(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、第1実施形態における測定システム300を示す概要図である。本例の測定システム300は、センサシステム100および処理システム200を有する。センサシステム100は、測定対象10の状態を検出する。検出された測定対象10の状態は、測定信号としてセンサシステム100から処理システム200に出力される。処理システム200は、ネットワーク400を介して監視装置500に測定信号を出力する。
【0021】
測定対象10の状態とは、測定対象10の振動、圧力、温度および湿度、測定対象10が発する音、光および電磁波、測定対象10から漏れるガスの成分、ならびに、測定対象10の電圧、電流および磁力の一以上であってよい。例えば、測定対象10の振動および温度を検知することにより、測定対象10の変形および発熱をそれぞれ検知することができる。また、測定対象10に所定の電圧値以上で発光するダイオードを設けて、当該ダイオードからの光を検出することにより、測定対象10に生じるサージ電圧を検知することができる。また、測定対象10の圧力を測定することにより絶縁ガス(例えば、N
2およびSF
6)のリークを検知することができる。
【0022】
測定対象10は、電力を輸送、変換、制御および供給する装置、ならびに、電子機器の電源装置であってよい。測定対象10は、数百Aから数千Aの大電流を扱う装置であってよい。例えば、測定対象10は、変圧器および遮断器(Circuit Breaker)である。この場合、測定対象10は、主電流が流れる電線を有する。なお、本例の測定対象10は、変圧器である。
【0023】
センサシステム100は、変換部20、蓄電部30、センサ部40および送信部50を含んでよい。変換部20は、測定対象10から出る磁場を電力に変換する機能を有する。磁場から電力を生成するべく、変換部20はコイルを有してよい。
【0024】
本例において、主電流が流れる電線は変圧器のコイルであってよい。変換部20を変圧器のコイルに接して設けることにより、変圧作用に寄与しない漏れ磁場が変換部20のコイルを貫くことができる。これにより、変換部20は漏れ磁場から誘導起電力を得ることができる。
【0025】
なお、測定対象10が遮断器である他の例において、主電流が流れる電線の周りには比較的高い誘導磁場が生じる。変換部20のコイルを誘導磁場が貫くことにより、変換部20は誘導起電力を得ることができる。
【0026】
このように、センサシステム100においては変換部20が電力を生成するので、電源としての電池が不要である。それゆえ、本例においては電池交換をしなくてよい点が有利である。また、本例においては、外部固定電源から電力を得る必要がないという点も有利である。
【0027】
上述の様に、本例の変換部20は、センサシステム100の電力生成部として機能する。変換部20が変換した電力は、蓄電部30に蓄えられてよい。蓄電部30に電力を蓄えることにより、誘導磁場が生じていない場合においても、蓄電部30は、蓄電した電力をセンサ部40および送信部50の少なくとも一方に供給することができる。これにより、センサ部40および送信部50の少なくとも一方は動作することができる。
【0028】
センサ部40は、測定対象10の状態を示す測定信号を送信部50に出力してよい。本例の測定信号は、単位時間毎における測定対象10の振動数である。センサ部40は、常時起動状態にあって測定対象10を常時測定してもよいし、間欠的に起動して測定対象10を間欠的に測定していてもよい。
【0029】
送信部50は、センサ部40からの出力である測定信号を外部にある処理システム200の受信部210に送信してよい。本例の送信部50は、無線送信部である。無線である場合には、有線の場合における断線が生じないので有利である。
【0030】
処理システム200は、受信部210、データ処理部220およびネットワーク機器230を含んでよい。受信部210が送信部50から受信する測定信号はアナログ信号であってよい。当該アナログ信号は、データ処理部220に供給されて、データ処理部220においてデジタル信号に変換されてよい。
【0031】
当該デジタル信号は、ネットワーク機器230およびネットワーク400を経て、監視装置500に出力されてよい。監視装置500は、測定対象10の状態(振動、圧力、温度等)を表示してよい。監視装置500は、モニタ等のユーザインターフェースおよびCPU等のハードウェアを有してよい。これにより、監視者は、測定対象10から離れた遠隔地において測定対象10の状態を知ることができる。
【0032】
なお、本例のセンサシステム100は、変換部20での発電に加えて、センサ部40により測定対象10の状態を検出すること、および、センサ部40が得た測定信号を送信部50から外部に送信することを目的としている。これにより電池交換不要のセンサシステム100を実現するものである。
【0033】
図2は、測定対象10としての変圧器11を示す概要図である。本例の変圧器11は、筐体14と、筐体14内部に位置するコイル12および鉄芯13と、筐体14上に位置する複数の低圧ブッシングおよび複数の高圧ブッシングとを有する。
【0034】
上述の電線は、変圧器11のコイル12に対応する。なお、
図2におけるX‐Y‐Z軸は、右手系の直交座標軸である。また、本例において、上方向とは+Z方向を意味し、下方向とは−Z方向を意味する。X‐Y‐Z軸は、相対位置を説明するための便宜的な軸に過ぎない。Z軸は必ずしも重力方向と平行な方向でなくてもよい。
【0035】
本例の変圧器11は、内鉄型の三脚構造を有する鉄芯13と、鉄芯13の各脚部に設けられたコイル12とを有する。本例の各コイル12(U相コイル12‐1、V相コイル12‐2およびW相コイル12‐3)は、一次コイルと二次コイルとをそれぞれ同心状に有する。一次コイルおよび二次コイルには、変圧に際して主電流が流れる。
【0036】
変圧器11は、高電圧(例えば、6kV)を低電圧(例えば210V)に変換してよい。高電圧は、高圧ブッシングから一次コイルに供給されてよい。変換後の低電圧は、二次コイルから低圧ブッシングを介して変圧器11の外部回路に提供されてよい。
【0037】
図3は、変圧器11およびセンサシステム100を示す概要図である。なお、
図3において鉄芯13は省略している。本例のセンサシステム100は、変圧器11用のセンサシステム100である。
図3では、コイル12‐1上に1つの変換部20を設ける例を示すが、コイル12‐2および12‐3においても同様に1つの変換部20が設けられてよい。他の例においては、コイル12‐1上に複数の変換部20を設けてもよい。さらに他の例においては、高圧または低圧ブッシングに接して1以上の変換部20を設けてもよい。また、これらの例を組み合わせてもよい。
【0038】
本例のセンサ部40は、コイル12‐1の振動数を検知する。センサ部40は、加速度センサ素子であってよい。詳述はしないが、加速度センサ素子からの出力を適切に処理することにより、加速度から振動数を得ることができる。
【0039】
本例のセンサ部40は、変換部20よりも磁場が弱い位置に設ける。これにより、変換部20に比べてセンサ部40への磁場の影響を低減することができる。本例においては、電線としてのコイル12‐1から変換部20までの距離を、コイル12‐1からセンサ部40までの距離よりも短くする。つまり、本例においては、変換部20をセンサ部40よりもコイル12‐1の近くに配置する。なお、センサ部40全体を磁気シールドにより覆ってもよい。これにより、センサ部40への磁場の影響を低減してよい。
【0040】
本例のセンサ部40は、コイル12‐1から所定距離離間した筐体14に直接接して設けられる。本例において、筐体14とコイル12とは一体に接続されているので、両者は同じ振動数で振動する。それゆえ、筐体14上にセンサ部40を設けることにより、センサ部40をコイル12‐1から遠ざけつつ、かつ、コイル12‐1の振動数を正確に検知することができる。
【0041】
本例において、センサ部40には蓄電部30から常時電力が供給される。これにより、センサ部40は変圧器11の振動数を常時測定することができるので、センサ部40が変圧器11を間欠的に測定する場合よりも変圧器11の異常を正確かつ迅速に発見することができる。
【0042】
本例の蓄電部30および送信部50は、変換部20およびセンサ部40と比較して変圧器11からさらに離間して設けられる。蓄電部30および送信部50は、変圧器11から3m以上、5m以上または10m以上離間してよい。これにより、蓄電部30および送信部50に対する変圧器11の漏れ磁場の影響をさらに低減することができる。本例において変換部20と蓄電部30とは、配線により接続されてよい。蓄電部30、センサ部40および送信部50もまた、配線により互いに接続されてよい。配線は、磁場により電線に引き寄せられないように、地面または地面に固定された構造物に固定されてよい。
【0043】
なお、他の例におけるセンサ部40の配置を
図3において点線により示す。他の例においては、センサ部40をコイル12‐1の側部に設けてもよい。例えば、コイル12‐1の側面に直接接してセンサ部40を設ける。コイル12の側部は、コイル12の上方向(+Z方向)端部および下方向(−Z方向)端部よりも磁場が弱い。それゆえ、センサ部40への磁場の影響を低減しつつ、コイル12の振動数を正確に検知することができる。特に、コイル12におけるZ方向の中央部にセンサ部40を設けることにより、センサ部40への磁場の影響を最も低減することができる。
【0044】
図4は、第1実施形態におけるセンサシステム100を示す図である。本例の変換部20は、コイル22および整流回路24を有する。本例の整流回路24は、ダイオード25を含む。蓄電部30は、キャパシタ32を有する。コイル22の一端は、ダイオード25のアノードに接続する。コイル22の他端は接地される。ダイオード25のカソードは、キャパシタ32の高電位側に接続する。キャパシタ32の低電圧側は接地される。
【0045】
なお、本明細の実施形態およびその変形例において、整流回路24は変換部20に含まれるとする。しかしながら、整流回路24は、蓄電部30のキャパシタ32よりもコイル22側に位置していればよい。整流回路24は、キャパシタ32よりもコイル22側に位置し、蓄電部30に含まれるとしてもよい。
【0046】
ダイオード25は、PN接合を有する通常のダイオード素子であってよい。また、ダイオード25は、ゲートとドレインとが短絡されたJFET(Junction Field Effect Transistor)であってもよい。
【0047】
コイル22は、漏れ磁場から誘導起電力を生成する。例えば、コイル22は、ダイオード25のアノード側において接地側よりも高い正電圧を生成する。本例のダイオード25は、アノード‐カソード間に5Vの電圧差が生じた場合に電流を流す。これにより、コイル22の誘導起電力が5V以上である場合に、キャパシタ32が充電される。
【0048】
また、例えば、コイル22は、ダイオード25のアノード側において接地側よりも低い負電圧を生成する。本例のダイオード25は、当該負電圧が印加された場合には電流を流さない。これにより、キャパシタ32に充電された電荷が負バイアス印加時に消失することを防ぐことができる。キャパシタ32に蓄電された電力は、センサ部40および送信部50に供給される。
【0049】
なお、キャパシタ32は直流電流を通さないので、ダイオード25に加えて蓄電部30のキャパシタ32も整流回路24として機能すると見なしてもよい。つまり、キャパシタ32は、整流回路24における整流素子の一部であり、かつ、蓄電部30における蓄電素子であると見なしてよい。
【0050】
センサ部40は、センサ素子42および増幅部44を有する。センサ素子42により得た測定対象10の測定信号は、アナログ信号であってよい。増幅部44は、アナログ信号を増幅させる機能を有してよい。増幅部44で増幅された測定信号は、信号処理部52のベースバンド部54に入力されてよい。
【0051】
送信部50は、ベースバンド部54およびRF(Radio Frequency)部56を有する信号処理部52と、アンテナ58とを有する。ベースバンド部54は、増幅部44から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換してよい。RF部56は、デジタル信号を送信周波数帯域の周波数に変調してよい。変調されたデジタル信号はアンテナ58から受信部210へ送信されてよい。
【0052】
図5Aは、第2実施形態におけるセンサシステム100を示す図である。本例の整流回路24は、ツェナーダイオード27をさらに有する。本例のツェナーダイオード27は、キャパシタ32に対して逆並列に接続される。本例において、ツェナーダイオード27のカソードはダイオード25のカソードに接続され、ツェナーダイオード27のアノードは接地される。
【0053】
ツェナーダイオード27は、キャパシタ32の出力電圧を予め定められた電圧に維持する機能を有してよい。ツェナーダイオード27においては、所定の逆バイアス電圧(降伏電圧)以上の電圧が印加されるとアバランシェ電流が流れる。これにより、キャパシタ32の高電位側を降伏電圧と同じ大きさの電圧値に維持することができる。
【0054】
図5Bは、第2実施形態の第1変形例を示す図である。本例の整流回路24は、ダイオード25に代えて、コッククロフト・ウォルトン(Cockcroft・Walton)回路を有する。コッククロフト・ウォルトン回路は、コイル22に生じるピーク・トゥー・ピーク電圧の2n倍の直流電圧を生成することができる。なお、nは自然数である。
【0055】
コッククロフト・ウォルトン回路においては、2つのダイオード(D
1およびD
2)が順方向に直列接続する。また、ダイオードD
1のカソードとコイル22の一端との間にキャパシタC
1が設けられる。ダイオードD
1のアノードとコイル22の他端とは接続される。なお、コイル22の他端は接地される。ダイオードD
1のアノードとダイオードD
2のカソードとの間にキャパシタC
2が設けられる。
【0056】
図5Bにおいては、コッククロフト・ウォルトン回路の構成単位(n=1)を示す。つまり、コッククロフト・ウォルトン回路の構成単位は、2つのキャパシタ(C
1およびC
2)と2つのダイオード(D
1およびD
2)を有する。構成単位(n=1)を複数個直列接続することにより(2≦n)、整流回路24の出力電圧をn=1の場合よりも高くすることができる。
【0057】
説明を簡単にするために、コイル22は時間に対して正負が反転する交流電圧電源であると仮定する。第1の時間(1に丸を付して示す)にコイル22の他端(接地側)は正電圧のピーク値を有し、コイル22の一端(接地側と反対側)は負電圧のピーク値を有すると仮定する。この場合、ダイオードD
1に電流が流れて(ダイオードD
2には電流が流れない)、キャパシタC
1が充電される。なお、矢印は電流の向きを表す。
【0058】
第1の時間の直後の第2時間(2に丸を付して示す)に、コイル22の他端(接地側)は負電圧のピーク値を有し、コイル22の一端(接地側とは反対側)は正電圧のピーク値を有するよう変化したとする。この場合、ダイオードD
2に電流が流れて(ダイオードD
1には電流が流れない)、キャパシタC
2はキャパシタC
1から充電される。これにより、蓄電部30は、交流電圧電源のピーク値よりも昇圧した電圧で充電される。それゆえ、コッククロフト・ウォルトン回路は、昇圧回路の機能を有すると見なすことができる。
【0059】
図5Cは、第2実施形態の第2変形例を示す図である。本例のセンサシステム100は、ツェナーダイオード27に代えて、電圧リミッタ回路60を有する。電圧リミッタ回路60は、蓄電部30および送信部50と同様に、漏れ磁場の影響を最小限にするべく、測定対象10から離間して設けてよい。
【0060】
電圧リミッタ回路60は、キャパシタ32の高電圧側を所定の電圧値の範囲に維持する機能を有する。本例の電圧リミッタ回路60は、蓄電部30のキャパシタ32に逆並列に接続された第1ダイオード62と、キャパシタ32に並列に接続された第2ダイオード64と、第1ダイオード62のアノードおよび第2ダイオード64のカソードに接続する基準電圧V
refを有する。
【0061】
第1ダイオード62においては、アノードがカソードよりも第1順方向電圧V
f1だけ高くなるとアノードからカソードに電流が流れて、アノード‐カソード間が第1順方向電圧V
f1未満になる。それゆえ、電圧リミッタ回路60は、キャパシタ32の高電位側(第1ダイオード62のカソード)をV
ref−V
f1未満に維持する。
【0062】
これに対して、第2ダイオード64においては、アノードがカソードよりも第2順方向電圧V
f2だけ高くなるとアノードからカソードに電流が流れて、アノード‐カソード間が第2順方向電圧V
f2未満になる。それゆえ、電圧リミッタ回路60は、キャパシタ32の高電位側(第2ダイオード64のアノード)をV
ref+V
f2未満に維持する。このように、電圧リミッタ回路60は、キャパシタ32の高電位側の電圧VをV
ref−V
f1<V<V
ref+V
f2に維持する。なお、他の例においては、電圧リミッタ回路60が異なる構成で合ってよいのは勿論である。
【0063】
図5Dは、第2実施形態の第3変形例を示す図である。本例のセンサシステム100は、昇圧回路70を有する。本例の昇圧回路70は、チョッパ方式のDC‐DCコンバータである。本例の昇圧回路70は、蓄電部30とセンサ部40および送信部50との間に設けられる。昇圧回路70は、蓄電部30および送信部50と同様に、漏れ磁場の影響を最小限にするべく、測定対象10から離間して設けてよい。
【0064】
本例の昇圧回路70は、キャパシタ32の高電位側に直列接続されたコイル72と、コイル72にアノードが接続されたダイオード76とを有する。また、本例の昇圧回路70は、ダイオード76のアノードにドレイン端子が接続されたスイッチング素子74と、ダイオード76のカソードに一端が接続されたキャパシタ78とを有する。スイッチング素子74とキャパシタ78とは、高電位側と接地側との間に互いに並列に設けられる。なお、本例のスイッチング素子74はNチャネル型のJFETであるが、スイッチング素子74はPチャネル型のJFETであってよく、MOSFETであってもよい。
【0065】
高電位側と接地側との間に所定の電位差がある場合に、スイッチング素子74のゲートがオンすると、コイル72からスイッチング素子74に電流が流れる。これにより、コイル72に電力が蓄えられる。その後に、スイッチング素子74のゲートをオフすると、コイル72に蓄えられた電力がダイオード76を介してキャパシタ78の高電位側に移動する。ゲートのオン/オフをMHzオーダーで切り替えることにより、キャパシタ78を所定の電圧値まで昇圧させることができる。
【0066】
なお、上記の例では、整流回路24としてのツェナーダイオード27およびコッククロフト・ウォルトン回路、電圧リミッタ回路60、ならびに、昇圧回路70をそれぞれ個別に述べた。しかしながら、これらを適宜組み合わせて用いてよいのは勿論である。
【0067】
図6は、第3実施形態におけるセンサシステム100を示す図である。主要な構成は第2実施形態と同じであるので、以下では第2実施形態との差異について説明する。なお、本例を第1実施形態、第2実施形態およびこれらの変形例と組み合わせてよいのは勿論である。
【0068】
本例のセンサシステム100は、制御部80を備える。測定対象10から出る磁場が強い程、センサ部40および送信部50の出力がノイズに埋もれる可能性が高くなる。そこで、本例の制御部80は、測定対象10から出る磁場の強さに応じて、センサ部40および送信部50の一以上の出力を調整する。
【0069】
具体的には、測定対象10から出る磁場が強い程、センサ部40の出力に乗るオフセットが大きくなる場合がある。これに対処するべく、本例の制御部80は、測定対象10から出る磁場に比例して増加させたオフセット値を算出してよい。制御部80は、センサ部40の出力から当該オフセット値を除去する制御信号をセンサ部40またはセンサ素子42に対して出力してよい。センサ部40またはセンサ素子42は、当該制御信号により出力を補正してよい。これにより、センサ部40の出力のS/N比(Signal to Noise ratio)を向上させることができる。
【0070】
また、測定対象10から出る磁場に起因して、送信部50のアンテナ58からの出力がノイズに埋もれてしまう場合がある。これに対処するべく、本例の制御部80は、測定対象10から出る磁場に比例して送信部50のアンテナ58からの出力を増加させる制御信号を、送信部50または信号処理部52に出力してよい。これにより、送信部50から受信部210への出力のS/N比を向上させることができる。
【0071】
本例のセンサ部40は、磁気センサ素子48を有する。磁気センサ素子48は、測定対象10から出る磁場を直接測定してよい。磁気センサ素子48は、ホール素子および磁気抵抗効果素子等であってよい。磁気センサ素子48は、測定対象10から出る磁場の情報を制御部80に出力してよい。
【0072】
なお、本例の変形例として、磁気センサ素子48は、送信部50を介して測定対象10から出る磁場の情報を処理システム200に伝えてよい。これにより、センサシステム100においては、センサ部40および送信部50の出力を補正せずに、処理システム200においてセンサ部40および送信部50の出力を補正してもよい。
【0073】
図7は、第4実施形態におけるセンサシステム100を示す図である。主要な構成は第3実施形態と同じであるので、以下では第3実施形態との差異について説明する。なお、本例を第1実施形態から第3実施形態およびこれらの変形例と組み合わせてよいのは勿論である。
【0074】
本例においては、センサ部40から送信部50への出力に応じて、蓄電部30から送信部50へ電力が供給される。つまり、本例の制御部80は、センサ素子42が送信部50に測定信号を出力するときに、蓄電部30から送信部50へ電力を供給させる。本例の蓄電部30は、制御部80からの電力制御信号に従い、センサ部40および送信部50に対して個別に電力を供給する。
【0075】
センサ素子42が送信部50に測定信号を出力するときとは、センサ部40の測定信号において予め定められた値の測定信号が存在する場合であってよい。当該予め定められた値は、測定対象10から生じた振動数の異常値(例えば、特定の周波数または特定の周波数帯域)を意味してよい。また、センサ素子42が送信部50に測定信号を出力するときとは、センサ部40の測定信号が経過時間に応じて所定のデータ量に到達した場合であってもよく、センサ部40の起動時間の合計が所定の時間に達した場合であってもよい。
【0076】
つまり、本例の送信部50は常時起動しなくてもよい。通常、送信部50の消費電力は、センサ部40よりも大きいので、送信部50をオフすることによりセンサシステム100の消費電力を効率的に低減することができる。
【0077】
上記の構成を実現するべく、本例のセンサ部40はメモリ部46を備える。メモリ部46は、増幅部44を介してセンサ部40が測定した測定信号を保存する。
【0078】
メモリ部46は、センサ素子42が取得した測定信号に加えて、磁気センサ素子48が得た測定対象10から出る磁場の強さの情報を保存してもよい。これにより、磁場の強さと測定信号とが対応付けられた情報をメモリ部46から送信部50へ出力することができる。なお、制御部80は、センサ部40に出力する制御信号によりメモリ部46の動作を制御してよい。
【0079】
図8は、第5実施形態におけるセンサシステム100を示す図である。本例の制御部80は、測定対象10から出る磁場の強さに応じて、蓄電部30からセンサ部40への電源電流をセンサ部40への制御信号により制御する。センサ部40への電源電流を増加させるとは、センサ素子42内部に使用されているセンシング用トランジスタへ供給する電流量を増加させることを意味してよい。これにより、測定対象10から出る磁場に起因してセンシング用回路に生じた誘電電流に対する、センシング用トランジスタに流れる電流の相対比を維持または増加させることができる。これにより、センサ素子42から増幅部44に出力する測定信号のS/N比を維持または上昇させることができる。
【0080】
また、制御部80は、測定対象10から出る磁場の強さに応じて、送信部50の出力を送信部50への制御信号により制御してもよい。例えば、測定対象10から出る磁場が強いほどRF部56の出力を大きくすることにより、アンテナ58の出力を大きくする。これにより、送信部50からの無線信号のS/N比を維持または上昇させることができるので、受信部210における受信エラーを低減することができる。
【0081】
また例えば、測定対象10から出る磁場が弱いほどRF部56の出力を小さくすることにより、アンテナ58の出力を小さくする。これにより、測定対象10から出る磁場が弱い場合には、送信部50における電力消費を低減することができ、かつ、S/N比を維持または上昇させることができる。
【0082】
図9は、変圧器11の電線に流れる主電流と変換部20の発電量との関係を示すシミュレーショ結果を示す図である。横軸は、電線に流れる主電流(A)を示す。縦軸は、変換部20の発電量(mW(ミリワット))を示す。本シミュレーションでは、
図9中の三角はコイル12の外形が100mm(ミリメートル)である場合を示し、四角はコイル12の外形が200mmである場合を示し、ひし角はコイル12の外形が280mmである場合を示す。各例において、変圧器11のコイル12と変換部20とが1m離間しており、隣接するコイル12同士は0.5m離間しているとした。なお、離間距離は、コイル12および変換部20、ならびに、コイル12同士の最近接部分の距離を意味する。本シミュレーションによると、コイル12の外径が200mmであり、主電流が3000Aである場合に、発電量は577mWとなった。
【0083】
なお、コイル12と変換部20との離間距離を変更した結果もシミュレーションした。コイル12の外径が200mmであり、主電流が600Aである場合に、コイル12と変換部20とを0.1m離間させると発電量は180mWとなった。また、コイル12と変換部20とを接触させる(つまり、離間距離0mとする)と発電量は260mWとなった。
【0084】
本願の発明者の試算によれば、センサシステム100を駆動させるためには変換部20の発電量が90mW以上であればよい。本シミュレーションにより、センサシステム100を駆動させるために必要なコイル12の外径および主電流を算出した。
【0085】
図10は、第6実施形態における測定対象10としての遮断器15を示す概要図である。本例のセンサシステム100は、遮断器15用のセンサシステム100である。なお、上述したように、センサシステム100は遮断器15を含まない。センサシステム100は、第1実施形態から第5実施形態およびこれらの変形例と同じであってよく、また、これらの組み合わせであってもよい。
【0086】
本例の遮断器15は、主に、ブッシング16、可動機構610、可動電極612、固定電極614および筐体618を有する。遮断器15が上記以外の構成を有してよいのは勿論である。可動電極612と固定電極614とは通常接続されているが、電流を遮断する場合に可動機構610が、可動電極612を固定電極614から離間させる(矢印方向)。これにより、可動電極612と固定電極614との導通が遮断される。
【0087】
本例において、主電流が流れる測定対象10の電線はブッシング16である。本例のブッシング16は、主電流が流れる導体17と、導体17の周囲に設けられた絶縁部18とを有する。本例の絶縁部18は、ブッシング16の最外部に位置する陶製の管と、陶製の管と導体17との間の絶縁ガスとを含む。絶縁ガスは、N
2ガスまたはSF
6ガスであってよい。
【0088】
本例の変換部20は、ブッシング16に接して設けられる。より具体的には、ブッシング16における陶製の管の最表面に配置される。変換部20は、ブッシング16の導体17から出る磁場を電力に変換することができる。
【0089】
センサ部40は、遮断器15の状態を検出する。本例においてもセンサ部40は加速度センサである。それゆえ、センサ部40が検知する遮断器15の状態とは、遮断器15の振動である。センサ部40は、遮断器15の振動数を測定信号として取得することができる。例えば、制御部80は、落雷等の突発的事象に応じて、センサ部40および送信部50をオン状態にして、遮断器15の異常振動をモニタリングする。
【0090】
センサ部40は、遮断器15の筐体618に設けられてよい。センサ部40は、遮断器15の振動数を十分検知できるように遮断器15に近接して設けられればよい。それゆえ、センサ部40は、変換部20に比べてブッシング16から離れた位置に設けられてよい。本例においても、センサ部40は変換部20よりも磁場が弱い位置に設けられてよい。また、センサ部40全体を磁気シールドにより覆ってもよい。
【0091】
本例においても、変換部20が電力を生成するので、電源として電池が不要である。それゆえ、本例においては電池交換をしなくてよい。また、センサシステム100を駆動するために外部固定電源から電力を得る必要もない。
【0092】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0093】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。