特許第6874293号(P6874293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874293
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】高所作業車の動作制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20210510BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   B66F9/24 T
   B66F11/04
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-149826(P2016-149826)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-16476(P2018-16476A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草薙 直人
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−157799(JP,A)
【文献】 特開2006−027778(JP,A)
【文献】 特開2012−025502(JP,A)
【文献】 特開平09−086900(JP,A)
【文献】 特開平11−100199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたブームと、ブームの先端部に支持された作業台と、を備え、車体に対して作業台を移動させる高所作業車の動作制御装置であって、
作業台に搭乗した作業者が手で作業台の移動方向及び移動速度に関する入力を行うものであり、作業者による操作がなされている状態でのみ入力信号を送信する第1操作入力部と、
第1操作入力部から送信された入力信号に応じた移動方向及び移動速度で作業台を移動させる作業台移動制御手段と、
作業台に搭乗した作業者が操作する第2操作入力部と、
作業台移動制御手段によって作業台が移動している状態において、第2操作入力部に対して入力がなされると、第2操作入力部に対して入力がなされたときにおける作業台の移動方向及び移動速度を保持する動作状態保持制御手段と、
作業台に搭乗した作業者によって操作されるものであり、操作がなされている状態でのみ第1操作入力部及び第2操作入力部の操作を有効とする第3操作入力部と、を備え
動作状態保持制御手段によって移動方向及び移動速度が保持された作業台は、第3操作入力部の操作が中断されることにより停止する
高所作業車の動作制御装置。
【請求項2】
動作状態保持制御手段によって移動方向及び移動速度が保持された作業台は、第1操作入力部に対する入力が中断された後、再度第1操作入力部に対する入力がなされることにより停止する
請求項1に記載の高所作業車の動作制御装置。
【請求項3】
動作状態保持制御手段によって移動方向及び移動速度が保持された作業台は、第2操作入力部に対する入力がなされることにより停止する
請求項1または2に記載の高所作業車の動作制御装置。
【請求項4】
動作状態保持制御手段によって移動方向及び移動速度が保持された作業台は、第1操作入力部に対する入力が中断された後、2回目の第1操作入力部に対する入力がなされることにより停止し、2回目の第1操作入力部に対する入力が中断された後、3回目の第1操作入力部に対する入力がなされると、第2操作入力部に対して入力がなされたときにおける作業台の移動速度で3回目の第1操作入力部に対する入力によって受信した入力信号に対応する移動方向に移動する
請求項1に記載の高所作業車の動作制御装置。
【請求項5】
作状態保持制御手段によって移動方向及び移動速度が保持された作業台は、第3操作入力部に対する入力が中断されることにより停止し、第1操作入力部に対する入力が中断された後、再度第1操作入力部に対する入力がなされるとともに、再度第3操作入力部に対する入力がなされると、第2操作入力部に対して入力がなされたときにおける作業台の移動速度で再度第1操作入力部に対する入力によって受信した入力信号に対応する移動方向に移動する
請求項1に記載の高所作業車の動作制御装置。
【請求項6】
第2操作入力部からの入力信号を受信したときにおける第1操作入力部から受信した入力信号に対応する移動速度が所定の速度よりも大きい場合には、動作状態保持制御手段に
よる作業台の移動方向及び移動速度の保持の実行を規制する
請求項1乃至のいずれかに記載の高所作業車の動作制御装置。
【請求項7】
第1操作入力部は、作業者によって操作される2つ以上の操作レバーを有し、
第2操作入力部からの入力信号を受信したときに、2つ以上の操作レバーが操作されている場合には、動作状態保持制御手段による作業台の移動方向及び移動速度の保持の実行を規制する
請求項1乃至のいずれかに記載の高所作業車の動作制御装置。
【請求項8】
動作状態保持制御手段によって移動方向及び移動速度が保持された作業台を停止させる際には、移動速度を徐々に小さくする
請求項1乃至のいずれかに記載の高所作業車の動作制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業台に搭乗した作業者が作業台を移動させながら両手で高所作業を行うことが可能な高所作業車の動作制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、車体に設けられたブームと、ブームの先端部に支持された作業台と、を備えている。従来の高所作業車の動作制御装置としては、作業台に搭乗した作業者が手で作業台の移動方向及び移動速度に関する操作を行う手動操作部と、作業台に搭乗した作業者が足で操作を行うフットペダルと、を備えたものが知られている。手動操作部及びフットペダルは、それぞれの操作を行っている状態でのみコントローラに対する入力信号を送信するものである。
【0003】
前記高所作業車では、手動操作部の操作と同時にフットペダルの操作を行っている状態でのみ作業台の移動が可能となっており、手動操作部の操作のみまたはフットペダルの操作のみで作業台が移動することはない。このため、作業台に搭乗している作業者は、作業台を移動させる場合に、常に手動操作部とフットペダルの操作を同時に行う必要があり、作業台を移動させながら両手で作業することができない。
【0004】
そこで、作業台を移動させながら作業者が作業可能な高所作業車としては、手動操作部の操作と共にフットペダルの操作を行うことで作業台の移動を開始し、作業台が移動している状態において、フットペダルの操作を継続して手動操作部の操作を中断した場合に、作業台の移動している状態を維持するものが考えられている(例えば、特許文献1参照)。これにより、作業台に搭乗した作業者は、手動操作部から手を放した状態で、作業台を移動させながら両手で高所作業を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−86900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記高所作業車の動作制御装置では、移動している作業台を停止させる場合に、少なくともフットペダルから足を放す必要がある。このため、前記高所作業車の動作制御装置では、移動している作業台を作業者が停止させるつもりで、手動操作部から手を放したとしても、フットペダルを足で踏み込んでいる限り作業台が停止することはないため、作業者の意思と異なる作業台の動作となる可能性がある。
【0007】
本発明の目的とするところは、作業台上の作業者の作業効率の向上を図るとともに、作業台の操作時における作業者の誤操作を確実に防止して安全性の向上を図ることのできる高所作業車の動作制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、車体に設けられたブームと、ブームの先端部に支持された作業台と、を備え、車体に対して作業台を移動させる高所作業車の動作制御装置であって、作業台に搭乗した作業者が手で作業台の移動方向及び移動速度に関する入力を行うものであり、作業者による操作がなされている状態でのみ入力信号を送信する第1操作入力部と、第1操作入力部から送信された入力信号に応じた移動方向及び移動速度で作業台を移動させる作業台移動制御手段と、作業台に搭乗した作業者が操作する第2操作入力部と、作業台移動制御手段によって作業台が移動している状態において、第2操作入力部に対して入力がなされると、第2操作入力部に対して入力がなされたときにおける作業台の移動方向及び移動速度を保持する動作状態保持制御手段と、を備えている。
【0009】
これにより、第1操作入力部の操作によって作業台が移動している状態において第2操作入力部の操作がなされると、第2操作入力部の操作がなされたときの作業台の移動方向及び移動速度が保持されることから、作業台に搭乗した作業者が第1操作入力部から手を放して両手で作業する場合に、作業者の意思で確実に作業台の移動方向及び移動速度が保持される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業台に搭乗した作業者が第1操作入力部から手を放して両手で作業をする場合に、作業者の意思で確実に作業台の移動方向及び移動速度を保持することが可能となるので、作業台上の作業者の作業効率の向上を図るとともに、作業台の操作時における作業台の誤作動を確実に防止して安全性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示す高所作業車の側面図である。
図2】制御系を示すブロック図である。
図3】動作状態保持制御処理のフローチャートである。
図4】本発明の他の実施形態を示す動作状態保持制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図3は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明の動作制御装置が適用される高所作業車1は、図1に示すように、車道を走行するための車体10と、高所作業を行うための高所作業装置20と、を備えている。
【0014】
車体10は、図1に示すように、前後方向に延びるシャシフレーム11の前部に運転キャブ12が設けられ、後側に高所作業装置20が設けられている。また、車体10は、シャシフレーム11の前側及び後側の左右両側に設けられた走行用の車輪13と、高所作業装置20による作業時に車体10を安定的に支持するためのアウトリガ14と、を備えている。
【0015】
高所作業装置20は、図1に示すように、水平旋回可能な旋回台21と、旋回台21に対して起伏可能な伸縮ブーム22と、伸縮ブーム22の先端部に設けられた作業台としてのバケット23と、を備えている。旋回台21は、図示しない油圧式の旋回台旋回モータによって車体10に対して水平旋回動作を行う。伸縮ブーム22は、油圧式の起伏シリンダ24によって旋回台21に対して起伏動作を行うとともに、図示しない油圧式の伸縮シリンダによって伸縮動作を行う。バケット23は、図示しないレベリングシリンダによって、伸縮ブーム22の起伏角度にかかわらず常に作業床が水平となるように保持されるとともに、図示しないバケット旋回モータによって伸縮ブーム22の先端部に対して水平旋回動作を行う。
【0016】
また、高所作業車1は、高所作業装置20の動作を制御するためのコントローラ30を備えている。
【0017】
コントローラ30は、CPU、ROM、RAM等からなる。コントローラ30は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0018】
コントローラ30の入力側には、図2に示すように、バケット23に搭乗した作業者が高所作業装置20の動作に関する操作を手で入力するための第1操作入力部としての操作入力部31と、作業者が操作入力部31の操作を有効とするための操作を足で入力するための第3操作入力部としてのフットスイッチ32と、作業者が操作入力部31の操作を行うことなくバケット23の動作を継続するための操作を手で入力するための第2操作入力部としての状態保持スイッチ33と、が接続されている。
【0019】
操作入力部31は、傾倒操作によって操作入力を行う複数の操作レバーからなり、バケット23の手摺の近傍に設けられている。複数の操作レバーは、それぞれ作業者が操作しない状態で、中立位置として上方に向くように設けられ、中立位置から前後方向及び左右方向に傾倒させる操作が可能である。複数の操作レバーは、中立位置では入力信号を送信することはなく、中立位置から傾倒させた状態でのみ入力信号を送信する。
【0020】
フットスイッチ32は、ペダル式のスイッチであり、バケット23の作業床に設けられている。フットスイッチ32は、バケット23に搭乗した作業者が操作しない状態では入力信号を送信することはなく、足で踏み込んだ状態でのみ入力信号を送信する。
【0021】
状態保持スイッチ33は、例えば、モーメンタリ方式の押ボタンスイッチであり、操作入力部31の近傍に設けられている。状態保持スイッチ33は、バケット23に搭乗した作業者が操作しない状態では入力信号を送信することはなく、手で押し込んだときに入力信号を送信する。
【0022】
また、コントローラ30の出力側には、図2に示すように、旋回台旋回モータに対する作動油の流通方向及び流量を制御するための旋回台旋回モータ用コントロールバルブ34と、起伏シリンダ24に対する作動油の流通方向及び流量を制御するための起伏シリンダ用コントロールバルブ35と、伸縮シリンダに対する作動油の流通方向及び流量を制御するための伸縮シリンダ用コントロールバルブ36と、バケット旋回モータに対する作動油の流通方向及び流量を制御するためのバケット旋回モータ用コントロールバルブ37と、が接続されている。
【0023】
以上のように構成された高所作業車1において、高所作業装置20は、バケット23に搭乗した作業者の操作入力部31の操作によって、旋回台21の水平旋回動作、伸縮ブーム22の起伏動作及び伸縮動作、バケット23の水平旋回動作をそれぞれ個別に行う個別動作モードを有している。
【0024】
また、高所作業装置20は、バケット23に搭乗した作業者の操作入力部31の1つの操作レバーの操作によって、図1の矢印で示すように、バケット23の垂直方向の移動、及び、水平方向の移動を行うための垂直・水平動作モードを有している。垂直・水平動作モードでは、伸縮ブーム22の起伏動作及び伸縮動作を同時に行うことで、バケット23を垂直方向に移動させる。また、垂直・水平動作モードでは、伸縮ブーム22の起伏動作及び伸縮動作、バケット23の水平旋回動作を同時に行うことで、バケット23を水平方向に直線状に移動させる。
【0025】
さらに、高所作業装置20は、垂直・水平動作モードにおいて、バケット23を所定の速度で所定の方向に移動させている状態で、作業者が操作入力部31の操作を中断しても、バケット23の動作状態を保持する動作状態保持制御処理を行う。このときのコントローラ30のCPUの動作を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0026】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、バケット23の動作モードが垂直・水平動作モードであるか否かを判定する。バケット23の動作モードが垂直・水平動作モードであると判定した場合にはステップS2に処理を移し、バケット23の動作モードが垂直・水平動作モードであると判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0027】
(ステップS2)
ステップS1においてバケット23の動作モードが垂直・水平動作モードであると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、操作入力部31の操作がなされたか否かを判定する。操作入力部31の操作がなされたと判定した場合にはステップS3に処理を移し、操作入力部31の操作がなされたと判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0028】
(ステップS3)
ステップS2において操作入力部31の操作がなされたと判定した場合に、ステップS3においてCPUは、フットスイッチ32がオンの状態であるか否かを判定する。フットスイッチ32がオンの状態であると判定した場合にはステップS4に処理を移し、フットスイッチ32がオンの状態であると判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0029】
(ステップS4)
ステップS3においてフットスイッチ32がオンの状態であると判定した場合に、ステップS4においてCPUは、操作入力部31に入力された方向及び速度でバケット23を移動させてステップS5に処理を移す。
ここで、停止した状態のバケット23の移動を開始する際には、操作入力部31に入力された速度となるまで徐々に速度を上昇させる緩起動動作を行う。また、本実施形態のステップS4は、特許請求の範囲における作業台移動制御手段に相当する。
【0030】
(ステップS5)
ステップS5においてCPUは、状態保持スイッチ33の操作がなされたか否かを判定する。状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定した場合にはステップS6に処理を移し、状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0031】
(ステップS6)
ステップS5において状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定した場合に、ステップS6においてCPUは、操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であるか否かを判定する。操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であると判定した場合にはステップS7に処理を移し、操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であると判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0032】
(ステップS7)
ステップS6において操作入力部31の操作が1つの操作レバーの操作であると判定した場合に、ステップS7においてCPUは、操作入力部31に入力されたバケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であるか否かを判定する。バケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であると判定した場合にはステップS8に処理を移し、バケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であると判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0033】
(ステップS8)
ステップS7においてバケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であると判定した場合に、ステップS8においてCPUは、状態保持スイッチ33の操作がなされたときの操作入力部31に入力された方向及び速度に関するデータを記憶し、ステップS9に処理を移す。
【0034】
(ステップS9)
ステップS9においてCPUは、ステップS8において記憶した方向及び速度に関するデータに基づいてバケット23の動作を継続し、ステップS10に処理を移す。
ここで、バケット23は、バケット23に搭乗している作業者が操作入力部31から手を放して操作レバーが中立位置となった状態においても、記憶したバケット23の移動方向及び移動速度で動作を継続する。本実施形態のステップS8及びステップS9は、特許請求の範囲における動作状態保持制御手段に相当する。
【0035】
(ステップS10)
ステップS10においてCPUは、操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたか否かを判定する。操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたと判定した場合にはステップS13に処理を移し、操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたと判定しなかった場合にはステップS11に処理を移す。
【0036】
(ステップS11)
ステップS10において操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたと判定しなかった場合に、ステップS11においてCPUは、フットスイッチ32がオフの状態であるか否かを判定する。フットスイッチ32がオフの状態であると判定した場合にはステップS13に処理を移し、フットスイッチ32がオフの状態であると判定しなかった場合にはステップS12に処理を移す。
【0037】
(ステップS12)
ステップS11においてフットスイッチ32がオフの状態であると判定しなかった場合に、ステップS12においてCPUは、状態保持スイッチ33の操作がなされたか否かを判定する。状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定した場合にはステップS13に処理を移し、状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定しなかった場合にはステップS9に処理を移す。
【0038】
(ステップS13)
ステップS10において操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたと判定した場合、ステップS11においてフットスイッチ32がオフの状態であると判定し場合、ステップS12において状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定した場合に、ステップS13においてCPUは、バケット23の動作を停止してステップS14に処理を移す。
ここで、移動している状態のバケット23を停止させる際には、停止するまで徐々に速度を低下させる緩停止動作を行う。
【0039】
(ステップS14)
ステップS14においてCPUは、ステップS8において記憶したバケット23の移動方向及び移動速度のデータを削除して動作状態保持制御処理を終了する。
【0040】
このように、本実施形態の高所作業車の動作制御装置によれば、操作入力部31に対する入力に基づいてバケット23が移動している状態において、状態保持スイッチ33に対して入力がなされると、状態保持スイッチ33からの入力信号を受信したときにおけるバケット23の移動方向及び移動速度を保持している。
【0041】
これにより、バケット23に搭乗した作業者が操作入力部31から手を放して両手で作業をする場合に、作業者の意思で確実にバケット23の移動方向及び移動速度を保持することが可能となるので、バケット23上の作業者の作業効率の向上を図るとともに、バケット23の操作時における作業台の誤作動を確実に防止して安全性の向上を図ることが可能となる。
【0042】
また、移動方向及び移動速度が保持されたバケット23は、操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後、再度操作入力部31の操作レバーに対する傾倒操作がなされることにより停止する。
【0043】
また、移動方向及び移動速度が保持されたバケット23は、状態保持スイッチ33に対する入力がなされることにより停止する。
【0044】
また、移動方向及び移動速度が保持されたバケット23は、フットスイッチ32の操作がオフの状態となることにより停止する。
【0045】
これにより、操作入力部31、状態保持スイッチ33及びフットスイッチ32のいずれかの操作によってバケット23の動作状態の保持を解除することが可能となるので、緊急時等におけるバケット23の動作を確実に停止させることが可能となり、高所作業時における安全性の向上を図ることが可能となる。
【0046】
また、状態保持スイッチ33からの入力信号を受信したときにおける操作入力部31から受信した入力信号に対応する移動速度Vが所定の速度V1よりも大きい場合には、バケット23の移動方向及び移動速度の保持の実行を規制する。
【0047】
これにより、高速で移動している状態におけるバケット23の移動方向及び移動速度の保持を規制することができるので、高所作業時における安全性の向上を図ることが可能となる。
【0048】
また、状態保持スイッチ33からの入力信号を受信したときにおける操作入力部31の2つ以上の操作レバーが操作されている場合には、バケット23の移動方向及び移動速度の保持の実行を規制する。
【0049】
これにより、搭乗している作業者がバケット23の動作を認識し難く障害物や作業の対象物に接触する可能性のある状況において、バケット23の移動方向及び移動速度の保持を規制することができるので、高所作業時における安全性の向上を図ることが可能となる。
【0050】
また、移動方向及び移動速度が保持されたバケット23を停止させる際には、移動速度を徐々に小さくする。
【0051】
これにより、バケット23の急停止を防止することができるので、バケット23に搭乗している作業者がバランスを崩す状況の発生を防止することが可能となる。
【0052】
図4は、本発明の他の実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0053】
本実施形態の高所作業装置20は、前記実施形態と同様に、垂直・水平動作モードにおいて、バケット23を所定の速度で所定の方向に移動させている状態で、バケット23の動作状態を保持する動作状態保持制御処理を行う。本実施形態の動作状態保持制御処理では、移動方向及び移動速度が保持されたバケット23を一旦停止させた後に、操作入力部31及びフットスイッチ32の操作によって移動方向及び移動速度の保持したバケット23の動作を再開することが可能となっている。このときのコントローラ30のCPUの動作を図4のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
(ステップS21)
ステップS21においてCPUは、バケット23の動作モードが垂直・水平動作モードであるか否かを判定する。バケット23の動作モードが垂直・水平動作モードであると判定した場合にはステップS22に処理を移し、バケット23の動作モードが垂直・水平動作モードであると判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0055】
(ステップS22)
ステップS21においてバケット23の動作モードが垂直・水平動作モードであると判定した場合に、ステップS22においてCPUは、操作入力部31の操作がなされたか否かを判定する。操作入力部31の操作がなされたと判定した場合にはステップS23に処理を移し、操作入力部31の操作がなされたと判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0056】
(ステップS23)
ステップS22において操作入力部31の操作がなされたと判定した場合に、ステップS23においてCPUは、フットスイッチ32がオンの状態であるか否かを判定する。フットスイッチ32がオンの状態であると判定した場合にはステップS24に処理を移し、フットスイッチ32がオンの状態であると判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0057】
(ステップS24)
ステップS23においてフットスイッチ32がオンの状態であると判定した場合に、ステップS24においてCPUは、操作入力部31に入力された方向及び速度でバケット23を移動させてステップS25に処理を移す。
【0058】
(ステップS25)
ステップS25においてCPUは、状態保持スイッチ33の操作がなされたか否かを判定する。状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定した場合にはステップS26に処理を移し、状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0059】
(ステップS26)
ステップS25において状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定した場合に、ステップS26においてCPUは、操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であるか否かを判定する。操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であると判定した場合にはステップS27に処理を移し、操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であると判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0060】
(ステップS27)
ステップS26において操作入力部31の操作が1つの操作レバーの操作であると判定した場合に、ステップS27においてCPUは、操作入力部31に入力されたバケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であるか否かを判定する。バケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であると判定した場合にはステップS28に処理を移し、バケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であると判定しなかった場合には動作状態保持制御処理を終了する。
【0061】
(ステップS28)
ステップS27においてバケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であると判定した場合に、ステップS28においてCPUは、状態保持スイッチ33の操作がなされたときの操作入力部31に入力された方向及び速度に関するデータを記憶し、ステップS29に処理を移す。
【0062】
(ステップS29)
ステップS29においてCPUは、記憶した方向及び速度に関するデータに基づいてバケット23の動作を継続し、ステップS30に処理を移す。
ここで、バケット23は、バケット23に搭乗している作業者が操作入力部31から手を放して操作レバーが中立位置となった状態においても、記憶した方向及び速度で動作を継続する。
【0063】
(ステップS30)
ステップS30においてCPUは、操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたか否かを判定する。操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたと判定した場合にはステップS35に処理を移し、操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたと判定しなかった場合にはステップS31に処理を移す。
【0064】
(ステップS31)
ステップS30において操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたと判定しなかった場合に、ステップS31においてCPUは、フットスイッチ32がオフの状態であるか否かを判定する。フットスイッチ32がオフの状態であると判定した場合にはステップS35に処理を移し、フットスイッチ32がオフの状態であると判定しなかった場合にはステップS32に処理を移す。
【0065】
(ステップS32)
ステップS31においてフットスイッチ32がオフの状態であると判定しなかった場合に、ステップS32においてCPUは、状態保持スイッチ33の操作がなされたか否かを判定する。状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定した場合にはステップS33に処理を移し、状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定しなかった場合にはステップS29に処理を移す。
【0066】
(ステップS33)
ステップS32において状態保持スイッチ33の操作がなされたと判定した場合に、ステップS33においてCPUは、バケット23の動作を停止してステップS34に処理を移す。
【0067】
(ステップS34)
ステップS34においてCPUは、記憶したバケット23の移動方向及び移動速度のデータを削除して動作状態保持制御処理を終了する。
【0068】
(ステップS35)
ステップS30において操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後に再び傾倒操作がなされたと判定した場合、ステップS31においてフットスイッチ32がオフの状態であると判定し場合に、ステップS35においてCPUは、バケット23の動作を停止してステップS36に処理を移す。
【0069】
(ステップS36)
ステップS36においてCPUは、ステップS35におけるバケット23の動作の停止後に所定時間が経過しているか否かを判定する。バケット23の動作の停止後に所定時間が経過していると判定した場合にはステップS34に処理を移し、バケット23の動作の停止後に所定時間が経過していると判定しなかった場合にはステップS37に処理を移す。
【0070】
(ステップS37)
ステップS36においてバケット23の動作の停止後に所定時間が経過していると判定しなかった場合に、ステップS37においてCPUは、操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であるか否かを判定する。操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であると判定した場合にはステップS38に処理を移し、操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であると判定しなかった場合にはステップS36に処理を移す。
【0071】
(ステップS38)
ステップS37において操作入力部31に入力された操作が1つの操作レバーの操作であると判定した場合に、ステップS38においてCPUは、フットスイッチ32がオンの状態であるか否かを判定する。フットスイッチ32がオンの状態であると判定した場合にはステップS39に処理を移し、フットスイッチ32がオンの状態であると判定しなかった場合にはステップS36に処理を移す。
【0072】
(ステップS39)
ステップS38においてフットスイッチ32がオンの状態であると判定した場合に、ステップS39においてCPUは、ステップS28において記憶したバケット23の移動方向に関するデータを動作停止後に操作入力部31に入力されたバケット23の移動方向に関するデータに書き換えて、ステップS29に処理を移す。
【0073】
このように、本実施形態の高所作業車の動作制御装置によれば、前記実施形態と同様に、バケット23に搭乗した作業者が操作入力部31から手を放して両手で作業をする場合に、作業者の意思で確実にバケット23の移動方向及び移動速度を保持することが可能となるので、バケット23上の作業者の作業効率の向上を図るとともに、バケット23の操作時における作業台の誤作動を確実に防止して安全性の向上を図ることが可能となる。
【0074】
また、移動方向及び移動速度が保持されたバケット23は、操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後、2回目の操作入力部31の操作レバーに対する傾倒操作がなされることにより停止し、2回目の操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後、3回目の操作入力部31の操作レバーに対する傾倒操作がなされると、状態保持スイッチ33に対して入力がなされたときにおけるバケット23の移動速度で3回目の操作入力部31に対する入力によって受信した入力信号に対応する移動方向に移動する。
【0075】
また、移動方向及び移動速度が保持されたバケット23は、フットスイッチ32の操作が中断された場合に停止し、操作入力部31の操作レバーが中立位置に戻された後、再度操作入力部31の操作レバーに対する傾倒操作がなされるとともに、再度フットスイッチ32の操作がなされると、状態保持スイッチ33に対して入力がなされたときにおけるバケット23の移動速度で再度操作入力部31の操作レバーに対する傾倒操作によって受信した入力信号に対応する移動方向に移動する。
【0076】
これにより、簡単な操作によって移動方向及び移動速度が保持されたバケット23の動作が可能となるので、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0077】
尚、前記実施形態では、車道を走行可能な車体10に高所作業装置20を備えた高所作業車1を示したが、これに限られるものではない。例えば、法令等によって車道を走行不能であり、作業現場のみで走行可能な走行体に高所作業装置を備えた高所作業車に本発明を適用してもよい。
【0078】
また、前記実施形態では、高所作業装置20が、垂直・水平動作モードにおいて、動作状態保持制御処理を行うようにしたものを示したが、個別動作モード時に動作状態保持制御処理を行うようにしてもよい。
【0079】
また、前記実施形態では、動作状態保持制御処理における順序として、操作入力部31の操作の有無を判定し(ステップS2、ステップS22)、その後、フットスイッチ32の操作の有無を判定する(ステップS3、ステップS23)、ようにしたものを示したが、これに限られるものではない。操作入力部31及びフットスイッチ32が共に操作された状態でバケット23の動作を可能するものであればよく、フットスイッチ32の操作の有無を判定し、その後、操作入力部31の操作の有無を判定するようにしてもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、動作状態保持制御処理において、バケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下である場合にバケット23の移動方向及び移動速度を保持し、バケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であると判定しなかった場合にバケット23の移動方向及び移動速度の保持を規制するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、バケット23の移動速度Vが所定の速度V1以下であると判定しなかった場合に、バケット23の移動速度Vを速度V1に変更し、移動方向及び変更した移動速度V1でバケット23の動作を継続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…高所作業車、10…車体、20…高所作業装置、22…伸縮ブーム、23…バケット、30…コントローラ、31…操作入力部、32…フットスイッチ、33…状態保持スイッチ、34…旋回台旋回モータ用コントロールバルブ、35…起伏シリンダ用コントロールバルブ、36…伸縮シリンダ用コントロールバルブ、37…バケット旋回モータ用コントロールバルブ。
図1
図2
図3
図4