(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗浄ノズル駆動時の騒音低減について、発明者が鋭意検討したところ、上記モータおよび伝達機構の駆動に伴って発生する振動が、ノズルユニットを支持するケーシングに伝達するのを抑えることが効果的であるとの知見を得るに至った。
本発明の態様は、洗浄ノズル駆動時の騒音を低減できる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、便器の上に設けられるケーシングと、前記ケーシングに支持されたノズルユニットと、を備え、前記ノズルユニットは、前記ケーシングに取り付けられた基台と、前記基台に取り付けられたモータと、人体の局部に向けて水を吐出する吐水口を有し、前記モータの駆動力により前記基台に対して前後方向に進退可能に設けられた洗浄ノズルと、を有し、前記基台は、前記ケーシングの一部に前記前後方向に重なるように接触し、前記前後方向に弾性変形可能な板ばね部を有する衛生洗浄装置である。
この衛生洗浄装置によれば、モータの駆動に伴う振動が板ばね部の弾性変形により吸収され、ケーシングへの振動伝達が抑制される。この結果、洗浄ノズルを駆動させるためのモータの駆動時において、便器の上でケーシングが振動することによる騒音を低減することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記モータの回転軸は、前記前後方向および上下方向に交差する左右方向に延び、前記モータの回転軸に、前記回転軸に垂直な面内で回転する歯車が連結されている衛生洗浄装置である。
この衛生洗浄装置によれば、前記前後方向に振動が発生しやすいノズルユニットの構成において、その前後方向の振動を板ばね部で吸収して、ケーシングに伝達するのを抑制することができる。
第3の発明は、便器の上に設けられるケーシングと、前記ケーシングに支持されたノズルユニットと、を備え、前記ノズルユニットは、第1の防振材を介して前記ケーシングにネジ止めされた基台と、前記基台に取り付けられたモータと、人体の局部に向けて水を吐出する吐水口を有し、前記モータの駆動力により前記基台に対して前後方向に進退可能に設けられた洗浄ノズルと、を有
し、前記ケーシングは、位置決めガイドを有し、前記基台は、第2の防振材を介して前記位置決めガイドに係合する係合部を有し、前記ケーシングは、移動規制リブを有し、前記ノズルユニットに上または下方の荷重が加わった際における前記第2の防振材の弾性領域内の変形時に、前記基台の一部が前記移動規制リブに当たり、前記ノズルユニットおよび前記第2の防振材の前記上または下方の移動が規制される衛生洗浄装置である。
この衛生洗浄装置によれば、モータの駆動に伴う振動が第1の防振材により吸収され、ケーシングへの振動伝達が抑制される。この結果、洗浄ノズルを駆動させるためのモータの駆動時において、便器の上でケーシングが振動することによる騒音を低減することができる。
この衛生洗浄装置によれば、ノズルユニット側からケーシングへの振動伝達をより抑制できる。
この衛生洗浄装置によれば、ノズルユニットに荷重が加わってもノズルユニットの正しい位置を保持できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の態様によれば、洗浄ノズル駆動時の騒音を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、実施形態の衛生洗浄装置1を備えたトイレ装置の斜視図である。
【0010】
トイレ装置は、洋式腰掛便器(以下、単に「便器」と称する)6と、その上に設けられた衛生洗浄装置1と、を備える。衛生洗浄装置1は、便座2と、便蓋3と、ケーシング4と、を有する。便座2と便蓋3とは、ケーシング4に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0011】
ケーシング4の内部には、後述するノズルユニット10が内蔵されている。ノズルユニット10は、その一部であるノズルヘッド110を、ボウル6aに向けて進出させたり、ボウル6aから後退させたりする。また、ノズルヘッド110の先端に設けられた吐水口111から、便座2に座った使用者の「おしり」などに吐水することで洗浄を行う。
【0012】
ケーシング4の内部には、ノズルユニット10の他に、例えば、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知センサや、便座2の前方にいる使用者を検知する人体検知センサ、便座2への使用者の着座を検知する着座検知センサなどが設けられる。また、ケーシング4の内部には、便座2を温める「便座ヒータ」や、便座2に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や、「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などが適宜設けられていてもよい。
【0013】
次に、ノズルユニット10について説明する。
【0014】
図2および
図3は、ノズルユニット10の斜視図である。
図4は、ノズル駆動機構の側面図である。
【0015】
ノズルユニット10は、基台101と、洗浄ノズル100と、洗浄ノズル100の駆動機構とを有する。
【0016】
以下の実施形態の説明では、洗浄ノズル100のボウル6aに向けた進出方向を「前方」とし、これと反対の方向を「後方」とする。また、前後方向に対して例えば垂直に交差する水平方向に沿う方向「左右方向」とし、前後方向および左右方向に対して垂直に交差する2方向を「上方」および「下方」とする。
【0017】
洗浄ノズル100は、ノズルヘッド110と、ノズルヘッド110の少なくとも一部を格納可能に構成されたシリンダ120とを有する。ノズルヘッド110にチューブ160が接続され、そのチューブ160を通じてノズルヘッド110に洗浄水が供給されると、ノズルヘッド110に形成された吐水口111(
図1に示す)から洗浄水が吐出される。吐水口111から、「おしり」などに向けて水が吐出されることで、人体の局部洗浄が行われる。
【0018】
洗浄ノズル100は、基台101の上に設けられ、ノズルヘッド110およびシリンダ120は、基台101に対して前後方向に進退可能に設けられている。また、ノズルヘッド110は、シリンダ120に対して前後方向に進退可能に設けられている。
【0019】
また、基台101の上に、洗浄ノズル100の駆動機構が設けられている。この駆動機構は、モータ140と、モータ140の駆動力を洗浄ノズル100に伝達する力伝達機構(力変換機構)とを有する。
【0020】
モータ140の回転軸は左右方向に延び、その回転軸に歯車141が連結されている。歯車141の回転力は、歯車142を介して歯車143に伝達される。さらに、歯車143の回転力は、
図2において歯車143の奥に隠れている歯車144(
図7に示す)を介して、歯車145に伝達する。これら歯車141〜145は、モータ140の回転軸に垂直な面内で回転する。
【0021】
歯車145は、
図4に示すケーブルラック154に噛合している。モータ140の回転駆動力が、歯車141〜145およびケーブルラック154を介して直線方向の駆動力に変換される。
【0022】
ケーブルラック154の一端は、ノズルヘッド110に連結されている。このため、モータ140の駆動により、歯車141〜145およびケーブルラック154を介して、ノズルヘッド110に力が加えられ、ノズルヘッド110が前後方向に摺動する。
【0023】
図3に示すように、基台101の下面には段差部が形成され、その段差部の近傍に板ばね部21が設けられている。板ばね部21は、基台101における上段側の下面から下方に垂下している。板ばね部21は、上段側の下面に一体に設けられた上端部を支軸(または支点)にして、前後方向に振れるように弾性変形可能となっている。板ばね部21も含めた基台101は、樹脂成形により一体に形成される。
【0024】
次に、ケーシング4について説明する。
【0025】
図5は、ケーシング4の斜視図である。
図6は、ケーシング4の一部分の拡大斜視図である。
図7は、ケーシング4にノズルユニット10が取り付けられた状態の断面図である。
図8は、ノズルユニット10の基台101と、ケーシング4との取付構造を示す拡大斜視図である。
【0026】
図6に示すように、ケーシング4の底面に、抜け止め部35と、爪部36が設けられている。
図2に示す基台101の前端部に設けられた略L字状の係合部22が、
図8に示すようにケーシング4の抜け止め部35の内側に挿入される。また、ケーシング4の爪部36が基台101の凹部23内に位置する。
【0027】
例えば、搬送時や取り付け時に、ケーシング4に対してノズルユニット10が下方になるような逆さまの姿勢にされても、基台101の係合部22がケーシング4の抜け止め部35に引っ掛かり、さらに基台101の凹部23がケーシング4の爪部36に引っ掛かることで、ノズルユニット10のケーシング4からの抜け落ちを防ぐことができる。
【0028】
図5、7に示すように、ケーシング4の底面には、基台101の下面の段差に対応した段差が形成されている。ノズルユニット10をケーシング4に取り付けるにあたって、基台101の板ばね部21を、ケーシング4の下段部と上段部との間に形成された壁面33に当接させることで、ケーシング4に対するノズルユニット10の前後方向の位置決めがなされる。基台101の板ばね部21と、ケーシング4の壁面33が前後方向に重なるように、板ばね部21の後面が壁面33に当接する。壁面33は、ケーシング4の底面に対して略垂直な面である。
【0029】
モータ140の回転軸は、洗浄ノズル100の駆動方向に対して交差する左右方向に延び、そのモータ140の駆動により、前述した歯車141〜145は
図7に示す前後方向および上下方向を座標軸にもつ2次元面内で回転する。また、ケーブルラック154は、上記2次元面内で湾曲した軌道を移動する。そのため、モータ140の駆動に伴って、ノズルユニット10には、左右方向よりも、前後方向および上下方向に振動が発生しやすい。
【0030】
基台101は、ケーシング4に対して上から強い力で押さえつけられておらず、前述したような抜け止めが図られている程度の、いわゆる上下方向に遊びがある状態でケーシング4に取り付けられている。そのため、ノズルユニット10の上下方向の振動は、ケーシング4には伝達しにくい。
【0031】
一方、ノズルユニット10の前後方向の振動は、前後方向の位置決めのためにケーシング4の前述した壁面33に突き当てられた部分からケーシング4に伝達しやすい。
【0032】
そこで、実施形態によれば、位置決めのためにケーシング4の壁面33に突き当てられる部分を板ばね部21にしている。その板ばね部21は、上端部を支軸にして前後方向に弾性変形可能となっている。そのため、モータ140の駆動に伴う振動が板ばね部21の弾性変形により吸収され、ケーシング4への振動伝達が抑制される。この結果、洗浄ノズル100を駆動させるためのモータ140の駆動時において、便器6の上でケーシング4が振動することによる騒音を低減することができる。
【0033】
次に、
図9〜
図15を参照して、他の実施形態について説明する。前述した実施形態と同じ要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図9および
図10は、他の実施形態のノズルユニット10の斜視図である。
図11は、他の実施形態のケーシング4の斜視図である。
図12は、他の実施形態のケーシング4の一部分の拡大斜視図である。
【0035】
図9、10に示すように、ノズルユニット10における基台101の前端部の係合部22に防振材(例えば防振ゴム)51が設けられている。防振材51は、係合部22の先端の下面、上面、および外側の側面を覆うように設けられている。
【0036】
また、基台101の後端部26にも防振材(例えば防振ゴム)52が設けられている。防振材52は、後端部26の下面、および外側の側面を覆うようにL字状に設けられている。
【0037】
基台101には、例えば
図2、3に示すように、水平方向に突出した突出片25が一体に設けられている。その突出片25の貫通孔に、防振材(例えば防振ゴム)53が装着されている。
【0038】
図15に示すように、防振材53は全体として円筒状に形成され、その外周面に、円周方向に連続した溝53aが形成されている。その溝53aに、突出片25の貫通孔の内周縁部が嵌まり込む。
【0039】
図12に示すように、ケーシング4の底面に、ボス部39、位置決めガイド37、38が設けられている。ボス部39にはネジ孔39aが形成されている。位置決めガイド37はケーシング4の前端側に設けられ、位置決めガイド38はケーシング4の後端側に設けられている。
【0040】
図9、10に示すように、基台101の突出部25に装着された防振材53の上にはワッシャー62が重ねられる。ワッシャー62、突出部25の貫通孔、および防振材53の内側をねじ61が通され、そのねじ61はケーシング4のボス部39のネジ孔39aにねじ込まれる。すなわち、ノズルユニット10はケーシング4に対してねじ止め固定される。
【0041】
基台101の突出部25と、ケーシング4のボス部39との間に防振材53が介在される。この防振材53がモータ140の駆動に伴う振動を吸収し、ケーシング4への振動伝達が抑制される。
【0042】
また、
図13に示すように、防振材51を装着した基台101の係合部22が、ケーシング4の位置決めガイド37の内側に嵌まる。係合部22と位置決めガイド37との間に防振材51が介在される。この防振材51がモータ140の駆動に伴う振動を吸収し、ケーシング4への振動伝達が抑制される。
【0043】
また、
図14に示すように、防振材52を装着した基台101の後端部26が、ケーシング4の位置決めガイド38の内側に嵌まる。後端部26と位置決めガイド38との間に防振材52が介在される。この防振材52がモータ140の駆動に伴う振動を吸収し、ケーシング4への振動伝達が抑制される。
【0044】
位置決めガイド37、38によって、ノズルユニット10の前後方向および左右方向の移動が規制され、ノズルユニット10はケーシング4に対して前後方向および左右方向の位置決めがなされる。
【0045】
以上説明した
図9〜
図15に示す実施形態によれば、モータ140の駆動に伴う振動が防振材51〜53により吸収され、ケーシング4への振動伝達が抑制される。この結果、洗浄ノズル100を駆動させるためのモータ140の駆動時において、便器6の上でケーシング4が振動することによる騒音を低減することができる。
【0046】
また、
図12に示すように、ケーシング4には移動規制リブ31が設けられている。移動規制リブ31は、ケーシング4の底面から上方に離間している。
【0047】
図16に示すように、移動規制リブ31は、ノズルユニット10の基台101に形成された係合孔123内に位置している。係合孔123は、基台101における
図9、10に現れている側部の反対側の側部に設けられている。
【0048】
ここで
図18(a)〜(c)は、比較例における、ノズルユニット10に荷重が加わった際のノズルユニット10の後端部26、および後端部26に例えば粘着テープで貼られた防振材52の挙動を示す模式図である。
【0049】
ノズルユニット10とケーシング4との通常セット状態(
図18(a))から、例えば掃除のときにノズルユニット10をケーシング4から持ち上げるような上方向の荷重(お掃除荷重)、または搬送時などにノズルユニット10側が下に位置する姿勢となってノズルユニット10に下方への落下荷重が加わると、
図18(b)に示すように、ノズルユニット10の後端部26はケーシング4から浮き上がる、または脱落する方向に移動しやすくなる。
【0050】
そのとき、ノズルユニット10の移動に追従して防振材(例えば防振ゴム)52も上方または下方に移動しやすくなる。
【0051】
このように防振材52ごとノズルユニット10が移動した後、上記お掃除荷重または落下荷重がなくなると、防振材52のクッション反発により、ノズルユニット10が元の位置(通常セット状態)に戻らず、
図18(c)に示すように、ノズルユニット10のセット位置が変更された状態でノズルユニット10がケーシング4に対して保持されてしまうことが懸念される。これは、洗浄水の吐水位置が変わり、洗浄したいポイントのずれをまねき得る。
【0052】
これに対して実施形態によれば、ノズルユニット10に上または下方向の荷重が加わった際、
図17(b)に示すように防振材(防振ゴム)52が弾性領域内の変形にとどまっている状態で、
図16に示す基台101の係合孔123の内壁がケーシング4の移動規制リブ31に当たり、ノズルユニット10および防振材52の上または下方向の移動が規制される。
【0053】
すなわち、防振材52ごと移動する前に、移動規制リブ31にノズルユニット10を当てる。防振材52は上記荷重を受けて弾性変形するにとどまる。上記お掃除荷重または落下荷重がなくなると、防振材52の弾性復元力により、
図17(c)に示すように、ノズルユニット10が元の位置(通常セット状態)に戻る。したがって、ノズルユニット10の正しい位置が保持され、洗浄したいポイントのずれをまねかない。
【0054】
なお、
図16に示すように、通常セット時においては、防振材52の弾性領域内の変形分のクリアランスを移動規制リブ31と係合孔123との間に確保し、ノズルユニット10は移動規制リブ31に接触していない。そのため、モータ140の駆動に伴う振動が、移動規制リブ31を介してケーシング4に伝達しない。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。