特許第6874258号(P6874258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874258
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】生体の心房細動判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20210510BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20210510BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20210510BHJP
   A61B 5/346 20210101ALI20210510BHJP
【FI】
   A61B5/0245 100T
   A61B5/02 310K
   A61B5/022 400A
   A61B5/04 312A
   A61B5/02 310B
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-53756(P2017-53756)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-153487(P2018-153487A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 康彦
(72)【発明者】
【氏名】安居 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】平石 明久
(72)【発明者】
【氏名】赤木 一顕
【審査官】 清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−140689(JP,A)
【文献】 実開昭63−050305(JP,U)
【文献】 特開2009−089883(JP,A)
【文献】 特許第5452870(JP,B2)
【文献】 特表2008−531119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の心拍に同期して発生する複数の心拍同期波を検出する心拍同期波検出装置を備え、前記複数の心拍同期波の周期に基づいて前記生体の心房細動を判定する生体の心房細動判定装置であって、
前記複数の心拍同期波の発生間隔を平均した平均発生間隔を算出する平均発生間隔算出手段と、
前記複数の心拍同期波のうち、前記平均発生間隔を中心とする予め設定された発生間隔判定範囲を超える発生間隔を有する異常発生間隔心拍同期波を抽出する異常発生間隔心拍同期波抽出手段と、
前記複数の心拍同期波の数に対する前記異常発生間隔心拍同期波の数の割合が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値よりも大きいか否かを判定する異常発生間隔発生割合判定手段と、
前記異常発生間隔発生割合判定手段によって前記複数の心拍同期波の数に対する前記異常発生間隔心拍同期波の数の割合が前記予め設定された異常発生間隔発生割合判定値よりも大きいと判定されると、前記生体の心房細動が発生していると判定する判定手段と、
を含み、
前記予め設定された発生間隔判定範囲は、前記平均発生間隔の±13%〜±16%の間に設定されている
ことを特徴とする生体の心房細動判定装置。
【請求項2】
前記予め設定された異常発生間隔発生割合判定値は、20%〜34%の間に設定されている
ことを特徴とする請求項の生体の心房細動判定装置。
【請求項3】
前記心拍同期波検出装置は、
血圧測定に際して前記生体の一部に巻回されて前記生体の一部を圧迫する腕帯の圧迫圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサから出力される圧迫圧に含まれる脈動成分である脈波を抽出するバンドパスフィルタとを含み、
前記圧迫圧の下降区間内に前記バンドパスフィルタにより抽出された脈波を前記心拍同期波として出力するものである
ことを特徴とする請求項1または2の生体の心房細動判定装置。
【請求項4】
前記心拍同期波検出装置は、
前記生体の皮膚に装着される複数の電極と、前記複数の電極間に発生する電位を増幅して前記電位の変化である波形を心電図として出力する増幅器とを含み、
前記心電図を構成する複数の波のいずれかを前記心拍同期波として出力するものである
ことを特徴とする請求項1または2の生体の心房細動判定装置。
【請求項5】
前記心拍同期波検出装置は、
ヘモグロビンによって反射可能な波長帯の光を前記生体の表皮に向かって照射する光源である発光チップと、前記生体から反射した光を検出する受光チップとを備え、毛細血管内の血液容積に対応する光電脈波信号を前記心拍同期波として出力する光電脈波センサである
ことを特徴とする請求項1または2の生体の心房細動判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の心房細動判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の心拍に同期して発生する複数の心拍同期波の周期の変化に基づいて不規則な周期で発生する不規則波を検出する不規則波検出装置が知られている。たとえば、特許文献1から5の不規則波検出装置がそれである。特許文献1の不規則波検出装置は、血圧測定に際して前記生体の一部に巻回されて前記生体の一部を圧迫する腕帯の圧迫圧を検出する圧力センサを備えた血圧測定装置であって、前記圧力センサから出力される圧迫圧に含まれる脈動成分である複数の脈波の発生間隔に基づいて不規則脈波があるかを判定する。不規則脈波があると判定されると、表示器に不規則脈波の発生が表示される。ここで、特許文献1で判定される不規則脈波とは、複数の脈波のうち、全脈波の発生間隔の平均値の±25%の範囲を超える発生間隔を有する脈波である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−150095号公報
【特許文献2】特許第5452870号公報
【特許文献3】特開2009−89883号公報
【特許文献4】特開2014−42547号公報
【特許文献5】特開2013−55982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の血圧測定装置における不規則脈波の判定方法を生体の心房細動の判定に適用することが考えられる。しかしながら、不規則脈波があるとの判定は、心房細動の発生を示唆するものではあるが、心房細動以外の他の不整脈である可能性も同時に示唆する。このため、特許文献1の不規則脈波の判定方法を心房細動の判定に適用しても、心房細動を精度良く検出することができるか不明であるとの問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献2において、複数の脈波の発生間隔に基づいて生体の心房細動を判定する生体の心房細動判定装置が開示されている。すなわち、特許文献2の生体の心房細動判定装置によれば、測定中の全脈波のうちから、全脈波の発生間隔の平均値の±25%の範囲にない発生間隔を有する脈波を排除し、残りの脈波の発生間隔からそれらの平均値および標準偏差を算出し、算出した標準偏差と平均値との比として求められる不規則度指数が所定の判定閾値以上の場合に心房細動である可能性が高いと判定することが記載されている。しかしながら、上記所定の判定閾値がどのように設定されたかということの具体的な根拠は何ら開示されていないため、心房細動の判定において信頼性が得られないという問題があった。
【0006】
また、特許文献3の生体の心房細動判定装置によれば、パルスオキシメータにより取得される100拍分の脈波の発生間隔を用いて、横軸が脈波の発生間隔であり且つ縦軸が発生頻度であるヒストグラムを作成し、そのヒストグラムにおいて発生頻度のピークが1つである場合に心房細動を判定することが記載されている。また、特許文献4の生体の心房細動判定装置によれば、たとえば1〜5秒間の所定の時間毎に算出された複数の脈波の平均発生間隔から上記所定の時間毎に変動係数が算出され、平均発生間隔の時間変化率である平均発生間隔波形信号において一部の周波数帯域のパワーが算出され、24時間分の変動係数およびパワーが所定の判定条件を満たすか否かに基づいて心房細動を判定することが記載されている。また、特許文献5の生体の心房細動判定装置によれば、特許文献4と同様の方法で算出されたパワーが予め設定された判定閾値を超えたかを30分間計測し、パワーが上記判定閾値を超えた時間が50%以上となることに基づいて、心房細動を判定することが記載されている。しかしながら、特許文献3および5の生体の心房細動判定装置においては、心房細動の判定精度が明らかではなく、特許文献4の生体の心房細動判定装置においては、心房細動が発生していない時間において心房細動が判定されている(図7)。また、特許文献3から特許文献5の心房細動判定装置によれば、その判定処理に多くの脈波を必要とするので、心房細動の判定に多大な時間が必要であるとの問題があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、生体の心房細動を精度良く判定できる生体の心房細動判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の要旨とするところは、(a)生体の心拍に同期して発生する複数の心拍同期波を検出する心拍同期波検出装置を備え、前記複数の心拍同期波の周期に基づいて前記生体の心房細動を判定する生体の心房細動判定装置であって、(b)前記複数の心拍同期波の発生間隔を平均した平均発生間隔を算出する平均発生間隔算出手段と、(c)前記複数の心拍同期波のうち、前記平均発生間隔を中心とする予め設定された発生間隔判定範囲を超える発生間隔を有する異常発生間隔心拍同期波を抽出する異常発生間隔心拍同期波抽出手段と、(d)前記複数の心拍同期波の数に対する前記異常発生間隔心拍同期波の数の割合が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値よりも大きいか否かを判定する異常発生間隔発生割合判定手段と、(e)前記異常発生間隔発生割合判定手段によって前記複数の心拍同期波の数に対する前記異常発生間隔心拍同期波の数の割合が前記予め設定された異常発生間隔発生割合判定値よりも大きいと判定されると、前記生体の心房細動が発生していると判定する判定手段と、を含み、(f)前記予め設定された発生間隔判定範囲は、前記平均発生間隔の±13%〜±16%の間に設定されていることにある。
【0011】
第2発明の要旨とするところは、前記第1発明において、前記予め設定された異常発生間隔発生割合判定値は、20%〜34%の間に設定されていることにある。
【0012】
第3発明の要旨とするところは、前記第1発明または前記第2発明において、前記心拍同期波検出装置は、血圧測定に際して前記生体の一部に巻回されて前記生体の一部を圧迫する腕帯の圧迫圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサから出力される圧迫圧に含まれる脈動成分である脈波を抽出するバンドパスフィルタとを含み、前記圧迫圧の下降区間内に前記バンドパスフィルタにより抽出された脈波を前記心拍同期波として出力するものであることにある。
【0013】
第4発明の要旨とするところは、前記第1発明または前記第2発明において、前記心拍同期波検出装置は、前記生体の皮膚に装着される複数の電極と、前記複数の電極間に発生する電位を増幅して前記電位の変化である波形を心電図として出力する増幅器とを含み、前記心電図を構成する複数の波のいずれかを前記心拍同期波として出力するものであることにある。
【0014】
第5発明の要旨とするところは、前記第1発明または前記第2発明において、前記心拍同期波検出装置は、ヘモグロビンによって反射可能な波長帯の光を前記生体の表皮に向かって照射する光源である発光チップと、前記生体から反射した光を検出する受光チップとを備え、毛細血管内の血液容積に対応する光電脈波信号を前記心拍同期波として出力する光電脈波センサであることにある。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、前記複数の心拍同期波の発生間隔を平均した平均発生間隔を算出する平均発生間隔算出手段と、前記複数の心拍同期波のうち、前記平均発生間隔を中心とする予め設定された発生間隔判定範囲を超える発生間隔を有する異常発生間隔心拍同期波を抽出する異常発生間隔心拍同期波抽出手段と、前記複数の心拍同期波の数に対する前記異常発生間隔心拍同期波の数の割合が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値よりも大きいか否かを判定する異常発生間隔発生割合判定手段と、前記異常発生間隔発生割合判定手段によって前記複数の心拍同期波の数に対する前記異常発生間隔心拍同期波の数の割合が前記予め設定された異常発生間隔発生割合判定値よりも大きいと判定されると、前記生体の心房細動が発生していると判定する判定手段と、を含み、前記予め設定された発生間隔判定範囲は、前記平均発生間隔の±13%〜±16%の間に設定されている。このため、前記複数の心拍同期波のうちから予め設定された発生間隔判定範囲に基づいて異常発生間隔心拍同期波が抽出され、前記複数の心拍同期波の数に対する前記異常発生間隔心拍同期波の数の割合が前記予め設定された異常発生間隔発生割合判定値よりも大きいと判定されたことに基づいて生体の心房細動が発生していると判定される。これにより、心房細動の判定精度を格段に向上することができる。また、前記予め設定された発生間隔判定範囲は、前記平均発生間隔の±13%〜±16%の間に設定されている。このため、複数の心拍同期波のうち、発生間隔が平均発生間隔の±13%〜±16%を外れる発生間隔を有する心拍同期波が異常発生間隔心拍同期波として抽出される。これにより、生体の心房細動の判定において、良好な検出感度および特異度を得ることができる。
【0017】
ここで、前記検出感度とは、被検査者数のうち、前記生体の心房細動判定装置によって心房細動であると判定された数すなわち陽性者数を実際に医師によって判定された心房細動患者数で除した値であり、心房細動患者をどれだけ正しく検査陽性として判定できたかを示す指標すなわち検出率である。また、特異度とは、前記生体の心房細動判定装置によって心房細動ではないと判定された数すなわち陰性者数を実際に医師により判定された非心房細動患者数で除した値であり、被測定者をどれだけ正しく検査陰性として判定できたかを示す指標すなわち非誤認率である。
【0019】
第2発明によれば、前記予め設定された異常発生間隔発生割合判定値は、20%〜34%の間に設定されている。このため、複数の心拍同期波の数に対する異常発生間隔心拍同期波の数の割合(百分率)が20%〜34%以上であることに基づいて、適切に心房細動が判定されるので、心房細動を精度良く判定することができる。
【0020】
第3発明によれば、前記心拍同期波検出装置は、血圧測定に際して前記生体の一部に巻回されて前記生体の一部を圧迫する腕帯の圧迫圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサから出力される圧迫圧に含まれる脈動成分である脈波を抽出するバンドパスフィルタとを含み、前記圧迫圧の下降区間内に前記バンドパスフィルタにより抽出された脈波を前記心拍同期波として出力する。このため、血圧測定の際の脈波の周期に基づいて、心房細動の発生が判定される。これにより、家庭内での血圧測定によって、日常的に心房細動を検出することができる。
【0021】
前記第3発明において、好適には、1回の血圧測定において生体の圧迫解放区間に発生した複数の脈波の発生間隔が平均されることにより前記平均発生間隔が算出され、前記1回の血圧測定において生体の圧迫解放区間に発生した複数の脈波の数に対する前記平均発生間隔を中心とする前記発生間隔判定範囲に基づいて抽出された異常発生間隔脈波の数の割合が予め設定された前記異常発生間隔発生割合判定値よりも大きいと判定されると、前記生体の心房細動を判定する判定手段は前記生体の心房細動を判定する。このため、1回の血圧測定によって、心房細動の発生が判定されることから、心房細動の判定に要する時間を短くすることができる。
【0022】
第4発明によれば、前記心拍同期波検出装置は、前記生体の皮膚に装着される複数の電極と、前記複数の電極間に発生する電位を増幅して前記電位の変化である波形を心電図として出力する増幅器とを含み、前記心電図を構成する複数の波のいずれかを前記心拍同期波として出力する。このため、心電図の測定の際の複数の波のいずれかの周期に基づいて、心房細動の発生が判定される。これにより、前記心電図の測定の際における複数の波のうちの何れかの周期に基づいて心房細動を判定する判定精度を向上することができる。
【0023】
第5発明によれば、前記心拍同期波検出装置は、ヘモグロビンによって反射可能な波長帯の光を前記生体の表皮に向かって照射する光源である発光チップと、前記生体から反射した光を検出する受光チップとを備え、毛細血管内の血液容積に対応する光電脈波信号を前記心拍同期波として出力する光電脈波センサである。このため、光電脈波の周期に基づいて心房細動の発生を判定する判定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例である生体の心房細動判定装置を含む自動血圧測定装置の構成を示す図である。
図2図1の自動血圧測定装置に備えらえる電子制御装置の制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。
図3図1の自動血圧測定装置において、血圧測定中における腕帯の膨張袋内の圧迫圧(mmHg)の変化を示すタイムチャートである。
図4図3のt1時点からt2時点の圧迫圧徐速降圧区間に計測される複数のn+1個の脈波PLと各脈波の発生間隔Iとの一例を示す図である。
図5図4の複数のn+1個の脈波PLのn個の発生間隔Iを示す棒グラフの一例である。
図6図1の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
図7】本発明の他の実施例の生体の心房細動判定装置の構成を示す図である。
図8図7の生体の心房細動判定装置に備えられる電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
図9】本発明の他の実施例の生体の心房細動判定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の生体の心房細動判定装置の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の一実施例である生体の心房細動判定装置10を含む自動血圧測定装置14の構成を示す図である。自動血圧測定装置14は、血圧測定に際して生体の一部たとえば上腕11に巻き回されて上腕11を圧迫するための腕帯12、電子制御装置28および表示器44を備えている。図1に示すように、腕帯12の管接続用コネクタ16には主配管18が接続されている。主配管18には、圧力センサ20、排気制御弁22、および空気ポンプ24がそれぞれ接続されている。圧力センサ20は、腕帯12内に設けられて管接続用コネクタ16を介して主配管18に連通された膨張袋内の圧力値すなわち腕帯12の圧迫圧を検出し、その圧力値を表す圧力信号SPを出力する。また、自動血圧測定装置14は、圧力センサ20から出力される圧迫圧に含まれる脈動成分である脈波を抽出するバンドパスフィルタ42を備え、バンドパスフィルタ42は圧力信号SPの振動成分である脈波信号SMをA/D変換器40を介して電子制御装置28へ出力する。このバンドパスフィルタ42により抽出された脈波信号SMが表す脈波は、患者の心拍に同期して上腕動脈から腕帯12に伝達される圧力振動波であり、生体の心拍と同じ周期で変化する心拍同期波である。つまり、腕帯12、圧力センサ20、バンドパスフィルタ42は、生体の心拍に同期して発生する複数の心拍同期波を検出する、本発明の心拍同期波検出装置として機能する。また、自動血圧測定装置14は、圧力センサ20から出力される圧迫圧に含まれる静圧成分すなわち腕帯12の圧迫圧を表すカフ圧信号SKを弁別するローパスフィルタ38を備え、ローパスフィルタ38は弁別されたカフ圧信号SKをA/D変換器40を介して電子制御装置28へ供給する。電子制御装置28は、腕帯12の圧迫圧徐速降圧区間に得られた脈波の大きさの変化に基づいて生体の血圧を測定するとともに、心拍同期波である脈波の周期に基づいて生体の心房細動を判定する。
【0027】
電子制御装置28は、CPU30、RAM32、およびROM34などを含む所謂マイクロコンピュータである。この電子制御装置28は、CPU30がRAM32の記憶機能を利用しつつ予めROM34に記憶されたプログラムにしたがって入力信号を処理することで、排気制御弁22および空気ポンプ24をそれぞれ制御する。なお、電子制御装置28には、起動押釦スイッチ36から血圧測定開始の合図となる起動信号SSが供給される。
【0028】
図2は、電子制御装置28に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。電子制御装置28は、自動血圧測定手段46、脈波記憶手段48、平均発生間隔算出手段50、異常発生間隔心拍同期波抽出手段52、異常発生間隔発生割合判定手段54、および心房細動発生判定手段56を備えている。心拍同期波検出装置に対応する腕帯12、圧力センサ20およびバンドパスフィルタ42と、脈波記憶手段48、平均発生間隔算出手段50、異常発生間隔心拍同期波抽出手段52、異常発生間隔発生割合判定手段54および心房細動発生判定手段56とは、心房細動判定装置10に対応している。
【0029】
図3は、自動血圧測定手段46により、血圧測定時に制御される腕帯12の膨張袋内の圧力(mmHg)を示すタイムチャートである。自動血圧測定手段46は、電子制御装置28に血圧測定の起動信号SSが供給されると、腕帯12の膨張袋に圧縮空気(気体)を供給して、膨張袋内の圧力を急速昇圧させる。そして、その膨張袋内の圧力値が予め最高血圧値よりも十分に高く設定された目標昇圧値に到達すると(t1時点)、膨張袋内の昇圧を停止させる。そして、膨張袋内の空気を徐々に排気させることにより、膨張袋内の圧力を略一定の速度で緩やかに降圧(減圧)させる。そして、膨張袋内の圧力が緩やかに降圧させられる徐速降圧区間(t1時点からt2時点)において、良く知られたオシロメトリック法に従って脈波信号SMの大きさの変化に基づいて最高血圧値および最低血圧値を決定する。そして、上記決定された血圧値を表示器44に表示させ、腕帯12による上腕11への圧迫を解除するために膨張袋内の空気の急速排気を行い(t2時点からt3時点)、血圧測定を終了させる。脈波記憶手段48は、腕帯12による圧迫圧の徐速降圧区間中に取得した脈波信号SMを全て記憶する。
【0030】
平均発生間隔算出手段50は、脈波記憶手段48に記憶された腕帯12の膨張袋内の圧力が緩やかに減圧される徐速降圧区間(図3のt1時点からt2時点の間)中に取得される全ての脈波信号SMが表す複数の脈波PLに基づいて、複数の脈波PLの発生間隔(脈波間隔時間)Iを平均した平均発生間隔(脈波間隔時間平均値)Iavを算出する。図4は、図3のt1時点からt2時点の期間に取得されるn+1個の各脈波PLと脈波の発生間隔Iとの一例を示す図である。具体的には、平均発生間隔算出手段50は、先ず、図3のt1時点からt2時点の間における脈波信号SMが表す複数の脈波PLに基づいて、複数の脈波PLの発生間隔I(msec)を算出する。ここで、脈波の発生間隔Iは、たとえば、所定の脈波PLのピーク値PPを取得してから所定の脈波PLの次の脈波PLのピーク値PPを取得するまでの時間であって、図4では、各脈波PLのうちの互いに隣り合う脈波PLのピーク値PP同士の間隔として表わされる。図4においては、第1脈波PL1および第2脈波PL2の発生間隔I1と、第n脈波PLnおよび第n+1脈波PLn+1の発生間隔Inとは略等しい。また、第2脈波PL2および第3脈波PL3の発生間隔I2は、上記発生間隔I1,Inよりも大きい。また、第n-1脈波PLn-1および第n脈波PLnの発生間隔In-1は、発生間隔I1,I2,Inよりも大きい。このように、n+1個の脈波PLからn個の発生間隔Iが算出される。
【0031】
次に、平均発生間隔算出手段50は、上記のように算出した脈波の発生間隔I1,I2,・・・,In-1,Inから、下記(1)式に基づいて、n+1個の複数の脈波PLの平均発生間隔Iav(msec)を算出する。
【0032】
【数1】
【0033】
異常発生間隔心拍同期波抽出手段52は、腕帯12の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間に得られた複数の脈波PLのうち、平均発生間隔Iavを中心とする予め設定された発生間隔判定範囲Iavjを越える(発生間隔判定範囲Iavj内にない)発生間隔Iを有する不規則脈波IHB(Irregular Heart Beat)すなわち異常発生間隔脈波IPP(Irregular Pulse Peak)を抽出する。不規則脈波IHBは、本発明の異常発生間隔心拍同期波に対応する。図5は、複数の脈波PLの発生間隔Iを示す棒グラフの一例であり、実線の平均発生間隔(全脈波間隔時間平均値)Iavを中心とする発生間隔判定範囲Iavjの最大値Iavjmaxおよび最小値Iavjminが破線によって示されている。なお、図5の横軸における第1脈波PL1の第1ピーク値PP1,第2脈波PL2の第2ピーク値PP2,・・・,第n−1脈波PLn-1の第n−1ピーク値PPn-1,第n脈波PLnの第nピーク値PPnは、第1脈波PL1と第2脈波PL2との発生間隔I1,第2脈波PL2と第3脈波PL3との発生間隔I2,・・・,第n−1脈波PLn-1と第n脈波PLnとの発生間隔In-1,第n脈波PLnと第n+1脈波PLn+1との発生間隔Inを、それぞれ示している。
【0034】
異常発生間隔心拍同期波抽出手段52は、圧迫圧徐速降圧区間で得られた複数の脈波PLのうち、各脈波PLの発生間隔Iが予め設定された発生間隔判定範囲Iavjを超えている(発生間隔判定範囲Iavj内にない)か否かを判断し、発生間隔判定範囲Iavjを上下に超えている(発生間隔判定範囲Iavj内にない)と判断した発生間隔Iを有する脈波PLを不規則脈波IHBであると判定し、不規則脈波IHBの数をカウントする。ここで、平均発生間隔Iavを中心とする発生間隔判定範囲Iavjは、平均発生間隔Iavの±X%で表され、予め定められた最小範囲と最大範囲との間に設定されている。発生間隔判定範囲Iavjは、好適には、平均発生間隔Iavの±13%から±16%の間に設定され、より好適には±16%に設定される。この平均発生間隔Iavの±13%である発生間隔判定範囲Iavjの最小範囲は、後述の実験例において生体の心房細動を判定した際の特異度(Specificity)に基づいて求められた値である。また、平均発生間隔Iavの±16%である発生間隔判定範囲Iavjの最大範囲は、後述の実験例において生体の心房細動を判定した際の検出感度(Sensitivity)に基づいて求められた値である。図5では、たとえばPP1で示される第1脈波PL1と第2脈波PL2との発生間隔I1などは、発生間隔判定範囲Iavjの範囲内にある。これに対して、たとえばPP2で示される第2脈波PL2と第3脈波PL3との発生間隔I2は平均発生間隔Iavの+X%である発生間隔判定範囲の最大値Iavjmaxを超えており、第3脈波PL3は不規則脈波IHB1であると判定される。また、たとえばPPn-4で示される脈波の発生間隔In-4は平均発生間隔Iavの−X%である発生間隔判定範囲Iavjの最小値Iavjminを下回っており、その発生間隔In-4を有する脈波PLn-3は不規則脈波IHB4であると判定される。
【0035】
異常発生間隔発生割合判定手段54は、腕帯12の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間における複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数(全脈波間隔時間データ数)に対する不規則脈波IHBの数の割合すなわち異常発生間隔判定割合TPR(Total Pulse Retia)(%)が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjよりも大きいか否かを判定する。ここで、異常発生間隔発生割合判定値TPRjは、予め実験的に定められており、好適には20%から34%の間に設定されている。たとえば図5の場合には、異常発生間隔発生割合判定手段54は、n+1個の脈波PLの全ての発生間隔Iの数(n個)に対する不規則脈波IHBの数(m個)の割合TPR(=m/n×100)(%)が異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)よりも大きいか否かを判定する。
【0036】
心房細動発生判定手段56は、異常発生間隔発生割合判定手段54によって複数の脈波PLの発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPR(%)が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)よりも大きいと、心房細動(AF)の発生を判定して、心房細動の発生を示す不規則脈波マーク(IHBマーク)を表示器44に点灯表示させる。
【0037】
図6は、電子制御装置28の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図6において、平均発生間隔算出手段50の機能に対応するS1において、腕帯12の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間における全部の脈波PLの発生間隔Iを平均した平均発生間隔(脈波間隔時間平均値)Iavが算出される。異常発生間隔心拍同期波抽出手段52の機能に対応するS2において、上記徐速降圧区間における複数の各脈波PLの発生間隔(脈波間隔時間)Iが平均発生間隔(全脈波間隔時間平均値)Iavの±X%の範囲内にないか否かが判定される。言い換えれば、発生間隔Iが予め設定された発生間隔判定範囲Iavj内にないか否かが判定される。S2の判定が肯定される場合には、異常発生間隔心拍同期波抽出手段52の機能に対応するS3において、発生間隔判定範囲Iavj内にない発生間隔Iを有する脈波PLが不規則脈波IHBであると判定されて、不規則脈波IHBとしてカウントされる。S3実行後あるいはS2の判定が否定される場合には、異常発生間隔心拍同期波抽出手段52の機能に対応するS4において、全ての脈波PLにおいて、発生間隔Iが発生間隔判定範囲Iavj内にないか否かの判定(確認)が終了したか否かが判定される。S4の判定が否定される場合には、再度S2が実行される。S4の判定が肯定される場合には、異常発生間隔発生割合判定手段54の機能に対応するS5において、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数(全脈波間隔時間データ数)に対する不規則脈波IHBの数の割合TPR(%)が、予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)よりも大きいか否かが判定される。S5の判定が肯定される場合には、心房細動発生判定手段56の機能に対応するS6において、心房細動の発生が判定され、表示器44におけるIHBマークの点灯処理が行われる。S6実行後、本フローチャートは終了させられる。S5の判定が否定される場合には、心房細動発生判定手段56の機能に対応するS7において、不規則脈波IHBの発生が判定されないことにより心房細動が発生していないと判定される。S7実行後、本フローチャートは終了させられる。
【0038】
[実験例]
生体の心房細動判定装置10の発生間隔判定範囲Iavjおよび異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)の信頼性を確認するために、16名の医師により判定された心房細動患者(AF患者)および20名の心房細動ではない非心房細動患者(健常者)の合計36名に対して、自動血圧測定装置を用いて以下のように実験を行った。なお、本実験では、不規則脈波IHB判定を行うための脈波PLを検出するために自動血圧測定装置(型式:UA−1020,株式会社エー・アンド・デイ製)を用いた。この自動血圧測定装置は、本実施例の自動血圧測定装置14と同様の構成を備えている。
【0039】
先ず、上記36名の各人を最低5分間たとえば仰向けの安静状態にした後に、それら36名の各人に対して上記自動血圧測定装置を用いて3回の血圧測定を行った。1回目の測定終了後と2回目の測定開始前との間、および2回目の測定終了後と3回目の測定開始前との間には、最低30秒間の時間をあけた。また、自動血圧測定装置の腕帯の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間において、血圧測定に並行して心電図(ECG)を記録した。上記徐速降圧区間において、各脈波PLの発生間隔(脈波間隔時間)I(msec)と、心電図のQRS波との間の一致を確認した。
【0040】
36名の3回の血圧測定結果のそれぞれにおいて、各脈波の平均発生間隔Iavを算出し、平均発生間隔Iavの±10%から±25%の12段階の発生間隔判定範囲Iavjを用いて各脈波の発生間隔Iが発生間隔判定範囲Iavj内にないか否かの図6の異常発生間隔心拍同期波抽出手段52の機能に対応するS2に相当する判定を行い、不規則脈波IHBを抽出して不規則脈波IHBの数を求めた。上記の発生間隔判定範囲Iavjは、具体的には平均発生間隔Iavの±10%、±11%、±12%、±13%、±14%、±15%、±16%、±17%、±18%、±19%、±20%、±25%である。次に、上記の平均発生間隔Iavの±10%から±25%の発生間隔判定範囲Iavjを用いて得られたそれぞれの不規則脈波IHBの数に対して、12%から37%の19段階の異常発生間隔発生割合判定値TPRjを用いて、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPR(%)が異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)よりも大きくなるか否かを判定した。この図6の異常発生間隔発生割合判定手段54の機能に対応するS5に相当する上記判定が肯定される場合には不規則脈波IHBの検出に基づいて心房細動の発生を判定し、上記判定が否定される場合には不規則脈波IHB非検出に基づいて心房細動は発生していないと判定した。上記の12%から37%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjは、具体的には、12%、13%、14%、15%、16%、18%、19%、20%、24%、25%、26%、27%、28%、30%、32%、34%、35%、36%、37%である。
【0041】
表1は、平均発生間隔Iavの±10%から±25%の発生間隔判定範囲Iavj(PPV)を用いて不規則脈波IHBの数を求め、たとえば20%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにより不規則脈波IHB検出の有無の判定すなわち心房細動の判定を行った場合において、各発生間隔判定範囲Iavjにおける各血圧測定毎のIHB検出人数/IHB非検出人数,検出感度(Sensitivity),特異度(Specificity)を示している。IHB検出人数/IHB非検出人数ここで、表1中のIHB検出人数は、図6のS5に相当する上記判定が肯定された場合において不規則脈波IHBの検出に基づいて心房細動であると判定された人数(陽性者数)であり、IHB非検出人数は、図6のS5に相当する上記判定が否定された場合における不規則脈波IHBの非検出に基づいて心房細動ではないと判定された人数(陰性者数)である。IHB検出人数/IHB非検出人数は、心房細動患者数(AF患者数)、非心房細動患者数(非AF患者数)毎に分けて示されている。また、検出感度は、心房細動であると判定された人数であるIHB検出人数を、実際の心房細動患者数(AF患者数)で除した値(IHB検出人数/AF患者数)であり、特異度は、心房細動ではないと判定された人数であるIHB非検出人数を、実際の非心房細動患者数(非AF患者数)で除した値(IHB非検出人数/非AF患者数)である。表2は、平均発生間隔Iavの±16%の発生間隔判定範囲Iavjを用いて不規則脈波IHBの数を求め、12%から37%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにより不規則脈波IHBの判定(心房細動判定)を行った場合において、15,16,18,26,27,28,34,35%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにおける各測定毎のIHB検出人数/IHB非検出人数,検出感度(Sensitivity),特異度(Specificity)を示している。同様に、表3は、平均発生間隔Iavの±13%の発生間隔判定範囲Iavjを用いて不規則脈波IHBの数を求め、12%から37%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにより不規則脈波IHBの判定(心房細動判定)を行った場合において、15,19,20,27,32,36,37%の異常発生間隔発生割合判定値TPRjにおける各測定毎のIHB検出人数/IHB非検出人数,検出感度(Sensitivity),特異度(Specificity)を示している。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
表1において、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±13%から±16%において、検出感度は全ての測定において1.00であり、特異度は3回の測定のうちの少なくとも2回の測定において1.00であった。特に、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±16%のときに、検出感度および特異度の両方が1.00であった。これに対して、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±10%から±12%においては、検出感度は1.00であったが、特異度は全ての測定において0.95以下であり、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±10%および±11%においては、3回の測定のうちの1回の測定において0.90であった。つまり、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±12%以下においては、特異度が1より小さくなる。このことから、良好な特異度を得るには、発生間隔判定範囲Iavjは平均発生間隔Iavの±13%以上であることが必要であることが示された。また、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±17%から±25%においては、特異度は1.00であったが、検出感度は全ての測定において1.00よりも小さく、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±17%から±20%においては、検出感度は0.88から0.94であったが、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±25%においては、検出感度は0.69以下となった。つまり、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±17%以上においては、発生間隔判定範囲Iavjが大きくなるに従い、検出感度が小さくなる。このことから、良好な検出感度を得るには、発生間隔判定範囲Iavjは平均発生間隔Iavの±16%以下であることが必要であることが示された。すなわち、良好な特異度および検出感度を得るには、発生間隔判定範囲Iavjは、平均発生間隔Iavの±13%〜±16%であることが必要である。本実施例の生体の心房細動判定装置10の発生間隔判定範囲Iavは、上記のように求められた最小範囲(平均発生間隔Iavの±13%)と最大範囲(平均発生間隔Iavの±16%)との間に設定されたものであり、上記最小範囲は不規則脈波IHB判定の特異度すなわち心房細動の発生判定の特異度に基づいて求められた値であり、上記最大範囲は不規則脈波IHB判定の検出感度すなわち心房細動の発生判定の検出感度に基づいて求められた値である。
【0046】
表2において、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±16%の場合には、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが18%から34%において、全ての測定において検出感度が0.94以上、且つ特異度が0.95以上であった。これに対して、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが16%においては、3回の測定のうちの1回の測定において特異度が0.90であり、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが15%においては、3回の測定のそれぞれの特異度は0.85,1.00,0.90であった。また、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが35%においては、3回の測定のうちの1回の測定において検出感度が0.88であった。
【0047】
表3において、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±13%の場合には、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが20%から36%において、全ての測定において検出感度が0.94以上、且つ特異度が0.95以上であった。これに対して、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが19%においては、3回の測定のうち1回の測定において特異度が0.90であり、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが15%においては、3回の測定のそれぞれの特異度は0.80,0.95,0.80であった。また、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが37%においては、3回の測定とも検出感度が0.94であった。
【0048】
表2および表3の結果から、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±13%から±16%の場合には、表2に示される異常発生間隔発生割合判定値TPRjの18%から34%と表3に示される異常発生間隔発生割合判定値TPRjの20%から36%との重複する範囲、すなわち異常発生間隔発生割合判定値TPRjが20%から34%において、良好な検出感度および特異度が得られると考えられた。
【0049】
以上の実験結果から、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±13%から±16%であり、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが20%から34%である場合において、検出感度が0.94−1.00、特異度が0.95−1.00であり、心房細動の発生を精度良く判定できることが示された。
【0050】
特に、表2に示されるように、発生間隔判定範囲Iavjが平均発生間隔Iavの±16%であり、異常発生間隔発生割合判定値TPRjが26%である場合には、3回の測定の全てにおいて検出感度1.00、特異度1.00であり、良好な検出感度および特異度が得られ、心房細動の発生を精度良く判定できることが示された。
【0051】
上述のように、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iを平均した平均発生間隔Iavを算出する平均発生間隔算出手段50と、複数の脈波PLのうち、平均発生間隔Iavを中心とする予め設定された発生間隔判定範囲Iavjを超える発生間隔Iを有する不規則脈波IHBを抽出する異常発生間隔心拍同期波抽出手段52と、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合(異常発生間隔発生割合)TPR(%)が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRj(%)以上であるか否かを判定する異常発生間隔発生割合判定手段54と、異常発生間隔発生割合判定手段54によって複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPRが予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjよりも大きいと、生体の心房細動を判定する心房細動発生判定手段56と、を含む。このため、複数の脈波PLのうちから予め設定された発生間隔判定範囲Iavjに基づいて不規則脈波IHBが抽出され、複数の脈波PLの全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPRが予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjよりも大きいことに基づいて心房細動の発生が判定される。これにより、圧迫圧下降区間で得られる比較的少ない脈波PLの数に基づいて、良好な判定精度により心房細動を判定することができる。
【0052】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、予め設定された発生間隔判定範囲Iavjは、予め求められた最小範囲と最大範囲との間に設定されており、予め求められた発生間隔判定範囲Iavjの最小範囲(平均発生間隔Iavの±13%)は、図6の心房細動発生判定手段56の機能に対応するS7に相当する判定によって心房細動ではないと判定された人数を、実際の非心房細動患者数で除した値である特異度に基づいて求められた値であり、予め求められた発生間隔判定範囲Iavjの最大範囲(平均発生間隔Iavの±16%)は、図6の心房細動発生判定手段56の機能に対応するS6に相当する判定によって心房細動であると判定された人数を、実際の心房細動患者数で除した値である検出感度に基づいて設定された値である。このため、生体の心房細動の発生を判定するのに適した条件で、複数の脈波PLのうちから不規則脈波IHBが抽出される。これにより、良好な検出感度および特異度により生体の心房細動の発生を判定することができる。
【0053】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、予め設定された発生間隔判定範囲Iavjは、平均発生間隔Iavの±13%〜±16%に設定されている。このため、発生間隔Iが平均発生間隔Iavの±13%〜±16%を超えたことに基づいて、不規則脈波IHBが適切に抽出される。これにより、良好な検出感度および特異度により生体の心房細動の発生を判定することができる。
【0054】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjは、20%〜34%の間に設定されている。このため、複数の脈波の全ての発生間隔Iの数に対する不規則脈波IHBの数の割合TPRが異常発生間隔発生割合判定値TPRj(20%から34%)よりも大きいことに基づいて、心房細動の判定が適切に行われるので、心房細動の判定精度を向上することができる。
【0055】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、心拍同期波検出装置に対応する、血圧測定に際して生体の一部に巻回されて生体の一部を圧迫する腕帯12、腕帯12の圧迫圧を検出する圧力センサ20、および圧力センサ20から出力される圧迫圧に含まれる脈動成分である脈波を抽出するバンドパスフィルタ42は、圧迫圧の徐速降圧区間内にバンドパスフィルタ42により抽出した脈波を心拍同期波として電子制御装置28へ出力する。このため、血圧測定に際しての脈波PLの周期に基づいて、心房細動の判定を行うことができる。これにより、家庭内での血圧測定によって、日常的に心房細動を検出することができる。
【0056】
また、本実施例の生体の心房細動判定装置10によれば、1回の血圧測定において腕帯12の圧迫圧の徐速降圧区間内に発生したたとえば20拍程度の脈波PLの発生間隔Iが平均されることにより平均発生間隔Iavが算出され、上記1回の血圧測定において腕帯12の圧迫圧の徐速降圧区間内に発生したたとえば20拍程度の脈波PLの数に対する平均発生間隔Iavを中心とする発生間隔判定範囲Iavjに基づいて抽出された不規則脈波IHBの数の割合TPRが予め設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRjよりも大きいと、心房細動発生判定手段56により生体の心房細動の発生が判定される。このため、1回の血圧測定によって、心房細動の発生が判定されることから、心房細動の判定に要する時間を短くすることができる。
【実施例2】
【0057】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において、前記実施例と機能において実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0058】
本実施例の生体の心房細動判定装置60は、前述の実施例1の腕帯12、圧力センサ20およびバンドパスフィルタ42に代えて心電計62を備えており、また電子制御装置64の制御機能の一部が実施例1の電子制御装置28の制御機能と異なっている。以下、実施例1の生体の心房細動判定装置10と異なる点について、図7を用いて説明する。
【0059】
図7は、生体の心房細動判定装置60の構成を示す図であり、電子制御装置64の制御機能の要部が示されている。図7において、生体の心房細動判定装置60(以下、心房細動判定装置60という。)は、心電計62、電子制御装置64および表示器44を備えている。心電計62は、生体の皮膚の所定の部位に装着される複数の電極66と、複数の電極66間に発生する電位を増幅して電位の変化である波計を心電図として出力する増幅器68とを含み、心電図を構成する複数の波(P波、Q波、R波、S波など)のうちのたとえばR波をA/D変換器70を介して心拍同期波として電子制御装置64へ出力する。なお、心電計62は、本発明の心拍同期波検出装置に対応する。
【0060】
電子制御装置64は、前述の実施例1と同様に、平均発生間隔算出手段72、異常発生間隔心拍同期波抽出手段74、異常発生間隔発生割合判定手段76および心房細動発生判定手段78を備えている。
【0061】
図8は、電子制御装置64の制御作動の要部を説明するフローチャートである。平均発生間隔算出手段72の機能に対応するS1において、複数のR波の発生間隔(R波間隔時間)Irを平均した平均発生間隔(R波間隔時間平均値)Iravが算出される。この平均発生間隔Iravは、たとえば血圧測定において圧迫帯の圧迫圧が緩やかに減圧される徐速降圧区間に相当する区間内に検出される複数のR波の発生間隔Irの平均値であり、複数の脈波PLの平均発生間隔Iavに略等しい値となる。異常発生間隔心拍同期波抽出手段74の機能に対応するS2において、各R波の発生間隔Irが、平均発生間隔(R波間隔時間平均値)Iravの±X%以内にないか否か、すなわち発生間隔判定範囲Iravj内にないか否かが判定される。ここで、発生間隔判定範囲Iravjは、前述の実施例1の発生間隔判定範囲Iavjと等しい範囲であり、好適には平均発生間隔Iravの±13%〜±16%の間に設定されている。S2の判定が肯定される場合には、異常発生間隔心拍同期波抽出手段74の機能に対応するS3において、発生間隔判定範囲Iravj内にない発生間隔Irを有するR波が不規則心拍IHBとして抽出され、不規則心拍IHBとしてカウントされる。なお、不規則心拍IHBは、本発明の異常発生間隔心拍同期波に対応する。S3実行後あるいはS2の判定が否定される場合には、異常発生間隔心拍同期波抽出手段74の機能に対応するS4において、複数のR波の全ての発生間隔Iravについて、それらが発生間隔判定範囲Iravj内にないか否かの判定(確認)が終了したか否かが判定される。S4の判定が否定される場合には、再度S2が実行される。S4の判定が肯定される場合には、異常発生間隔発生割合判定手段76の機能に対応するS5において、複数のR波の全ての発生間隔Irの数に対する不規則心拍IHBの数の割合TPR(%)、言い換えれば、全てのR波間隔時間のデータ数に対する不規則心拍IHBの数の割合TPR(%)が、予め実験的に設定された異常発生間隔発生割合判定値TPRrj(%)よりも大きいか否かが判定される。ここで、異常発生間隔発生割合判定値TPRrjは、実施例1の異常発生間隔発生割合判定値TPRjと等しい値であり、好適には20%〜34%の間に設定される。S5の判定が肯定される場合には、心房細動発生判定手段78の機能に対応するS6において、不規則心拍IHBの発生が判定されることにより心房細動の発生が判定されて、表示器44におけるIHBマークの点灯処理が行われる。S6実行後、本フローチャートは終了させられる。S5の判定が否定される場合には、心房細動発生判定手段78の機能に対応するS7において、不規則心拍IHBの発生が判定されないことにより心房細動が発生していないと判定される。S7実行後、本フローチャートは終了させられる。
【0062】
本実施例の心房細動判定装置60によれば、心電計62による心電図の測定の際の複数のR波の発生間隔Irに基づいて、心房細動の発生を精度良く判定することができる。
【実施例3】
【0063】
図9は、本実施例の生体の心房細動判定装置80の構成を示す図である。生体の心房細動判定装置80は、光電脈波検出センサ84、図示しない電子制御装置および表示器を含み、リストバンド型脈拍計82のケース82a内に設けられている。なお、本実施例のリストバンド型脈拍計82は、たとえば時計機能を有しており、現在時刻などが表示器に表示されるようになっている。光電脈波検出センサ84は、電子制御装置から駆動パルス信号を取得するとヘモグロビンによって反射可能な波長帯の赤色光或いは赤外光を生体の表皮に向かって照射する光源である発光チップ86と、生体から反射した光を検出する受光チップ88とを備え、毛細血管内の血液容積に対応する光電脈波信号SM2を心拍同期波としてA/D変換器を介して電子制御装置へ出力する心拍同期波検出装置として機能する。発光チップ86の照射する上記のヘモグロビンによって反射可能な波長帯の光は、好ましくは酸素飽和度によって影響を受けない800nm程度の波長の光である。電子制御装置により、光電脈波信号SM2に基づいて、以下のように生体の心房細動の判定が行われる。すなわち、前述の実施例1と同様に、電子制御装置では、たとえば10秒乃至20秒程度の所定時間内で採取された複数の光電脈波の全ての発生間隔I2を平均した平均発生間隔を中心とする予め設定された発生間隔判定範囲内にない発生間隔I2を有する不規則脈波が抽出され、複数の光電脈波の全ての発生間隔I2の数に対する不規則脈波の数の割合が予め設定された異常発生間隔発生割合判定値よりも大きい場合に、生体の心房細動の発生が判定される。本実施例の心房細動判定装置80によれば、光電脈波検出センサ84によって検出される複数の光電脈波の発生間隔I2に基づいて、生体の心房細動の発生を精度良く判定することができる。
【0064】
以上、本発明の一実施例を図面および表を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【0065】
たとえば、前述の実施例1の生体の心房細動判定装置10によれば、1回の血圧測定において不規則脈波IHBの発生が判定されることにより心房細動の発生が判定されていたが、これに限定されるものではなく、たとえば、3回の血圧測定のうちの2回以上の測定において不規則脈波IHBの発生が判定されることにより、心房細動の発生が判定されてもよい。このようにすれば、より心房細動の判定精度を向上することができる。
【0066】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
10,60,80:生体の心房細動判定装置
12:腕帯(心拍同期波検出装置)
14:自動血圧測定装置
20:圧力センサ(心拍同期波検出装置)
42:バンドパスフィルタ(心拍同期波検出装置)
50,72:平均発生間隔算出手段
52,74:異常発生間隔心拍同期波抽出手段
54,76:異常発生間隔発生割合判定手段
56,78:心房細動発生判定手段(判定手段)
62:心電計(心拍同期波検出装置)
66:電極
68:増幅器
84:光電脈波検出センサ(心拍同期波検出装置)
Iav,Irav:平均発生間隔
Iavj,Iravj:発生間隔判定範囲
IHB:不規則脈波、不規則心拍(異常発生間隔心拍同期波)
TPRj,TPRrj:異常発生間隔発生割合判定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9