特許第6874469号(P6874469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874469
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】回転圧入鋼管杭の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/56 20060101AFI20210510BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20210510BHJP
   E02D 7/22 20060101ALI20210510BHJP
   E02D 7/18 20060101ALI20210510BHJP
   E02D 7/28 20060101ALI20210510BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   E02D5/56
   E02D5/28
   E02D7/22
   E02D7/18
   E02D7/28
   E02D13/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-65404(P2017-65404)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-223104(P2017-223104A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-114832(P2016-114832)
(32)【優先日】2016年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】石濱 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】森安 俊介
(72)【発明者】
【氏名】日下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏征
(72)【発明者】
【氏名】妙中 真治
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−179728(JP,A)
【文献】 特開2009−209674(JP,A)
【文献】 特開2003−096773(JP,A)
【文献】 特開2011−157780(JP,A)
【文献】 特開2016−169591(JP,A)
【文献】 特開平09−302650(JP,A)
【文献】 特開2006−022501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/56
E02D 5/28
E02D 7/00 − 7/30
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管本体と、前記鋼管本体の先端部において管径方向の内側に向けて突出するとともに杭軸方向からみた前記鋼管本体の開口部分を縮小する閉塞板と、
を有する鋼管杭を地盤に回転圧入させる回転圧入鋼管杭の施工方法であって、
前記閉塞板は、杭軸方向からみて少なくとも全周の範囲に隙間なく延在して配置され、かつ延在方向に一体的に又は分割して形成され、前記延在方向の杭先端側の一端から杭頭側の他端に向かうに従い杭軸回りの一方向をなす第1方向に連続的に傾斜して形成されてなり、
前記鋼管杭の内側において前記閉塞板よりも下方に振動ロッドのロッド先端を位置させ、前記振動ロッドを振動させながら前記鋼管杭を前記第1方向に回転させて圧入する工程と、
前記振動ロッドの先端が位置する領域を変更する深度をなす予め設定されたロッド先端調整深度に前記鋼管杭が到達した後に、前記振動ロッドを振動させながら引き上げつつ、又は前記鋼管杭の内側から完全に引き上げてから前記鋼管杭を回転圧入する工程と、
前記鋼管杭が前記支持層に到達し、かつ前記振動ロッドが前記鋼管杭から引き抜かれた状態で前記鋼管杭を前記第1方向に対して反転する第2方向に回転させながら圧入して杭到達目標深度に到達させる工程と、
を有することを特徴とする回転圧入鋼管杭の施工方法。
【請求項2】
前記ロッド先端調整深度は、前記支持層の手前の位置であることを特徴とする請求項に記載の回転圧入鋼管杭の施工方法。
【請求項3】
分割された前記閉塞板は、周方向に隣り合う一方の閉塞板の杭頭側の端部が、他方の閉塞板の杭先端側の端部よりも杭頭側に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転圧入鋼管杭の施工方法。
【請求項4】
前記閉塞板は、
杭先端から杭頭に向かう方向で少なくとも管径の0.3倍〜2.0倍の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の回転圧入鋼管杭の施工方法。
【請求項5】
前記閉塞板によって形成される開口部分の内径は、前記鋼管本体の内径の0.1倍〜0.7倍の範囲であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の回転圧入鋼管杭の施工方法。
【請求項6】
前記閉塞板によって形成される前記開口部分は、杭先端から杭頭へ向うに従って漸次、小さくなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の回転圧入鋼管杭の施工方法。
【請求項7】
前記閉塞板は、一層以上の肉盛溶接により形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の回転圧入鋼管杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転圧入鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭の打設方法として、打撃やバイブロハンマにより地盤に鋼管杭を貫入させる方法があるが、騒音や振動が大きいことから市街地で適用しにくい欠点がある。そのため、低騒音で、かつ低振動で鋼管杭を打設する方法として、回転圧入工法が一般的に知られている。このような回転圧入工法では、低地盤振動・低騒音で鋼管杭を地盤に貫入することができ、市街地などでの施工条件に好適である。ところが、施工性と支持力性能については相反的な関係にあり、貫入抵抗が小さい場合には支持力は小さくなり杭本数を増加させることなどが必要となっていた。また、貫入抵抗が大きい場合には所定の到達目標深度まで貫入することができずに高止まりとなってしまい、より出力の大きな重機が必要となっていた。
【0003】
そこで、上述したような施工性と支持力性能とを両立させる方法として、例えば特許文献1に示されるように、杭先端部に取り付けた螺旋羽根により推進力を得て施工性を向上させるとともに、鋼管内に設置した閉塞促進用の突起により閉塞効果を高めて支持力を得ることを可能とした鋼管杭を用いた施工方法が知られている。この場合には、少ない根入れにより従来と同等の支持力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−278306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような閉塞促進用の突起を備えた回転圧入鋼管杭の施工方法では、例えば軟弱な中間層が厚い地盤の場合において、支持層に達する前に多量の土砂が管内に流入すると、突起によって閉塞するおそれがある。その場合、杭先端面は閉端状態になって断面積が増えるので、施工性が低下する。
そのため、閉塞を促進することはできても、その閉塞状態を施工条件に対応させて制御することができないことから、例えば粘性を有する地盤では適用が困難になる等、適用範囲が限定されるという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、地盤等の施工条件に合わせて鋼管杭における閉塞状態を制御することができ、しかも施工性と支持力性能との向上をバランスよく達成できる回転圧入鋼管杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法は、鋼管本体と、前記鋼管本体の先端部において管径方向の内側に向けて突出するとともに杭軸方向からみた前記鋼管本体の開口部分を縮小する閉塞板と、を有する鋼管杭を地盤に回転圧入させる回転圧入鋼管杭の施工方法であって、前記閉塞板は、杭軸方向からみて少なくとも全周の範囲に隙間なく延在して配置され、かつ延在方向に一体的に又は分割して形成され、前記延在方向の杭先端側の一端から杭頭側の他端に向かうに従い杭軸回りの一方向をなす第1方向に連続的に傾斜して形成されてなり、前記鋼管杭の内側において前記閉塞板よりも下方に振動ロッドのロッド先端を位置させ、前記振動ロッドを振動させながら前記鋼管杭を前記第1方向に回転させて圧入する工程と、前記振動ロッドの先端が位置する領域を変更する深度をなす予め設定されたロッド先端調整深度に前記鋼管杭が到達した後に、前記振動ロッドを振動させながら引き上げつつ、又は前記鋼管杭の内側から完全に引き上げてから前記鋼管杭を回転圧入する工程と、前記鋼管杭が前記支持層に到達し、かつ前記振動ロッドが前記鋼管杭から引き抜かれた状態で前記鋼管杭を前記第1方向に対して反転する第2方向に回転させながら圧入して杭到達目標深度に到達させる工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明では、延在方向の杭先端側の一端から杭頭側の他端に向かうに従い第1方向(例えば正転方向)に連続的に傾斜する閉塞板を有する鋼管杭を、閉塞板の傾斜方向と同じ向きとなる正転方向に回転させて圧入することで、鋼管本体内に進入した土砂が傾斜した閉塞板に沿って圧力の小さな上方に移動していくことになり、鋼管杭の閉塞を抑制することができる。そのため、管内に流入する土砂による閉塞を抑制し、鋼管杭の貫入抵抗を低減させることができ、圧入速度を増大させることが可能となるので、施工性の向上を図ることができる。
さらに、鋼管杭が支持層に到達した直後あるいは到達して所定の深度まで第1方向に回転させながら支持層に貫入させた後に、鋼管杭を閉塞板の傾斜方向と逆向きとなる第2方向(反転方向)に回転させながら圧入して杭到達目標深度に到達させることで、閉塞板によってその閉塞板よりも下方領域の土砂が押えられて圧密された状態となり、鋼管杭内の土砂の強度を増加させるとともに、鋼管杭よりも下方の領域の地盤の強度も増加することで鋼管杭が発揮する支持力を高めることができる。つまり、閉塞板よりも下方領域の鋼管杭内および鋼管杭よりも下方の土砂が圧密された密領域となり、鋼管杭が杭到達目標深度に達した時点で鋼管杭の下端から所定の高さの領域および鋼管杭の下方の土砂を密実化させることができる。
このように本発明では、鋼管杭を反転方向に回転させるタイミングを調整することにより、鋼管杭の閉塞状態を制御することができ、条件に応じた施工を行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法では、閉塞板が延在方向に沿って分割されている場合において、材料の歩留まりを改善することができ、鋼管本体の内周面に閉塞板を溶接する作業を容易に行うことができる。
【0011】
この場合には、鋼管杭における閉塞板よりも下方の領域に振動ロッドのロッド先端を配置して、その下方の領域の土砂をロッド先端で振動させることで緩めながら鋼管杭を第1方向(例えば正転方向)に回転させながら圧入することができる。これにより、鋼管杭の内部に流入する土砂の貫入抵抗をより低減させて鋼管杭の閉塞をより促進させることが可能となる。例えば鋼管杭がロッド先端調整深度に到達したときには、振動ロッドを振動させながら閉塞板よりも上方に引き上げつつ、あるいは振動ロッドを鋼管杭から完全に引き上げ、さらにその後に鋼管杭を第2方向(反転方向)に回転させながら圧入することで、閉塞板よりも下方の土砂が反転する閉塞板によって積極的に押え付けられてその圧密度が増大されることから、鋼管杭内の土砂とその下方の地盤の強度が増加することで発揮される支持力を高めることができる。
なお、振動ロッドを鋼管杭から完全に引き上げる場合は、振動ロッドは振動させなくてもよい。
このように本発明では、鋼管杭の回転圧入時に振動ロッドを補助的に用い、閉塞板に対するロッド先端の位置を変えることで、鋼管杭の閉塞状態を制御することができ、条件に応じた施工を行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法では、閉塞板の下方領域の土砂が振動ロッドの振動により緩んだ状態になり、鋼管杭の閉塞が抑制されるので、鋼管杭の圧入力を小さく抑えることができ、回転圧入を行うための装置の小型化が可能となり、施工コストの低減を図ることができる。また、装置の小型化によって施工スペースを縮減することができ、狭隘地での施工も可能になる。
さらに、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法では、鋼管杭の回転圧入に加えて振動ロッドによる振動を付与する構成となり、振動騒音源が増える構成となるが、振動ロッドが鋼管杭内に位置して鋼管杭の内部の地盤のみに振動を与える構成となるため、鋼管杭の外部の地盤へ伝達する振動や騒音が小さくなる。したがって、本発明の施工方法では、従来の回転圧入工法における低地盤振動・低騒音の効果を維持しつつ、貫入抵抗を小さくして施工性を向上させることができ、従来と同等の支持力を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法は、前記ロッド最深目標深度は、前記支持層の手前の位置であることが好ましい。
【0014】
この場合には、支持層よりも浅い位置で振動ロッドが引き上げられるので、支持層で鋼管内に進入した土砂を緩めずに済むことから、支持層の開始深度あるいは所定の深度から鋼管杭を閉塞板の傾斜方向と逆向きとなる第2方向(反転方向)に回転させながら圧入することによる支持力を高めることができる。例えば、支持層において鋼管杭が杭到達目標深度に到達する前の最終的な段階で鋼管杭を反転方向に逆回転させることで、貫入抵抗の増大を抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法は、分割された前記閉塞板は、周方向に隣り合う一方の閉塞板の杭頭側の端部が、他方の閉塞板の杭先端側の端部よりも杭頭側に位置していることが好ましい。
【0016】
この場合、鋼管本体の内周面の杭軸方向における閉塞板の取付け範囲を小さくすることができるため、製造時の加工性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法は、前記閉塞板は、杭先端から杭頭に向かう方向で少なくとも管径の0.3倍〜2.0倍の範囲に設けられていることが好ましい。
【0018】
この場合、杭先端から上方に向けて杭径の0.3倍〜2.0倍の範囲において管内閉塞が卓越することから、鋼管杭を第1方向に回転させて圧入する際に、閉塞板の下方の領域の土砂を効果的に閉塞させることができる。
【0019】
また、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法は、前記閉塞板によって形成される開口部分の内径は、前記鋼管本体の内径の0.1倍〜0.7倍の範囲であることが好ましい。
【0020】
このような構成とすることで、閉塞板によって形成される開口部分内に例えば振動ロッドを挿通させることが可能となり、かつ、鋼管内径が600mmを超える大径杭がほぼ閉塞するために必要な50%の閉塞率を予め確保することができる。
つまり、閉塞板によって形成される開口部分の内径が鋼管本体の内径の0.1倍よりも小さい場合には、その開口部分内に振動ロッドを通過させることが困難になる。また、特に鋼管内径が600mmを超える大径鋼管の場合の閉塞率が50%程度まで低下することから、大径杭を用いる場合には前記開口部分の内径が鋼管本体の内径の0.7倍以内とすることで予め50%程度の閉塞状態を確保する必要がある。
【0021】
また、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法は、前記閉塞板によって形成される前記開口部分は、杭先端から杭頭へ向うに従って漸次、小さくなることが好ましい。
【0022】
この場合には、閉塞板の杭先端側が杭頭側よりも開口部分が大きくなるのでその杭先端側における土砂の通過量が多く、杭頭側ほど開口部分が小さいので土砂の通過量が少なくなる。そのため、杭頭側の閉塞板より下方の領域において、閉塞板同士の間の領域にも土砂を確実に進入させることができ、かつこの土砂を密実化させることが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る回転圧入鋼管杭の施工方法は、前記閉塞板は、一層以上の肉盛溶接により形成されていることを特徴としてもよい。
【0024】
この場合には、鋼管本体の真円度に関わらず、溶接の調整で比較的簡易に閉塞板を製作することができ、鋼板を用いる際に必要であった鋼管円周に沿わせるための折り曲げ作業や溶接脚長の管理が不要になる利点がある。また、本発明の場合には、鋼管本体を製造した後工程により肉盛溶接を行うことができるので作業手間が少なくなり、閉塞板の突出長が短い場合にはとくに効率的である。
さらに、閉塞板を鋼管本体の軸方向に対して傾斜させて成形する場合には、鋼板等では3次元的に複雑な折り曲げ加工をする必要があるが、肉盛溶接では当て板の角度や形状を調整するだけで済み、効率的かつ容易に対応することができる。
さらにまた、溶接速度や層数を調整することで溶接の肉盛量を変化させることが可能であるため、管径方向の内側に向けて突出する長さを鋼管本体の円周方向で変化させることが容易になる利点がある。
【発明の効果】
【0025】
本発明の回転圧入鋼管杭の施工方法によれば、地盤等の施工条件に合わせて鋼管杭における閉塞状態を制御することができ、しかも施工性と支持力性能との向上をバランスよく達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態による鋼管杭の施工方法を示す一部破断した側面図である。
図2】鋼管杭の下部の構成を示す縦断面図である。
図3図2に示すA−A線断面図であって、鋼管杭の杭軸方向に直交する水平断面図である。
図4】(a)、(b)は、鋼管杭の施工手順を示す図である。
図5】(a)、(b)は、図4(b)に続く鋼管杭の施工手順を示す図である。
図6】第1変形例による閉塞板の構成を示す縦断面図であって、図2に対応する図である。
図7】(a)〜(c)は、第2変形例による閉塞板の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態による回転圧入鋼管杭の施工方法について、図面に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態による回転圧入鋼管杭の施工方法は、鋼管杭1(回転圧入鋼管杭)を回転圧入装置10を用いて圧入する施工において、この施工時に鋼管杭1内に振動ロッド2を挿入し、振動ロッド2を加振装置20によって振動させながら鋼管杭1を支持層G1に貫入するまで圧入する方法である。
ここで、図1の符号G0は地盤における軟弱層である中間層を示し、符号G1は中間層G0の下層に位置する支持層を示している。また、鋼管杭1及び振動ロッド2において、それぞれの下端を杭先端1a、ロッド先端2aという。
【0029】
回転圧入装置10は、鋼管杭1を外周側から把持するチャック部(不図示)を備え、このチャック部で把持した鋼管杭1を杭軸Oを中心にして回転させ、かつ下方に向けて押圧する機能を有している。
【0030】
加振装置20は、例えば鋼矢板の打設等に使用される周知のバイブロハンマ等を採用することができ、図示しないクレーンによって吊り下げられるとともに、振動ロッド2のロッド上端2bを把持して上下方向に振動可能となっている。振動ロッド2は、円錐形状をなすロッド先端2aを有し、例えば外径100mmの鋼製管状のものが使用され、鋼管杭1の圧入時において鋼管杭1の杭軸O方向からみて鋼管杭1の略中心部に配置されている。
【0031】
鋼管杭1は、例えば直径1000mmの鋼管(鋼管本体1A)からなり、溶接により接合され同軸線上に複数本が継ぎ足された状態で地中に打設される。
図2に示すように、鋼管杭1には、杭先端1aに管径方向の内側に向けて突出するとともに、杭軸O方向からみた鋼管本体1Aの開口部分を縮小する閉塞板11が設けられている。
【0032】
閉塞板11は、図3に示すように杭軸O方向からみて少なくとも全周の範囲に延在して配置され、かつ延在方向に一体的又は分割して形成されている。ここで、図2では、閉塞板11は、2分割されたもの(第1分割閉塞板11A、第2分割閉塞板11B)を延在方向に連続するように例えば溶接することにより接続させて形成されている。さらに、閉塞板11は、全体として延在方向の杭先端1a側の一端(下端11a)から杭頭側の他端(上端11b)に向かうに従い杭軸O回りに回転する方向をなす正転方向E1(第1方向)に連続的に傾斜している。なお、正転方向E1と反対に回転する方向を反転方向E2(第2方向)という。
【0033】
また、本実施の形態の閉塞板11は、管径方向の内側の内周端11cを杭頭側に向けて所定の傾斜角度で傾斜させており、貫入抵抗を小さくできる構成となっている。
【0034】
閉塞板11は、図2に示すように、上限値は鋼管杭1の杭先端1aから鋼管杭1の外径寸法D(管径)の0.3倍〜2.0倍(0.3〜2.0D)の範囲Lに設けられている。
また、閉塞板11によって形成される開口部分の内径は、鋼管本体1Aの内径の0.1倍〜0.7倍の範囲である。
【0035】
閉塞板11の張出し長rは、延在方向に沿って一定となるように設定されている。この閉塞板11の張出し長rは、振動ロッド2が挿通可能な大きさの開口部(開口部分に相当)を閉塞板11によって確保できる寸法に設定されている。
【0036】
次に、上述した鋼管杭1の施工方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施の形態による施工方法では、図1に示すように、先ず鋼管杭1の内側において閉塞板11よりも下方に振動ロッド2のロッド先端2aを位置させ、振動ロッド2を振動させながら鋼管杭1を正転方向E1に回転させて圧入する。
【0037】
具体的には、回転圧入装置10を鋼管杭1の打設位置となる地盤上に設置し、最初に打設する鋼管杭1をセットする。続いて、振動ロッド2を装着した加振装置20をクレーンによって吊り下げ、振動ロッド2のロッド先端2aが鋼管杭1の杭先端1aに対して所定の位置になるように鋼管杭1の内側に挿入することにより圧入準備が完了となる。そして、杭先端1aと閉塞板11との間の第1領域T1にロッド先端2aを位置させる。
【0038】
第1工程では、図4(a)に示すように、鋼管杭1を正転方向E1により回転させて圧入し、同時に鋼管杭1内で振動ロッド2に振動を付与して地盤に貫入させる。このとき、鋼管杭1内に取り込まれる土砂(符号Ga)は、振動ロッド2の振動により全体的に乱されて緩んだ状態となるため、鋼管杭1の貫入抵抗は小さくなる。鋼管杭1は正転方向E1に回転されるので、鋼管内の第1領域T1で緩んだ土砂が傾斜した閉塞板11に沿って圧力の小さな上方に移動していく。
【0039】
ここで、杭到達目標深度P1は、支持層G1の深度や土質条件によって設定され、支持層G1において鋼管杭1の杭先端1aを到達させる深度を意味する。ロッド最深目標深度P2は、鋼管杭1の回転圧入中に振動ロッド2が到達する最も深い深度を意味する。また、ロッド先端調整深度P3は、振動ロッド2のロッド先端2aが位置する領域を変更する深度をなす予め設定された深度を意味する。なお、本実施の形態では、ロッド最深目標深度P2とロッド先端調整深度P3は、同じ深度となっている。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、第2工程において、杭先端1aが杭到達目標深度P1(図5(b)参照)に近づいたとき、例えば、その距離(杭到達目標深度P1から杭先端1aまでの距離L1)として杭先端1aから鋼管杭1の外径寸法Dの2倍(2D)だけ離れた距離(杭径が1mであれば2mの距離)になったときに、図5(a)に示すように振動ロッド2を振動させながら引き上げつつ、鋼管杭1を正転方向E1に回転させてさらに圧入する。このとき、例えば、鋼管杭1の杭先端1aが支持層G1に到達するまでは、引き上げた振動ロッド2のロッド先端2aを閉塞板11の直上の領域(第2領域T2)に位置させて、鋼管杭1を支持層G1に到達させる。
この場合、ロッド最深目標深度P2は、前記距離L1に杭先端1aと閉塞板11の平均位置との間隔の約半分の長さを加えた距離だけ杭到達目標深度P1から上方に位置する。
【0041】
続いて、第3工程では、図5(b)に示すように、鋼管杭1が支持層G1に到達した後、振動ロッド2を鋼管杭1の内側から引き抜く。その後、鋼管杭1を反転方向E2に回転させながら圧入して杭到達目標深度P1に到達させる。このときの支持層G1における打止め時には、反転方向E2に回転させながら強制的に鋼管杭1を押し下げていくことで、閉塞板11が土砂を押し下げる方向に作用し、第1領域T1の土砂が圧縮されて密実化されて強度が高まることになる。ここで、図5(b)において、ドットの濃い部分が土砂密度の高い密領域Maを示し、ドットの薄い部分が緩んだ状態の土砂Gaを示している。
また、同時に鋼管杭1の杭先端1aにも、地盤周辺の地盤にも圧力がかかり地盤強度が増加する。
【0042】
これにより、1本の鋼管杭1の施工が完了となる。この施工完了後において、圧入した鋼管杭1の閉塞板11の下部の第1領域T1が密実化した密領域となり、閉塞板11よりも上の第2領域T2を含む領域は緩んだ土砂Gaとなる。
【0043】
また、本実施の形態では、最終段階で杭到達目標深度P1に到達する前に振動ロッド2を完全に引き抜き、回転圧入単独で一定深度貫入するため、上記の緩い土砂の領域に新たに土砂を取り込み密な状態にし、閉塞させることができ、より効果的な方法となる。
なお、鋼管杭1の閉塞効率(閉塞のし易さ)は杭径に依存することが知られており、ここでは閉塞板11の開口部が杭径に相当するため、閉塞板11の無い通常の鋼管杭を閉塞させる場合よりも効率的に閉塞させることができる。
【0044】
また、通常の鋼管杭では鋼管杭の内周面と接触する土砂の摩擦力によって、管内閉塞が生じる。一方、本実施の形態の閉塞板11には支圧作用(土砂を深さ方向に押え付ける)も働くため、より強固な閉塞状態を形成できる。例えば、特開2004−278306号公報と同等の効果を得ることができる。
【0045】
なお、締め固めの施工管理方法としては、地盤の締め固めの分野で一般的に利用されている手法(例えば、非特許文献「土の締固め」、地盤工学・実務シリーズ30、公益社団法人地盤工学会)を用い、振動ロッド2の応答加速度を測定して、その周波数分布が所定の状態になったときに所定の締め固め強度となったものと判断する方法などを採用することができる。
【0046】
以上説明した鋼管杭1の施工方法によれば、図1に示すように、延在方向の杭先端1a側の下端11aから杭頭側の上端11bに向かうに従い正転方向E1に連続的に傾斜する閉塞板11を有する鋼管杭1を、閉塞板11の傾斜方向と同じ向きとなる正転方向E1に回転させて圧入することで、鋼管本体1A内に進入した土砂が傾斜した閉塞板11に沿って圧力の小さな上方に移動していくことになり、鋼管杭1の閉塞を抑制することができる。そのため、管内に流入する土砂による閉塞を抑制し、鋼管杭1の貫入抵抗を低減させることができ、圧入速度を増大させることが可能となるので、施工性の向上を図ることができる。
【0047】
さらに、図5(b)に示すように、鋼管杭1が支持層G1に到達した直後あるいは到達して所定の深度まで正転方向E1に回転させながら支持層G1に貫入させた後に、鋼管杭1を閉塞板11の傾斜方向と逆向きとなる反転方向E2に回転させながら圧入して杭到達目標深度P1に到達させることで、閉塞板11によってその閉塞板11よりも下方領域(第1領域T1)の土砂Gaが押えられて圧密された状態となり、鋼管杭1内の土砂の強度を増加させるとともに、鋼管杭1よりも下方の領域の地盤の強度も増加することで鋼管杭1が発揮する支持力を高めることができる。つまり、第1領域T1の鋼管杭1内および鋼管杭1よりも下方の土砂Gaが圧密された密領域Maとなり、鋼管杭1が杭到達目標深度P1に達した時点で鋼管杭1の杭先端1aから所定の高さの領域の土砂を密実化させることができる。
このように本実施の形態では、鋼管杭1を反転方向に回転させるタイミングを調整することにより、鋼管杭1の閉塞状態を制御することができ、条件に応じた施工を行うことができる。
【0048】
また、本実施の形態による鋼管杭1の施工方法では、閉塞板11が延在方向に沿って分割されている場合において、材料の歩留まりを改善することができ、鋼管本体1Aの内周面に閉塞板11を溶接する作業を容易に行うことができる。
【0049】
また、本実施の形態では、図4(a)、(b)に示すように、鋼管杭1における第1領域T1に振動ロッド2のロッド先端2aを配置して、その第1領域T1の土砂Gaをロッド先端2aで振動させることで緩めながら鋼管杭1を正転方向E1に回転させながら圧入することができる。これにより、鋼管杭1の内部に流入する土砂の貫入抵抗をより低減させて鋼管杭1の閉塞をより促進させることが可能となる。さらに、図5(a)に示すように、本実施の形態のように鋼管杭1がロッド先端調整深度P3(ロッド最深目標深度P2)に到達したときには、振動ロッド2を振動させながら閉塞板11よりも上方に引き上げつつ、あるいは振動ロッド2を鋼管杭1から完全に引き上げ、さらにその後に鋼管杭1を反転方向E2に回転させながら圧入することで、図5(b)に示すように閉塞板11よりも下方(第1領域T1)の土砂が反転する閉塞板11によって積極的に押え付けられてその圧密度が増大されることから、鋼管杭1内の土砂とその下方の地盤の強度が増加することで発揮される支持力を高めることができる。なお、振動ロッド2を鋼管杭1から完全に引き上げる場合は、振動ロッド2は振動させなくてもよい。
このように本実施の形態では、鋼管杭1の回転圧入時に振動ロッド2を補助的に用い、閉塞板11に対するロッド先端2aの位置を変えることで、鋼管杭1の閉塞状態を制御することができ、条件に応じた施工を行うことができる。
【0050】
また、本実施の形態では、第1領域T1の土砂Gaが振動ロッド2の振動により緩んだ状態になり、鋼管杭1の閉塞が抑制されるので、鋼管杭1の圧入力を小さく抑えることができ、回転圧入を行うための装置の小型化が可能となり、施工コストの低減を図ることができる。また、装置の小型化によって施工スペースを縮減することができ、狭隘地での施工も可能になる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、鋼管杭1の回転圧入に加えて振動ロッド2による振動を付与する構成となり、振動騒音源が増える構成となるが、振動ロッド2が鋼管本体1A内に位置して鋼管本体1Aの内部の地盤のみに振動を与える構成となるため、鋼管杭1の外部の地盤へ伝達する振動や騒音が小さくなる。したがって、従来の回転圧入工法における低地盤振動・低騒音の効果を維持しつつ、貫入抵抗を小さくして施工性を向上させることができ、従来と同等の支持力を得ることができる。
【0052】
また、本実施の形態では、ロッド最深目標深度P2が支持層G1の手前の位置とする方法であり、支持層G1よりも浅い位置で振動ロッド2が引き上げられるので、支持層G1で鋼管内に進入した土砂を緩めずに済むことから、支持層G1の開始深度あるいは所定の深度から鋼管杭1を閉塞板11の傾斜方向と逆向きとなる反転方向E2に回転させながら圧入することによる支持力を高めることができる。
例えば、支持層G1において鋼管杭1が杭到達目標深度P1に到達する前の最終的な段階で鋼管杭1を反転方向E2に逆回転させることで、貫入抵抗の増大を抑えることができる。
【0053】
また、本実施の形態の閉塞板11が杭先端1aから杭頭に向かう方向で少なくとも管径の0.3倍〜2.0倍の範囲に設けられており、杭先端1aから上方に向けて杭径の0.3倍〜2.0倍の範囲において管内閉塞が卓越することから、鋼管杭1を正転方向E1に回転させて圧入する際に、第1領域T1の土砂を効果的に閉塞させることができる。
【0054】
さらに、本実施の形態の閉塞板11によって形成される開口部分の内径が鋼管本体1Aの内径の0.1倍〜0.7倍の範囲であるので、閉塞板11によって形成される開口部内に振動ロッド2を挿通させることが可能となり、大径杭がほぼ閉塞するために必要な50%の閉塞率を確保することができる。
つまり、開口部分の内径が鋼管本体の内径の0.1倍よりも小さい場合には、その開口部内に振動ロッド2を通過させることが困難になる。また、特に鋼管内径が600mmを超えるような大径鋼管の場合の閉塞率が50%程度まで低下することから、大径杭を用いる場合には開口部分の内径が鋼管本体1Aの内径の0.7倍以内を確保する必要がある。
【0055】
上述のように本実施の形態による回転圧入鋼管杭の施工方法では、地盤等の施工条件に合わせて鋼管杭1における閉塞状態を制御することができ、しかも施工性と支持力性能との向上をバランスよく達成することができる。
【0056】
以上、本発明による回転圧入鋼管杭の施工方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
例えば、本実施の形態では、鋼管杭1を正転回転E1で回転させて圧入する際に、補助的に振動ロッド2を用い、閉塞板11の下方の領域(第1領域T1)にロッド先端2aを位置させて振動を付与してその領域の土砂を緩める方法としているが、このような振動ロッド2を用いることに制限されることはない。つまり振動ロッド2を省略して、上述した実施の形態のような傾斜した閉塞板11を備えた鋼管杭1を正転方向E1、及び反転方向E2で回転させる施工のみであってもかまわない。
【0058】
また、本実施の形態では、ロッド最深目標深度P2が支持層G1の手前の位置としているが、支持層G1の手前であることに限定されることはない。例えば、鋼管杭1の杭先端1aの打止め位置(根入れ位置)を支持層G1の深い位置に設定される場合には、支持層G1内に振動ロッド2のロッド最深目標深度P2が設定されていてもよい。
【0059】
また、閉塞板11は、第1分割閉塞板11A、第2分割閉塞板11Bに2分割されているが、周方向の分割数は任意に設定することができる。そして、閉塞板11は一体であっても勿論かまわない。周方向の配置範囲として1周(360°)の範囲であることに制限されることはなく、例えば1周半、2周など、要は管軸方向からみて全周にわたる範囲に閉塞板11が配置されていれば良いのであって、1周以上の範囲であれば、とくに制限されることはない。
【0060】
例えば、図6に示す第1変形例による鋼管杭1の閉塞板12は、周方向に分割されており、周方向に隣り合う一方の分割閉塞板12Aの杭頭側の端部(上端12b)が、他方の分割閉塞板12Bの杭先端1a側の端部(下端12a)よりも杭頭側に位置する構成となっている。この場合、鋼管本体1Aの内周面の杭軸O方向における閉塞板12の取付け範囲を小さくすることができるため、製造時の加工性を向上させることができる。
【0061】
また、閉塞板11は、上述した実施の形態のように1段であることに制限されず、2段以上の複数段で設けるようにしてもかまわない。
【0062】
さらに、閉塞板11の張出し長rは、杭軸O方向に対して垂直になっていてもよい。
さらにまた、上述した実施の形態では、閉塞板11の張出し長rが延在方向に沿って一定であり、開口部分の開口面積も杭軸O方向で同一であるが、これに限定されることはない。すなわち、杭先端1aから杭頭側に向かうに従って漸次、張出し長が大きくなる構成とすることも可能である。つまり、杭頭側に向かうに従って開口面積が小さくなる構成であってもよい。この場合には、閉塞板11の杭先端1a側は、杭頭側よりも開口面積が大きくなるので、その開口部分内を鋼管杭1の内側の土砂の通過量が多くなる。一方、閉塞板11の杭頭側ほど開口面積が小さいので土砂の通過量が少なくなる。そのため、閉塞板の杭先端1a側部分において、土砂を確実に進入させることができ、かつこの土砂を密実化させることが可能となる。
【0063】
また、加振装置として、鋼管杭頭部の内面に収め、油圧などで鋼管杭に押圧される構成であってもよい。この場合には、加振装置が鋼管杭の内部に収まることから、鋼管杭が防音の役目を果たし、加振装置から生じる騒音を小さくできる。
【0064】
なお、鋼管杭1、振動ロッド2の長さ、径寸法などの構成についても適宜設定することができる。
【0065】
次に、図7(a)〜(c)に示す第2変形例は、閉塞板13を一層以上の肉盛溶接ビードBを形成することにより形成したものである。この肉盛溶接ビードBは、閉塞板13の設置位置において、肉盛溶接ビードBが閉塞板13の鋼管本体1Aの内周面からの突出長と同等の長さになるように、一層以上(図では2層)の肉盛溶接ビードB1、B2、…を管径方向の内側に突出させることにより施工されている。具体的な施工方法としては、先ず図7(a)に示すように、鋼管本体1Aの内周面における閉塞板13の設置位置を挟んだ両側に着脱自在な当て板14を互いに平行に配置し、先ず当て板14に沿って溶接トーチを移動させる肉盛溶接によって一層目の肉盛溶接ビードB1を設ける。次いで、図7(b)に示すように、肉盛溶接を行うことにより一層目の肉盛溶接ビードB1の上(内周側)に重ねるようにして二層目の肉盛溶接ビードB2を設ける。その後、図7(c)に示すように、当て板14を取り外すことで、二層の肉盛溶接ビードB1、B2からなる閉塞板13が形成される。
このときの溶接方法は、自動溶接トーチを用いて機械的に実施してもよいし、溶接工(溶接作業員)が手動により実施してもよい。また、当て板14は、一般的な水冷鋼板(水冷式鋼板)が用いられるが、セラミックス製のものを採用することも可能である。
【0066】
本第2変形例では、肉盛溶接による閉塞板13の製作において、鋼管本体1Aの真円度に関わらず、溶接の調整で比較的簡易に閉塞板13を製作することができ、鋼板を用いる際に必要であった鋼管円周に沿わせるための折り曲げ作業や溶接脚長の管理が不要になる利点がある。
また、本第2変形例のように肉盛溶接により閉塞板13を設ける場合には、鋼管本体1Aを製造した後工程により肉盛溶接を行うことができるので作業手間が少なくなり、閉塞板13の突出長が短い場合にはとくに効率的である。
さらに、閉塞板13を鋼管本体1Aの軸方向に対して傾斜させて成形する場合には、鋼板等では3次元的に複雑な折り曲げ加工をする必要があるが、肉盛溶接では当て板14の角度や形状を調整するだけで済み、効率的かつ容易に対応することができる。
さらにまた、溶接速度や層数を調整することで溶接の肉盛量を変化させることが可能であるため、管径方向の内側に向けて突出する長さを鋼管本体1Aの円周方向で変化させることが容易になる利点がある。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 鋼管杭(回転圧入鋼管杭)
1A 鋼管本体
1a 杭先端
2 振動ロッド
2a ロッド先端
10 回転圧入装置
11、12、13 閉塞板
11A 第1分割閉塞板
11B 第2分割閉塞板
11a 下端
11b 上端
20 加振装置
O 杭軸
E1 正転方向(第1方向)
E2 反転方向(第2方向)
P1 杭到達目標深度
P2 ロッド最深目標深度
P3 ロッド先端調整深度
G0 軟弱層
G1 支持層
Ga 土砂
T1 第1領域
T2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7