(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874400
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ及びガイドワイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0215 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
A61B5/0215 E
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-18408(P2017-18408)
(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-122025(P2018-122025A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】宮川 克也
(72)【発明者】
【氏名】島崎 夏美
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−000499(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0045640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02−5/03
H01R 13/11, 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の本体と、
上記本体の内部空間に挿通されて、上記本体の近位端部から延出された複数の導電線と、
コネクタと、を具備しており
上記コネクタは、
管状であって、上記コネクタの外周面に露出されており軸線方向に離れて位置する複数の電極リングと、
上記複数の各電極リングとそれぞれ接続されており上記コネクタの内部空間を通じて遠位端部から延出されて上記各導電線と遠位端部において一対一にそれぞれ接続された複数の電極ピンと、を有しており、
上記各電極ピンは、上記コネクタの内部空間において、周方向の位置が異なって配置されており、それぞれが上記電極リングの内面と、周方向に隣り合う他の電極ピンと、当接することにより、芯材を介することなく束ねられた状態となっているガイドワイヤ。
【請求項2】
上記各電極ピンの遠位端部は、軸線方向の位置が異なって配置されている請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
管状の本体と、
上記本体の内部空間に挿通されて、上記本体の近位端部から延出された複数の導電線と、
コネクタと、を具備しており
上記コネクタは、
管状であって、上記コネクタの外周面に露出されており軸線方向に離れて位置する複数の電極リングと、
上記複数の各電極リングとそれぞれ接続されており上記コネクタの内部空間を通じて遠位端部から延出されて上記各導電線と遠位端部において一対一にそれぞれ接続された複数の電極ピンと、を有しており、
上記各電極ピンの遠位端部は、軸線方向の位置が異なって配置されているガイドワイヤ。
【請求項4】
上記各電極ピンは、周方向の位置が異なって配置されている請求項3に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
上記導電線及び上記電極ピンを覆い、上記本体の近位端部及び上記コネクタの遠位端部を接続する接続管を、更に具備する請求項1から4のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
管状の本体と、
上記本体の内部空間に挿通されて、上記本体の近位端部から延出された導電線と、
コネクタと、
接続管と、を具備しており、
上記コネクタは、
上記コネクタの外周面に露出された電極リングと、
上記電極リングと接続されており上記コネクタの内部空間を通じて遠位端部から延出されて上記導電線と遠位端部において接続された電極ピンを有しており、
上記接続管は、上記導電線及び上記電極ピンを覆い、上記本体の近位端部及び上記コネクタの遠位端部を接続するガイドワイヤ。
【請求項7】
複数の上記導電線と、
軸線方向へ離れて位置する複数の上記電極リングと、
上記各電極リングとそれぞれ接続された複数の上記電極ピンと、を有しており、
上記各導電線と上記各電極ピンとが一対一にそれぞれ接続された請求項6に記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
上記各電極ピンは、上記コネクタの内部空間において、周方向の位置が異なって配置されている請求項7に記載のガイドワイヤ。
【請求項9】
上記各電極ピンの遠位端部は、軸線方向の位置が異なって配置されている請求項7又は8に記載のガイドワイヤ。
【請求項10】
上記電極ピンは、外周が絶縁コートされており、上記遠位端部及び接続される上記電極リングに対応する位置に当該絶縁コートが無い導通部を有しており、
上記各導通部において、上記導電線及び上記電極リングとそれぞれ接続されており、
上記各電極ピンの各導通部は、軸線方向において重複しない請求項1から5,7,8,又は9のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【請求項11】
上記本体は、近位端に向かって外径が縮小するテーパ部と、当該テーパ部から近位端へ延出された小径部と、を有しており、
上記接続管は、上記小径部に外嵌された状態で当該小径部に対して軸線方向へ移動可能である請求項5から9のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【請求項12】
上記接続管は、導電性材料からなるものであって、上記本体と電気的に接続されている請求項5から9,又は11のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【請求項13】
上記本体の遠位端部に位置して上記導電線と接続されており、流体の物理量に応じた電気信号を出力する電子部品を、更に具備する請求項1から12のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【請求項14】
管状の本体の内部空間に挿通されて、上記本体の近位端部から延出された導電線と、コネクタが具備する電極リングと接続されており、当該コネクタの内部空間を通じて遠位端部から延出された電極ピンと、を電気的に接続する第1工程と、
上記導電線及び上記電極ピンを覆って、上記本体の近位端部及び上記コネクタの遠位端部に接続管を接続する第2工程と、を含むガイドワイヤの製造方法。
【請求項15】
上記第1工程において、上記接続管を上記本体又は上記コネクタに外嵌させた外嵌状態として、上記導電線と上記電極ピンとを電気的に接続し、
上記第2工程において、上記外嵌状態の上記接続管を、上記本体の近位端部から軸線方向へ突出する方向、又は上記コネクタの遠位端部から軸線方向へ突出する方向へ移動させる請求項14に記載のガイドワイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内に挿入されるガイドワイヤ、及びガイドワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内における各種の物理量、例えば、血圧、血液温度を検出するために、センサを有するガイドワイヤが血管内に挿入されることが行われている。ガイドワイヤは、例えば、鎖骨の下部または大腿部から静脈内へ挿入され、その先端が冠状動脈まで送られる。そして、ガイドワイヤの先端に設けられたセンサによって、冠状動脈における血圧が測定される。
【0003】
センサから出力された電気信号に基づいて、血圧、血液温度等の物理量が演算装置において演算される。そのために、ガイドワイヤは、メス型コネクタ、ケーブルを介して演算装置と電気信号を通信可能に接続される。また、演算装置からセンサへ電力が供給される。ガイドワイヤの近位端には、メス型コネクタに挿入可能なオス型コネクタが設けられている。オス型コネクタには、例えば複数の電極が設けられている。各電極とセンサとは、ガイドワイヤの内部空間を挿通する導電線により接続されている(特許文献1参照)。各導電線において、センサから出力される電気信号が送信されたり、センサへ電力が供給されたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−225312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ガイドワイヤの外径は1mmより十分に小さいので、導電線が挿通されるガイドワイヤの内部空間の内径も同様に小さい。他方、導電線の破損を防止する観点から、導電線は、ガイドワイヤから外部に露出されていないことが望ましい。そのため、ガイドワイヤのオス型コネクタの内部空間において導電線と電極とが接続されるが、この接続作業は繁雑になりやすい。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガイドワイヤの内部空間を挿通された導電線とコネクタの電極との電気的な接続が容易なガイドワイヤ、及びガイドワイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るガイドワイヤは、管状の本体と、上記本体の内部空間に挿通されて、上記本体の近位端部から延出された導電線と、管状であって、当該管状の外周面に露出された電極リング、及び当該電極リングと接続されており当該管状の内部空間を通じて遠位端部から延出されて上記導電線と遠位端部において接続された電極ピンを有するコネクタと、を具備する。
【0008】
上記構成によれば、電極リング及び電極ピンを予め組立品としても、電極ピンの遠位端部と導電線との接続が容易である。
【0009】
(2) 好ましくは、上記ガイドワイヤは、複数の上記導電線と、軸線方向へ離れて位置する複数の上記電極リングと、上記各電極リングとそれぞれ接続された複数の上記電極ピンと、を有しており、上記各導電線と上記各電極ピンとが一対一にそれぞれ接続されたものである。
【0010】
(3) 好ましくは、上記各電極ピンは、上記コネクタの内部空間において、周方向の位置が異なって配置されている。
【0011】
電極リングの内部空間において各電極ピンが束ねられた状態となることによって、コネクタの強度が保持される。
【0012】
(4) 好ましくは、上記各電極ピンの遠位端部は、上記
コネクタの内部空間において、軸線方向の位置が異なって配置されている。
【0013】
上記構成によれば、各電極ピンと各電極リングとの接続関係が、遠位端部の位置によって把握することができる。
【0014】
(5) 好ましくは、上記電極ピンは、外周が絶縁コートされており、上記遠位端部及び接続される上記電極リングに対応する位置に当該絶縁コートが無い導通部を有しており、上記各導通部において、上記導電線及び上記電極リングとそれぞれ接続されており、上記各電極ピンの各導通部は、軸線方向において重複しない。
【0015】
上記構成によれば、各電極ピンの各導通部同士の短絡を抑制することができる。
【0016】
(6) 好ましくは、上記ガイドワイヤは、上記導電線及び上記電極ピンを覆い、上記本体の近位端部及び上記コネクタの遠位端部を接続する接続管を、更に具備する。
【0017】
導電線と電極ピンとの接続部分を覆う接続管が、本体及びコネクタと別部品として構成されているので、接続管が本体及びコネクタに接続されていない状態において、導電線と電極ピンとの接続部分を覆う部材が無く、作業性がよい。
【0018】
(7) 好ましくは、上記本体は、近位端に向かって外径が縮小するテーパ部と、当該テーパ部から近位端へ延出された小径部と、を有しており、上記接続管は、上記小径部に外嵌された状態で当該小径部に対して軸線方向へ移動可能である。
【0019】
接続管が小径部に対して軸線方向へ移動されることによって、導電線と電極ピンとの接続部分が外部に露出されたり、覆われたりする。また、小径部に接続管が外嵌されることによって、接続管の外径を小さくすることができる。
【0020】
(8) 好ましくは、上記接続管は、導電性材料からなるものであって、上記本体と電気的に接続されている。
【0021】
上記構成によれば、接続管を通じて、本体をアースすることが容易である。
【0022】
(9) 好ましくは、上記ガイドワイヤは、上記本体の遠位端部に位置して上記導電線と接続されており、流体の物理量に応じた電気信号を出力する電子部品を、更に具備する。
【0023】
(10) 本発明に係るガイドワイヤの製造方法は、管状の本体の内部空間に挿通されて、上記本体の近位端部から延出された導電線と、管状のコネクタが具備する電極リングと接続されており、当該コネクタの内部空間を通じて遠位端部から延出された電極ピンと、を電気的に接続する第1工程と、上記導電線及び上記電極ピンを覆って、上記本体の近位端部及び上記コネクタの遠位端部に接続管を接続する第2工程と、を含む。
【0024】
上記によれば、接続管が本体及びコネクタに接続されていない状態において、導電線と電極ピンとの接続部分を覆う部材が無く、作業性がよい。
【0025】
(11) 好ましくは、上記第1工程において、上記接続管を上記本体又は上記コネクタに外嵌させた外嵌状態として、上記導電線と上記電極ピンとを電気的に接続し、上記第2工程において、上記外嵌状態の上記接続管を、上記本体の近位端部から軸線方向へ突出する方向、又は上記コネクタの遠位端部から軸線方向へ突出する方向へ移動させる。
【0026】
接続管が本体又はコネクタに対して外嵌状態から移動されることによって、導電線と電極ピンとの接続部分が外部に露出されたり、覆われたりする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ガイドワイヤの内部空間を挿通された導電線と、コネクタの電極と、の電気的な接続が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ガイドワイヤシステム10の模式図である。
【
図4】
図4は、オス型コネクタ39の分解図である。
【
図6】
図6は、
図4におけるVI−VI切断線における断面図である。
【
図7】
図7は、接続管36が外嵌状態であるときのガイドワイヤ30を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、各実施形態は、本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更できることは言うまでもない。
【0030】
[ガイドワイヤシステム10]
図1に示されるように、ガイドワイヤシステム10は、ガイドワイヤ30と、演算装置20と、ガイドワイヤ30及び演算装置20を接続するメス型コネクタ40と、を備える。ガイドワイヤ30は、細長な索体であり、冠状動脈等の血管内に挿入可能である。ガイドワイヤ30は、血管内の圧力に応じて電気情報を出力する圧力センサ11(
図3参照、センサの一例)を遠位端部に備えている。
【0031】
演算装置20は、ガイドワイヤ30の圧力センサ11に電流を供給する電源部21と、圧力センサ11から出力される電気情報を演算処理する演算部22と、演算処理に必要な情報を記憶するメモリ23と、を備える。圧力センサ11から出力される電気情報は、ガイドワイヤ30からメス型コネクタ40及びケーブル24を経由して演算部22に伝達される。演算部22は、圧力センサ11から出力される電気情報に基づいて、血圧を演算する。つまり、ガイドワイヤシステム10は、血圧の測定に使用される。
【0032】
図1において、ガイドワイヤ30の両端のうち、固定端(メス型コネクタ40に接続された端)が近位端(
図1における左下側の端)であり、自由端(血管へ挿入されるときの先端)が遠位端(
図1における左上側の端)である。本明細書においては、ガイドワイヤ30において、近位端のある側を近位端側とし、遠位端のある側を遠位端側とする。
【0033】
[ガイドワイヤ30]
図2には、ガイドワイヤ30が示されている。
図2において、左側が、ガイドワイヤ30の遠位端側であり、右側が、ガイドワイヤ30の近位端側である。ガイドワイヤ30は、先端部分30A(遠位端部の一例)と、コアワイヤ31(本体の一例)と、オス型コネクタ39(コネクタの一例)と、に大別される。先端部分30Aは、先端ガイド部32と、第1螺旋体33と、ハウジング34と、第2螺旋体35と、を有する。コアワイヤ31とオス型コネクタ39とは、接続管36を介して接続されている。先端部分30A、コアワイヤ31、接続管36、及びオス型コネクタ39は、軸線50に沿って直線状に配置されている。なお、軸線50は、ガイドワイヤ30が撓んだり湾曲したりせず、真っ直ぐな状態にあるときのガイドワイヤ30の軸線を指している。
【0034】
コアワイヤ31は、ガイドワイヤ30の骨格を構成する円筒形状の部材であり、例えばステンレス製の管である。先端ガイド部32は、遠位端に配置された遠位端側に凸となる半球状部材であり、血管壁に当接することにより、ガイドワイヤ30の進行方向を血管に沿うように案内する。第1螺旋体33及び第2螺旋体35は、螺旋形状に巻回された線材であり、ガイドワイヤ30の遠位端部が血管に沿いやすいように、コアワイヤ31よりも曲がりやすく構成されている。
【0035】
ハウジング34は、その内部空間に圧力センサ11(電子部品の一例)を収納する筐体である。ハウジング34は、2つの貫通孔34aを有する。なお、2つの貫通孔34aは、軸線50に対して180°対称に配置されており、
図1においては、一方の貫通孔34aのみが現れている。貫通孔34aを介して、ハウジング34の内部に血液が進入して、圧力センサ11のダイヤフラム13(
図3)に接触する。
【0036】
コアワイヤ31の遠位端からハウジング34へ向かって、第2螺旋体35の内部空間をテーパピン38が延びている。テーパピン38は、第2螺旋体35の曲げ剛性を補強する部材である。テーパピン38は円柱形状であり、コアワイヤ31の遠位端からハウジング34へ向かって徐々に外径が小さくなっている。なお、各図には示されていないが、ハウジング34の遠位端から先端ガイド部32へ向かって、第1螺旋体33の内部空間を先端ガイドピンが延びている。先端ガイドピンは、円柱形状であり、第1螺旋体33の曲げ剛性を補強する部材である。先端ガイドピンは、ハウジング34及び先端ガイド部32に固定されている。
【0037】
図3に示されるように、圧力センサ11は、センサ本体12と、ダイヤフラム13と、ブリッジ回路14と、4つの導電線15と、接続部16と、を備える。センサ本体12は、コアワイヤ31に固定されたテーパピン38に、例えば接着剤で構成された接続部16により固定されている。センサ本体12には、ダイヤフラム13、ブリッジ回路14、及び4つの導電線15が取り付けられている。ブリッジ回路14は、4つの抵抗体17の全てが測定用の歪みゲージとして機能するフルブリッジ回路である。ブリッジ回路14は、4つの抵抗体17と、4つの端子18A、18Bと、4つの接続体19とを備える。4つの抵抗体17は、ダイヤフラム13に固定されている。4つの端子18A、18Bは、2つの入力端子18Aと、2つの出力端子18Bとからなる。各接続体19は、各抵抗体17を各端子18A、18Bに電気的に接続する。各導電線15は、各端子18A、18Bに電気的に接続されており、コアワイヤ31の内部空間を基端へ向かって延びている。
【0038】
ガイドワイヤ30が血管内に挿入されて、圧力センサ11に血圧が加わった状態では、血圧に応じてダイヤフラム13が弾性変形する。ダイヤフラム13の弾性変形に伴って、4つの抵抗体17が弾性変形し、4つの抵抗体17の電気抵抗値が変化する。この状態で、2つの入力端子18A間に電圧が印加されると、2つの出力端子18Bの間に電位差が発生する。この電位差に基づいて、演算装置20(
図1)において血圧が演算される。
【0039】
図4に示されるように、コアワイヤ31の近位端部には、近位端に向かって外径が縮小するテーパ部41と、テーパ部41から近位端へ延出された小径部42と、が形成されている。小径部42の外径は、テーパ部41より遠位端におけるコアワイヤ31の外径より小さく、且つ軸線50に沿って一定の外径である。小径部42の軸線50に沿った長さは、接続管36の軸線50に沿った長さよりも長い。コアワイヤ31の近位端は開口しており、コアワイヤ31の内部空間に挿通された4本の導電線15が、近位端の開口から外部へ延びている。
【0040】
図2,4に示されるように、接続管36は、コアワイヤ31の近位端部とオス型コネクタ39の遠位端部とを接続する。接続管36は、例えばステンレスなどの導電性材料からなる管であり、近位端及び遠位端がそれぞれ開口している。接続管36の外径は、コアワイヤ31のテーパ部41から遠位端側の外径と、ほぼ等しい。接続管36の内径は、コアワイヤ31の小径部42の外径と、ほぼ等しい。接続管36の内面が、小径部42の外面に接触することによって、接続管36とコアワイヤ31とが電気的に接続されている。接続管36は、小径部42に対して接着剤などで固定されていない状態において、小径部42に対して軸線50に沿って移動可能である。接続管36は、小径部42に固定された状態において、コアワイヤ31の近位端から延びる4本の導電線15を覆う。
【0041】
図2,4に示されるように、オス型コネクタ39は、4つの電極リング37A,37B,37C,37D及び5つの絶縁リング43が交互に繋ぎ合わされてなる円管形状の複合体44の内部空間に、4本の電極ピン45が挿入されたものである。
【0042】
各電極リング37A,37B,37C,37Dは、円筒形状であり、内面と外面とが導通される導電性を有する。各電極リング37A,37B,37C,37Dは、例えば導電性部材から形成されたものであってもよいし、円筒形状の部材の表面に導電性部材がメッキなどされたものであってもよい。絶縁リング43は、円筒形状であり、ポリイミドなどの絶縁性材料からなるものである。各電極リング37A,37B,37C,37Dの内径及び外径と絶縁リング43の内径及び外径は、それぞれ等しい。5つの絶縁リング43の間に各電極リング37A,37B,37C,37Dがそれぞれ配置されて、一体に固定されることによって、円管形状の複合体44が形成されている。各電極リング37A,37B,37C,37D及び各絶縁リング43は、例えば軸線50に沿った長さが同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。複合体44の外径は、接続管36の外径と、ほぼ等しい。
【0043】
図5に示されるように、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dは、軸線50に沿った長さがそれぞれ異なる円柱形状の部材である。4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dは、導電性材料からなるもの又は表面に導電性部材がメッキされたものであり、最外面が絶縁コートされたものである。4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dの外径は等しい。本明細書において、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dを、特に区別せずに説明する場合には、単に「電極ピン45」と称することがある。
【0044】
図5に示されるように、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dの各遠位端部は、絶縁コートが無い導通部46である。各導通部46は、各導電線15と、一対一に接続される。同図に示されるように、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dが、各近位端の軸線50に沿った方向の位置を併せて並べられた状態において、各遠位端部の導通部46(
図5における左側に位置する導通部46)は、軸線50に沿った方向の位置が重複しない。
【0045】
4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dは、それぞれ2つの導通部46を有する。軸線50に沿った長さが4本の中で最も短い電極ピン45Aは、近位端部(
図5における右側の端部)から若干離れた位置に、絶縁コートが無い導通部46を有する。電極ピン45Aの近位端側の導通部46は、複合体44において最も近位端側に位置する電極リング37Aの軸線50に沿った方向の位置に対応している。
【0046】
次に短い電極ピン45Bは、近位端から離れた位置に導通部46を有する。電極ピン45Bの近位端側の導通部46は、複合体44において近位端から2つめの電極リング37Bの軸線50に沿った方向の位置に対応している。
図5に示される状態において、電極ピン45Aの近位端側の導通部46と、電極ピン45Bの近位端側の導通部46とは、軸線50に沿った方向(
図5における左右方向)の位置が重複しない。
【0047】
同様に、3番目に短い電極ピン45Cにおける近位端側の導通部46は、複合体44において近位端から3つめの電極リング37Cの軸線50に沿った方向の位置に対応している。また、最も長い電極ピン45Dにおける近位端側の導通部46は、複合体44において近位端から4つめの電極リング37Dの軸線50に沿った方向の位置に対応している。
図5に示される状態において、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dのいずれの導通部46も、軸線50に沿った方向の位置が他の導通部46と重複しない。
【0048】
図4に示されるように、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dは、各近位端の位置を合わせた状態で複合体44の内部空間に挿入されている。4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dの遠位端部は、複合体44の遠位端から外部へ延びており、遠位端側の各導通部46が外部へ露出されている。4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dは、複合体44の内部空間に挿入された状態において、各遠位端の軸線50に沿った方向の位置が異なっている。
【0049】
図6に示されるように、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dは、複合体44の内部空間において、周方向の位置が異なって配置されている。つまり、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dは、1つに束ねられた状態となっている。4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dは、それぞれが複合体44の内面に当接しており、且つ他の2つの電極ピン45とそれぞれ当接している。これにより、複合体44の内部空間において、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dが安定的に配置されている。なお、同図には示されていないが、複合体44の中心(軸線50の位置)に、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dとそれぞれ当接する円柱形状の芯材が配置されてもよい。
【0050】
図6に示されるように、例えば、複合体44において近位端から3番目の電極リング37Cにおいては、3番目に短い電極ピン45Cの近位端側の導通部46が、3番目の電極リング37Cの内面に接触しており、半田付けなどによって固定されることによって、電気的に導通されている。その他の電極ピン45A,45B,45Dの外周面は絶縁コートされているので、3番目の電極リング37Cとは当接しているものの絶縁されている。このようにして、4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dのそれぞれの近位端側の導通部46が、各電極リング37A,37B,37C,37Dと一対一に電気的に接続されている。
【0051】
[ガイドワイヤ30の製造方法]
以下、ガイドワイヤ30の製造方法、特にコアワイヤ31とオス型コネクタ39との接続方法が説明される。
【0052】
圧力センサ11などが予め組み付けられたコアワイヤ31の近位端からは、4本の導電線15が延びている。オス型コネクタ39は、複合体44の内部空間に4本の電極ピン45A,45B,45C,45Dが挿入されて、各導通部46が各電極リング37A,37B,37C,37Dとそれぞれ接続された状態に組み付けられている。
【0053】
[第1工程]
図7に示されるように、コアワイヤ31の小径部42に接続管36を外嵌させて、最も遠位端側へ移動させた外嵌状態とする。外嵌状態において、接続管36は、小径部42の近位端から軸線50に沿った方向へ突出していないか、突出していたとしても僅かである。また、外嵌状態において、4本の導電線15は、接続管36の近位端から外へ延びている。この外嵌状態において、各導電線15と各電極ピン45とを、半田付けなどによって電気的に接続する。各導電線15は、例えばそれぞれの絶縁コートが色分けされることにより種別が判別可能である。また、各電極ピン45は、複合体44から突出している遠位端の位置によって、いずれの電極リング37A,37B,37C,37Dに接続されたものであるかを判別可能である。
【0054】
[第2工程]
各導電線15と各電極ピン45とを電気的に接続した後、外嵌状態の接続管36を、コアワイヤ31の小径部42から軸線50に沿った方向へ突出するように移動させる。これにより、
図2に示されるように、各導電線15と各電極ピン45の導通部46との接続箇所を接続管36が覆って、接続管36の近位端部がオス型コネクタ39に接触する。そして、接続管36を、コアワイヤ31の小径部42及びオス型コネクタ39に対して接着剤などによって固定することによって接続する。
【0055】
[本実施形態の作用効果]
ガイドワイヤ30によれば、オス型コネクタ39を予め組立品としても、電極ピン45の導通部46が複合体44の遠位端から外方へ突出しているので、導通部46と導電線15との接続が容易である。また、仮に、導通部46と導電線15との接続工程において不具合が生じても、オス型コネクタ39のみを交換すればよいので、生産性がよい。
【0056】
また、各電極ピン45は、複合体44の内部空間において、周方向の位置が異なって配置されているので、複合体44の内部空間において各電極ピン45が束ねられた状態となることによって、オス型コネクタ39の強度が保持される。
【0057】
また、複合体44の内部空間に収容された各電極ピン45の遠位端側の導通部46は、軸線50に沿った方向の位置が異なるので、各電極ピン45と各電極リング37A,37B,37C,37Dとの接続関係が、導通部46の位置によって容易に把握することができる。
【0058】
また、各電極ピン45は、最外面が絶縁コートされており、遠位端部及び接続される各電極リング37A,37B,37C,37Dにそれぞれ対応する位置に導通部46を有しており、オス型コネクタ39において、各導通部46が軸線50に沿った方向において重複しないので、各電極ピン45の各導通部46同士の短絡を抑制することができる。
【0059】
また、各導電線15と各電極ピン45との接続部分を覆う接続管36が、コアワイヤ31及びオス型コネクタ39と別部品として構成されているので、接続管36がコアワイヤ31及びオス型コネクタ39に接続されていない状態において、各導電線15及び各電極ピン45の導通部46を覆う部材が無く、各導電線15と各電極ピン45の導通部46とを電気的に接続する作業が容易である。
【0060】
また、コアワイヤ31の遠位端部に小径部42が設けられており、接続管36が小径部42に対して軸線50に沿った方向へ移動可能なので、接続管36の移動によって、導電線15と電極ピン45の導通部46とが、容易に外部に露出されたり、覆われたりする。また、接続管36の外径と、コアワイヤ31のテーパ部41より遠位端側の外径とを等しくすることができる。
【0061】
また、接続管36は、導電性材料からなるものであってコアワイヤ31と電気的に接続されているので、接続管36を通じて、コアワイヤ31をアースすることが容易である。
【0062】
本実施形態におけるガイドワイヤ30の製造方法によれば、接続管36がコアワイヤ31及びオス型コネクタ39に接続されていない状態において、各導電線15と各電極ピン45の導通部46との接続を行うので、各導電線15と各電極ピン45の導通部46とを覆う部材が無く、作業性がよい。
【0063】
また、接続管36がコアワイヤ31の小径部42に対して外嵌状態から移動されることによって、各導電線15と各電極ピン45の導通部46とが、容易に外部に露出されたり、覆われたりする。
【0064】
[変形例]
前述された実施形態におけるガイドワイヤ30の製造方法においては、外嵌状態において接続管36がコアワイヤ31の小径部42に外嵌されているが、小径部42に代えて、オス型コネクタ39に接続管36を外嵌させた状態を外嵌状態としてもよい。この外嵌状態の場合、接続管36の内径は、オス型コネクタ39の外径と、ほぼ等しい。各導電線15と各電極ピン45の導通部46との接続が行われた後に、外嵌状態の接続管36が、オス型コネクタ39から軸線50に沿った方向へ突出するように移動される。
【0065】
また、前述された実施形態におけるガイドワイヤ30の製造方法において、接続管36が外嵌状態にされることなく、ガイドワイヤ30及びオス型コネクタ39のいずれにも外嵌されていない状態で、各導電線15と各電極ピン45の導通部46との接続が行われ、その後に、例えば、オス型コネクタ39の近位端部に接続管36が外嵌されつつ遠位端部へ移動されて、接続管36が、コアワイヤ31の小径部42及びオス型コネクタ39に外嵌されて接続されてもよい。
【0066】
また、ガイドワイヤ30において接続管36は必須の構成では無く、接続管36を有しないガイドワイヤ30として構成されてもよい。例えば、コアワイヤ31の近位端とオス型コネクタ39とが直接に連結されてもよい。その場合、コアワイヤ31の近位端から延びる各導電線15が、対応する各電極ピン45の導通部46と接続され、各導電線15が、撓んだ状態でコアワイヤ31の内部空間に収容される。
【0067】
また、前述された実施形態における導電線15、電極リング37A,37B,37C,37D、及び電極ピン45の本数は一例に過ぎず、導電線15、電極リング37A,37B,37C,37D、及び電極ピン45は単数であっても、任意の複数であってもよい。
【0068】
また、ガイドワイヤ30に設けられた圧力センサ11は、電子部品の一例に過ぎず、圧力以外の血液や血管の物理量(温度、流速など)を計測する他のセンサや電子回路が設けられてもよい。また、前述された実施形態において示されたガイドワイヤ30の遠位端側の構成は一例に過ぎず、螺旋体やテーパピン、ハウジングなどの構成は、適宜変更されてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
11・・・圧力センサ(電子部品)
15・・・導電線
30・・・ガイドワイヤ
31・・・コアワイヤ(本体)
36・・・接続管
37A,37B,37C,37D・・・電極リング
39・・・オス型コネクタ
41・・・テーパ部
42・・・小径部
45・・・電極ピン
46・・・導通部