(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a3)と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(a4)を構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)37〜5重量%と、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(b1)と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b2)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(B)63〜95重量%を混合し、高融点結晶性重合体セグメント(a3)は、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体(a1)と、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸およびダイマー酸の中から少なくとも1種以上選ばれるジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体(a2)とジオールまたはそのエステル形成誘導体から形成され、(a1)に対する(a2)のモル比範囲((a1)/(a2))が0.2〜7.0であり、高融点結晶性重合体セグメント(b1)は、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体とジオールまたはそのエステル形成誘導体から形成され、さらにポリエステルブロック共重合体(A)+ポリエステルブロック共重合体(B)の合計100重量部に対して、硬質ポリエステル樹脂(C)2〜35重量部、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)0.1〜20重量部およびポリアミド樹脂(E)0.5〜15重量部を含有させてなる耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
前記ポリエステルブロック共重合体(A)+ポリエステルブロック共重合体(B)の合計100重量部対して、更に酸化防止剤(F)0.01〜5重量部を配合してなることを特徴とする請求項1記載の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
前記ポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a3)と低融点重合体セグメント(a4)の重量比が85/15〜35/65であることを特徴とする請求項1または2記載の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
前記ポリエステルブロック共重合体(B)の高融点結晶性重合体セグメント(b1)と低融点重合体セグメント(b2)の重量比が85/15〜35/65であることを特徴とする請求項1または2記載の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
前記硬質ポリエステル樹脂(C)がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(テレフタレート・イソフタレート)及び、それらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
前記グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)が、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルの共重合体、またはα−オレフィン、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルおよびα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルからなる3元共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
前記ポリアミド樹脂(E)が、ナイロン6および/又は2元あるいは3元以上の共重合ポリアミド樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
前記酸化防止剤(F)が、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤からなる群より選ばれた1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
結晶性芳香族ポリエステル単位を高融点結晶性重合体セグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位および/またはポリラクトンのような脂肪族ポリエステル単位を低融点重合体セグメントとするポリエステルブロック共重合体は、強度、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性、屈曲疲労性などの機械的性質や、低温、高温特性に優れ、さらに熱可塑性で成形加工が容易であることから、自動車部品や産業用資材に幅広く使用されている。
【0003】
しかし、一般的に上記ポリエステルブロック共重合体の柔軟性は、低融点重合体セグメント比率が多いほど柔軟となるが、高温環境下での弾性率は常温下に比べて大きく低下してしまう。一方、耐熱性は高融点結晶性重合体セグメント比率が高いほど良好となるが、柔軟性は低下してしまう。この性質により、耐熱性の必要な用途では高硬度のポリエステルブロック共重合体が使用されることになり、柔軟性と耐熱性の両方が必要な用途には、未だに架橋ゴムが使用されているという状況にある。つまり、柔軟なポリエステルブロック共重合体は耐熱性要求の低い部位への適用に留まっているのが実状である。
【0004】
しかるに、近年では、自動車部品や産業用資材においても環境問題への配慮から、柔軟性と耐熱性を兼ね備え、かつ常温から高温での弾性率変化の小さい熱可塑性エラストマーの提供が求められている。これまでにポリエステルブロック共重合体においても、耐熱性の改良検討がなされ、耐熱性と柔軟性を兼ね備えた熱可塑性エラストマーの開発が種々報告されている。
【0005】
例えば、ポリエーテルエステルブロック共重合体に、ポリアミド樹脂とヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を添加したブロックポリエーテルエステル共重合体組成物(例えば、特許文献1参照)や、ポリエステル系エラストマーに、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および/またはポリアミド樹脂を添加したポリエステルエラストマー樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、このような構成では、基本的にポリエーテルエステルブロック共重合体である限り、ある程度の耐熱性改善はできても、柔軟性と耐熱性を高いレベルで満足させることが難しかった。
【0006】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂に、共有結合性架橋アクリルゴムを多官能性化合物で動的架橋させた熱可塑性エラストマー組成物(例えば、特許文献3参照)や、熱可塑性コポリエステルエラストマーとエポキシ基含有および/またはカルボキシ基含有(メタ)アクリレート共重合体ゴムとを溶融混練で動的架橋させた熱可塑性エラストマー組成物(例えば、特許文献4参照)、あるいは、特定のハード/ソフト比を持つ熱可塑性コポリエステルエラストマーとアクリル酸とアルキルエステル部分を含有するアクリルゴムまたはエチレン成分含有ゴムとを公知の架橋剤の存在下で動的架橋させた熱可塑性エラストマー組成物(例えば、特許文献5参照)が提案されているが、かかる構成では、ホース・チューブやダクトに必要な強度・剛性、柔軟性と耐熱性とを両立させる組成物を得ることは困難であった。
【0007】
さらに、ポリエステルブロック共重合体が動的架橋された熱可塑性エラストマー組成物と耐熱材とを特定の割合で配合してなる耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物(例えば、特許文献6参照)が提案されているが、かかる構成では延性変形領域が小さく成形品の表面外観が劣るものであった。
【0008】
一方、二種類のジカルボン酸成分を有するポリエーテルエステルブロック共重合体と硬質ポリエステル樹脂との混合物に、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂とを添加した、ブロックポリエーテルエステル共重合体組成物(例えば、特許文献7参照)や、二種類のジカルボン酸成分を有するポリエーテルエステルブロック共重合体と、ジカルボン酸成分がテレフタル酸又はそのエステル形成誘導体であるポリエーテルエステルブロック共重合体との混合物に、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂とを添加したブロックポリエーテルエステル共重合体組成物(例えば、特許文献8参照)が提案されているが、かかる構成では、耐熱性改善はできても、常温から高温での小さい弾性率変化を高いレベルで満足させることが難しかった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物は耐熱性を有する。耐熱性を有するとは、高温処理した後でも引張破断伸びがある一定以上を保つことであり、本発明では、実施例のとおり、170℃×500時間処理にて、破断伸びが100%以上を保つこととした。
【0014】
本発明において、ポリエステルブロック共重合体(A)は、結晶性方芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a3)と脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(a4)を構成成分とする。
【0015】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a3)は、結晶性芳香族ポリエステル単位からなり、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体(a1)の他に、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ダイマー酸の中から少なくとも1種以上選ばれるジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体(a2)とジオールまたはそのエステル形成誘導体から形成され、(a1)に対する(a2)のモル比範囲((a1)/(a2))が0.2〜7.0であり、0.3以上であることが好ましく、また、6.0以下であることが好ましい。(a1)に対する(a2)のモル比範囲が0.2未満であると、成形加工性が悪化し、また7.0を超えると耐熱性が低下する。
【0016】
上記テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体(a1)としては、好ましくは、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートであり、より好ましくは、テレフタル酸である。
【0017】
上記イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ダイマー酸の中から少なくとも1種以上選ばれるジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体(a2)としては、イソフタル酸を用いた場合に最も効果的な結果が得られる。
【0018】
上記ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、分子量400以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2' −ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4' −ジヒドロキシ−p−ターフェニル、および4,4' −ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。
【0019】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の低融点重合体セグメント(a4)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルからなる。
【0020】
上記脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールなどが挙げられる。
【0021】
また、上記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/また脂肪族ポリエステルのなかで得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、及びポリエチレンアジペートなどの使用が好ましい。
【0022】
これらの中でも特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールの使用が好ましい。また、これらの低融点重合体セグメント(a4)の数平均分子量としては共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a3)と低融点重合体セグメント(a4)の重量比は、好ましくは、85/15〜35/65であり、より好ましくは、85/15〜40/60である。
【0024】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は、公知の方法で製造することができる。
【0025】
本発明において、ポリエステルブロック共重合体(B)は結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(b1)と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b2)とを主たる構成成分とする。そして、高融点結晶性重合体セグメント(b1)は、結晶性芳香族ポリエステル単位からなり、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成される。
【0026】
上記テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体(b1)としては、好ましくは、テレフタル酸、ジメチルテレフタレートであり、より好ましくは、テレフタル酸である。
【0027】
上記ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、分子量400以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2' −ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4' −ジヒドロキシ−p−ターフェニル、および4,4' −ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。
【0028】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(B)の低融点重合体セグメント(b2)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルからなる。
【0029】
上記脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールなどが挙げられる。
【0030】
また、上記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/また脂肪族ポリエステル のなかで得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、及びポリエチレンアジペートなどの使用が好ましい。
【0031】
これらの中でも特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールの使用が好ましい。また、これらの低融点重合体セグメント(b2)の数平均分子量としては共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。
【0032】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(B)の高融点結晶性重合体セグメント(b1)と低融点重合体セグメント(b2)の重量比は、好ましくは、85/15〜35/65であり、より好ましくは、85/15〜40/60である。
【0033】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(B)の低融点重合体セグメント(b2)の共重合量は、通常、15〜65重量%、好ましくは15〜60重量%である。
【0034】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(B)は、公知の方法で製造することができる。
【0035】
本発明の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物はポリエステルブロック共重合体(A)が60〜5重量%、好ましくは60〜7重量%、さらに好ましくは60〜10重量%と、ポリエステルブロック共重合体(B)が40〜95重量%、好ましくは40〜93重量%、さらに好ましくは40〜90重量%
を混合する。
【0036】
ポリエステルブロック共重合体(A)とポリエステルブロック共重合体(B)との合計に対して、ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量が5重量%よりも少なく、また60重量%を超えると耐熱性の低下、あるいは常温から高温での弾性率変化が大きくなる恐れがある。
【0037】
本発明に用いられる硬質ポリエステル樹脂(C)は、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などから選ばれた少なくとも1種の酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどから選ばれた少なくとも1種のジオール成分との重縮合によって得られるものであり、具体的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヘキシレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチロールテレフタレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート(PET/I)、ポリブチレン(テレフタレート・イソフタレート)(PET/I)などのような共重合ポリエステルなどを挙げることができる。これら硬質ポリエステル樹脂の中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(テレフタレート・イソフタレート)が好ましく、さらに好ましくはポリブチレンテレフタレートである。
【0038】
硬質ポリエステル樹脂(C)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)とポリエステルブロック共重合体(B)との合計100重量部に対して、2〜35重量部、好ましくは5〜35重量部である。硬質ポリエステル樹脂(C)の配合量が35重量部を超えると、ポリエーテルエステルブロック共重合体の本来有している柔軟性やゴム的性質が損なわれることになるため好ましくない。
【0039】
本発明に用いられるグリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)は、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルの共重合体、またはα−オレフィン、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルおよびα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルからなる3元共重合体が好ましく、α−オレフィン、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルおよびα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルからなる3元共重合体が特に好ましい。α−オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、ブテン−1などが挙げられるが、なかでもエチレンが最も好ましい。α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。α, β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸やメタクリル酸と炭素数1〜8の1価のアルコールとのエステルが好ましく、なかでもメチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートが好ましく、さらにメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0040】
グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)とポリエステルブロック共重合体(B)との合計100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは3〜20重量部である。0.1重量部未満では目的とする効果の改良度合いが小さく、20重量部を越えると成形時の溶融滞留によりゲル化が起こり、成形性が悪化する。
【0041】
本発明に用いられるポリアミド樹脂(E)とは、分子鎖中にアミド結合を有する高分子化合物であり、ラクタムからの重合体や、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などと、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどとの反応により得られる塩の重合体、または、ω−アミノカルボン酸からの重合体などが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は共重合体でも良いし、異なる重合体を2種類以上組み合わせて使用してもよい。これらのポリアミド樹脂の中でも、ナイロン6および/又は2元あるいは3元以上の共重合ポリアミド樹脂を用いた場合に、さらに高い効果が得られる。
【0042】
ポリアミド樹脂(E)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)とポリエステルブロック共重合体(B)との合計100重量部に対して、0.5〜15重量部、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは1.5〜15重量部である。ポリアミド樹脂(E)の配合量が0.5重量部未満では、目的とする改良効果の得られる度合いが小さく、また15重量部を超えると、ポリエーテルエステルブロック共重合体の本来有している柔軟性やゴム的性質が損なわれることになるため好ましくない。
【0043】
本発明の耐熱熱可塑性エラストマー組成物には、さらに酸化防止剤(F)を添加することにより耐熱性を向上させることができる。
【0044】
本発明に用いられる酸化防止剤(F)としては、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤からなる群より選ばれた1種、または2種以上が挙げられる。
【0045】
芳香族アミン系酸化防止剤の具体例としては、フェニルナフチルアミン、4,4’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、および4−イソプロポキシジフェニルアミンなどが挙げられるが、これらの中でもジフェニルアミン系化合物の使用が好ましい。
【0046】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,5−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸のジエチルエステル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、α−オクタデシル−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、6−(ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチル−チオ−1,3,5−トリアジン、ヘキサメチレングリコール−ビス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸アミド)、2,2−チオ[ジエチル−ビス−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンホスホン酸のジオクタデシルエステル、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ジ−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル]イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でも特にテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンのような分子量が500以上のものの使用が好ましい。
【0047】
イオウ系酸化防止剤とは、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、およびチオジプロピオンエステル系などのイオウを含む化合物である。これらの中でも、特にチオジプロピオンエステル系化合物の使用が好ましい。
【0048】
リン系酸化防止剤とは、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、およびジアルキルビスフェノールAジホスファイトなどのリンを含む化合物である。これらの中でも、分子中にリン原子とともにイオウ原子も有する化合物、あるいは分子中に2つ以上のリン原子を有する化合物の使用が好ましい。
【0049】
これらの酸化防止剤の合計配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)とポリエステルブロック共重合体(B)との合計100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.10〜5重量部である。
【0050】
酸化防止剤の合計配合量が0.01重量部未満では、目的とする改良効果の得られる度合いが小さく、また5重量部を超えると、ブルーミングを生じたり、ポリエステルブロック共重合体の機械的強度が低下したりするため好ましくない。
【0051】
さらに、本発明の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物には、上記添加剤(C)〜(F)以外に、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤を添加することができる。例えば公知の結晶核剤や滑剤などの成形助剤、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系化合物である耐光剤、耐加水分解改良剤、顔料や染料などの着色剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、補強剤、充填剤、可塑剤、離型剤などを任意に含有することができる。
【0052】
本発明の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルブロック共重合体(A)と、ポリエステルブロック共重合体(B)に所定の硬質ポリエステル樹脂(C)とグリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)とポリアミド樹脂(E)と酸化防止剤(F)を配合した原料を、スクリュー型押出機に供給し溶融混練する方法、またスクリュー型押出機に、まずポリエステルブロック共重合体(A)と、ポリエステル樹脂(B)と、硬質ポリエステル樹脂(C)を供給して溶融し、さらに他の供給口よりグリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D)を供給して混練し、さらに他の供給口よりポリアミド樹脂(E)酸化防止剤(F)や他の配合物を供給混練する方法などを適宜採用することができる。
【0053】
本発明の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形などにより成形体とされる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例及び比較例により本発明をより詳しく説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で、適宣変更して実施することができる。
なお、実施例1は参考例1、実施例2は参考例2と読み替えるものとする。
【0055】
なお、以下の実施例でいう部および%は、特に断らない限りは重量単位を示す。
【0056】
また、以下の実施例における耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物の引張破断強さ、引張破断伸び、引張弾性率、熱老化性、屈曲疲労性、および表面外観の評価は、次の方法により行った。
【0057】
[引張破断強さ、引張破断伸び]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、所定のシリンダー温度と金型温度の成形条件で、JIS K7113 2号ダンベル試験片を成形し、JIS K7113(1995年版)に従って23℃下にて測定した。
【0058】
[引張弾性率]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、所定のシリンダー温度と金型温度の成形条件で、JIS K7113 2号ダンベル試験片を成形し、JIS K7113(1995年版)に従って23℃下、及び130℃下にて測定した。
【0059】
[温度による弾性率変動]
130℃下で測定した引張弾性率と23℃下で測定した引張弾性率の比(130℃下の引張弾性率/23℃下の引張弾性率)から次の2段階で評価した。
○:引張弾性率の比が0.25以上である。
×:引張弾性率の比が0.25未満である。
【0060】
[熱老化性]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、所定のシリンダー温度と金型温度の成形条件で成形した、JIS K 7113 2号形試験片を、170℃の熱風オーブンにて500時間放置した後取り出し、JIS K 7113(1995年版)に従って測定し、引張破断伸びの値から次の2段階で評価した。
○:引張破断伸びが100%以上である。
×:引張破断伸びが100%未満である。
【0061】
[屈曲疲労性]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、所定のシリンダー温度と金型温度の成形条件で成形して得た厚み2mmの角板から、縦80mm×横20mm×厚み2mmの短冊を切り出し、(株)東洋精機製作所製ディマッチャ屈曲疲労試験機を用いて130℃の雰囲気下、5Hzのサイクル、チャック間距離25mmから5mmの間でストロークさせて破断するまでの屈曲回数を測定した。
【0062】
[成形品表面外観]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、所定のシリンダー温度と金型温度の成形条件で成形した、JIS K 7113 2号形試験片の表面外観を目視で観察し、表面が均一な成形品を○、表面にムラや荒れが観察される成形品を×とした。
【0063】
[ポリエステルブロック共重合体(A−1)の製造]
テレフタル酸443部、イソフタル酸190部、1,4−ブタンジオール600部および数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール177部を、チタンテトラブトキシド0.4部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.1部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。
【0064】
[ポリエステルブロック共重合体(A−2)の製造]
テレフタル酸330部、イソフタル酸96部、1,4−ブタンジオール403部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール467部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.1部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。
【0065】
このようにして得られたポリマA−1、A−2の組成と物性を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
[ポリエステルブロック共重合体(B−1)の製造]
テレフタル酸656部、1,4−ブタンジオール570部および数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール162部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。
【0068】
[ポリエステルブロック共重合体(B−2)の製造]
テレフタル酸603部、1,4−ブタンジオール523部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール221部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド1.5部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。
【0069】
このようにして得られたポリマB−1、B−2の組成と物性を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
[硬質ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂(C−1)として、東レ株式会社製トレコン1100S(ポリブチレンテレフタレート樹脂)を使用した。
【0072】
[グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂]
グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D−1)として、住友化学社製ボンドファースト7M(エチレン、メチルアクリレート、メタクリル酸グリシジルの3元共重合体)を使用した。
【0073】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂(E−1)として、東レ株式会社製 アミランCM4000(ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミドの3元共重合体)を使用した。
【0074】
[酸化防止剤]
下記実施例において使用した酸化防止剤(F−1)、(F−2)および(F−3)の略号と構造式を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
参考例で得られたポリエーテルエステルブロック共重合体(A−1)、(A−2)と、ポリエステル樹脂(B−1)、(B−2)に、硬質ポリエステル樹脂(C−1)、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂(D−1)、ポリアミド樹脂(E−1)、酸化防止剤(F−1)、(F−2)、(F−3)、を、いずれも表4に示すような配合比率でドライブレンドし、45mmφのスクリューを有する2軸押出機を用いて、220℃〜250℃の温度設定で溶融混練したのちペレット化した。このペレットを90℃で3時間乾燥後、シリンダー温度230℃〜250℃、金型温度50℃の条件下で射出成形し、引張破断強さ、引張破断伸び、引張弾性率、熱老化性試験、屈曲疲労性試験用の試験片を得た。得られた試験片で各種試験を実施した。引張破断強さ、引張破断伸びは23℃下で測定した。引張弾性率は23℃下と130℃下で測定し、温度による弾性率変動を判定した。熱老化性は170℃のオーブン内で500時間処理した後に23℃下で引張試験(引張破断強さ、引張破断伸び)を実施して、判定した。屈曲疲労性は130℃の雰囲気下で試験を実施した。成形品の表面外観は射出成形品を目視判定した。試験結果は表4に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
表4の結果から明らかなように、実施例1〜5に示したポリエステルブロック共重合体(A)とポリエステルブロック共重合体(B)を混合してなる熱可塑性エラストマーに、硬質ポリエステル樹脂、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂と、さらに酸化防止剤(芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤の一種以上)を配合した本発明の耐熱熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、引張破断強さ、引張破断伸びに優れる。また、熱老化性、温度による弾性率変動に優れており、その結果特に高温下での屈曲疲労性が優れていると共に成形品表面外観にも優れている。一方、本発明の条件を満たさない比較例1〜4の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物に比較して、引張破断強さ、引張破断伸び、熱老化性、温度による弾性率変動、屈曲疲労性、成形品表面外観のいずれかが劣っている。
【0079】
ポリエステルブロック共重合体(B)が未配合である比較例1、2では温度による弾性率変動が大きく、劣っている。硬質ポリエステル樹脂、グリシジル基変性ポリオレフィン樹脂、酸化防止剤、ポリアミド樹脂が未配合である比較例3では熱老化性における引張破断伸びが100%未満であり、著しく劣っている。ポリエステルブロック共重合体(A)が未配合である比較例4では熱老化性における引張破断伸びが100%未満であり、著しく劣っている。比較例1〜4では、いずれも屈曲疲労性が劣っている。