(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
本実施形態の樹脂シートの概要について説明する。
本実施形態の樹脂シートは、常温から3℃/分の昇温速度で溶融状態まで昇温したとき、初期は溶融粘度が減少し、最低溶融粘度に到達した後、さらに上昇するような特性を有するものである。
本実施形態の樹脂シートにおいて、当該樹脂シートの最低溶融粘度をη0とし、η0の3倍の粘度をη3とし、η0に達する前にη3に達する時間をT1とし、η0に達した後にη3に達する時間をT2とし、これらの時間T1とT2の差分を[T2−T1]としたとき、[T2−T1]が13分以上30分以下とすることができる。
本実施形態の樹脂シートは、半導体チップの封止材層またはポスト付き基板の形成に用いられるものである。
【0011】
本実施形態の樹脂シートにおいて溶融粘度が低い状態が保持される特性を評価するための指標として、樹脂シートの最低溶融粘度をη0とし、η0の3倍の粘度をη3とし、η0に達する前にη3に達する時間をT1とし、η0に達した後にη3に達する時間をT2としたときの[T2−T1]という指標を採用することにより、樹脂シートの溶融状態を安定的に評価できることができる。
そして、指標[T2−T1]を所定値以上とすることで、樹脂シートの溶融粘度が低い時間を長くすることにより、上記のような樹脂シートの硬化物を備える半導体パッケージの反りを抑制できる。詳細なメカニズムは定かでないが、溶融粘度が低い時間を長くすることにより、溶融樹脂が全体に行きわたった後に、ゆっくりと硬化が進むため、硬化による応力分布がつきにくくなるので、得られた半導体パッケージの反りを抑制できる、と考えられる。また、樹脂シートの硬化物の硬化物性のバラツキも抑制できると推測されるので、ポスト付き基板の搬送時における基板クラックの発生を抑制できる。
【0012】
一方で、樹脂シートの溶融粘度が低い時間を長くし過ぎると、詳細なメカニズムは定かでないが、樹脂シートの硬化が不十分な領域が発生し、その結果、面内方向における残存応力のバラツキが大きくなったり、硬化物性のバラツキも大きくなる、と考えられる。これに対して、指標[T2−T1]を所定値以下とすることにより、このような樹脂シート100の硬化物の硬化物性のバラツキを抑制できるので、半導体パッケージの反りを抑制でき、またポスト付き基板の搬送時における基板クラックの発生を抑制できる。
【0013】
本実施形態の樹脂シートによれば、薄型の半導体パッケージ成形や大面積のパネル成形を行う製造プロセスにおいて、半導体パッケージの反りを抑制することができる。また、ポスト付き基板の搬送時における基板クラックの発生を抑制できる。したがって、本実施形態の樹脂シートによれば、信頼性に優れた半導体装置を歩留りよく作製することができる。
【0014】
本実施形態の樹脂シートは、例えば、支持基材上に配置された状態で搬送される。
図1は、基材付き樹脂シート150の構成を示す図である。
基材付き樹脂シート150は、
図1(a)に示すような巻き取り可能なロール状でもよいし、矩形形状の枚葉状であってもよい。
図1(b)に示す基材付き樹脂シート150は、樹脂シート100、基材フィルム110およびカバーフィルム120を備えることができる。この樹脂シート100は、基材フィルム110とカバーフィルム120との間に形成されていてもよい。
実施形態の樹脂シート100は、例えば、
図1(b)に示すように、支持基材(基材フィルム110)上に形成されていてもよい。これにより、樹脂シート100のハンドリング性が向上する。
【0015】
樹脂シート100の製造方法としては、例えば、調製したワニス状の熱硬化性樹脂組成物を基材フィルム110上に塗布・乾燥してシート状に形成し、溶剤を揮発させる方法が挙げられる。これにより、樹脂シート100を作製することができる。なお、樹脂シート100の表面を保護するフィルム(カバーフィルム120)で覆ってもよい。
【0016】
以下、本実施形態の樹脂シート100を構成する熱硬化性樹脂組成物の成分について説明する。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、例えば、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、を含むことができる。
【0017】
(熱硬化性樹脂)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物を含むことができる。この中でも、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含有してもよい。
上記エポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリヒドロキシフェノニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレンおよび/またはジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られる2官能ないし4官能のナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、tert−ブチルカテコール型エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;N,N,N',N'−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用してもよい。
【0018】
これらの中でも、低吸水性の観点から、熱硬化性樹脂が、ナフタレン型エポキシ樹脂またはビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂が、グリシジルアミン型エポキシ樹脂またはトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、流動性の観点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることができる。金属パターンや導体部との密着性を向上させる観点から、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂またはビフェニル型エポキシ樹脂を用いることができる。これにより、半導体パッケージの低線膨張化および高弾性率化を図ることもできる。また、半導体装置における耐リフロー性の向上および反りの抑制を実現することも可能である。
【0019】
上記エポキシ樹脂の含有量の下限値は、例えば熱硬化性樹脂組成物全体に対して3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される樹脂シート100の硬化物と半導体素子との密着性の向上に寄与することができる。一方で、エポキシ樹脂の含有量の上限値は、例えば熱硬化性樹脂組成物全体に対して30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、当該熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される樹脂シート100の硬化物の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。
【0020】
本実施形態において、「熱硬化性樹脂組成物全固形分」とは、熱硬化性樹脂組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。また、本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物全固形分に対する含有量とは、溶媒を含む場合には、熱硬化性樹脂組成物(樹脂シート100全体)のうちの溶媒を除く固形分全体に対する含有量を指す。
【0021】
(硬化剤)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものを用いることができる。例えば、硬化剤としては、アミン類、フェノール系硬化剤、酸無水物などの活性エステル硬化剤、ポリメルカプタン化合物、イソシアネート化合物、有機酸類等が挙げられる。
【0022】
上記硬化剤として、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミノ類;アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの内、熱硬化性樹脂組成物に用いる硬化剤としては、耐湿性、信頼性等の点から、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤が好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、シリコン変性フェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ナフタレン型フェノール樹脂;ナフチレンエーテル型フェノール樹脂;ナフトール型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂、含窒素フェノール樹脂等が例示される。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、低熱膨張、薬液耐性、および銅めっき密着性の観点から、硬化剤が、ナフトール型フェノール樹脂またはビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂を含むことが好ましい。樹脂シート100の硬化物の耐熱性を良好なものとし、かつ封止成形時の作業性に優れるという点で、活性エステル硬化剤を用いることができる。
【0023】
上記活性エステル硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものを用いてもよい。耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物又はカルボン酸ハライドとヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物又はカルボン酸ハライドとフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸とそのハライド等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えばハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル硬化剤は1種又は2種以上を使用することができる。活性エステル硬化剤としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル硬化剤を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル硬化剤としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物等が好ましく、具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとしてEXB9451、EXB9460、EXB9460S−65T、HPC−8000−65T(DIC(株)製、活性基当量約223)、EXB−8000L−65TM(DIC(株)製、活性エステル当量約220)が挙げられる。ナフタレン構造を含むものとしては、EXB−8500−65T(DIC(株)製、活性エステル当量約223)、EXB−8150−60T(DIC(株)製、活性エステル当量約234)、EXB−8100L−65T(DIC(株)製、活性エステル当量約245)が挙げられる。中でも低吸水、熱膨張率、および機械強度の観点から、EXB−8100L−65T(DIC(株)製、活性エステル当量約245)等のナフタレン骨格を有する活性エステル硬化剤が好ましい。
【0024】
ナフタレン骨格を有する活性エステル硬化剤の一例としては、ナフタレン構造とアリールカルボニルオキシ基を有しさえすれば特に限定されないが、ポリナフチレンオキサイド構造とアリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル化合物を用いてもよく、ポリナフチレンオキサイド構造のナフタレン核にアリールカルボニルオキシ基が結合した活性エステル化合物を用いてもよい。ポリナフチレンオキサイド構造としては、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたポリナフチレンオキサイド構造でもよく、さらにはポリフェニレンオキサイド構造を有していても良い。上記のような活性エステル化合物は、核置換ヒドロキシル基を有するナフタレン構造の化合物と、ナフタレン核又はベンゼン核にカルボキシル基を有するカルボン酸化合物との縮合反応で製造することができる。
具体的には、下記一般式(1)のものが挙げられる。
【0025】
【化1】
〔式(1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基となり、好ましくは水素原子である。R
2はそれぞれ独立に水素原子又は下記一般式(2)が挙げられる。Xはそれぞれ独立に水素、ベンゾイル基又はナフチルカルボニル基となり、好ましくはベンゾイル基である。n及びmはそれぞれ0〜5の整数であって、n又はmのいずれか一方は1以上の整数である。〕
【0026】
【化2】
〔式(2)中、R
1は上記式(1)と同様である。Xは上記(1)と同様である。pは1又は2の整数である。〕
なお、上記式(1)及び(2)のXの少なくとも一つは、ベンゾイル基又はナフチルカルボニル基であってもよい。
【0027】
また、ナフタレン骨格を有する活性エステル硬化剤の一例としては、パラフェニルフェノール、パラクレゾール、クレゾール、または4,4'−ビフェノール等のフェノール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドの反応生成物である、フェニルフェノール−ナフトール樹脂、クレゾール−ナフトール樹脂またはビフェノール−ナフトール樹脂等のナフトール樹脂(a)と、モノカルボン酸化合物又はそのハライド(b)との反応物を含むことができる。例えば、ナフタレン骨格を有する活性エステル硬化剤の一例としては、下記構造式(3)から(5)のいずれかで表される化合物を含むことができる。
【0031】
[式(3)から(5)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示す。また、Zはベンゾイル基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたベンゾイル基、ナフトイル基、及び炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフトイル基、炭素原子数2〜6のアシル基から成る群から選択されたエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)である。]
【0032】
また、ナフタレン骨格を有する活性エステル硬化剤の一例としては、下記構造式(6)で表される化合物を含むことができる。
【0033】
【化6】
[式(6)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Zはベンゾイル基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたベンゾイル基、ナフトイル基、及び炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフトイル基、炭素原子数2〜6のアシル基から成る群から選択されたエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)である。]
【0034】
ここで、前記構造式(6)中のZは、ベンゾイル基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたベンゾイル基、ナフトイル基、及び炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフトイル基、炭素原子数2〜6のアシル基から成る群から選択されたエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であるが、より誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、Zのうち少なくとも一つは前記エステル形成構造部位(z1)であることが好ましい。
【0035】
また、ナフタレン骨格を有する活性エステル硬化剤の一例としては、下記構造式(7)で表される化合物を含むことができる。
【0036】
【化7】
[式(7)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、nは1又は2、mは0〜2の整数である。また、Zはベンゾイル基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたベンゾイル基、ナフトイル基、及び炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフトイル基、炭素原子数2〜6のアシル基から成る群から選択されたエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)である。]
【0037】
上記硬化剤の含有量としては、硬化性や流動性など観点から、前記熱硬化性樹脂の官能基数に応じて適切に設定できる。
一例として上記硬化剤としてフェノール系硬化剤を用いる場合におけるエポキシ樹脂とフェノール系硬化剤との含有比率としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と全フェノール系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、例えば、0.8以上、1.5以下とすることができる。
【0038】
(無機充填材)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含むことができる。
上記無機充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩;ガラス繊維等を挙げることができる。これらの中でも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、シリカが特に好ましい。無機充填材としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記無機充填材はシリカを含むことができる。シリカとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等が挙げられる。
【0039】
無機充填材の形状は、例えば、球形としてもよいが、真球状であることが好ましい。
また、無機充填材の平均粒子径D
50は、半導体素子周辺への充填性の観点から、0.01μm以上、150μm以下としてもよい。また、無機充填材の平均粒子径D
50の上限値は、例えば、50μm以下でもよく、30μm以下でもよく、8μm以下でもよく、5μm以下でもよい。
なお、無機充填材の平均粒子径D
50は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−500)を用いて測定することが可能である。
【0040】
また、無機充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。
【0041】
上記無機充填材はシリカ粒子を含むことが好ましい。上記シリカ粒子の平均粒子径(D
50)の上限値は、例えば、8μm以下であり、好ましくは4μm以下であり、より好ましくは2μm以下である。これにより、無機充填材の充填性をさらに向上させることができる。一方で、上記シリカ粒子の平均粒子径(D
50)の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上でもよく、0.2μm以上でもよい。
【0042】
また、無機充填材の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、95重量%以下であり、好ましくは93重量%以下であり、より好ましくは91重量%以下である。これにより、樹脂シート100の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させることが可能となる。一方で、無機充填材の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、60重量%以上であり、好ましくは65重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上である。これにより、樹脂シート100の硬化物の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させることができる。また、無機充填材の含有量を上記範囲内とすることにより、半導体パッケージの反りを抑制することができる。
【0043】
(低応力剤)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、低応力剤を含むことができる。
上記低応力剤としては、数平均分子量が10
2以上10
5以下であるブタジエン骨格を有する高分子樹脂、Tg50℃以下のアクリル共重合体、ポリイミド拡張型マレイミドおよびシリコーンオリゴマーからなる群から選択される一種を含むことができる。
【0044】
上記低応力剤としては、粒子状ではなく、直鎖状または分鎖状であることが好ましい。なお、直鎖状または分鎖状である低応力剤は、架橋構造を有していてもよい。
【0045】
上記ブタジエン骨格を有する高分子樹脂の数平均分子量は、例えば、10
2以上10
5以下でもよく、10
3以上8×10
4以下でもよく、5×10
2以上5×10
4以下でもよい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定できる。
【0046】
ブタジエン骨格を有する高分子樹脂としては、イソシアネート由来の構造単位を有してもよく、酸無水物由来の構造単位を有してもよく、アミン由来の構造単位を有していてもよい。また、上記イソシアネート由来の構造単位において、当該イソシアネートは変性したイソシアネート変性体であってもよい。また、上記アミン由来の構造単位は、イミド骨格または/及びアミド骨格を含有していてもよい。
【0047】
上記イソシアネート由来の構造単位を有するブタジエン骨格を有する高分子樹脂としては、イソシアネート基含有ポリブタジエンポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られるものであり、このポリブタジエンポリイソシアネートとしては、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートや、イソシアネート基の環化3量化反応を利用し上記ジイソシアネートを3官能以上にしたものや、イソシアネート基の一部を種々のポリオールと反応させ3官能以上にしたものと、数平均分子量が600〜7000水酸基含有ポリブタジエンとを反応させたものであり、例えば、TP−1002(日本曹達(株)製)や、HTP−9、HTP−5MLD、ユニマックスP(以上、出光石油化学(株)製)などが挙げられる。またブロック剤としては、イソシアネート基と反応しうる活性水素を1分子中に1個だけ有する化合物で、イソシアネート基と反応した後も170℃以下の温度で再び解離するものが好ましく、ε−カプロラクタム、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、フェノール、クレゾールなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、イソホロン型のイソシアネートを用いることができる。
【0048】
ブタジエン骨格を有する高分子樹脂(日本曹達(株)製「G−1000」、「G−3000」、「GI−1000」、「GI−3000」、出光石油化学(株)製「R−45EPI」、ダイセル化学工業(株)製「PB3600」、「エポフレンドAT501」、クレイバレー社製「Ricon130」、「Ricon142」、「Ricon150」、「Ricon657」、「Ricon130MA」)、ブタジエン骨格とポリイミド骨格を有する高分子樹脂(特開2006−37083号公報記載のもの)などが挙げられる。
【0049】
上記ポリイミド拡張型マレイミドとしては、例えば、以下の式(a1)により示されるマレイミド化合物、以下の式(a2)により示されるマレイミド化合物、以下の式(a3)により示されるマレイミド化合物等が挙げられる。式(a1)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI−1500(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1500)等が挙げられる。式(a2)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI−1700(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1700)、BMI−1400(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1400)等が挙げられる。式(a3)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI−3000(デジグナーモレキュールズ社製、分子量3000)等が挙げられる。
【0050】
【化8】
上記式(a1)において、nは1以上10以下の整数を示す。
【0051】
【化9】
上記式(a2)において、nは1以上10以下の整数を示す。
【0052】
【化10】
上記式(a3)において、nは1以上10以下の整数を示す。
【0053】
上記ポリイミド拡張型マレイミドの重量平均分子量(Mw)の下限は、特に限定されないが、Mw400以上が好ましく、特にMw800以上が好ましい。上記Mwの上限は、特に限定されないが、Mw4000以下が好ましく、Mw2500以下がより好ましい。ポリイミド拡張型マレイミドのMwは、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0054】
上記アクリル共重合体としては、(メタ)アクリル系ブロック共重合体またはアクリル系ランダム共重合体が挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体は、例えば、(メタ)アクリル系モノマーを必須のモノマー成分として含有するブロック共重合体である。
上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸ベンジル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸2−トリフルオロエチル等の(メタ)アクリル酸の(フルオロ)アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の分子中にカルボキシル基を有するカルボキシル基含有アクリル単量体;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセリンのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の分子中に水酸基を有する水酸基含有アクリル単量体;メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等の分子中にエポキシ基を有するアクリル単量体;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等の分子中にアリル基を有するアリル基含有アクリル単量体;γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の分子中に加水分解性シリル基を有するシラン基含有アクリル単量体;2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性アクリル単量体等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
なお、上記(メタ)アクリル系ブロック共重合体には、上記(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマーがモノマー成分として用いられていてもよい。上記(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、エチレン、プロピレン、イソブテン等のオレフィン等が挙げられる。
【0057】
上記(メタ)アクリル系ブロック共重合体としては、特に限定されないが、例えば、2つの重合体ブロックからなるジブロック共重合体や、3つの重合体ブロックからなるトリブロック共重合体、4つ以上の重合体ブロックより構成されるマルチブロック共重合体等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、上記(メタ)アクリル系ブロック共重合体としては、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性向上の観点で、ガラス転移温度(Tg)が低い重合体ブロック(S)(ソフトブロック)と、重合体ブロック(S)よりも高いTgを有する重合体ブロック(H)(ハードブロック)とが並んだH−S構造のジブロック共重合体、重合体ブロック(S)と重合体ブロック(H)とが交互に並んだ共重合体、重合体ブロック(S)を中間に有し、その両端に重合体ブロック(H)を有するH−S−H構造のトリブロック共重合体等が好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
なお、(メタ)アクリル系ブロック共重合体の重合体ブロック(S)を構成するポリマーのTgは、特に限定されないが、30℃未満が好ましい。また、重合体ブロック(H)を構成するポリマーのTgは、特に限定されないが、30℃以上が好ましい。(メタ)アクリル系ブロック共重合体が複数の重合体ブロック(H)を有する場合には、それぞれの重合体ブロック(H)が同じ組成を有していてもよいし、異なっていてもよい。同様に、(メタ)アクリル系ブロック共重合体が複数の重合体ブロック(S)を有する場合も、それぞれの重合体ブロック(S)が同じ組成を有していてもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
上記重合体ブロック(H)を構成するモノマー成分としては特に限定されないが、例えば、ホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーが挙げられる。このようなモノマーとしてはメタクリル酸メチル、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
上記重合体ブロック(S)を構成するモノマー成分としては特に限定されないが、例えば、ホモポリマーのTgが30℃未満であるモノマーが挙げられる。このようなモノマーとしてはアクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸C2−10アルキルエステル、ブタジエン(1,4−ブタジエン)等が挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体の好ましい具体例としては、例えば、上記重合体ブロック(S)がブチルアクリレート(BA)を主たるモノマーとして構成された重合体であり、上記重合体ブロック(H)がメチルメタクリレート(MMA)を主たるモノマーとして構成された重合体である、ポリメチルメタクリレート−block−ポリブチルアクリレート−block−ポリメチルメタクリレートターポリマー(PMMA−b−PBA−b−PMMA)、PMMA−b−PBA等が挙げられる。
上記PMMA−b−PBA−b−PMMAやPMMA−b−PBAは、耐熱性、耐光性、及び耐クラック性向上の点で好ましい。なお、上記PMMA−b−PBA−b−PMMAやPMMA−b−PBAは、必要に応じて、熱硬化性樹脂等に対する相溶性向上を目的として、親水性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等)を有するモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸等を、PMMAブロック及び/又はPBAブロックに共重合させたものであってもよい。
【0062】
上記(メタ)アクリル系ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、例えば、3,000以上500,000以下であり、好ましくは5,000以上100,000以下であり、より好ましくは5,000以上50,000以下である。数平均分子量(Mn)が上記下限値以上であると、得られる硬化物の強靭性をより良好なもとすることができ、その結果、耐クラック性をより向上させることができる。一方、数平均分子量(Mn)が上記上限値以下であると、熱硬化性樹脂との相溶性を向上させることができる。
【0063】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体は、公知乃至慣用のブロック共重合体の製造方法により製造することができる。
また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体としては、例えば、商品名「ナノストレングス M52N」、「ナノストレングス M22N」、「ナノストレングス M51」、「ナノストレングス M52」、「ナノストレングス M52N」、「ナノストレングス M53」、「ナノストレングス M22」(アルケマ社製、PMMA−b−PBA−b−PMMA)、商品名「ナノストレングスD51N」(アルケマ社製、PMMA−b−PBA)、商品名「ナノストレングス E21」、「ナノストレングス E41」(アルケマ社製、PSt(ポリスチレン)−b−PBA−b−PMMA)等の市販品を使用することもできる。
【0064】
シリコーンオリゴマーとしては、例えば、ケイ素含有重合物などが挙げられる。
本実施形態において、上記ケイ素含有重合物としては、例えば、下記の結合(a)および結合(c)を有するものを用いてもよく、好ましくは下記の結合(a)、結合(b)および結合(c)を有するものを用いてもよい。
【0065】
下記の結合(a)や結合(b)は、他の樹脂との相溶性の観点から末端が炭素数1〜12の置換または非置換の炭化水素基、水酸基及びアルコキシ基から選ばれた官能基であることが好ましい。また耐熱性、および架橋密度の観点から、エポキシ当量(g/eq)が500〜4000であることが好ましい。このような重合物の例としては分岐状ポリシロキサンなどが挙げられる。
【化11】
(ここで、Rは炭素数1〜12の置換または非置換の1の炭化水素基から選ばれ、ケイ素含有重合物中の全Rはすべてが同一でも異なっていてもよい。Xはエポキシ基を含む1の有機基を示す。)
【0066】
上記結合(a)や結合(b)中のRとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、なかでもメチル基又はフェニル基が好ましい。
【0067】
また、上記結合(b)中のXとしては2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられ、中でも3−グリシドキシプロピル基が好ましい。
【0068】
また、ケイ素含有重合物の末端は重合物の保存安定性の点から炭素数1〜12の置換または非置換の炭化水素基、水酸基及びアルコキシ基のいずれかである必要がある。この場合のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロプキシ基、ブトキシ基が挙げられる。さらに、ケイ素含有重合物のエポキシ当量は、500〜4000の範囲であることが必要であり、好ましくは1000〜2500である。500より小さいと樹脂組成物の流動性が低下する傾向にあり、4000より大きいと硬化物表面に染み出しやすく、外観不良、加工不良を起こし易い傾向にある。
【0069】
上記ケイ素含有重合物は、下記の結合(c)を有することができる。
【化12】
(ここで、Rはケイ素含有重合物中の全Rに対して炭素数1〜12の置換又は非置換の1の炭化水素基から選ばれ、ケイ素含有重合物中の全Rはすべてが同一でも異なっていてもよい。)
【0070】
上記結合(c)中のRとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、なかでもメチル基またはフェニル基が好ましい。
【0071】
このようなケイ素含有重合物の軟化点は40℃〜120℃に設定されることが好ましく、50℃〜100℃に設定されることがより好ましい。ケイ素含有重合物の軟化点を調整する方法としては、ケイ素含有重合物の分子量、構成結合単位(例えば(a)〜(c)含有比率等)、ケイ素原子に結合する有機基の種類を設定することで可能であるが、ケイ素含有重合物中のアリール基の含有量を設定して軟化点を調整することが好ましい。この場合のアリール基とは、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基がより好ましい。ケイ素含有重合物中のケイ素原子に結合した一価の有機基中のフェニル基の含有量を60モル%〜99モル%、好ましくは70モル%〜85モル%に設定することで所望の軟化点を有するケイ素含有重合物を得ることができる。
【0072】
ケイ素含有重合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値で、1000〜30000、好ましくは2000〜20000、さらに好ましくは3000〜10000である。またケイ素含有重合物は、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0073】
このようなケイ素含有重合物は以下に示す製造方法により得ることができるが、市販品としては東レ・ダウコーニング株式会社製商品名AY42−119として入手可能である。
【0074】
ケイ素含有重合物の製造方法は、特に制限なく公知の方法で製造することができる。例えば、加水分解縮合反応により上記結合(a)〜(c)単位を形成し得るオルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、シロキサン、あるいはそれらの部分加水分解縮合物を原料及び反応生成物を溶解可能な有機溶剤と、原料のすべての加水分解性基を加水分解能な量の水と、の混合溶液中に混合し、加水分解縮合反応させて得ることができる。この際、封止用エポキシ樹脂成形材料中に不純物として含有される塩素量を低減させるためにオルガノアルコキシシラン及び/またはシロキサンを原料とすることが好ましい。この場合、反応を促進する触媒として、酸、塩基、有機金属化合物を添加することが好ましい。
【0075】
ケイ素含有重合物の原料となるオルガノアルコキシシラン及び/またはシロキサンとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、フェニルビニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(フェニル)ジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、およびこれらの加水分解縮合物等が挙げられる。
【0076】
上記低応力剤の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全固形分に対して、例えば、1重量%以上であり、好ましくは3重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上である。これにより、樹脂シート100の作業時における破壊を抑制することができる。一方で、上記低応力剤の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全固形分に対して、例えば、30重量%以下であり、好ましくは25重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。これにより、樹脂シート100の成形性を向上させることができる。
【0077】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、シアネート樹脂を含有してもよい。これにより、樹脂シート100の硬化物について、低線膨張化や、弾性率および剛性の向上を図ることができる。また、得られる半導体装置の耐熱性や耐湿性の向上に寄与することも可能である。
【0078】
上記シアネート樹脂は、例えばノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型シアネート樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、樹脂シート100の硬化物の低線膨張化や、弾性率および剛性を向上させる観点からは、ノボラック型シアネート樹脂およびナフトールアラルキル型シアネート樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、ノボラック型シアネート樹脂を含むことが特に好ましい。
【0079】
シアネート樹脂の含有量の下限値は、例えば熱硬化性樹脂組成物全固形分に対して、例えば、3重量%以上であり、好ましくは5重量%以上である。これにより、樹脂シート100の硬化物のより効果的な低線膨張化、高弾性率化を図ることができる。また、樹脂シート100の硬化物と半導体素子との密着性の向上に寄与することができる。一方で、シアネート樹脂の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全固形分に対して、例えば30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。これにより、樹脂シート100の硬化物の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。
【0080】
上記熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は、例えば、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤との硬化反応を促進させるものであればよい。上記硬化促進剤として、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、前記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。より好ましいものとしては、樹脂シート100が溶融した後の急激な増粘が少ない潜伏性を有する硬化促進剤が挙げられる。
【0081】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、上記各成分以外に、必要に応じてカップリング剤、レベリング剤、着色剤、離型剤、感光剤、消泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、ゴム粒子およびイオン捕捉剤等の添加剤を含有してもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カップリング剤としては、例えばエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。
レベリング剤としては、アクリル系共重合物等が挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラック等が挙げられる。
離型剤としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン等が挙げられる。
イオン捕捉剤としては、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0082】
本実施形態において、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルやジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート等のエチレングリコール系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤、セルソルブ系溶剤、カルビトール系溶剤、アニソール等の有機溶剤が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、作業性を損なうことなく、残存しない程度に優れた揮発性を有したシクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロパノール、エチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤の有機溶剤が好ましい。
【0083】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物がワニス状である場合において、当該熱硬化性樹脂組成物の固形分含有量は、例えば、30重量%以上80重量%以下としてもよく、より好ましくは40重量%以上70重量%以下としてもよい。これにより、作業性や成膜性に非常に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0084】
ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、上述の各成分を、たとえば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。
【0085】
本実施形態の樹脂シート100は、ワニス状である上記熱硬化性樹脂組成物をフィルム化することにより得ることができる。例えば、本実施形態の樹脂シート100は、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を塗布して得られた塗布膜に対して、溶剤を除去することにより得ることができる。このような樹脂シート100においては、溶剤含有率が樹脂シート100全体に対して5重量%以下とすることができる。本実施形態において、たとえば100℃〜150℃、1分〜5分の条件で溶剤を除去する工程を実施してもよい。これにより、樹脂シート100の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶剤を除去することが可能となる。
【0086】
本実施形態の樹脂シート100は、Cステージ状態ではなく、Bステージ状態(未硬化状態または半硬化状態)にある樹脂シート100である。
【0087】
また、塗布の方法としては、コンマコーターやダイコーターのような塗工機を用いた塗工による方法、ステンシル印刷やグラビア印刷のような印刷による方法等が挙げられる。また、樹脂シートは、熱硬化性樹脂組成物を押し出してシート状に形成してもよい。
【0088】
次に、本実施形態の樹脂シート100の特性について説明する。
【0089】
本実施形態の樹脂シート100は、常温から3℃/分の昇温速度で溶融状態まで昇温したとき、初期は溶融粘度が減少し、最低溶融粘度に到達した後、さらに上昇するような粘度挙動を有することができる。このような樹脂シート100の最低溶融粘度をη0とし、η0の3倍の粘度をη3とし、η0に達する前にη3に達する時間をT1とし、η0に達した後にη3に達する時間をT2とする。
【0090】
本実施形態の樹脂シート100において、[T2−T1]の下限値は、例えば、13分以上であり、好ましくは14分以上であり、より好ましくは15分以上とすることができ、成形後の封止材層やポスト付き基板の厚みの均一性に優れる。これにより、半導体パッケージ200の反りを抑制できることができる。また、ポスト付き基板300の搬送時における基板クラックの発生を抑制できる。一方で、上記[T2−T1]の上限値は、例えば、30分以下であり、好ましくは29分以下であり、より好ましくは28分以下である。これにより、半導体パッケージ200の生産性を高めることができる。また、半導体パッケージ200の反りや、ポスト付き基板300の搬送時における基板クラックの発生を抑制できる。
【0091】
本実施形態の樹脂シート100において、上記のように粘度挙動を測定したとき、最低溶融粘度η0に達する前にη0の3倍の粘度η3に達する温度をS1とし、η0に達する温度をS2とする。
このとき、本実施形態の樹脂シート100において、[S2−S1]の下限値は、例えば、10℃以上としてもよく、好ましくは15℃以上としてもよく、より好ましくは20℃以上としてもよい。これにより、溶融した樹脂シート100を成形領域全体に行き渡せることができる。一方で、上記[S2−S1]の上限値としては、例えば、70℃以下であり、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは50℃以下である。これにより、樹脂シート100の硬化性を高められるので、半導体パッケージ200の生産性を向上できる。
【0092】
本実施形態の樹脂シート100において、η0の10倍の粘度をη10とし、η10に達してから、最低溶融粘度η0に達するまでの時間差をΔT3とする。
このとき、本実施形態の樹脂シート100において、ΔT3の下限値は、例えば、10分以上であり、好ましくは11分以上であり、より好ましくは12分以上である。これにより、融した樹脂シート100を成形領域全体に行き渡せることができる。一方で、上記ΔT3の上限値は、例えば、30分以下であり、好ましくは29分以下であり、より好ましくは28分以下である。これにより、樹脂シート100の溶融速度を高められるので、半導体パッケージ200の生産性を向上できる。
【0093】
本実施形態の樹脂シート100において、η0の10倍の粘度をη10とし、最低溶融粘度η0に達してからη10に達するまでの時間差をΔT4とする。
このとき、本実施形態の樹脂シート100において、ΔT4の下限値は、例えば、5分以上であり、好ましくは6分以上であり、より好ましくは7分以上である。これにより、溶融した樹脂シート100が成形領域全体に行きわたった後に硬化反応を進めることができる。一方で、上記ΔT4の上限値は、例えば、20分以下であり、好ましくは19分以下であり、より好ましくは18分以下である。これにより、樹脂シート100の硬化速度を高められるので、半導体パッケージ200の生産性を向上できる。
【0094】
本実施形態の樹脂シート100において、最低溶融粘度η0の10倍の粘度をη10とし、η0に達したときの温度とη0に達する前にη10に達したときの温度との温度差をΔT1とし、η0に達したときの温度とη0に達した後にη10に達したときの温度との温度差をΔT2とする。
このとき、本実施形態の樹脂シート100において、ΔT1/ΔT2の下限値は、例えば、0.70以上であり、好ましくは0.75以上であり、より好ましくは0.80以上である。一方で、上記ΔT1/ΔT2の上限値は、例えば、1.50以下としてもよく、好ましくは1.40以下としてもよく、より好ましくは1.30以下としてもよい。上記ΔT1/ΔT2をこのような数値範囲内とすることにより、樹脂シート100の初期の溶融粘度が低粘度の状態を維持しつつも、最低溶融粘度後には溶融した樹脂が素早く硬化することができるため、半導体パッケージ200の反りやポスト付き基板300の搬送時の基板クラックを抑制しつつも、これらの生産性を向上させることができる。
【0095】
本実施形態の樹脂シート100において、最低溶融粘度となる温度の下限値は、例えば、80℃以上でもよく、好ましくは85℃以上でもよく、より好ましくは90℃以上でもよい。これにより、樹脂シート100の硬化性を高めることができる。一方で、最低溶融粘度となる温度の上限値は、例えば、160℃以下であり、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは140℃以下である。これにより、溶融した樹脂シート100において低粘度の状態を長く保つことができる。
【0096】
本実施形態の樹脂シート100において、最低溶融粘度の下限値は、例えば、50Pa・s以上であり、好ましくは100Pa・s以上であり、より好ましくは150Pa・s以上である。これにより、溶融した樹脂シート100の凹凸面などに対する埋め込み性を高めることができる。一方で、上記最低溶融粘度の上限値は、例えば、5000Pa・s以下であり、好ましくは4500Pa・s以下であり、より好ましくは3000Pa・s以下である。これにより、樹脂シート100が成形領域にゆっくり広がるため、充填のバラツキ等によるボイドの発生を抑制できる。
【0097】
本実施形態では、たとえば熱硬化性樹脂組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、熱硬化性樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、樹脂シート100の上記物性を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば結晶性の高いエポキシ樹脂の種類や、硬化剤として活性エステル樹脂の種類、低応力剤の種類や無機充填材の粒径や充填量、硬化促進剤の含有量などを適切に選択すること等が、樹脂シート100の上記物性を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0098】
次に、樹脂シート100を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0099】
(半導体素子の封止材層)
樹脂シート100を用いて半導体素子を封止する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0100】
図2は、樹脂シート100を用いた半導体パッケージ200の製造工程を示す。
【0101】
図2(a)に示すように、支持板202上に仮固定テープ204を配置する。支持板202としては、無機基板または樹脂基板が用いられる。無機基板としては、例えば、シリコンウェハ、ガラス基板または金属板等の無機基板が挙げられる。また、樹脂基板としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはこれらに繊維基材または無機充填材が含浸されたプリプレグを用いた樹脂基板が挙げられる。支持板202は、上面視において、例えば、円形形状、または四角形などの多角形形状が用いられる。
【0102】
仮固定テープ204としては、支持板202に半導体素子206を固定できるものであれば、特に限定されないが、例えば、加熱により、接着力が低下するものであってもよい。仮固定テープ204の具体例としては、例えば、主剤と発泡剤とを含むことができる。主剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、スチレン・共役ジエンブロック共重合体が用いられてもよく、好ましくはアクリル系粘着剤が用いられてもよい。また、発泡剤としては、特に制限はなく、例えば、無機系、有機系等の各種発泡剤が用いられる。仮固定テープ204の熱剥離性は、例えば粘着剤を発泡性のものとすることによって得られており、この粘着剤が発泡する温度まで加熱すると、粘着剤の接着力が実質的になくなるため、仮固定テープ204を被着体(例えば、後述の半導体素子206や封止材層208)から容易に剥離することができる。
【0103】
続いて、
図2(b)に示すように、支持板202および仮固定テープ204の積層基材上に、複数の半導体素子206を配置する。複数の半導体素子206は、仮固定テープ204の表面上において、互いに離間して固定されていてもよい。これにより、積層基材上に複数の半導体素子206が固定された積層構造が得られる。
【0104】
続いて、
図2(c)に示すように、仮固定テープ204上に固定された複数の半導体素子206を封止材層208で封止する。封止材層208は、本実施形態の樹脂シート100の硬化物で構成されるものである。
ここで、本実施形態の樹脂シート100を用いて、封止材層208を形成する工程について詳述する。
【0105】
本実施形態において、樹脂シート100を用いて、圧縮成形して半導体素子206を封止することができる。
まず、得られた積層構造を、クランプや吸着のような固定手段により圧縮成形金型の上型と下型の一方に固定する。以下では、半導体素子206の表面が樹脂材料供給容器に対面するように、圧縮成型金型の上型に積層構造を固定することができる。
【0106】
次に、金型の上型に固定した半導体素子206に対応する位置となるように、金型の下型キャビティ内に樹脂シート100を配置する。次いで、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めることにより、樹脂シート100は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、溶融状態となる。その後、金型の上型と下型を結合させることにより、溶融状態の樹脂シート100を上型に固定された半導体素子206に対して押し当てる。こうすることで、半導体素子206を溶融した樹脂シート100で埋めることができるとともに、半導体素子206の表面を溶融状態の樹脂シート100で覆うことができる。その後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、所定時間をかけて樹脂シート100を硬化させる。こうすることで、半導体素子206を封止することができる。すなわち、
図2(c)に示す封止材層208が形成される。
【0107】
圧縮成形を行う場合には、金型内を減圧下にしながら樹脂封止を行うことが好ましく、真空条件下であるとさらに好ましい。こうすることで、充填部分を残すことなく半導体素子206を封止材で埋設することができる。
【0108】
圧縮成形における成形温度は、50〜200℃が好ましく、80〜180℃が特に好ましい。また、成形圧力は、0.5〜12MPaであることが好ましく、1〜10MPaが特に好ましい。さらに、成形時間は30秒〜15分であることが好ましく、1〜10分が特に好ましい。成形温度、圧力、時間を上記範囲とすることで、溶融状態の封止材が充填されない部分が発生することを防止することができる。
【0109】
また、樹脂シート100を用い、圧縮成形法により半導体素子206を封止成形後に実施するポストキュア温度は、たとえば、150〜200℃であり、好ましくは165〜185℃である。さらに、ポストキュア時間は、例えば、1時間〜5時間であり、好ましくは2時間〜4時間である。
【0110】
また、本実施形態においては、樹脂シート100を用いて、ラミネート成形して半導体素子206を封止してもよい。
【0111】
まず、ロール形状で準備した樹脂シート100を、真空加圧式ラミネーターの巻き出し装置に取り付け、巻き取り装置まで接続する。次に、半導体素子を有する基板をダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部まで搬送する。次いで、減圧下、プレスを開始すると樹脂シート100は、所定温度に加熱され、溶融状態となり、その後、溶融状態の樹脂シート100を、ダイアフラム(たとえば、SUS等の金属版)を介してプレスすることにより、得られた積層構造の半導体素子206に対して押し当てることで、半導体素子206の表面を溶融状態の樹脂シート100で埋めることができる。その後、所定時間をかけて樹脂シート100を硬化させる。こうすることで、半導体素子206を封止することができる。すなわち、
図2(c)に示す封止材層208が形成される。
なお、樹脂シート100に対し、より高精度な平坦性が要求される場合は、ダイアフラム式ラミネーターでのプレスの後に、高精度に調整された平坦プレス装置によるプレス工程を追加して成型することもできる。
【0112】
上述したラミネート成形を行う際、ダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部による成形温度は、例えば、50〜120℃であり、好ましくは80〜110℃である。また、ダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部による成形圧力は、例えば、0.5〜1MPaであり、好ましくは0.6〜0.9MPaである。くわえて、ダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部による成形時間は、例えば、30秒〜5分であり、好ましくは1〜3分である。ダイアフラム(弾性膜)式ラミネーター部による成形温度、圧力、時間を上記範囲とすることで、溶融状態の樹脂シート100が充填されない部分が発生することを防止することができる。
【0113】
上述したラミネート成形を行う際、平坦プレス装置によるプレス温度は、例えば、80〜130℃であり、好ましくは90〜120℃である。また、平坦プレス装置による成形圧力は、例えば、0.5〜2MPaであり、好ましくは0.8〜1.5MPaである。くわえて、平坦プレス装置による成形時間は、例えば、30秒〜5分であり、好ましくは1〜3分である。平坦プレス装置によるプレス温度、成形圧力、時間を上記範囲とすることで、溶融状態の樹脂シート100が充填されない部分が発生することを防止することができる。
【0114】
また、樹脂シート100を用い、ラミネート成形法により半導体素子206を封止成形後に実施するポストキュア温度は、例えば、150〜200℃であり、好ましくは165〜185℃である。さらに、ポストキュア時間は、例えば、1時間〜5時間であり、好ましくは2時間〜4時間である。
【0115】
続いて、
図2(d)に示すように、半導体素子206および封止材層208から、仮固定テープ204を分離する。例えば、加熱処理により仮固定テープ204を熱分解することにより、仮固定テープ204を分離することができる。また、加熱処理の他に、電子線や紫外線などの照射処理を実施することにより、仮固定テープ204を分離してもよい。本工程において、仮固定テープ204および支持板202で構成される積層基材が分離された、封止材層208は、半導体素子206を封止するとともに、半導体素子206を搬送する疑似ウエハとして利用できる。
【0116】
本実施形態において、
図2(d)に示す、疑似ウェハである封止材層208は、板状を有するものである。その表面に半導体素子206の接続電極が露出されていてもよい。
【0117】
続いて、
図2(e)に示すように、接続電極を有する半導体素子206の露出面上とともに、半導体素子206が形成された領域より外側の領域における封止材層208の一面に再配線層210を形成する。本実施形態においては、複数の半導体素子206の露出面を跨いで再配線層210を形成することができる。再配線層210としては、たとえば、次のような工程で形成することができる。まず、疑似ウエハ上に絶縁層を形成し、当該絶縁層をフォトリソグラフィー法などにより、パターニングして、硬化させる。パターニングした絶縁層の開口部に、メッキ法により、下地の半導体素子206の接続電極と電気的に接続するビアを形成する。そして、パターニングされたレジストをマスクとして用いて、メッキ法により、ビアと接続する配線パターンを形成する。また、これらの工程を繰り返して、複数の配線層を形成してもよい。また、最外層には、ソルダーレジスト層を形成する。また、再配線層210を構成する絶縁層は、本実施形態の樹脂シート100の硬化物で構成されていてもよい。
【0118】
続いて、
図2(f)に示すように、再配線層210の表面に半田バンプ212を形成する。その後、
図2(g)に示すように、再配線層210および半田バンプ212が表面に形成された疑似ウエハを個片化し、
図2(h)に示す半導体パッケージ200を得る。
【0119】
図2(h)に示す半導体パッケージ200は、半導体素子206および封止材層208を備えるものであり、ファンアウト構造を有するものである。すなわち、半導体パッケージ200において、半導体素子206の内側のみならず外側にも、半導体素子206と外部電極との接続を仲立ちする再配線層210が形成されている。
【0120】
本実施形態において、
図2(a)に示す積層基材の仮固定テープ204上に、再配線層210を形成し、かかる再配線層210に複数の半導体装置を配置してもよい。その後、
図2(d)において、再配線層210から、仮固定テープ204を分離することができる。
【0121】
また、本実施形態において、
図2(b)において、積層基材の仮固定テープ204の表面に、半導体素子206の接続電極が形成されていない面を対向した状態で固定してもよい。そして、
図2(c)において、封止材層208を研削または研磨することにより、半導体素子206の接続電極を露出させてもよい。
【0122】
本実施形態において、樹脂シート100として、
図1に示すような基材付き樹脂シート150を用いてもよい。基材付き樹脂シート150は、表面のカバーフィルム120を剥離した後、樹脂シート100と同様に用いることができる。そして、
図2(c)に示す封止材層208が硬化形成された後、封止材層208から基材フィルム110を剥離することができる。
【0123】
(ポスト付き基板)
本実施形態のポスト付き基板300の製造工程について説明する。
図3は、ポスト付き基板300の製造工程を示す図である。
【0124】
まず、
図3(a)に示すように、ダミーコア310を準備する。ダミーコア310は、後述するポスト付き基板300を形成するための支持基材として用いることができる。ダミーコア310の片面又は両面を用いて、ポスト付き基板300を形成してもよい。
本実施形態に用いられるダミーコア310は、平面上に複数の半導体素子が配置できる程度に、大面積を有していることが好ましい。また、ダミーコア310は、上面視において、例えば、矩形形状でも円形形状でもよいが、生産性の観点から矩形形状であってもよい。ダミーコア310は、フレーム形状に加工された枚葉のものであってもよく、フープ状の連続形状のものであってもよい。
【0125】
ダミーコア310としては、例えば、支持板302、銅箔304、薄箔306で構成することができる。支持板302としては、無機基板または樹脂基板が用いられる。無機基板としては、例えば、シリコンウェハ、ガラス基板または金属板等の無機基板が挙げられる。また、樹脂基板としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはこれらに繊維基材または無機充填材が含浸されたプリプレグを用いた樹脂基板が挙げられる。また、金属板としては、例えば、銅板、アルミニウム板、鉄板、鋼鉄(スチール)板、ニッケル板、銅合金板、42合金板、ステンレス板等が挙げられる。鋼鉄(スチール)板は、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の冷間圧延鋼板の態様であってもよい。
また、薄箔306は、剥離可能な薄膜銅箔を使用することができる。なお、銅箔304と薄箔306との間に、剥離容易性の観点から、剥離層を形成してもよい。
【0126】
続いて、
図3(b)に示すように、ダミーコア310の表面に、パターン化されたレジスト320を形成する。例えば、ダミーコア310上に、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜を形成する。形成方法としては、例えば、コーターやスピンナー等を使用して感光性樹脂組成物を塗布して得られた塗布膜を乾燥させる方法や、感光性樹脂組成物からなる樹脂シートを熱圧着等によりラミネートする方法などにより、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜を形成する。続いて、当該感光性樹脂膜に所定のパターンを有する開口部を形成する。開口部の形成方法としては、例えば、露光現像法やレーザー加工法等を用いることができる。これにより、
図3(b)に示すレジスト320を形成することができる。
【0127】
続いて、
図3(c)に示すように、ダミーコア310の表面上に導体ポスト330を形成する。例えば、レジスト320の開口部に金属膜を埋設し、かかるレジスト320を除去することにより、導体ポスト330を形成することができる。金属膜の埋設方法としては、例えば、CVD、スパッタリング(sputtering)のようなPVD、サブトラクティブ法、無電解銅メッキまたは電解銅メッキを用いるアディティブ法、SAP及びMSAPなどの方法等が挙げられる。金属膜の材料としては、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田等が挙げられるが、銅を用いてもよい。レジスト320の除去方法としては、例えば、剥離液を用いて感光性樹脂膜を剥離する方法、アッシング処理、アッシング処理を行った後に下地に付着している感光性樹脂膜の残渣を剥離液により除去する方法等が挙げられる。中でも、生産効率を向上させる観点から、剥離液を用いて感光性樹脂膜を剥離する方法を採用することが好ましい。剥離液の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸を含む有機スルホン酸系剥離液、モノエタノールアミン等の有機アミンを含む有機アミン系剥離液、水に対して有機アルカリやフッ素系化合物等を混合した水系レジスト剥離液等が挙げられる。
以上により、ダミーコア310の表面に複数の導体ポスト330を形成することができる。
【0128】
図3(c)に示す導体ポスト330としては、金属材料で構成されていれば特に限定されないが、例えば、銅で構成された銅ポストであることが好ましい。
導体ポスト330の厚みD1の下限値は、例えば、10μm以上とすることができる。また、上記厚みD1の上限値は、特に限定されないが、例えば、100μm以下としてもよい。
【0129】
続いて、
図3(d)に示すように、導体ポスト330を埋め込むように、絶縁層340を形成する。絶縁層340は、導体ポスト330の全体(側面および上面)を覆うように封止することができる。絶縁層340としては、本実施形態の樹脂シート100の硬化物で構成されている。例えば、導体ポスト330の厚みD1よりも厚膜を有する樹脂シート100を用いることができる。
図3(d)に示す絶縁層340の厚みD2は、導体ポスト330の厚みD1よりも厚くすることができる。
【0130】
本実施形態において、導体ポスト330を封止する方法としては、前述のような、樹脂シート100を用いて、圧縮成形する方法やラミネート成形する方法などが用いられる。
【0131】
続いて、
図3(e)に示すように、絶縁層340で覆われた導体ポスト330の上面を露出させる。たとえば、グラインドやケミカルエッチングなどの研磨方法により、絶縁層340の上面を研磨することにより、導体ポスト330の上面を露出させることができる。また、グラインド方法としては、例えば、機械的研磨(バフ、研磨ロール等)や、化学的機械研磨(CMP)を用いることができる。このとき、導体ポスト330および絶縁層340の上面には、研磨面342が形成されることになる。
【0132】
本実施形態において、絶縁層340の研磨面342の表面粗さRaの上限値は、例えば、0.5μm以下とすることができる。上記研磨面342の表面粗さRaの下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよい。
【0133】
続いて、
図3(f)に示すように、導体ポスト330に電気的に接続した回路パターン332を形成する。回路パターン332は、導体ポスト330および絶縁層340の研磨面342上に形成することができる。これにより、回路パターン332と、導体ポスト330や絶縁層340との密着性を向上させることができる。
例えば、フォトリソグラフィー法およびメッキ法等を用いることにより、パターン化された金属膜である回路パターン332を形成することができる。
【0134】
続いて、
図3(g)に示すように、上記の
図3(b)から
図3(d)の工程を繰り返すことにより、回路パターン332上に、導体ポスト334および絶縁層344を形成する。このように、ダミーコア310上に、導体ポスト330を有する絶縁層340および導体ポスト334を有する絶縁層344などが複数層、積層された積層構造370が得られる。また、絶縁層340のポストキュアを、適宜行ってもよい。また、研磨された導体ポスト330,334の表面に対して、洗浄処理を行ってもよい。
【0135】
以上により、
図3(g)に示すような対称構造の積層構造370を、ダミーコア310の両面に形成することができる。
【0136】
続いて、
図3(h)に示すように、ダミーコア310から上記の積層構造370を分離する。例えば、剥離可能な薄箔306を、下地の銅箔304から分離する。このとき、薄箔306は、絶縁層340の下面側に貼りついていてもよい。
【0137】
続いて、
図3(i)に示すように、分離された積層構造370の表面を研磨することにより、導体ポスト330,334の表面を露出させる。例えば、絶縁層344の表面を研磨することにより、導体ポスト334および絶縁層344の表面に研磨面346を形成することができる。研磨面346において、導体ポスト334の表面が露出している。一方、積層構造の反対面側においては、絶縁層340の表面側を研削することにより、薄箔306を除去し、絶縁層340および導体ポスト330の下面に、研磨面348を形成することができる。絶縁層340の下面において、導体ポスト330の下面が露出している。
【0138】
続いて、
図3(j)に示すように、積層構造370の研磨面346,348において露出された導体ポスト330,334に接続した、回路パターン336,338を形成する。
【0139】
続いて、
図3(k)に示すように、回路パターン336,338上に、ソルダーレジスト層350,352、ビア360,362、および回路パターン364,366を形成する。ビア360,362は、ソルダーレジスト層350,352の開口部に形成する。外部接続様の回路パターン364,366は、ビア360,362を介して、ポスト付き基板300の内部の導体ポスト330,334と電気的に接続することができる。
以上により、本実施形態のポスト付き基板300が得られる。
【0140】
なお、本実施形態のポスト付き基板300においては、一つの半導体素子のみならず、複数の半導体素子を平面内に実装されてもよい。たとえば、実装方法としては、半田バンプを介したフリップチップ接続や銅ワイヤを介したワイヤボンディング接続などが用いられる。そして、ポスト付き基板300上に搭載された半導体素子を封止することにより、半導体パッケージを得ることができる。封止後に個片化を行って半導体パッケージを形成してもよい。
【0141】
本実施形態の半導体パッケージは、ポスト付き基板300と、ポスト付き基板300上に搭載された電子部品(たとえば半導体素子)と、を備えることができる。
【0142】
ポスト付き基板300は、Molded Interconnect Substrate(MIS)と呼称されるものであり、絶縁層340と導体ポスト330とを少なくとも備えることができる。絶縁層340などのポスト付き基板300を構成する絶縁層は、本実施形態の樹脂シート100の硬化物で構成されるものである。かかる絶縁層は、ガラスクロスなどの繊維基材を含有しない構成としてもよい。これにより、ポスト付き基板300は、コアレス樹脂基板とすることができる。また、コアレス樹脂基板は、絶縁層内に内蔵された半導体素子を有していてもよい。この半導体素子は、金属層(例えば、導電ポスト)を介して電気的に接続することができる。
【0143】
本実施形態において、
図3(k)に示すように、ポスト付き基板300の一面(絶縁層344の上面、または絶縁層340の下面)は、研磨面であることが好ましい。当該研磨面の表面粗さRaは、例えば、0.5μm以下とすることができる。上記研磨面の表面粗さRaの下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよい。
なお、ポスト付き基板300の導体ポスト334の上面と絶縁層344の上面とは同一平面を構成してもよい。また、導体ポスト330の下面と絶縁層340の下面とは同一平面を構成してもよい。
【0144】
また、本実施形態において、ポスト付き基板300の導体ポスト330,334の厚みD1の下限値は、例えば10μm以上であることが好ましい。上記導体ポスト330,334の厚みD1の上限値は、特に限定されないが、例えば、100μm以下としてもよい。上記導体ポスト330,334は、例えば、銅ポストであることが好ましい。
【0145】
本実施形態において、半導体素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。半導体素子140を備える半導体パッケージの構造としては、例えば、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、MAPタイプのBGA等が挙げられる。又、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、クワッド・フラット・ノンリーデッド・パッケージ(QFN)、embedded WLP(eWLP)、Fan In WLPおよびFan Out WLP等のウエハ・レベルパッケージ(WLP)、スモールアウトライン・ノンリーデッド・パッケージ(SON)、リードフレーム・BGA(LF−BGA)等が挙げられる。
【0146】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、樹脂シート100は、PLP(パネルレベルパッケージ)プロセスを利用することができる。PLPプロセスは、例えば、配線板プロセスを利用して、ウエハ以上の大面積を有するパネルサイズパッケージを得ることができる。PLPプロセスを使用することにより、ウエハレベルプロセスよりも半導体パッケージの生産性を効率的に向上させることができる。
【0147】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 半導体チップの封止材層またはポスト付き基板の形成に用いられる樹脂シートであって、
常温から3℃/分の昇温速度で溶融状態まで昇温したとき、初期は溶融粘度が減少し、最低溶融粘度に到達した後、さらに上昇するような特性を有しており、
当該樹脂シートの最低溶融粘度をη0とし、η0の3倍の粘度をη3とし、η0に達する前にη3に達する時間をT1とし、η0に達した後にη3に達する時間をT2としたとき、[T2−T1]が13分以上30分以下である、樹脂シート。
2. 1.に記載の樹脂シートであって、
η0に達する前にη3に達する温度をS1とし、η0に達する温度をS2したとき、[S2−S1]が10℃以上70℃以下である、樹脂シート。
3. 1.または2.に記載の樹脂シートであって、
η0の10倍の粘度をη10とし、η10に達してからη0に達する時間が、10分以上30分以下である、樹脂シート。
4. 1.から3.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
η0の10倍の粘度をη10とし、η0に達してからη10に達する時間が、5分以上20分以下である、樹脂シート。
5. 1.から4.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
η0の10倍の粘度をη10とし、η0に達したときの温度とη0に達する前にη10に達したときの温度との温度差をΔT1とし、η0に達したときの温度とη0に達した後にη10に達したときの温度との温度差をΔT2としたとき、ΔT1/ΔT2が0.70以上である、樹脂シート。
6. 1.から5.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
前記最低溶融粘度となる温度が、80℃以上160℃以下である、樹脂シート。
7. 1.から6.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
当該樹脂シートの最低溶融粘度が、50Pa・s以上5000Pa・s以下である、樹脂シート。
8. 1.から7.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
前記ポスト付き基板の表面が研磨面である、樹脂シート。
9. 8.に記載の樹脂シートであって、
前記研磨面の表面粗さRaが0.5μm以下である、樹脂シート。
10. 1.から9.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
前記ポスト付き基板のポストが、厚み10μm以上の銅ポストである、樹脂シート。
11. 1.から10.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
前記半導体チップおよび前記封止材層を備える半導体パッケージがファンアウト構造を有する、樹脂シート。
12. 1.から11.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
熱硬化性樹脂と、
硬化剤と、
無機充填材と、を含む、樹脂シート。
13. 12.に記載の樹脂シートであって、
前記無機充填材が、シリカを含む、樹脂シート。
14. 12.または13.に記載の樹脂シートであって、
前記無機充填材のD50が0.1μm以上5μm以下である、樹脂シート。
15. 12.から14.のいずれか1つに記載の樹脂シートであって、
前記無機充填材の含有量が、当該樹脂シート全体に対して60重量%以上である、樹脂シート。
【実施例】
【0148】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0149】
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
実施例および比較例について、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
まず、表1に示す固形分割合で各成分を溶解または分散させ、メチルエチルケトンで不揮発分70重量%となるように調製し、高速撹拌装置を用い撹拌して樹脂ワニス1〜13を調製した。
なお、表1における各成分の配合割合を示す数値は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対する各成分の配合割合(重量%)を示している。
【0150】
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。
(熱硬化樹脂)
エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YL6810、エポキシ当量170g/eq)
エポキシ樹脂2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC(株)製、EPICLON、830S、エポキシ当量170g/eq)
エポキシ樹脂3:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬社製、NC−3000L、エポキシ当量270g/eq)
エポキシ樹脂4:グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER630、エポキシ当量97g/eq)
エポキシ樹脂5:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP−4032D、エポキシ当量140g/eq)
【0151】
(硬化剤)
フェノール硬化剤1:ナフトール型フェノール樹脂(新日鐵化学株式会社製、SN−485、水素基当量215g/eq)
フェノール硬化剤2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(日本化薬社製、GPH−65、水素基当量196g/eq)
【0152】
活性エステル硬化剤1:EXB−8100L−65T(ナフタレン骨格を有する活性エステル硬化剤、DIC(株)製、活性エステル当量245g/eq)
【0153】
(低応力剤)
低応力剤1:下記の合成例1で得られたブタジエン変性ポリウレタンイミド樹脂1
<合成例1:ブタジエン変性ポリウレタンイミド樹脂1>
温度計、撹拌装置、および冷却管をつけたフラスコに、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタートを209g、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを105g仕込み、イソホロンジイソシアネートを44.4g(0.2モル)と水添ポリブタジエンジオール(分子量2100)210g(0.1モル)とポリブタジエンジオール(分子量2000)200g(0.1モル)とを仕込んで65℃で3時間反応を行った。ついで3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(分子量322)16.1g(0.05モル)を仕込んで160℃に昇温し、8時間反応させて固形分濃度60%のブタジエン変性ポリウレタンイミド樹脂1(室温25℃で固形、Mn:約4万)の溶液を得た。
【0154】
低応力剤2:PI拡張型マレイミド(BMI−1500、デジグナーモレキュールズ社製、室温25℃で液状、Mn:約1,500)
低応力剤3:(メタ)アクリル系ブロック共重合体(アクリルモノマーのブロック共重合体(PMMA−b−PBA−b−PMMA;b=ブロック)、室温25℃で固体、Mn:約15,000、アルケマ社製、ナノストレングスM52N)
低応力剤4:アクリル共重合体(PMS−14−17、ナガセケムテックス社製、室温25℃で粘調液体、Mn:約8万、固形分濃度40%)
低応力剤5:ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂(YX6954BH45、三菱化学社製、室温25℃で固体、Mn=15,000、固形分濃度45%)
【0155】
(無機充填材)
無機充填材:シリカ粒子(アドマテックス社製、SC4050、平均粒子径1.1μm、固形分濃度70%)
(カップリング剤)
カップリング剤:シランカップリング剤(N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学製、KBM−573)
(硬化促進剤)
硬化促進剤:イミダゾール化合物(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成工業社製、キュアゾール2P4MHZ−PW)
【0156】
【表1】
【0157】
(基材付きの樹脂シートの作製)
各実施例および各比較例において、表1に示す、得られた樹脂ワニス1〜13をキャリア基材であるPETフィルム上に塗布した後、140℃、2分間の条件で溶剤を除去して、10μm、45μm、80μmの膜厚のキャリア基材付き樹脂シートC1〜C13を得た。
得られた樹脂シートC1〜C13を用いて次のような評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0158】
【表2】
【0159】
(評価用の樹脂シート)
得られたキャリア基材付きの樹脂シートからキャリア基材であるPETフィルムを剥離した80μmの樹脂シートを2枚積層して、厚さ160μmの評価用の樹脂シートを作製した。
【0160】
(溶融粘度)
粘弾性測定装置(アントンパール社製、Physica MCRシリーズ)を用いて、常温(室温25℃)から昇温速度3℃/分、周波数1Hzで、振幅0.3%、荷重0.1Nで測定し、得られた評価用の樹脂シートについて溶融粘度を測定した。得られた溶融粘度データから、最低溶融粘度(Pa・s)をη0とし、η0の3倍の粘度をη3とし、η0に達する前にη3に達する時間をT1とし、η0に達した後にη3に達する時間をT2としたとき、[T2−T1](分)、η0に達する前にη3に達する温度をS1とし、η0に達する温度をS2したとき、[S2−S1](℃)、η0の10倍の粘度をη10とし、η10に達してからη0に達する時間(分)、η0の10倍の粘度をη10とし、η0に達したときの温度とη0に達する前にη10に達したときの温度との温度差をΔT1とし、η0に達したときの温度とη0に達した後にη10に達したときの温度との温度差をΔT2としたときのΔT1/ΔT2、最低溶融粘度となる温度(最低溶融温度)(℃)を算出した。
【0161】
(ポスト付き基板の作製)
支持基材として、両面銅張積層板(住友ベークライト社製ELC−4785GS−B、サイズ250mm×250mm、樹脂基材厚み0.2mmの両面に18μm銅箔、次いで剥離可能な2μm銅箔の積層構造)を用いて、基板両面に直径25μm、高さ約40μm導体ポストを形成する。次に、得られた厚み45μmのキャリア基材付き樹脂シート(ポスト付き基板用樹脂シート)の樹脂シート面が、導体ポストと対向するように両面にセットし、30秒間減圧して10hPa以下で、1ステージ条件として温度120℃、圧力0.8MPa、30秒、2ステージ条件としてSUS鏡板で温度120℃、圧力1.0MPa、60秒にて真空加熱加圧成形した。次いで、キャリア付樹脂膜からキャリア基材を剥離した後、回路パターン上の樹脂膜を、200℃、90分の条件で硬化し絶縁層を形成した。次いで、基板両面をセラミック研磨ロール(石井表記社製#800)を用いて研磨し、導体ポストを露出させると共に表面を平滑化・平坦化した。次いで、60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に10分間浸漬後、中和して表面の洗浄処理を行った。次に、無電解銅メッキを厚さ0.5μmで行い、電解銅メッキ用レジスト層を厚さ18μm形成し、パターン銅メッキし、150℃、30分加熱してポストキュアした。次いでメッキレジストを剥離し全面をフラッシュエッチングして、L/S=15/15μmの両面に回路パターンを形成した。次いで、繰返しにより同様に導体ポスト形成、絶縁層形成した。最後に支持基板から分離した基板両面を研磨し、導体ポストの露出、洗浄、パターン銅メッキを施し、最後にソルダーレジストを形成し開口した3層コアレス基板(ポスト付き基板)を作製した。
【0162】
(表面粗さ(Ra:算術平均粗さ))
上記のポスト付き基板の作製に準じて、支持基板から分離した基板両面を研磨し、導体ポストを露出した後、当該基板両面(
図3(e)に示す、絶縁層340の研磨面342)における表面粗さを、白色光干渉型顕微鏡 (Bruker社製ContourGT−K)を用いて測定した。VSIモード、内部レンズ1倍、対物レンズ50倍の条件で測定した。
【0163】
(支持体除去後の搬送性)
上記のポスト付き基板の作製工程において、支持基板除去後の最終工程である、基板両面の研磨、導体ポストの露出、洗浄、パターン銅メッキ、ソルダーレジストの形成において樹脂クラックの有無を評価した。
○:クラックなし
×:クラックあり
【0164】
<半導体パッケージの作製>
支持基材として、両面銅張積層板(住友ベークライト社製ELC−4785GS−B、サイズ250mm×250mm、樹脂基材厚み0.2mmの両面に12μm銅箔)の片側に仮固定シートを、80℃ロールラミネーターを用いて貼り合わせた。次いで、10mm×10mm×100μm厚みの半導体素子を仮固定シート上に格子状(PKGサイズ15mm×15mmパターン、PKG取り数100個)に実装した。次いで、得られた厚さ80μmの樹脂シート(封止用樹脂シート)を上記と同様の条件で2ステージラミネーターを用いて積層し、200℃、90分の条件で硬化した。次いで、210℃のホットプレート上で仮固定シート付き支持体を剥離した。次いで、得られた厚み10μmの樹脂シート(再配線用の樹脂シート)を同様に積層し、200℃、90分の条件で硬化した。次いで、UVレーザー(波長:355nm)を使用して、直径25μmの層間接続用ビアを形成した。次いで、60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に10分間浸漬後、中和して表面の洗浄処理を行った。次に、無電解銅メッキを厚さ0.5μmで行い、電解銅メッキ用レジスト層を厚さ8μm形成し、パターン銅メッキし、150℃、30分加熱してポストキュアした。次いでメッキレジストを剥離し全面をフラッシュエッチングして、L/S=15/15μmの再配線パターンを形成した。次いで、得られた厚み10μmの樹脂シート(再配線用の樹脂シート)を同様に積層し、硬化、ビア形成、および洗浄処理を行った。最後に、ダイシングソーにより個片化し、15mm×15mmサイズの半導体パーケージを得た。
【0165】
(半導体パッケージの反り評価)
得られた半導体パッケージを25℃での反りを温度可変レーザー三次元測定機(日立テクノロジーアンドサービス社製、形式LS220−MT100MT50)を用いて評価した。上記測定機のサンプルチャンバーに封止樹脂シート面を下にして設置し、高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。評価基準は以下の通りである。
◎:反り量が50μm未満
〇:反り量が50μm以上100μm未満
×:反り量が100μm以上
【0166】
(半導体パッケージのMSL(moisture sensitivity level)試験)
得られた半導体パッケージを、IPC/JEDECのJ−STD−020Cに準拠して、260℃に達するリフロー炉に3回通し、超音波探傷装置でチップと封止樹脂シート間の異常を評価した。各符号は以下の通りである。
◎:温度85℃、湿度60%、時間168時間の前処理で剥離なし
○:温度30℃、湿度60%、時間192時間の前処理で剥離なし
×:温度30℃、湿度60%、時間192時間の前処理で剥離あり
【0167】
実施例1〜10の樹脂シートを使用することにより、半導体パッケージの反りを抑制できることが分かった。また、実施例1〜10の樹脂シートを使用することにより、搬送性を向上できることが分かった。
【0168】
以上、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。