【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の一実施例である生体の心房細動判定装置10を含む自動血圧測定装置14の構成を示す図である。自動血圧測定装置14は、血圧測定に際して生体の一部たとえば上腕11に巻き回されて上腕11を圧迫するための腕帯12、電子制御装置28および表示器44を備えている。
図1に示すように、腕帯12の管接続用コネクタ16には主配管18が接続されている。主配管18には、圧力センサ20、排気制御弁22、および空気ポンプ24がそれぞれ接続されている。圧力センサ20は、腕帯12内に設けられて管接続用コネクタ16を介して主配管18に連通された膨張袋内の圧力値すなわち腕帯12の圧迫圧を検出し、その圧力値を表す圧力信号SPを出力する。また、自動血圧測定装置14は、圧力センサ20から出力される圧迫圧に含まれる脈動成分である脈波を抽出するバンドパスフィルタ42を備え、バンドパスフィルタ42は圧力信号SPの振動成分である脈波信号SMをA/D変換器40を介して電子制御装置28へ出力する。このバンドパスフィルタ42により抽出された脈波信号SMが表す脈波は、患者の心拍に同期して上腕動脈から腕帯12に伝達される圧力振動波であり、生体の心拍と同じ周期で変化する心拍同期波である。つまり、腕帯12、圧力センサ20、バンドパスフィルタ42は、生体の心拍に同期して発生する複数の心拍同期波を検出する、本発明の心拍同期波検出装置として機能する。また、自動血圧測定装置14は、圧力センサ20から出力される圧迫圧に含まれる静圧成分すなわち腕帯12の圧迫圧を表すカフ圧信号SKを弁別するローパスフィルタ38を備え、ローパスフィルタ38は弁別されたカフ圧信号SKをA/D変換器40を介して電子制御装置28へ供給する。電子制御装置28は、腕帯12の圧迫圧徐速降圧区間に得られた脈波の大きさの変化に基づいて生体の血圧を測定するとともに、心拍同期波である脈波の周期に基づいて生体の心房細動を判定する。
【0027】
電子制御装置28は、CPU30、RAM32、およびROM34などを含む所謂マイクロコンピュータである。この電子制御装置28は、CPU30がRAM32の記憶機能を利用しつつ予めROM34に記憶されたプログラムにしたがって入力信号を処理することで、排気制御弁22および空気ポンプ24をそれぞれ制御する。なお、電子制御装置28には、起動押釦スイッチ36から血圧測定開始の合図となる起動信号SSが供給される。
【0028】
図2は、電子制御装置28に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。電子制御装置28は、自動血圧測定手段46、脈波記憶手段48、平均発生間隔算出手段50、異常発生間隔心拍同期波抽出手段52、異常発生間隔発生割合判定手段54、および心房細動発生判定手段56を備えている。心拍同期波検出装置に対応する腕帯12、圧力センサ20およびバンドパスフィルタ42と、脈波記憶手段48、平均発生間隔算出手段50、異常発生間隔心拍同期波抽出手段52、異常発生間隔発生割合判定手段54および心房細動発生判定手段56とは、心房細動判定装置10に対応している。
【0029】
図3は、自動血圧測定手段46により、血圧測定時に制御される腕帯12の膨張袋内の圧力(mmHg)を示すタイムチャートである。自動血圧測定手段46は、電子制御装置28に血圧測定の起動信号SSが供給されると、腕帯12の膨張袋に圧縮空気(気体)を供給して、膨張袋内の圧力を急速昇圧させる。そして、その膨張袋内の圧力値が予め最高血圧値よりも十分に高く設定された目標昇圧値に到達すると(t1時点)、膨張袋内の昇圧を停止させる。そして、膨張袋内の空気を徐々に排気させることにより、膨張袋内の圧力を略一定の速度で緩やかに降圧(減圧)させる。そして、膨張袋内の圧力が緩やかに降圧させられる徐速降圧区間(t1時点からt2時点)において、良く知られたオシロメトリック法に従って脈波信号SMの大きさの変化に基づいて最高血圧値および最低血圧値を決定する。そして、上記決定された血圧値を表示器44に表示させ、腕帯12による上腕11への圧迫を解除するために膨張袋内の空気の急速排気を行い(t2時点からt3時点)、血圧測定を終了させる。脈波記憶手段48は、腕帯12による圧迫圧の徐速降圧区間中に取得した脈波信号SMを全て記憶する。
【0030】
平均発生間隔算出手段50は、脈波記憶手段48に記憶された腕帯12の膨張袋内の圧力が緩やかに減圧される徐速降圧区間(
図3のt1時点からt2時点の間)中に取得される全ての脈波信号SMが表す複数の脈波PLに基づいて、複数の脈波PLの発生間隔(脈波間隔時間)Iを平均した平均発生間隔(脈波間隔時間平均値)Iavを算出する。
図4は、
図3のt1時点からt2時点の期間に取得されるn+1個の各脈波PLと脈波の発生間隔Iとの一例を示す図である。具体的には、平均発生間隔算出手段50は、先ず、
図3のt1時点からt2時点の間における脈波信号SMが表す複数の脈波PLに基づいて、複数の脈波PLの発生間隔I(msec)を算出する。ここで、脈波の発生間隔Iは、たとえば、所定の脈波PLのピーク値PPを取得してから所定の脈波PLの次の脈波PLのピーク値PPを取得するまでの時間であって、
図4では、各脈波PLのうちの互いに隣り合う脈波PLのピーク値PP同士の間隔として表わされる。
図4においては、第1脈波PL1および第2脈波PL2の発生間隔I1と、第n脈波PLnおよび第n+1脈波PLn+1の発生間隔Inとは略等しい。また、第2脈波PL2および第3脈波PL3の発生間隔I2は、上記発生間隔I1,Inよりも大きい。また、第n-1脈波PLn-1および第n脈波PLnの発生間隔In-1は、発生間隔I1,I2,Inよりも大きい。このように、n+1個の脈波PLからn個の発生間隔Iが算出される。
【0031】
次に、平均発生間隔算出手段50は、上記のように算出した脈波の発生間隔I1,I2,・・・,In-1,Inから、下記(1)式に基づいて、n+1個の複数の脈波PLの平均発生間隔Iav(msec)を算出する。
【0032】
【数1】
【0033】
異常発生間隔心拍同期波抽出手段52は、腕帯12の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間に得られた複数の脈波PLのうち、平均発生間隔Iavを中心とする予め設定された発生間隔判定範囲Iavjを越える(発生間隔判定範囲Iavj内にない)発生間隔Iを有する不規則脈波IHB(Irregular Heart Beat)すなわち異常発生間隔脈波IPP(Irregular Pulse Peak)を抽出する。不規則脈波IHBは、本発明の異常発生間隔心拍同期波に対応する。
図5は、複数の脈波PLの発生間隔Iを示す棒グラフの一例であり、実線の平均発生間隔(全脈波間隔時間平均値)Iavを中心とする発生間隔判定範囲Iavjの最大値Iavjmaxおよび最小値Iavjminが破線によって示されている。なお、
図5の横軸における第1脈波PL1の第1ピーク値PP1,第2脈波PL2の第2ピーク値PP2,・・・,第n−1脈波PLn-1の第n−1ピーク値PPn-1,第n脈波PLnの第nピーク値PPnは、第1脈波PL1と第2脈波PL2との発生間隔I1,第2脈波PL2と第3脈波PL3との発生間隔I2,・・・,第n−1脈波PLn-1と第n脈波PLnとの発生間隔In-1,第n脈波PLnと第n+1脈波PLn+1との発生間隔Inを、それぞれ示している。
【0034】
異常発生間隔心拍同期波抽出手段52は、圧迫圧徐速降圧区間で得られた複数の脈波PLのうち、各脈波PLの発生間隔Iが予め設定された発生間隔判定範囲Iavjを超えている(発生間隔判定範囲Iavj内にない)か否かを判断し、発生間隔判定範囲Iavjを上下に超えている(発生間隔判定範囲Iavj内にない)と判断した発生間隔Iを有する脈波PLを不規則脈波IHBであると判定し、不規則脈波IHBの数をカウントする。ここで、平均発生間隔Iavを中心とする発生間隔判定範囲Iavjは、平均発生間隔Iavの±X%で表され、予め定められた最小範囲と最大範囲との間に設定されている。発生間隔判定範囲Iavjは、好適には、平均発生間隔Iavの±13%から±16%の間に設定され、より好適には±16%に設定される。この平均発生間隔Iavの±13%である発生間隔判定範囲Iavjの最小範囲は、後述の実験例において生体の心房細動を判定した際の特異度(Specificity)に基づいて求められた値である。また、平均発生間隔Iavの±16%である発生間隔判定範囲Iavjの最大範囲は、後述の実験例において生体の心房細動を判定した際の検出感度(Sensitivity)に基づいて求められた値である。
図5では、たとえばPP1で示される第1脈波PL1と第2脈波PL2との発生間隔I1などは、発生間隔判定範囲Iavjの範囲内にある。これに対して、たとえばPP2で示される第2脈波PL2と第3脈波PL3との発生間隔I2は平均発生間隔Iavの+X%である発生間隔判定範囲の最大値Iavjmaxを超えており、第3脈波PL3は不規則脈波IHB1であると判定される。また、たとえばPPn-4で示される脈波の発生間隔In-4は平均発生間隔Iavの−X%である発生間隔判定範囲Iavjの最小値Iavjminを下回っており、その発生間隔In-4を有する脈波PLn-3は不規則脈波IHB4であると判定される。
【0035】
異常発生間隔発生割合判定手段54は、腕帯12の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間における複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数(全脈波間隔時間データ数)に対する不規則脈波IHBの数の割合すなわち異常発生間隔判定割合TPR(Total Pulse Retia)(%)が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjよりも大きいか否かを判定する。ここで、異常発生間隔発生割合判定値TPRjは、予め実験的に定められており、好適には20%から34%の間に設定されている。たとえば
図5の場合には、異常発生間隔発生割合判定手段54は、n+1個の脈波PLの全ての発生間隔Iの数(n個)に対する不規則脈波IHBの数(m個)の割合TPR(=m/n×100)(%)が異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)よりも大きいか否かを判定する。
【0036】
心房細動発生判定手段56は、異常発生間隔発生割合判定手段54によって複数の脈波PLの発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPR(%)が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)よりも大きいと、心房細動(AF)の発生を判定して、心房細動の発生を示す不規則脈波マーク(IHBマーク)を表示器44に点灯表示させる。
【0037】
図6は、電子制御装置28の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
図6において、平均発生間隔算出手段50の機能に対応するS1において、腕帯12の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間における全部の脈波PLの発生間隔Iを平均した平均発生間隔(脈波間隔時間平均値)Iavが算出される。異常発生間隔心拍同期波抽出手段52の機能に対応するS2において、上記徐速降圧区間における複数の各脈波PLの発生間隔(脈波間隔時間)Iが平均発生間隔(全脈波間隔時間平均値)Iavの±X%の範囲内にないか否かが判定される。言い換えれば、発生間隔Iが予め設定された発生間隔判定範囲Iavj内にないか否かが判定される。S2の判定が肯定される場合には、異常発生間隔心拍同期波抽出手段52の機能に対応するS3において、発生間隔判定範囲Iavj内にない発生間隔Iを有する脈波PLが不規則脈波IHBであると判定されて、不規則脈波IHBとしてカウントされる。S3実行後あるいはS2の判定が否定される場合には、異常発生間隔心拍同期波抽出手段52の機能に対応するS4において、全ての脈波PLにおいて、発生間隔Iが発生間隔判定範囲Iavj内にないか否かの判定(確認)が終了したか否かが判定される。S4の判定が否定される場合には、再度S2が実行される。S4の判定が肯定される場合には、異常発生間隔発生割合判定手段54の機能に対応するS5において、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数(全脈波間隔時間データ数)に対する不規則脈波IHBの数の割合TPR(%)が、予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)よりも大きいか否かが判定される。S5の判定が肯定される場合には、心房細動発生判定手段56の機能に対応するS6において、心房細動の発生が判定され、表示器44におけるIHBマークの点灯処理が行われる。S6実行後、本フローチャートは終了させられる。S5の判定が否定される場合には、心房細動発生判定手段56の機能に対応するS7において、不規則脈波IHBの発生が判定されないことにより心房細動が発生していないと判定される。S7実行後、本フローチャートは終了させられる。
【0038】
[実験例]
生体の心房細動判定装置10の発生間隔判定範囲Iavjおよび異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)の信頼性を確認するために、16名の医師により判定された心房細動患者(AF患者)および20名の心房細動ではない非心房細動患者(健常者)の合計36名に対して、自動血圧測定装置を用いて以下のように実験を行った。なお、本実験では、不規則脈波IHB判定を行うための脈波PLを検出するために自動血圧測定装置(型式:UA−1020,株式会社エー・アンド・デイ製)を用いた。この自動血圧測定装置は、本実施例の自動血圧測定装置14と同様の構成を備えている。
【0039】
先ず、上記36名の各人を最低5分間たとえば仰向けの安静状態にした後に、それら36名の各人に対して上記自動血圧測定装置を用いて3回の血圧測定を行った。1回目の測定終了後と2回目の測定開始前との間、および2回目の測定終了後と3回目の測定開始前との間には、最低30秒間の時間をあけた。また、自動血圧測定装置の腕帯の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間において、血圧測定に並行して心電図(ECG)を記録した。上記徐速降圧区間において、各脈波PLの発生間隔(脈波間隔時間)I(msec)と、心電図のQRS波との間の一致を確認した。
【0040】
36名の3回の血圧測定結果のそれぞれにおいて、各脈波の平均発生間隔Iavを算出し、平均発生間隔Iavの±10%から±25%の12段階の発生間隔判定範囲Iavjを用いて各脈波の発生間隔Iが発生間隔判定範囲Iavj内にないか否かの
図6の異常発生間隔心拍同期波抽出手段52の機能に対応するS2に相当する判定を行い、不規則脈波IHBを抽出して不規則脈波IHBの数を求めた。上記の発生間隔判定範囲Iavjは、具体的には平均発生間隔Iavの±10%、±11%、±12%、±13%、±14%、±15%、±16%、±17%、±18%、±19%、±20%、±25%である。次に、上記の平均発生間隔Iavの±10%から±25%の発生間隔判定範囲Iavjを用いて得られたそれぞれの不規則脈波IHBの数に対して、12%から37%の19段階の異常発生間隔発生割合判定値TPRjを用いて、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPR(%)が異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)よりも大きくなるか否かを判定した。この
図6の異常発生間隔発生割合判定手段54の機能に対応するS5に相当する上記判定が肯定される場合には不規則脈波IHBの検出に基づいて心房細動の発生を判定し、上記判定が否定される場合には不規則脈波IHB非検出に基づいて心房細動は発生していないと判定した。上記の12%から37%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjは、具体的には、12%、13%、14%、15%、16%、18%、19%、20%、24%、25%、26%、27%、28%、30%、32%、34%、35%、36%、37%である。
【0041】
表1は、平均発生間隔Iavの±10%から±25%の発生間隔判定範囲Iavj(PPV)を用いて不規則脈波IHBの数を求め、たとえば20%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにより不規則脈波IHB検出の有無の判定すなわち心房細動の判定を行った場合において、各発生間隔判定範囲Iavjにおける各血圧測定毎のIHB検出人数/IHB非検出人数,検出感度(Sensitivity),特異度(Specificity)を示している。IHB検出人数/IHB非検出人数ここで、表1中のIHB検出人数は、
図6のS5に相当する上記判定が肯定された場合において不規則脈波IHBの検出に基づいて心房細動であると判定された人数(陽性者数)であり、IHB非検出人数は、
図6のS5に相当する上記判定が否定された場合における不規則脈波IHBの非検出に基づいて心房細動ではないと判定された人数(陰性者数)である。IHB検出人数/IHB非検出人数は、心房細動患者数(AF患者数)、非心房細動患者数(非AF患者数)毎に分けて示されている。また、検出感度は、心房細動であると判定された人数であるIHB検出人数を、実際の心房細動患者数(AF患者数)で除した値(IHB検出人数/AF患者数)であり、特異度は、心房細動ではないと判定された人数であるIHB非検出人数を、実際の非心房細動患者数(非AF患者数)で除した値(IHB非検出人数/非AF患者数)である。表2は、平均発生間隔Iavの±16%の発生間隔判定範囲Iavjを用いて不規則脈波IHBの数を求め、12%から37%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにより不規則脈波IHBの判定(心房細動判定)を行った場合において、15,16,18,26,27,28,34,35%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにおける各測定毎のIHB検出人数/IHB非検出人数,検出感度(Sensitivity),特異度(Specificity)を示している。同様に、表3は、平均発生間隔Iavの±13%の発生間隔判定範囲Iavjを用いて不規則脈波IHBの数を求め、12%から37%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにより不規則脈波IHBの判定(心房細動判定)を行った場合において、15,19,20,27,32,36,37%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにおける各測定毎のIHB検出人数/IHB非検出人数,検出感度(Sensitivity),特異度(Specificity)を示している。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
表1において、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±13%から±16%において、検出感度は全ての測定において1.00であり、特異度は3回の測定のうちの少なくとも2回の測定において1.00であった。特に、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±16%のときに、検出感度および特異度の両方が1.00であった。これに対して、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±10%から±12%においては、検出感度は1.00であったが、特異度は全ての測定において0.95以下であり、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±10%および±11%においては、3回の測定のうちの1回の測定において0.90であった。つまり、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±12%以下においては、特異度が1より小さくなる。このことから、良好な特異度を得るには、発生間隔判定範囲Iavjは平均発生間隔Iavの±13%以上であることが必要であることが示された。また、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±17%から±25%においては、特異度は1.00であったが、検出感度は全ての測定において1.00よりも小さく、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±17%から±20%においては、検出感度は0.88から0.94であったが、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±25%においては、検出感度は0.69以下となった。つまり、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±17%以上においては、発生間隔判定範囲Iavjが大きくなるに従い、検出感度が小さくなる。このことから、良好な検出感度を得るには、発生間隔判定範囲Iavjは平均発生間隔Iavの±16%以下であることが必要であることが示された。すなわち、良好な特異度および検出感度を得るには、発生間隔判定範囲Iavjは、平均発生間隔Iavの±13%〜±16%であることが必要である。本実施例の生体の心房細動判定装置10の発生間隔判定範囲Iavは、上記のように求められた最小範囲(平均発生間隔Iavの±13%)と最大範囲(平均発生間隔Iavの±16%)との間に設定されたものであり、上記最小範囲は不規則脈波IHB判定の特異度すなわち心房細動の発生判定の特異度に基づいて求められた値であり、上記最大範囲は不規則脈波IHB判定の検出感度すなわち心房細動の発生判定の検出感度に基づいて求められた値である。
【0046】
表2において、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±16%の場合には、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが18%から34%において、全ての測定において検出感度が0.94以上、且つ特異度が0.95以上であった。これに対して、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが16%においては、3回の測定のうちの1回の測定において特異度が0.90であり、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが15%においては、3回の測定のそれぞれの特異度は0.85,1.00,0.90であった。また、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが35%においては、3回の測定のうちの1回の測定において検出感度が0.88であった。
【0047】
表3において、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±13%の場合には、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが20%から36%において、全ての測定において検出感度が0.94以上、且つ特異度が0.95以上であった。これに対して、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが19%においては、3回の測定のうち1回の測定において特異度が0.90であり、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが15%においては、3回の測定のそれぞれの特異度は0.80,0.95,0.80であった。また、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが37%においては、3回の測定とも検出感度が0.94であった。
【0048】
表2および表3の結果から、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±13%から±16%の場合には、表2に示される異常発生間隔発生割合判定値TPRjの18%から34%と表3に示される異常発生間隔発生割合判定値TPRjの20%から36%との重複する範囲、すなわち異常発生間隔発生割合判定値TPRjが20%から34%において、良好な検出感度および特異度が得られると考えられた。
【0049】
以上の実験結果から、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±13%から±16%であり、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが20%から34%である場合において、検出感度が0.94−1.00、特異度が0.95−1.00であり、心房細動の発生を精度良く判定できることが示された。
【0050】
特に、表2に示されるように、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±16%であり、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが26%である場合には、3回の測定の全てにおいて検出感度1.00、特異度1.00であり、良好な検出感度および特異度が得られ、心房細動の発生を精度良く判定できることが示された。
【0051】
上述のように、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iを平均した平均発生間隔Iavを算出する平均発生間隔算出手段50と、複数の脈波PLのうち、平均発生間隔Iavを中心とする予め設定された発生間隔判定範囲Iavjを超える発生間隔Iを有する不規則脈波IHBを抽出する異常発生間隔心拍同期波抽出手段52と、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合(異常発生間隔発生割合)TPR(%)が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)以上であるか否かを判定する異常発生間隔発生割合判定手段54と、異常発生間隔発生割合判定手段54によって複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPRが予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjよりも大きいと、生体の心房細動を判定する心房細動発生判定手段56と、を含む。このため、複数の脈波PLのうちから予め設定された発生間隔判定範囲Iavjに基づいて不規則脈波IHBが抽出され、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPRが予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjよりも大きいことに基づいて心房細動の発生が判定される。これにより、圧迫圧下降区間で得られる比較的少ない脈波PLの数に基づいて、良好な判定精度により心房細動を判定することができる。
【0052】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、予め設定された発生間隔判定範囲Iavjは、予め求められた最小範囲と最大範囲との間に設定されており、予め求められた発生間隔判定範囲Iavjの最小範囲(平均発生間隔Iavの±13%)は、
図6の心房細動発生判定手段56の機能に対応するS7に相当する判定によって心房細動ではないと判定された人数を、実際の非心房細動患者数で除した値である特異度に基づいて求められた値であり、予め求められた発生間隔判定範囲Iavjの最大範囲(平均発生間隔Iavの±16%)は、
図6の心房細動発生判定手段56の機能に対応するS6に相当する判定によって心房細動であると判定された人数を、実際の心房細動患者数で除した値である検出感度に基づいて設定された値である。このため、生体の心房細動の発生を判定するのに適した条件で、複数の脈波PLのうちから不規則脈波IHBが抽出される。これにより、良好な検出感度および特異度により生体の心房細動の発生を判定することができる。
【0053】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、予め設定された発生間隔判定範囲Iavjは、平均発生間隔Iavの±13%〜±16%に設定されている。このため、発生間隔Iが平均発生間隔Iavの±13%〜±16%を超えたことに基づいて、不規則脈波IHBが適切に抽出される。これにより、良好な検出感度および特異度により生体の心房細動の発生を判定することができる。
【0054】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjは、20%〜34%の間に設定されている。このため、複数の脈波の全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPRが異常発生間隔発生割合判定値TPRj(20%から34%)よりも大きいことに基づいて、心房細動の判定が適切に行われるので、心房細動の判定精度を向上することができる。
【0055】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、心拍同期波検出装置に対応する、血圧測定に際して生体の一部に巻回されて生体の一部を圧迫する腕帯12、腕帯12の圧迫圧を検出する圧力センサ20、および圧力センサ20から出力される圧迫圧に含まれる脈動成分である脈波を抽出するバンドパスフィルタ42は、圧迫圧の徐速降圧区間内にバンドパスフィルタ42により抽出した脈波を心拍同期波として電子制御装置28へ出力する。このため、血圧測定に際しての脈波PLの周期に基づいて、心房細動の判定を行うことができる。これにより、家庭内での血圧測定によって、日常的に心房細動を検出することができる。
【0056】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、1回の血圧測定において腕帯12の圧迫圧の徐速降圧区間内に発生したたとえば20拍程度の脈波PLの発生間隔Iが平均されることにより平均発生間隔Iavが算出され、上記1回の血圧測定において腕帯12の圧迫圧の徐速降圧区間内に発生したたとえば20拍程度の脈波PLの数に対する平均発生間隔Iavを中心とする発生間隔判定範囲Iavjに基づいて抽出された不規則脈波IHBの数の割合TPRが予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjよりも大きいと、心房細動発生判定手段56により生体の心房細動の発生が判定される。このため、1回の血圧測定によって、心房細動の発生が判定されることから、心房細動の判定に要する時間を短くすることができる。