特許第6874411号(P6874411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874411
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20210510BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20210510BHJP
   C08L 1/12 20060101ALI20210510BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20210510BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C08J3/20 BCEQ
   C08K7/02
   C08L1/12
   C08L21/00
   C08L101/14
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-27489(P2017-27489)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-131573(P2018-131573A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】安川 雄介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 昌浩
【審査官】 深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6153694(JP,B2)
【文献】 特開2016−094541(JP,A)
【文献】 特開2014−220345(JP,A)
【文献】 特開2017−008176(JP,A)
【文献】 特開2014−141637(JP,A)
【文献】 特開2011−184816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08B 1/00−37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有するゴム組成物の製造方法であって、セルロースの全水酸基に対して1モル%以上65モル%以下であるアセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有する乾燥固形物と、ゴム成分を含有する水分散液を混合する工程を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液から分散媒を除去して前記乾燥固形物を調製する工程をさらに含む、請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有する乾燥固形物が、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの絶乾固形分に対して5〜50重量%の水溶性高分子を含む、請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有する乾燥固形物が、アセチル基を有するセルロースナノファイバー及び水溶性高分子を含有する分散液から分散媒をドラム乾燥機により除去して得られる、請求項1又は3に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有する乾燥固形物が、アセチル基を有するセルロースナノファイバー及び水溶性高分子を含有する分散液のpHを9〜11に調整した後に、分散媒を除去して得られる、請求項1、3又は4のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液が、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの絶乾固形分に対して5〜50重量%の水溶性高分子を含む、請求項2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液が水溶性高分子を含み、前記調整工程において、当該アセチル基を有するセルロースナノファイバー及び水溶性高分子を含有する分散液から分散媒をドラム乾燥機により除去する、請求項2又は6に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液が水溶性高分子を含み、前記調製工程において、当該アセチル基を有するセルロースナノファイバー及び水溶性高分子を含有する分散液のpHを9〜11に調整した後に、分散媒を除去する、請求項2、6又は7のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース又はその塩である、請求項3〜8のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルロースナノファイバーと呼ばれる、植物繊維をナノレベルまで細かくほぐすことによって製造される素材をゴム組成物に含有させることにより、引張強度などゴム組成物における各種強度を向上させる技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、平均径が0.5μm未満のセルロースの短繊維とゴムラテックスとを撹拌混合して得られるゴム/短繊維のマスターバッチが開示されている。この文献によれば、あらかじめ平均繊維径が0.5μm未満の短繊維を水中でフィブリル化させた分散液とし、これをゴムラテックスと混合して乾燥させることにより、短繊維をゴム中に均一に分散させることができ、このゴム/短繊維のマスターバッチを利用することにより、ゴム補強性と耐疲労性のバランスが取れたゴム組成物を得ることが出来るとされている。
【0004】
しかしながら、この方法では、セルロースナノファイバー水分散液の固形分濃度が数%以下と低いため、これをゴムラテックスに添加すると、混合液全体の固形分濃度が低くなり取り扱いにくい。
【0005】
一方、水に分散している状態のセルロースナノファイバーを乾燥させた固形物が知られている。しかし、一度乾燥させたセルロースナノファイバーは、再度水に分散させようとしても十分に再分散しないセルロースナノファイバーの乾燥固形物を水中で再分散させる手段として、凍結乾燥法や臨界点乾燥法、有機溶剤で置換処理した後に乾燥する方法などの他に、水溶性高分子と混合した後に乾燥する方法(特許文献2)が提案されているが、特許文献2ではゴム組成物に含有させることについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−206864号公報
【特許文献2】国際公開第2015/107995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの乾燥固形物を含有することにより補強性が十分に改善されたゴム組成物を比較的高い固形分濃度において製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]アセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有するゴム組成物の製造方法であってアセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有する乾燥固形物と、ゴム成分を含有する水分散液を混合する工程を含む、ゴム組成物の製造方法。
[2]アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液から分散媒を除去して前記乾燥固形物を調製する工程をさらに含む、[1]に記載のゴム組成物の製造方法。
[3]前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有する乾燥固形物が、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの絶乾固形分に対して5〜50重量%の水溶性高分子を含む、[1]に記載のゴム組成物の製造方法。
[4]前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有する乾燥固形物が、アセチル基を有するセルロースナノファイバー及び水溶性高分子を含有する分散液から分散媒をドラム乾燥機により除去して得られる、[1]又は[3]に記載のゴム組成物の製造方法。
[5]前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーを含有する乾燥固形物が、アセチル基を有するセルロースナノファイバー及び水溶性高分子を含有する分散液のpHを9〜11に調整した後に、分散媒を除去して得られる、[1]、[3]又は[4]のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
[6]前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液が、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの絶乾固形分に対して5〜50重量%の水溶性高分子を含む、[2]に記載のゴム組成物の製造方法。
[7]前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液が水溶性高分子を含み、前記調整工程において、当該アセチル基を有するセルロースナノファイバー及び水溶性高分子を含有する分散液から分散媒をドラム乾燥機により除去する、[2]又は[6]に記載のゴム組成物の製造方法。
[8]前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液が水溶性高分子を含み、前記調製工程において、当該アセチル基を有するセルロースナノファイバー及び水溶性高分子を含有する分散液のpHを9〜11に調整した後に、分散媒を除去する、[2]、[6]又は[7]のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
[9]前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース又はその塩である、[3]〜[8]のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの乾燥固形物の分散性をより高め、引張強度が改善されたゴム組成物を比較的高い固形分濃度において製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において「X〜Y」はその端値であるX及びYを含む。「X又はY」はXかYのいずれか一方、或いはその両方を意味する。
【0011】
<アセチル基を有するセルロースナノファイバー>
本発明において、アセチル基を有するセルロースナノファイバーは、平均繊維径が2〜500nm 好ましくは2〜50nm、平均アスペクト比が10以上の微細繊維であり、アセチル基を有する化合物により化学変性されたセルロース原料を解繊することによって得ることができる。
【0012】
アセチル基を有するセルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察して求めることができる。また、アスペクト比は下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0013】
本発明では、アセチル基を有する化合物によって、セルロースの水酸基の一部をアセチル基に化学修飾する。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
【0014】
<セルロース原料>
本発明において、セルロース原料としては、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものが知られており、本発明ではそのいずれも使用できる。好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
【0015】
本発明に用いられるセルロース繊維原料の繊維径は特に制限されず、数平均繊維径としては1μmから1mmである。一般的な精製を経たものは50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナーやビーター等の離解機で機械的処理を行い、50μm程度にすることが好ましい。セルロース原料の分散液は水であることが好ましい。
【0016】
<アセチル基を有する化合物による処理>
アセチル基を有する化合物による処理では、アセチル基を有する化合物によって、セルロースの水酸基の一部をアセチル基に化学修飾する。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。アセチル基を有する化合物としては、無水酢酸、酢酸が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記アセチル基を有する化合物のうち、無水酢酸が好ましい。
【0017】
セルロース懸濁液に対するアセチル基を有する化合物の質量割合は、特に制約されるものではないが、セルロースの水酸基のモル数に対して、0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。アセチル基を有する化合物の質量割合が前記範囲内であれば、解繊工程での微細繊維状セルロースの収率の向上効果がより高くなる。
【0018】
溶媒としては、アセチル化を阻害しない水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトン、ピリジン等の有機溶媒や、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸が挙げられ、特に酢酸等の有機酸が好ましい。酢酸等の有機酸を用いることで、化学修飾がセルロースに均一に進行するため、後述する解繊がしやすくなり、得られる複合体が高耐熱性、高生産性を示すと考えられる。また、上記溶媒以外のものを併用しても構わない。
【0019】
使用される溶媒の量は特に限定されないが、通常、セルロース重量に対して、0.5倍以上が好ましく、1倍以上がより好ましく、200倍以下が好ましく、100倍以下がより好ましい。触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。触媒の量は特に限定されず、種類によっても異なるが、通常、セルロースの水酸基のモル数に対して、0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。
【0020】
温度条件は特に制限されないが、高すぎるとセルロースの黄変や重合度の低下等が懸念され、低すぎると反応速度が低下することから、10〜130℃が好ましい。反応時間も特に制限されず、化学修飾剤や化学修飾率にもよるが、数分から数十時間である。このようにして化学修飾を行った後は、反応を終結させるために有機溶媒や水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題になったりするので好ましくない。
【0021】
本発明において、導入されるアセチル基の、置換基導入量は特に制限されないが、セルロースの全水酸基に対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が特に好ましい。また、65モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。上記範囲内であれば、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの乾燥固形物を含有することにより補強性が十分に改善されたゴム組成物を比較的高い固形分濃度において製造することができる。
【0022】
<解繊>
本発明において、解繊する装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いて前記水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊及び分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて、上記のアセチル基を有するセルロースナノファイバーに予備処理を施すことも可能である。
【0023】
上記の処理で解繊する場合、セルロース繊維原料としての固形分濃度は0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、特に0.3重量%以上、且つ10重量%以下、特に6重量%以下であることが好ましい。固形分濃度が低過ぎると、処理するセルロース繊維原料の量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪く、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなる。
【0024】
<水溶性高分子>
本発明において、水溶性高分子とは水に溶解する高分子化合物をいい、例えば、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、澱粉、かたくり粉、クズ粉、陽性澱粉、燐酸化澱粉、コーンスターチ、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ゲランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、水溶性キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン、ラテックス、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー、ポリアクリル酸塩、でんぷんポリアクリル酸共重合体、タマリンドガム、ジェランガム、ペクチン、グァーガム及びコロイダルシリカ並びにそれら1つ以上の混合物をいう。この中でも、カルボキシメチルセルロース又はその塩を用いることが親和性の点から好ましい。水溶性高分子としてのカルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチル基が導入されたアセチル基を有するセルロースナノファイバーとは異なる。
【0025】
<乾燥固形物>
本発明において、乾燥固形物とは、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液から当該分散媒を除去して得られた固形物をいう。本発明において乾燥固形物とは、絶乾状態のものまたは湿潤状態のものをいい、固形物中に分散媒が12重量%以下存在するものをいう。具体的には、アセチル基を有するセルロースナノファイバー又はこれと前記量以下の分散媒からなる乾燥固形物、あるいはアセチル基を有するセルロースナノファイバーと水溶性高分子又はこれらと前記量以下の分散媒からなる乾燥固形物が挙げられる。分散媒としては水や水性有機溶媒が挙げられるが、水が好ましい。分散媒を除去するとは、分散液を脱水(脱分散媒)又は乾燥すること等により分散媒を除くことを意味する。
【0026】
本発明において、前記水分散液に、固体又は液体の水溶性高分子を溶解または分散してもよい。また、前記分散液のpHを9〜11に調整した後に、脱水又は乾燥することによってゴム組成物とアセチル基を有するセルロースナノファイバーの親和性が良好である乾燥固形物を得ることができる。本発明において、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散液とは分散媒中にアセチル基を有するセルロースナノファイバーが分散している液をいう。
【0027】
本発明において、アセチル基を有するセルロースナノファイバーと水溶性高分子を含有する乾燥固形物中の水溶性高分子の配合量は、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの絶乾固形分に対して、5〜50重量%であることが好ましい。5重量%未満であると十分な再分散性の効果が発現しにくい。一方、50重量%を超えるとアセチル基を有するセルロースナノファイバーの特徴である粘度特性、分散安定性の低下などの問題が生じうる。また、アセチル基を有するセルロースナノファイバーと水溶性高分子を含有した乾燥固形物はゴム成分との親和性(分散性)高くなる理由は明らかではないが、ゴム成分とアセチル基を有するセルロースナノファイバーを混合する際、水溶性高分子がゴム成分中に溶解し、粘度が上昇する。この結果として、撹拌時において高いずり応力が加わることにより、ゴム成分中にとアセチル基を有するセルロースナノファイバーが均一に分散させることができると推測される。
【0028】
上記分散液あるいは混合液の脱水又は乾燥方法としては、従来公知のものであればよく、例えば、スプレードライ、圧搾、風乾、熱風乾燥、及び真空乾燥を挙げることができる。本発明方法で具体的に用いる乾燥装置の例としては、以下のようなものである。すなわち、連続式のトンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、スプレードライヤ乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置等、回分式の箱型乾燥装置、通気乾燥装置、真空箱型乾燥装置、及び撹拌乾燥装置等の乾燥装置を単独で又は2つ以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ドラム乾燥装置を用いることが、均一に被乾燥物に熱エネルギーを直接供給するためエネルギー効率の点から好ましい。また、ドラム乾燥装置は必要以上に熱を加えずに、直ちに乾燥物を回収できる点からも好ましい。
【0029】
<ゴム成分>
ゴム成分とはゴムの原料であって架橋してゴムとなるものをいう。天然ゴム用のゴム成分および合成ゴム用のゴム成分が存在するが、本発明においてはいずれを用いてもよく、また両者を組合せてもよい。便宜上、天然ゴム用等のゴム成分を「天然ゴムポリマー」等という。
【0030】
天然ゴム(NR)ポリマーとしては、化学修飾を施さない狭義の天然ゴムポリマー;塩素化天然ゴムポリマー、クロロスルホン化天然ゴムポリマー、エポキシ化天然ゴムポリマー等の化学修飾した天然ゴムポリマー;水素化天然ゴムポリマー;脱タンパク天然ゴムポリマーが挙げられる。合成ゴムポリマーとしては例えば、ブタジエンゴム(BR)ポリマー、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)ポリマー、イソプレンゴム(IR)ポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ポリマー、クロロプレンゴムポリマー、スチレン−イソプレン共重合体ゴムポリマー、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムポリマー、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムポリマー等のジエン系ゴムポリマー;ブチルゴム(IIR)ポリマー、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)ポリマー、アクリルゴム(ACM)ポリマー、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)ポリマー、フッ素ゴム(FKM)ポリマー、シリコーンゴム(Q)ポリマー、ウレタンゴム(U)ポリマー、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)ポリマー等の非ジエン系ゴムポリマーが挙げられる。これらのゴムポリマーは一種のみ使用してもよいし、複数種を併用してもよい。これらの中でもジエン系ゴムが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明において、上記ゴム成分は、ゴム成分の水分散液(ラテックス)として使用することが好ましい。ここでゴム成分を含有する水分散液(ラテックス)とは、水の液中にゴム成分の微粒子が安定に分散した系(エマルジョン)のことであり、ゴム成分の固形分濃度は通常30〜70%程度である。また、ゴム成分の水分散液のpHは7〜12であることが好ましい。
【0032】
ゴム成分に前記アセチル基を有するセルロースナノファイバーと水溶性高分子を含有する乾燥固形物を混合する場合、ゴム成分の絶乾固形分に対して、当該アセチル基を有するセルロースナノファイバーの重量比率が1〜50重量%であることが好ましい。当該比率が1重量%未満であると架橋ゴム組成物としたときに十分な引張強度の向上効果が発現しない。一方、当該比率が50重量%を超えるとゴム組成物の加工性が低下する。
【0033】
本工程で得られる混合物の全固形分濃度の下限は10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましい。また、当該濃度の上限は100重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましい。本発明の製造方法は、従来検討されなかったアセチル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液から分散媒を除去して得た乾燥固形物をゴム成分との混合に供することで、固形分濃度が高い混合物を調製する。このため、本発明の製造方法は作業効率及び生産性に優れる。また、高固形分濃度で分散させることによりアセチル基を有するセルロースナノファイバーに十分なせん断応力がかかり、再分散性が良化することにより、機械的強度に優れたゴム組成物を高い作業効率及び生産性で製造することを達成した。
【0034】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と前記乾燥固形物を混合したものから、ラテックス又は乾燥固形物に由来する水等を除去することで製造される。乾燥固形物が水以外の分散媒を含むときは、ゴム成分と前記乾燥固形物を混合したものから水及び当該分散媒を除去する。本発明において、水又は分散媒を「液状媒体」ともいう。液状媒体を除去する方法は特に制限されず、前記混合物をオーブンでそのまま乾燥してもよく、或いは凝固させてから脱水又は乾燥してもよい。また、この際にpHを2〜6に調整してもよい。
【0035】
本発明において、上記ゴム組成物とその他の必要なゴムや配合剤とを、たとえばゴム用混練機等を用いて従来公知の方法で混合し、従来公知の方法で架橋(硫黄を用いる場合は「加硫」ともいう)することが可能である。本発明においてゴム組成物は、架橋前の組成物及び架橋した組成物を含むが、架橋する前の組成物を「未架橋ゴム組成物」、架橋後の組成物を「架橋ゴム組成物」ともいう。
【0036】
本発明のゴム組成物には、上記した成分以外に、従来ゴム工業で使用される他の配合剤として、たとえば、補強剤、シランカップリング剤、加硫剤、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、しゃく解剤、着色剤、pH調整剤などを配合できる。
【0037】
補強剤としては、タイヤ用途で用いられるものをいずれも好適に使用できるが、特に、カーボンブラックおよびシリカの少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0038】
本発明の加硫ゴム組成物は、特に用途は制限されないが、その特性からタイヤ用に好適である。例えば、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用などの空気入りタイヤとして使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0040】
<アセチル基を有するセルロースナノファイバーの製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)を酢酸中に分散して濾過する工程を3度行い、セルロース繊維原料中の水を酢酸に置換した。セルロース繊維1g(乾燥重量)に対して、酢酸20ml、無水酢酸10mlの割合でこれらを混合しておき、そこに上記の酢酸置換したセルロース繊維原料を添加した。その後、攪拌しながら115℃で5時間反応させることによりセルロース繊維をアセチル化処理した。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄し、アセチル基を有するセルロース繊維原料を得た。
洗浄後に得られたパルプにイオン交換水を添加した後、攪拌して、0.5%(w/v)のスラリーを得た。このパルプスラリーを、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理して、アセチル基を有するセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0041】
<実施例1>
上記のアセチル基を有するセルロースナノファイバーの0.5重量%水分散液にカルボキシメチルセルロース(商品名:F350HC−4)を、アセチル基を有するセルロースナノファイバーに対して30重量%添加し、TKホモミキサー(12,000rpm)で60分間撹拌した。この水分散液に、水酸化ナトリウム水溶液0.5重量%を加え、pHを9に調整した後、蒸気圧力0.5MPa.G、ドラム回転数2rpmのドラム乾燥機D0405(カツラギ工業)で乾燥し、水分量5重量%のアセチル基を有するセルロースナノファイバーとカルボキシメチルセルロースの混合乾燥固形物を得た。ゴムラテックス(商品名:HAラテックス、レヂテックス社、固形分濃度65重量%)100gの絶乾固形分に対して、前記混合乾燥固形物を絶乾相当で5重量%混合し、TKホモミキサー(8000rpm)で60分間撹拌して混合物を得た。当該混合物は全固形分濃度が68.25重量%と非常に高かった。この混合物を、70℃の加熱オーブン中で15時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
【0042】
上記の方法により得たマスターバッチに対し、酸化亜鉛、ステアリン酸をマスターバッチ中のゴム成分に対しそれぞれ6重量%、0.5重量%混合し、オープンロール(関西ロール株式会社製)にて、30℃で10分間混練することによって混練物を得た。この混練物に対し、硫黄および加硫促進剤(BBS、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)を、混練物中のゴム成分に対しそれぞれ3.5重量%、0.7重量%加え、オープンロール(関西ロール株式会社製)を用い、30℃で10分間混練して、未加硫ゴム組成物のシートを得た。得られた未加硫ゴム組成物のシートを、金型にはさみ、150℃で10分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの加硫ゴムシートを得た。得られた加硫ゴムシートを、所定の形状の試験片に裁断し、JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、引張強度を示すものとして、100%ひずみ時、および300%ひずみ時における応力、破断強度をそれぞれ測定した。各々の数値が大きい程、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、機械強度に優れることを示す。
【0043】
本例では、全固形分濃度が68.25重量%と非常に高い混合物を用いて加硫ゴム組成物を製造したが、ゴムマトリックス中でのアセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散が良好であり、表1に示すとおり優れた機械的特性が得られた。
【0044】
<実施例2>
アセチル基を有するセルロースナノファイバーの水分散液を乾燥する際に、カルボキシメチルセルロースを混合せずにアセチル基を有するセルロースナノファイバー単体で乾燥した以外は、実施例1と同様にして行った。
【0045】
<比較例1>
実施例1において、マスターバッチを得る際に、アセチル基を有するセルロースナノファイバーとカルボキシメチルセルロースの混合乾燥固形物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0046】
<比較例2>
アセチル基を有するセルロースナノファイバー乾燥固形物を用いる代わりに、アセチル基を有するセルロースナノファイバー水分散液(固形分濃度0.5重量%)を用いた以外は、実施例2と同様にして行った。ゴム成分に対するアセチル基を有するセルロースナノファイバーの量は実施例2と同じであった。
【0047】
【表1】
【0048】
上記の結果から、アセチル基を有するセルロースナノファイバーと水溶性高分子の混合乾燥固形物を用いた実施例1およびアセチル基を有するセルロースナノファイバーの乾燥固形物を用いた実施例2では、アセチル基を有するセルロースナノファイバーを用いなかった比較例1、未乾燥のアセチル基を有するセルロースナノファイバー水分散液を用いた比較例2に比べ、100%、300%ひずみ時における応力が明らかに大きいことから、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、機械強度に優れることが分かる。これは、ゴム成分とアセチル基を有するセルロースナノファイバーの混合物において固形分濃度が高いため、撹拌時に十分なずり応力(せん断応力)が発生して、アセチル基を有するセルロースナノファイバーの分散性を高めたためと推察される。さらに本発明は、固形分濃度の高い混合物から加硫ゴム組成物を得ることができるため生産性及び作業性に優れていることも明らかである。