特許第6874263号(P6874263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874263
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】緩衝材及び緩衝材を用いた梱包方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/05 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   B65D81/05
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-140577(P2017-140577)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-18895(P2019-18895A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106715
【氏名又は名称】ザ・パック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】石山 重成
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−118759(JP,A)
【文献】 実開昭60−134720(JP,U)
【文献】 特開平8−252879(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3142797(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3194118(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0024324(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0102515(US,A1)
【文献】 特開2011−184107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/00−81/17
B65D 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール箱の内側に被収容物を収容する際に、前記被収容物と段ボール箱との間に配備されることで被収容物に加わる衝撃を緩和する緩衝材であって、
前記緩衝材には、前記段ボール箱の内側に収容されて前記被収容物を下方または上方から保持するパッドが設けられており、
前記パッドは、水平方向に沿った矩形の板状に形成されたパッド本体と、前記パッド本体の四辺にそれぞれ折り返し自在に連結されると共に前記パッド本体の四辺から下方または上方に向かって伸びる折り返し片と、を有しており、
前記パッド本体の四隅には、切り込み線によりパッド中央側から切り離されると共に上下方向に変形を抑制された剛性部が形成されており、
前記パッド本体において互いに隣り合った剛性部の間には、一方の剛性部から他方の剛性部に向かってパッド中央側に湾曲しつつ伸びる折り込み線が形成されており、
前記折り込み線により区切られるパッド本体の中央側に、上方または下方に向かって変形することで前記被収容物を収容する空間を形成可能な変形部が形成されていて、
前記変形部が剛性部により支持されている
ことを特徴とする緩衝材。
【請求項2】
前記折り込み線は、前記パッド本体を構成する段ボールシートの中芯のリブ形成方向に対して交差する方向に伸びるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の緩衝材を用いて段ボール箱の内側に被収容物を梱包するに際しては、
前記段ボール箱の内側に、前記折り返し片が下方を向くと共に折り返し片が段ボール箱の内側面に沿うように前記パッドを収容して下部パッドとし、
前記収容された下部パッドの変形部の上に、前記被収容物を載置し、
前記載置された被収容物の上から、前記下部パッドとは上下反転した状態のパッドを、当該パッドの折り返し片が段ボール箱の内側面に沿うように収容して上部パッドとし、
前記下部パッドの剛性部に対して上部パッドの剛性部が突き合わされるまで、前記上部パッドを下部パッドに押しつけることにより、前記下部パッドの変形部を下方に変形させ
ると共に上部パッドの変形部を上方に向かって変形させて、両変形部の間に形成された空間に前記被収容物を収容する
ことを特徴とする緩衝材を用いた梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、携帯ゲーム機などに代表される薄型矩形などの形状を呈する被収容物を梱包する際に用いられる緩衝材及び緩衝材を用いた梱包方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話、携帯ゲーム機、タブレット、小型ノートパソコンなどの電子機器(薄型矩形の被収容物)を段ボール箱で梱包する際には、これらの被収容物を衝撃から保護できるように気泡緩衝材や段ボールシートを多層に積層した緩衝材などが用いられている。これらの緩衝材は、電子機器と一緒に段ボール箱に同梱され、運搬の際の衝撃から電子機器を保護する構成となっている。
【0003】
このような緩衝材は、近年になって取り扱い数が増加してきた電子機器の買い取りにおいても多用されている。例えば、不要となった携帯電話、携帯ゲーム機、タブレットなどの電子機器を買い取り店舗などに発送する際に、これらの電子機器を収容して運搬するための段ボール箱と一緒に上述した緩衝材が用いられている。
一方、昨今は廃棄物の処理コストを削減するために、梱包資材の量を減らしたいという要望や、梱包資材の種類もできるだけ減らしたいという要望が寄せられており、このような要望は電子機器の買い取りにおいても同様である。つまり、段ボール箱を用いた梱包の場合であれば、箱を形成するものと同じ段ボールのシート原紙で緩衝材を形成し、廃棄物の種類を合わせるのが好ましい。加えて、段ボールのシート原紙で形成する場合には、緩衝材はできる限りコンパクトな構造とするのが良い。
【0004】
このような要望に応えることができる段ボール製の緩衝材としては、次の特許文献1や特許文献2に示すようなものが既に開発されている。
すなわち、特許文献1には、容器本体を構成するものと同じ段ボールのシート原紙から緩衝材を形成した衝撃緩和運搬容器が開示されている。この特許文献1の衝撃緩和運搬容器は、容器本体を構成する紙片を折り曲げて収容物である製品を挟持するものであり、周辺部の側片、該側片によって囲まれた空間部、該側片から製品の側端部を保持するように空間部側へ突出形成した縁片、該縁片の両端部側の該縁片と不連続とされた製品の隅部を押圧保持する製品押圧片及び該空間部全面を被覆する可撓性フィルムにより構成されている。つまり、特許文献1の衝撃緩和運搬容器は、製品押圧片で製品を押圧することで、パソコンのような薄厚で衝撃に弱い製品に加わる運搬時や落下時の衝撃を緩和したり、或いは衝撃が製品に伝わることを防止したりする構成となっている。
【0005】
また、特許文献2にも、容器本体を構成すると同じ段ボールのシート原紙を緩衝材として用いた梱包用の保持パネルが開示されている。この特許文献2の梱包用の保持パネルは、フォトマスクを収納したミクロ製品用のケース、カラーフィルター、エッチング小物製品用の立方体ケース等を確実に保持し得るものであり、これらの物品を振動や衝撃から安全に保護して運搬可能なものとなっている。
【0006】
具体的には、特許文献2の梱包用の保持パネルは、厚紙、段ボール等によりなる基板の4辺に夫々横折曲線又は縦折曲線を設けることによってこれ等の折曲線の外側に夫々折曲起立片を形成し、更にこれ等の折曲線によって囲まれた部分の各4隅部に内方から折曲線の外方に亘ってこれ等の折曲線に直交する如きカギ状切線を穿設して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3142797号公報
【特許文献2】実開昭60−134720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の衝撃緩和運搬容器は、中央側に紙片が存在しない空間部を設けたものとなっており、この空間部には空間部全面を被覆する可撓性フィルムが設けられている。つまり、特許文献1の衝撃緩和運搬容器は、中央側に空間部が存在するため製品押圧片などの支持強度がそもそも弱く、空間部の周囲に存在する縁片や製品押圧片は空間部に突き出た状態で取り付けられているため折れ曲がりやすい。そのため、特許文献1の衝撃緩和運搬容器は、製品を確実かつ安定して保持・運搬できるものではない。
【0009】
また、特許文献1の衝撃緩和運搬容器では、被収容物を確実に収容して運搬するために可撓性フィルムを用いているが、段ボールとは異なるフィルムも破棄物として処理することが必要となるため、廃棄費用を考えて梱包資材の種類を絞り込むことが困難な構成となっている。
さらに、特許文献2の梱包用の保持パネルでは、基板の4辺に夫々形成される横折曲線又は縦折曲線はいずれも直線に近い折れ込み線として形成されており、横折曲線や縦折曲線で囲まれた保持パネルの中央部分が、平坦な面状態を維持したまま下方や上方に突出する構成とされている。そのため、このような保持パネルで、同じように外形が平たい電子機器やサイズが小さい電子機器を運搬しようとした場合、保持パネルの上で電子機器が滑るなどして商品に対する緩衝効果を確実に得られない可能性があった。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、薄型矩形形状などを呈する被収容物を確実に収容して、十分な緩衝効果を発揮させることができる緩衝材及び緩衝材を用いた梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の緩衝材は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の緩衝材は、段ボール箱の内側に被収容物を収容する際に、前記被収容物と段ボール箱との間に配備されることで被収容物に加わる衝撃を緩和する緩衝材であって、前記緩衝材には、前記段ボール箱の内側に収容されて前記被収容物を下方または上方から保持するパッドが設けられており、前記パッドは、水平方向に沿った矩形の板状に形成されたパッド本体と、前記パッド本体の四辺にそれぞれ折り返し自在に連結されると共に前記パッド本体の四辺から下方または上方に向かって伸びる折り返し片と、を有しており、前記パッド本体の四隅には、切り込み線によりパッド中央側から切り離されると共に上下方向に変形を抑制された剛性部が形成されており、前記パッド本体において互いに隣り合った剛性部の間には、一方の剛性部から他方の剛性部に向かってパッド中央側に湾曲しつつ伸びる折り込み線が形成されており、前記折り込み線により区切られるパッド本体の中央側に、上方または下方に向かって変形することで前記被収容物を収容する空間を形成可能な変形部が形成されていて、前記変形部が剛性部により支持されていることを特徴とする。
【0012】
なお、好ましくは、前記折り込み線は、前記パッド本体を構成する段ボールシートの中芯のリブ形成方向に対して交差する方向に伸びるように形成されているとよい。
また、本発明の緩衝材を用いた梱包方法は、上述した緩衝材を用いて段ボール箱の内側に被収容物を梱包するに際しては、前記段ボール箱の内側に、前記折り返し片が下方を向くと共に折り返し片が段ボール箱の内側面に沿うように前記パッドを収容して下部パッドとし、前記収容された下部パッドの変形部の上に、前記被収容物を載置し、前記載置された被収容物の上から、前記下部パッドとは上下反転した状態のパッドを、当該パッドの折り返し片が段ボール箱の内側面に沿うように収容して上部パッドとし、前記下部パッドの剛性部に対して上部パッドの剛性部が突き合わされるまで、前記上部パッドを下部パッドに押しつけることにより、前記下部パッドの変形部を下方に変形させると共に上部パッドの変形部を上方に向かって変形させて、両変形部の間に形成された空間に前記被収容物を収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の緩衝材及び緩衝材を用いた梱包方法によれば、被収容物をその形状や大きさによらず確実に収容して、十分な緩衝効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の緩衝材の使用態様を示した分解図である。
図2】本実施形態の緩衝材に用いられるパッドの斜視図である。
図3】本実施形態の緩衝材に用いられるパッドの展開図である。
図4】本実施形態の緩衝材の前後方向に沿った断面図である。
図5】本実施形態の緩衝材の左右方向に沿った断面図である。
図6】本実施形態の緩衝材と被収容物との関係を示した断面図である。
図7】本実施形態の梱包方法において、被収容物を下部パッドの上に載置した状態を示す図である。
図8】本実施形態の梱包方法において、上部パッドを被収容物の上から載置した状態を示す図である。
図9】本実施形態の梱包方法において、上部パッドの剛性部を、下部パッドの剛性部に突き合わされるまで下方に向かって押し下げた状態を示す図である。
図10】本実施形態の梱包方法において、上部パッドの剛性部を押し下げた場合に発生する変形部の変形状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の緩衝材1及び緩衝材1を用いた梱包方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、本実施形態の緩衝材1が用いられた段ボール箱2を分解して示したものである。
図1に示すように、本実施形態の緩衝材1は、箱状態に組み上げられた段ボール箱シート3の内側に、段ボール箱2の内寸に比べて小さな被収容物Cを、箱側面から距離をあけて収容する際に用いられる。つまり、本実施形態の緩衝材1は、被収容物Cと段ボール箱2との間に配備されることで、段ボール箱2の内側に被収容物Cを動かないように固定するものであり、段ボール箱2からの衝撃が被収容物Cに直接作用しないようにする構成となっている。
【0016】
具体的には、本実施形態の緩衝材1は、段ボール箱2の内側に収容されて、封緘した状態で被収容物Cを上下方向に挟み込んで固定する構成となっている。本実施形態の緩衝材1は、被収容物Cを下方および/または上方から保持するパッド4を有している。
つまり、本発明の緩衝材1は、被収容物Cの上方または下方に1枚だけパッド4を有したものでも良いし、被収容物Cの上方と下方とに1枚ずつ、合わせて2枚のパッド4を有したものでも良い。例えば、被収容物Cの下側には従来の段ボールの緩衝材などを用いておいて被収容物Cの上側だけに上述したパッド4を配備する場合や、逆に被収容物Cの上側には従来の段ボールの緩衝材などを用いておいて被収容物Cの下側だけに上述したパッド4を配備する場合が、本発明の緩衝材1には含まれる。
【0017】
なお、本実施形態では、緩衝材1は、被収容物Cの上側と下側との双方に1枚ずつ、合わせて2枚のパッド4が設けられたものとなっている。
図1に示すように、本実施形態の緩衝材1が用いられる段ボール箱2は、上方に向かって開口した空の段ボール箱シート3と、この段ボール箱シート3の開口から箱内の最下部に差し入れられる下部パッド4Dと、下部パッド4Dの次に箱内に差し入れられて下部パッド4Dの上側に載置される被収容物Cと、被収容物Cが中央下側に位置するように被収容物Cの次に箱内に差し入れられる上部パッド4Uと、を有しており、下部パッド4D、被収容物C、および上部パッド4Uを収容した上で蓋を閉じて封緘したものとなっている。
【0018】
そして、本実施形態の緩衝材1は、上述した上部パッド4Uと下部パッド4Dとを双方有しており、2つのパッド4U、4Dで被収容物Cを上下に挟み込むように保持する構成となっている。これらの上部パッド4U及び下部パッド4Dには全く同じ構成のパッド4が用いられているが、上部パッド4Uと下部パッド4Dとは配備される向きが上下方向で反対向きとなっている。
【0019】
次に、本実施形態の緩衝材1を構成するパッド4について詳しく説明する。
上述した上部パッド4U及び下部パッド4Dに用いられるパッド4は、水平方向に沿った矩形の板状に形成されたパッド本体6と、パッド本体6の四辺にそれぞれ折り返し自在に連結されると共にパッド本体6の四辺から上下いずれかの方向に向かって伸びる折り返し片7と、を有している。つまり、この折り返し片7は、水平方向を向くパッド本体6に対して上下いずれかの方向に向かって折り返されたものとなっている。
【0020】
上述したパッド4の構造がより理解しやすくなるように、図2に示すような下部パッド4Dを例に挙げて説明すれば、下部パッド4Dは、水平方向に沿って配備されたパッド本体6と、パッド本体6の四辺から下方に向かって伸びる4枚の折り返し片7とを有している。このパッド本体6の四隅には、切り込み線8によりパッド中央側6Cから隔離された剛性部9がそれぞれ形成されている。また、パッド本体6において左右方向または前後方向に隣り合った剛性部9の間には、一方の剛性部9から他方の剛性部9に向かって、パッド中央側6Cに近づくように湾曲するように伸びる折り込み線10が形成されている。さらに、この折り込み線10により区切られるパッド本体6の中央側(パッド中央側6C)は、剛性部9に対して上方または下方に向かって変形することが可能とされた部分であり、被収容物Cを収容する空間を形成可能な変形部11とされている。
【0021】
次に、パッド4を構成するパッド本体6、折り返し片7について説明する。
パッド本体6は、段ボール箱2の内部の水平形状(言い換えれば、段ボール箱2の底面の形状)に形成されたの段ボールのシート原紙(段ボールの板紙)で形成されており、水平方向に板面を向けるようにして配備されている。本実施形態の場合であれば、パッド本体6は前後方向よりも左右方向の方が長尺とされた長方形の板状に形成されている。このパッド本体6の四辺、つまり前辺、左辺、後辺、右辺にはそれぞれ折り返し片7が連結されている。
【0022】
折り返し片7は、パッド本体6の四辺から上方または下方に向けて折り曲げ可能とされた紙片であり、上述したパッド本体6の四辺に折り曲げ自在に連結されている。このような折り返し片7をパッド本体6の四辺に設ければ、筺状に組み上げられた段ボール箱シート3の内側にパッド4を差し入れた際に各折り返し片7を折り曲げて入れることが可能となり、折り曲げられた各折り返し片7が箱内面に面状態で接触することで各パッド4を段ボール箱2本体の内側に水平方向に動かないように固定することが可能となる。
【0023】
また、下部パッド4Dの場合は折り返し片7はパッド本体6の四辺から下方に向かって折り曲げられる。上部パッド4Uは下部上下反転させた構造となっており、上部パッド4Uの折り返し片7は、パッド本体6の四辺から上方に向かって伸びるように折り曲げられる。
さらに、折り返し片7は、パッド本体6に連結されている基端に対して、下方に位置する先端の方が狭幅とされている。つまり、図2の前側に位置する折り返し片7の場合であれば、基端(上端)の左右方向に沿った幅よりも、先端(下端)の左右方向に沿った幅の方が狭くなるような形状(台形形状)に形成されている。このように基端に比べて先端の方が狭幅となるような折り返し片7を用いれば、段ボール箱2の内側に緩衝材1を差し入れた場合に、隣り合った折り返し片7同士が折り返し時に緩衝し合うことがなくなり、折り返し片7を箱内面に沿う角度まで支障なく折り返すことが可能となる。
【0024】
さらに、折り返し片7の上下方向に沿った寸法は、段ボール箱2の高さ方向のサイズ(内寸)に対応したものとなっている。つまり、梱包された状態において、下部パッド4Dの場合であれば折り返し片7の下端は段ボール箱2の底面(底内面)に当接しており、上部パッド4Uの場合であれば折り返し片7の上端が段ボール箱2の蓋面(蓋内面)に当接していて、下部パッド4Dの折り返し片7の上下方向に沿った寸法と、上部パッド4Uの折り返し片7の上下方向に沿った寸法とを和算した寸法は、ちょうど段ボール箱2の高さ方向の内寸と等しくなるように設定されている。このように上下パッド4の折り返し片7を合わせた寸法を段ボール箱2本体の高さ方向の内寸と略等しくしておけば、下部パッド4D及び上部パッド4Uを収容した後で蓋を閉じて段ボール箱2を封緘すれば、上下パッド4の折り返し片7が上下方向に並んで蓋部と底部との間に挟み込まれ、下部パッド4D及び上部パッド4Uを段ボール箱2の内部に動かないように固定することが可能となり、被収容物Cを箱壁から離れた段ボール箱2本体の中央側に確実に収容することが可能となる。
【0025】
剛性部9は、パッド本体6の前後左右の四隅に形成された部分であり、被収容物Cを収容した状態で中央側の変形部11が上下方向に変形可能なのに対して、上下方向に変形を規制された構成となっている。
具体的には、剛性部9は、互いに隣り合うと共に平面視でほぼ90度の角度で交差する2つの折り返し片7の縁部と、これら2つの折り返し片7の縁部の間に配備されたパッド本体6の隅部分6S(コーナー部分)と、の3つを組み合わせた構成とされている。これらの3つの紙片は互いに90度の角度で交差し合う構成となっており、3片が互いに直交し合うことで変形部11に対して高い支持強度を発揮できるようになっている。
【0026】
例えば、下部パッド4Dの左前側に形成される剛性部9を例にとれば、前側の折り返し片7の左縁部と、左側の折り返し片7の前縁部と、パッド本体6の左前側の隅部分6Sとが、左前側の剛性部9を形成している。
上述した剛性部9は、3つの紙片を直交状態でつなぎ合わせた構造となっているため、上下のパッド部4U、4Dの剛性部9同士を突き合わせ状態で箱内に収容すれば、段ボール箱2の内側で殆ど動くことがない。そのため、後述する変形部11を安定して支持することができる。
【0027】
上述した剛性部9が形成されるパッド本体6の四隅6Sと、パッド本体6の中央側6Cとの間には切り込み線8が形成されている。この切り込み線8は、パッド本体6を厚み方向に貫通すると共に水平方向に連続するように切断するものであり、パッド本体6を中央側6Cと四隅側6Sとに隔離する構成となっている。つまり、下部パッド4Dの左前側に形成される切り込み線8の場合であれば、パッド本体6を上方から見た場合に略L字状となるような切り込み線8が形成されており、この切り込み線8を介して左前側の剛性部9と中央側の変形部11とが2つの互いに独立した区画に隔離されている。また、下部パッド4Dの右前側に形成される切り込み線8の場合であれば、左前側の切り込み線8を反転したような切り込み線8が形成されており、この切り込み線8を介して右前側の剛性部9と中央側の変形部11とが2つの互いに独立した区画に隔離されている。
【0028】
また、上述した切り込み線8は、パッド本体6の外縁を越えて折り返し片7まで延設されている。具体的には、下部パッド4Dの左前側に形成される切り込み線8の場合であれば、前側の折り返し片7の左端側に正面視で略L字状となるように延設されており、前側の折り返し片7の左端側で終端している。また、左側の折り返し片7の前端側に側面視で略L字状となるように延設されており、左側の折り返し片7の前端側で終端している。そして、上述したパッド本体6の表面に形成された切り込み線8は、一方の折り返し片7の終端からもう一方の折り返し片7の終端まで連続して1本の線分となるように繋がっている。
【0029】
上述した2つの折り返し片7と、これらの折り返し片7に跨るパッド本体6と、の3部材に跨るように伸びる切り込み線8により、剛性部9は、前側の折り返し片7、パッド本体6の中央側6C、及び左側の折り返し片7から隔離されており、パッド本体6の中央側6Cに形成された変形部11が剛性部9に対して変形することを可能としている。
ところで、上述したように、パッド本体6の表面には、一方の剛性部9から他方の剛性部9に向かって、パッド中央側6Cに近づくように湾曲しつつ伸びる「折り込み線10」が形成されている。この「折り込み線10」が本願における最も特徴的な構成である。
【0030】
そして、この折り込み線10により区切られるパッド本体6の中央側6Cは、四隅に形成される剛性部9に対して上方または下方に向かって変形することが可能とされた変形部11とされており、被収容物Cを収容する空間を形成可能とされている。本発明の緩衝材1は、このような折り込み線10と変形部11とを設けることで、被収容物Cをその形状や大きさによらず確実に収容して、十分な緩衝効果を得ることを特徴としている。
【0031】
次に、本発明の緩衝材1の特徴である折り込み線10及び変形部11について詳しく説明する。
図3に示す展開図からわかるように、折り込み線10は、パッド本体6において互いに隣り合った剛性部9の間に形成されるものである。つまり、剛性部9を画成する切り込み線8の略L字状に曲がったコーナー付近から、隣り合った剛性部9を画成する切り込み線8の略L字状に曲がったコーナー付近までを結ぶものとなっている。詳しくは、コーナーの略頂部(曲率半径が最も小さくなった部分)から、前記コーナーに隣接するコーナーの略頂部を結ぶように、折り込み線10が形成されている。
【0032】
なお、図3には、組み付け前の緩衝材1(平面状の緩衝材1)の正面図、右側面図、底面図を記しているが、背面図は正面図と同じ形状であり、左側面図は右側面図と同じであり、平面図は底面図と同じ形状を呈している。
本実施形態の場合、折り込み線10は、左前側の剛性部9と右前側の剛性部9との間を結ぶものと、左後側の剛性部9と右後側の剛性部9との間を結ぶものとの2本で構成されており、いずれも左右方向に沿ったものとなっている。
【0033】
言い換えれば、本実施形態のパッド本体6は、図3に示すように前後方向に沿って中芯のリブ12を形成したものとなっており、上述した折り込み線10は中芯のリブ12形成方向に対して交差する方向に伸びるように形成されている。このように折り込み線10を中芯のリブ12形成方向に対して交差する方向に形成すれば、リブ12の形成方向に邪魔されてパッド本体6が誤った方向に折り返されることがなくなる。
【0034】
これら2本の折り込み線10は、いずれも長手方向の両端側に比べて中途側がパッド本体6の中心(中央)に近づくように、なだらかに湾曲し形状に形成されている。また、2本の折り込み線10の湾曲方向は、前側の剛性部9同士を左右に結ぶものでは後方に向かって膨らむように湾曲し、後側の剛性部9同士を左右に結ぶものでは前方に向かって膨らむように湾曲していて、湾曲方向が2本の折り込み線10同士の間で反対向きとなっている。
【0035】
さらに、折り込み線10は、上述した切り込み線8とは異なり、破線で形成されている。つまり、この折り込み線10は、パッド本体6の折り返しを補助または促進するために用いられるものであり、線を挟んだ一方側と他方側とを隔離するものではない。そのため、折り込み線10は、切り込み線8のように連続した破断線とする必要はない。
なお、折り込み線10の破線間隔を、広く設定するか、狭く設定するかは、緩衝材1に用いる段ボールシートの厚みや構造(シングル、ダブルなどの積層構造)に左右されるが、一般に切断された部分の長さが10mm〜30mm、切断されていない部分の長さが10mm〜30mmとされ、これらの切断された部分と切断されていない部分とが交互に設けられる破線を用いるのが良い。
【0036】
また、上述したように左右方向や前後方向に隣り合った剛性部9の間には、変形部11の変形を補助する変形補助線13が形成されている。この変形補助線13は、折り返し片7の両端に形成された切り込み線8の終端同士を直線的に結ぶ第1補助線13aと、パッド本体6と折り返し片7との境界に沿って形成される第2補助線13bと、を有している。
【0037】
例えば、前側の折り返し片7を例に挙げれば、前側の折り返し片7の左端側には、左前側の剛性部9を画成する切り込み線8が終端しており、前側の折り返し片7の右端側には、右前側の剛性部9を画成する切り込み線8が終端している。そして、この左端側の切り込み線8の終端と、右端側の切り込み線8の終端との間は、上述した第1補助線13aで結ばれている。
【0038】
なお、上述した第1補助線13aや第2補助線13bは必ず形成される必要はなく、一方の補助線のみであっても良い。例えば、本実施形態の場合であれば、パッド本体6の周囲に形成される四辺のうち、前側や後側の折り返し片7には第1補助線13aも第2補助線13bも形成されるが、左側や右側の折り返し片7には第2補助線13bしか形成されていない。
【0039】
これらの変形補助線13は、上述した湾曲した折り込み線10と同様な破線、あるいは単に製函機などで直線状の折れ込み癖をつけた線で構成されている。このような変形補助線13を、折り込み線10に加えて形成すれば、パッド本体6の中央側6Cに設けられる変形部11が剛性部9に対してより変形しやすくなり、被収容物Cを収容可能な空間をより確実に形成することが可能となる。
【0040】
変形部11は、折り込み線10及び変形補助線13により区切られるパッド本体6の中央側6Cに形成される部分である。この変形部11は、折り込み線10及び変形補助線13を境にパッド本体6の中央側6Cを上方や下方に向かって押し込むことで、上方または下方に向かって半球面状に変形した部分として形成されており、被収容物Cを収容するスペースを確保可能となっている。
【0041】
具体的には、図2に示す下部パッド4Dの変形部11の場合であれば、変形部11は、上述した前後2本の折り込み線10の間に挟まれた部分として形成され、折り込み線10及び変形補助線13を境にパッド本体6の中央側6Cを下方に向かって押し下げた際に下方に向かって凹面状に窪むように変形する部分となっている。
なお、図2の下部パッド4Dでは変形部11は下方に向かって湾曲する部分となるが、下部パッド4Dとは上下逆向きに箱内に収容される上部パッド4Uでは、変形部11は上方に向かってドーム状に湾曲する部分となる。そして、上方に向かって湾曲する上部パッド4Uの変形部11と、下方に向かって湾曲する下部パッド4Dの変形部11の間には、被収容物Cを収容可能な空間が上下方向に形成されることになる。
【0042】
図6に示すように、変形部11の変形により形成される被収容物Cの空間(収容空間)は、左右方向に沿って切断した断面がラグビーボール状を呈する空間として形成される。
つまり、パッド本体6の前後方向の中間を、左右方向に沿って切断した図6のD-D断面では、左右方向の両端に近いほど下側の変形部11から上側の変形部11までの高さが低く、左右方向の中央側に近いほど下側の変形部11から上側の変形部11までの高さが高くなっている。つまり、上述した空間は、空間の外周側では高さが低く中央側では高さが高くなっていて、空間の中央側に被収容物Cを収容可能な空間を形成可能となっている。
【0043】
また、パッド本体6の前側を、左右方向に沿って切断した図6のE-E断面では、左右方向のどの位置でも、上下方向の内寸が被収容物Cの高さよりが低くなっており、空間内に一度収容された被収容物Cを空間外に取り出す隙間は空間の前側にも後側にも存在しない。
そのため、上述した緩衝材1を用いれば、湾曲した折り込み線10を境に上方に折り返された上部パッド4Uの変形部11と、湾曲した折り込み線10を境に下方に折り返された下部パッド4Dの変形部11との間に、被収容物Cを収容可能な空間が確実に形成されるため、被収容物Cをその形状や大きさによらず確実に収容することが可能となり、また被収容物Cを上部パッド4Uと下部パッド4Dとの間に挟み込むことができるため、梱包状態で十分な緩衝効果を得ることも可能となる。
【0044】
次に、上述した緩衝材1を用いた被収容物Cの梱包方法について説明する。
上述した緩衝材1を用いて段ボール箱2の内側に被収容物Cを梱包するに際しては、まず内部に被収容物Cが入れられていない(空状態の)段ボール箱シート3を用意する。この段ボール箱シート3は、底部が既に組み立てられていて、蓋部の組立のみが実施されていない状態(蓋部の組立を残して製函が完了している状態)となっている。このような組み立てがほぼ完了している段ボール箱シート3の上端には、上方に向かって開口した開口部が形成されている。
【0045】
なお、以降の説明で使用する図7図9においては、段ボール箱2(外装箱)の前側側壁と左側側壁を展開した状態で記しているが、これはあくまでも説明を容易にするためであり、実際には、段ボール箱2(外装箱)は立方体乃至は直方体形状であり、側壁は立設した状態となっている。
図7に示すように、上述した組み立てがほぼ完了している段ボール箱シート3に被収容物Cを梱包する際には、まず段ボール箱シート3の内側にパッド4を差し入れる。このとき、差し入れるパッド4の折り返し片7が下方を向くように、パッド4を差し入れる。このようにして収容されたパッド4は、折り返し片7が段ボール箱2の内側面に沿うように下方に折り返されており、箱内で水平方向に動くことがない。このようにして最初に箱内に収容されたパッド4が、下部パッド4Dとなる。
【0046】
次に、収容された下部パッド4Dの中央側、言い換えれば下部パッド4Dの変形部11の上に、被収容物Cを載置する。このとき、被収容物Cが下部パッド4Dの表面に形成された2本の折り込み線10の間に必ず入るように、被収容物Cを載置する。このようにして被収容物Cが載置されたら、さらに載置された被収容物Cの上から、下部パッド4Dとは上下反転した向きにパッド4(2番目のパッド4)を差し入れる。このようにして収容された2番目のパッド4は、折り返し片7が段ボール箱2の内側面に沿うように上方に折り返されており、箱内で水平方向に動くことがない。このようにして2番目に箱内に収容されたパッド4が、上部パッド4Uとなる。
【0047】
図8に示すように、上部パッド4Uと下部パッド4Dとが差し入れられた状態では、上部パッド4Uの上端は被収容物Cの厚み(上下方向に沿った寸法)の分だけ段ボール箱シート3の上端から上方に突出している。
そこで、上部パッド4Uの剛性部9を上方から下方に向かって、上部パッド4Uの剛性部9が下部パッド4Dの剛性部9に突き合わされるまで押し下げる。このとき、上下パッド4の剛性部9は上下方向に離間しており、上下方向に両部材の距離を詰められるだけの余裕が残っている。しかし、被収容物Cが載置された中央側には上下方向に隙間がなく、上下方向に両部材の距離を詰められるだけの余裕は残っていない。
【0048】
それゆえ、下部パッド4Dの剛性部9に対して上部パッド4Uの剛性部9が突き合わされるまで上部パッド4Uを押し下げると、パッド本体6の中央側に位置する変形部11に上下方向に沿って変形部11を変形させる力が発生する。この力は、上部パッド4Uの変形部11に対しては上方に、また下部パッド4Dの変形部11に対しては下方に加わる。
このように変形部11に力が作用すると、下部パッド4Dにおいては折り返し線及び変形補助線13を境に変形部11が下方に向かって変形し、上部パッド4Uにおいては折り返し線及び変形補助線13を境に変形部11が上方に向かって変形する。つまり、前後方向に沿った断面の場合、下部パッド4Dでは、パッド本体6の中央側は、第1補助線13a及び第2補助線13bの2本の変形補助線13を境に下方に向かって折れ曲がると共に、折り返し線を境に上方に向かって折れ曲がる。また、左右方向に沿った断面の場合、下部パッド4Dでは、パッド本体6の中央側は、第2補助線13bを境に下方に向かって折れ曲がる。このようにして変形部11が下方に向かって半球状(凹面状)に変形する。
【0049】
そして、上部パッド4Uでは、下部パッド4Dとは逆に下方に力が作用するため、変形や折り返しの方向も逆となる。その結果、変形部11が上方に向かってなだらかなドーム状に変形する。
このようにして両変形部11の間に形成された空間に被収容物Cを収容することが可能となる。
【0050】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、被収容物Cの数は1個であったが、それ以上の数を収容できるようにしてもよい。例えば、2つの被収容物Cを収容する場合は、2つの被収容物Cを重ねた上で、下部パッド4Dと上部パッド4Uで挟み込むようにしてもよい。また、下部パッド4Dのパッド本体6の中央側に被収容物Cを収納可能な袋体を形成し、合わせて、上部パッド4Uのパッド本体6の中央側に被収容物Cを収納可能な袋体を形成しておき、それぞれの袋体に被収容物Cを収納することで、2つの被収容物Cを収容可能としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 緩衝材
2 段ボール箱
3 段ボール箱シート
4 パッド
4D 下部パッド
4U 上部パッド
6 パッド本体
6C パッド本体のパッド中央側
6S パッド本体の隅部分
7 折り返し片
8 切り込み線
9 剛性部
10 折り込み線
11 変形部
12 中芯のリブ
13 変形補助線
13a 変形補助線の第1補助線
13b 変形補助線の第2補助線
C 被収容物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10