(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなインジェクション動作において、圧縮室の内圧が導入ポートの一次通路の内圧よりも高くなると、板ばね弁が元の状態に戻り、導入ポートが閉鎖される。これにより、圧縮室側から導入ポートへの冷媒の逆流を防止できる。ところが、開状態の板ばね弁が元の位置に戻るまでの期間には、未だ冷媒が逆流可能な流路が形成される。従って、この期間において、圧縮された冷媒が導入ポートに逆流すると、圧縮効率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、その目的は、板ばね弁が開状態から閉状態に遷移するまでの間に逆流してしまう流体の量を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、電動機(31)と、流体を圧縮する圧縮室(45)を有し、上記電動機(31)に駆動される圧縮機構(40)と、上記圧縮室(45)に開口する導入ポート(61)と、該導入ポート(61)を開閉する逆止弁機構(70)とを有し、該導入ポート(61)から上記圧縮室(45)へ中間圧の流体を導入するインジェクション機構(60)とを備えた圧縮機を対象とし、上記逆止弁機構(70)は、上記導入ポート(61)の内周壁(63)に沿った枠部(83)と、該枠部(83)の内部に配置される弁先端部(84)と、該弁先端部(84)と上記枠部(83)とを繋ぐ首部(85)とを有し、弾性変形することで弁先端部(84)が導入ポート(61)を開放する板ばね弁(75)と、該板ばね弁(75)と上記導入ポート(61)の流出開口面(62)との間に配置され、開状態の上記板ばね弁(75)の上記弁先端部(84)が接触する弁押さえ(90)とを備え、該弁押さえ(90)は、開状態の上記弁先端部(84)の一部を上記導入ポート(61)の流出開口面(62)に露出させる形状であり、上記弁押さえ(90)は、
上記導入ポート(61)の流出開口面(62)側から弁先端部(84)の軸心(P)方向に該弁先端部(84)を見た場合に、開状態の上記弁先端部(84)の少なくとも中央部(84a)と、該弁先端部(84)の外周縁部(84b)とを上記導入ポート(61)の流出開口面(62)に露出させる形状であることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、導入ポート(61)における板ばね弁(75)の上流側の内圧が圧縮室(45)の内圧よりも大きくなると、この差圧によって弁先端部(84)が圧縮室(45)側へ押し進めされる。これにより、枠部(83)に連続する首部(85)が弾性変形するとともに、変位した弁先端部(84)が弁押さえ(90)に接触する。この結果、導入ポート(61)が開放される。
【0009】
一方、圧縮室(45)の内圧が導入ポート(61)における板ばね弁(75)の上流側の内圧よりも大きくなると、圧縮室(45)の流体が導入ポート(61)に逆流しようとする。ここで、本発明の弁押さえ(90)は、弁先端部(84)の一部が導入ポート(61)を流出開口面(62)に露出させる形状であるため、圧縮室(45)の流体の内圧は、このような露出された部分に作用する。この結果、流体の圧力を受けた弁先端部(84)は、速やかに導入ポート(61)を閉鎖する位置にまで押し戻される。従って、開状態の板ばね弁(75)を速やかに閉状態に戻すことができるので、流体の逆流する量を低減できる。
【0010】
第1の発明では、弁先端部(84)の中央部(84a)が流出開口面(62)に露出される。このため、圧縮室(45)の流体が逆流しようとすると、この流体の圧力が弁先端部(84)の重心部位に作用し易くなる。これにより、弁先端部(84)を一層速やかに閉状態まで戻すことができる。
【0011】
第2の発明は、電動機(31)と、流体を圧縮する圧縮室(45)を有し、上記電動機(31)に駆動される圧縮機構(40)と、上記圧縮室(45)に開口する導入ポート(61)と、該導入ポート(61)を開閉する逆止弁機構(70)とを有し、該導入ポート(61)から上記圧縮室(45)へ中間圧の流体を導入するインジェクション機構(60)とを備えた圧縮機であって、上記逆止弁機構(70)は、上記導入ポート(61)の内周壁(63)に沿った枠部(83)と、該枠部(83)の内部に配置される弁先端部(84)と、該弁先端部(84)と上記枠部(83)とを繋ぐ首部(85)とを有し、弾性変形することで弁先端部(84)が導入ポート(61)を開放する板ばね弁(75)と、上記板ばね弁(75)と上記導入ポート(61)の流出開口面(62)との間に配置され、開状態の上記板ばね弁(75)の上記弁先端部(84)が接触する弁押さえ(90)とを備え、上記弁押さえ(90)は、開状態の上記弁先端部(84)の一部を上記導入ポート(61)の流出開口面(62)に露出させる形状であり、上記弁押さえ(90)は、開状態の弁先端部(84)が接触する当接部(92)を有し、上記当接部(92)には、上記弁先端部(84)を露出させるための開口(96)又は切り欠き(97)が形成され、上記弁押さえ(90)は、上記導入ポート(61)の内周壁(63)に沿った筒状に形成され、上記当接部(92)を囲む筒部(91)と、上記筒部(91)と上記当接部(92)とを繋ぐ連結部(93)とを有し、上記筒部(91)は、筒状の胴部(91a)と、該胴部(91a)の上流側端部から径方向外方に拡がる環状の鍔部(91b)とを有し、上記導入ポート(61)の内周壁(63)には、上記鍔部(91b)が内嵌する大径部(64)と、該大径部(64)と該導入ポート(61)の流出開口面(62)との間に形成され上記胴部(91a)が内嵌する小径部(65)とが形成されることを特徴とする圧縮機である。
【0012】
第2の発明では、弁押さえ(90)の筒部(91)及び鍔部(91b)が、導入ポート(61)の小径部(65)及び大径部(64)に内嵌することで、弁押さえ(90)が圧縮室(45)側へ抜けてしまうことを確実に防止できる。小径部(65)は、大径部(64)と導入ポート(61)の流出開口面(62)との間に形成されるため、筒部(91)の先端を流出開口面(62)の付近まで延ばすことができる。これにより、導入ポート(61)において、弁押さえ(90)と圧縮室(45)との間に形成される死容積を削減できる。
【0013】
第3の発明は、電動機(31)と、流体を圧縮する圧縮室(45)を有し、上記電動機(31)に駆動される圧縮機構(40)と、上記圧縮室(45)に開口する導入ポート(61)と、該導入ポート(61)を開閉する逆止弁機構(70)とを有し、該導入ポート(61)から上記圧縮室(45)へ中間圧の流体を導入するインジェクション機構(60)とを備えた圧縮機であって、上記逆止弁機構(70)は、上記導入ポート(61)の内周壁(63)に沿った枠部(83)と、該枠部(83)の内部に配置される弁先端部(84)と、該弁先端部(84)と上記枠部(83)とを繋ぐ首部(85)とを有し、弾性変形することで弁先端部(84)が導入ポート(61)を開放する板ばね弁(75)と、上記板ばね弁(75)と上記導入ポート(61)の流出開口面(62)との間に配置され、開状態の上記板ばね弁(75)の上記弁先端部(84)が接触する弁押さえ(90)とを備え、上記弁押さえ(90)は、開状態の上記弁先端部(84)の一部を上記導入ポート(61)の流出開口面(62)に露出させる形状であり、上記弁押さえ(90)は、開状態の弁先端部(84)が接触する当接部(92)を有し、上記当接部(92)には、上記弁先端部(84)を露出させるための開口(96)又は切り欠き(97)が形成され、上記当接部(92)は、開状態の弁先端部(84)に沿う傾斜面(89)を有していることを特徴とする圧縮機である。
【0014】
第3の発明では、閉状態の弁先端部(84)が傾いても、この弁先端部(84)と当接部(92)の傾斜面(89)とが面接触する。このため、当接部(92)と弁先端部(84)とのいわゆる片当たりを回避でき、当接部(92)に作用する面圧を低減できる。
【0015】
第
4の発明は、第
2または第3の発明において、上記弁押さえ(90)は、開状態の上記弁先端部(84)の少なくとも中央部(84a)を上記導入ポート(61)の流出開口面(62)に露出させる形状であることを特徴とする。
【0016】
第
4の発明では、弁先端部(84)の中央部(84a)が流出開口面(62)に露出される。このため、圧縮室(45)の流体が逆流しようとすると、この流体の圧力が弁先端部(84)の重心部位に作用し易くなる。これにより、弁先端部(84)を一層速やかに閉状態まで戻すことができる。
【0017】
第
5の発明は、第
1の発明において、上記弁押さえ(90)は、開状態の弁先端部(84)が接触する当接部(92)を有し、上記当接部(92)には、上記弁先端部(84)を露出させるための開口(96)又は切り欠き(97)が形成されていることを特徴とする。
【0018】
第
5の発明では、板ばね弁(75)が開状態になると、弁先端部(84)が弁押さえ(90)の当接部(92)に接触する。これにより、弁先端部(84)のこれ以上の進出が規制される。一方、この当接部(92)には開口(96)又は切り欠き(97)が形成される。このため、当接部(92)に接触する弁先端部(84)の一部を、この開口(96)又は切り欠き(97)を通じて流出開口面(62)に露出させることができる。
【0019】
第
6の発明は、第
5の発明において、上記当接部(92)は、上記開口(96)を内部に形成した環状部材で構成されることを特徴とする。
【0020】
第
6の発明では、当接部(92)が環状に形成されるため、弁先端部(84)と当接部(92)との接触面積を拡大でき、当接部(92)に作用する面圧を低減できる。一方、環状の当接部(92)の内部には、開口(96)が形成されるため、弁先端部(84)の一部を、この開口(96)を通じて流出開口面(62)に露出させることができる。
【0021】
第
7の発明は、第
5又は第
6の発明において、上記弁押さえ(90)は、上記導入ポート(61)の内周壁(63)に沿った筒状に形成され、上記当接部(92)を囲む筒部(91)と、上記筒部(91)と上記当接部(92)とを繋ぐ連結部(93)とを有することを特徴とする。
【0022】
第
7の発明では、筒部(91)と当接部(92)とを連結部(93)で繋ぐことで、筒部(91)の内部に当接部(92)を保持できる。
【0023】
第
8の発明は、第
7の発明において、上記連結部は、上記当接部(92)と筒部(91)の間を径方向に延びる複数のリブ(93)で構成され、上記筒部(91)と上記当接部(92)と上記複数のリブ(93)との間に流体の流通孔(95)が形成されることを特徴とする。
【0024】
第
8の発明では、筒部(91)と当接部(92)とを複数のリブ(93)で繋ぐことで、筒部(91)の内部に当接部(92)を支持できる。また、筒部(91)と当接部(92)と複数のリブ(93)の間に、複数の流通孔(95)を形成できる。
【0025】
第
9の発明は、第1乃至第
8のいずれか1つの発明において、上記圧縮機構(40)は、上記圧縮室(45)を形成するシリンダ(42)と、該シリンダ(42)の内部で偏心回転するピストン(51)とを有することを特徴とする。
【0026】
第
9の発明の圧縮機構(40)は、シリンダ(42)の内部でピストン(51)が偏心回転する、いわゆる揺動ピストン式、あるいは回転ピストン式(ロータリ式)に構成される。この方式の圧縮機構(40)は、例えばスクロール式の圧縮機構と比較して流体が圧縮される速度が比較的速い。このため、上述のように、板ばね弁の戻り遅れに起因して流体が逆流してしまうと、逆流する流体の質量流量が比較的大きくなり易い。
【0027】
これに対し、本発明では、板ばね弁(75)を速やかに閉状態に戻すことができるため、流体の逆流に起因する圧縮効率の低下を効果的に抑制できる。
【0028】
第
10の発明は、
第1乃至第9のいずれか1つの発明において、上記板ばね弁(75)には、上記枠部(83)と上記首部(85)との接続部分の側縁、及び該首部(85)と上記弁先端部(84)の接続部分の側縁の少なくとも一方に円弧状の切り欠き部(87,88)が形成されることを特徴とする圧縮機である。
【0029】
第10の発明では、枠部(83)と首部(85)との接続部分の側縁や、首部(85)と弁先端部(84)との接続部分の側縁に円弧状の切り欠き部(87,88)を形成することで、板ばね弁(75)の弾性変形時におけるこれらの部位の応力集中を緩和できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、弁押さえ(90)が板ばね弁(75)の弁先端部(84)の一部を露出さえる形状としたので、逆流する流体の圧力を利用して板ばね弁(75)を速やかに閉状態に遷移させることができる。この結果、導入ポート(61)へ逆流する流体の量を削減でき、所望の圧縮効率を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0033】
《発明の実施形態》
本実施形態に係る圧縮機(20)は、流体(冷媒)を圧縮する回転式圧縮機である。
図1に示すように、圧縮機(20)は、空気調和装置(10)の冷媒回路(11)に接続される。空気調和装置(10)は、冷房と暖房とを切り換えて行う。
【0034】
〈冷媒回路の全体構成〉
図1示すように、冷媒回路(11)では、充填された冷媒が循環することで冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(11)には、圧縮機(20)、四方切換弁(12)、室外熱交換器(13)、室外膨張弁(14)、気液分離器(15)、室内膨張弁(16)、及び室内熱交換器(17)が接続される。四方切換弁(12)の第1ポート(P1)は圧縮機(20)の吐出管(22)に連通する。四方切換弁(12)の第2ポート(P2)は圧縮機(20)の吸入管(23)に連通する。四方切換弁(12)の第3ポート(P3)は室外熱交換器(13)のガス端部に連通する。四方切換弁(12)の第4ポート(P4)は室内熱交換器(17)のガス端部に連通する。
【0035】
冷媒回路(11)には、気液分離器(15)の内部と圧縮機(20)の中間配管(25)とを連通する中間インジェクション配管(18)が接続される。中間インジェクション配管(18)には、開閉弁である中間電磁弁(19)が接続される。
【0036】
冷媒回路(11)には、吸入連通管(8)が接続される。吸入連通管(8)の一端は中間インジェクション配管(18)における中間電磁弁(19)の下流側に接続される。吸入連通管(8)の他端は圧縮機(20)の吸入ラインに接続される。吸入連通管(8)には、開閉弁である吸入電磁弁(9)が接続される。
【0037】
冷房運転では、四方切換弁(12)が第1状態(
図1の破線で示す状態)となり、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通すると同時に第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とが連通する。圧縮機(20)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(13)で凝縮し、室内膨張弁(16)で減圧され、室内熱交換器(17)で蒸発する。
【0038】
暖房運転では、四方切換弁(12)が第2状態(
図1の実線で示す状態)となり、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通すると同時に第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する。圧縮機(20)で圧縮された冷媒は、室内熱交換器(17)で凝縮し、室外膨張弁(14)で減圧され、室外熱交換器(13)で蒸発する。
【0039】
冷媒回路(11)では、中間圧の冷媒を圧縮機(20)の圧縮室(45)へ導入する動作(インジェクション動作)が行われる。インジェクション動作が実行されるときには、中間電磁弁(19)が開放され且つ吸入電磁弁(9)が閉鎖される。インジェクション動作が停止されるときには、中間電磁弁(19)が閉鎖され且つ吸入電磁弁(9)が開放される。これにより、気液分離器(15)内の中間圧の冷媒は、中間インジェクション配管(18)を通じて圧縮機(20)の中間配管(25)へ導入される。
【0040】
〈圧縮機の全体構成〉
圧縮機(20)の全体構成について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。圧縮機(20)は、ケーシング(21)と、該ケーシング(21)の内部に収容される駆動機構(30)及び圧縮機構(40)を備えている。ケーシング(21)は、中空円筒状に形成される。ケーシング(21)の内部空間(S)には、圧縮機(20)で圧縮された冷媒が満たされる。つまり、圧縮機(20)は、いわゆる高圧ドーム式に構成される。ケーシング(21)の上部には、1本の吐出管(22)が接続される。ケーシング(21)の胴部には、1本の吸入管(23)と1本の中間配管(25)(
図1を参照)とが接続される。
【0041】
駆動機構(30)は、圧縮機構(40)の駆動源を構成する。駆動機構(30)は、電動機(31)と駆動軸(35)とを有している。電動機(31)は、ケーシング(21)の胴部に固定される固定子(32)と、該固定子(32)の内部に挿通される回転子(33)とを有する。回転子(33)の内部には、駆動軸(35)が固定される。電動機(31)は、インバータ装置を介して電力が供給される。つまり、電動機(31)は、回転数が可変なインバータ式に構成される。
【0042】
駆動軸(35)は、1本の主軸部(36)と、該主軸部(36)の下部に形成される1つの偏心部(37)とを有している。主軸部(36)は、電動機(31)と、圧縮機構(40)の下部とに亘って上下に延びている。偏心部(37)の軸心は、主軸部(36)の軸心から所定量だけずれている。
【0043】
本実施形態の圧縮機構(40)は、シリンダ(42)及びピストン(51)を有し、シリンダ(42)の内部でピストン(51)が揺動運動を行う、いわゆる揺動ピストン式に構成される。圧縮機構(40)は、上側から下側に向かって順に、フロントヘッド(41)、シリンダ(42)、及びリアヘッド(43)を有している。
【0044】
フロントヘッド(41)は、ケーシング(21)の胴部に固定される。フロントヘッド(41)は、シリンダ(42)のシリンダ室(44)の上側の開口面を閉塞する。フロントヘッド(41)の中央には、駆動軸(35)の軸方向上側に延出するボス部(41a)が形成される。ボス部(41a)の内周面には、駆動軸(35)を回転可能に支持する主軸受が形成される。フロントヘッド(41)には、吐出ポート(46)が形成される(
図3を参照)。吐出ポート(46)の始端はシリンダ(42)の圧縮室(45)に連通し、吐出ポート(46)の終端は内部空間(S)に連通する。吐出ポート(46)は、リード弁等の吐出弁(図示省略)によって開閉される。
【0045】
リアヘッド(43)は、ケーシング(21)の胴部に固定される。リアヘッド(43)は、シリンダ室(44)の下側の開口面を閉塞する。リアヘッド(43)の中央には、駆動軸(35)を回転可能に支持する副軸受が形成される。
【0046】
シリンダ(42)は環状ないし筒状に形成され、その内部にシリンダ室(44)が形成される。シリンダ室(44)の横断面(駆動軸(35)に軸直角な断面)の形状は、正円形状に形成される。
【0047】
シリンダ(42)には、シリンダ室(44)の吸入室(50)に連通する吸入ポート(47)が形成される。吸入ポート(47)には、吸入管(23)が接続される。シリンダ(42)の上死点寄りの部分には、ブッシュ孔(55)がそれぞれ形成される。
【0048】
ピストン(51)は、シリンダ室(44)に配置され、シリンダ室(44)の内周面に沿うように揺動回転運動を行う。ピストン(51)は、その内部に偏心部(37)が嵌合する円環状に形成される。
【0049】
圧縮機構(40)は、ブレード(53)と一対のブッシュ(54)とを有する。
図3に示すように、ブレード(53)は、ピストン(51)と一体的に設けられる。ブレード(53)は、ピストン(51)の外周面のうち、ブッシュ孔(55)の近傍(上死点寄り)の部分に連結される。ブレード(53)は、ピストン(51)の外周面からシリンダ室(44)の径方向外方へ突出する板状に形成される。ブレード(53)は、シリンダ室(44)を吸入室(50)と圧縮室(45)とに区画する。ブレード(53)は、ピストン(51)が回転することに伴い、揺動運動を行うように構成される。
【0050】
一対のブッシュ(54)は、軸直角な断面が略半径形状に形成され、ブッシュ孔(55)の内部に挿入されている。一対のブッシュ(54)は、それぞれの平坦面が互いに対向するように配置される。これらの平坦面の間に、ブレード(53)が進退可能に挿入される。つまり、ブッシュ(54)は、ブレード(53)を進退可能に保持しながら、ブッシュ孔(55)の内部で揺動する。
【0051】
−圧縮機の基本動作−
圧縮機(20)の基本動作について
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0052】
電動機(31)が通電されると、回転子(33)が回転する。これに伴い、駆動軸(35)、各偏心部(37)、及び各ピストン(51)が回転する。この結果、圧縮機構(40)で冷媒が圧縮され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。つまり、冷媒回路(11)の低圧の冷媒は、吸入管(23)を流れ、圧縮機構(40)で圧縮される。圧縮機構(40)で圧縮された冷媒(高圧の冷媒)は、内部空間(S)へ流出し、吐出管(22)を流れて冷媒回路(11)へ流出する。
【0053】
−圧縮機構の動作−
圧縮機構(40)の具体的な動作について
図3を参照しながら説明する。
【0054】
圧縮機構(40)では、吸入行程、圧縮行程、及び吐出行程が順に繰り返し行われる。ピストン(51)が
図3の時計回りに回転すると、吸入室(50)の容積が徐々に拡大する。これにより低圧の冷媒が吸入ポート(47)を介して吸入室(50)に徐々に吸入されていく(吸入行程)。この吸入行程は、ピストン(51)とシリンダ室(44)との間のシールポイントが吸入ポート(47)を完全に通過する直前まで行われる。
【0055】
シールポイントが吸入ポート(47)を通過すると、吸入室(50)であった空間が圧縮室(45)になる。ピストン(51)が更に回転すると、圧縮室(45)の容積が徐々に縮小し、圧縮室(45)で冷媒が圧縮されていく(圧縮行程)。そして、圧縮室(45)の内圧が所定値以上になると、吐出弁が開放され、圧縮室(45)の冷媒が吐出ポート(46)を通じて内部空間(S)へ吐出される(吐出行程)。
【0056】
〈インジェクション機構の全体構成〉
圧縮機(20)は、インジェクション動作を行うためのインジェクション機構(60)を備えている。インジェクション機構(60)の構成について、
図2〜
図8を参照しながら説明する。インジェクション機構(60)は、中間圧の流体をシリンダ室(44)(厳密には圧縮室(45))へ導入するための導入ポート(61)と、導入ポート(61)を開閉するための逆止弁機構(70)とを備えている。本実施形態の導入ポート(61)及び逆止弁機構(70)は、シリンダ(42)の内部に設けられる。
【0057】
〈導入ポート〉
図2、
図3、及び
図5に示す導入ポート(61)は、シリンダ(42)を径方向に貫通している。導入ポート(61)の始端側には、中間配管(25)が接続される。導入ポート(61)の終端(流出端)は、シリンダ室(44)ないし圧縮室(45)に開口している。これにより、中間配管(25)と圧縮室(45)とが導入ポート(61)を介して連通する。導入ポート(61)の流出端には、円形の流出開口面(62)が形成される。導入ポート(61)の流出開口面(62)は、圧縮室(45)の内周面のうち、ピストン(51)の回転角が180°〜360°の位置のシールポイントに対応する箇所に設けるのがよい。なお、この回転角は、ピストン(51)が上死点にある(ブッシュ孔(55)に最も近い位置にある)状態を0°とする。
【0058】
図5に示すように、導入ポート(61)の内周壁(63)には、大径部(64)と小径部(65)とが形成される。大径部(64)は、シリンダ(42)の外周面から導入ポート(61)の流出開口面(62)のやや手前に亘って形成される。小径部(65)は、大径部(64)から導入ポート(61)の流出開口面(62)に亘って形成される。大径部(64)の軸心と小径部(65)の軸心とは互いに同じ軸(
図5に示す軸心P)上にある。大径部(64)の内径は小径部(65)の内径よりも大きい。これにより、導入ポート(61)の内周壁(63)には、大径部(64)と小径部(65)との境界に環状の段差面(66)が形成される。
【0059】
導入ポート(61)における逆止弁機構(70)の上流側は、一次側通路(67)を構成する。
【0060】
〈逆止弁機構の全体構成〉
逆止弁機構(70)は、導入ポート(61)の流出端付近に設けられる。
図4及び
図5に示すように、逆止弁機構(70)は、冷媒の流れの上流側から下流側に向かって順に、弁座(71)、板ばね弁(75)、及び弁押さえ(90)を有している。弁座(71)、板ばね弁(75)、及び弁押さえ(90)の軸心は同じ軸(軸心P)上にある。
【0061】
〈弁座〉
図4及び
図5に示すように、弁座(71)は、導入ポート(61)の大径部(64)に内嵌する円筒状に形成される。弁座(71)は、例えば圧入によって導入ポート(61)の内周壁(63)に固定される。弁座(71)の内部には、孔(72)が形成される。孔(72)は、導入ポート(61)と同軸となる円柱状に形成される。
【0062】
〈板ばね弁〉
板ばね弁(75)は、弁座(71)と弁押さえ(90)の間に介設される。板ばね弁(75)は、導入ポート(61)の大径部(64)に内嵌する略円板状に形成される。板ばね弁(75)は、弾性変形可能な例えば金属材料で構成される。
【0063】
図4及び
図6に示すように、板ばね弁(75)は、略螺旋状の切り欠き溝(76)が形成される。切り欠き溝(76)は、板ばね弁(75)の外周から中心に向かって順に、大径溝部(77)、直線溝部(78)、及び小径溝部(79)を含んでいる。大径溝部(77)、直線溝部(78)、及び小径溝部(79)の幅は互いに概ね等しい。
【0064】
大径溝部(77)は、板ばね弁(75)の外周縁に沿った円弧状(扇状ないし半円形状)に形成される。直線溝部(78)は、大径溝部(77)の一端と小径溝部(79)の一端とを繋ぐように、略径方向に延びている。小径溝部(79)は、一端が直線溝部(78)と連続し、他端が直線溝部(78)の近傍まで延びる円弧状に形成される。小径溝部(79)の曲率半径は大径溝部(77)の曲率半径よりも小さい。
【0065】
切り欠き溝(76)の外方端部には、第1円形穴(81)が形成される。切り欠き溝(76)の内方端部には、第2円形穴(82)が形成される。第1円形穴(81)と第2円形穴(82)との内径は、切り欠き溝(76)の幅よりも大きい。
【0066】
板ばね弁(75)には、切り欠き溝(76)を境界にして、枠部(83)、弁先端部(84)、及び首部(85)が区分されている。
【0067】
枠部(83)は、導入ポート(61)の内周壁(63)に沿った略環状に形成されている。枠部(83)は、弁座(71)と弁押さえ(90)の間に挟持される。枠部(83)は、大径溝部(77)から板ばね弁(75)の外周縁までの間に形成される第1領域(83a)と、小径溝部(79)から板ばね弁(75)の外周縁までの間に形成される第2領域(83b)とを含んでいる。第2領域(83b)の径方向の幅は、第1領域(83a)の径方向の幅よりも大きい。
【0068】
弁先端部(84)は、枠部(83)の内部に配置される。弁先端部(84)は、小径溝部(79)の内側に形成される略円板状に形成される。弁先端部(84)の軸心と弁座(71)の孔(72)の軸心とは互いに同じ軸(軸心P)上にある。弁先端部(84)の外径は弁座(71)の孔(72)の内径よりも大きい。弾性変形前の状態(閉状態)の板ばね弁(75)は、弁先端部(84)と弁座(71)とが接触する。これにより、弁先端部(84)の中央部(84a)が孔(72)を完全に覆う状態となり、孔(72)が弁先端部(84)によって塞がれる(
図5を参照)。
【0069】
首部(85)は、枠部(83)と弁先端部(84)とを連結する略円弧状に形成される。首部(85)は、枠部(83)に連続する円弧板部(85a)と、円弧板部(85a)と弁先端部(84)とに連続する縦板部(85b)とを含んでいる。円弧板部(85a)は、大径溝部(77)と小径溝部(79)との間に形成される。縦板部(85b)は、直線溝部(78)に沿うように径方向に延びている。
【0070】
導入ポート(61)における逆止弁機構(70)の上流側の内圧(中間圧)が圧縮室(45)の内圧よりも所定値だけ大きくなると、孔(72)から弁先端部(84)の中央部(84a)に作用する圧力によって、弁先端部(84)が冷媒流れの下流側に押し出される。これにより、首部(85)が弾性変形し、弁先端部(84)が下流側へ変位する。この結果、弁先端部(84)が孔(72)を開放し、板ばね弁(75)が開状態となる。
【0071】
枠部(83)と首部(85)との接続部の側縁には、上述した第1円形穴(81)を形成することにより、円弧状の第1切り欠き部(87)が形成される。このように枠部(83)と首部(85)の接続部の側縁を円弧状にする(Rを形成する)ことで、枠部(83)と首部(85)との接続部の応力集中を緩和できる。
【0072】
首部(85)と弁先端部(84)との接続部の側縁には、上述した第2円形穴(82)を形成することにより、円弧状の第2切り欠き部(88)が形成される。このように首部(85)と弁先端部(84)との接続部の側縁を円弧状にする(Rを形成する)ことで、首部(85)と弁先端部(84)との接続部の応力集中を緩和できる。
【0073】
〈弁押さえ〉
弁押さえ(90)は、導入ポート(61)の流出端に配置される。
図4、
図5、及び
図7に示すように、弁押さえ(90)は、導入ポート(61)の内周壁(63)に沿った筒部(91)と、該筒部(91)の内部に配置される当接部(92)と、該筒部(91)と当接部(92)とを繋ぐ2本のリブ(93)(連結部)とを有している。
【0074】
筒部(91)は、冷媒の流れの下流側に突出する円筒凸形状に形成される。筒部(91)は、筒状の本体である胴部(91a)と、該胴部(91a)の上流側端部から径方向外方に拡がる環状の鍔部(91b)と、胴部(91a)の下流側端部から径方向内方へ延出する環状の内周板部(91c)とを有している。
【0075】
胴部(91a)は導入ポート(61)の小径部(65)に内嵌している。胴部(91a)の内部には、弁先端部(84)の移動、及び首部(85)の変位が許容される円柱状の弁収容空間(94)が形成される。鍔部(91b)は、導入ポート(61)の大径部(64)に内嵌するとともに、環状の段差面(66)に当接する。これにより、弁押さえ(90)が圧縮室(45)側へ抜け落ちることが鍔部(91b)により確実に禁止されている。
【0076】
胴部(91a)の下流側端部、及び内周板部(91c)は、導入ポート(61)の流出開口面(62)と略面一に形成されている。これにより、導入ポート(61)では、弁押さえ(90)と圧縮室(45)との間の空隙が実質的にゼロになっている。これにより、いわゆる死容積の削減が図られている。
【0077】
各リブ(93)は、内周板部(91c)の内周縁から当接部(92)の外周縁に亘って径方向に延びる縦長の板状に形成される。2本のリブ(93)は、等間隔(等ピッチ)を置くように周方向に配列される。つまり、2本のリブ(93)は、互いに約180°をなしており、同一直線状に位置している。筒部(91)と当接部(92)と各リブ(93)との間には、2つの流通孔(95)が形成される。各流通孔(95)は、略半円形の穴であり、その内部を冷媒が流通可能である。
【0078】
当接部(92)は、筒部(91)の内周板部(91c)の内部に配置されている。当接部(92)は、その内部に開口(96)が形成される環状部材で構成される。当接部(92)は、弁座(71)の孔(72)及び閉状態の弁先端部(84)と軸方向に重なる位置にある。より厳密には、当接部(92)の軸心は、弁座(71)の孔(72)及び弁先端部(84)の軸心と同じ軸(軸心P)上にある。当接部(92)の外径は弁先端部(84)の外径よりもやや小さい。また、当接部(92)の外径は弁座(71)の孔(72)の外径よりやや大きい。
【0079】
板ばね弁(75)が開状態になると、上述のように弁先端部(84)が下流側へ進出する。すると、板ばね弁(75)の少なくとも弁先端部(84)が、弁押さえ(90)の当接部(92)に接触する(
図8を参照)。は、つまり、当接部(92)は、弁先端部(84)の圧縮室(45)側への進出を規制する。なお、当接部(92)には、弁先端部(84)とともに首部(85)が接触してもよい。
【0080】
当接部(92)の開口(96)は、軸心Pと同軸の円形状に形成される。即ち、軸方向視において、開口(96)と弁先端部(84)とは軸方向視においてオーバーラップしている。開口(96)は、開状態の弁先端部(84)の一部を導入ポート(61)の流出開口面(62)ないし圧縮室(45)へ露出させる露出用の穴である。より詳細には、弁押さえ(90)の開口(96)は、開状態の弁先端部(84)の中央部(84a)を流出開口面(62)ないし圧縮室(45)に露出させる。更に、当接部(92)は弁先端部(84)と同軸で且つ弁先端部(84)よりも外径が小さい。このため、弁先端部(84)の外周縁部(84b)の一部も流出開口面(62)ないし圧縮室(45)に露出される。このように、弁押さえ(90)は、弁先端部(84)の一部を流出開口面(62)ないし圧縮室(45)に露出させる形状に構成される。
【0081】
−インジェクション動作−
冷媒回路(11)の冷凍サイクルでは、例えば冷房運転において、中間圧の冷媒を圧縮室(45)へ導入するインジェクション動作が適宜行われる。
【0082】
インジェクション動作の実行時には、
図1に示す冷媒回路(11)の中間電磁弁(19)が開放され且つ吸入電磁弁(9)が閉鎖される。これにより、気液分離器(15)内の中間圧の冷媒は、中間インジェクション配管(18)を介して圧縮機(20)の中間配管(25)へ導入される。
【0083】
中間配管(25)に中間圧の冷媒が導入されると、導入ポート(61)の一次側通路(67)の圧力も中間圧力となる。これにより、逆止弁機構(70)では、閉状態の板ばね弁(75)における一次側通路(67)側の面(表面)に中間圧が作用する。一方、弁収容空間(94)は弁押さえ(90)の流通孔(95)及び開口(96)を介して圧縮室(45)と連通している。このため、閉状態の板ばね弁(75)の背面には、圧縮室(45)の内圧に相当する圧力が作用する。
【0084】
圧縮動作中において、一次側通路(67)の内圧が圧縮室(45)の内圧より大きくなるタイミングでは、閉状態の板ばね弁(75)の表面に作用する圧力が、その裏面に作用する圧力よりも大きくなり、板ばね弁(75)が開状態へ遷移する。具体的には、中間圧力に押し付けられた弁先端部(84)が圧縮室(45)側へ進出することで、首部(85)も圧縮室(45)側へ弾性変形する。この際、首部(85)は、弁先端部(84)が円弧板部(85a)の径方向の中央部分側に向かって最も傾くように、撓みないし捻り変形する。この結果、
図8に示すように、弁先端部(84)が弁押さえ(90)の当接部(92)に接触するとともに、当接部(92)に沿うように弾性変形する。
【0085】
このようにして板ばね弁(75)ないし弁先端部(84)が開状態になると、弁座(71)の孔(72)が弁先端部(84)から開放される。この結果、一次側通路(67)の中間圧の冷媒が、孔(72)を通じて弁収容空間(94)へ流出する。この冷媒は、板ばね弁(75)の切り欠き溝(76)の内部を通過した後、2つの流通孔(95)を通じて圧縮室(45)へ導入される。
【0086】
一方、圧縮室(45)の内圧が一次側通路(67)の内圧よりも大きくなると、板ばね弁(75)の復元力によって弁先端部(84)が一次側通路(67)へ押し戻される。そして、板ばね弁(75)が元の状態に戻ると(
図5を参照)、弁先端部(84)が弁座(71)の孔(72)を閉塞し、冷媒の逆流が防止される。
【0087】
−逆流の防止作用−
上述のように、開状態の板ばね弁(75)が閉状態に戻るまでの期間では、未だ弁先端部(84)が孔(72)を完全に塞いでいないため、冷媒が板ばね弁(75)の隙間を通じて孔(72)に流入してしまう可能性がある。この場合、圧縮室(45)で圧縮された冷媒の一部が導入ポート(61)へ漏れてしまうため、圧縮機構(40)の圧縮効率が低下してしまう。
【0088】
特に本実施形態の圧縮機構(40)は、揺動ピストン式であり、駆動軸(35)が1回転する毎に圧縮室(45)で圧縮された冷媒が吐出ポート(46)より吐出される。従って、例えば駆動軸(35)が1回転よりも大きい回転数で冷媒が圧縮される方式(例えばスクロール式)と比べると、冷媒が圧縮される速度は早い。従って、閉状態の板ばね弁(75)が閉状態に戻るまでの僅かな期間であっても、一次側通路(67)へ逆流してしまう冷媒の質量流量が大きくなってしまう傾向にある。
【0089】
そこで、本実施形態の逆止弁機構(70)では、板ばね弁(75)が速やかに閉状態に戻るように、弁先端部(84)の一部を流出開口面(62)に露出させている。具体的に、本実施形態の逆止弁機構(70)では、弁先端部(84)の中央部(84a)が当接部(92)の開口(96)を通じて圧縮室(45)に露出され、且つ弁先端部(84)の外周縁部(84b)も圧縮室(45)へ露出されている。
【0090】
このため、圧縮室(45)の冷媒が導入ポート(61)へ逆流しようとすると、この冷媒の圧力が弁先端部(84)背面の中央部(84a)及び外周縁部(84b)に作用する。この結果、弁先端部(84)は、このような冷媒の圧力によって一次側通路(67)側へ押し付けられるため、この弁先端部(84)が速やかに弁座(71)に接触する。従って、本実施形態では、開状態の板ばね弁(75)を速やかに閉状態に戻すことができ、導入ポート(61)へ逆流してしまう冷媒の質量流量を最小限に抑えることができる。
【0091】
−実施形態の効果−
実施形態の弁押さえ(90)は、弁先端部(84)の一部が導入ポート(61)を流出開口面(62)に露出させる形状であるため、圧縮室(45)の冷媒の圧力を利用して弁先端部(84)を速やかに閉状態に戻すことができる。この結果、冷媒の逆流に起因する圧縮効率の低下を抑制できる。
【0092】
特に当接部(92)の中央に開口(96)を形成しているため、冷媒の圧力を弁先端部(84)の中央部(84a)に作用させることができる。これにより、冷媒の圧力が弁先端部(84)の重心近くに作用するため、弁先端部(84)を一層速やかに閉状態に戻すことができる。
【0093】
加えて、当接部(92)の外周縁部(84b)も露出させているため、当接部(92)における冷媒の受圧面積を更に拡大できる。
【0094】
実施形態では、弁押さえ(90)の筒部(91)及び鍔部(91b)が、導入ポート(61)の小径部(65)及び大径部(64)に内嵌することで、弁押さえ(90)が圧縮室(45)側へ抜けてしまうことを確実に防止できる。また、筒部(91)の先端を流出開口面(62)の付近まで延ばしているため、導入ポート(61)において、弁押さえ(90)と圧縮室(45)との間に形成される死容積を実質的にゼロにできる。これにより、所望の圧縮効率を得ることができる。
【0095】
枠部(83)と首部(85)との接続部分の側縁や、首部(85)と弁先端部(84)との接続部分の側縁に円弧状の切り欠き部(87,88)を形成することで、板ばね弁(75)の弾性変形時におけるこれらの部位の応力集中を緩和できる。
【0096】
−実施形態の変形例−
上述した実施形態の弁押さえ(90)を次のような各変形例の構成としてもよい。
【0097】
〈変形例1〉
図9に示す変形例1の弁押さえ(90)は、筒部(91)と当接部(92)との間に3本のリブ(93)が形成される。3本のリブ(93)は周方向に等間隔(約120°ピッチ)を置いて配列される。筒部(91)と当接部(92)と3本のリブ(93)との間には、略扇状の3つの流通孔(95)が形成される。
【0098】
〈変形例2〉
図10に示す変形例2の弁押さえ(90)は、筒部(91)と当接部(92)との間に4本のリブ(93)が形成される。4本のリブ(93)は周方向に等間隔(約90°ピッチ)を置いて配列される。筒部(91)と当接部(92)と4本のリブ(93)との間には、略扇状の4つの流通孔(95)が形成される。
【0099】
〈変形例3〉
図11及び
図12に示す変形例3の弁押さえ(90)は、上述した実施形態のリブ(93)及び当接部(92)が筒部(91)の軸直角平面に対して傾斜している。これにより、当接部(92)における板ばね弁(75)側の面には、開状態の弁先端部(84)に沿う傾斜面(89)が形成されている。つまり、弁押さえ(90)のおける傾斜面(89)の傾く方向は、開状態の弁先端部(84)の傾く方向に応じて決定されている。変形例3では、
図12に示すように、開状態の弁先端部(84)と当接部(92)の傾斜面(89)とが面接触しやすくなる。従って、弁先端部(84)が当接部(92)に片当たりするのを回避でき、当接部(92)に作用する面圧を低減できる。この結果、弁押さえ(90)の小型化を図ることができる。
【0100】
〈変形例4〉
図13に示す変形例4の弁押さえ(90)には、筒部(91)の内部に2本の直線状のリブ(98)が支持されている。これらのリブ(98)は、軸方向視において、板ばね弁(75)の少なくとも開状態の弁先端部(84)と重複する部分を有する。一方、2本のリブ(98)と筒部(91)との間には、横長の開口(96)が形成される。この開口(96)は、開状態の弁先端部(84)の中央部(84a)、及び他の部分を導入ポート(61)の流出開口面(62)に露出させている。これにより、板ばね弁(75)を速やかに閉状態に戻すことができる。
【0101】
〈変形例5〉
図14に示す変形例5の当接部(92)には、上記実施形態の開口(96)に代えて切り欠き(97)が形成される。切り欠き(97)は、開状態の弁先端部(84)の中央部(84a)付近を導入ポート(61)の流出開口面(62)に露出させる。これにより、圧縮室(45)の冷媒の圧力を切り欠き(97)を介して弁先端部(84)に作用させることができ、板ばね弁(75)を速やかに閉状態に戻すことができる。
【0102】
《その他の実施形態》
上記実施形態の圧縮機構(40)は、ブレード(53)にピストン(51)が固定される揺動ピストン式である。しかし、圧縮機構(40)は、ブレードに相当するベーンとピストン(51)が分離される、回転ピストン式(ロータリー式)であってもよい。つまり、回転ピストン式の圧縮機構は、圧縮室を形成するシリンダと、シリンダの内部で偏心回転するピストン(51)とを有し、ピストン(51)が偏心部(37)の周囲を回転する、このような回転ピストン式の圧縮機構であっても、冷媒を圧縮する速度が比較的早い。このため、実施形態と同様、板ばね弁(75)が閉状態に戻る速度を速めることで、冷媒の逆流に起因する圧縮効率の低下を効果的に抑制できる。
【0103】
また、スクロール式や他の方式の圧縮機構を有する圧縮機において、上記実施形態のインジェクション機構(60)を採用することもできる。また、上記実施形態の圧縮機構は、1つの圧縮室(45)を有する1気筒式であるが、2つの圧縮室を有する2気筒式、あるいは3つ以上の圧縮室を有する多気筒式の圧縮機構において、上記実施形態のインジェクション機構(60)を作用することもできる。
【0104】
圧縮機(20)の圧縮室(45)へ中間圧の冷媒を導入するための冷媒回路(11)は、上記実施形態に限られない。具体的には、例えば冷媒回路(11)には、液ラインを流れる冷媒と、中間インジェクション配管(18)を流れる冷媒とを熱交換させる内部熱交換器を接続してもよい。