(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
サンプルパッド、コンジュゲートパッド、メンブレン、吸収パッドが順に連接されてなるイムノクロマト試験片において、前記メンブレンよりも上流側に夾雑物質の除去材料を含み、前記夾雑物質はビリルビンであり、前記除去材料は活性炭素繊維である、ことを特徴とするイムノクロマト試験片。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場ではPOCTという言葉が注目を集めている。POCTとはPoint Of Care Testingの略であり、医療従事者が被験者の傍らで行う臨床検査のことをいう。POCTは大規模病院の中央検査室等で行う臨床検査とは異なり、その場で瞬時に検査結果が得られることから、糖尿病診断においてもPOCTが広まりつつある。
【0003】
前記POCTにおいて、イムノクロマト法を利用した技術が提案されている。イムノクロマト法とは、毛細管現象を利用した免疫測定法であり、イムノクロマト法を利用した妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬などが世界的に普及している。従来のイムノクロマト法は目視判定(定性評価)が一般的であったが、近年、クロマトリーダー等の分析装置を利用し、検体中に含まれる物質の濃度を定量化する技術が開発されつつある。
【0004】
しかし、生体試料中には、ビリルビンやアスコルビン酸等の還元物質が存在し、特にビリルビンや乳ビの吸収波長はヘモグロビンの極大吸収波長と重なるため、これらの物質の存在により、ヘモグロビンおよび糖化ヘモグロビンの測定値は大きく影響を受け、測定値に誤差を生じることがあった。
【0005】
生体試料中のヘモグロビン濃度を吸光光度法により定量するためには、ヘモグロビンの極大吸収波長領域での吸光度を測定するのが好ましいが、生体試料中に混在するビリルビンや乳ビ等の夾雑物質の吸収波長と重なるため、極大吸収波長領域の1波長測光を用いて定量することは難しい。そのため従来、夾雑物質の影響が残る主波長領域の吸光度と夾雑物質の影響が少ない副波長領域の吸光度を測定し、夾雑物質に由来する吸光度を差し引く2波長測光により、測定対象物質の濃度を算出せざるを得なかった(非特許文献1)。
【0006】
また、ビリルビンの影響を回避する方法として、両性界面活性剤を測定試薬に添加する方法が知られている。例えば、特許文献1には、ビリルビンの影響を回避する目的で第1試薬に両性界面活性剤を添加することが記載されている。さらに、特許文献2には、酵素反応により生成される過酸化水素をペルオキシターゼ及び被酸化性発色剤で検出する生体成分の測定法において、第一試薬又は第一試薬と第二試薬両方に、両性界面活性剤とフェロシアン化合物を存在させる生体成分の測定方法が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、イムノクロマト試験片の形態は特に限定されない。例えば、イムノクロマト試験片の生体試料導入部を上流側として、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、メンブレン、吸収パッドの順で連接されたイムノクロマト試験片が挙げられる。
図1に、本発明のイムノクロマト試験片の一例を示す。1は、夾雑物質の除去材料、2は、サンプルパッド、3は、コンジュゲートパッド、4は、メンブレン、5は、吸収パッド、6は、前記1〜5を連接するための粘着シート(バッキングシート)である。
図1に示されるように、各部材1〜5の端部の一部が互いに重なり合うように連接されているのが好ましい。
【0015】
図1において、夾雑物質の除去材料1は、サンプルパッド2の上流側に配置する態様を示しているが、
図2に示されるように夾雑物質の除去材料1がサンプルパッド2の上面の一部または全部(図示せず)を覆うように配置された態様も本発明の範囲内である。また、
図3に示されるように夾雑物質の除去材料1がサンプルパッド2の下面に接するように配置された態様や
図4に示されるように夾雑物質除去材料1とサンプルパッド2とが渾然一体となった態様も本発明の範囲内である。また、
図5に示されるように、夾雑物質の除去材料1がサンプルパッド2を代替する態様も本発明に含まれる。また、夾雑物質の除去材料1がサンプルパッド2の下流側であってコンジュゲートパッド3の上流側、すなわちサンプルパッド2とコンジュゲートパッド3の間に配置された態様(
図6)や夾雑物質の除去材料1がコンジュゲートパッド3の下流側であってメンブレン4の上流側、すなわちコンジュゲートパッド3とメンブレン4の間に配置された態様(
図7)も本発明の範囲内である。さらに、メンブレン4の上流側に夾雑物質の除去材料1が随所に分散された状態で配置された態様(図示せず)も排除されない。
【0016】
本発明において、夾雑物質の除去材料は、繊維、織布、不織布、粒子および粉末からなる群から選ばれる1以上であることが好ましい。織布や不織布の場合は、
図1〜3および
図5の態様で用いることが可能であり、粒子または粉末であれば、
図4の態様で用いることや成形して
図1〜3および5の態様で用いることが可能である。
【0017】
本発明において、夾雑物質の除去材料は、活性炭、活性炭素繊維(繊維状活性炭)、酸化チタン、ジビニルベンゼン/グリシジルメタクリレート共重合体および疎水性シリカからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。ここで、酸化チタンおよび疎水性シリカは粒子状または粉末状のものが入手でき、それ以外は繊維、不織布、粒子または粉末のいずれも入手および調製可能である。これらの中で、活性炭または活性炭素繊維(以下、単に活性炭と称することがある)が入手のしやすさやコストの面より好ましい。また、これらの中でも水処理用のものがより好ましい。
【0018】
前記活性炭は、その原料(前駆体)は特に限定されるものではなく、例えばフェノール、セルロース、レーヨン、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、アラミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリビニルアルコール、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどを挙げることができる。これらの材料を用いて、繊維、織布、不織布、粒子または粉末に成形した後、炭化、賦活化、必要により精製することで製造することができる。
【0019】
本発明において、夾雑物質の除去材料は、多孔質体を用いる場合、その全細孔容積は0.25〜1.00cc/gの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3〜0.95cc/g、さらに好ましくは0.40〜0.90cc/gである。全細孔容積が小さすぎると、生体試料中の夾雑物質を十分に除去できないことがあり、大きすぎると、単繊維の強度が著しく低下し、形態を保てないことがある。なお、全細孔容積は、例えば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。
【0020】
本発明において、夾雑物質の除去材料は、その比表面積は100〜2500m
2/gの範囲内であることが好ましい。より好ましくは500〜2000m
2/g、さらに好ましくは900〜2000m
2/gである。比表面積が小さすぎると、生体試料中の夾雑物質を十分に除去できないことがあるとか、イムノクロマト試験片を必要以上に大きくする必要があり、また、比表面積が大きすぎると、単繊維の強度が著しく低下し、形態を保てないことがある。比表面積とは、液体窒素温度での窒素ガス吸着等温線によるBET法により求められる比表面積を意味し、例えば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。
【0021】
本発明者の検討によれば、全細孔容積が0.42cc/g、比表面積が973m
2/gの活性炭素繊維を用いたビリルビンの除去テストにおいて、50mgの活性炭素繊維あたり凡そ2mgのビリルビンを除去できることがわかった。
【0022】
本発明において、夾雑物質の除去材料として多孔質体を用いる場合、その平均細孔直径は、10〜35Åであることが好ましい。より好ましくは10〜30Å、さらに好ましくは10〜25Åである。平均細孔直径が小さすぎると、夾雑物質が細孔(メソポア、マイクロポア)に十分入り込まず、所期の除去性を発揮することができない。一方、平均細孔直径が大きすぎて問題となることは少ないが、概ね35Å程度が上限である。
【0023】
本発明において、夾雑物質の除去材料が繊維形状の場合は、単繊維径が5〜30μmであることが好ましい。単繊維径が小さすぎると、夾雑物質を除去するための有効細孔(メソポア、マイクロポア)を十分確保できないことがある。一方、単繊維径が大きすぎると、コンパクト性を損なうことがある。また、夾雑物質の除去材料が粒子状または粉末状である場合は、平均粒子径が1nm〜1mmであることが好ましい。平均粒子径が小さすぎると、夾雑物質を除去するための有効細孔(メソポア、マイクロポア)を十分確保できないことがある。一方、平均粒子径が大きすぎると、コンパクト性を損なうことがある。
【0024】
本発明において、夾雑物質は、主にビリルビン、乳ビを対象としている。ビリルビンは、血中や尿中に存在する黄色色調を呈する物質であり、およそ波長350〜600nmに吸収を有する。一方、乳ビは、食事として摂取される脂肪があまり分解されず血液中に残ったものであり、生体試料を白濁させる原因となる。
【0025】
本発明において、サンプルパッドは、生体試料を導入する部位であり、パッドに成型された状態で液体の生体試料を吸収し、前記生体試料が毛細管現象により展開できる材料及び形態であれば制限されない。例えば、ガラス繊維、アクリル繊維、セルロース製の濾紙や不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体などの多孔質体が挙げられる。
【0026】
本発明において、コンジュゲートパッドは、生体試料中の分析対象物質と特異的に反応する検出試薬を含浸させて乾燥させたものである。コンジュゲートパッドは、生体試料がコンジュゲートパッドを通過する際に、検出試薬と前記分析対象物質との複合体を形成させる機能を有するものであればよく、例えばガラス繊維、セルロース製の濾紙、ポリエステル、アクリロニトリルコポリマーまたはレーヨンなどの不織布が挙げられる。
【0027】
本発明において、メンブレンは、前記分析対象物質に対する抗体がスポット状またはライン状に固定化されたテストライン、および前記分析対象物質に対する抗体等がスポット状またはライン状に固定化されたコントロールラインを有する。このようなメンブレンとしては、セルロース、セルロース誘導体、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン等が挙げられる。これらの材料で構成された膜、布帛、繊維状又は不織布状マトリックス等が好適である。
【0028】
本発明において、吸収パッドは、生体試料を速やかに吸収、保持できるものであればよく、ガラス繊維、アクリル繊維、セルロース製の濾紙や不織布、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはエチレン・酢酸ビニル共重合体などの多孔質体が挙げられる。
【0029】
本発明において、前記した材料を用いて構成されたイムノクロマト試験片がヘモグロビンは除去しないが、ビリルビンは除去するという選択性が発揮される理由については、実は明らかでない。しかし、後述するようにヘモグロビンを溶解した溶液を夾雑物質の除去材料に接触させても処理前後で吸光度はほぼ低下しないが、ビリルビンを溶解した溶液を夾雑物質の除去材料に接触させると吸光度が大きく低下することからビリルビン等の夾雑物質が選択的に除去されることは明らかである。
【0030】
本発明のイムノクロマト試験片は、最上流部に生体試料を導入するための開口部、メンブレンのテストライン、コントロールラインおよびヘモグロビンを測定するための開口部を有するプラスチック製のハウジングケースに収容されたキットとして提供される。また、イムノクロマト試験片は、最上流部に生体試料を導入するための開口部、サンプルパッドの一部でヘモグロビンを測定するための開口部、メンブレンのテストライン、コントロールラインを測定するための開口部を有するプラスチック製のハウジングケースに収容されたキットとして提供される。また、これらのキットは、吸収パッド部にエア抜き用の開口部を有していてもよい。
【0031】
前記のようなキット構成とすることにより、メンブレン部でヘモグロビンを測定することが可能であるし、またサンプルパッド部でヘモグロビンを測定することも可能である。用途や目的に応じて、いずれのハウジングケースを採用することも可能である。なお、サンプルパッド部でヘモグロビンを測定する場合には、夾雑物質の除去材料よりも下流側にヘモグロビン測定用の開口部を設けることは言うまでもない。
【0032】
本発明は、吸光光度法を用いて生体試料中のヘモグロビン濃度を測定することを想定している。なお、ヘモグロビンA1c(%)は、ヘモグロビンA1c濃度/ヘモグロビン濃度×100にて算出するため、分母に誤差を含んでいると正確な数値を得ることが困難である。本発明を採用することにより、より精度の高い値を得ることができる。
【実施例】
【0033】
(全細孔容積の測定)
活性炭試料を約30mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。相対圧0.95での結果より全細孔容積(単位:cc/g)を算出した。
【0034】
(比表面積の測定)
活性炭試料を約30mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。相対圧0.02〜0.15の範囲での結果をもとに、BET法により重量あたりの比表面積(単位:m
2/g)を求めた。
【0035】
(平均細孔径の計算)
平均細孔径(単位:Å)は、前記全細孔容積(単位:cc/g)を前記比表面積(単位:m
2/g)で割り、40000倍することにより求めた。
【0036】
[実施例1]
夾雑物質の除去材料として、フェノール系繊維を炭化、賦活化して得られた比表面積973m
2/g、全細孔容積0.42cc/gの活性炭素繊維、サンプルパッド(商品名:ピオラスシートEVA(アイオン株式会社製))、コンジュゲートパッド(商品名:Glass Fiber Diagnostic Pad GFDX(Merk millipore社製))、メンブレン(商品名:Hi−Flow PlusタイプHF075(Merk millipore社製))、吸収パッド(商品名:Cellulose Fiber Sample Pads CFSP(Merk millipore社製))を用い、それぞれの端部が1mm程度重なるようにしてバッキングシート上に順に連接して
図1に示すような幅約3mm、長さ約60mmのイムノクロマト試験片1を作製した。使用した活性炭素繊維の重量は8mgであった。
【0037】
作製したイムノクロマト試験片1を用いて以下の実験を行った。すなわち、干渉チェックAプラスの溶血ヘモグロビンおよびビリルビンFを蒸留水でそれぞれ135mg/mL、2mg/mLになるように溶解した後、希釈液(1%Triton X−100、1%Tween−20、50mM PBS、pH7.1)で500倍希釈し試料溶液を得た。得られた試料溶液の150μLを前記試験片1の最上流部付近に滴下した。毛細管現象により試料溶液の先端が吸収パッドに到達したことを確認した後、メンブレン部に照射した波長420nmの反射吸光度を測定した。反射吸光度の測定は、イムノクロマトリーダー(C10060−10、浜松ホトニクス社製)を用いた。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
夾雑物質の除去材料として、フェノール系繊維を炭化、賦活化して得られた比表面積1962m
2/g、全細孔容積0.85cc/gの活性炭素繊維を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片2を作製した。使用した活性炭素繊維の重量は8mgであった。
【0039】
実施例1と同様にして、試料溶液を試験片2の最上流部付近に滴下し、メンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例3]
実施例2と同様の材料を用いて、
図3に示すようなイムノクロマト試験片3を作製した。使用した活性炭素繊維の重量は10mgであった。
【0041】
実施例1と同様にして、試料溶液を試験片3の最上流部付近に滴下し、メンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例4]
実施例2と同様の材料を用いて、
図5に示すようなイムノクロマト試験片4を作製した。使用した活性炭素繊維の重量は18mgであった。なお、本実施例においては、活性炭素繊維にてサンプルパッドを代用したため、実質サンプルパッドは用いなかった。
【0043】
実施例1と同様にして、試料溶液を試験片4の最上流部付近に滴下し、メンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例5]
夾雑物質の除去材料として、フェノール系繊維を炭化、賦活化して得られた比表面積1840m
2/g、全細孔容積0.71cc/gの活性炭素繊維を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片5を作製した。使用した活性炭素繊維の重量は8mgであった。
【0045】
実施例1と同様にして、試料溶液を試験片5の最上流部付近に滴下し、メンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例6]
夾雑物質の除去材料として、ピッチ系繊維を炭化、賦活化して得られた比表面積1677m
2/g、全細孔容積0.80cc/gの活性炭素繊維を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片6を作製した。使用した活性炭素繊維の重量は8mgであった。
【0047】
実施例1と同様にして、試料溶液を試験片6の最上流部付近に滴下し、メンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
夾雑物質の除去材料を用いない以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片7(
図8)を作製した。
【0049】
実施例1と同様にして、試料溶液を試験片7の最上流部付近に滴下し、メンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
[参考例1]
干渉チェックAプラスの溶血ヘモグロビンを蒸留水で135mg/mLになるように溶解した後、希釈液(1%Triton X−100、1%Tween−20、50mM PBS、pH7.1)で500倍希釈し試料溶液を得た。得られた試料溶液の150μLを前記試験片7の最上流部付近に滴下し、実施例1と同様にしてメンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
[参考例2]
参考例1と同様の試料溶液を作製し、試験片1の最上流部付近に滴下し、実施例1と同様にしてメンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
[参考例3]
干渉チェックAプラスのビリルビンFを蒸留水で2mg/mLになるように溶解した後、希釈液(1%Triton X−100、1%Tween−20、50mM PBS、pH7.1)で500倍希釈し試料溶液を得た。得られた試料溶液の150μLを試験片7の最上流部付近に滴下し、実施例1と同様にしてメンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
[参考例4]
参考例3と同様の試料溶液を作製し、試験片1の最上流部付近に滴下し、実施例1と同様にしてメンブレン部にて反射吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
参考例1、2の結果より、ヘモグロビンを溶解した試料溶液を夾雑物質の除去材料を設けたイムノクロマト試験片に滴下しても、吸光度の低下はみられない。一方、参考例3、4の結果より、ビリルビンを溶解した試料溶液を夾雑物質の除去材料を設けたイムノクロマト試験片に滴下すると、吸光度は大きく低下している。これは、本発明のイムノクロマト試験片は、ヘモグロビンは除去しないが、ビリルビンは除去されることを明瞭に表している。
【0056】
実施例1−6の結果は、比較例1に比較して波長420nmの吸光度が低下している。これは、参考例1−4の結果から明らかなように夾雑物質の除去材料に接触した試料溶液からビリルビンが除去されたことによる。ヘモグロビンA1c(%)は、ヘモグロビンA1c濃度/ヘモグロビン濃度×100で求められる糖尿病診断の指標であり、ヘモグロビン濃度の測定値に誤差が含まれると正確な診断ができない。本発明によれば、より正確なヘモグロビン濃度を測定することができることを示している。