(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るトンネル支保工10の側面図である。トンネル支保工10は、トンネル掘削に伴い露出する地山の崩落防止のために、掘削直後の坑壁に沿って建て込まれるアーチ状の鋼製支保工であり、トンネル軸方向に沿って一定間隔毎に設置される。本実施形態におけるトンネル支保工10は、H形断面を有するH形鋼によって形成されている。より詳しくは、トンネル支保工10は、一対の円弧状の鋼製支保工10L,10Rの天端部(上端部)同士を一体に連結することでアーチ状に形成されている。以下、鋼製支保工10Lを「左側鋼製支保工」と呼び、鋼製支保工10Rを「右側鋼製支保工」と呼ぶ。
【0018】
左側鋼製支保工10Lは、第1本体部111、雌型継手板121、第1底板131を有する。第1本体部111は、ウェブ111a、当該ウェブ111aに直交する一対の地山側フランジ111b及び内空側フランジ111cから構成されるH形鋼である。また、第1本体部111における一端には雌型継手板121が溶接され、他端には第1底板131が溶接されている。雌型継手板121及び第1底板131は四角形の鋼製平板であり、第1本体部111のH形断面に対して直交方向に延在している。
【0019】
右側鋼製支保工10Rについても同様に、第2本体部112、雄型継手板122、第2底板132を有する。第2本体部112は、ウェブ112a、当該ウェブ112aに直交する一対の地山側フランジ112b及び内空側フランジ112cから構成されるH形鋼である。また、第2本体部112における一端には雄型継手板122が溶接され、他端には
第2底板132が溶接されている。雄型継手板122、第2底板132は四角形の鋼製平板であり、第2本体部112のH形断面に対して直交方向に延在している。本実施形態では、雌型継手板121及び雄型継手板122は合同の矩形平面を有している。
図1に示すように、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは、雌型継手板121及び雄型継手板122が互いに突き合わされた状態で連結されている。また、雌型継手板121及び雄型継手板122は、大きさ及び形状が同一であり、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rが連結された状態において、雌型継手板121及び雄型継手板122の当接面同士がちょうど重ね合せられた状態で当接している。
【0020】
以下、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造について説明する。
図2は、実施形態1に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造を説明する図である。
図2には、左側鋼製支保工10Lにおける雌型継手板121及びその周辺構造と、右側鋼製支保工10Rにおける雄型継手板122及びその周辺構造を概略的に示している。
図2に示すように、雌型継手板121には、一対の雌型連結部40a,40bが設けられている。また、雄型継手板122には、一対の雄型連結部50a,50bが設けられている。詳しくは後述するが、本実施形態における左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造は、トンネルの軸方向に左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを相対スライドさせることで、雌型連結部40a,40bに雄型連結部50a,50bをそれぞれ係止することで、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する。
【0021】
図3(a)は、
図2におけるA矢視図であり、雌型継手板121の当接面121a側を示す図である。
図3(b)は、
図3(a)におけるB−B矢視断面図である。
図4(a)は、
図2におけるC矢視図であり、雄型継手板122の当接面122a側を示す図である。
図4(b)は、
図4(a)におけるD−D矢視断面図である。
【0022】
ここで、雌型継手板121の当接面(外面)121a及び雄型継手板122の当接面(外面)122aは、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際に突き合わされ、互いに当接する面である。雌型継手板121の当接面121a及び雄型継手板122の当接面122aにおける外形とその大きさは互いに等しい。符号121bは、雌型継手板121の裏面(内面)である。符号122bは、雄型継手板122の裏面(内面)である。また、符号121cは雌型継手板121の上縁、符号121dは雌型継手板121の下縁、符号121eは雌型継手板121の坑口側縁、符号121fは雌型継手板121の切羽側縁である。また、符号122cは雄型継手板122の上縁、符号122dは雄型継手板122の下縁、符号122eは雄型継手板122の坑口側縁、符号122fは雄型継手板122の切羽側縁である。
図3(a)及び
図4(a)に、雌型継手板121及び雄型継手板122の高さ方向及び横幅方向を図示する。
【0023】
雌型継手板121の高さ方向は、坑口側縁121e及び切羽側縁121fの延伸方向と平行である。また、雌型継手板121と第1本体部111とが連結される端部において、ウェブ111aの延伸方向に雌型継手板121の高さ方向が一致している。また、雌型継手板121の横幅方向は上縁121c及び下縁121dの延伸方向と平行である。また、雌型継手板121と第1本体部111とが連結される端部において、地山側フランジ111b及び内空側フランジ111cの延伸方向に雌型継手板121の横幅方向が一致している。また、雄型継手板122の高さ方向は坑口側縁122e及び切羽側縁122fの延伸方向と平行である。また、雄型継手板122と第2本体部112が連結される端部において、ウェブ112aの延伸方向に雄型継手板122の高さ方向が一致している。また、雄型継手板122の横幅方向は上縁122c及び下縁122dの延伸方向と平行である。また、雄型継手板122と第2本体部112が連結される端部において、地山側フランジ112b及び内空側フランジ112cの延伸方向に雄型継手板122の横幅方向が一致して
いる。
【0024】
なお、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際、雌型継手板121における上縁121c及び雄型継手板122における上縁122cはトンネルの地山側に面する。また、雌型継手板121における下縁121d及び雄型継手板122における下縁122dはトンネルの内空側に面する。また、雌型継手板121における坑口側縁121e及び雄型継手板122における坑口側縁122eはトンネルの坑口側に面する。また、雌型継手板121における切羽側縁121f及び雄型継手板122における切羽側縁122fはトンネルの切羽側に面する。また、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際、雌型継手板121の当接面121aにおける横幅方向と、雄型継手板122の当接面122aにおける横幅方向は、トンネルの軸方向に対して平行である。
【0025】
図3(a)及び(b)に示すように、雌型継手板121に設けられる一対の雌型連結部40a,40bは、雌型継手板121における坑口側縁121eに開口すると共に当接面121aの横幅方向に沿って延在する直線状の係止溝孔41a,41bを有する。係止溝孔41a,41bは、雌型継手板121を厚さ方向に貫通している。ここで、係止溝孔41a,41bのうち、雌型継手板121における坑口側縁121eに開口する方の一端を挿入口410と呼ぶ。また、
図3(a)に示すように、係止溝孔41の他端側は、雌型継手板121の切羽側縁121fまで到達しておらず、切羽側縁121fの近傍に溝孔終端部411が形成されている。
【0026】
また、一対の雌型連結部40a,40bにおける係止溝孔41a,41bの溝幅W3は、一対の雄型連結部50a,50bにおける挿通壁部51a,51bの壁厚W2よりも大きく、且つ、係止頭部52a,52bの幅寸法W1よりも小さい。また、左側鋼製支保工10Lにおける第1本体部111のウェブ111aには、雌型継手板121の裏面121bとの接続位置に一対の切欠き42a,42bが形成されている。一対の切欠き42a,42bは、一対の雌型連結部40a,40bにおける係止溝孔41a,41bにそれぞれ連通している。第1本体部111のウェブ111aに形成された一対の切欠き42a,42bは、雄型連結部50a,50bにおける係止頭部52a,52bの縦断面を若干拡大した縦断面を有している。一対の切欠き42a,42bは、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時において、第1本体部111のウェブ111aに対して係止頭部52a,52bが干渉しないようにするために設けた開口である。また、本実施形態においては、一対の雄型連結部50a,50bにおける挿通壁部51a,51bの当接面122aからの突出寸法は、雌型継手板121の厚さ寸法と等しいか、それよりも若干大きな寸法に設定されている。
【0027】
次に、雄型継手板122に設けられている一対の雄型連結部50a,50bは、雄型継手板122の当接面122aから垂直に立設すると共に、当接面122aの横幅方向に沿って延在する挿通壁部51a,51bと、この挿通壁部51a,51bの先端部に連設される係止頭部52a,52bと、を有している。
図4(a)に示すように当接面122aの横幅方向は、当接面122a内において地山側フランジ112b及び内空側フランジ112cフランジの延在方向と平行に伸びている。また、
図4(a)に示すように、雄型連結部50a,50bにおける挿通壁部51及び係止頭部52は、雄型継手板122の全幅に亘って形成されてはおらず、坑口側縁122eから切羽側縁122fの手前までの範囲に形成されている。また、一対の雄型連結部50a,50bにおける係止頭部52a,52bの幅寸法W1は、挿通壁部51a,51bの壁厚W2よりも大きい。係止頭部52a,52bの幅寸法W1及び挿通壁部51a,51bの壁厚W2は共に、当接面122aの高さ方向に沿った寸法である。
【0028】
次に、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結方法について説明する。
図5は、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する直前の左側鋼製支保工10Lの雌型継手板121及び右側鋼製支保工10Rの雄型継手板122の位置関係を説明する図である。
図5において、雌型継手板121については当接面121a側から眺めた状態を示し、雄型継手板122については裏面122b側から眺めた状態を示している。
【0029】
左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結に際しては、まず、
図5に示すように、雌型継手板121及び雄型継手板122がトンネル軸方向における前後にずれた状態となるように左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを配置する。
図5に示す状態では、雌型継手板121及び雄型継手板122の上縁121c,122c同士の位置、下縁121d,122d同士の位置は互いに一致している。また、本実施形態では、雌型継手板121における坑口側縁121eに係止溝孔41a,41bの挿入口410が開口しており、雌型継手板121の坑口側縁121e側から雄型継手板122の雄型連結部50a,50bを雌型連結部40a,40bにスライド係合させてゆく。そのため、
図5に示すように、雄型継手板122における切羽側縁122fが、雌型継手板121における坑口側縁121eよりも若干坑口側に位置した状態で近接するように、左側鋼製支保工10Lの雌型継手板121と右側鋼製支保工10Rの雄型継手板122の相対位置について調整する。なお、
図5に示す状態において、雌型継手板121の当接面121a及び雄型継手板122の当接面122aは、トンネルの軸方向において同一面内に位置している。
【0030】
なお、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結及び建て込み作業は、例えば、
図6に示すようなエレクタ装置100を用いて行うことができる。
図6は、エレクタ装置100を搭載する作業車200の上面図である。エレクタ装置100は、同一構成の一対のブーム17L,17Rを備えている。一対のブーム17L,17Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって伸縮動作、傾動動作、揺動動作、回動動作が自在である。また、各ブーム17L,17Rの先端には、同一構成の一対のハンド18L,18Rが連結されている。一対のハンド18L,18Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって回転動作および揺動動作が自在であり、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをそれぞれ着脱自在に挟圧把持(保持)することができる。エレクタ装置100は、一対のハンド18L,18Rに左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを把持し、各ハンド18L,18Rを駆動することで左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結すると共に、所定の建て込み位置に建て込むことができる。
【0031】
本実施形態に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結方法においては、エレクタ装置100の各ハンド18L,18Rにそれぞれ把持した左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを、
図5に示すような初期位置から、一対のハンド18L,18の少なくとも何れかを駆動させ、トンネル軸方向に沿って雌型継手板121及び雄型継手板122を互いに接近させていく。すなわち、雌型継手板121及び雄型継手板122の当接面121a,122a同士を同一面内に保持した状態で、エレクタ装置100におけるハンドを駆動することで、雌型継手板121及び雄型継手板122をトンネル軸方向に沿って相対スライドさせる。
【0032】
図7は、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結している途中の状況を示す図である。
図7において、雌型継手板121及び雄型継手板122の当接面121a,122a同士を当接させながら、坑口側縁121eと坑口側縁122e同士の位置が合致し、切羽側縁121fと切羽側縁122f同士の位置が合致するように、トンネルの軸方向すなわち当接面121a,122aの横幅方向に沿って雌型継手板121及び雄型継手板122を相対スライドさせてゆく。そして、雄型連結部50a,50bの挿通壁部51a,51bにおける端部510が雌型連結部40a,40bの係止溝孔41a,41b
における挿入口410に到達すると、挿通壁部51a,51bが係止溝孔41a,41b内へ挿入される。
【0033】
上記のように、係止溝孔41a,41bの溝幅W3は挿通壁部51の壁厚W2よりも大きな寸法に設定されているため、係止溝孔41a,41b内へと挿通壁部51a,51bを円滑に進入させることができる。また、雄型連結部50a,50bにおける挿通壁部51a,51bの突出寸法は、雌型継手板121の板厚と等しいか、若干大きな寸法に設定されているため、係止溝孔41a,41bに挿通壁部51a,51bを挿通させた状態で、挿通壁部51a,51bの先端部に連設された幅広の係止頭部52a,52bを雌型継手板121の裏面121b側に配置させることができる。すなわち、雌型連結部40a,40bの係止溝孔41a,41bに雄型連結部50a,50bの挿通壁部51a,51bを挿通させつつ、雌型継手板121の係止溝孔41a,41bの縁部121gに係止頭部52a,52bが係止される。
【0034】
このように、係止溝孔41a,41bにおける縁部121gに係止頭部52a,52bが係止された状態においては、トンネルの軸方向すなわち当接面121a,122aの横幅方向に沿った雌型継手板121及び雄型継手板122の相対スライドは許容されつつ、係止頭部52が係止溝孔41から(雌型継手板121と垂直方向に)抜け出すことにより雌型連結部40a,40bと雄型連結部50a,50bの連結が規制されることが抑制される。ここで、第1本体部111のウェブ111aには、係止溝孔41a,41bと連通する一対の切欠き42が形成されているため、係止頭部52a,52bがウェブ111aと干渉することなく、雌型連結部40a,40bの係止溝孔41a,41bに沿って雄型連結部50a,50bを円滑に挿入できる。
【0035】
そして、
図8に示すように、雄型連結部50a,50bにおける挿通壁部51a,51bの端部510が、雌型連結部40a,40bの係止溝孔41a,41bにおける溝孔終端部411に到達すると、それ以上のスライドが規制される。なお、
図8において、雄型継手板122を破線で示している。
図8に示す状態において、雌型継手板121及び雄型継手板122の四辺が互いに重なっている。すなわち、雌型継手板121及び雄型継手板122の上縁121c,122c同士、下縁121d,122d同士、坑口側縁121e,122e同士、切羽側縁121f,122f同士の位置が互いに合致した状態となっている。
【0036】
ここで、
図9は、雄型連結部50a,50bにおける挿通壁部51の端部510が、雌型連結部40a,40bの係止溝孔41a,41bにおける溝孔終端部411に当接するまで挿通壁部51a,51bを係止溝孔41a,41bにスライドさせた状態の雌型継手板121及び雄型継手板122の断面を示したものである。
図9に示されるように、雌型連結部40a,40bの係止溝孔41a,41bに雄型連結部50a,50bの挿通壁部51a,51bが挿通した状態で、係止溝孔41a,41bの縁部121gに係止頭部52a,52bが係止された状態となっている。これにより、雌型継手板121及び雄型継手板122の当接面121a,122a同士を全面的に当接させた状態で、雌型連結部40a,40bに対して雄型連結部50a,50bが係止された状態となり、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了する。
【0037】
また、本実施形態によれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをトンネル軸方向に相対スライドさせるだけでこれらを簡単に連結することができる。つまり、本実施形態における鋼製支保工の連結構造によれば、従来のように、トンネル坑壁付近に組まれた作業足場やエレクタ装置100のマンケージ等に人員を配置してトンネル天端付近まで人員を移動させ、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの天端に位置する雌型継手板121及び雄型継手板122同士をボルト締結するといった連結作業を行う必
要がない。従って、本実施形態におけるトンネル支保工10の連結構造によれば、従来に比べて、より短時間で簡単に、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結作業を行うことができる。また、本実施形態における鋼製支保工の連結構造によれば、エレクタ装置100における一対のブーム17L,17Rに取り付けられたハンド18L,18Rの操作によって、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結することができるため、トンネルの切羽における人手作業を回避することができ、従来に比してより一層安全性及び作業性を向上することができる。
【0038】
また、本実施形態におけるトンネル支保工10の連結構造によれば、左側鋼製支保工10Lの雌型継手板121及び右側鋼製支保工10Rの雄型継手板122をトンネル軸方向に相対スライドさせることでこれらを連結する方式を採用したので、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結作業時において、トンネル坑壁(地山)の天頂部に左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rが干渉(衝突)し難くすることができる。そのため、安全性及び施工性をより一層向上することができる。なお、上記実施形態において、左側鋼製支保工10Lの継手板に雌型連結部40a,40bを設置し、右側鋼製支保工10Rの継手板に雄型連結部50a,50bを設置しているが、これには限られず、雌型連結部40a,40bと雄型連結部50a,50bを入れ替えても良い。また、左側鋼製支保工10Lの継手板に配置する雌型連結部40a,40bの数と、右側鋼製支保工10Rの継手板に配置する雄型連結部50a,50bの数は、適宜変更することができる。
【0039】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について説明する。
図10は、実施形態2に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造を説明する図である。
図10には、左側鋼製支保工10Lにおける雌型継手板121及びその周辺構造と、右側鋼製支保工10Rにおける雄型継手板122及びその周辺構造を概略的に示している。
図11(a)は、
図10におけるE矢視図であり、雌型継手板121の当接面121a側を示す図である。
図11(b)は、
図11(a)におけるF−F矢視断面図である。
図12(a)は、
図10におけるG矢視図である。
図12(b)は、
図12(a)におけるH−H矢視断面図である。以下、実施形態2に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造について、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0040】
本実施形態においても、左側鋼製支保工10Lの雌型継手板121には一対の雌型連結部40a,40bが設けられている。同様に、右側鋼製支保工10Rの雄型継手板122には、一対の雄型連結部50a,50bが設けられている。本実施形態における雄型連結部50a,50bは、雄型継手板122の上縁122c及び下縁122dによって形成されている。また、一対の雌型連結部40a,40bは、雌型継手板121における上縁121c及び下縁121dにそれぞれ設けられた係止枠部43a,43bを有している。係止枠部43a,43bは、雌型継手板121における上縁121c及び下縁121dに沿って延在している。
【0041】
係止枠部43a,43bは、雌型継手板121の当接面121aから垂直に立設すると共に、当接面121aの横幅方向に沿って延在する外壁部430と、外壁部430の先端部から直交方向にL字状に折れ曲って形成された係止壁部431を有する。そして、係止枠部43a,43bにおける係止壁部431と当接面121aとの間には、雄型連結部50a,50b(雄型継手板122の上縁122c、又は下縁122d)を収容可能な内空部432が形成されている。また、係止枠部43a,43bにおける坑口側縁121e側の端部には、内空部432の挿入口432aが形成されている。また、雌型継手板121の切羽側縁121f側には、塞ぎ板433が設けられている。
【0042】
以上のように構成される本実施形態における鋼製支保工の連結構造は、実施形態1と同様に、左側鋼製支保工10Lの雌型継手板121及び右側鋼製支保工10Rの雄型継手板122をトンネル軸方向に相対スライドさせることでこれらを連結する。すなわち、実施形態1と同様、
図5に示すような初期位置に雌型継手板121及び雄型継手板122を配置した状態から、エレクタ装置100における各ハンド18L,18Rを駆動することで、トンネル軸方向に沿って雌型継手板121及び雄型継手板122を互いに接近させてゆき、雌型継手板121における係止枠部43a,43bの内側に形成された内空部432に、挿入口432aから雄型継手板122の上縁122c及び下縁122dによって形成された雄型連結部50a,50bをそれぞれ挿入する。
【0043】
そして、雄型連結部50a,50bが、係止枠部43a,43bの内側に形成された内空部432の奥部に配置された塞ぎ板433に当接すると、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了する。この状態において、雄型継手板122の上縁122c及び下縁122dによって形成される雄型連結部50a,50bが、雌型継手板121における一対の係止枠部43a,43bの係止壁部431に係止されることで、雌型継手板121と垂直方向に内空部432から抜け出すことが規制される。また、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了した状態において他、雌型継手板121及び雄型継手板122の上縁121c,122c同士、下縁121d,122d同士、坑口側縁121e,122e同士、切羽側縁121f,122f同士の位置が互いに合致した状態となっている。これにより、雌型継手板121及び雄型継手板122を全面的に当接させた状態で左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結することができる。
【0044】
本実施形態においても、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをトンネル軸方向に相対スライドさせることで左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを簡単に連結することができるため、実施形態1と同様、安全性及び作業性の優れた鋼製支保工の連結構造及び連結方法を提供することができる。
【0045】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3について説明する。
図13は、実施形態3に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造を説明する図である。
図13には、左側鋼製支保工10Lにおける雌型継手板121及びその周辺構造と、右側鋼製支保工10Rにおける雄型継手板122及びその周辺構造を概略的に示している。
図14(a)は、
図13におけるI矢視図であり、雌型継手板121の当接面121a側を示す図である。
図14(b)は、
図14(a)におけるJ−J矢視断面図である。
図15(a)は、
図14におけるK矢視図であり、雄型継手板122の当接面122a側を示す図である。
図15(b)は、
図15(a)におけるL−L矢視断面図である。以下、実施形態3に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造について、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0046】
本実施形態においても、左側鋼製支保工10Lの雌型継手板121には一対の雌型連結部40a,40bが設けられている。同様に、右側鋼製支保工10Rの雄型継手板122には、一対の雄型連結部50a,50bが設けられている。ここで、一対の雌型連結部40a,40bは雌型継手板121の横幅方向に配列されており、一対の雄型連結部50a,50bは、雄型継手板122の横幅方向に配列されている。また、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時において、雌型連結部40aと雄型連結部50aが係合し、雌型連結部40bと雄型連結部50bが係合する。
【0047】
一対の雄型連結部50a,50bは、雄型継手板122の当接面122aからから垂直に立設する棒状の挿通軸部53a,53bと、挿通軸部53a,53bにおける先端側連
設される係止頭部54a,54bを有している。係止頭部54a,54bは、雄型継手板122の当接面122aの高さ方向に延伸しており、雌型継手板121の当接面121aの高さ方向に沿った幅寸法W4は、挿通軸部53a,53bの幅寸法W5よりも大きい。なお、挿通軸部53a,53bの幅寸法W5は、雌型継手板121の当接面121aの高さ方向に沿った寸法を指す。本実施形態において、雄型連結部50a,50bにおける挿通軸部53a,53b及び係止頭部54a,54bは四角柱形状を有しているが、これには限られない。また、本実施形態においては、雄型連結部50a,50bにおける挿通軸部53a,53bの当接面122aからの突出寸法は、雌型継手板121の板厚と等しいか、若干大きな寸法に設定されている。
【0048】
次に、一対の雌型連結部40a,40bは、雌型継手板121を厚さ方向に貫通すると共に雄型連結部50a,50bの係止頭部54a,54bを挿入可能な頭部挿入口44a,44bと、当該頭部挿入口44a,44bと連通する係止溝孔45a,45bを含んでいる。雌型連結部40a,40bにおける頭部挿入口44a,44bは、雄型連結部50a,50bの係止頭部54a,54bを円滑に挿入できるように、係止頭部54a,54bよりも一回り大きな矩形平断面形状を有していても良い。また、雌型連結部40a,40bにおける係止溝孔45a,45bは、雌型継手板121における当接面121aの横幅方向に沿って延在しており、且つ雌型継手板121を厚さ方向に貫通している。より具体的には、係止溝孔45a,45bは、頭部挿入口44a,44bの長手方向中央部から、直交方向に伸びており、全体で略T形状の雌型連結部40a,40bを形成している。なお、
図14(a)に示す例では、雌型連結部40aにおける頭部挿入口44aが雌型継手板121の坑口側縁121eに連なって開口しているが、坑口側縁121eに開口していなくても良い。
【0049】
ここで、一対の雌型連結部40a,40bにおける係止溝孔45a,45bの溝幅W6は、一対の雄型連結部50a,50bにおける挿通軸部53a,53bの幅寸法W5よりも大きく、且つ、係止頭部54a,54bの幅寸法W4よりも小さい。なお、係止溝孔45a,45bの溝幅W6は、雌型継手板121における当接面121aの高さ方向に沿った溝寸法を指す。また、
図14(a)における符号451は、係止溝孔45a,45bの溝孔終端部である。係止溝孔45a,45bの溝孔終端部451は、係止溝孔45a,45bにおいて頭部挿入口44a,44bと接続されていない方の端部である。
【0050】
次に、本実施形態における鋼製支保工の連結方法について説明する。本実施形態においても、上述までの実施形態と同様、エレクタ装置100の各ハンド18L,18Rに左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを把持した状態で、
図16に示すように雌型継手板121及び雄型継手板122を対向させた状態で近接させる。この状態において、
図16に示すように、雌型継手板121及び雄型継手板122の上縁121c,122c同士の位置、下縁121d,122d同士の位置は互いに一致している。また、
図16に示す状態において、雌型継手板121及び雄型継手板122は、雌型継手板121に比べて雄型継手板122よりもトンネル軸方向において若干坑口側に位置している。具体的には、雌型継手板12の雌型連結部40aにおける頭部挿入口44aと雄型継手板122の雄型連結部50aにおける係止頭部54aが正対し、且つ、雌型継手板12の雌型連結部40bにおける頭部挿入口44bと雄型継手板122の雄型連結部50bにおける係止頭部54bが正対している。
【0051】
図16に示す状態から、雌型継手板121及び雄型継手板122の高さ方向及び横幅方向における相対位置を保持した状態で、雌型継手板121及び雄型継手板122を接近させてゆくことで、雌型継手板12の雌型連結部40a,40bにおける頭部挿入口44a,44bに、雄型継手板122の雄型連結部50a,50bにおける係止頭部54a,54b及び挿通軸部53a,53bをそれぞれ挿入する。各頭部挿入口44a,44bに対
する係止頭部54a,54bの挿入が完了した後、雌型継手板121及び雄型継手板122を当接面121a,122aの横幅方向に沿って(トンネル軸方向に沿って)相対スライドさせることで、雄型連結部50a,50bにおける挿通軸部53a,53bを雌型連結部40a,40bにおける頭部挿入口44a,44bから係止溝孔45a,45bに進入させる。本実施形態においては、例えば左側鋼製支保工10Lをトンネル軸方向における坑口側にスライドさせ、或いは、右側鋼製支保工10Rをトンネル軸方向における切羽側にスライドさせることで、雄型連結部50a,50bにおける挿通軸部53a,53bを雌型連結部40a,40bにおける係止溝孔45a,45bに進入させることができる。なお、上記のように、係止溝孔45a,45bの溝幅W6は挿通軸部53a,53bの幅寸法W5よりも大きな寸法に設定されているため、係止溝孔45a,45b内へと挿通軸部53a,53bを円滑に進入させることができる。
【0052】
また、雄型連結部50a,50bにおける挿通軸部53a,53bの当接面122aからの突出寸法は、雌型継手板121の板厚と等しいか、当該板厚よりも若干大きな寸法に設定されている。そのため、雌型連結部40a,40bにおける係止溝孔45a,45bに雄型連結部50a,50bにおける挿通軸部53a,53bを挿通させた状態で、係止頭部54a,54bを雌型継手板121の裏面121b側に配置させることができる。これにより、雌型継手板121の係止溝孔45a,45bの縁部121gに、雄型連結部50a,50bにおける係止頭部52a,52bを係止することができる。そして、雄型連結部50a,50bにおける挿通軸部53a,53bが、雌型連結部40a,40bの係止溝孔45a,45bにおける溝孔終端部451に到達すると、それ以上の相対スライドが規制される。これにより、雌型連結部40a,40bに対して雄型連結部50a,50bが係止された状態で、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了する。なお、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了した状態で、雌型継手板121及び雄型継手板122の上縁121c,122c同士、下縁121d,122d同士、坑口側縁121e,122e同士、切羽側縁121f,122f同士の位置が互いに合致している。これにより、雌型継手板121及び雄型継手板122を全面的に当接させた状態で左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態においても、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをトンネル軸方向に相対スライドさせることで左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを簡単に連結することができるため、実施形態1及び2と同様、安全性及び作業性の優れた鋼製支保工の連結構造及び連結方法を提供することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係る鋼製支保工の連結構造はこれらに限られず、可能な限りこれらを組み合わせることができる。