(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記一般式(1)で表される化合物を合成する方法であって、下記工程(I)及び(II)を含むことを特徴とする方法。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R
1、R
2、R
3、及びR
4の炭化水素基の炭素数の合計が、8〜64である。)
工程(I)
ニトリロ三酢酸(i)を無水化してニトリロ三酢酸無水物(ii)を得、これにジアルキルアミンNHR
1R
2を反応させて、ニトリロ三酢酸誘導体(iii)を得る工程。
【化2】
工程(II)
ニトリロ三酢酸誘導体(iii)を無水化してニトリロ三酢酸誘導体無水物(iv)を得、これにジアルキルアミンNHR
3R
4を反応させて一般式(1)で表される化合物を得る工程。
【化3】
工程(I)及び工程(II)において、ニトリロ三酢酸(i)又はニトリロ三酢酸誘導体(iii)に対し、2〜6当量の無水化剤を反応させる、請求項1又は2に記載の方法。
工程(I)及び工程(II)において、ニトリロ三酢酸(i)又はニトリロ三酢酸誘導体(iii)を無水化したのちに未反応の無水化剤を減圧留去する操作を行う、請求項1〜3
のいずれか一項に記載の方法。
工程(I)及び工程(II)において、ニトリロ三酢酸(i)又はニトリロ三酢酸誘導体(iii)の無水化反応に使用される溶媒がピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはこれらの混合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
工程(I)及び工程(II)において、ニトリロ三酢酸無水物(ii)又はニトリロ三酢酸誘導体無水物(iv)に対し、1.0〜1.1当量のジアルキルアミンを反応させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
レアメタルや貴金属といった有価金属は、幅広い産業分野で利用されており、資源に乏しい我が国にとって、有価金属を安定的に確保することは非常に重要である。
有価金属を分離・回収・精製する方法としては、溶媒抽出法が主に利用されており、溶媒抽出法においてはリン酸系抽出剤、カルボン酸系抽出剤、オキシム系抽出剤といった工業用抽出剤が利用されている。代表的なリン酸系抽出剤としては、ホスホン酸エステルであるジ(2−エチルヘキシル)リン酸やその類似体である2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステルが、カルボン酸系抽出剤としては、ネオデカン酸が、オキシム系抽出剤としては、2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムや5,8−ジエチル−7−ヒドロキシ−6−ドデカオキシムが知られている。
【0003】
さらに、本発明者は、近年、特定のテトラアルキルニトリロ酢酸ジアセトアミド化合物又はその塩が金属元素を抽出するための抽出剤として非常に好適であることを見出した(例えば、特許文献1、2及び3参照)。しかし、それらの抽出剤は合成方法が複雑で、製造コストが高く、現状ではコストパフォーマンスが良いとは言いがたい。
【0004】
既知のテトラアルキルニトリロ酢酸ジアセトアミド化合物の合成方法として、下記(a)〜(c)の工程を含む製造方法が挙げられる。
(a)2−ハロゲン化アセチルハライドに対するジアルキルアミンの求核置換反応によって、2−ハロゲノ−N,N−ジアルキルアセトアミドを得る工程。
【化1】
(b)2−ハロゲノ−N,N−ジアルキルアセトアミドに対するイミノジ酢酸の求核置換反応によって、ニトリロ三酢酸誘導体を得る工程。
【化2】
(c)ニトリロ三酢酸誘導体の1つのカルボキシル基をジアルキルアミンでアミド化することによって、テトラアルキルニトリロ酢酸ジアセトアミド化合物を得る工程。
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。
但し、R
1、R
2、R
3、及びR
4の炭化水素基の炭素数の合計が、8〜64である。)
【0005】
この合成方法において反応溶媒に用いられるジクロロメタンは、化審法、労働安全衛生法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、PRTR法などに規定された有害な物質であり、使用しないことが好ましい。また、塩化クロロアセチルは医薬用外劇物に区分され、反応性が高すぎるため、強い刺激性や腐食性がある。水と激しく反応して強い発熱を起こし、塩化水素が生じるため、使用しないことが好ましい。また、縮合剤である水溶性カルボジイミド(WSC)は、高価な薬品であるため、それを原料として合成されたテトラアルキルニトリロ酢酸ジアセトアミドの製造コストは高くなる。このことは、抽出分離性能が優れているため抽出分離工程の効率化の効果が大きい反面、金属抽出剤コストが高価となるため、全体的なコストダウンには結びつかないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0013】
本発明の方法で得られる化合物又はその塩は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化7】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R
1、R
2、R
3、及びR
4の炭化水素基の炭素数の合計が、8〜64である。)
【0014】
なお、「その塩」とは、一般式(1)で表される化合物とイオン等によって形成される塩を意味し、塩を形成するためのイオンの種類は特に限定されないものとする。
【0015】
例えば、一般式(1)で表される化合物から形成される塩の種類としては、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0016】
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表しているが、「炭化水素基」とは、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。
R
1、R
2、R
3、及びR
4の炭化水素基の炭素数の合計は、8〜64であるが、好ましくは16以上、より好ましくは24以上であり、好ましくは56以下、より好ましくは48以下である。
R
1、R
2、R
3、及びR
4の炭化水素基のそれぞれの炭素数は、通常2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、通常16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
【0017】
R
1、R
2、R
3、R
4としては、エチル基(−C
2H
5)、n−プロピル基(−
nC
3H
7)、i−プロピル基(−
iC
3H
7)、n−ブチル基(−
nC
4H
9)、t−ブチル基(−
tC
4H
9)、n−ペンチル基(−
nC
5H
11)、n−ヘキシル基(−
nC
6H
13)、n−ヘプチル基(−
nC
7H
15)、n−オクチル基(−
nC
8H
17)、2−エチルヘキシル基(−CH
2CH(C
2H
5)C
4H
9)、n−ノニル基(−
nC
9H
19)、n−デシル基(−
nC
10H
21)、n−ウンデシル基(−
nC
11H
23)、n−ドデシル基(−
nC
12H
25)、n−トリデシル基(−
nC
13H
27)、n−テトラデシル基(−
nC
14H
29)、n−ペンタデシル基(−
nC
15H
31)、n−ヘキサデシル基(−
nC
16H
33)、シクロへキシル基(−
cC
6H
11)、フェニル基(−C
6H
5)、ナフチル基(−C
10H
7)等が挙げられる。この中でも、n−ヘキシル基(−
nC
6H
13)、n−オクチル基(−
nC
8H
17)、2−ジエチルヘキシル基(−CH
2CH(C
2H
5)C
4H
9)、n−デシル基(−
nC
10H
21)、n−ドデシル基(−
nC
12H
25)等が特に好ましい。
【0018】
一般式(1)の化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化8】
【0019】
本発明の製造方法は、下記(I)及び(II)の工程を含む。
【0020】
(I)ニトリロ三酢酸を無水化してニトリロ三酢酸無水物を得、これにジアルキルアミンNHR
1R
2を反応させて、ジアルキルアミンの求核置換反応によって、ニトリロ三酢酸誘導体を得る工程。
【化9】
【0021】
(II)ニトリロ三酢酸誘導体を無水化してニトリロ三酢酸誘導体無水物を得、これにジアルキルアミンNHR
3R
4を反応させて、1つのカルボキシル基をジアルキルアミンでアミド化することによって、テトラアルキルニトリロ酢酸ジアセトアミドを得る工程。
【化10】
【0022】
なお、ジアルキルアミンNHR
1R
2及びジアルキルアミンNHR
3R
4の種類は一般式(1)におけるR
1、R
2、R
3、R
4に応じて適宜選択することができるが、例えば
、下記で表される化合物が例示され、市販されている化合物を使用してもよいし、合成して使用してもよく、ジアルキルアミンの種類を選択することで、一般式(1)に該当する幅広い化合物を製造することができる。
【化11】
【0023】
<工程(I)>
工程(I)では、原料であるニトリロ三酢酸(i)を無水化剤と反応させることで無水化を行い、その後、好ましくは、未反応の無水化剤及びその反応残分(反応溶媒、及び反応で生成した無水化剤の加水分解生成物)などを減圧留去し、得られたニトリロ三酢酸無水物(ii)とジアルキルアミン(NHR
1R
2)を反応させ、ニトリロ三酢酸誘導体(iii)を得る。
【0024】
工程(I)における無水化反応は、反応温度が室温以上、反応時間が1時間以上で反応させることが好ましい。
反応温度が高いほど、反応速度が増大するが、副生成物も生成しやすくなる。実際、反応温度が高いと、反応溶液が茶色、ひどい時は黒色へと変化することがある。そのため、反応温度は室温(例えば20℃)〜40℃が好ましい。
反応時間が1時間未満の場合、反応が十分な反応率に到達しないため、反応時間は好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜5時間である。
【0025】
無水化剤はニトリロ三酢酸(i)を無水化してニトリロ三酢酸無水物(ii)に変換することのできる無水化剤であれば特に制限されないが、無水化剤を用いた反応後に、未反応の無水化剤及び反応で生成した無水化剤の加水分解生成物を減圧留去するためには、低沸点のものが好ましい。例えば、無水酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸またはこれらの混合物が挙げられる。この方法を用いれば、水洗浄により無水化剤を除去する必要が無く、合成工程の簡略化を図ることができる。つまり、精製することなく、次の合成工程へ進むことができる。無水化剤が残留していると、次の合成工程で使用するジアルキルアミンと反応してしまうため、無水化剤を完全に減圧留去することが好ましい。
【0026】
無水化剤の量については、ニトリロ三酢酸(i)に比べて大過剰であれば、反応は進みやすくなるが、その場合、減圧留去に長時間を要する。一方、無水化剤の量はニトリロ三酢酸(i)に比べて等量程度の場合、反応が進行しにくくなる。そのため、無水化剤の量は、ニトリロ三酢酸(i)の2〜6当量であることが好ましく、3〜5当量であることがより好ましい。
【0027】
反応溶媒は、ニトリロ三酢酸(i)及び無水化剤を溶解する溶媒であればよいが、低沸
点のものが好ましい。例えば、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドまたはこれらの混合物が挙げられるが、この中では、無水化反応の触媒としても機能するピリジンがより好ましい。
【0028】
減圧留去における温度は、真空度に依存するが、温度が高いほど副生成物が生成し、生成物が茶色、ひどい時は黒色へと変化することがある。そのため、十分な真空度の下、なるべく低温(例えば、50〜70℃)で減圧留去を行うことが好ましい。
【0029】
工程(I)における、ジアルキルアミンによる求核置換反応は、反応温度が室温以上、反応時間が8時間以上で反応させることが好ましい。
反応温度が高いほど、反応速度が増大するが、副生成物も生成しやすくなるため、反応温度は室温(例えば20℃)〜50℃が好ましい。
反応時間が5時間未満の場合、反応が十分な反応率に到達しないため、反応時間は好ましくは8〜20時間、より好ましくは10〜18時間である。
【0030】
ジアルキルアミンの量については、工程(I)で得られたニトリロ三酢酸無水物(ii)に対し1.0当量以上が好ましく、1.0〜1.1当量であることがより好ましい。1.0当量未満の場合、未反応のニトリロ三酢酸無水物(ii)及び、その加水分解生成物であるニトリロ三酢酸(i)が相当量残留するので、最終生成物を金属抽出剤として使用する場合、ニトリロ三酢酸無水物(ii)及びニトリロ三酢酸(i)が残留した金属抽出剤を用いて溶媒抽出を行うことになり、抽出が阻害され、十分な抽出分離性能が得られないという問題が生じうる。一方、1.1当量より多い場合、未反応のジアルキルアミンが残留する。ジアルキルアミンは溶媒抽出に影響しない場合もあるが、過剰に用いる意味が無く、また、合成原料コストが高くなることから、1.1当量以下が好ましい。
【0031】
反応溶媒は、ニトリロ三酢酸(i)から生成したニトリロ三酢酸無水物(ii)及びジアルキルアミンを溶解し、反応を阻害しない溶媒であれば良い。例えば、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドが挙げられ、DMFがより好ましい。
【0032】
なお、高純度の生成物が必要であれば、酸・塩基による中和反応やアセトンのような貧溶媒を用いて再沈殿により精製することが可能である。しかし、コストを安くしたい場合、あるいは不純物が溶媒抽出に影響しない場合は、精製工程を省くことができる。
【0033】
<工程(II)>
工程(II)では、工程(I)で得られたニトリロ三酢酸誘導体(iii)を工程(I)と同様に無水化剤と反応させることで無水化を行い、その後、好ましくは未反応の無水化剤及びその反応残分(反応溶媒、及び反応で生成した無水化剤の加水分解生成物)などを減圧留去することで得られたニトリロ三酢酸誘導体無水物(iv)とジアルキルアミンNHR
3R
4を反応させ、テトラアルキルニトリロ酢酸ジアセトアミド化合物(1)を得る。
【0034】
工程(II)における、無水化反応は、反応温度が室温以上、反応時間が1時間以上で反応させることが好ましい。
反応温度が高いほど、反応速度が増大するが、副生成物も生成しやすくなるため、反応温度は室温(例えば20℃)〜40℃が好ましい。
反応時間が1時間未満の場合、反応が十分な反応率に到達しないため、反応時間は1時間以上が好ましい。
【0035】
無水化剤はニトリロ三酢酸誘導体(iii)を無水化してニトリロ三酢酸誘導体無水物
(iv)に変換することのできる無水化剤であれば特に制限されないが、無水化剤を用いた反応後に、未反応の無水化剤及び反応で生成した無水化剤の加水分解生成物を減圧留去するためには、低沸点のものが好ましい。例えば、無水酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸またはこれらの混合物が挙げられる。この方法を用いれば、水洗浄により無水化剤を除去する必要が無く、合成工程の簡略化を図ることができる。つまり、精製することなく、次の合成工程へ進むことができる。無水化剤が残留していると、次の合成工程で使用するジアルキルアミンと反応してしまうため、無水化剤を完全に減圧留去することが好ましい。
【0036】
無水化剤の量については、(I)の工程で得られたニトリロ三酢酸誘導体(iii)に比べて大過剰であれば、反応は進みやすくなるが、その場合、減圧留去に長時間を要する。一方、無水化剤の量はニトリロ三酢酸誘導体(iii)に比べて等量程度の場合、反応が進行しにくくなる。そのため、無水化剤の量は、ニトリロ三酢酸誘導体(iii)の2〜6当量であることが好ましく、3〜5当量であることがより好ましい。
【0037】
反応溶媒は、ニトリロ三酢酸誘導体(iii)及び無水化剤を溶解する溶媒であればよいが、低沸点のものが好ましい。例えば、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドまたはこれらの混合物が挙げられるが、この中では、無水化反応の触媒としても機能するピリジンがより好ましい。
【0038】
減圧留去における温度は、真空度に依存するが、温度が高いほど副生成物が生成しやすくなる。そのため、十分な真空度の下、なるべく低温(例えば、50〜70℃)で減圧留去を行うことが好ましい。
【0039】
工程(II)における、ジアルキルアミンによる求核置換反応は、反応温度が室温以上、反応時間が8時間以上で反応させることが好ましい。
反応温度が高いほど、反応速度が増大するが、副生成物も生成しやすくなるため、反応温度は室温(例えば20℃)〜50℃が好ましい。
反応時間が5時間未満の場合、反応が十分な反応率に到達しないため、反応時間は好ましくは8〜20時間、より好ましくは10〜18時間である。
【0040】
ジアルキルアミンの量については、工程(II)で得られたニトリロ三酢酸誘導体無水物(iv)に対し1.0当量以上が好ましく、1.0〜1.1当量であることがより好ましい。1.0当量未満の場合、未反応のニトリロ三酢酸誘導体無水物(iv)及び、その加水分解生成物であるニトリロ三酢酸誘導体(iii)が相当量残留するので、最終生成物を金属抽出剤として使用する場合、ニトリロ三酢酸誘導体無水物(iv)及びニトリロ三酢酸誘導体(iii)が残留した金属抽出剤を用いて溶媒抽出を行うことになり、抽出効率の低下など、溶媒抽出に悪影響を及ぼしうる。一方、1.1当量より多い場合、未反応のジアルキルアミンが残留する。ジアルキルアミンは溶媒抽出に影響しない場合もあるが、過剰に用いる意味が無く、また、合成原料コストが高くなることから、1.1当量以下が好ましい。
【0041】
反応溶媒は、ニトリロ三酢酸誘導体(iii)から生成したニトリロ三酢酸誘導体無水物(iv)及びジアルキルアミンを溶解し、反応を阻害しない溶媒であれば良い。例えば、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドが挙げられ、DMFがより好ましい。
【0042】
テトラアルキルニトリロ酢酸ジアセトアミドを用いた金属の溶媒抽出に使用する有機溶媒がニトリロ三酢酸誘導体無水物(iv)及びジアルキルアミンを溶解する場合は、この有機溶媒を反応溶媒として使用することが可能で、反応後、得られた金属抽出剤を含む溶
液を、そのまま、又は所定の金属抽出剤濃度に調整することで、溶媒抽出の有機相として用いることができる。一方、反応媒体が水溶性の場合は、反応後に反応媒体を減圧留去する必要がある。
【0043】
なお、高純度の生成物が必要であれば、生成物を溶媒抽出に使用する有機溶媒に溶解させ、酸や水を用いて洗浄することが可能である。洗浄後、金属抽出剤(テトラアルキルニトリロ酢酸ジアセトアミド)を含む溶液を、そのまま、又は所定の金属抽出剤濃度に調整することで、溶媒抽出の有機相として用いることができる。コストを安くしたい場合、あるいは不純物が溶媒抽出に影響しない場合は、精製工程を省くことができる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0045】
<実施例1:テトラオクチルニトリロ酢酸ジアセトアミド(TONTADA)の合成>
下記反応式で表される反応によって、2,2’−(2−(ジオクチルアミノ)−2−オクソエチルアザンジイル)二酢酸(以下、「DONTAMA」と略す場合がある。)を合成した。
【化12】
ニトリロ三酢酸9.75g(0.05 mol)、溶媒としてピリジン30mL(0.
37 mol)、無水化剤として無水酢酸20.6 g(0.2mol)を混合し、40℃で5時間反応を行った。その後、60℃まで加熱し、過剰の無水酢酸、ピリジン、及び反応で生成した酢酸を減圧留去した。得られたニトリロ三酢酸無水物に50mLのジメチルホルムアミド(DMF)を加え、完全に溶解した後に、ジオクチルアミン12.32g(0.05 mol)を加え、50℃で15時間反応を行った。その後、75℃まで加熱し
、溶媒を減圧留去した。生じた生成物に水130mLと5mol/L 水酸化ナトリウム
水溶液20mL(OH
−0.1 mol)を加えて完全に溶解した後に、室温で攪拌しな
がら3mol/L 塩酸37mL(H
+0.111 mol)を加え、生じた沈殿物をろ
過により回収した。さらに水100mLで洗浄を行い、余分な酸を取り除いた。次にアセトン100mLを加え、加熱により完全に生成物を溶解した後に、冷却することで生成物を再沈殿させ、ろ過により回収した。得られた白色粉末を核磁気共鳴法(NMR)を用いて同定したところ、2,2’−(2−(ジオクチルアミノ)−2−オクソエチルアザンジイル)二酢酸(DONTAMA)であることを確認した。
【0046】
下記反応式で表される反応によって、テトラオクチルニトリロ酢酸ジアセトアミド(以下、「TONTADA」と略す場合がある。)を合成した。
【化13】
合成したDONTAMA4.2g(0.01 mol)、溶媒としてピリジン6mL(
0.075 mol)、無水化剤として無水酢酸4.1 g(0.04mol)を混合し、40℃で20時間反応を行った。その後、70℃まで加熱し、過剰の無水酢酸、ピリジン、及び反応で生成した酢酸を減圧留去した。得られたDONTAMAの無水物に15mLのジメチルホルムアミド(DMF)を加え、完全に溶解した後に、ジオクチルアミン2.5g(0.01 mol)を加え、50℃で17時間反応を行った。その後、75℃まで
加熱し、溶媒を減圧留去した。適切な有機溶媒に再溶解させた後、1mol/L塩酸100mLで3回、超純水100mLで3回分液を行い、溶媒を完全に減圧留去した。得られた合成物を核磁気共鳴法(NMR)を用いて同定したところ、テトラオクチルニトリロ酢酸ジアセトアミド(TONTADA)であることを確認した。なお、
図1に
1H NMR
の結果を示す。
1H NMR(400MHz,CDCl
3,25℃): δ 0.88(m,12H,CH
3),1.27(s,40H,CH
3(CH
2)
5),1.52(m,8H,CH
2CH
2N),3.10(t,4H,CH
2N),3.30(t,4H,CH
2N),3.48(s,2H,NCH
2COOH),3.68(s,4H,NCH
2C=O).