(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記
図6に示されたトランス5において、金属板により構成された二次巻線11の引出線24が直接にプリント基板(不図示)に半田付けされる。すなわち、トランスの荷重は、二次巻線11の引出線24で支えられる。
【0006】
上記したトランス5が高周波で駆動される場合、表皮効果の影響を考慮して、二次巻線となる金属板の有効な厚みは、周波数に対する表皮深さの2倍程度になる。これにより、二次巻線の薄型化が可能となる。このようにして二次巻線を薄型化すれば、トランスの小型化が可能になる。
【0007】
図7は、金属板(銅板)における動作周波数と表皮深さの関係を示す図である。
図7に示される銅の表皮効果特性から、500kHzの電流が流れる場合には、表皮深さが0.1mmなる。
【0008】
仮にこの条件で上記構造のトランスを作製し動作させる場合には、二次巻線を銅板で構成し、その厚みを0.2mmにすることで、トランスを小型化することができる。
しかし銅板で形成した二次巻線の厚みを薄くすると、強度低下により、プリント基板に半田付けされた二次巻線でトランスを支えることができなくなるという課題が生じる。
【0009】
そこで本発明の目的は、高周波数化に伴い金属板で形成された巻線が薄型化しても、トランスの荷重を支持可能な高周波トランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の一の局面による高周波トランスは、プリント基板上に実装される高周波トランスであって、磁路を構成する脚部を有する一対のコア
であって、前記脚部は中脚部と外脚部とを有する、一対のコアと、前記一対のコアの間に交互に積層配置され、且つ、前記
中脚部に巻装される一次巻線および二次巻線と、前記一次巻線もしくは前記二次巻線の少なくとも一方が巻き回されたボビンと、を備え、前記ボビンは、中を前記
中脚部が挿通する筒部と、該筒部の両端にそれぞれ設けられ且つ前記筒部の直径よりも大きな直径を有する円形平板状の鍔部と、
前記鍔部と同一の厚さを有し且つ前記鍔部
の下端から下方へ延設された方形平板状の支持部とを有し、前記プリント基板上に前記高周波トランスが実装された状態において、前記支持部の下端が前記プリント基板上に当接し、且つ、前記コア
の前記外脚部の底面が前記支持部の上端に載置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボビンがプリント基板に当接する支持部を有し、この支持部が、プリント基板上に実装されたトランスを支えて固定するので、二次巻線を構成する銅板の厚みを薄くでき、小型で高い動作周波数(数100kHz程度)且つ大電流出力に対応できる高周波トランスを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る高周波トランスの構成を示す分解斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係る高周波トランスが組み立てられた状態を示す斜視図である。
図1および
図2を用いて本発明の実施形態に係る高周波トランスの構成を詳細に説明する。なお、以下では、高周波トランスを、単に、トランスともいう。
【0014】
図1に示すトランス(
図2に示すトランス1)は、一対のコア1a,1bと、3組の一次巻線3と、4組の二次巻線4とからなる。
このトランス1は、一次巻線3に印加された高電圧高周波数の交流電圧を電気的に絶縁して、低電圧高周波数の交流電圧を二次巻線4に出力する。したがって、一次巻線3には小電流が流れ、二次巻線4には大電流が流れる。
【0015】
このトランス1は、
図5に示すように、プリント基板100上に実装される。なお、以下では、一次巻線は、ボビン2と一体に形成された一次巻線を含む場合もある。
図1において、一対のコア1a,1bは、PQ型フェライトコアである。コア1aは、円柱状の中脚部1abと一対の外脚部1acと、中脚部1abと一対の外脚部1acとを連結する連結部1aaとを有している。
【0016】
一対の外脚部1acと中脚部1abとの間に形成される空間は、一次巻線3および二次巻線4を収納する巻線収納部1adである。
同様に、コア1bは、円柱状の中脚部1bbと一対の外脚部1bcと、中脚部1bbと一対の外脚部1bcとを連結する連結部1baとを有している。一対の外脚部1bcと中脚部1bbとの間に形成される空間は、一次巻線3および二次巻線4を収納する巻線収納部1bdである。
【0017】
一次巻線3は、ボビン2に電線を所定数巻き回すことにより、ボビン2と一体に構成されている。
ボビン2は、樹脂材料を用いて形成されており、中空部22を有する筒部21とこの筒部21の両端部から延設された円形平板状の鍔部23とを有する。ボビン2の鍔部23の高さは筒部21の幅よりも高くなるように形成されている。
【0018】
すなわち、ボビン2は薄い円形平板状であって、筒部21の幅よりも高い鍔部23を有する糸巻き状に形成されている。
また、ボビン2は、両鍔部23のそれぞれの対向する位置に、プリント基板100の表面に当接する方形状の支持部28を備える。支持部28の厚さは鍔部23の厚さと同じであり、支持部28の幅は鍔部23の直径よりも広い。また、支持部28の下端(プリント基板100に当接する部分)は、鍔部23の円周の下端よりも下方に位置する。このような形状のボビン2は、樹脂材料を型に流し込むことにより容易に成型することができる。また、ボビン2は、樹脂材料から削り出すことにより形成することもできる。
【0019】
一次巻線には高電圧が印加されるため、ボビン2は、低誘電率かつ高絶縁性を有する樹脂材料で形成される。
一次巻線3は、ボビン2の筒部21に巻き回される。所定回数巻き回された一次巻線3の巻高さは、鍔部23の高さ内に収まる。筒部21と鍔部23で形成された空間内で、一次巻線3は、その上部を覆うように絶縁性の樹脂材料で気密封止される。
【0020】
これにより、一次巻線3とボビン2とが、一体として、容易に形成される。なお、一次巻線3を気密封止する樹脂材料は、ボビン2を形成する樹脂材料と同じ材料であるのが好ましい。
【0021】
図1において、ボビン2に巻き回された一次巻線は、ボビン2の鍔部23と気密封止された樹脂とによって覆われており、ボビン2の外部には現れない。なお、一次巻線の巻き始めと巻き終わり部から、一次巻線引出線31が引き出されている。
【0022】
図3に、二次巻線4の構成例(その1)を示す。
二次巻線4は、厚みが数100μmであって、中空部47を備える二枚のリング状導体板からなる。この二枚の導体板は、それぞれ空隙部43a、43bを有するリング部42a、42bと、リング部42a、42bの一方端に引出線41a、41bを有する。
【0023】
そして、それぞれの引出線41a、41bの位置が互いに重ならないようにリング部42a、42bが重ね合わされたうえで、それぞれのリング部42a、42bの他方端同士が半田付けされる。
【0024】
これにより、2ターンを有する螺旋状の二次巻線4が構成される。なお、二枚の導体板の間には絶縁紙5が介挿される。
上記のようなリング形状の導体板は、例えば導電率が高い銅などの金属平板をプレス機などで打ち抜くことで、容易に加工することができる。
【0025】
なお、上記では二次巻線4を構成する導体板の枚数を二枚とする例について説明したが、これは単なる例に過ぎず、一枚でも良いし、二枚より多くても良い。
次に、
図1に示したトランス1の構成を、以下に説明する。
【0026】
一次巻線3と二次巻線4とは、二次巻線4、一次巻線3、二次巻線4、一次巻線3、二次巻線4、一次巻線3、二次巻線4の順に、中空部22,47とを重ね合わせながら、交互に積層配置されている。
【0027】
コア1a,1bは、積層配置された一次巻線3および二次巻線4を挟んで、それぞれの一対の外脚部1ac,1bcと中脚部1ab,1bbとが相対するように配置されている。
コア1a,1bの中脚部1ab,1bbは、二次巻線4の中空部47及び一次巻線3と一体に形成されたボビン2の中空部22に挿通されているとともに、それぞれの端面が突き合わされている。コア1a,1bの一対の外脚部1ac,1bcは、その底面がボビン2の支持部28の上端に載置されるとともに、それぞれの端面が突き合わされている。
【0028】
このように構成されたトランス1において、
図2に示すように、コア1a,1bの中脚部1ab,1bbと一対の外脚部1ac,1bcとで磁路が形成される。そして、中脚部1ab,1bbが挿通された一次巻線3および二次巻線4は、巻線収容部1ad,1bd内に収容固定される。
【0029】
一次巻線3はボビン2内で絶縁性樹脂により気密封止されている。したがって、
図2では、一次巻線3そのものは見えず、見えているのは一次巻線3を気密封止している樹脂部分である。
【0030】
この一次巻線3には引出線31が備えられており、この引出線31は、一次巻線3の気密封止部からボビン2の外側に引き出されている。すなわち、一次巻線引出線31は、コア1a,1bの上側の開口部11から上方に引き出されている。
【0031】
したがって、一次巻線3で発生した熱は一次巻線引出線31に伝わり、一次巻線引出線31を介して外気に放熱される。ただし、一次巻線3に流れる電流値は小さいため、一次巻線3で発生する熱量は小さい。そのため、一次巻線の発熱による温度上昇はわずかである。
【0032】
二次巻線の引出線41は、一対のコア1a,1bの下側の開口部11から下方に引き出される。この引出線41はプリント基板100に半田付けされる。
引出線41がプリント基板100に半田付けされることにより、二次巻線4の位置が一対のコア1a,1b内で固定される。
【0033】
大電流が流れる二次巻線4の発熱量は大である。二次巻線4で発生した熱は、コア1a,1bの下方に引き出された引出線41を介して外気に放熱される。
二次巻線4は4組に分割して構成されているため、発熱が分散されるとともに、それぞれの引出線41において放熱が効果的に行われる。これにより、二次巻線4の局部的な過熱が抑制されている。
【0034】
図4に、二次巻線4の構成例(その2)を示す。
この二次巻線4は、リング部42a、42bの上部に、方形状の放熱部44a、44bを備えている。その他の形状については、
図3に示した二次巻線4と同じである。
【0035】
リング部42a、42bの上部に放熱部44a、44が備えられることにより、二次巻線4の放熱は、より効果的に行われる。
また、一次巻線引出線31はトランス1の上方に引き出され、二次巻線引出線41はトランスの下方に引き出されている。
【0036】
したがって、一次巻線引出線31と二次巻線引出線41との間の空間および沿面の距離は、十分に確保されている。そのため、一次巻線引出線31と二次巻線引出線41との間の絶縁は十分に確保されている。
【0037】
以上により、本発明は、小型で高い動作周波数(数100kHz程度)且つ大電流出力に対応できる高周波トランスを実現することができる。
図5は、プリント基板100に実装された高周波トランス1を正面から見た正面図(a)および側面から見た側面図(b)である。
【0038】
二次巻線引出線41はプリント基板100に半田付けされて固定される。
またボビン2の支持部28の下端がプリント基板100の表面に当接し、トランスの重さ(荷重)を支える。支持部28の幅は、コア1a、1bの幅(両外脚間の幅)と同じである。支持部28がコア1a、1bの幅と同じ幅を備えれば、プリント基板100上でトランス1が安定に支持される。ただし、支持部28の幅は必ずしもコア1a、1bの幅と同じである必要はなく、トランス1を安定に支えることができれば、コア1a、1bの幅よりも長くても短くても良い。
【0039】
また、コア1a、1bの一対の外脚部1ac,1bcの底面が支持部28の上端に載置されている。そして、ボビン2の支持部28は、その下端(プリント基板100に当接する部分)が一次巻線3の気密封止部よりも下方に位置するように構成されている。したがって、プリント基板100の表面と一次巻線3の気密封止部との間に間隙が存在している。このようにすれば、支持部28でトランス1を安定に支えることができる。
【0040】
トランス1の荷重がプリント基板100に当接するボビン支持部28によって支えられるため、二次巻線4の薄型化が可能となる。すなわち、トランス1の高周波数化が可能になるとともに、小型化が可能となる。
【0041】
上記実施形態では、一次巻線3に高電圧が印加され、二次巻線から低電圧が出力される高周波トランスを例にとって、トランス1の支持構造を説明した。
しかし、本発明は、このような高周波トランスに限定されるものではない。すなわち、本発明は、一次巻線3に低電圧が印加され、二次巻線から高電圧が出力される高周波トランスに適用することができる。
【0042】
この場合は、二次巻線4をボビン2に巻き回し、このボビン2に支持部28を備えることができる。
また、本発明は、一次巻線3に高電圧が印加され、二次巻線から高電圧が出力される高周波トランスに適用することができる。この場合は、一次巻線3と二次巻線4をそれぞれ異なるボビン2に巻き回し、このボビン2に支持部28を備えることができる。
【0043】
また、本実施形態では、PQコアの中脚部に一次巻線と二次巻線とを巻装する高周波トランスを例にとって、トランス1の支持構造を説明した。
しかし、本発明は、PQコアを用いて構成される高周波トランスに限定されるものではない。すなわち、本発明は、EEコア、EIコアなど、他の形状のコアを用いて構成される高周波トランスに適用することができる。
【0044】
また、本発明は、コアの中脚部に一次巻線と二次巻線を巻装する高周波トランスに限定されるものではない。すなわち、本発明は、コアの外脚部など磁路を形成する脚に一次巻線と二次巻線を巻装する高周波トランスに適用することができる。
【0045】
また、本発明は、高周波トランスを例にとってトランス1の支持構造を説明した。しかし、本発明はトランスの支持構造に限定されるものではない。
すなわち、本発明は、巻線が巻き回されたボビンをコアに巻装して構成されるインダクタに適用することができる。