(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、広角X線回折で測定されるα晶(110)面の結晶配向度が0.78以上であり、幅方向および長手方向の120℃で10分間加熱処理後の熱収縮率の和が4.0%以下である。なお、本発明において、ポリプロピレンフィルムをフィルムと称する場合がある。
【0021】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、広角X線回折で測定されるポリプロピレンフィルムのα晶(110)面の結晶配向度が0.78以上である。上記結晶配向度は好ましくは0.80以上、より好ましくは0.81以上である。上限は特に限定されないが、0.95とするものである。上記結晶配向度が0.78未満の場合は、フィルムを構成する結晶構造の配向秩序性が乱れている状態である故に、部分的に絶縁破壊しやすい箇所が存在していることになり、コンデンサとした場合に高温環境下において容量低下やショート破壊を引き起こし、耐電圧性の低下を招き、信頼性が損なわれる場合がある。
【0022】
また、本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、高温環境下での寸法安定性を有し、コンデンサとした場合に高い信頼性を得る観点から、幅方向および長手方向の120℃で10分間加熱処理後の熱収縮率の和が4.0%以下である。本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムにおける上記の熱収縮率の和は、好ましくは3.6%以下、より好ましくは3.3%以下である。下限は特に限定されないが、コンデンサ製造工程や使用工程の熱により素子の巻き状態が緩む場合があるので、1%とするものである。上記熱収縮率の和が4.0%を超える場合は、コンデンサ製造工程および使用工程の熱によりフィルム自体の収縮が生じ、素子端部メタリコンとの接触不良により耐電圧性が低下したり、素子が巻き締まることで容量低下やショート破壊を引き起こす場合がある。
【0023】
ここで本発明の第1の形態および第2の形態のポリプロピレンフィルムにおける「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向(以降、「MD」という場合がある)であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向と直交する方向(以降、「TD」という場合がある)である。フィルム製造工程における流れ方向が不明なポリプロピレンフィルムについては、広角X線によるポリプロピレンフィルムのα晶(110)面の結晶配向を次のように測定し、MDおよびTDを定義する。詳しくは、フィルム表面に対して垂直方向にX線を入射し、2θ=約14°(α晶(110)面)における結晶ピークを円周方向にスキャンし、得られた回折強度分布の回折強度が最も高い方向をMD、それと直交する方向をTDとする。
【0024】
本発明者らは鋭意検討することにより、ポリプロピレンフィルムの結晶配向度および熱収縮率を制御し両立することが、ポリプロピレンフィルムの高温環境下での絶縁破壊電圧を向上する観点、および、特に高電圧用コンデンサ用途において、高温環境下での耐電圧性と信頼性を得る観点において重要であることを見出したものである。ここで、ポリプロピレンフィルムの結晶配向度および熱収縮率をそれぞれ上記した範囲内に制御することは、後述する高メソペンタッド分率、高融点のポリプロピレン原料の使用や溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件を好ましい範囲内で制御すること、二軸延伸時の面積倍率は50倍以上とし、延伸後の熱処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに適宜施すことにより達成可能である。
【0025】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、幅方向における伸度5%時の応力(TD−F5値)と長手方向における伸度5%時の応力(MD−F5値)との関係が(MD−F5値)/(TD−F5値)>0.4であることが好ましく、より好ましくは0.45以上、さらに好ましくは0.5以上である。(MD−F5値)/(TD−F5値)の値の上限は特に限定されないが、2.0とするものである。(MD−F5値)/(TD−F5値)の関係が0.4以下である場合は、結晶配向度が低くなりやすく、フィルムを構成する結晶構造の秩序性が乱れている状態である。したがって、部分的に絶縁破壊しやすい箇所が存在していることになり、コンデンサとした場合に高温環境下において容量低下やショート破壊を引き起こし、耐電圧性の低下を招き、信頼性が損なわれる場合がある。(MD−F5値)/(TD−F5値)の関係を本発明の好ましい範囲に制御するには、二軸延伸時の面積倍率は50倍以上とし、延伸後の熱処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに適宜施すことにより達成可能である。
【0026】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、長手方向における最大点強度(St)と最大点伸度(El)の関係が(St)/(El)≧1.2であることが好ましく、より好ましくは(St)/(El)≧1.6、さらに好ましくは(St)/(El)≧2.0である。(St)/(El)の値の上限は特に限定されないが、4.0とするものである。(St)/(El)の値が1.2に満たない場合、実質的にフィルムの強度が低いことを意味し、高温環境下でのフィルムの絶縁破壊電圧が低くなりやすく、金属膜を蒸着により形成する工程やコンデンサ素子巻き取り加工での、フィルム搬送中に破膜する場合がある。またコンデンサとした場合に高温環境下において容量低下やショート破壊を引き起こし、耐電圧性の低下を招き、信頼性が損なわれる場合がある。(St)/(El)の値を上記した範囲に制御するには、二軸延伸時の面積倍率は50倍以上とし、延伸後の熱処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに適宜施すことにより達成可能である。
【0027】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、125℃における長手方向の伸度50%時の応力(F50値)が13MPa以上であることが好ましく、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは17MPa以上である。上限は特に限定されないが、30MPaとするものである。F50値が13MPaに満たない場合は、高温環境下でのフィルムの絶縁破壊電圧が低くなりやすく、コンデンサとした場合に高温環境下において容量低下やショート破壊を引き起こし、耐電圧性の低下を招き、信頼性が損なわれる場合がある。F50値を上記した範囲に制御するには、後述する高メソペンタッド分率、高融点のポリプロピレン原料の使用や溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件を好ましい範囲内で制御すること、二軸延伸時の面積倍率は50倍以上とし、延伸後の熱処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに適宜施すことにより達成可能である。
【0028】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、110℃での体積抵抗率が5×10
14Ω・cm以上であることが好ましく、より好ましくは8×10
14Ω・cm以上、さらに好ましくは1×10
15Ω・cm以上である。上限は特に限定されないが、1×10
17Ω・cmとするものである。110℃での体積抵抗率が5×10
14Ω・cmに満たない場合は、コンデンサとした場合に、特に高温環境下において、もれ電流の増大に繋がり、コンデンサの自己発熱による容量低下やショート破壊を引き起こし、耐電圧性の低下を招き、信頼性が損なわれる場合がある。110℃での体積抵抗率を上記した範囲に制御するには、後述する高メソペンタッド分率、高融点のポリプロピレン原料の使用、二軸延伸時の面積倍率は50倍以上にすることにより達成可能である。さらには、溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件を好ましい範囲内で制御すること、延伸後の熱処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに適宜施すことにより、より向上させることが可能である。
【0029】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、少なくとも片表面の光沢度が130%以上150%未満であり、重ね合わせた際の静摩擦係数(μs)が0.1以上1.5以下であることが好ましい。
【0030】
上記光沢度が130%未満の場合、フィルム表面での光散乱密度が高いことから、表面が過度に粗面化し、絶縁破壊電圧の低下を生じ易くなる場合がある。他方、光沢度が150%以上の場合は表面が平滑化されていることを意味し、フィルムの滑りが極端に低下しやすくなる場合がある。そのため、ハンドリング性に劣ったり、シワが発生しやすくなり、素子加工性が劣ったりすることがある。上記光沢度は、より好ましくは132%以上148%未満、さらに好ましくは135%以上146%未満である。
【0031】
また、上記重ね合わせた際の静摩擦係数(μs)が、0.1未満であると、フィルムが滑りすぎて製膜時の巻き取りや素子加工時に巻きずれが発生する場合がある。μsが1.5を超えると、フィルムの滑りが極端に低下し、ハンドリング性に劣ったり、シワが発生しやすくなり、素子加工性が劣ったりすることがある。μsは、より好ましくは、0.1以上1.2以下、さらに好ましくは0.3以上1以下、最も好ましくは0.5以上0.9以下である。本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、光沢度および静摩擦係数(μs)を上記した好ましい範囲で両立化をすることが、耐電圧特性を向上させながら素子加工性を向上させる観点からより好ましい。光沢度および静摩擦係数(μs)の上記した好ましい範囲での両立化は、後述する使用原料や溶融シート冷却固化時の冷却温度および積層樹脂構成などの条件を好ましい範囲内で制御することにより達成可能である。
【0032】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、表面を適度に粗面化しフィルム層間間隙の均一性、フィルム同士あるいは搬送ロールとのすべり易さ、コンデンサ素子作成時の加工性およびコンデンサとしての信頼性を得る観点から、少なくとも片表面の3次元中心面平均粗さSRaは10nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは20nm以上150nm以下、さらに好ましくは30nm以上70nm以下である。少なくとも片表面のSRaが10nm未満であるとフィルムの滑りが極端に低下し、ハンドリング性に劣ったり、シワが発生しやすくなり、素子加工性が劣ったり、またコンデンサとして連続使用時にシワ等の影響で容量変化が大きくなったり、フィルムを積層したコンデンサとした場合にフィルム層間の適度な隙間がないため自己回復機能(セルフヒーリング)が動作し難くコンデンサの信頼性が低下する場合がある。本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムのSRaを上記した好ましい範囲内に制御するには、たとえば、後述する高メソペンタッド分率、高融点のポリプロピレン原料の使用や溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件や積層樹脂構成を好ましい範囲内で制御することにより達成可能である。
【0033】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、表面を適度に粗面化しフィルム層間間隙の均一性、フィルム同士あるいは搬送ロールとのすべり易さ、コンデンサ素子作成時の加工性およびコンデンサとしての信頼性を得る観点から、少なくとも片表面の10点平均粗さSRzが130nm以上2,000nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以上1,500nm以下、さらに好ましくは300nm以上1,000nm以下である。少なくとも片表面のSRzが130nm未満であるとフィルムの滑りが極端に低下し、ハンドリング性に劣ったり、シワが発生しやすくなり、素子加工性が劣る場合がある。また、コンデンサとして連続使用時にシワ等の影響で容量変化が大きくなったり、フィルムを積層したコンデンサとした場合にフィルム層間の適度な隙間がないため自己回復機能(セルフヒーリング)が動作し難くコンデンサの信頼性が低下する場合がある。本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムのSRzを上記した好ましい範囲内に制御するにはたとえば、後述する高メソペンタッド分率、高融点のポリプロピレン原料の使用や溶融シート冷却固化時の冷却温度などの条件や積層樹脂構成を好ましい範囲内で制御することにより達成可能である。
【0034】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で少なくとも片表面に粒子またはポリプロピレン以外の樹脂を含んでいてもよい。用いる粒子としては、無機粒子や有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物や硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸カルシウム、マイカ、カオリン、クレーなどを挙げることができる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物や炭酸カルシウムが好ましい。有機粒子としては、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッソ系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物を挙げることができる。前記の無機粒子および有機粒子の平均粒径は、0.03〜10μmの範囲であることが好ましい。平均粒径は、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.07〜1μm、最も好ましくは0.09〜0.3μmである。平均粒径が0.03μm未満では表面粗さが小さくなり、ハンドリング性の不足やコンデンサ信頼性が低下する場合がある。他方10μmを超えるとフィルムが破れやすくなったり、薄膜フィルムから脱落し、絶縁欠陥を生じ易くなる場合がある。上記粒子の含有量(合計量)としては、当該表面層を構成するポリプロピレン樹脂と粒子との量を100質量部としたとき、0.01〜1質量部であることが好ましい。含有量が0.01質量部未満では、ハンドリング性の不足やコンデンサ信頼性が低下する場合がある。1質量部を超えるとフィルムが破れやすくなったり、薄膜フィルムから脱落し、絶縁欠陥を生じ易くなる場合がある。粒子の含有量は、より好ましくは0.02〜0.8質量部、さらに好ましくは0.04〜0.6質量部である。またポリプロピレン以外の樹脂としては、各種ポリオレフィン系樹脂を含むビニルポリマー樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、特に、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンコポリマ、シクロオレフィンポリマー、シンジオタクチックポリスチレンなどが好ましく例示される。
【0035】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、少なくとも片表面にポリプロピレンとポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂とをブレンドした樹脂構成とすることで形成される海島構造を利用して表面凹凸を付与できる。ポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂としては、上述したポリプロピレン以外の樹脂を用いることができるが、ポリプロピレンとは非相溶だが比較的親和性が高く、ドメインサイズを小さくできることから特にポリメチルペンテン系樹脂が好ましい。ポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂の含有量は、当該表面層を構成するポリプロピレン樹脂とポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂との全量を100質量部とした場合、0.5質量部以上5.0質量部未満が好ましく、より好ましくは0.8質量部以上4.5質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以上4.0質量部以下である。ポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂の含有量が5.0質量部以上であると、ドメイン界面の影響が大きくなるため、高温環境下での絶縁破壊電圧を低下させてしまう場合がある。他方、A層の割合が小さすぎるとフィルム表面に凹凸を効率良く形成できない場合があり、コンデンサ素子加工性が得られにくくなる場合がある。
【0036】
ここで少なくとも片表面に粒子またはポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂を含む構成層を設ける場合に、積層フィルムとすることが好ましい。積層の方法としては、ラミネートによるフィルム同士を貼り合わせる方法、共押出によるフィードブロック方式やマルチマニホールド方式、コーティングによる方法などが挙げられる。これらの積層の方法うち、生産効率およびコストの観点から、溶融共押出による積層方法、コーティングによる積層方法が好ましい。また積層はフィルム厚さ方向に2層以上積層されてなる構成が好ましい。具体的には少なくとも一方の表層をA層とする2層以上の構成であり、たとえばA層/B層の2層構成、A層/B層/A層の3層構成、A層をフィルム両表面の最外層とする4層以上の構成、などである。ここでA層とは粒子を含む構成層と定義するものである。
【0037】
ここで本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムが厚さ方向に2層以上積層した構成である場合に、フィルム全厚みに対するA層の厚みの割合(両表層にA層がある場合はそれら合わせた両表層の厚みの割合)は製膜性や表面形状を制御する点から、好ましくは1〜60%、より好ましくは5〜50%、さらに好ましくは10〜40%である。A層の割合が大きすぎると、粒子またはポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂ドメイン界面の影響が大きくなるため、高温環境での絶縁破壊電圧を低下させてしまう場合がある。他方、A層の割合が小さすぎるとフィルム表面に凹凸を効率良く形成できない場合があり、コンデンサ素子加工性が得られなくなる場合がある。特にフィルム全厚みが3.0μm以下のフィルムの場合に、上記した積層構成とすることでコンデンサ素子加工性の向上効果を得られやすくなる。また、A層を構成する片面層のフィルム厚みは1.0μm未満が好ましく、より好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下である。ここで各層を判別するには、例えば、フィルム断面を作成し走査型電子顕微鏡SEMなどを用いた断面観察を行うことで、粒子またはポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂を含有するA層もしくはA層とB層との樹脂界面を判定することでその存在を判別することが可能である。
【0038】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムに用いると好ましいポリプロピレンは、通常、包装材やコンデンサ用に使用されるものである。前記ポリプロピレンは、冷キシレン可溶部(以下CXS)が4質量%以下であることが好ましい。これらを満たさないと製膜安定性に劣る場合があったり、二軸延伸したフィルムを製造する際にフィルム中にボイドを形成する場合があり、絶縁破壊電圧の低下が大きくなる場合がある。
【0039】
ここで冷キシレン可溶部(CXS)とはフィルムをキシレンで完全溶解せしめた後、室温で析出させたときに、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分のことをいい、立体規則性の低い、分子量が低い等の理由で結晶化し難い成分に該当していると考えられる。このような成分が多く樹脂中に含まれているとフィルムの絶縁破壊電圧が低下したり、もれ電流が増加する等の問題を生じることがある。従って、CXSは4質量%以下であることが好ましいが、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。このようなCXSを有するポリプロピレンとするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法等の方法が使用できる。
【0040】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレンは、好ましくはメルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分(230℃、21.18N荷重)、より好ましくは2〜5g/10分(230℃、21.18N荷重)であることが、製膜性の点から好ましい。メルトフローレート(MFR)を上記の値とするためには、平均分子量や分子量分布を制御する方法などが採用される。
【0041】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレンは、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有してもよいし、プロピレンが単独ではない重合体がブレンドされていてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として例えばエチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテンー1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。共重合量またはブレンド量は、絶縁破壊電圧、耐熱性の点から、共重合量では1mol%未満とすることが好ましく、ブレンド量では10質量%未満とするのが好ましい。
【0042】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレンは、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤、ポリプロピレン以外の樹脂などを含有してもよい。
【0043】
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は、長期耐熱性の観点から重要である。すなわち、かかる酸化防止剤としては立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)とともに1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASF社製Irganox(登録商標)1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製Irganox(登録商標)1010:分子量1177.7)等を併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン全量に対して0.03〜1.0質量%の範囲が好ましい。酸化防止剤が少なすぎると長期耐熱性に劣る場合がある。酸化防止剤が多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトによる高温下でのブロッキングにより、コンデンサ素子に悪影響を及ぼす場合がある。より好ましい総含有量は0.1〜0.9質量%であり、特に好ましくは0.2〜0.8質量%である。
【0044】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、メソペンタッド分率が0.95以上であり、融点が160℃を超えるポリプロピレン樹脂を含んでなることが好ましい。メソペンタッド分率は0.97以上がより好ましく、0.98以上がさらに好ましい。
【0045】
メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、高温環境下での絶縁破壊電圧を向上できるので好ましい。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではない。このように、高メソペンタッド分率、高融点のポリプロピレンを得る為には、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒において、電子供与成分の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率が0.95未満の場合、ポリプロピレンの規則性が低い為、フィルムの高温環境下での強度や絶縁破壊電圧の低下を招いたり、金属膜を蒸着により形成する工程やコンデンサ素子巻き取り加工での、フィルム搬送中に破膜する場合がある。ポリプロピレン樹脂の融点は163℃以上がより好ましく、165℃以上がさらに好ましい。融点が160℃以下の場合、結晶性が低い為、フィルムの高温環境下での絶縁破壊電圧の低下を招いたり、金属膜を蒸着により形成する工程やコンデンサ素子巻き取り加工での、フィルム搬送中に破膜する場合がある。
【0046】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、透明性、易滑性、高温特性に優れる為、一般工業用途、包装用途に好適に用いられる。通常30μm以下の一般コンデンサに有用であるのは勿論だが、特に高温環境下で用いられる自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)等に要求される薄膜の耐熱フィルムコンデンサ用に好適である。特にフィルム厚みは0.5μm以上15μm未満の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上6μm以下、さらに好ましくは0.8μm以上3.0μm以下、最も好ましくは0.9μm以上2.8μm以下である。
【0047】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプに限定されるものではない。具体的には電極構成の観点では箔巻きコンデンサ、金属蒸着膜コンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。また、形状の観点では、捲巻式であっても積層式であっても構わない。しかしながら本発明のフィルムの特性から特に金属蒸着膜コンデンサとして好ましく使用される。
【0048】
ポリプロピレンフィルムは通常、表面エネルギーが低く、金属蒸着を安定的に施すことが困難であるために、金属付着力を良好とする目的で、蒸着前に表面処理を行うことが好ましい。表面処理とは具体的にコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理等が例示される。通常ポリプロピレンフィルムの表面濡れ張力は30mN/m程度であるが、これらの表面処理によって、濡れ張力を37〜75mN/m、好ましくは39〜65mN/m、最も好ましくは41〜55mN/m程度とすることが、金属膜との接着性に優れ、保安性も良好となるので好ましい。
【0049】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、少なくとも片表面をプラズマ処理してなることが好ましい。プラズマ処理は、コロナ放電処理対比で、フィルム表面に均一な処理が可能で、また表面濡れ張力を高めることが可能である。さらに処理雰囲気のガスによってもその効果を高めることが可能である。本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、プラズマ処理を大気圧中で行うことが好ましい。その雰囲気ガスとして、酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、シランガスなどを用いることができるが、特に窒素ガスまたは、窒素ガスを含む混合ガスが好ましく、窒素ガスが最も好ましい。理由は明確ではないが、プラズマ処理に由来するC−O(エーテル基、ヒドロキシ基)、C=O(カルボニル基)、O=C−O(エステル基、カルボキシ基)の官能基に加え、窒素元素に由来するC−NおよびN−C=O(アミド基)の官能基をフィルム表面に均一付与でき、アルミニウム、亜鉛およびこれら合金を含む金属蒸着膜の密着性および均一性が向上することでコンデンサの耐電圧性および信頼性を向上することができるものと考察している。
【0050】
ここで、本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムを、上述のとおり、「少なくとも片表面をプラズマ処理してなる」と規定することは、「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当し、当該請求項の記載が「発明が明確であること」という要件に適合しないとされる可能性がある。しかしながら、後述のとおり、用いる雰囲気ガスの種類によっては直接特定できる場合もあるものの、一般的にはプラズマ処理の有無を、「その構造又は特性により直接特定すること」は困難である。したがって、上記規定には「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)」が存在すると考えられる。
【0051】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、少なくとも片表面において、X線光電子分光法(XPS)により検出される窒素元素組成量が1atomic%以上であることが好ましい。より好ましくは4atomic%以上、さらに好ましくは8atomic%以上である。窒素元素組成量の上限は特に限定されないが、20atomic%とするものである。窒素元素組成量は雰囲気ガスおよび放電処理強度で適宜調整が可能である。さらにプラズマ処理を大気圧で行う雰囲気中の酸素濃度は1ppm以上500ppm以下(体積基準、以下同様)が好ましく、より好ましくは5ppm以上100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以上50ppm以下である。酸素濃度が1ppm未満の場合には、官能基の付与効果が十分得られにくい場合があり、他方500ppmを超える場合にはフィルムの酸化劣化進行しコンデンサの耐電圧性および信頼性が低下する場合がある。また放電処理強度は20〜300W・分/m
2が好ましく、より好ましくは35〜260W・分/m
2さらに好ましくは50〜220W・分/m
2、最も好ましくは60〜180W・分/m
2である。処理強度が20W・分/m
2未満の場合は、フィルム表面に均一かつ、十分に官能基を付与することができない場合があり、他方、300W・分/m
2を超える場合は、官能基の付与が飽和状態になり、フィルムへの熱ダメージが強く絶縁欠陥を発生させてしまう場合がある。ここでプラズマ処理が施されているか否かは、上述したX線光電子分光法(XPS)よって検出されるフィルムの片表面の元素組成で確認することができる場合がある。表面処理が未処理のポリプロピレンフィルムでは−Cのみが検出され、コロナ処理のポリプロピレンフィルムでは−C、−Oのみが検出される。それに対して、プラズマ処理のポリプロピレンフィルムでは−C,−O以外の元素組成が検出される場合がある。
【0052】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムは、上述した特性を与えうる原料を用い、二軸延伸、熱処理および弛緩処理されることによって得られる。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、フィルムの製膜安定性、結晶・非晶構造、表面特性、機械特性および熱寸法安定性を制御する点においてテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0053】
次いで本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムについて説明する。
【0054】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、長手方向における厚み斑が0.1〜6.0%であり、長手方向における最大点強度と幅方向における最大点強度との和が400MPa以上である。
【0055】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、長手方向における厚み斑が0.1〜6.0%である。6.0%を超える場合には、フィルム薄膜部における絶縁破壊電圧の低下や製膜時のフィルム破れ、外観の悪化などの懸念が顕在化する場合がある。そのため、歩留まりの悪化やコンデンサとしたときの容量低下やショート破壊を引き起こし、高温環境下での耐電圧性および信頼性が低下する可能性がある。上記観点から長手方向における厚み斑は、より好ましくは0.1〜4.5%、さらに好ましくは0.1〜3.0%である。
【0056】
さらに本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、長手方向における最大点強度と幅方向における最大点強度との和が400MPa以上である。400MPa未満の場合には、ポリプロピレンフィルムの高温環境下での絶縁破壊電圧の低下を招いたり、異物が混入した場合に短絡が生じる場合がある。また、コンデンサとしたときの容量低下やショート破壊を引き起こし、高温環境下での耐電圧性および信頼性が低下する可能性がある。上記観点から長手方向における最大点強度と幅方向における最大点強度との和は、より好ましくは460MPa以上、さらに好ましくは560MPa以上である。上限は特に限定されないが、フィルムの剛性が高過ぎた場合、柔軟性が損なわれハンドリング性に劣る場合があるので800MPaが上限である。
【0057】
発明者らは鋭意検討することにより、長手方向における厚み斑や、長手方向における最大点強度と幅方向における最大点強度との和が、ポリプロピレンフィルムの歩留まりや高温環境下での絶縁破壊電圧に高い相関性があり、また、コンデンサとしたときの高温環境下での耐電圧性および信頼性の向上には、長手方向における厚み斑を小さく、長手方向における最大点強度と幅方向における最大点強度との和を高くするよう制御することが重要であることを見出したものである。ここで、長手方向における厚み斑、及び長手方向における最大点強度と幅方向における最大点強度との和をかかる範囲に制御する方法としては、たとえば、フィルムの原料組成を後述する範囲とし立体規則性の高いホモポリプロピレン樹脂などを使用すること、また、キャスティング条件や縦延伸条件を後述する範囲内とし、未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率を高め、該未延伸ポリプロピレンフィルムがメゾ相構造を有するようにすることが好ましい。
【0058】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、125℃で15分間加熱処理後の長手方向の熱収縮率、及び、125℃で15分間加熱処理後の幅方向の熱収縮率のいずれの値も2.0%以下であることが好ましい。125℃で15分間加熱処理後の長手方向の熱収縮率の値はより好ましくは1.7%以下、さらに好ましくは1.4%以下である。また、125℃で15分間加熱処理後の幅方向の熱収縮率の値はより好ましくは、1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.5%以下である。熱収縮率の下限は特に限定されないが、フィルムが膨張しすぎる場合はコンデンサ製造工程や使用工程の熱により素子の巻き状態が緩む場合があるので、上記いずれの方向についても、好ましくは−1.0%である。熱収縮率が2.0%を超える場合は、高温環境下での熱変形量が大きく、コンデンサ製造工程および使用工程の熱によりフィルム自体の収縮が生じ、フィルム間に隙間が生じる場合があり、耐電圧性が低下する場合がある。ここで、熱収縮率をかかる範囲に制御する方法としては、フィルムの原料組成を後述する範囲とし立体規則性の高いホモポリプロピレン樹脂などを使用すること、また、キャスティング条件や縦延伸条件を後述する範囲内とし、未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率を高めることが好ましい。
【0059】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、125℃で測定した場合の長手方向の最大点強度が80MPa以上であることが好ましい。前記長手方向の最大点強度は、95MPa以上がより好ましく、110MPa以上がさらに好ましい。125℃で測定した場合の長手方向の最大点強度が80MPa未満の場合には、ポリプロピレンフィルムの高温環境下での絶縁破壊電圧の低下を招いたり、異物が混入した場合に短絡が生じる場合がある。また、コンデンサとしたときの容量低下やショート破壊を引き起こし、高温環境下での耐電圧性および信頼性が低下する可能性がある。ここで、125℃で測定した場合の長手方向の最大点強度をかかる範囲に制御する方法としては、フィルムの原料組成を後述する範囲とし立体規則性の高いホモポリプロピレン樹脂などを使用すること、また、キャスティング条件や縦延伸条件を後述する範囲内とし、未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率を高めることが好ましい。
【0060】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、全ヘイズが0.01〜1.0%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜0.6%であり、さらに好ましくは0.01〜0.4%である。全ヘイズが1.0%を超えた場合には、コンデンサ用途では、特に薄膜フィルムとしたとき、金属層の蒸着時などにフィルム破れが発生する場合がある。これは、ポリプロピレンのβ晶に起因して発生するフィルム内部の微小なボイドがフィルム破れの原因になっているためと考えられる。ここで、全ヘイズをかかる範囲に制御する方法としては、たとえば、フィルムの原料組成を後述する範囲とし立体規則性の高いホモポリプロピレン樹脂などを使用すること、キャスティング条件を後述する範囲内とし、未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率を高めること、また、縦延伸条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
【0061】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、メゾ相構造を有する未延伸ポリプロピレンフィルムを、少なくとも一方向に2倍以上延伸してなることが好ましい。メゾ相分率として20%以上が好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上、最も好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0062】
ここで、本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムを、上述のとおり、「メゾ相構造を有する未延伸ポリプロピレンフィルムを、少なくとも一方向に2倍以上延伸してなる」と規定することは、「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当し、当該請求項の記載が「発明が明確であること」という要件に適合しないとされる可能性がある。しかしながら、一般的に原料として用いられる未延伸ポリプロピレンフィルムがメゾ相構造を有していたか否かを、延伸後のポリプロピレンフィルムの「構造又は特性により直接特定すること」は困難である。したがって、上記規定には「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)」が存在すると考えられる。
【0063】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムにおいて、良好な厚み斑を達成するためには、プロピレン−エチレン共重合体などの共重合体成分を延伸助剤として用いる手法が考えられるが、多量に含有するとフィルムの機械特性が低下したり、熱収縮率が増加する場合がある。また、延伸倍率を高く設定する手法も考えられるが、熱収縮率が増加する場合がある。
【0064】
そこで、本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムの厚み斑を良化する手法として、未延伸ポリプロピレンフィルムの段階でメゾ相を形成させることを着想した。メゾ相とは結晶と非晶の中間相であり、溶融状態から非常に早い冷却速度で固化させた際に特異的に生成する。一般的にポリプロピレンを結晶化させると球晶が成長することが知られているが、結晶化した未延伸ポリプロピレンフィルムを延伸すると、球晶部と球晶間の非晶部で延伸応力に差が生じ、局所的な延伸斑が発生し厚み斑が悪化すると考えられる。一方、メゾ相は球晶生成しないため、延伸斑が生じず厚み斑が良好となる。未延伸ポリプロピレンフィルムでメゾ相を効率的に形成するには、結晶生成を抑える必要があるが、ポリプロピレンは結晶性高分子である為、非常に結晶生成しやすい。特に、立体規則性の高いホモポリプロピレン樹脂を用いると非常に結晶生成しやすくなる為、メゾ相の形成を阻害してしまう。そこで、一般的には結晶生成を抑える為に、メソペンタッド分率の低いポリプロピレン樹脂を使用したり、プロピレン−エチレン共重合体などの共重合体を用いる手法が用いられる。しかしながら、そういった手段を用いると、フィルムの高温環境下での機械特性が低下したり、熱収縮率が増加する場合がある。
【0065】
本発明者らは鋭意検討した結果、立体規則性の高いホモポリプロピレン樹脂を用いながらも、結晶生成を抑えメゾ相を形成させることに成功し、ポリプロピレンフィルムの厚み斑だけでなく、機械特性、絶縁破壊電圧、熱収縮率などにおいて驚くべき向上効果を発現しうることを見出し、本発明に至ったのである。結晶生成を抑えるための手法としては、たとえば、キャスティングドラムの温度を40℃以下とすること、未延伸ポリプロピレンフィルムを300μm以下とすること、キャストドラム上の未延伸ポリプロピレンフィルムに冷風を当てて冷却効率を高めること、また、口金のリップ部の温度を上流の短管部分より高く設定することにより、結晶生成を抑制することが挙げられる。口金リップ部を昇温することによる効果は、ポリマーとリップ部との摩擦が軽減され、剪断による結晶化を抑えることができるためと推測している。
【0066】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率が0.97以上であり、結晶化温度(Tmc)が115℃以下であるポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。規則性、結晶性の非常に高いポリプロピレンを用いることが、効果を発現する上で非常に重要である。メソペンタッド分率は0.97以上がより好ましく、0.975以上が更に好ましく、0.98以上が特に好ましい。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、機械強度、絶縁破壊電圧が高くなるので好ましい。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではない。本発明では、高メソペンタッド分率のポリプロピレン樹脂は、特に、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒によるものが好ましく、電子供与成分の選定を適宜行う方法等が好ましく採用され、これによるポリプロピレン樹脂は分子量分布(Mw/Mn)が3.0以上、<2,1>エリトロ部位欠損は0.1mol%以下とすることができ、このようなポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率が0.95未満の場合、ポリプロピレンの規則性が低い為、フィルムの剛性に乏しく、フィルムの耐電圧性の低下を招いたり、金属膜を蒸着により形成する工程やコンデンサ素子巻き取り加工での、フィルム搬送中に破膜する場合がある。ポリプロピレン樹脂のTmcは115℃以下がより好ましく、113℃以下がさらに好ましく、111℃以下が最も好ましい。Tmcが115℃より高い場合、結晶生成能が高くなり、未延伸シートにおいてメゾ相の生成が困難になる場合がある。
【0067】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、上述のメゾ相構造を有する未延伸ポリプロピレンフィルムを、少なくとも一方向に2倍以上延伸してなることが好ましい。少なくとも一方向に2倍以上延伸を施すことで、分子鎖が伸長し配向構造を有することができ、フィルムの機械特性が向上、コンデンサとしたとき高温環境下での耐電圧性および信頼性を向上させることができる。この観点から、好ましくは4.6倍以上の延伸、より好ましくは5.4倍以上の延伸である。上限は特に限定しないが、製膜安定性の観点から15倍の延伸とするものである。
【0068】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、厚み斑、機械特性、熱収縮率に優れる為、一般工業用途、包装用途に好適に用いられる。特に、薄膜での厚み斑、機械特性に優れることから、通常厚み15μm以下の一般コンデンサ用フィルムに有用であるのは勿論だが、特に高温環境下で用いられる自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)等に要求される薄膜の耐熱フィルムコンデンサ用に好適である。特にフィルム厚みは0.5μm以上11μm未満の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上7μm以下、さらに好ましくは0.8μm以上5.0μm以下であり、上記耐熱フィルムコンデンサ用途としては特性と薄膜化によるコンデンササイズのバランスから0.8μm以上3.8μm以下が最も好ましい。
【0069】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプに限定されるものではない。具体的には電極構成の観点では箔巻きコンデンサ、金属蒸着膜コンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。また、形状の観点では、捲巻式であっても積層式であっても構わない。しかしながら本発明のフィルムの特性から特に金属蒸着膜コンデンサとして好ましく使用される。
【0070】
なお、ポリプロピレンフィルムは通常、表面エネルギーが低く、金属蒸着を安定的に施すことが困難であるために、金属付着力を良好とする目的で、蒸着前に表面処理を行うことが好ましい。表面処理とは具体的にコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理等が例示される。通常ポリプロピレンフィルムの表面濡れ張力は30mN/m程度であるが、これらの表面処理によって、濡れ張力を37〜50mN/m、好ましくは39〜48mN/m程度とすることが、金属膜との接着性に優れ、保安性も良好となるので好ましい。
【0071】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムは、上述した特性を与えうる原料を用い、二軸延伸されることによって得られる。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られる。中でも、フィルムの製膜安定性、厚み均一性、フィルムの最大点強度、熱寸法安定性を制御する点においてテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。本発明のポリプロピレンフィルムは、単層フィルムでも積層フィルムでもよい。積層の方法としては、ラミネートによるフィルム同士を貼り合わせる方法、共押出によるフィードブロック方式やマルチマニホールド方式、コーティングによる方法などが挙げられる。また積層はフィルム厚さ方向に2層以上積層されていてもよい。
【0072】
次に本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムの製造方法を説明する。以下、より具体的に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。まず、ポリプロピレン樹脂を支持体上に溶融押出して未延伸ポリプロピレンフィルムとする。この未延伸ポリプロピレンフィルムを長手方向に延伸し、次いで幅方向に延伸して、逐次二軸延伸せしめる。その後、熱処理および弛緩処理を施して二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造する。その際、面積倍率は50倍以上に延伸することが好ましい。さらに前記二軸延伸後の熱処理および弛緩処理工程では、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理をフィルムに施し(1段目熱処理工程)、次いで、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向の延伸温度未満の温度での熱処理をフィルムに施す(2段目熱処理工程)ことが、より本発明の効果を得やすくなるため好ましい。以下、具体的に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0073】
まず、ポリプロピレン樹脂を単軸押出機から溶融押出し、濾過フィルターを通した後、230〜280℃、より好ましくは230〜260℃の温度でスリット状口金から押し出す。積層構成とする場合には、粒子やポリプロピレン樹脂と非相溶の樹脂をポリプロピレン樹脂に予めコンパウンドした原料AをA層用の単軸押出機に供給し、ポリプロピレン樹脂原料BをB層用の単軸押出機に供給し、200〜280℃、より好ましくは200〜260℃にて溶融共押出によるフィードブロック方式でA層/B層/A層の3層構成に積層された樹脂をスリット状口金から溶融シートを押し出し、10〜110℃の温度に制御された冷却ドラム上で固化させ未延伸ポリプロピレンフィルムを得る。
【0074】
未延伸ポリプロピレンフィルムではメゾ相構造を有していることがより好ましく、メゾ相分率として20%以上が好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ここで未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率を算出するには、未延伸ポリプロピレンフィルムを広角X線回折で測定し、X線回折プロファイルを用いて算出する。得られたX線回折プロファイルをピーク分離ソフトウェアで処理してメゾ相とα晶、非晶のプロファイルとに分離し、メゾ相分率を算出する。本発明において、メゾ相を形成している、またはメゾ相構造を有するとは、上記メゾ相分率が20%以上であることをいう。α晶に由来する回折プロファイルとは、回折角(2θ)が10〜30度の範囲での広角X線回折測定において観測される、14.1度付近、16.9度付近、18.6度付近、21.6度付近および21.9度付近の5つのピークからなるものである。メゾ相に由来する回折プロファイルとは、15度付近と21度付近の2つのブロードなピークからなるものである。非晶に由来する回折プロファイルとは、回折角が16.2度付近のブロードなピークであり、溶融状態のポリプロピレン樹脂を広角X線回折で測定することで得られる。
【0075】
キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法、エアーチャンバー法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表面粗さの制御が可能なエアーナイフ法が好ましい。また、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアーが流れるようにエアーナイフの位置を適宜調整することが好ましい。
【0076】
結晶配向度を高めたり、機械特性を向上させたり、電気特性を向上させたり、表面の光沢度を高めたりする観点から、キャスティングドラムの温度は、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは10〜60℃、最も好ましくは10〜30℃である。キャスティングドラムの温度を10〜30℃とすることで未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率を高め、該未延伸ポリプロピレンフィルムがメゾ相構造を有するようにすることができる。メゾ相は結晶と非晶の中間相であり、溶融状態から非常に早い冷却速度で固化させた際に特異的に生成する。一般的にポリプロピレンを冷却固化させると、結晶化し、球晶が成長することが知られているが、このように球晶が生じた未延伸ポリプロピレンフィルムを延伸すると、球晶内部や球晶間の結晶と非晶の間などで延伸応力に差が生じ、局所的な延伸斑が発生し厚み斑や構造斑に繋がると考えられる。一方、メゾ相は球晶形態をとらないため、延伸斑が生じず均一性が高くなるため、コンデンサとしたときの耐電圧性および信頼性が向上すると考えられる。
【0077】
次に、この未延伸ポリプロピレンフィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。まず未延伸ポリプロピレンフィルムを70〜150℃、好ましくは80〜140℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該未延伸ポリプロピレンフィルムを70℃〜150℃、好ましくは80〜140℃の温度に保ち、長手方向に2〜15倍、好ましくは4.5〜12倍、より好ましくは5.5〜10倍に延伸した後、室温まで冷却する。さらに未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率が20%以上の場合は、80〜130℃、好ましくは90〜120℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該未延伸ポリプロピレンフィルムを80〜130℃、好ましくは90〜120℃の温度に保ち長手方向に2〜15倍、好ましくは4.5〜12倍、より好ましくは5.5〜10倍に延伸した後、室温まで冷却する。
【0078】
次いで長手方向に一軸延伸せしめたフィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し、140〜170℃、好ましくは145〜160℃の温度(幅方向の延伸温度)で幅方向に7〜15倍、より好ましくは9〜12倍、最も好ましくは9.2〜11.5倍に延伸する。
【0079】
ここで、面積倍率は50倍以上であることが好ましい。本発明において、面積倍率とは、長手方向の延伸倍率に幅方向の延伸倍率を乗じたものである。面積倍率は、55倍以上であることがより好ましく、特に好ましくは60倍以上である。面積倍率が上記の範囲であることにより、ポリプロピレンフィルムのα晶(110)面の結晶配向度を高め、長手方向における伸度5%時の応力(MD−F5値)と幅方向における伸度5%時の応力(TD−F5値)との比(MD−F5値)/(TD−F5値)、長手方向における最大点強度(St)と最大点伸度(El)との比(St)/(El)を好ましい範囲にでき、125℃における長手方向の伸度50%時の応力(F50値)を向上できるという効果が得られる。なお、面積倍率の上限は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から、150倍以下であることが好ましい。
【0080】
本発明においては、続く熱処理および弛緩処理工程ではクリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2〜20%の弛緩を与えつつ、115℃以上140℃以下の温度(1段目熱処理温度)で熱固定(1段目熱処理)した後に、再度クリップで幅方向を緊張把持したまま前記の熱固定温度(1段目熱処理温度)を超えて、幅方向の延伸温度未満の条件で熱固定を施す(2段目熱処理)ように多段方式の熱処理を行うことが、熱寸法安定性を向上させ、ポリプロピレンフィルムのα晶(110)面の結晶配向度を高め、幅方向における伸度5%時の応力(TD−F5値)と長手方向における伸度5%時の応力(MD−F5値)との関係(MD−F5値)/(TD−F5値)、を好ましい範囲にでき、125℃における長手方向の伸度50%時の応力(F50値)を向上でき、フィルム耐電圧特性を向上させる観点から重要である。
【0081】
弛緩処理においては、熱寸法安定性を高める観点から、弛緩率は5〜18%がより好ましく、8〜15%がさらに好ましい。20%を超える場合はテンター内部でフィルムが弛みすぎ製品にシワが入り蒸着時にムラを発生させる場合があったり、機械特性の低下が生じたり、他方、弛緩率が2%より小さい場合は十分な熱寸法安定性が得られず、コンデンサとしたときの高温環境下で容量低下やショート破壊を引き起こす場合がある。
【0082】
1段目熱処理温度は、延伸時の分子鎖配向を維持でき機械特性を高められる観点から、115℃以上140℃以下が好ましく、より好ましくは120℃以上、138℃以下、さらに好ましくは125℃以上、135℃以下である。115℃未満の熱処理温度では高温環境下でのコンデンサ特性において容量減少やショート破壊を引き起こす場合がある。他方、140℃を超える場合は延伸により形成した分子鎖配向の緩和が進行するため機械特性の低下が生じる場合がある。
【0083】
2段目熱処理温度を、1段目の熱処理温度を超えて、幅方向の延伸温度未満の温度とすることで、1段目の熱処理で緩和不十分な運動性の高い非晶分子鎖を緩和させることができる。その結果、125℃における長手方向の伸度50%時の応力(F50値)を向上できる。この観点から、2段目熱処理温度は[(1段目の熱処理温度)+5℃]以上、[(幅方向の延伸温度)−5℃]以下が好ましく、[(1段目の熱処理温度)+8℃]以上、[(幅方向の延伸温度)−8℃]以下がさらに好ましい。多段式の熱処理を経た後はクリップで幅方向を緊張把持したまま80〜100℃での冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム製品ロールを巻き取る。
【0084】
ここで第1の形態のポリプロピレンフィルムはフィルムを巻取る前もしくは巻取後の加工工程において、蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良くするために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理、プラズマ処理などの表面処理を行うことが好ましい。
【0085】
本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムの製造方法は、本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムの少なくとも片表面をプラズマ処理する工程を有することがより好ましい。上記プラズマ処理する工程を有することにより、蒸着金属とフィルムの密着性を高めコンデンサの耐電圧性および信頼性を向上させやすくなる。また、上記プラズマ処理する工程は、窒素雰囲気下で行うことがさらに好ましい。
【0086】
なお、本発明の第1の形態のポリプロピレンフィルムを得るため、特に重要な製造条件は以下の条件である。
・面積倍率が50倍以上(特に好ましくは60倍以上)であること。
加えて、以下の条件が満たされていることが、より好ましい。
・1段目の熱処理温度が、115℃以上140℃以下であること。
・1段目の熱処理温度が、幅方向の延伸温度未満の温度であること。
・2段目の熱処理温度が、1段目の熱処理温度を超える温度であること。
・2段目の熱処理温度が、幅方向の延伸温度未満の温度であること。
・1段目の熱処理工程において、3〜12%の弛緩処理が施されていること。
【0087】
さらに好ましくは以下の製造条件の少なくとも1つ以上を満足する場合であり、フィルム厚み3μm以下の電気特性、コンデンサの加工性、耐電圧性および信頼性を向上することができる。
・溶融シートのキャスティングドラム温度が10〜30℃の範囲であること。
・フィルム厚さ方向に2層以上積層されてなる構成(A層/B層、A層/B層/A層など)であり、A層の厚み割合が全層厚みの10〜40%であること。
・A層には平均粒径0.09〜0.3μmの粒子を0.04〜0.6質量部含み、より好ましくはポリプロピレン樹脂と非相溶の樹脂としてポリメチルペンテンを1.0質量部以上4.0質量部以下含んでいること。
・蒸着層を設けるフィルム片表面に窒素雰囲気下でプラズマ処理を施すこと。
【0088】
次に本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムの製造方法を説明する。まず、ポリプロピレン樹脂を支持体上に溶融押出して未延伸ポリプロピレンフィルムとし、この未延伸ポリプロピレンフィルムを縦延伸、横延伸の逐次二軸延伸した後に熱処理および弛緩処理を施してポリプロピレンフィルムを製造する。以下、より具体的に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0089】
まず、メソペンタッド分率が0.97以上であり、Tmcが115℃以下であるポリプロピレン樹脂を溶融押出し、濾過フィルターを通した後、230〜260℃の温度でスリット状口金から溶融シートを押出し、40℃以下の温度に制御されたキャスティングドラム上で固化させ未延伸ポリプロピレンフィルムを得る。キャスティングドラムの温度は30℃未満がより好ましく、25℃以下がさらに好ましい。また、未延伸ポリプロピレンフィルムの厚みは300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスティング法などのうちいずれの手法を用いてもよい。
【0090】
本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムの製造方法は、本発明の第2の形態のポリプロピレンフィルムを製造する方法であって、メゾ相構造を有する未延伸ポリプロピレンフィルムを、少なくとも一方向に2倍以上延伸する工程を有することが好ましい。
【0091】
以下、延伸する工程について説明する。未延伸ポリプロピレンフィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめるため、まず、未延伸ポリプロピレンフィルムを20〜140℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該未延伸ポリプロピレンフィルムを20〜140℃、好ましくは80〜130℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該未延伸ポリプロピレンフィルムを80〜130℃、好ましくは90〜125℃、より好ましくは115〜123℃の温度に保ち、長手方向に2倍以上、好ましくは2〜15倍に延伸した後、室温まで冷却する。予熱ロールの温度は延伸温度より低いことが好ましい。より好ましい長手方向の延伸倍率としては4.6〜10倍であり、さらに好ましくは5〜9倍、最も好ましくは5.4〜8倍である。延伸方法や延伸倍率は、とくに限定されず用いるポリマー特性により適宜選択される。
【0092】
次いで、縦一軸延伸フィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し横延伸を120〜165℃の温度で幅方向に2倍以上、好ましくは5〜15倍、より好ましくは6〜12倍、さらに好ましくは7.5〜9倍に延伸する。幅方向の延伸倍率が5倍未満の場合、フィルムの幅方向の機械特性が低下したり、厚み斑が悪化する為、絶縁破壊電圧が低下する場合がある。一方、幅方向の延伸倍率が15倍を超えると、破膜しやすくなり生産性が低下する場合や熱収縮率が大きくなり信頼性が低下する場合がある。
【0093】
本発明においては続く熱処理および弛緩処理工程ではクリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2〜20%の弛緩を与えつつ、115℃以上140℃以下の温度で1段目熱処理した後に、クリップで幅方向を緊張把持したまま前記1段目の熱処理温度を超えて横延伸温度未満の条件で熱固定を施す2段目熱処理を施すように多段方式の熱処理を行うことが、フィルムを高剛性化し、かつフィルムの熱収縮率を低減し、フィルム耐電圧特性を向上させる観点から重要である。
【0094】
弛緩処理工程における弛緩率は、熱寸法安定性を得る観点から5〜18%が好ましく、8〜15%がより好ましい。20%を超える場合はテンター内部でフィルムが弛みすぎ製品にシワが入り蒸着時にムラを発生させる場合があり、他方弛緩率が2%より小さい場合は熱寸法安定性が得られず、コンデンサとしたときの高温環境下で容量低下やショート破壊を引き起こす場合がある。
【0095】
1段目熱処理温度は延伸時の分子鎖配向を維持でき機械特性を高められる観点から、1段目の熱処理温度は115℃以上140℃以下とすることが好ましく、120℃以上、138℃以下がより好ましく、125℃以上、135℃以下がさらに好ましい。115℃未満の熱処理温度では高温環境下でのコンデンサ特性において容量減少やショート破壊を引き起こす場合がある。他方、140℃を超えての熱処理の場合は分子鎖配向緩和が進行するため、フィルムの機械特性が低くなる場合がある。
【0096】
2段目熱処理温度は1段目の熱処理温度を超えて横延伸温度未満とすることで、1段目の熱処理工程で緩和不十分な運動性の高い非晶分子鎖を緩和させることができ、熱収縮率を低減できるものである。この観点から2段目熱処理温度は1段目の熱処理温度+5℃以上、横延伸温度−5℃以下が好ましく、1段目の熱処理温度+8℃以上、横延伸温度−8℃以下がさらに好ましい。
【0097】
多段式の熱処理を経た後はクリップで幅方向を緊張把持したまま80〜100℃での冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム製品ロールを巻き取る。ここでフィルムを巻取る前に蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良くするために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行うことが好ましい。
【0098】
続いて、本発明の第1の形態または第2の形態のポリプロピレンフィルムを用いてなる金属膜積層フィルム、それを用いてなるフィルムコンデンサ、およびそれらの製造方法について説明する。
【0099】
本発明の金属膜積層フィルムは、本発明の第1の形態または第2の形態のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜が設けられてなる。
【0100】
また、本発明の金属膜積層フィルムの製造方法は、上記第1の形態または第2の形態のポリプロピレンフィルムの製造方法により得られるポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を設ける金属膜付与工程を有する。
【0101】
本発明において、上記したポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を設けて金属膜積層フィルムとする金属膜付与工程の方法は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、アルミニウムまたは、アルミニウムと亜鉛との合金を蒸着してフィルムコンデンサの内部電極となる蒸着膜等の金属膜を設ける方法が好ましく用いられる。このとき、アルミニウムと同時あるいは逐次に、例えば、ニッケル、銅、金、銀、クロムなどの他の金属成分を蒸着することもできる。また、蒸着膜上にオイルなどで保護層を設けることもできる。ポリプロピレンフィルム表面の粗さが表裏で異なる場合には、粗さが平滑な表面側に金属膜を設けて金属膜積層フィルムとすることが耐電圧性を高める観点から好ましい。
【0102】
本発明では、必要により、金属膜を形成後、金属膜積層フィルムを特定の温度でアニール処理を行なったり、熱処理を行なったりすることができる。また、絶縁もしくは他の目的で、金属膜積層フィルムの少なくとも片面に、ポリフェニレンオキサイドなどのコーティングを施すこともできる。
【0103】
本発明のフィルムコンデンサは、本発明の金属膜積層フィルムを用いてなる。
【0104】
また、本発明のフィルムコンデンサの製造方法は、上記本発明の金属膜積層フィルムの製造方法により得られる金属膜積層フィルムを用いる。
【0105】
例えば、上記した本発明の金属膜積層フィルムを、種々の方法で積層もしくは巻回すことにより本発明のフィルムコンデンサを得ることができる。巻回型フィルムコンデンサの好ましい製造方法を例示すると、次のとおりである。
【0106】
ポリプロピレンフィルムの片面にアルミニウムを減圧状態で蒸着する。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着する。次に、表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面が一方にマージンを有した、テープ状の巻取リールを作成する。左もしくは右にマージンを有するテープ状の巻取リールを左マージンおよび右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部よりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。
【0107】
両面に蒸着を行う場合は、一方の面の長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着し、もう一方の面には長手方向のマージン部が裏面側蒸着部の中央に位置するようにストライプ状に蒸着する。次に表裏それぞれのマージン部中央に刃を入れてスリットし、両面ともそれぞれ片側にマージン(例えば表面右側にマージンがあれば裏面には左側にマージン)を有するテープ状の巻取リールを作製する。得られたリールと未蒸着の合わせフィルム各1本ずつを、幅方向に金属化フィルムが合わせフィルムよりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。
【0108】
以上のようにして作成した巻回体から芯材を抜いてプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型フィルムコンデンサを得ることができる。フィルムコンデンサの用途は、鉄道車輌用、自動車用(ハイブリットカー、電気自動車)、太陽光発電・風力発電用および一般家電用等、多岐に亘っており、本発明のフィルムコンデンサもこれら用途に好適に用いることができる。その他、包装用フィルム、離型用フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途でも用いることができる。
【0109】
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
【0110】
(1)フィルム厚み
ポリプロピレンフィルムの任意の10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて測定した。その10箇所の厚みの平均値をポリプロピレンフィルムのフィルム厚みとした。
【0111】
(2)フィルムの長手方向における厚み斑(第2の形態)
ポリプロピレンフィルムを10mm幅に切り取り、長手方向に50mm間隔で20点厚みを測定した。得られた20点の厚みのデータの平均値を求めた。また、最大値と最小値の差(絶対値)を求め、最小値と最大値の差の絶対値を平均値で除して100を乗じた値をフィルムの長手方向厚み斑とした。また、厚みの測定は23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて実施した。
【0112】
(3)広角X線回折で測定されるポリプロピレンフィルムのα晶(110)面の結晶配向度(第1の形態)
ポリプロピレンフィルムを長さ4cm、幅1mmの短冊状に切断し、厚さが1mmになるように重ねて試料調製した。フィルム表面に対して垂直方向にX線を入射し、2θ=約14°(α晶(110)面)における結晶ピークを円周方向にスキャンして得られる配向ピークの半値幅H(°)から、下記式により計算した。
【0113】
結晶配向度=(180°−H)/180°
測定装置および条件を以下に示す。
(測定装置)
・X線回折装置 理学電機(株)社製 4036A2型
X線源 :CuKα線(Niフィルタ使用)
出力 :40kV−30mA
・ゴニオメータ 理学電機(株)社製 2155D型
スリット:2mmφ−1°−1°
検出機 :シンチレーションカウンター
・計数記録装置 理学電機(株)社製 RAD−C型
(測定条件)
・円周方向スキャン(2θ=約14°)
スキャン方法 :ステップスキャン
測定範囲 :0〜360°
ステップ :0.5°
積算時間 :2秒
(4)長手方向における、最大点強度(St)と最大点伸度(El)(第1の形態)
ポリプロピレンフィルムを長手方向に、幅10mm、長さ150mm(測定部位は中央の50mm)の矩形に切り出しサンプルとした。次に、矩形のサンプル引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)に、初期チャック間距離20mmでセットし、23℃下で引張速度を300mm/分としてフィルムの引張試験を行った。サンプルが破断するまでの最大荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値を最大点強度の応力(単位:MPa)として算出し、該最大点強度に対応する破断点を最大点伸度(単位:%)とした。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値を算出し、最大点強度(St)と最大点伸度(El)を求めた。
【0114】
なお、最大点強度算出の為に用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
(5)フィルムの長手方向、幅方向における最大点強度の和(第2の形態)
ポリプロピレンフィルムを試験方向長さ50mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。次に、矩形のサンプル引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)に、初期チャック間距離20mmでセットし、23℃下で引張速度を300mm/分としてフィルムの引張試験を行った。サンプルが破断するまでの最大荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値を最大点強度の応力(単位:MPa)として算出した。最大点強度測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値を算出し、最大点強度を求めた。フィルムの長手方向における最大点強度と幅方向における最大点強度の和を算出した。
【0115】
なお、最大点強度算出の為に用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
【0116】
(6)フィルムの幅方向および長手方向における、伸度5%時の応力(TD−F5値)および(MD−F5値)(第1の形態)
ポリプロピレンフィルムを幅方向および長手方向に、それぞれ、幅10mm、長さ150mm(測定部位は中央の50mm)の矩形に切り出しサンプルとした。次に、矩形のサンプル引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)に、初期チャック間距離20mmでセットし、23℃下で引張速度を300mm/分としてフィルムの引張試験を行った。サンプルの伸び5%時にフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値を伸度5%時の応力(単位:MPa)として算出し、測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値を算出し、「TD−F5値」、「MD−F5値」をそれぞれ算出した。
【0117】
なお、F5値算出の為に用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
【0118】
(7)125℃で測定した場合のフィルムの最大点強度(第2の形態)
ポリプロピレンフィルムを準備し、長手方向、及び幅方向を長辺方向とするサンプルを、長さ50mm×幅10mmの矩形に切り出し、矩形のサンプル引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)に、初期チャック間距離20mmでセットし、125℃に加熱されたオーブン中へチャックごと投入し、1分間加熱した後、引張速度を300mm/分としてフィルムの引張試験を行った。サンプルが破断するまでの最大荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値を最大点強度の応力として算出し、測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。なお、最大点強度算出の為に用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
【0119】
(8)125℃における長手方向の伸度50%時の応力(F50値)(第1の形態)
ポリプロピレンフィルムを長手方向に、幅10mm、長さ150mm(測定部位は中央の50mm)の矩形に切り出しサンプルとした。次に矩形のサンプル引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)に、初期チャック間距離20mmでセットし、125℃に加熱されたオーブン中へチャックごと投入し、1分間加熱した後、引張速度を300mm/分としてフィルムの引張試験を行った。サンプル伸び50%時にフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値を伸度50%時の応力(F50値)(単位:MPa)として算出し、測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0120】
なお、F50値算出の為に用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
【0121】
(9)120℃で10分間熱処理後の熱収縮率(第1の形態)
ポリプロピレンフィルムを幅方向および長手方向に、それぞれ、幅10mm、長さ50mm(測定方向)の試料を5本切り出し、両端から5mmの位置にそれぞれ印を付けて試長40mm(l
0)とした。次に、試験片を紙に挟み込み荷重ゼロの状態で120℃に保温されたオーブン内で、10分間加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(l
1)を測定して下記式にて求め、5本の平均値を熱収縮率とした。
【0122】
熱収縮率={(l
0−l
1)/l
0}×100(%)
(10)125℃で15分間加熱処理後の熱収縮率(第2の形態)
ポリプロピレンフィルムを準備し、長手方向、及び幅方向を長辺方向とするサンプルを、長さ50mm×幅10mmの矩形に切り出し、試長が約40mmとなるように両端から5mmの位置に印を付け、印間の間隔をニコン社製万能投影機試(V−16A)を用いて測定し、試長(l
0)とする。次に、試験片を紙に挟み込み荷重ゼロの状態で125℃に保温されたオーブン内で、15分間加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(l
1)を測定して下記式にて求め、5本の平均値を熱収縮率とした。
【0123】
熱収縮率={(l
0−l
1)/l
0}×100(%)
(11)125℃でのフィルム絶縁破壊電圧1(V/μm)(第1の形態)
125℃に保温されたオーブン内で、フィルムを1分間加熱後にその雰囲気中でJIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて、絶縁破壊電圧試験を30回行い、得られた値をフィルムの厚み(上記(1))で除し、(V/μm)に換算し、計30点の測定値(算出値)のうち最大値から大きい順に5点と最小値から小さい順に5点を除いた20点の平均値を125℃でのフィルム絶縁破壊電圧とした。
【0124】
(12)125℃でのフィルム絶縁破壊電圧2(V/μm)(第2の形態)
125℃に保温されたオーブン内で、フィルムを1分間加熱後にその雰囲気中でJIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて測定した。ただし、下部電極については、JIS C2330(2001)7.4.11.2のB法記載の金属板の上に、同一寸法の株式会社十川ゴム製「導電ゴムE−100<65>」を載せたものを電極として使用した。絶縁破壊電圧試験を30回行い、得られた値をフィルムの厚み(上記(1))で除し、(V/μm)に換算し、計30点の測定値(算出値)のうち最大値から大きい順に5点と最小値から小さい順に5点を除いた20点の平均値を125℃でのフィルム絶縁破壊電圧とした。
【0125】
(13)フィルムの全ヘイズ(第2の形態)
ポリプロピレンフィルムを、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH−5000)を用いて、JIS−K7136(2000)に準じて23℃でのヘイズ値(%)を3回測定し、平均値を用いた。
【0126】
(14)メソペンタッド分率
ポリプロピレンフィルムを60℃のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレン中の不純物・添加物を除去した後、130℃で2時間以上減圧乾燥したものをサンプルとする。該サンプルを溶媒に溶解し、
13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(単位:%)。
測定条件
・装置:Bruker製DRX−500
・測定核:
13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
・測定濃度:10質量%
・溶媒:ベンゼン:重オルトジクロロベンゼン=1:3混合溶液(体積比)
・測定温度:130℃
・スピン回転数:12Hz
・NMR試料管:5mm管
・パルス幅:45°(4.5μs)
・パルス繰り返し時間:10秒
・データポイント:64K
・積算回数:10000回
・測定モード:complete decoupling
解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、更にソフトの自動フィッテイングを行い、ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計をメソペンタッド分率(mmmm)とする。
(1)mrrm
(2)(3)rrrm(2つのピークとして分割)
(4)rrrr
(5)mrmr
(6)mrmm+rmrr
(7)mmrr
(8)rmmr
(9)mmmr
(10)mmmm。
【0127】
同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたメソペンタッド分率の平均値を当該サンプルのメソペンタッド分率とした。
【0128】
(15)ポリプロピレン樹脂の融点
示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレンチップを30℃から260℃まで40℃/分の条件で昇温する。次いで、260℃で5分間保持した後、40℃/分の条件で30℃まで降温する。さらに、30℃で5分間保持した後、30℃から260℃まで40℃/分の条件で昇温する。この昇温時に得られる吸熱カーブのピーク温度をポリプロピレン樹脂の融点とした。
【0129】
(16)結晶化温度(Tmc)(第2の形態)
示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレン樹脂を30℃から260℃まで40℃/分の条件で昇温した。次いで、260℃で5分間保持した後、40℃/分の条件で30℃まで降温した。この際に得られる放熱カーブのピーク温度を結晶化温度とした。
【0130】
(17)3次元中心面平均粗さSRaおよび10点平均粗さSRz(第1の形態)
小坂研究所製のsurf−corder ET−4000Aを用いて下記条件にて3次元表面粗さを測定した。サンプルセットは、視野測定のX方向がポリプロピレンフィルムの幅方向になるようにし、上面が測定面として試料台にセットした。下記条件にて場所を変えて10回測定し、それぞれの3次元中心面表面粗さの平均値を算出し、SRaとし、また、それぞれの10点平均粗さの平均値を算出し、SRzとした。なお測定はフィルムの表裏両面にて行い、SRaが小さかった面をポリプロピレンフィルムの3次元中心面平均粗さSRaおよび10点平均粗さSRzの評価面とした。
【0131】
装置:小坂研究所製“surf−corder ET−4000A”
解析ソフト:i−Face model TDA31
触針先端半径:0.5μm
測定視野 :X方向:1000μm ピッチ:5μm
Y方向:250μm ピッチ:10μm
針圧 :50μN
測定速度 :0.1mm/s
カットオフ値:低域0.2mm、高域-なし
レベリング :全域
フィルター :ガウシアンフィルタ(空間型)
倍率 :2万倍
(18)光沢度(第1の形態)
JIS K−7105(1981)に準じ、スガ試験機株式会社製 デジタル変角光沢計UGV−5Dを用いて入射角60°受光角60°の条件でキャスティングドラム接触面側の表面を測定した5点のデータの平均値を光沢度(%)とした。
【0132】
(19)静摩擦係数(μs)(第1の形態)
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS K 7125(1999)に準じて、25℃、65%RHにて測定した。なお、測定は長手方向同士で、かつ、異なる面同士を重ねて、すなわち、一方のフィルムの表面と他方のフィルムの裏面とが接するように重ねて行った。同じ測定を一つのサンプルにつき5回行い、得られた値の平均値を算出し、当該サンプルの静摩擦係数(μs)とした。
【0133】
(20)フィルム表面の窒素元素組成量(第1の形態)
コロナ放電処理またはプラズマ処理を施したフィルム表面(フィルム処理表面が不明な場合は、フィルム両面のうち濡れ張力が高い方のフィルム表面)について、以下の装置を用い、X線光電子分光法(XPS)にて測定した。超高真空中でフィルム表面に軟X線を照射し、フィルム表面から放出される光電子をアナライザーで検出した。フィルム表面中の束縛電子の結合エネルギー値から表面の炭素元素、酸素元素、窒素元素の各元素情報を得て、各元素ピーク強度面積比をデータ処理装置にて定量化し、酸素元素、炭素元素、窒素元素の全体量における窒素元素量組成量(atomic%)を求めた。
装置: PHI社製 QuanteraSXM
励起X線: Monochromatic Al Kα
1,2線(1486.6eV)
X線径: 200μm
光電子脱出角度(試料表面に対する検出器の傾き) : 45°
データ処理:ナロースキャンのスムージング 9-point smoothing
横軸補正C1sメインピークを284.6 eVとした。
【0134】
(21)濡れ張力
表面処理を施した側のフィルム表面について、JIS K 6768(1999)に準じて測定した(単位:mN/m)。
【0135】
(22)未延伸ポリプロピレンフィルムのメゾ相分率(広角X線回折)
キャスト工程後の未延伸ポリプロピレンフィルムを幅方向に10mm、長手方向に20mmに切り出した。その試料を用いて、室温中で、回折角(2θ)が5〜30度の範囲で測定を行った。詳細な測定条件を下記する。
・装置:nano viewer(株式会社リガク製)
・波長:0.15418nm
・X線入射方向:Through方向(フィルム表面に垂直に入射)
・測定時間:300秒
次に、得られた回折プロファイルをピーク分離ソフトウェアで処理してメゾ相、α晶、非晶のプロファイルの3成分に分離する。解析ソフトウェアとして、WaveMetrics,inc社製のIGOR Pro(Ver.6)ソフトウェアを用いた。解析を行うにあたり、以下の様な仮定を行った。
・ピーク形状関数:ローレンツ関数
・ピーク位置:非晶=16.2度、メゾ相=15.0度、21.0度
α晶=14.1度、16.9度、18.6度、21.6度、21.9度
・ピーク半値幅:非晶=8.0、メゾ相(15.0度)=3.5、メゾ相(21.0度)=2.7
非晶、メゾ相の半値幅は上記の値で固定するが、α晶は固定しない。
【0136】
得られたピーク分離結果に対して、メゾ相に由来する15度と21度にピークを有する回折プロファイルの面積(m
15とm
21)を算出し、α晶に由来する14.1度、16.9度、18.6度、21.6度および21.9度にピークを有する回折プロファイルの面積(α
14.1とα
16.9とα
18.6とα
21.6とα
21.9)を算出しこれを下記式のとおり算出することにより、メゾ相に由来するプロファイルの面積の割合を求め、これをメゾ相分率とした。
【0137】
(式)メゾ相分率(%)=100×(m
15+m
21)/(m
15+m
21+α
14.1+α
16.9+α
18.6+α
21.6+α
21.9)
(23)110℃での体積抵抗率(第1の形態)
JIS K−6911(2006)に準じ、
図1に示すように接続し、試験片を110℃で30分保持後、電圧100Vで1分間充電して体積抵抗R
v[Ω]を測定した。得られた体積抵抗から式(1)を用いて体積抵抗率ρ
v[Ω・cm]を算出した。ここで、dは主電極の直径[cm]、tはフィルム試料厚さ[cm]である。フィルム試料厚さはミツトヨ製レーザーホロゲージにより被測定試料内任意5ヶ所の厚さを測定し、その相加平均値を試料厚さとした。dおよびtは室温での測定値を用いて計算した。
測定装置:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(エーディーシー製)、
TEST FIXTURE TR43C(ADVANTEST製)
フィルム試料片寸法:40mm×40mm
電極の形状:主電極;φ10mm
環状電極;内径 φ13mm 外径 φ26mm
対向電極;φ28mm
電極の材質:主電極および対向電極ともに導電性ペースト
環状電極;金属電極(金メッキ品)
印加電圧 :100V/1分値
前処理 :C-90h/22±1℃/60±5%RH
試験温度 :室温110℃
【0139】
(24)蒸着コンデンサ特性の評価(110℃での耐電圧および信頼性)
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムのコロナ放電処理またはプラズマ処理を施したフィルム表面(フィルム処理表面が不明な場合は、フィルム両面のうち濡れ張力が高い方のフィルム表面)に、ULVAC製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が8Ω/sqで長手方向に垂直な方向にマージン部を設けた所謂T型マージンパターンを有する蒸着パターンを施し、幅50mmの蒸着リールを得た。
【0140】
次いで、このリールを用いて皆藤製作所製素子巻機(KAW−4NHB)にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、減圧下、120℃の温度で10時間の熱処理を施し、リード線を取り付けコンデンサ素子を仕上げた。
【0141】
こうして得られたコンデンサ素子10個を用いて、110℃高温下でコンデンサ素子に300VDCの電圧を印加し、該電圧で10分間経過後にステップ状に50VDC/1分で徐々に印加電圧を上昇させることを繰り返す所謂ステップアップ試験を行なった。
【0142】
<素子加工性>
下記基準で判断した。上記と同様にしてコンデンサ素子を作成し、目視により素子の形状を確認した。
【0143】
A:コンデンサ素子のフィルムのずれ、変形がなく、後の工程に全く支障がないレベル
B:コンデンサ素子のフィルムのずれ、変形は若干あるが後の工程で問題がないレベル
C:コンデンサ素子のフィルムのずれ、変形が大きく、後の工程に支障を来すレベル
A、Bは使用可能である。Cでは実用が困難である。
【0144】
<耐電圧>
この際の静電容量変化を測定しグラフ上にプロットして、該容量が初期値の70%になった電圧をフィルムの厚み(上記(1))で割り返して耐電圧評価とし、以下の通り評価した。
【0145】
S:420V以上
A:400V/μm以上420V/μm未満
B:380V/μm以上400V/μm未満
C:360V/μm以上380V/μm未満
D:360V/μm未満。
【0146】
S、A、Bは使用可能である。C、Dでは実用上の性能に劣る。
【0147】
<信頼性>
静電容量が初期値に対して10%以下に減少するまで電圧を上昇させた後に、コンデンサ素子を解体し破壊の状態を調べて、信頼性を以下の通り評価した。
【0148】
A:素子形状の変化は無く貫通状の破壊は観察されない。
【0149】
B:素子形状の変化は無くフィルム10層以内の貫通状破壊が観察される。
【0150】
C:素子形状に変化が認められる若しくは10層を超える貫通状破壊が観察される。
【0152】
Aは問題なく使用でき、Bでは条件次第で使用可能である。C、Dでは実用上の性能に劣る。
【実施例】
【0153】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。実施例1〜9、及び比較例1〜5は本発明の第1の形態に関する。
なお、実施例2は、参考例2とする。
【0154】
(実施例1)
メソペンタッド分率が0.983、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が1.9質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂にBasell社製分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(高溶融張力ポリプロピレンProfax PF-814)を1.0質量%ブレンドし温度260℃の押出機に供給し、樹脂温度260℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを94℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に145℃に予熱し、引き続き148℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.8倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、158℃の温度で幅方向に10.5倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら140℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま155℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.3μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表2に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての信頼性、耐電圧は実使用上問題のないレベルであった。
【0155】
(実施例2および3)
溶融押出シートを冷却するキャスティングドラムの温度、二軸延伸時の延伸倍率および横延伸温度および該二軸延伸後の熱処理条件を表1の条件とした以外は実施例1と同様にして、実施例2では厚み2.2μmのポリプロピレンフィルム、実施例3では厚み2.0μmのポリプロピレンフィルムを得た。実施例2のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表2に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての耐電圧が非常に優れ、信頼性は実使用上問題のないレベルであった。実施例3のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表2に示す通りで、コンデンサ素子加工性はやや劣るが実使用において問題ないレベルであり、またコンデンサとしての耐電圧が非常に優れ、信頼性は実使用上問題のないレベルであった。
【0156】
(実施例4)
A/B/A3層複合押出の表層部に該当するA層用のポリプロピレン樹脂として、メソペンタッド分率が0.98、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が1.9質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、「表面シランカップリング処理した平均粒子径0.1μmシリカ粒子:株式会社トクヤマ製SANSIL SS−01」を0.5質量部となるように240℃に設定した押出機で混練押出し、ストランドを水冷後チップ化し、ポリプロピレン樹脂原料(A1)とした。次いで、ポリプロピレン樹脂原料(A1)をA層用の単軸の溶融押出機に供給し、基層部に該当するB層用のポリプロピレン樹脂として、メソペンタッド分率が0.983、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂100質量部を、B層用の単軸の溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、フィードブロックを用いてA/B/Aの3層積層で積層厚み比が1/8/1(フィルム全厚みに対する表面層A層の割合は20%)となるよう押出量を調節し、その溶融積層ポリマーを、樹脂温度260℃でTダイより吐出させ、該溶融シートを20℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0157】
次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に125℃に予熱し、引き続き128℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に6.0倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、158℃の温度で幅方向に10.5倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら135℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま145℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.2μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表2に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての信頼性および耐電圧が非常に優れたレベルであった。
【0158】
(実施例5)
A/B/A3層複合押出の表層部に該当するA層用のポリプロピレン樹脂としてメソペンタッド分率が0.98、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が1.9質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂100質量部、三井化学製ポリメチルペンテン系樹脂“TPX”(登録商標) MX002(融点が224℃)を5質量部の配合比でブレンドし、260℃に設定した二軸押出機で混練押出し、ストランドを水冷後チップ化し、ポリプロピレン樹脂原料(A2)とした。これをA層用の単軸の溶融押出機に供給し、フィードブロックを用いてA/B/Aの3層積層で積層厚み比が1/8/1(フィルム全厚みに対する表面層A層の割合は20%)となるよう押出量を調節し、その溶融積層ポリマーを、樹脂温度260℃でTダイより吐出させ、該溶融シートを20℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に115℃に予熱し、引き続き118℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に6.0倍に延伸した。その後、表1に示した条件で製膜した以外は実施例4と同様にして、フィルム厚み2.3μmのフィルムを得た。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表2に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての信頼性および耐電圧が非常に優れたレベルであった。
【0159】
(実施例6)
実施例5と同様にして表1に示した条件で二軸延伸、熱処理および弛緩処理を施し、フィルム表面のコロナ放電処理を行わずにフィルム厚み2.3μmのフィルムロールとして巻き取った。次いで該フィルムロールのフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に大気圧プラズマ表面処理装置にてロールtoロール方式で、窒素ガス雰囲気中の大気圧プラズマ処理を100W・分/m
2の処理強度で施した。プラズマ処理での雰囲気中の酸素濃度は40ppmであった。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表2に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての信頼性が非常に優れ、さらに耐電圧が極めて優れたレベルであった。
【0160】
(実施例7)
実施例1と同様にして表1に示した条件で二軸延伸、熱処理および弛緩処理を施し、フィルム表面のコロナ放電処理を行わずにフィルム厚み2.3μmのフィルムロールとして巻き取った。次いで該フィルムロールのフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に大気圧プラズマ表面処理装置にてロールtoロール方式で、窒素ガス雰囲気中の大気圧プラズマ処理を50W・分/m
2の処理強度で施した。プラズマ処理での雰囲気中の酸素濃度は40ppmであった。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表2に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての耐電圧が非常に優れ、信頼性は実使用上問題のないレベルであった。
【0161】
(実施例8)
実施例1と同様にして表3に示した条件で二軸延伸、熱処理および弛緩処理を施し、フィルム表面のコロナ放電処理を行わずにフィルム厚み2.3μmのフィルムロールとして巻き取った。次いで該フィルムロールのフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に大気圧プラズマ表面処理装置にてロールtoロール方式で、窒素ガス雰囲気中の大気圧プラズマ処理を110W・分/m
2の処理強度で施した。プラズマ処理での雰囲気中の酸素濃度は40ppmであった。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての信頼性および耐電圧が非常に優れたレベルであった。
【0162】
(実施例9)
メソペンタッド分率が0.983、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が1.9質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂を温度260℃の押出機に供給し、樹脂温度260℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを30℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に122℃に予熱し、引き続き125℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.9倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、161℃の温度で幅方向に11.0倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら130℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま140℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み5.8μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れ、またコンデンサとしての耐電圧が非常に優れ、信頼性は実使用上問題のないレベルであった。
【0163】
(比較例1)
溶融押出シートを冷却するキャスティングドラムの温度、二軸延伸時の延伸倍率および横延伸温度および該二軸延伸後の熱処理条件を表3の条件とした以外は実施例1と同様にして、厚み2.2μmのポリプロピレンフィルムを得た。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れるが、コンデンサとしての耐電圧が極めて低く、信頼性評価においては素子形状が変形するなど問題が生じるレベルのものであった。
【0164】
(比較例2)
メソペンタッド分率が0.941のプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂を用い、溶融押出シートを冷却するキャスティングドラムの温度、二軸延伸時の延伸倍率および横延伸温度を表3の条件に変更し、二軸延伸後の熱処理を施さないとした以外は実施例1と同様にして、厚み2.3μmのポリプロピレンフィルムを得た。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れるが、コンデンサとしての耐電圧が低く、信頼性評価においては素子破壊するなど問題が生じるレベルのものであった。
【0165】
(比較例3)
A/B/A3層複合押出の表層部に該当するA層用のポリプロピレン樹脂としてメソペンタッド分率が0.972、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が3.0g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が5質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂90質量部、三井化学製ポリメチルペンテン系樹脂“TPX”(登録商標) MX002(融点が224℃)を10質量部の配合比でブレンドし、260℃に設定した二軸押出機で混練押出し、ストランドを水冷後チップ化し、ポリプロピレン樹脂原料(A3)とした。これをA層用の単軸の溶融押出機に供給し、フィードブロックを用いてA/B/Aの3層積層で積層厚み比が1/8/1(フィルム全厚みに対する表面層A層の割合は20%)となるよう押出量を調節し、その溶融積層ポリマーを、樹脂温度260℃でTダイより吐出させ、該溶融シートを88℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に145℃に予熱し、引き続き148℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.6倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、163℃の温度で幅方向に10.5倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら170℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま155℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.2μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れるが、コンデンサとしての耐電圧が低く、信頼性評価においては素子形状が変形するなど問題が生じるレベルのものであった。
【0166】
(比較例4)
二軸延伸時の延伸倍率および横延伸温度を表3の条件とし、二軸延伸後の熱処理および弛緩処理を施さないとした以外は実施例3と同様にして、厚み2.0μmのポリプロピレンフィルムを得た。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、コンデンサ素子加工時にフィルムすれや変形が生じ、コンデンサとしての耐電圧が低く、信頼性評価において素子が破壊するなど問題が生じるレベルのものであった。
【0167】
(比較例5)
メソペンタッド分率が0.972、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が3.0g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が5質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂を用い、溶融押出シートを冷却するキャスティングドラムの温度、二軸延伸時の延伸倍率および横延伸温度および該二軸延伸後の熱処理条件を表3の条件とした以外は実施例9と同様にして、厚み6.0μmのポリプロピレンフィルムを得た。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、コンデンサ素子加工性に優れるが、コンデンサとしての耐電圧が低く、信頼性評価においては素子形状が変形するなど問題が生じるレベルのものであった。
【0168】
以下の実施例10〜13,及び比較例6〜8は本発明の第2の形態に関する。
【0169】
(実施例10)
表5に示すとおり、チーグラー・ナッタ触媒にて重合されたメソペンタッド分率が0.983、融点が167℃、Tmcが111℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂チップを温度240℃に設定した押出機に供給しT型スリットダイ(リップ温度:260℃)よりシート状に溶融押出し、該溶融シートを20℃に保持されたキャスティングドラム上で、静電印加により密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に120℃に予熱し、引き続き120℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.8倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、160℃の温度で幅方向に8.6倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら130℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま140℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み5.4μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表6に示す通りで、コンデンサとしての信頼性は非常に優れたレベルであった。
【0170】
(実施例11)
表5に示すとおり、実施例10で用いたメソペンタッド分率が0.983、融点が167℃、Tmcが111℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂チップを温度240℃に設定した押出機に供給しT型スリットダイ(リップ温度:260℃)よりシート状に溶融押出し、該溶融シートを25℃に保持されたキャスティングドラム上で、静電印加により密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に118℃に予熱し、引き続き118℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.0倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、160℃の温度で幅方向に8.5倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に7%の弛緩を与えながら130℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま140℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み5.2μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表2に示す通りで、コンデンサとしての信頼性は非常に優れたレベルであった。
【0171】
(実施例12)
表5に示すとおり、チーグラー・ナッタ触媒にて重合されたメソペンタッド分率が0.976、融点が164℃で、Tmcが113℃で、メルトフローレイト(MFR)が3.0g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂チップを温度240℃に設定した押出機に供給しT型スリットダイ(リップ温度:262℃)よりシート状に溶融押出し、該溶融シートを20℃に保持されたキャスティングドラム上で、静電印加により密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に120℃に予熱し、引き続き120℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.6倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、160℃の温度で幅方向に8.7倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら133℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま145℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み5.3μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表6に示す通りで、コンデンサとしての信頼性は実使用上問題のないレベルであった。
【0172】
(実施例13)
表5に示すとおり、実施例10で用いたメソペンタッド分率が0.983、融点が167℃、Tmcが111℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂チップを温度240℃に設定した押出機に供給しT型スリットダイ(リップ温度258℃)よりシート状に溶融押出し、該溶融シートを18℃に保持されたキャスティングドラム上で、静電印加により密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に122℃に予熱し、引き続き122℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.6倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、160℃の温度で幅方向に8.8倍延伸し、次いで、弛緩処理として幅方向に11%の弛緩を与えながら128℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま138℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.8μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表6に示す通りで、コンデンサとしての信頼性は非常に優れたレベルであった。
【0173】
(比較例6)
表5に示すとおり、ポリプロピレン樹脂として、メソペンタッド分率が0.974、メルトフローレイト(MFR)が5.0g/10分であるプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製:ノバテック(登録商標)PP 「SA4L」)(以下、「PP−1」という)を用いた。60mm押出機を用いて、250℃でTダイよりシート状に押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃で長さ方向(MD方向)に4.5倍に延伸し、ついで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、160℃で横方向(TD方向)に8.2倍に延伸し、ついで3.7%の緩和率で緩和させながら168℃で熱処理した。その後、フィルムの片面にコロナ処理を行い、フィルム厚み4.0μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表6に示す通りで、コンデンサとしての信頼性評価においては素子破壊するなど問題が生じるレベルのものであった。
【0174】
(比較例7)
表5に示すとおり、実施例10で用いたメソペンタッド分率が0.983、融点が167℃、Tmcが111℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂チップを温度240℃に設定した押出機に供給しT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを90℃に保持されたキャスティングドラム上で、静電印加により密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に142℃に予熱し、引き続き142℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.1倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、160℃の温度で幅方向に8.8倍延伸し、次いで、弛緩処理として幅方向に6%の弛緩を与えながら130℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま140℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み6.0μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表6に示す通りで、コンデンサとしての信頼性評価においては素子形状が変形するなど問題が生じるレベルのものであった。
【0175】
(比較例8)
表5に示すとおり、チーグラー・ナッタ触媒にて重合されたメソペンタッド分率が0.960、融点が161℃で、Tmcが108℃で、メルトフローレイト(MFR)が3.0g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂チップを温度240℃に設定した押出機に供給しT型スリットダイ(リップ温度:261℃)よりシート状に溶融押出し、該溶融シートを20℃に保持されたキャスティングドラム上で、静電印加により密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて徐々に120℃に予熱し、引き続き120℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.2倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、160℃の温度で幅方向に7.8倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら130℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま140℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み6.0μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本比較例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表6に示す通りで、コンデンサとしての信頼性評価においては素子形状が変形するなど問題が生じるレベルのものであった。
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】
【0178】
【表3】
【0179】
【表4】
【0180】
【表5】
【0181】
【表6】