に残留する問題が有り、その使用範囲は制限されるものである。その他の方法としては、硬化剤としてアミノトリアジン環構造を持つ化合物でノボラック樹脂を変性する方法(例えば、特許文献3)が報告されているが、硬化剤の構造が複雑で相溶する溶剤やエポキシ樹脂種が限られるため、その使用範囲は制限されるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造ラインでの使用に耐えうる貯蔵安定性及び速乾性を有し、かつ、塗膜の密着性及び耐薬品性等の塗膜物性に優れるコーティング用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定数のエポキシ基及び/又はハロヒドリン基を有する多官能反応性化合物と、特定の数平均分子量を有するアミノ樹脂とを必須成分として含む二液型のエポキシ樹脂組成物が、貯蔵安定性及び速乾性に優れ、かつ、二液型塗料の特徴である塗膜の密着性及び耐薬品性等の塗膜物性に優れ、樹脂基材に塗布するためのコーティング用組成物として好適に用いられることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明のコーティング用樹脂組成物は、樹脂基材に塗布するための組成物であって、
(A)1分子中にエポキシ基及び/又はハロヒドリン基を2〜15個有する多官能反応性化合物、及び、
(B)数平均分子量250〜10,000のアミノ樹脂
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のコーティング用樹脂組成物において、(B)アミノ樹脂がメラミン樹脂であることが好ましい。
【0010】
本発明のコーティング用樹脂組成物において、(B)成分の含有量が(A)成分100重量部に対して10〜10,000重量部であることが好ましい。
【0011】
本発明のコーティング用樹脂組成物において、(A)多官能反応性化合物が1分子中にエポキシ基及び/又はハロヒドリン基を2〜10個有することが好ましい。
【0012】
本発明の部材は、樹脂基材と、本発明のコーティング用樹脂組成物を用いて樹脂基材上に形成された塗膜とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の部材において、樹脂基材の材質がポリエステルであることが好ましい。
【0014】
本発明の部材の製造方法は、本発明の部材を製造するための方法であって、
本発明のコーティング用樹脂組成物を樹脂基材の少なくとも一つの面に塗布する工程(1)、及び、
工程(1)で塗布したコーティング用樹脂組成物を60〜250℃で5〜300秒間加熱して硬化させる工程(2)
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、特定数のエポキシ基及び/又はハロヒドリン基を有する多官能反応性化合物と、特定の数平均分子量を有するアミノ樹脂とを含むため、貯蔵安定性及び速乾性に優れるとともに、塗膜の密着性及び耐薬品性に優れ、樹脂基材に塗布するためのコーティング用組成物として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<コーティング用樹脂組成物>>
本発明のコーティング用樹脂組成物は、樹脂基材に塗布するための組成物であって、
(A)1分子中にエポキシ基及び/又はハロヒドリン基を2〜15個有する多官能反応性化合物、及び、
(B)数平均分子量250〜10,000のアミノ樹脂
を含むことを特徴とする。
【0017】
<(A)多官能反応性化合物>
(A)多官能反応性化合物(以下、単に(A)成分ともいう)としては、1分子中にエポキシ基及び/又はハロヒドリン基を2〜15個有する限り特に限定されず、エポキシ基を有する化合物として例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、イソソルビドジグリシジルエーテル、イソマンニドジグリシジルエーテル、イソイディットジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等が挙げられる。ハロヒドリン化合物としては、例えば、ハロゲンと水を、二重結合をもつ化合物に反応させて得られる化合物や、エピハロヒドリン類とアルコール化合物とをルイス酸触媒存在下で反応させて得られる化合物(ハロヒドリンエーテル化合物)を挙げることができる。例えば、ソルビトールポリハロヒドリン、グリセリンポリハロヒドリン、ジグリセリンポリクロロヒドリン、エチレングリコールジハロヒドリン、プロピレングリコールジクロロヒドリンなどが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0018】
(A)成分が1分子中に有するエポキシ基及び/又はハロヒドリン基の数は、2〜15個である限り特に限定されないが、2〜10個であることが好ましく、2〜6個であることがより好ましく、2〜4個であることがさらに好ましい。(A)成分が1分子中に有するエポキシ基及び/又はハロヒドリン基の数が2個未満であると、樹脂組成物を硬化させて塗膜を形成するために必要な架橋反応が不可能であり、15個を超えると、貯蔵安定性が低下することがある。
【0019】
(A)成分がエポキシ化合物の場合、エポキシ当量は、特に限定されないが、100〜1000であることが好ましく、120〜700であることがより好ましい。エポキシ当量が100未満であると、硬化不良となることがあり、1000を超えると、貯蔵安定性が悪くなることがある。(A)成分がハロヒドリン基を有する化合物の場合、加水分解性塩素は特に限定されないが、通常10%〜30%である。
【0020】
本発明のコーティング用樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、特に限定されないが、1〜90重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることがより好ましい。含有量が1重量%未満であると、(A)成分が不足することで十分に架橋反応が進まずに硬化不良となることがあり、90重量%を超えると、(B)成分が不足することで十分に架橋反応が進まずに硬化不良となることがある。
【0021】
<(B)アミノ樹脂>
(B)アミノ樹脂(以下、単に(B)成分ともいう)は、本発明のコーティング用樹脂組成物において(A)成分の硬化剤として配合される。(B)成分を用いることで貯蔵安定性が向上する理由としては、(B)成分の数平均分子量が比較的大きく、(A)成分との反応に関与するアミノ基が常温では(B)成分の立体構造の内側にあるため、(A)成分との反応が起こりにくいことが考えられる。また、(B)成分を用いることで加熱により硬化させる際の速乾性が向上する理由としては、アミノ基はそもそも(A)成分との反応性が高く、加熱により(B)成分の立体構造が変化しアミノ基が表面に現れると即座に(A)成分との反応が進行するためと考えられる。
【0022】
(B)成分としては、数平均分子量が250〜10,000である限り特に限定されず、例えば、ベンゾグアナミン樹脂を含むメラミン樹脂、尿素樹脂、グリオキザール樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中では、塗膜の強度や密着性の観点からメラミン樹脂が好ましい。メラミン樹脂とは、メラミン又はその誘導体とアルデヒド化合物の重縮合物であり、メラミン樹脂を構成するモノマーとしては、例えばメラミン又はその誘導体としてメチロールメラミン、ベンゾグアナミン等を用いることができ、アルデヒド化合物としてホルムアルデヒド等を用いることができる。これらメラミン又はその誘導体とアルデヒド化合物の各モノマーは、単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0023】
(B)成分の数平均分子量は、250〜10,000である限り特に限定されないが、500〜2,000であることが好ましく、700〜1,300であることがより好ましい。数平均分子量が250未満であると、速乾性が不十分となることがあり、10,000を超えると、(A)成分との相溶性が不十分となることがある。
【0024】
本発明のコーティング用樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して10〜10,000重量部であることが好ましく、10〜500重量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量が10重量部未満の場合や10,000重量部を超える場合には、速乾性が不十分となることがある。
【0025】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分に加えて、本発明の目的を損なわない範囲内で、任意に他の成分を含有していても良い。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、溶剤、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、有機増粘剤、酸化防止剤、光安定剤、接着性向上剤、離型剤、補強材、軟化剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、湿潤分散剤等が挙げられる。
【0026】
<溶剤>
溶剤としては、特に限定はなく、水系又は有機溶剤系の何れも好適に使用できるが、例えば、トルエン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルジグリコール、エチルジグリコール、ブチルジグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、水等が挙げられる。また、芳香族炭化水素系溶剤として使用できる市販品としては、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0027】
本発明のコーティング用樹脂組成物が溶剤を含有する場合、その含有量は、塗布方法、所望する硬化塗膜の膜厚によって選択すればよく、特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して10〜5000重量部であることが好ましく、20〜2000重量部であることがより好ましい。含有量が10重量部未満であると、粘度が高くなり、均一に塗工できないことがあり、5000重量部を超えると、十分な膜厚の塗膜が得られないことがある他、経済性やVOC削減の観点から好ましくない。
【0028】
<硬化促進剤>
硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、酪酸、イソ酪酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクタン酸、ヘプタン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸及びチオグリコール酸等の脂肪族カルボン酸類、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸及びクエン酸等のポリカルボン酸類、安息香酸、p−トルイル酸、p−アミノ安息香酸、p−クロロ安息香酸、2, 4−ジクロロ安息香酸等の安息香酸誘導体、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等のフタル酸誘導体及びサリチル酸等の芳香族カルボン酸類、フェノール、m−クレゾール、p−クロロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール及び2,4,5−トリクロロフェノール等のフェノール類、レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール及びフロログルシノール等のポリフェノール類、ノボラック等のフェノール樹脂類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の脂肪族アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸類等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0029】
本発明のコーティング用樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して0.01〜2000重量部であることが好ましく、0.1〜2000重量部であることがより好ましい。含有量が0.01重量部未満であると、硬化促進剤を添加する効果が十分に得られないことがあり、2000重量部を超えると、塗膜外観が損なわれることがあり、経済性の観点からも好ましくないことがある。
【0030】
<<部材>>
本発明の部材は、樹脂基材と、本発明のコーティング用樹脂組成物を用いて樹脂基材上に形成された塗膜とを有することを特徴とする。
【0031】
<樹脂基材>
樹脂基材の材質は、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ABS樹脂等が挙げられる。これらの中では、経済性、加工容易性の観点からポリエステルが好ましい。
【0032】
樹脂基材の厚みは、特に限定されず、フィルム、シート、板、積層体等、成形加工等により製造される様々な成形品に成形されたものを樹脂基材として用いることができる。
【0033】
<塗膜>
塗膜は、本発明のコーティング用樹脂組成物を用いて樹脂基材上に形成される。本発明のコーティング用樹脂組成物を用いて樹脂基材上に塗膜を形成する方法としては、特に限定されないが、本発明のコーティング用樹脂組成物を樹脂基材の少なくとも一つの面に塗布した後、加熱して硬化させる方法等が挙げられる。本発明のコーティング用樹脂組成物を塗布する方法、及び、加熱して硬化させる方法については、後述する。
【0034】
塗膜の厚みは、特に限定されないが、0.1〜30μmであることが好ましく、0.3〜20μmであることがより好ましい。厚みが0.1μm未満であると、塗膜の平滑性が不十分となることがあり、30μmを超えると、内部応力の増加により密着性が不十分となることがある。
【0035】
<<部材の製造方法>>
本発明の部材の製造方法は、本発明の部材を製造するための方法であって、
本発明のコーティング用樹脂組成物を樹脂基材の少なくとも一つの面に塗布する工程(1)、及び、
工程(1)で塗布したコーティング用樹脂組成物を60〜250℃で5〜300秒間加熱して硬化させる工程(2)
を含むことを特徴とする。
【0036】
<工程(1)>
本工程では、本発明のコーティング用樹脂組成物を樹脂基材の少なくとも一つの面に塗布する。本発明のコーティング用樹脂組成物を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ノズルコート法、グラビアコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、エアドクターコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、カーテンコート法、ナイフコート法、トランスファロールコート法、スクイズコート法、含浸コート法、キスコート法、カレンダコート法、押出コート法等が挙げられる。
【0037】
<工程(2)>
本工程では、工程(1)で塗布したコーティング用樹脂組成物を加熱して硬化させる。
【0038】
工程(2)において、加熱温度は特に限定されないが、60〜250℃であることが好ましく、60〜150℃であることがより好ましい。加熱温度が60℃未満であると、硬化不良となることがあり、250℃を超えると、樹脂基材の材質によっては基材の形状が損なわれることがある。また、加熱時間は、5〜300秒間である限り特に限定されないが、20〜120秒間であることが好ましい。加熱時間が5秒間未満であると、硬化不良となることがあり、300秒間を超えると、樹脂基材の材質によっては基材の形状が損なわれることがあり、また、工程に要する時間が長くなるため生産性の観点からも好ましくない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0040】
(合成例1)
ソルビトール50gをトルエン20gに分散させ、四塩化すず0.18gを添加し、撹拌しながら、95℃以上100℃以下の温度範囲にて、エピクロルヒドリン62gを2時間かけて添加し、反応させた。エピクロルヒドリンの消失をJIS K 7236に記載された滴定法により確認し、溶剤として使用したトルエンを減圧濃縮で除去した。得られた濃縮物を水100gに溶解させ、ソルビトールポリクロルヒドリン化合物の水溶液(全固形分濃度52.5%)を得た。
【0041】
(使用材料)
下記の実施例及び比較例においては、以下の材料を使用した。
・(A)多官能反応性化合物
ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−614B、エポキシ当量:173、1分子あたりのエポキシ基の数:3〜4個)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学株式会社製、828、エポキシ当量:188、1分子あたりのエポキシ基の数:2個)
ソルビトールポリクロロヒドリン(合成例1、1分子あたりのハロヒドリン基の数:2〜4個)
・(B)アミノ樹脂
メラミン樹脂(DIC株式会社製、スーパーベッカミンL−145−60、数平均分子量:1073、固形分濃度:55%)
・アミン化合物
トリエチレンテトラミン(東京化成工業株式会社製、分子量:146)
・硬化促進剤
トルエンスルホン酸
・溶剤
トルエン(和光純薬工業株式会社製)
・樹脂基材
ポリエステル(PET)フィルム(東レ株式会社製、ルミラー、膜厚50μm)
【0042】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
下記表1に示す重量比で各成分を混合し、コーティング用樹脂組成物を得た。得られたコーティング用樹脂組成物を用いて後述する方法により貯蔵安定性の評価を行った。また、得られたコーティング用樹脂組成物を、バーコーター(No.2)を用いて樹脂基材上に塗布し、熱風乾燥機を用いて130℃で60秒間加熱することにより硬化させて塗膜を形成し、部材を得た。部材を室温まで冷却させたものを試験片として用いて、後述する方法により速乾性、密着性及び耐薬品性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0043】
(評価方法)
・貯蔵安定性
コーティング用樹脂組成物を23 ℃条件下で静置して、濁りが発生するまでの時間を確認した。確認は最長で12時間までとした。
・速乾性
作製直後の試験片の塗膜を指で触りタックの有無を確認し、下記の基準により2段階で評価した。
○:タック無し
×:タック有り
・密着性
作製直後の試験片の塗膜を指で10回擦り、塗膜の剥離の有無を確認し、下記の基準により2段階で評価した。
○:剥離無し
×:剥離有り
・耐薬品性
作製直後の試験片を用いて耐薬品性試験を行った。具体的には、ラビングテスターを用いてメチルエチルケトンを染み込ませたガーゼを荷重300gの条件で試験片の塗膜表面に押し当てた状態で30回往復させてラビング試験を行い、塗膜の剥離の有無を確認し、下記の基準により2段階で評価した。
○:剥離無し
×:剥離有り
【0044】
【表1】
【0045】
本発明のコーティング用樹脂組成物は130℃、60秒という低温、短時間の乾燥条件であっても十分に乾燥させることが可能であり、その塗膜の密着性、耐薬品性も良好であった。一方、従来技術である比較例1〜4では低温、短時間の乾燥条件では十分に乾燥させることができず、その結果として密着性、耐薬品性も不十分であった。