(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
キャビネットの引出しを本体内に収容した状態で、地震時等において引出しが本体から不意に前方へ飛び出すことを防止する引出しのラッチ装置がある(例えば、特許文献1〜3等参照)。
【0003】
ここで、特許文献1及び2の引出しのラッチ装置において、抽斗4(引出し2)をキャビネットの本体1(筐体1)内に収容するように押し込んだ位置では、抽斗4(引出し2)により左右方向へスライド可能に支持された連結杆17(作動杆61)の先端に設けた係止片18(ラッチ爪51)が、本体1(筐体1)の側板内面側に設けたストッパー部14(係止突起53)に係止する。そして、係止片18(ラッチ爪51)がストッパー部14(係止突起53)に係止する方向に弾性付勢されているので、ラッチ装置の施錠状態が保持される。
【0004】
抽斗4(引出し2)の前面に設けたプッシュボタン19を押すと(引手4を引くと)、その操作に連動して、前後方向の動作を左右方向の動作に変換する動作変換機構(特許文献1の傾斜ガイド部20及び接当子23等、特許文献2の動作変換手段62)により、弾性付勢力に抗して連結杆17(作動杆61)がスライドする。それにより、係止片18(ラッチ爪51)がストッパー部14(係止突起53)から後退し、前記施錠状態が解除されるので、抽斗4(引出し2)を引き出すことができる。
【0005】
また、特許文献3の引き出しのラッチ装置において、引出し2をキャビネットAの筐体1内に収容するように押し込んだ位置で、引出し2の引き手7を引かない状態では、引出し2により左右方向軸まわりに回動可能に支持された、左右方向に延びる水平の枢支軸8の先端の垂直立ち上がり部8aが垂直であり、垂直立ち上がり部8aが垂直軸10まわりに回動するラッチ9を解除操作しない位置にある。よって、ラッチ9の側面の係止孔9bに筐体1の内側面1aから内方に突出する係止部11が係合する。そして、係止孔9bが係止部11に係合する方向に弾性付勢されているので、ラッチ装置の施錠状態が保持される。
【0006】
引出し2の引き手7を引くと、その操作に連動して、左右方向軸まわりの縦方向回動動作を垂直軸まわりの横方向回動動作に変換する動作変換機構(枢支軸8先端の垂直立ち上がり部8a、及び垂直立ち上がり部8aに当接する作動杆部9aを備えて垂直軸10まわりに回動するラッチ9)により、弾性付勢力に抗してラッチ9が垂直軸10まわりに回動する。それにより、ラッチ9の係止孔9bが係止部11から後退し、前記施錠状態が解除されるので、引出し2を引き出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような従来の引き出しのラッチ装置は、施錠状態を解除するために前記動作変換機構を用いており、前記動作変換機構により動作の変換(力の方向の変換)をする構造であるので、動作の確実性を向上するとともに、より軽快に操作するという観点で見ると改良の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、動作の確実性を向上し、より軽快に操作できるキャビネットにおける引出しのラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るキャビネットにおける引出しのラッチ装置は、前記課題解決のために、左右の側板を含み、前面に開口部を有する本体と、前記側板により前後方向にスライド可能に支持されて前記開口部から出没する引出しを備えたキャビネットにおいて、
前記引出しの飛出しを防止するように施錠する施錠状態と、前記施錠状態を解除して前記引出しを引出し可能にする解錠状態とを切り替え可能なラッチ装置であって、
前記引出しの底板の前部、又は前記引出しの前板の下部に支持されて左右方向の軸芯まわりに回動する駆動杆と、
前記駆動杆の先端部に固定されて前記引出しの左右方向の両端部に位置し、前記駆動杆とともに回動する左右の係止体と、
前記側板、又は前記引出しを支持するレールに固定され、前記施錠状態で前記係止体に係止するロック体と、
前記引出しの底板の前面、又は前記引出しの前板の下部前面に配された操作部を有し、前記操作部の操作により前記駆動杆を前記軸芯周りに回動する操作体と、
前記本体内に前記引出しを収容した状態で前記係止体が前記ロック体に係止する方向へ、前記係止体、前記駆動杆又は前記操作体を付勢する弾性付勢手段と、
を備え、
前記操作部の操作により、前記弾性付勢手段の付勢力に抗して前記係止体を回動させた状態で、前記係止体が前記ロック体から外れて前記解錠状態にな
り、
前記操作体は、前記操作部、前記駆動杆に固定された連結部、並びに前記操作部及び前記連結部を繋ぐ、前後方向に延びる接続部を有し、
前記操作部の前後方向の変位により前記駆動杆が前記軸芯まわりに回動する(請求項1)。
【0011】
このような構成によれば、操作体の操作部の操作により駆動杆が回動し、駆動杆の左右方向の両端部に固定された左右の係止体が駆動杆とともに回動する。そして、このように係止体が回動すると、係止体がロック体から外れ、引出しを引出し可能な解錠状態になる。
すなわち、前記動作変換機構のように動作の変換(力の方向の変換)をすることなく、操作部に作用した操作力が駆動杆から係止体にダイレクトに伝わって係止体が回動し、それにより前記解錠状態になる。
よって、作動不良が起こりにくく、ラッチ装置を前記解錠状態にする動作の確実性を向上できるとともに、前記解錠状態にするための操作がより軽快になる。その上、ラッチ装置の部品点数を低減できる。
【0013】
その上、使用者が引出しを引き出す際に操作部を前後方向に操作することにより、容易にラッチ装置を解錠状態にすることができる。
【0014】
また、本発明に係るキャビネットにおける引出しのラッチ装置は、前記課題解決のために、左右の側板を含み、前面に開口部を有する本体と、前記側板により前後方向にスライド可能に支持されて前記開口部から出没する引出しを備えたキャビネットにおいて、
前記引出しの飛出しを防止するように施錠する施錠状態と、前記施錠状態を解除して前記引出しを引出し可能にする解錠状態とを切り替え可能なラッチ装置であって、
前記引出しの底板の前部、又は前記引出しの前板の下部に支持されて左右方向の軸芯まわりに回動する駆動杆と、
前記駆動杆の先端部に固定されて前記引出しの左右方向の両端部に位置し、前記駆動杆とともに回動する左右の係止体と、
前記側板、又は前記引出しを支持するレールに固定され、前記施錠状態で前記係止体に係止するロック体と、
前記引出しの底板の前面、又は前記引出しの前板の下部前面に配された操作部を有し、前記操作部の操作により前記駆動杆を前記軸芯周りに回動する操作体と、
前記本体内に前記引出しを収容した状態で前記係止体が前記ロック体に係止する方向へ、前記係止体、前記駆動杆又は前記操作体を付勢する弾性付勢手段と、
を備え、
前記操作部の操作により、前記弾性付勢手段の付勢力に抗して前記係止体を回動させた状態で、前記係止体が前記ロック体から外れて前記解錠状態になり、
前記操作体は、前記操作部、前記駆動杆に固定された連結部、並びに前記操作部及び前記連結部を繋ぐ、前後方向に延びる接続部を有し、
前記操作部は、前記接続部の前端部から上方へ延びる部分を有し、当該上方へ延びる部分の上部と前記引出しの前部の段部を把持する操作により、前記解錠状態になる
(請求項
2)。
【0015】
このような構成によれば、
操作体の操作部の操作により駆動杆が回動し、駆動杆の左右方向の両端部に固定された左右の係止体が駆動杆とともに回動する。そして、このように係止体が回動すると、係止体がロック体から外れ、引出しを引出し可能な解錠状態になる。
すなわち、前記動作変換機構のように動作の変換(力の方向の変換)をすることなく、操作部に作用した操作力が駆動杆から係止体にダイレクトに伝わって係止体が回動し、それにより前記解錠状態になる。
よって、作動不良が起こりにくく、ラッチ装置を前記解錠状態にする動作の確実性を向上できるとともに、前記解錠状態にするための操作がより軽快になる。その上、ラッチ装置の部品点数を低減できる。
その上、使用者が引出しの前部の段部を掴んで引出しを引き出す操作に伴って、前記段部とともに操作部の上部を把持する自然な操作により、ラッチ装置が解錠状態になるとともに、前記のとおり軽快な操作が可能であるので、操作部の操作を意識することなくラッチ装置を解錠状態にすることができる。
【0016】
また、
本発明に係るキャビネットにおける引出しのラッチ装置は、前記課題解決のために、左右の側板を含み、前面に開口部を有する本体と、前記側板により前後方向にスライド可能に支持されて前記開口部から出没する引出しを備えたキャビネットにおいて、
前記引出しの飛出しを防止するように施錠する施錠状態と、前記施錠状態を解除して前記引出しを引出し可能にする解錠状態とを切り替え可能なラッチ装置であって、
前記引出しの底板の前部、又は前記引出しの前板の下部に支持されて左右方向の軸芯まわりに回動する駆動杆と、
前記駆動杆の先端部に固定されて前記引出しの左右方向の両端部に位置し、前記駆動杆とともに回動する左右の係止体と、
前記側板、又は前記引出しを支持するレールに固定され、前記施錠状態で前記係止体に係止するロック体と、
前記引出しの底板の前面、又は前記引出しの前板の下部前面に配された操作部を有し、前記操作部の操作により前記駆動杆を前記軸芯周りに回動する操作体と、
前記本体内に前記引出しを収容した状態で前記係止体が前記ロック体に係止する方向へ、前記係止体、前記駆動杆又は前記操作体を付勢する弾性付勢手段と、
を備え、
前記操作部の操作により、前記弾性付勢手段の付勢力に抗して前記係止体を回動させた状態で、前記係止体が前記ロック体から外れて前記解錠状態になり、
前記係止体は、後方へ延出する後方延出部及び前記後方延出部の先端部から左右方向外方へ延出する外方延出部を含み、
前記ロック体は、左右方向内方へ突出する内方延出部を含み、
前記施錠状態では、前記外方延出部が前記内方延出部の後方に位置して前記内方延出部により当て止めされ、
前記操作部を操作して前記係止体を回動すると、前記外方延出部の上面が前記内方延出部の下面よりも下方に位置して前記解錠状態になる
(請求項
3)。
【0017】
このような構成によれば、
操作体の操作部の操作により駆動杆が回動し、駆動杆の左右方向の両端部に固定された左右の係止体が駆動杆とともに回動する。そして、このように係止体が回動すると、係止体がロック体から外れ、引出しを引出し可能な解錠状態になる。
すなわち、前記動作変換機構のように動作の変換(力の方向の変換)をすることなく、操作部に作用した操作力が駆動杆から係止体にダイレクトに伝わって係止体が回動し、それにより前記解錠状態になる。
よって、作動不良が起こりにくく、ラッチ装置を前記解錠状態にする動作の確実性を向上できるとともに、前記解錠状態にするための操作がより軽快になる。その上、ラッチ装置の部品点数を低減できる。
その上、係止体に後方延出部及び外方延出部を備えるとともに、ロック体に内方延出部を備えた簡単な形状で、本発明のラッチ装置の主要構成部品である係止体及びロック体を構成できる。
【0018】
さらに、前記解錠状態における前記外方延出部の下面よりも前記ロック体の底面が下方に位置するのも好ましい実施態様である(請求項
4)。
【0019】
このような構成によれば、係止体が回動して解錠状態となった位置で、係止体の外方延出部の下面よりも下方にロック体の底面が位置する。
したがって、引出しの下方に、ファイルや本等の保形性のある収納物を載せた他の引出し又は棚がある場合において、前記収納物の上端がロック体の底面よりも上に位置することがない。
よって、ラッチ装置を解錠状態にする際における係止体の回動動作を前記収納物が邪魔しないので、引出しが引き出せなくなる不具合が発生しない。
同様に、本体から引出しを引き出した位置から本体内に引出しを押し込んで、ラッチ装置が解錠状態から施錠状態になる際における係止体の回動動作を前記収納物が邪魔しないので、引出しが本体内に入らなくなる不具合も発生しない。
【0020】
本発明に係るキャビネットは、前面に開口部を有する本体と、
前記本体の開口部を開閉する、引手、電子錠、及び認証パネルを備えた扉体と、
前記本体の下方空間に位置する、請求項1〜
4の何れか1項に記載のキャビネットにおける引出しのラッチ装置を備えた、単数又は複数の引出しと、
前記本体の上方空間に位置する、単数又は複数の棚板とを有する(請求項
5)。
【0021】
引出し型のキャビネットの上部に開き扉のキャビネットを積み上げて設置することが多い従来のキャビネットの構成において、電子錠付きのものは特に製造コストが高い。
それに対して本発明のキャビネットの構成によれば、一つの電子錠のみで引出し型と開き扉型を組み合わせた電子錠付きキャビネットを構成できるので、製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、本発明に係るキャビネットにおける引出しのラッチ装置によれば、引出しの前面の左右方向中央部に位置する操作部に作用した操作力が駆動杆から係止体にダイレクトに伝わって係止体が回動し、それにより引出しを引出し可能な解錠状態になるので、ラッチ装置を前記解錠状態にする動作の確実性を向上できるとともに、前記解錠状態にするための操作がより軽快になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
本明細書においては、キャビネットの引出しを引出す方向を前、引出しをキャビネットの本体に収容するように押し込む方向を後とし、後方へ向かった状態で左右を定義する。
【0025】
<キャビネットの構成>
図1及び
図2に示すように、本発明の実施の形態に係るキャビネット10は、本体11、及び、本体11に対して上下のヒンジH,Hにより鉛直軸まわりに回動可能に支持された左右の扉体17,18等を備える。
扉体17,18は、引手、電子錠、及び認証パネル等により構成された開閉操作部9を備え、本体11の前面の開口部11Aを開閉する。
【0026】
本体11は、左右の側板12,13、天板14及び底板15、並びに背板16により形成され、上方空間には棚板19,19,…を、下方空間には、側板12,13により前後方向にスライド可能に支持された引出し20,20,…を備える。
また、キャビネット10は、詳細は後述する引出し20のラッチ装置1を備えるので、地震時等において、引出し20の不意の飛出しを防止できる。
このようなキャビネット10の構成によれば、本体11の下方空間に引出し20,20,…を、本体11の上方空間に棚板19,19を備えるとともに、本体11の前面の開口部11Aを開閉する、電子錠付きの扉体17,18を備える。
よって、一つの電子錠のみで引出し型と開き扉型を組み合わせた電子錠付きキャビネット10を構成できるので、製造コストを低減できる。
なお、本発明のキャビネットにおける引出しのラッチ装置1が適用されるキャビネットは、扉体を備えない全面開放型のものであってもよい。
【0027】
図3に示すように、引出し20は、底板21、底板21の左右両端部に立設した側板22,23、底板21の後端部に立設した背板24等からなる、前面開放型の棚板状のものである。
図4は、引出し20に前板26及び仕切板27を取り付けた状態を示している。前板26を取り付けることで、前後方向に並べるように書類等を立てて収納することも可能になる。
【0028】
<引出しのラッチ装置の構成>
本発明の実施の形態に係る引出し20のラッチ装置1は、
図5〜
図8、並びに
図10(a)及び
図10(b)に示す引出し20に取り付ける部分と、
図9、並びに
図11(a)及び
図11(b)に示す、本体11の側板12,13に取り付ける部分(ロック体4L,4R)とからなる。
ここで、ラッチ装置1の構成部品は、引出し20及び本体11の左右方向中央の鉛直平面を対称面として面対称の形状である。
【0029】
(引出しに取り付ける部分)
先ず、
図5〜
図8、並びに
図10(a)及び
図10(b)を参照して、ラッチ装置1における引出し20に取り付ける部分の構成について説明する。
ラッチ装置1における引出し20に取り付ける部分は、駆動杆2、係止体3L,3R、及び操作体5、並びに中央支持部材7、及び端部支持部材8L,8R、並びに弾性付勢手段であるねじりコイルばね6,6からなる。
【0030】
駆動杆2は、断面四角形状の鋼製であり、引出し20の底板21の前部に支持されて左右方向の軸芯まわりに回動する。なお、引出し20の構造によっては、底板21の前側に位置する前板の下部により駆動杆20を支持してもよい。
【0031】
係止体3L,3Rは、合成樹脂製であり、連結部31の係合孔31Bに駆動杆2の左右両端部(先端部)が嵌合するので、駆動杆2の両端部に固定される。
また、係止体3L,3Rは、後方へ延出する後方延出部32及び後方延出部32の先端部から左右方向外方へ延出する外方延出部33を含む。
なお、係止体3L,3Rは、後方延出部32及び外方延出部33を含む形状に限定されるものではなく、ロック体4L,4Rとの係脱ができる形状を備えたものであればよい。
【0032】
操作体5は、合成樹脂製であり、係合凹部51Bに駆動杆2を嵌合させて駆動杆2の左右方向中央部に固定される連結部51、ラッチ装置1の施錠状態を解除する際に操作する操作部52、及び連結部51及び操作部52を繋ぐ、前後方向に延びる接続部53からなる。
操作体5は、引出し20の底板21の前面に形成した挿通開口21A(
図6)の前方から、連結部51及び接続部53を挿通した後に、連結部51に駆動杆2を取り付ける。
ここで、操作体5における
図6の挿通開口21A(底板21の前面)よりも前側に露出する操作部52(
図1、及び
図3〜
図5参照)は、前方への突出長さが小さいので、落下物等が衝突した場合であっても、その衝撃力により破損しにくい。
【0033】
中央支持部材7は、合成樹脂製であり、その円弧状のガイド孔7Aに操作体5の連結部51を収容した状態で、弾性係止爪7Bを引出し20の底板21の前面に形成した挿通開口21A(
図6及び
図10(a))に係止し、弾性係止爪7Cを底板21の前部に形成した係合孔21B(
図6)に係止し、弾性係止爪7Dを底板21の前部(前補強25)に形成した係合孔21C(
図6及び
図10(a))に係止するように取り付ける。
【0034】
端部支持部材8L,8Rは、合成樹脂製であり、その丸孔状のガイド孔8Aに係止体3L,3Rの連結部31を嵌合するように係止体3L,3Rを取り付けた後、係止体3L,3Rの連結部31の係合孔31Bに駆動杆2の左右両端部を嵌合する。
その状態で、端部支持部材8L,8Rを引出し20に取り付ける。
【0035】
左右の端部支持部材8L,8Rの取付方法は同様であるので、左側の端部支持部材8Lについて説明する。
図8に示すように、突出片8Dの下面が前補強25の上面25Aに接するように、また、弾性係止爪8B,8Bが引出し20の底板21の前部後面に形成した係合孔21Dに係止し、弾性係止爪8Cが引出し20の側板22の前下部外面に形成した係合孔22Aに係止するように下方から取り付ける。
【0036】
以上のようにして、
図5のようにラッチ装置1の引出し20に取り付ける部分を引出し20に取り付けた状態では、
図7に示す中央支持部材7のガイド孔7Aに、操作体5の連結部51の円筒面51Aが内接するとともに、
図7に示す端部支持部材8L,8Rのガイド孔8Aに、係止体3L,3Rの連結部31の円筒面31Aが内接する。
よって、操作体5、駆動杆2,及び係止体3L,3Rは、引出し20の底板21の前部に支持された状態で、一体となって駆動杆2の軸芯まわりに回動可能となる。
【0037】
ラッチ装置1の操作部52は、
図10(a)に示すように、前後方向に延びる接続部53の前端部から上方へ延びる部分を有する。そして、操作部52の下部は、引出し20の底板21の前面(又は引出し20の前板の下部前面)と略平行であり、操作部52の上部は上方に向かうにつれ徐々に前方へ迫り出すように湾曲した形態を有する。
使用者が引出し20の前部の段部Dを掴んで引出し20を引き出す操作に伴って、使用者は段部Dとともに操作部52の上部を把持するので、
図10(b)のように操作部52の上部が引出し20側に押される(
図11(a)の矢印A)。よって、
図11(a)の矢印Bのように、操作体5、駆動杆2、及び係止体3L,3Rは、一体となって回動する。
【0038】
図7及び
図8に示す弾性付勢手段であるねじりコイルばね6,6は、端部支持部材8Lと係止体3Lの間、及び端部支持部材8Rと係止体3Rの間に装着される。
ねじりコイルばね6,6は、それらの弾性復元力が、
図1のようにキャビネット10の本体11内に引出し20を収容した状態で、係止体3L,3Rが、詳細は後述するロック体4L,4Rに係止する方向(
図11(a)の矢印Cと反対の方向)へ作用する。
なお、係止体3L,3R、駆動杆2、及び操作体5は一体となって回動するので、前記弾性付勢手段は、その弾性復元力を、係止体3L,3R、駆動杆2、又は操作体5を付勢することにより前記方向へ作用させればよい。
【0039】
(本体の側板に取り付ける部分)
次に、
図9(a)及び
図9(b)、並びに
図11(a)を参照して、ラッチ装置1における本体11の側板12,13に取り付ける部分(ロック体4L,4R)の構成について説明する。
図9(a)に示すロック体4Lは
図11(a)に示すように左側板12の内面に取り付け、
図9(b)に示すロック体4Rは右側板13の内面に取り付ける。すなわち、側板12,13の図示しない係合孔に、ロック体4L,4Rの本体41の基端側部分を嵌入することにより、弾性係止爪41Bが係止して抜け止めされる。
【0040】
なお、ロック体4L,4Rを、側板12,13ではなく、引出し20を支持するレールに取り付けてもよい。
ロック体4L,4Rは、合成樹脂製であり、左右方向内方へ突出する内方延出部42、内方延出部42の後方に位置する後壁部43、及び後壁部43の上部から前方へ延出する前方延出部44を有する。
【0041】
<引出しのラッチ装置の動作)
次に、
図1、
図10(a)及び
図10(b)、
図11(a)及び
図11(b)、並びに
図12(a)及び
図12(b)を参照して、ラッチ装置1の動作について説明する。
図1に示す引出し20を本体11内に収容するように押し込んだ位置で、操作部52を操作しない状態では、
図10(a)、
図11(a)及び
図12(a)に示す施錠状態Lになっている。
すなわち、
図12(a)のように、係止体3L(3R)の外方延出部33がロック体4L(4R)の内方延出部42の後方に位置しており、ロック体4L(4R)の後壁43の前方延出部44の下面44Aに、外方延出部33の上面33Aが当て止めされる。
よって、ねじりコイルばね6により弾性付勢される外方延出部33の最上位置が規制され、このように規制された状態で、外方延出部33の前面33Cが内方延出部42の後面42Cにより当て止めされるので、引出し20は前方へ移動できない。
【0042】
このような施錠状態Lにおいて、
図1の引出し20を引き出すべく、使用者が、
図10(a)における引出し20の前部の段部Dを掴んで引出し20を引き出す操作を行うと、その操作に伴って使用者は段部Dとともに操作部52の上部を把持する。
それにより
図11(a)の矢印Aのように、ねじりコイルばね6の弾性付勢力に抗して操作体5の操作部52の上部が後方へ押され、前記のとおり、操作体5とともに、駆動杆2及び係止体3L,3Rは、一体となって矢印Bのように回動するので、
図10(b)、
図11(b)及び
図12(b)の解錠状態ULになる。
このような解錠状態ULでは、係止体3L(3R)は、その外方延出部33が
図11(a)の矢印Cのように下降しており、
図12(b)のように、外方延出部33の上面33Aがロック体4L(4R)の内方延出部42の下面42Aよりも下方に位置しているので、本体11から前方へ引出し20を引き出すことができる。
【0043】
本体11から引出し20を引き出した位置から本体11内に引出し20を押し込む際には、操作部52を操作しなくても、引出し20を押し込む動作に伴って、本体11内に引出し20を収容した位置では、
図10(a)、
図11(a)及び
図12(a)に示す施錠状態Lに復帰する。
すなわち、係止体3L(3R)の外方延出部33の上面33Aは後方へ行くにしたがって下降する傾斜面であり、ロック体4L(4R)の内方延出部42の前面42Bは下方へ行くにしたがって後退する傾斜面である。よって、引出し20を押し込む動作に伴って、外方延出部33の上面33Aが内方延出部42の前面42Bの傾斜面に沿って後方へ移動し、係止体3L(3R)、駆動杆2、及び操作体5が回動するので、外方延出部33が内方延出部42を通過できる。そして、本体11内に引出し20を収容した位置では、ねじりコイルばね6の弾性付勢力により、
図10(a)、
図11(a)及び
図12(a)に示す施錠状態Lになる。
【0044】
以上において、操作部52の前後方向の変位により操作体5を回動させる構成について説明したが、操作体5を回動させるための操作部は、押釦式、又は左右スライド式等であってもよく、前後方向の変位により操作体5を回動させる構成に限定されない。
【0045】
図12(b)に示す係止体3L(3R)が回動して解錠状態ULとなった位置で、係止体3L(3R)の外方延出部33の下面33Bよりも、ロック体4L(4R)の本体41の底面41Aは下方に位置する。
したがって、引出し20の下方に、ファイルや本等の保形性のある収納物を載せた他の引出し20がある場合において、前記収納物の上端(例えば、
図12(b)中の二点鎖線E参照)がロック体4L(4R)の底面41Aよりも上に位置することがない。
よって、ラッチ装置1を解錠状態ULにする際における係止体3L,3Rの回動動作を前記収納物が邪魔しないので、引出し20が引き出せなくなる不具合が発生しない。
同様に、本体11から引出し20を引き出した位置から本体11内に引出し20を押し込んで、ラッチ装置1が解錠状態ULから施錠状態Lになる際における係止体3L,3Rの回動動作を前記収納物が邪魔しないので、引出し20が本体11内に入らなくなる不具合も発生しない。
【0046】
以上のようなラッチ装置1によれば、操作体5の操作部52の操作により駆動杆2が回動し、駆動杆2の左右方向の両端部に固定された左右の係止体3L,3Rが駆動杆2とともに回動する。そして、このように係止体3L,3Rが回動すると、係止体3L,3Rがロック体4L,4Rから外れ(係止体3L,3Rの外方延出部33の上面33Aがロック体4L,4Rの内方延出部42の下面42Aよりも下方に位置し)、本体11から前方へ引出し20を引き出すことができる。
すなわち、操作部52に作用した操作力が駆動杆2から係止体3L,3Rにダイレクトに伝わって係止体3L,3Rが回動し、それにより解錠状態ULになるので、作動不良が起こりにくく、ラッチ装置1を解錠状態ULにする動作の確実性を向上できるとともに、解錠状態ULにするための操作がより軽快になる。その上、ラッチ装置の部品点数を低減できる。
【0047】
その上、操作体5の操作部52は、接続部53の前端部から上方へ延びる部分を有し、当該上方へ延びる部分の上部と引出し20の前部の段部Dを把持する操作により、ラッチ装置1が解錠状態ULになる。
よって、使用者が引出し20の前部の段部Dを掴んで引出し20を引き出す操作に伴って、段部Dとともに操作部52の上部を把持する自然な操作により、ラッチ装置1が解錠状態ULになるとともに、前記のとおり軽快な操作が可能であるので、操作部52の操作を意識することなくラッチ装置1を解錠状態ULにすることができる。
特に、操作部52の上部が、前記のとおり上方に向かうにつれ徐々に前方へ迫り出すように湾曲した形態を有することから、使用者が操作部52に指を当てることで自然に指を上方に擦りあげる動きになるので、段部Dとともに操作部52の上部を把持してラッチ装置1を解錠状態ULにする動作がより自然になる。