特許第6874382号(P6874382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6874382身体測定用器具および身体サイズの測定方法、着衣選択システム、オーダーメイド着衣設計システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874382
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】身体測定用器具および身体サイズの測定方法、着衣選択システム、オーダーメイド着衣設計システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20210510BHJP
   A41H 1/02 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   A61B5/107 100
   A41H1/02 Z
   A61B5/107ZDM
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-5723(P2017-5723)
(22)【出願日】2017年1月17日
(65)【公開番号】特開2018-114059(P2018-114059A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】石丸 園子
(72)【発明者】
【氏名】権 義哲
【審査官】 福田 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0342266(US,A1)
【文献】 特開2013−252350(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/114298(WO,A1)
【文献】 特開2004−238775(JP,A)
【文献】 特開2012−188799(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/188908(WO,A1)
【文献】 米国特許第6415199(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06−5/22
A41H 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性素材からなる衣服と、当該衣服の変形に追随するように取り付けられた伸縮変形に応じた変形情報を提示する素子を有する身体測定用器具であって、
前記伸縮変形に応じた変形情報を提示する素子が、可逆的に伸縮性を有するコンデンサであり、変形情報が静電容量の変化であり、前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが、伸縮性導体層、伸縮性誘電体層、伸縮性導体層の順で積層された層構成を有するコンデンサであって、前記伸縮性導体層の比抵抗が1×10-3Ωcm以下であり、前記伸縮性誘電体層が、引張降伏伸度が70%以上の伸縮性絶縁高分子により構成されていることを特長とする身体測定用器具。
【請求項2】
前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサの面方向への20%伸長時の応力が15N/cm以下であることを特徴とする請求項1記載の身体測定用器具。
【請求項3】
少なくとも人体上半身から臀部までを被覆する一体型の衣服であり、少なくとも胸部周囲、腹部周囲、臀部周囲のいずれかの個所に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする請求項1または2に記載の身体測定用器具。
【請求項4】
少なくとも人体上半身から下腹部までを被覆する一体型の衣服であり、少なくとも左右いずれかの肩から背中、およびまたは肩から腹部を通過して股までの区間に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする請求項1または2に記載の身体測定用器具。
【請求項5】
少なくとも人体上半身から下腹部までを被覆する一体型の衣服であり、頸部から背中、およびまたは頸部から腹部を通過して股までの区間に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする請求項1または2に記載の身体測定用器具。
【請求項6】
少なくとも人体上半身を被覆する一体型の衣服であり、少なくとも肩関節から肘関節までの間、肘関節から手首関節までの間のいずれかの区間に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする請求項1または2に記載の身体測定用器具。
【請求項7】
少なくとも人体下半身を被覆する一体型の衣服であり、少なくとも腹部周囲、臀部周囲、左右いずれか、または両方の太もも周囲、ふくらはぎ周囲のいずれかの個所に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする請求項1または2に記載の身体測定用器具。
【請求項8】
少なくとも人体下半身を被覆する一体型の衣服であり、左右いずれか、または両方の足の側面において、股関節から膝関節までの間、膝関節から足首関節の間のいずれかの個所に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする請求項1または2に記載の身体測定用器具。
【請求項9】
少なくとも人体下半身を被覆する一体型の衣服であり、少なくとも左右いずれかの踵および、または足の裏の土踏まずから、両足の内側側部を通過して股までの区間に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする請求項1または2に記載の身体測定用器具。
【請求項10】
人体の全身を被覆する一体型の衣服である請求項1からのいずれかに記載の身体測定器具。
【請求項11】
被測定対象となる人体サイズに対して、前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサの変形が伸長方向となるように設定されたサイズの請求項1から10のいずれかに記載の身体測定用器具を着用し、可逆的に伸縮性を有するコンデンサの静電容量の、非着用時の静電容量と着用時の静電容量の差から被測定対象となる人物の、可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられている個所に相当する身体寸法を求める事を特長とする身体サイズの測定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の身体サイズ測定方法により得られた被験者の身体サイズ測定結果を無線ないし有線通信にてコンピュータを含むシステムに転送する機構、得られた身体サイズ情報から被験者に適する衣服を既存品から選択する演算機構、得られた選択結果を被験者にフィードバックする機構を備えることを特長とする着衣選択システム。
【請求項13】
請求項11に記載の身体サイズ測定方法により得られた被験者の身体サイズ測定結果を無線ないし有線通信にてコンピュータを含むシステムに転送する機構、得られた身体サイズ情報から被験者に適する衣服を設計する演算機構、得られた設計結果を被験者にフィードバックする機構を備えることを特長とするオーダーメイド着衣設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身長計、巻き尺などを用いる事無く、衣服のように着用するだけで身体各部のサイズを測定するための衣服型の身体測定用器具に関し、さらに詳しくは、自らの変形を静電容量変化として検出可能な可逆的に伸縮性を有するコンデンサを用いることにより身体サイズを測定することができる衣服型の身体測定用器具、ならびにそれらを用いた身体サイズの測定方法に関する。さらにはそこから得られた身体サイズデータを用いて、既存着衣から適正な着衣を選択するシステム、得られた身体サイズデータを用いてオーダーメイド着衣を設計するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、オーダーメイドにより衣服を作成する場合には、身長計、巻き尺などを用いて専門家が身体の要所の寸法を測定し、得られたデータに基づいて衣服を設計製作する。かかる専門家による採寸を、自動化するための試みは古くから行われている。
【0003】
特許文献1には、被験者の周囲を360度周回するテレビカメラを用いて、被験者の三次元情報を測定し、そこから、各要所のサイズを導く方法が提案されている。このような方法では、大がかりな機械装置が必要になり、設置場所が限定されるであろうことが容易に理解される。
【0004】
特許文献2には、体表面に密着して装着される装身具と、当該装着具に取着され曲げ変形に応じて物理的な特性が変化するセンサと、センサの特性変化からセンサ取り付け部位の形状を算出する演算装置を備えた身体測定器具が提案されている。当該提案において、例示されているセンサは光ファイバである。光ファイバは曲がることにより伝送損失が変化するため、そこからセンサの変形度合いを求め、身体形状の変化を求める事ができる。しかしながら、この方法および測定器具では間接の曲げ変形等は検出可能であるが被験者の身体サイズそのものを測定することはできない。
【0005】
特許文献3には、身体測定を行うための方法および該方法を実施するための装置、ならびに身体測定および衣服を生産するためのシステムが開示されている。本技術では、衣服の要所に調整可能な測定テープを取り付け、前記測定テープの調整位置に応じて電気信号を生成する電気的に検出可能な手段が含まれ、衣服を被着した状態で測定テープの長さが身体にフィットするように調整され、その結果を電気的に読みとることにより身体サイズを測定する。ここでテープから得られる情報としては、抵抗値、静電容量、インダクタンスが例示されているが、実例として詳しく説明されている技術は目盛りのあるテープを用い、目盛りを光学的に読み取る手段のみである。測定テープの身体へのフィットは自動的には行われてはいない。すなわち本技術は光学読み取り可能なリニアエンコーダを、あらかじめ衣服の要所に仕込んでおき、被着状態で衣服の要所のサイズが身体にフィットするように調整し、結果を電気的に読み取る仕組みと理解することができ、必ずしも自動的に身体サイズの計測が行われるわけではない。
【0006】
特許文献4には、カスタム衣服を提供するための装置および方法が開示されている。該技術は、主要な場所にその位置を示すベンチマークと主要な位置間を結ぶラインがひかれたストレッチボディスーツを用い、該ボディスーツを着用し、ベンチマークの位置情報を光学的に読み取ることにより身体形状を3次元的に測定し、コンピュータを用いて衣服設計に必要な情報に加工するという内容である。かかる技術は映画製作等に用いられているモーションキャプチャ技術の応用と解釈でき、測定用衣服の他に、動画撮影カメラのような光学的測定手段を必要とする大がかりなシステムであることが理解できる。
【0007】
特許文献5には、3次元測定のためのエラスチック・センサー・メッシュ・システムとその応用技術が開示されている。本技術はエラスチックなメッシュと、その交点に置かれた位置情報を発信できるセンサからなるセンサアレイを身体に纏い、モーションキャプチャ的に身体の3次元形状情報を得るものであり、衣服の設計に必要な身体の特徴量を求めるものではない。
【0008】
特許文献6には、身体計測方法およ衣服の製造システムに関する技術が提案されている。本提案では、被験者に衣服設計に必要な身体の特徴量を測定するための測定要素を有する測定スーツを着用させ、各測定要素から得られる身体の特長量を電気的に収集してデータベースに格納するシステムが開示されている。身体形状の測定要素の出力としては、圧力、歪み、導電率、抵抗、電流および電力のうちのいずれか1つ以上の形とすることが開示されている。ただし、特許文献内で具体的に例示されている技術は、測定要素として伸縮性材料を用い、該伸縮性材料としては、ナノワイヤアレイ、銀、酸化銅、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン等の導電性材料を成分とする伸縮性材料が例示されており、伸縮量により変化する電気的物性値から、伸縮量を求める技術である。この場合、利用できる電気的物性値は、伸縮性材料の電気抵抗値となるが、伸縮性材料として例示されているような導電性フィラーを用いた伸縮性導電材料は、繰り返し伸縮により、フィラー間の電気的接触状態が変化しやすく、安定した初期抵抗値を得ることが難しく毎回初期値の校正を行う必要が生じるなどの煩雑さがある。
【0009】
特許文献7には、自己測定衣服として、弾性布で得られた衣服と、該弾性布と一体化され、被着した際に弾性布と一緒に伸びる導電性繊維を有し、導電性繊維の電気的特性から伸び量を求めて身体のサイズを求める測定装置が開示されている。ここに導電性繊維の電気特性としてはインダクタンスが例示されている。すなわち、本技術は弾性布に導電性繊維をジグザグパターンに縫い付けることによって生成するインダクタンスの、ジグザグパターンの変形によるインダクタンス変化から弾性布の変形量を求めるものである。インダクタンスの変化は、導電性繊維の導電性の変化(劣化)の影響を受けにくいが、環境の電磁場の影響を受けやすく、多くの電気機器が存在する環境ではノイズが入りやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許4308873号公報
【特許文献2】特開2009−153855号公報
【特許文献3】米国特許4635367号公報
【特許文献4】米国特許6415199号公報
【特許文献5】米国特許6957164号公報
【特許文献6】国際公開特許WO2013188908 A1公報
【特許文献7】国際公開特許WO2015181661 A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、着用するだけで身体サイズの計測が可能な衣服型の測定器であり、使用環境にかかわらず音程してデータ取得が可能であり、なおかつ耐久性に優れ、繰り返し洗濯を行っても測定精度に影響が無く、さらに被験者に過大な負荷を与えること無く使用が可能な身体測定用器具を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、センサとして応用可能な可逆的に伸縮性を有するコンデンサを見出し、かかる可逆的に伸縮性を有するコンデンサを衣服と組み合わせる事により、着用するだけで身体サイズの計測が可能な衣服型の測定器であり、使用環境にかかわらず音程してデータ取得が可能であり、なおかつ耐久性に優れ、繰り返し洗濯を行っても測定精度に影響が無く、さらに被験者に過大な負荷を与えること無く使用が可能な身体測定用器具の発明に至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下の構成である。
[1] 伸縮性素材からなる衣服と、当該衣服の変形に追随するように取り付けられた伸縮変形に応じた変形情報を提示する素子を有する身体測定用器具であって、
前記伸縮変形に応じた変形情報を提示する素子が、可逆的に伸縮性を有するコンデンサであり、変形情報が静電容量の変化であることを特長とする身体測定用器具。
[2] 前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが、伸縮性導体層、伸縮性誘電体層、伸縮性導体層の順で積層された層構成を有するコンデンサであって、前記伸縮性導体層の比抵抗が1×10-3Ωcm以下であり、前記伸縮性誘電体層が、引張降伏伸度が70%以上の伸縮性絶縁高分子により構成されていることを特徴とする[1]に記載の身体測定用器具。
[3] 前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサの面方向への20%伸長時の応力が15N/cm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の身体測定用器具。
[4] 少なくとも人体上半身から臀部までを被覆する一体型の衣服であり、少なくとも胸部周囲、腹部周囲、臀部周囲のいずれかの個所に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする[1]から[3]のいずれかに記載の身体測定用器具。
[5] 少なくとも人体上半身から下腹部までを被覆する一体型の衣服であり、少なくとも左右いずれかの肩から背中、およびまたは肩から腹部を通過して股までの区間に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする[1]から[3]のいずれかに記載の身体測定用器具。
[6] 少なくとも人体上半身から下腹部までを被覆する一体型の衣服であり、頸部から背中、およびまたは頸部から腹部を通過して股までの区間に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする[1]から[3]のいずれかに記載の身体測定用器具。
「7」 少なくとも人体上半身を被覆する一体型の衣服であり、少なくとも肩関節から肘関節までの間、肘関節から手首関節までの間のいずれかの区間に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする[1]から[3]のいずれかに記載の身体測定用器具。
[8] 少なくとも人体下半身を被覆する一体型の衣服であり、少なくとも腹部周囲、臀部周囲、左右いずれか、または両方の太もも周囲、ふくらはぎ周囲のいずれかの個所に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする[1]から[3]のいずれかに記載の身体測定用器具。
[9] 少なくとも人体下半身を被覆する一体型の衣服であり、左右いずれか、または両方の足の側面において、股関節から膝関節までの間、膝関節から足首関節の間のいずれかの個所に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする[1]から[3]のいずれかに記載の身体測定用器具。
[10] 少なくとも人体下半身を被覆する一体型の衣服であり、少なくとも左右いずれかの踵および、または足の裏の土踏まずから、両足の内側側部を通過して股までの区間に前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられていることを特長とする[1]から[3]のいずれかに記載の身体測定用器具。
[11] 人体の全身を被覆する一体型の衣服である[1]から「10」のいずれかに記載の身体測定器具。
[12] 被測定対象となる人体サイズに対して、前記可逆的に伸縮性を有するコンデンサの変形が伸長方向となるように設定されたサイズの[1]から[11]のいずれかに記載の身体測定用器具を着用し、可逆的に伸縮性を有するコンデンサの静電容量の、非着用時の静電容量と着用時の静電容量の差から被測定対象となる人物の、可逆的に伸縮性を有するコンデンサが取り付けられている個所に相当する身体寸法を求める事を特長とする身体サイズの測定方法。
[13] [12]に記載の身体サイズ測定方法により得られた被験者の身体サイズ測定結果を無線ないし有線通信にてコンピュータを含むシステムに転送する機構、得られた身体サイズ情報から被験者に適する衣服を既存品から選択する演算機構、得られた選択結果を被験者にフィードバックする機構を備えることを特長とする着衣選択システム。
[14] [12]に記載の身体サイズ測定方法により得られた被験者の身体サイズ測定結果を無線ないし有線通信にてコンピュータを含むシステムに転送する機構、得られた身体サイズ情報から被験者に適する衣服を設計する演算機構、得られた設計結果を被験者にフィードバックする機構を備えることを特長とするオーダーメイド着衣設計システム。
【0014】
本発明の身体測定用器具は可逆的に伸縮性を有するコンデンサ(伸縮性コンデンサと略記する)の面方向への伸縮変形に応じて変化する可逆的に伸縮性を有するコンデンサの静電容量変化を用いてセンシングを行う。
本発明において、可逆的に伸縮性を有するコンデンサの面方向への伸縮変形に応じて変化する可逆的に伸縮性を有するコンデンサの静電容量変化は、主として伸縮性誘電体層の面方向への伸縮に伴う、伸縮性誘電体層の厚さ方向への変化による静電容量の変化である。かかる特性を発現させるためには伸縮性誘電体層に用いる材料のポアソン比が高い方が好ましい。本発明の伸縮性誘電体層のポアソン比は0.28以上である事が好ましく、0.38以上である事がなお好ましく、0.48以上である事がさらに好ましい。ポアソン比を高めるには伸縮性誘電体層に配合される無機成分が少ない方が良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサは、平面方向に高い伸長率を有するため、従来知られていた静電容量型のセンサのように、コンデンサの厚さ方向の変形のみならず、平面方向への変形歪み量の測定に好適に使用することができる。 また、本発明の可逆的に伸縮性を有するコンデンサは、伸張回復率の良い誘電層を採用することにより、大きく変形させた後の永久ひずみが小さく、かつ繰り返し変形(伸縮)させても残留ひずみが発生しにくい構成となる。その結果、変形量と出力値(静電容量)との間のヒステリシスが小さく、応答性、対応性に優れ、繰り返し使用した際の信頼性(長期信頼性)に優れるものとなる。
【0016】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサは低抵抗の伸縮性導体を電極に用いるために素子の耐久性が高く、また、素子が大型になった場合でも、均一な感度のセンサを構成できる。
本発明の可逆的に伸縮性を有するコンデンサは、厚さを薄くすることが出来るため、結果として極軽量のセンサを構成することができる。さらに本発明の可逆的に伸縮性を有するコンデンサは伸張時の応力を低く抑えることが可能であるため、高感度で、なおかつ、測定対象に与える影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの基本構成を示す概略図である。
図2図2は、本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサを作製する場合に用いるホットメルト層付きの伸縮性シートの構成図である。
図3図3は、基材に伸縮性シートを重ね貼りすることにより可逆的に伸縮性を有するコンデンサを構成した一例を示す概略図である。
図4図4は、本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの構成を示す概略図である。
図5図5は、本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサを印刷法を用いて作製する場合の工程概略図である。
図6図6は、本発明の伸張回復率を説明する概略図である。
図7図7は、本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサを印刷転写法を用いて作製する場合の工程概略図である。
図8図8は、S−Sカーブならびに引張降伏伸度を説明する概略図である。
図9図9は本発明の身体測定器具において、ウェアとして上半身から股間までを被覆するワンピースを用い、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを胸部周囲、腹部周囲、臀部周囲に配置した例を示す概略図である。
図10図10は、本発明の身体測定器具において、ウェアとして上半身から股間までを被覆するワンピースを用い、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを、頸部から股下まで、背面を通じて配置した例を示す概略図である。
図11図11は、本発明の身体測定器具において、ウェアとして下半身を被覆するトレンカを用い、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを、臀部周囲、大腿部周囲、脛部周囲に配置した例を示す概略図である。
図12図12は、本発明の身体測定器具において、ウェアとして下半身を被覆するトレンカを用い、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを、腰部から土踏まずまで、股関節から膝関節まで、膝関節から踝関節までに配置した例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0018】
1.伸縮性導体層(表面電極)
2.伸縮性誘電体層
3.伸縮性導体層(背面電極)
4.伸縮性導体
5.伸縮性誘電体
6.ホットメルト接着層
7.基材
11.伸縮性基材
12.伸縮性下地層
13.第1の伸縮性導体層
14.伸縮性誘電体層
15.第2の伸縮性導体層
16.伸縮性絶縁カバー層
17.裏面電極
18.スルーホール
19.仮基材
31.可逆的に伸縮性を有するコンデンサ
32.端子
33.配線
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1.に示すように本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサは、基本構成として1.伸縮性導体層(表面電極)、2.伸縮性誘電体層、3.伸縮性導体層(背面電極)の3層を有する。実際の構成においては、各層を接着するための接着層が各基本構成層に挿入される場合がある。さらに最外層になる伸縮性導体層の外側に絶縁性の被覆層が設けられる場合がある。本発明の目的から自明であるように、接着層、被覆層についても十分な伸縮特性が要求される。
【0020】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの伸縮性導体層の非伸張時の比抵抗は3×10-3Ωcm以下で有ることが必須であり、1×10-3Ωcm以下であることが好ましく、3×10-4Ωcm以下であることが好ましく、1×10-4Ωcm以下であることが、なお好ましい。比抵抗がこの範囲を上回ると、導電層内の抵抗分布が顕著になり、素子の時定数が大きくなり応答性に問題が生じ、高周波特性や、パルス応答性が低下する場合がある。比抵抗の下限は原理的に用いられる導電材料に依存する。
【0021】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの伸縮性導体層は100%伸張時の比抵抗が非伸張時の100倍以内であることが好ましく、さらに50倍以内である事が好ましく、さらに30倍以内である事が好ましく、15倍以内である事がさらに好ましい。100%伸張時の比抵抗がこの範囲を上回ると、導電層内の抵抗分布が顕著になり、素子の時定数が大きくなり応答性に問題が生じ、高周波特性や、パルス応答性が低下する場合がある。比抵抗の下限は原理的に用いられる導電材料に依存する。なお、伸縮性導体を変形させた場合には、変形に伴う幾何学的な変化、すなわち、電流方向についての長さ、断面積の変化による抵抗値の変化は除外する。本発明の初期の比抵抗、並びに伸張時の比抵抗の範囲であれば、幾何学的変形による抵抗値の変化を加えても、十分に導電層内の抵抗分布を実効的に小さく保つことができる。
【0022】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの伸縮性導体層は、少なくとも金属粒子、引張弾性率が1MPa以上1000MPa以下の柔軟性樹脂、から構成される。また柔軟性樹脂の配合量は、導電粒子と柔軟性樹脂の合計に対して7〜35質量%である。
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの伸縮性導体層は、金属粒子と柔軟性樹脂を混練混合し、フィルム状ないしシート状に成型することにより得ることができる。本発明の伸縮性導体層は、好ましくは金属粒子と柔軟性樹脂に溶剤などを加えて伸縮性導体形成用ペースト化、ないしスラリー化した状態を経て、塗布、乾燥によりシート状ないしフィルム状に加工することが出来る。また、ペースト化した後、印刷することにより所定の形状を与えることもできる。
【0023】
本発明の導電性粒子は、比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質からなる、粒子径が100μm以下の粒子である。比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質としては、金属、合金、カーボン、ドーピングされた半導体、導電性高分子などを例示することができる。本発明で好ましく用いられる導電性粒子は銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫などの金属、黄銅、青銅、白銅、半田などの合金粒子、銀被覆銅のようなハイブリッド粒、さらには金属メッキした高分子粒子、金属メッキしたガラス粒子、金属被覆したセラミック粒子などを用いることができる。
【0024】
本発明ではフレーク状銀粒子ないし不定形凝集銀粉を主体に用いることが好ましい。なお、ここに主体に用いるとは導電性粒子の90質量%以上用いることである。不定形凝集粉とは球状もしくは不定形状の1次粒子が3次元的に凝集したものである。不定形凝集粉およびフレーク状粉は球状粉などよりも比表面積が大きいことから低充填量でも導電性ネートワークを形成できるので好ましい。不定形凝集粉は単分散の形態ではないので、粒子同士が物理的に接触していることから導電性ネートワークを形成しやすいので、さらに好ましい。
【0025】
フレーク状粉の粒子径は特に限定されないが、動的光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が0.5〜20μmであるものが好ましい。より好ましくは3〜12μmである。平均粒子径が15μmを超えると微細配線の形成が困難になり、スクリーン印刷などの場合は目詰まりが生じる。平均粒子径が0.5μm未満の場合、低充填では粒子間で接触できなくなり、導電性が悪化する場合がある。
【0026】
不定形凝集粉の粒子径は特に限定されないが、光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が1〜20μmであるものが好ましい。より好ましくは3〜12μmである。平均粒子径が20μmを超えると分散性が低下してペースト化が困難になる。平均粒子径が1μm未満の場合、凝集粉としての効果が失われ、低充填では良導電性を維持できなくなる場合がある。
【0027】
本発明における非導電性粒子とは、有機ないし無機の絶縁性物質からなる粒子である。本発明の無機粒子は印刷特性の改善、伸縮特性の改善、塗膜表面性の改善を目的に添加され、シリカ、酸化チタン、タルク、アルミナ、硫酸バリウム等の無機粒子、樹脂材料からなるマイクロゲル等を利用できる。
【0028】
本発明における柔軟性樹脂とは、弾性率が、1〜1000MPaの、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴムなどが挙げられる。膜の伸縮性を発現させるためには、ウレタン樹脂ないしゴムが好ましい。ゴムとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマーなどが挙げられる。この中でも、ニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。本発明で好ましい弾性率の範囲は2〜480MPaであり、さらに好ましく3〜240MPa、なお好ましくは4〜120MPaの範囲である。
【0029】
ニトリル基を含有するゴムは、ニトリル基を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されないが、ニトリルゴムと水素化ニトリルゴムが好ましい。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が多いと金属との親和性が増加するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。従って、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量は18〜50質量%が好ましく、40〜50質量%が特に好ましい。
【0030】
本発明におけるウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリオール、またはポリエステルポリオールをポリオール成分とし、HDI系ポリイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタンゴムを例示することができる。 本発明のウレタンゴムは、高い伸長率を有し、かつ、引張永久ひずみ及び残留ひずみが小さいため繰り返し変形させた際の信頼性に優れる伸縮性誘電体層となる。
【0031】
本発明におけるポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレントリオール、これらを合成するための環状エーテル等のモノマー材料を共重合させて得た共重合体等のポリアルキレングリコール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変性体、さらにはこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。その理由は、機械的特性が優れるためである。
【0032】
上記ポリエーテルポリオールとしては、市販品を使用することもできる。市販品の具体例としては、例えば、PTG−2000SN(保土谷化学工業社製)、ポリプロピレングリコール、プレミノールS3003(旭硝子社製)、パンデックスGCB−41(DIC社製)等が挙げられる。
【0033】
本発明におけるポリエステルポリオールとしては芳香族計ポリエステルポリオール、芳香族/脂肪族共重合ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂環族ポリエステルポリオールを用いることができる。本発明におけるポリエステルポリオールとしては、飽和型、不飽和型、いずれを用いてもかまわない。
【0034】
本発明におけるHDI系ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又はその変性体であり、分子内に複数のイソシアネート基を有する化合物である。
本発明におけるウレタンゴムは、前述のポリオール成分及び上記イソシアネート成分以外に、更に必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、触媒、加硫促進剤等を含有する混合物を反応させて得られたものでも良い。本発明では硫黄不含型の架橋剤の使用が好ましい。また、本発明の柔軟性を有する高分子材料には可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤、誘電フィラー等を含有してもよい。
【0035】
本発明における柔軟性樹脂の配合量は、導電粒子と、好ましくは加えられる非導電性粒子と柔軟性樹脂の合計に対して7〜35質量%であり、好ましくは9〜28質量%、さらに好ましくは12〜20質量%である。
【0036】
また、本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの作製に使用される伸縮性導体形成用ペーストにはエポキシ樹脂を配合できる。本発明で好ましいエポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂ないしはフェノールノボラック型エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂を配合する場合、エポキシ樹脂の硬化剤を配合できる。硬化剤としては公知のアミン化合物、ポリアミン化合物などを用いればよい。硬化剤はエポキシ樹脂に対して5〜50質量%配合することが好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。またエポキシ樹脂と硬化剤の配合量は、柔軟性樹脂を含めた全樹脂成分に対して3〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは8〜24質量%である。
【0037】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの作製に使用される伸縮性導体形成用ペーストは、溶剤を含有する。本発明における溶剤は、水または有機溶剤である。溶剤の含有量は、ペーストに求められる粘性によって適宜調査されるべきであるため、特に限定はされないが、概ね導電性粒子と柔軟性樹脂の合計質量を100した場合に30〜80質量比が好ましい
本発明に使用される有機溶剤は、沸点が100℃以上、300℃未満であることが好ましく、より好ましくは沸点が130℃以上、280℃未満である。有機溶剤の沸点が低すぎると、ペースト製造工程やペースト使用に際に溶剤が揮発し、導電性ペーストを構成する成分比が変化しやすい懸念がある。一方で、有機溶剤の沸点が高すぎると、乾燥硬化塗膜中の残溶剤量が多くなり、塗膜の信頼性低下を引き起こす懸念がある。
【0038】
本発明における有機溶剤としては、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、エクソン化学製のソルベッソ100,150,200、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ターピオネール、ブチルグリコールアセテート、ジアミルベンゼン、トリアミルベンゼン、n−ドデカノール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどが挙げられる。また、石油系炭化水素類としては、新日本石油社製のAFソルベント4号(沸点:240〜265℃)、5号(沸点:275〜306℃)、6号(沸点:296〜317℃)、7号(沸点:259〜282℃)、および0号ソルベントH(沸点:245〜265℃)なども挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が含まれてもよい。このような有機溶剤は、伸縮性導体形成用ペーストが印刷などに適した粘度となるように適宜含有される。
【0039】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの作製に使用される伸縮性導体形成用ペーストは、材料である導電性粒子、硫酸バリウム粒子、伸縮性樹脂、溶剤をディゾルバー、三本ロールミル、自公転型混合機、アトライター、ボールミル、サンドミルなどの分散機により混合分散することにより得ることができる。
【0040】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの作製に使用される伸縮性導体形成用ペーストには、発明の内容を損なわない範囲で、印刷適性の付与、色調の調整、レベリング、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの公知の有機、無機の添加剤を配合することができる。
【0041】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの 伸縮性誘電体層は、伸縮性を有する樹脂材料すなわち高分子材料からなる。
本発明に用いられる伸縮性誘電体層は引張降伏伸度が70%以上の伸縮性絶縁高分子により構成されていることが好ましい。引張降伏伸度は85%以上であることが好ましく、120%以上である事がなお好ましく、150%以上である事がなお好ましい。
【0042】
本発明における引張降伏伸度とは、一般的な引張試験にて得られる、縦軸に加重(ないし強度)、横軸に歪み(ないし伸度あるいは伸び)をとったときの曲線(S−Sカーブ)において、加重の増加なしに伸びの増加が認められる最初の点、すなわち降伏点における伸度である。一般的に降伏点は弾性変形から塑性変形に推移をする境界を概略的に示す地点と捉えられている。
図9は、引張試験にて得られる典型的なS−Sカーブを示す概略図で有り、図中において
SR:引張破断強度
SB:引張強度
SS:引張降伏強度
ER:引張破断伸度
EB:引張伸度
ES:引張降伏伸度
である。
本発明における伸縮性絶縁高分子層の引張降伏伸度は80%以上が好ましく95%以上が更に好ましく、120%以上がなおさらに好ましい。
引張降伏伸度の上限は450%、好ましくは360%である。引張降伏強度が必要以上に高いと、誘電体層としての機械的強度が損なわれる場合がある。
【0043】
伸縮性絶縁高分子層に用いられる柔軟性を有する高分子材料としては、弾性率が、1〜1000MPaの、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴムなどが挙げられる。膜の伸縮性を発現させるためには、ウレタン樹脂ないしゴムが好ましい。ゴムとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマーなどが挙げられる。この中でも、ニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。本発明で好ましい弾性率の範囲は1.2〜420MPaであり、さらに好ましく1.4〜210MPa、なお好ましくは1.5〜150MPaの範囲である。
【0044】
柔軟性を有する高分子材料として好ましく用いられるウレタン樹脂としては、前述の伸縮性導体層に用いる事ができるウレタン樹脂と同様の樹脂を用いることができ、好ましくはウレタンゴムを使用できる。
【0045】
本発明の誘電体層の平均厚さは、静電容量Cを大きくして検出感度の向上を図る観点、及び、測定対象物への追従性の向上を図る観点から、0.3〜1000μmであることが好ましく、感度の点からは0.3〜20μmの範囲が好ましく、さらに0.3〜8μmが好ましく、さらに0.5〜6μmの範囲が好ましい。
【0046】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの伸縮性誘電体層の、無負荷時の比誘電率は2.2以上であり、2.8以上が好ましく、3.4以上がさらに好ましく、3.8以上がなお好ましい。比誘電率の上限は500程度で有り、好ましくは150以下、さらに好ましくは80以下である。本発明の目的からして、伸縮性誘電体層の比誘電率は高い方が好ましいが、一般に伸縮性を有する高分子材料は、柔軟鎖成分にアルキル基を有する事が多く、比較的低い比誘電率を有している。本発明では分子鎖に極性基を導入することにより比誘電率を高めることが好ましい、ニトリル基、ケトン基、エステル基、ハロゲン置換基、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン基などは、高分子の比誘電率を高めるために有効な官能基である。
【0047】
高い比誘電率を有するフィラー、好ましくはチタン酸塩などの無機フィラーを添加することにより誘電体層の比誘電率を高めることが可能である。しかしながら、本発明では、当該伸縮性誘電体層における、比誘電率が5以上の無機フィラーの含有量は10%質量以下であることが好ましい。無機フィラーの含有率は3%以下が好ましく1%以下がなお好ましく0.3%以下がなお好ましい。無機フィラーの含有量が多いと、伸縮性誘電体層が伸張、ないし圧縮された際に、伸縮性高分子部分への応力集中度合いが高くなり、フィラーと樹脂界面に剥離が生じてボイドが形成される等、耐久性に問題が生じる場合がある。
また、伸縮性誘電体層に含まれる無機フィラーが多いと、伸縮性誘電体層のポアソン比が低くなり、伸張時の静電容量変化が小さくなり、センサーとして応用した場合の感度が低下する。
【0048】
本発明では以上のように説明してきた伸縮性導体層と伸縮性誘電体層を積層して、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを得る。
本発明の可逆的に伸縮性を有するコンデンサは、厚さ方向への圧縮、伸張、およおび面方向への圧縮、伸張、いずれの場合にも静電容量の変化を生じるため、あらゆる方向への変形可能センサとして利用可能であるが、本発明では特に面方向への伸張変形による静電容量変化を利用することが好ましい。
【0049】
本発明では伸縮性導体層、伸縮性誘電体層を積層する際にホットメルト接着材を用いても良い。本発明に於けるホットメルト系接着材とは、軟化温度が30℃〜150℃程度の高分子材料を使用する事ができ、好ましくは、誘電体層と同程度の伸縮性を有する柔軟性を備える高分子材料を使用することができる。このようなホットメルト接着剤としては、エチレン系共重合体、スチレン系ブロック共重合体およびオレフィン系(共)重合体など、さらにそれらをベースポリマーとして粘着性を付与するために結晶性極性基含有化合物等を含有する高分子材料、アモルファスポリα−オレフィン、粘着付与樹脂、ポリプロピレン系ワックス等の配合物、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合ゴムあるいはスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、さらにこれらに粘着付与樹脂成分、およびまたはプロセスオイルなどの液状可塑剤を添加した高分子材料、変性ポリオレフィンおよびその配合物、スチレン系ブロック共重合体およびその配合物、酸変性ポリプロピレン、酸変性スチレン系ブロック共重合体、それらの配合物、スチレン系ブロック共重合体、エチレン系重合体等の配合物、ポリエステルウレタン共重合体およびその配合物などを用いることができる。
【0050】
本発明では軟化温度が40℃〜120℃のポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂などをシート状に加工したホットメルトシートを好ましく用いることができる。
【0051】
本発明において、かかる可逆的に伸縮性を有するコンデンサを実現する手段として、二枚のシートを重ね貼りする方法を例示できる。すなわち、まず図2に示すように、伸縮性導体層、伸縮性誘電体層、接着材層が積層された積層シートを調整する。伸縮性導体層と伸縮性誘電体層は、それぞれを溶融押出成型して積層するか、ないしはペースト化した材料をコーティングして重ねることができる。伸縮性導体層のシートと、伸縮性誘電体層のシートを別々に準備し、接着材層にて貼り合わせることもできる。この場合、接着材層として絶縁性の接着材を餅田場合には接着材層は誘電体層の一部となる。また導電性を有する接着材層を用いた場合には接着材層が導電層の一部となる。接着材層は、伸縮性導体層、伸縮性誘電体層と同程度の伸縮性、柔軟性を有することが好ましい。
接着材層としては絶縁性のホットメルト型の高分子材料を用いることが好ましい。本発明では、離型シート上にまず伸縮性導電性を形成し、次いで伸縮性誘電体層を形成し、さらにホットメルト接着材シートを重ね、離型シートで挟んで、加熱加圧することにより、かかる積層シートを得ることができる。
【0052】
続いて、図3に示すように、高い伸度を有する伸縮性の布帛に、図2の積層シートを、ホットメルト層を用いてラミネートし、さらにその上に、同じ積層シートを電極として用いる部分が、露出するようにずらす、ないし所定のパターンにくりぬいて、重ねて貼り合わせることにより、導体層に挟まれたホットメルト接着材層と、伸縮性誘電体層が誘電体として作用する可逆的に伸縮性を有するコンデンサを得ることができる。最表面の導体層の上にさらに伸縮性の絶縁カバー層を設ける事もできる。絶縁カバー層としては、誘電体層に用いた高分子材料と同様の絶縁性樹脂等を用いることができる。かかる絶縁性樹脂シートをホットメルト接着層を介してラミネートすることもできる。
【0053】
図4.は本発明の可逆的に伸縮性を有するコンデンサの別の態様を例示した概略図である。可逆的に伸縮性を有するコンデンサの電極はスルーホールを介して、基材の裏面の端子に接続されている。スルーホールは一般的なプリント配線板にて用いられるメッキスルーホール、ないしは導電ペースト等により接続されたスルーホールを用いることができる。また金属リベットなどにより表裏を電気的に接続してをカシメ等により固定する古典的な手法を適用することができる。本発明の可逆的に伸縮性を有するコンデンサを衣服に適用する場合には、金属リベットと同様に金属製のスナップホックなどをスルーホール代わりに用いても良い。
【0054】
本発明に用いられる可逆的に伸縮性を有するコンデンサの別の態様として印刷法を用いた可逆的に伸縮性を有するコンデンサを例示することができる。すなわち、図5に示されるA〜Fの順に、順次各層を印刷積層してゆくことにより、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを得ることができる。図5では基材に順次、直接印刷する工程を例示したが、離型フィルムなどに、順序を逆にして印刷し、最後に布帛に転写する方法を用いることもできる。
【0055】
本発明における伸張回復率とは、図6に示す如く可逆的に伸縮性を有するコンデンサを懸垂し、荷重を加えて伸張させ、荷重を除去して収縮させる作用を加えた際に、初期長さをL0、20%ないし所定%伸張させた際の長さをL1、伸張荷重を除去した際の長さをL2とした場合に、
[数1] 伸張回復率=((L1-L2)/(L1-L0))×100 [%]
[数2] 残留歪み率=((L2-L0)/L0)×100 [%]
L0 初期長さ
L3 伸び=L1−L0
L4 回復長さ=L1−L2
L5 残留歪み=L2−L0
と、定義する。類似の測定法がJIS L 1096 織物および編物の生地試験法に定めてられているが、一定荷重負荷による伸張後の回復率では無くでは、一定長さまで伸張させた場合の回復率である点が異なる。実使用において伸縮性導体層に加わる負荷は、荷重とは無関係に、所定の長さまで繰り返し伸張される場合が多いため、一定荷重負荷法による伸張回復率では実用性能を表現することができない。本発明の可逆的に伸縮性を有するコンデンサの伸張回復率は、コンデンサ素子として機能する部分の評価であって、電極部分は省かれる。断らない限り伸張回復率は25℃±3℃の環境下にて評価される。
【0056】
本発明において、可逆的に伸縮性を有するコンデンサの面方向への伸縮変形に応じて変化する可逆的に伸縮性を有するコンデンサの静電容量変化は、主として伸縮性誘電体層の面方向への伸縮に伴う、伸縮性誘電体層の厚さ方向への変化による静電容量の変化である。かかる特性を発言させるためには伸縮性誘電体層に用いる材料のポアソン比が高い方が好ましい。本発明の伸縮性誘電体層のポアソン比は0.28以上である事が好ましく、0.38以上である事がなお好ましく、0.48以上である事がさらに好ましい。ポアソン比を高めるには伸縮性誘電体層に配合される無機成分が少ない方が良い。
【0057】
本発明では、以上、説明した可逆的に伸縮性を有するコンデンサの伸縮性誘電体層の面方向を、伸縮性素材からなる衣服の、被験者が当該衣服を着用した際の当該衣服の変形に追随するように取り付け、着用による変形前後のコンデンサの静電容量から変形量を求め、そこから身体サイズを得ようとするものである。
伸縮性を有するコンデンサの伸縮性誘電体層の面方向を、伸縮性素材からなる衣服の変形に追随するように取り付ける方法としては、縫い付け、あるいは接着すれば良い。接着剤を用いる場合には伸縮性のある接着剤ないし粘着剤を使用すべきである事は自明である。本発明では柔軟性のあるホットメルト素材などを利用して伸縮性素材に取り付けることが好ましい。
【0058】
なお、ここに伸縮性素地としては布帛であり、布帛としては織物、編み物、不織布を例示することができ、さらにこれらに樹脂コート、樹脂含浸したコート布なども基材として用いることができる。また、ネオプレン(登録商標)に代表される合成ゴムシート等も基材として用いることができる。本発明で用いられる布帛は繰り返し10%以上の伸縮が可能なストレッチャビリティを有する事が好ましい。また本発明の基材は50%以上の破断伸度を有する事が好ましい。本発明の基材は布元反でもよく、また、リボン、テープ状でも良く、組紐、網組でもよく、元反からカットされた枚葉の布でも良い。
布帛が織物(ニット)の場合、例えば平織、綾織、朱子織、等を例示できる。布帛が編み物の場合、例えば平編み、およびその変形、鹿の子編、アムンゼン編、レース編、アイレット編、添え糸網、パイル編、リブ網、リップル編、亀甲編、ブリスター編、ミラノ・リブ編、ダブルピケ編、シングル・ピケ編み、斜文編、ヘリボーン編、ポンチローマ編、バスケット編、トリコット編、ハーフ・トリコット編、サテントリコット編、ダブルトリコット編、クインズコード編、ストライプ・サッカー編、ラッセル編、チュールメッシュ編、およびこれらの変形・組み合わせを例示できる。布帛はエラストマー繊維などからなる不織布であっても良い。
またこれら織物、編み物を校正する繊維素材としては、綿、羊毛、麻などの天然繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリベンザゾール、ポリイミド、ポリ芳香族アミド、ポリベンゾオキサゾール、高分子量ポリエチレンなどの化学合成繊維、それらの混紡品などを用いる事ができる。
【0059】
本発明で用いる事ができる伸縮性素材からなる衣服としては、シャツ、ブラウス、トレーナーなどの上半身を独立に被覆する衣服、ズボン、パンツ、タイツ、レギンス、トレンカのように下半身を独立に被覆する衣服、帽子、手袋、腕カバー、靴下、足袋、ブラジャー、パンティーショーツのように身体の各部を個別に被覆する衣服、ワンピース型の水着、レオタードのように上半身から股間までを被覆する衣服、全身タイツのように上半身と下半身を一体で被覆する衣服を用いる事ができる。
【0060】
本発明のより具体的な例としては、図9図10図11図12のような形態を例示することができる。図9は本発明の身体測定器具において、ウェアとして上半身から股間までを被覆するワンピースを用い、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを胸部周囲、腹部周囲、臀部周囲に配置した例である。図10は、本発明の身体測定器具において、ウェアとして上半身から股間までを被覆するワンピースを用い、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを、頸部から股下まで、背面を通じて配置した例である。図11は、本発明の身体測定器具において、ウェアとして下半身を被覆するトレンカを用い、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを、臀部周囲、大腿部周囲、脛部周囲に配置した例である。図12は、本発明の身体測定器具において、ウェアとして下半身を被覆するトレンカを用い、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを、腰部から土踏まずまで、股関節から膝関節まで、膝関節から踝関節までに配置した例である。
なお、ここにトレンカとは、レギンスの一種の、下半身から脚を覆う衣服であり、トレンカレギンスとも言、一般的に単なるレギンスは踝から先を覆う部分がないものを示すが、トレンカは土踏まずの部分に引っ掛ける部分を持つことを特長とする。
【0061】
本発明において、可逆的に伸縮性を有するコンデンサは、測定したい身体の各部分の長さ方向に対し、3〜100%の長さとなるように設定することが好ましい。特に50%以上、好ましくは70%以上の長さに渡って設定することにより、身体サイズの測定を行う際に、実質上身体の被測定部の全範囲に渡ってセンシング部を設けることが可能となる。
【0062】
本発明の身体測定用器具を20%伸張した際の応力は20N以下である事が好ましい。さらに本発明では、身体測定用器具の20%伸張した際の応力が12N以下である事が好ましく、さらに8N以下が好ましく、5N以下がなお好ましく、3N以下が、なおさらに好ましい。応力がこれ以上であると、身体に着用した際に違和感が大きくなる。
この応力は、衣服を校正する伸縮性素材と、可逆的に伸縮性を有するコンデンサと生じる応力の合計である。本発明における、身体測定用器具を伸張した際の応力の下限は0.5N、好ましくは0.8Nである。応力がこれより小さいと、身体測定用器具の身体へのフィッティングが甘くなり、姿勢によっては測定が不安定になったり、コンデンサの位置がズレるなどの問題が生じやすくなる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
<ニトリル量>
得られた樹脂材料をNMR分析して得られた組成比から、モノマーの質量比による質量%に換算した。
【0065】
<ムーニー粘度>
島津製作所製 SMV−300RT「ムーニービスコメータ」を用いて測定した。
【0066】
<弾性率>
被測定試料を厚さ20μmから200μmの範囲の任意の厚さにてシート状に成形し、次いでISO 527−2−1Aにて規定されるダンベル型に打ち抜き、試験片とした。
ISO 527−1に規定された方法で引っ張り試験を行って、樹脂材料の応力−歪み線図を求め、常法により弾性率を算出した。
【0067】
<引張降伏伸度>
被測定試料を厚さ20μmから200μmの範囲の任意の厚さにてシート状に成形し、次いでISO 527−2−1Aにて規定されるダンベル型に打ち抜き、試験片とした。ついで、引っ張り試験器を用いてS−Sカーブを求め、図9のように降伏点を求め、その際の伸度を引張降伏伸度とした。
<ポアソン比>
ISO527−1:2012準拠の方法にて、伸縮性誘電体のポアソン比を求めた。
【0068】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度は常法に従い示差走査熱量分析(DSC)により求めた。
【0069】
<分子量>
バインダー樹脂材料の試料をTHF(テトラヒドロフラン)中に、溶液中の樹脂の濃度が0.4質量%となるよう添加して室温で1時間撹拌後、24時間放置した。次いで得られた樹脂溶液をTHFで4倍に希釈した後、0.45μmのフィルターを通過させ、そのろ液につき、GPCを用いて数平均分子量、重量平均分子量、分散比(Mw/Mn)を求めた。
【0070】
<伸張回復率>
被測定試料を厚さ20μmから200μmの範囲の任意の厚さにてシート状に成形し、次いでISO 527−2−1Aにて規定されるダンベル型に打ち抜き、試験片とした。
ついで、ダンベル型試験片中の幅10mm、長さ80mmの部分の中央からそれぞれ33mmの個所(有効長66mm)に印を付け、印間の初期距離L0を正確に測長した。次いで印を付けた個所の外側をクランプで挟み、66mmである印間を伸張長さ79.2mm(+13.2mm、伸張度20%に相当)まで伸ばした後にクランプから離し、所定の温度(特に断りの無い場合は25℃)にて水平方向に保持したフッ素樹脂シートの上に置き、印間の伸張後距離L2を測定し、以下の式に従って伸張回復率を求めた。
初期長さ L0=66.0mm
伸張長さ L1=79.2mm
伸張後の長さ L2=実測
伸び L3=L1−L0=13.2mm
回復長さ L4=L1−L2
伸張回復率=((L1-L2)/(L1-L0))×100 [%]
【0071】
<布帛の伸張回復率>
布帛材料をISO 527−2−1Aにて規定されるダンベル型に打ち抜き、試験片とした。なお、布帛の伸長方向をダンベルの長さ方向とした。
次いで、樹脂の伸張回復率の測定と同様にダンベル型試験片中の幅10mm、長さ80mmの部分の中央からそれぞれ33mmの個所(有効長66mm)に印を付け、伸張長さを99mm(+33mm、伸張度50%に相当)まで伸ばした以外は、樹脂の伸張回復率と同様に操作して伸張回復率を求めた。
【0072】
<布帛の耐熱性>
JIS L1013:2010 化学繊維フィラメント糸試験方法 8.19.2 にて求められる熱収縮温度をもって、布帛の耐熱性とした。
【0073】
<平均粒子径>
フィラーの平均粒子径は、堀場製作所製の光散乱式粒径分布測定装置LB-500を用いて測定した。
【0074】
<比抵抗率>
導体シートの大きさが十分にある場合には、ISO 527−2−1Aにて規定されるダンベル型に打ち抜き、ダンベル型試験片の中央部にある幅10mm、長さ80mmの部分を試験片として用いた。導体シートの成型が可能な場合には厚さ200±20μmのシート状に加熱圧縮成形し、次いでISO 527−2−1Aにて規定されるダンベル型に打ち抜き、同様に試験片とした。導体シートの大きさが小さく、規定されたダンベル形状を得られない場合には、採取可能な幅および長さの矩形を切り取り、試験片とし、測定を行った幅、厚さ、長さを用いて換算した。
試験片:幅10mm、長さ80mmの部分の抵抗値[Ω]を、アジレントテクノロージ社製ミリオームメーターを用いて測定し、試験片の縦横比(1/8)を乗じてシート抵抗値「Ω□」を求めた。
また、抵抗値[Ω]に断面積(幅1[cm]mm×厚さ[cm])を乗じ、長さ(8cm)にて除して、比抵抗[Ωcm]を求めた。
【0075】
<洗濯耐久性>
JIS L 0217繊維製品の取扱いに関する表示記号及び表示方法に規定されている105法により30サイクルの洗濯試験を行った。
洗液:中性洗剤0.5%溶液
水流:弱
浴比:1:60
洗濯ネット 有り
洗濯サイクル
洗い 30℃5分
すすぎ 30℃2分 を2回
本サイクルを1サイクルとして、30回くりかえし。
試験後のセンサにて再度動作確認を行った。
【0076】
[実施例1]
ニトリル量40質量%、ムーニー粘度46のニトリルブタジエンゴム12質量部、
イソホロン30質量部、
平均粒子径6μmの微細フレーク状銀粉[福田金属箔粉工業社製 商品名Ag−XF301]58.0質量部、
を均一に混合し、三本ロールミルにて分散することにより伸縮性導電層形成用ペーストAG1を得た。
得られた伸縮性導電層形成用ペーストAG1を離型PETフィルム状にスクリーン印刷法を用いて、塗布乾燥し、厚さ22μmの伸縮性導体シートを得た。
【0077】
得られた伸縮性導体シートを10mm幅、200mm長にカットし、長さ方向の抵抗値と厚さから比抵抗を求めた。結果、比抵抗は1.0×10-4Ωcmであった。
ついで、伸縮性導体シートの長さ方向の両端を引っ張り試験器のクリップに挟み、有効長を160mmとして320mmまで引っ張り、両端の抵抗値と、試験片の最狭部の幅、および、厚さを用いて100%伸張時の比抵抗を算出した。結果、100%伸張時の比抵抗は48×10-4Ωcmであった。その他の特性を含め、評価結果を表1.に示す
【0078】
ニトリル量40質量%、ムーニー粘度46のNBR(ニトリルブタジエンゴム)30質量部を、イソホロン40質量部、に溶解させ、伸縮性誘電体層形成用ペーストCC1を得た。得られた伸縮性誘電体層形成用ペーストを、離型PETフィルム状にスクリーン印刷法を用いて、塗布乾燥し、厚さ35μmの伸縮性導体シートを得た。得られた伸縮性誘電体層の評価結果を表1.に示す
【0079】
離型PETフィルム上、先に得られた伸縮性導体形成用ペースト、伸縮性誘電体形成用ペースト、さらに伸縮性導体形成用ペーストの順で、スクリーン印刷法を用いて印刷、乾燥硬化を繰り返し、幅10mm、長さ200mmの積層構造を有する可逆的に伸縮性を有するコンデンサを得た。得られた可逆的に伸縮性を有するコンデンサを離型PETフィルムから剥がし、伸縮回復率と20%伸張応力を評価した。結果を表1に示す。
さらに可逆的に伸縮性を有するコンデンサの両極に導電性接着材にて銀被覆糸を接続し、配線を引き出して日置電機社製LCRハイテスターと結線し、各可逆的に伸縮性を有するコンデンサの伸張度と1MHzにおける静電容量との関係を測定した。結果両者は良い対応を示した。伸張度0%〜50%の間で、1サイクル/秒の繰り返し周期にて伸張度と静電容量の関係を測定した。結果、ヒステリシスは観察されず、良い対応を示した。
【0080】
得られた可逆的に伸縮性を有するコンデンサを所定の幅と長さに整形し、図9に示す如く、伸縮性素材を用いたレオタード(M寸)の胸部、腹部、臀部を取り巻くように、それぞれホットメルト接着シートを用いて貼り付けた。胸部についてはコンデンサの両端に設けたコネクタ用端子が胸部中央の左右に位置するように配置されている。腹部については、同様にコンデンサの端部が腹部全部に来るように配置されており、胸部中央に設置されたコネクタ用端子まで導電性繊維にて配線された。臀部についても同様に胸部中央に設けられたコネクタ端子まで配線し、身体測定器具M1を得た。本実施例では試験的にコネクタ端子と日置電機社製LCRハイテスターを結線し、非着用時の静電容量、および、該身体測定器具M1を、常時はL寸の衣服を着用している被験者に被着させた場合の各部の静電容量を測定した。可逆的に伸縮性を有するコンデンサの非着用時の寸法、非着用時と着用時の静電容量差と、あらかじめ求めておいた伸張度と静電容量の関係グラフから求めた被験者の胸部、腹部、臀部の寸法は、巻き尺で測定した値と、±3%の範囲にて一致した。
得られた身体測定用器具を300mm×300mmの洗濯ネットに収め、洗濯耐久性試験後に再び、呼吸センシングの可否を確認した結果、問題無く動作することが確認された。
【0081】
[実施例2]
伸縮性誘電体層としてウレタン樹脂を用いた以外は実施例1と同様に操作し、幅10mm、長さ600mmの可逆的に伸縮性を有するコンデンサを製作した。評価結果を表1に示す。
得られた可逆的に伸縮性を有するコンデンサを、実施例1と同様に、レオタードに接着し、図9に示される身体測定用器具を得た。得られた身体測定用器具を同様に評価した結果、被験者の胸部、腹部、臀部の寸法は、巻き尺で測定した値と、±2%の範囲にて一致した。
得られた身体測定用器具を300mm×300mmの洗濯ネットに収め、洗濯耐久性試験後に再び、呼吸センシングの可否を確認した結果、問題無く動作することが確認された。
【0082】
[実施例3]
伸縮性誘電体層として天然ゴムを用い、離型PETフィルムではなく、ホットメルト層付きウレタンシートを基材に用いて、基材上に印刷法により可逆的に伸縮性を有するコンデンサを形成した。本実施例では、伸縮性導体層を延長して配線として使用できるように配置した。得られた可逆的に伸縮性を有するコンデンサを用いて、実施例1と同様に、レオタードに接着し、図9に示される身体測定用器具を得た。得られた身体測定用器具を同様に評価した結果、被験者の胸部、腹部、臀部の寸法は、巻き尺で測定した値と、±2%の範囲にて一致した。
得られた身体測定用器具を300mm×300mmの洗濯ネットに収め、洗濯耐久性試験後に再び、呼吸センシングの可否を確認した結果、問題無く動作することが確認された。
【0083】
[実施例4]
バインダ樹脂にSBR(スチレン−ブタジエンゴム)を用いて、実施例と同様に操作して伸縮性導体形成用ペーストを得た。次いで得られたペーストを離型PETフィルムにコーティングして乾燥後に剥離し、厚さ56μmの伸縮性導電シートを得た。実施例1と同じ伸縮性誘電体層形成用ペーストを離型PETフィルムにコーティングして乾燥後に剥離し、厚さ78μmの伸縮性誘電体シートを得た。各々のシートの評価結果を表1.に示す。
得られた伸縮性導体シートに伸縮性誘電体シートを重ね、さらに伸縮性導体シートを重ねて3層構成とし、離型PETフィルムで挟み、ホットプレスにて三層をラミネートし、可逆的に伸縮性を有するコンデンサを得た。
得られた可逆的に伸縮性を有するコンデンサを用いて、実施例1と同様に、レオタードに接着し、図9に示される身体測定用器具を得た。得られた身体測定用器具を同様に評価した結果、被験者の胸部、腹部、臀部の寸法は、巻き尺で測定した値と、±2%の範囲にて一致した。
得られた身体測定用器具を300mm×300mmの洗濯ネットに収め、洗濯耐久性試験後に再び、呼吸センシングの可否を確認した結果、問題無く動作することが確認された。
[実施例5〜7]
実施例1にて得られた可逆的に伸縮性を有するコンデンサを用いて、図10図11図12に示す構成の身体測定用器具を試作し、同様に評価した。
結果、図10の構成の身体測定用器具により、被験者の胴長を±3%にて測定できた。図11の構成の身体測定用器具を用い、臀部の周長は±3%、大腿部と脛部の周長については±1%にて測定できた。また図12の構成の身体測定器具を用いて、足長は±3%、大腿部長、脛部長、ともに±2%にて測定が可能であった。またいずれも器具も、洗濯30回後も特段の問題無く使用可能であった。
[比較例]
実施例4において伸縮性誘電体層として架橋天然ゴムシートを用いた以外は同様に操作して可逆的に伸縮性を有するコンデンサを得た。
次いで得られた可逆的に伸縮性を有するコンデンサを実施例1と同様にM寸のレオタードに貼り付け、L寸の被験者に着用させることにより身体サイズの測定を行おうとしたが、被験者はかなりの窮屈さを訴えており、また測定値も実寸より−5〜7%小さくなった。これは束縛力が強すぎて、かなり身体を締め付けた状態で身体寸法を測定したためと解釈された。
【0084】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上、示してきたように、本発明の可逆的に伸縮性を有するコンデンサを用いた身体測定用器具は、自然な着用感で、着用するだけで身体要所のサイズを測定可能である。測定値は電気的に得られるため、測定を自動化することは容易である。静電容量の測定要素を小型化して、身体測定器具の一部として取り付け、さらに無線通信などで遠隔送信することは、今日では容易な技術範疇である。このようにして得られた身体データは、コンピュータを含むシステムに取り込まれ、たとえば、あらかじめリストアップしてある既製品から適切なサイズの衣服を洗濯したり、あるいは、得られたデータからオーダーメイド的に衣服の設計を行う事が可能となる。かかるシステムを用いれば、自宅で自動的に身体サイズを測定し、ネット回線などを通じてコマーシャルサイトに送信することが可能となり、衣服の流通機構において顧客が衣服の販売店などに足を運ぶプロセスを省略することが可能となる。さらに本発明は人体のみならず、動物、機械装置にも適用が可能である。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12