特許第6874420号(P6874420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874420
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両用車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   B62D21/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-33798(P2017-33798)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138440(P2018-138440A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川尻 将司
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−094091(JP,A)
【文献】 特開平02−208171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる一対の対向するサイドレールと、
車両幅方向に延びて両端が前記一対のサイドレールに連結されるクロスメンバと、
前記クロスメンバの下方向に配置され、前記サイドレールに一端部が連結され、前記クロスメンバに他端部が連結される第1補強部材と、
車両前後方向の口幅が手前側から奥側に向かって狭くなる切欠部が設けられた上端縁を有し、前記第1補強部材の他端部に沿って固定される第2補強部材と、
を備え
前記第2補強部材の上端部は、前記第1補強部材における前記一端部と前記他端部との間の中間部に延在し、貫通孔を有し、当該貫通孔の周縁部が前記第1補強部材と溶接で固定される、車両用車体構造。
【請求項2】
前記第2補強部材の車両前後方向における両側端部は、前記第1補強部材に沿うように設けられる請求項1に記載の車両用車体構造。
【請求項3】
前記第2補強部材の車両前後方向における両側端縁の一方から前記第2補強部材が前記第1補強部材に固定される固定部まで距離は、前記両側端縁の他方から前記固定部までの距離より長い、請求項1または2に記載の車両用車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両前後方向に延びる一対の対向するサイドレールと、車両幅方向に延びて両端が一対のサイドレールに連結されるクロスメンバと、クロスメンバの下方に配置され、クロスメンバに上端部が連結され、サイドレールに下端部が連結される補強部材とが備えられた車両用車体構造がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、補強用リブ及び隆起部を有し、サイドレールとクロスメンバとを接続する補強部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−191434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載のものは、車両の操舵時に、サイドレールに車両幅方向へ横曲げ荷重が作用すると、補強部材の下端部を支持点として、補強部材に応力集中が発生する場合があるという問題点があった。
【0006】
また、補強部材に補強用のリブや隆起部を設けない場合には、補強部材における車両幅方向の曲げ剛性が低下するという問題がある。
【0007】
本開示の目的は、車両幅方向の曲げ剛性の低下を抑えつつ、補強部材の応力集中を回避することができる車両用車体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の車両用車体構造は、
車両前後方向に延びる一対の対向するサイドレールと、
車両幅方向に延びて両端が前記一対のサイドレールに連結されるクロスメンバと、
前記クロスメンバの下方向に配置され、前記サイドレールに一端部が連結され、前記クロスメンバに他端部が連結される第1補強部材と、
車両前後方向の口幅が手前側から奥側に向かって狭くなる切欠部が設けられた上端縁を有し、前記第1補強部材の他端部に沿って固定される第2補強部材と、
を備え
前記第2補強部材の上端部は、前記第1補強部材における前記一端部と前記他端部との間の中間部に延在し、貫通孔を有し、当該貫通孔の周縁部が前記第1補強部材と溶接で固定される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両幅方向の曲げ剛性の低下を抑えつつ、補強部材の応力集中を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施の形態に係る車両用車体構造の一例を示す斜視図
図2図1のA−A線断面図
図3】クロスメンバの一例を示す斜視図
図4】補強部材の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本開示の一実施の形態に係る車両用車体構造100について図1を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施の形態に係る車両用車体構造100の一例を示す図である。なお、図1には、X軸、Y軸及びZ軸が描かれている。以下の説明では、図1におけるX方向を車両幅方向といい、「+X方向」を「車両幅方向外側」、「−X方向」を「車両幅方向内側」という。また、図1におけるY方向を車両前後方向といい、「+Y方向」を「車両前側」、「−Y方向」を「車両後側」という。さらに、図1においてZ方向を車両上下方向といい、「+Z方向」を「車両上側」又は「上方向」、「−Z方向」を「車両下側」又は「下方向」という。
【0013】
図1は、本開示の一実施の形態に係る車両用車体構造100の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、車両用車体構造100は、サイドレール1と、補強用レール2と、クロスメンバ3と、補強部材4Aとを備えている。
【0015】
サイドレール1は、図1に示すように、車両前後方向(Y方向)に延在している。サイドレール1は、上壁部12、立壁部14および下壁部16を有する断面C字形の部材である。一対のサイドレール1は、車両幅方向(X方向)で互いに離間して対向するように配置されている。
【0016】
図2は、図1のA−A線断面図である。
補強用レール2は、サイドレール1の車両幅方向内側(−X方向)に配置される。補強用レール2は、サイドレール1の立壁部14の下端部14aおよび下壁部16に沿うように設けられている。
【0017】
クロスメンバ3は、車両幅方向(X方向)に延在している。クロスメンバ3の車両幅方向における外側端部32は、サイドレール1の立壁部14の上端部14bにボルト又はリベットにより締結されている(図2参照)。
【0018】
図1に示すように、クロスメンバ3の車両前後方向(Y方向)における中央部33には、両幅方向に延在するリブ部35が設けられている。クロスメンバ3は、リブ部35が設けられる中央部33をその車両前側(+Y方向)および車両後側(−Y方向)の側縁部37より高くすることにより、ハット型の断面形状を有している。
【0019】
図3は、クロスメンバ3の一例を示す斜視図である。
クロスメンバ3は、図3に示すように、アッパメンバ34およびロアメンバ36を有している。アッパメンバ34およびロアメンバ36は、車両上下方向(Z方向)から重ね合わされて互いにボルト又はリベットにより締結されている。
【0020】
次に、補強部材4Aについて図1図2及び図4を参照して説明する。
図4は、補強部材4Aの一例を示す斜視図である。
補強部材4Aは、第1補強部材4と第2補強部材5とを備えている。
【0021】
第1補強部材4は、図1に示すように、クロスメンバ3の下方向(−Z方向)に配置されている。図2に示すように、第1補強部材4の一端部42はクロスメンバ3に連結されている。第1補強部材4の他端部44はサイドレール1に連結されている。具体的に、第1補強部材4の一端部42は、クロスメンバ3の車両幅方向における中間部38にボルト又はリベットにより締結されている(図2参照)。
【0022】
図2に示すように、第1補強部材4の他端部44は、サイドレール1の立壁部14の下端部14aに補強用レール2を介してボルト又はリベットにより締結されている。第1補強部材4の中間部46は、一端部42から他端部44に向かって、車両幅方向外側(+X方向)かつ下方向(−Z方向)へ延在している。第1補強部材4、サイドレール1及びクロスメンバ3により、閉じられた中空の横断面形状が形成されている。
【0023】
図2に示すように、第2補強部材5は、第1補強部材4の車両幅方向内側(−X方向)に配置されている。第2補強部材5は、第1補強部材4の他端部44に沿って固定されている。ここで、「沿って」とは、「貼り付けられるように」また「隙間なく密着するように」を意味する。第2補強部材5を第1補強部材4の他端部44に沿って固定することにより、サイドレール1から第1補強部材4の他端部44に車両幅方向の曲げ荷重がかかる場合に、第2補強部材5により第1補強部材4の他端部44の変形を抑えることができる。第2補強部材5の下端部51は、第1補強部材4の他端部44と共に、ボルト又はリベットによりサイドレール1の立壁部14の下端部14aに締結されている。第2補強部材5における第1補強部材4と共に固定される固定部60を、図4にボルト又はリベットの挿通孔として示す。
【0024】
図4に示すように、第2補強部材5の車両前後方向における前側端縁55aから固定部60までの距離Laは、車両前後方向における後側端縁55bから固定部60までの距離Lbより長くなるような位置に設けられている(La>Lb)。
【0025】
図2および図4に示すように、第2補強部材5の上端部52は、第1補強部材4における一端部42と他端部44との間の中間部46に延在している。図4に示すように、第2補強部材5の上端部52における車両前側位置および車両後側位置には、貫通孔54がそれぞれ設けられている。貫通孔54は車両前後方向(Y方向)を長手方向とする長孔である。貫通孔54の周縁部は、第1補強部材4に溶接されている。溶接部を、図2に黒により塗り潰された部分で示す。
【0026】
図4に示すように、第2補強部材5の上端縁56には車両前後方向の口幅が手前側から奥側に向かって狭くなる切欠部58が設けられている。切欠部58は、具体的に、上端縁56を斜め下方向へ切り欠いたV字状の凹部である。
【0027】
図4に示すように、第2補強部材5の車両前後方向(Y方向)における両側端部55は、第1補強部材4に沿うように設けられている。第2補強部材5の下端部51と上端部52との間の中間部57における両側端部55は、隆起部やリブ部を有してなく、第1補強部材4に沿っている。つまり、第2補強部材5の中間部57は、第1補強部材4の中間部46に対して全体的に隙間なく密着している。
【0028】
図4に示すように、第1補強部材4の一端部42および中間部46の一部には補強用リブ部48が設けられている。補強用リブ部48は、車両前後方向における中央部を両端部より車両下側(−Z方向)に突出させたものである。
【0029】
<本実施の形態の効果>
以上のように、本実施の形態に係る車両用車体構造100によれば、第1補強部材4はクロスメンバ3の下方向に配置され、サイドレール1とクロスメンバ3とを連結している。第2補強部材5は、第1補強部材4の他端部44に貼り付けられるように固定されている。これにより、補強部材4Aにおける車両幅方向の曲げ剛性の低下を抑えることができる。
【0030】
また、第2補強部材5の上端縁56には車両前後方向の口幅が手前側から奥側に向かって狭くなる切欠部58が設けられている。これにより、補強部材4Aにおける水平断面形状が上端縁56から下方向に徐々に変化するため、補強部材4Aにおける応力集中を回避することができる。
【0031】
また、第2補強部材5の車両前後方向における両側端部55は、第1補強部材4に沿うように設けられる。これにより、サイドレール1に横曲げ荷重が作用する時の曲げ応力を、第2補強部材5から第1補強部材4側へ分散させることができるため、この点からも、補強部材4Aにおける応力集中を回避することができる。
【0032】
また、第2補強部材5の上端部52は第1補強部材4の中間部46に延在している。第2補強部材5の上端部52における車両前側位置および車両後側位置には、貫通孔54がそれぞれ設けられている。貫通孔54の周縁部は、第1補強部材4と溶接される。これにより、第1補強部材4との溶接を前側端縁55a、後側端縁55bでなく、貫通孔54の周縁部のみで行うため、補強部材4Aにおける応力集中を回避することができる。
【0033】
また、第2補強部材5の車両前後方向における前側端縁55aから固定部60までの距離Laは、車両前後方向における後側端縁55bから固定部60までの距離Lbより長くされている。これにより、サイドレール1に曲げ荷重が作用する時に第2補強部材5の前側端縁55aにかかる曲げ応力が後側端縁55bにかかる曲げ応力より大きな場合であっても、第2補強部材5が大きな曲げ応力に十分に耐えることができる。この点からも、補強部材4Aにおける車両幅方向の曲げ剛性の低下を抑えることができる。
【0034】
なお、上記車両用車体構造では、第2補強部材5の前側端縁55aから固定部60までの距離Laを、第2補強部材5の後側端縁55bから固定部60までの距離Lbより長くなるようにしたが、第2補強部材5の後側縁55bにかかる曲げ応力が前側縁55aにかかる曲げ応力より大きな場合には、第2補強部材5の後側端縁55bから固定部60までの距離Lbを、第2補強部材5の前側端縁55aから固定部60までの距離Laより長くすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示の車両用車体構造は、車両幅方向の曲げ剛性の低下を抑えつつ、応力集中を回避することが要求される車体下部構造として有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 サイドレール
2 補強用レール
3 クロスメンバ
4A 補強部材
4 第1補強部材
5 第2補強部材
12 上壁部
14 立壁部
14a 下端部
14b 上端部
16 下壁部
32 外側端部
33 中央部
34 アッパメンバ
35 リブ部
36 ロアメンバ
37 側縁部
38 中間部
42 一端部
44 他端部
46 中間部
48 補強用リブ部
51 下端部
52 上端部
54 貫通孔
55 側端部
55a 前側端縁
55b 後側端縁
56 上端縁
57 中間部
58 切欠部
60 固定部
100 車両用車体構造
図1
図2
図3
図4