(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1〜
図13に基づいて本実施形態に係る添加装置、および、添加装置を含む浄化システムを説明する。以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。x方向とy方向とによって規定される平面をx−y平面と示す。
【0012】
浄化システム200は、エンジン300の燃焼駆動によって発生した排ガスを浄化するものである。
図1に示すように浄化システム200は、エンジン300の排気管310に設けられている。エンジン300が内燃機関に相当する。
【0013】
浄化システム200は、添加装置100、SCR触媒400、および、センサ500を有する。添加装置100は尿素水を排気管310に添加する。尿素水は排気管310内で加水分解され、アンモニアが生成される。このアンモニアがSCR触媒400に添加される。SCR触媒400はこの添加されたアンモニアを貯蔵する。そしてSCR触媒400は、貯蔵したアンモニアと排ガス中のNOxとを反応させる。こうすることでNOxが水や窒素に分解される。尿素水が液体状態の浄化液に相当する。NOxが有害物質に相当する。
【0014】
センサ500は、第1NOxセンサ501、第2NOxセンサ502、第1排気温センサ503、および、第2排気温センサ504を備えている。エンジン300からその下流に向かって、第1NOxセンサ501、第1排気温センサ503、添加装置100、第2排気温センサ504、SCR触媒400、および、第2NOxセンサ502が順に並んで排気管310に設けられている。
【0015】
以上に示した並び順のため、第1NOxセンサ501はエンジン300から排出された排ガスに含まれるNOxを検出する。第1排気温センサ503はエンジン300から排出された排ガスの温度を検出する。第2排気温センサ504はSCR触媒400に流入する排ガスの温度を検出する。第2NOxセンサ502はSCR触媒400によって浄化された排ガスに含まれるNOxを検出する。また添加装置100が排気管310に尿素水を噴射することで、排ガスに尿素水が添加されるとともに、下流に位置するSCR触媒400にアンモニアが添加される。
【0016】
添加装置100は添加弁10を有する。
図2および
図3に示すように、この添加弁10は装着装置600によって排気管310に装着されている。排気管310は内面310aと外面310bを有する。排気管310には内面310aと外面310bとを貫通する貫通孔310cが形成されている。この貫通孔310cの外面310b側に、装着装置600によって添加弁10が固定されている。添加弁10の先端は排気管310内の空間を通る排ガスに晒されている。
【0017】
エンジン300から排出される排ガスの温度は、最高で700℃程度になる。そして排気管310の温度は500℃程度になる。このように高温になると、添加弁10に付着した尿素水から水分が蒸発する。これにより尿素が析出して添加弁10に付着する。この付着した固形の尿素のため、添加弁10からの尿素水の噴射が妨げられる虞がある。
【0018】
そこで後で説明するように、装着装置600によって添加弁10を冷却する。これにより尿素が析出して添加弁10に付着することが抑制される。また、装着装置600の振動板604が振動する。これにより添加弁10に付着した固形の尿素が除去される。以下、装着装置600について詳説する。
【0019】
装着装置600は、本体部601、導入管602、排出管603、振動板604、および、弾性支持材605を有する。本体部601は、排気管310の内側の内面601aと、排気管310の外側の外面601bと、を有する。内面601aは貫通孔310cの開口形状と相似形状を有している。
【0020】
本体部601は内面310aと外面310bの他に、両者を連結する連結面を有している。この連結面はz方向まわりの周方向において環状を成している。この連結面が貫通孔310cを構成する側壁面と周方向で全面的に接触している。
【0021】
本体部601には、添加弁10のノズルボディ22を挿入するための挿入孔606が形成されている。挿入孔606はz方向に沿っている。挿入孔606の一端は内面601aに開口している。挿入孔606の他端は外面601bに開口している。挿入孔606の一端に添加弁10の先端が位置している。挿入孔606の他端は添加弁10によって閉塞されている。以上により貫通孔310cは、本体部601と添加弁10とによって閉塞されている。
【0022】
本体部601内には、冷却水を流動させるための冷却水路607が形成されている。冷却水路607は、挿入孔606を囲むように周方向において環状に形成されている。そのために冷却水路607内の冷却水は、挿入孔606の周りを流動する。すなわち冷却水路607内の冷却水は、添加弁10のノズルボディ22の周りを流動する。これによりノズルボディ22が冷却される。後述するようにノズルボディ22の内部には尿素水が供給される。そのため尿素水も冷却される。
【0023】
冷却水路607の導入口と排出口それぞれは外面601bに開口している。この導入口に導入管602が設けられる。排出口に排出管603が設けられる。導入管602と排出管603それぞれは冷却水路607と連通している。導入管602から冷却水路607に冷却水が導入される。冷却水は冷却水路607内を流動する。これによりノズルボディ22と冷却水とが熱交換する。このノズルボディ22と熱交換した冷却水は排出管603から外部に排出される。この冷却水としては、エンジン300用の冷却水を利用することができる。
【0024】
振動板604は、本体部601の内面601aに設けられる。
図3に示すように振動板604はx−y平面において円環形状を成している。振動板604の中空と挿入孔606の中空とが連通している。振動板604の内周面604aによって添加弁10の先端が囲まれている。内周面604aと添加弁10の先端との間には微小な空隙がある。
【0025】
弾性支持材605は振動板604と本体部601とを連結する。弾性支持材605は曲線形状を成す。弾性支持材605の一端が振動板604に連結されている。弾性支持材605の他端が本体部601の内面601aに連結されている。本実施形態では4つの弾性支持材605によって振動板604と本体部601とが連結されている。4つの弾性支持材605は周方向で隣接間隔が等しくなっている。すなわち、2つの隣り合う弾性支持材605の隣接角度が、周方向において90°になっている。なお
図3では弾性支持材605を3つだけ示している。弾性支持材605の数としては特に限定されない。
【0026】
以上の構成により、例えばエンジン300の燃焼駆動によって排気管310が振動すると、その振動が本体部601と弾性支持材605を介して振動板604に伝達される。これにより振動板604が振動する。この振動している振動板604が、尿素水から析出して添加弁10の先端などに付着した固形の尿素と衝突する。この衝撃により、固形の尿素が添加弁10から除去される。
【0027】
次に、添加装置100を詳説する。
図1に示すように添加装置100は、添加弁10、尿素水タンク60、ポンプ70、DCU80、および、配管90を有する。添加弁10とポンプ70とは配管90を介して連結されている。そしてポンプ70は尿素水タンク60に連結されている。これにより添加弁10と尿素水タンク60との間において、ポンプ70と配管90を介して尿素水が流動可能になっている。
【0028】
DCU80は添加弁10とポンプ70それぞれと電気的に接続されている。DCU80は添加弁10の開閉とポンプ70の回転を制御する。DCU80はポンプ70を回転制御することで尿素水タンク60に貯留された尿素水を添加弁10に供給する。そしてDCU80は添加弁10を開弁制御することで添加弁10の先端から尿素水を噴射する。またDCU80はポンプ70を回転制御することで添加弁10内の尿素水を尿素水タンク60に戻す。この際、DCU80は添加弁10を開閉制御することで添加弁10内の尿素水の尿素水タンク60への戻しを促進する。以下、添加弁10を詳説した後、ポンプ70とDCU80を説明する。
【0029】
添加弁10は、
図4に示すように、ボディ20、弁体30、バネ40、および、電磁部50を有する。ボディ20は尿素水の流通する尿素水流路21を内部に構成している。この尿素水流路21に弁体30とバネ40が設けられている。バネ40は弁体30に付勢力を付与する。これにより尿素水流路21が閉塞される。この結果、添加弁10は閉弁される。
【0030】
電磁部50はボディ20に設けられる。電磁部50は磁気回路を形成する。これにより弁体30がバネ40の付勢力に抗して動かされ、尿素水流路21が開放される。この結果、添加弁10が開弁される。以下、添加弁10の各構成要素を詳説する。
【0031】
ボディ20は、ノズルボディ22、非磁性部材23、導入部24、および、噴孔部25を有する。ノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24それぞれは筒形状を成している。ノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24それぞれの軸方向はz方向に沿い、x−y平面で一致している。
図1では、ボディ20の中心軸CAを一点鎖線で示している。
【0032】
ノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24によって、2つの開口部を有する筒が構成されている。一方の開口部はノズルボディ22の先端で構成されている。他方の開口部は導入部24の先端で構成されている。ノズルボディ22の先端とは反対側の端部、および、導入部24の先端とは反対側の端部それぞれが非磁性部材23の端部と機械的に連結されている。
【0033】
ノズルボディ22の先端に噴孔部25が固定されている。噴孔部25には微小な噴射孔25aが形成されている。導入部24の先端に配管90が連結される。配管90から尿素水流路21に尿素水が流入される。この尿素水が噴射孔25aから排気管310に噴射される。逆に、尿素水を戻す場合、噴射孔25aから尿素水流路21に空気が流入される。これにより尿素水流路21内の尿素水が配管90を介して尿素水タンク60に戻される。
【0034】
ノズルボディ22は磁性材料からなる。ノズルボディ22は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。ノズルボディ22の中空に弁体30、後述の可動コア56の一部、および、バネ40の一部が設けられている。
【0035】
上記したようにノズルボディ22は装着装置600の挿入孔606に挿入される。そのためノズルボディ22の外面は本体部601の挿入孔606を構成する壁面とx−y平面において対向している。
【0036】
非磁性部材23は、その名の示す通り、非磁性材料から成る。非磁性部材23は、電磁部50によって形成される磁気回路の、可動コア56への通過が妨げられることを抑制する機能を果たす。非磁性材料としては、例えばセラミックを採用することができる。
【0037】
上記したように非磁性部材23はノズルボディ22と導入部24とを機械的に連結する機能も果たす。非磁性部材23の中空には、可動コア56、バネ40、および、後述の固定コア55それぞれの一部が設けられている。
【0038】
導入部24は、磁性材料から成る。導入部24は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。
【0039】
導入部24の中空に固定コア55の一部が設けられている。固定コア55は筒形状を成している。固定コア55の外側面は導入部24の内周面と接触している。固定コア55は導入部24に固定されている。
【0040】
また固定コア55の中空に圧入部材26の一部が設けられている。圧入部材26は筒形状を成す。圧入部材26は導入部24の配管90の連結される開口部からその内部へと挿入される。そして圧入部材26は固定コア55の中空に圧入される。これにより圧入部材26の外側面と固定コア55の内側面との間に圧入部材26の復元力が発生する。この復元力によって、圧入部材26は固定コア55を介して導入部24に固定されている。
【0041】
導入部24の配管90の連結される開口部側の中空には、フィルタ24aが設けられている。フィルタ24aは金属から成り、網目構造を有している。配管90を介して導入部24の構成する尿素水流路21に流入した尿素水はフィルタ24aを通過する。これにより尿素水に含まれるゴミがフィルタ24aによって除去される。このフィルタ24aによってゴミの除去された尿素水が、圧入部材26と固定コア55の構成する中空へと流れる。
【0042】
導入部24の配管90の連結される開口部を構成する端部の外側面には、Oリング24bとストッパ24cが設けられている。またこの外側面には、ストッパ24cを設けるための環状の溝部24dが形成されている。
図4に示すように、z方向においてノズルボディ22から導入部24に向かう方向に、Oリング24bとストッパ24cが順に並んでいる。これにより、ストッパ24cによってOリング24bが導入部24から外れることが抑制されている。
【0043】
噴孔部25はノズルボディ22の先端の開口部に設けられる。噴孔部25は、
図5に示すように、ノズルボディ22に固定される口端部25bと、噴射孔25aの形成された先端部25cと、を有する。
【0044】
口端部25bは筒形状を成す。口端部25bはノズルボディ22の中空に設けられる。口端部25bの外面がノズルボディ22の内面に溶接接合されている。口端部25bと中空とノズルボディ22の中空とが連通している。
【0045】
口端部25bの内径は不定である。口端部25bの内面には、周方向において環状を成す接触面25dが形成されている。この接触面25dは、z方向において噴射孔25aから導入部24側へと向かうにしたがって、徐々に径が広がるテーパ形状を成している。この接触面25dに弁体30の先端が着座したり離座したりする。
【0046】
先端部25cは筒形状を成す。先端部25cの中空に口端部25bの排気管310側の端部が設けられる。先端部25cの内面に口端部25bの外面が溶接接合されている。これにより口端部25bの排気管310側の開口部が先端部25cの中央部によって覆われている。
【0047】
先端部25cの中央部は、口端部25bの接触面25dよりもボディ20の中心軸CA側に位置する。そして先端部25cの中央部は、z方向において口端部25bの開口部と対向している。この先端部25cの中央部に、尿素水を噴射するための噴射孔25aが複数形成されている。
【0048】
弁体30は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。弁体30はz方向に延びる筒形状を成す。弁体30とボディ20の軸方向はx−y平面で一致している。
【0049】
弁体30は自身の中空と連通する1つの開口端と、自身の中空と非連通の1つの閉口端と、を有する。弁体30の閉口端は噴射孔25a側に位置する。この閉口端は弁体30の先端に相当する。弁体30の開口端は導入部24側に位置する。この開口端は弁体30の端部に相当する。
【0050】
弁体30の閉口端の外面には、口端部25bの接触面25dと同一の傾斜角度のテーパ形状の縁部が形成されている。この閉口端のテーパ状の縁部が接触面25dと全面的に環状に接触する。これにより噴射孔25aと尿素水流路21との連通が遮断される。
【0051】
弁体30の開口端に、可動コア56が設けられている。可動コア56は中空を有し、弁体30の中空と連通している。また可動コア56の中空と固定コア55の中空も連通している。したがって、上記したフィルタ24aによってゴミの除去された尿素水は、圧入部材26と固定コア55の構成する中空へと流れるとともに、可動コア56と弁体30の中空へも流れる。
【0052】
図4および
図6に示すように可動コア56と固定コア55はz方向で対向している。より詳しく言えば、可動コア56のx−y平面において環状を成す上端面56aと、固定コア55のx−y平面において環状を成す下端面55aとがz方向で対向している。
【0053】
後述するように可動コア56は弁体30とともにボディ20の軸方向(z方向)に移動する。弁体30の軸方向への移動により、可動コア56と固定コア55とはz方向で近づいたり離れたりする。
【0054】
より詳しく言えば、弁体30が噴射孔25a側に変位すると、可動コア56と固定コア55とがz方向で離れる。弁体30の閉口端が接触面25dに着座している場合、可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとはz方向において最も離れる。このように可動コア56と固定コア55とがz方向で離れている場合、上端面56aと下端面55aとの間に尿素水が流動する空隙通路が構成される。
【0055】
これとは逆に、弁体30が導入部24側に変位すると、可動コア56と固定コア55とがz方向で近づく。弁体30の閉口端と接触面25dとが離座し、z方向において最も離れている場合、可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとが接触する。この際、上記の空隙通路が無くなる。
図6では、可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとが接触して、空隙通路が無くなっている状態を示している。また
図6では、特にノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24それぞれを区別せずに、ボディ20として図示している。
【0056】
弁体30は内面30aと外面30bを有する。内面30aは弁体30の中空を構成している。上記したように弁体30の中空は可動コア56の中空と連通され、可動コア56の中空とともに尿素水の流動する流通路を構成している。
【0057】
弁体30の外面30bは口端部25bとノズルボディ22それぞれの内面とx−y平面で離れて対向している。また可動コア56の外側面はノズルボディ22と非磁性部材23それぞれの内面とx−y平面で離れて対向している。そのため、弁体30と口端部25b、および、弁体30とノズルボディ22それぞれとの間に空間が構成されている。また可動コア56とノズルボディ22、および、可動コア56と非磁性部材23それぞれとの間に空間が構成されている。これらの空間は上記した弁体30の中空や空隙通路と連通される。そのため、これらの空間も尿素水の流動する流通路を構成している。
【0058】
以下においては、弁体30の中空と可動コア56の中空とによって構成される流通路を第1流通路31と示す。また、上記した弁体30、口端部25b、ノズルボディ22、可動コア56、および、非磁性部材23によって構成される流通路を第2流通路32と示す。
【0059】
上記したように弁体30の閉口端が接触面25dに着座している場合、可動コア56と固定コア55との間に空隙通路が構成される。この場合、第1流通路31と第2流通路32とは、空隙通路を介して連通される。換言すれば、添加弁10が閉弁状態の場合、第1流通路31と第2流通路32とは、空隙通路を介して連通される。これとは逆に、可動コア56と固定コア55とが接触している場合、上記の空隙通路は無くなる。そのため、第1流通路31と第2流通路32とは、空隙通路を介して連通されなくなる。換言すれば、添加弁10が開弁状態の場合、第1流通路31と第2流通路32との空隙通路を介した連通が遮断される。
【0060】
弁体30には、弁体30の中空とノズルボディ22の中空とを連通するための第1連通孔33が形成されている。また弁体30には、弁体30の中空と口端部25bの中空とを連通するための第2連通孔34が形成されている。すなわち弁体30には、第1流通路31と第2流通路32とを連通するための第1連通孔33と第2連通孔34それぞれが形成されている。これら第1連通孔33と第2連通孔34とにより、第1流通路31と第2流通路32は、添加弁10の開弁状態と閉弁状態とによらずに連通している。
【0061】
第1連通孔33は、弁体30におけるノズルボディ22との対向面に設けられている。第2連通孔34は、弁体30における口端部25bとの対向面に設けられている。そのため第2連通孔34は第1連通孔33よりも噴射孔25a側に位置している。本実施形態では2つの第1連通孔33が弁体30に形成されている。4つの第2連通孔34が弁体30に形成されている。
【0062】
バネ40は可動コア56と弁体30に付勢力を付与するものである。バネ40は線形状の弾性材料がz方向にらせん状に巻き回されて成るコイルバネである。バネ40はz方向において可動コア56と圧入部材26との間に設けられている。そして上記の圧入部材26の圧入により、バネ40は可動コア56と圧入部材26との間でz方向に圧縮されている。これによりバネ40は、z方向においてバネ40から離れる方向に付勢力を発生させている。このため、弁体30と可動コア56それぞれにz方向において噴射孔25a側へ向かうバネ40の付勢力が付与されている。この付勢力によって弁体30と可動コア56との接触状態が保たれている。また電磁部50によって磁気回路が形成されない場合、バネ40の付勢力により、弁体30の閉口端が接触面25dに着座している。これにより添加弁10の閉弁状態が保たれている。
【0063】
電磁部50は、ソレノイドコイル51、コネクタ52、樹脂部53、ハウジング54、固定コア55、および、可動コア56を有する。ソレノイドコイル51はコネクタ52とともに樹脂部53によって一体的に連結されている。ソレノイドコイル51は固定コア55と可動コア56の周囲を囲むように、樹脂部53によってボディ20に固定されている。
【0064】
ハウジング54は筒形状を成している。ハウジング54はソレノイドコイル51と樹脂部53それぞれの周囲を囲むようにボディ20に固定されている。またハウジング54は装着装置600の本体部601の挿入孔606の他端とx−y平面において円環状に接触している。これにより挿入孔606はハウジング54とボディ20とによって閉塞されている。
【0065】
固定コア55は筒形状を成している。固定コア55は導入部24と非磁性部材23の中空に設けられている。
図6に示すように、固定コア55の弁体30側の外径は、非磁性部材23との接触面積を低減するため、非磁性部材23の内径よりも狭くなっている。そのため、固定コア55と非磁性部材23とによって、上記した第2流通路32と連通する隘路55bが構成されている。隘路55bはx−y平面において環状を成している。この隘路55bも尿素水で満たされる。この隘路55bは空隙通路を介して第1流通路31と連通している。
【0066】
可動コア56は筒形状を成している。可動コア56は非磁性部材23とノズルボディ22の中空に設けられている。可動コア56の中空には、x−y平面において環状を成す取り付け部57が構成されている。この取り付け部57によって、可動コア56の中空は噴射孔25a側の中空と導入部24側の中空とに区画されている。この可動コア56の噴射孔25a側の中空に弁体30の開口端が挿入されている。そして弁体30の開口端の端面が、取り付け部57の環状の下面57aと接触している。またこの可動コア56の導入部24側の中空にバネ40が挿入されている。そしてバネ40が、取り付け部57の環状の上面57bと接触している。上記したようにバネ40のz方向において噴射孔25a側へ向かう付勢力により、弁体30と可動コア56との接触状態が保たれている。そのため、可動コア56と弁体30とはz方向にともに移動する。
【0067】
図6に示すように、可動コア56の外径は、非磁性部材23およびノズルボディ22それぞれの内径よりも狭くなっている。そのため、可動コア56と非磁性部材23、および、可動コア56とノズルボディ22によって、上記した第2流通路32の一部が構成されている。
【0068】
ハウジング54、固定コア55、および、可動コア56それぞれは磁性材料によって形成されている。上記したようにノズルボディ22と導入部24も磁性材料によって形成されている。そして非磁性部材23は非磁性材料によって形成されている。固定コア55と可動コア56それぞれはx−y平面において非磁性部材23と隣り合っている。
【0069】
以上により、コネクタ52を介してソレノイドコイル51に電流を流すと、それによって発生する磁束は、導入部24、固定コア55、可動コア56、ノズルボディ22、および、ハウジング54を通る磁気回路を形成する。この磁気回路が形成されると、可動コア56はバネ40の付勢力に抗してz方向に沿って導入部24側へと移動しようとする。上記したように可動コア56と弁体30とはz方向にともに移動する。したがって磁気回路の形成による可動コア56の導入部24側への移動により、弁体30も導入部24側へと移動する。これにより弁体30の先端(閉口端)が口端部25bの接触面25dから離座する。この結果、噴射孔25aから排気管310への尿素水の噴射がなされる。なおこの際、可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとが接触する。これにより空隙通路を介した第1流通路31と第2流通路32との連通が遮断される。また、空隙通路を介した隘路55bと第1流通路31との連通が遮断される。
【0070】
次に、ポンプ70とDCU80を説明する。
【0071】
ポンプ70は、正逆方向に回転可能になっている。ポンプ70が正回転すると、尿素水タンク60から添加弁10へと向かう正圧が配管90に発生する。これにより尿素水タンク60内の尿素水が、配管90を介して添加弁10に圧送される。しかしながらポンプ70が逆回転すると、添加弁10から尿素水タンク60へと向かう負圧が配管90に発生する。これにより添加弁10内の尿素水が、配管90を介して尿素水タンク60に吸い戻される。ポンプ70は負圧発生部に相当する。
【0072】
DCU80はdosing control unitの略である。DCU80は、エンジン300が燃焼駆動している際に、ポンプ70を正回転に駆動して添加弁10に尿素水を供給するとともに、添加弁10を開閉制御する。これによりDCU80は添加弁10から排気管310に噴射される尿素水量を制御する。この際にDCU80は0.5Hz〜3.0Hzで添加弁10を開閉制御する。またエンジン300が燃焼駆動を停止すると、DCU80はポンプ70を逆回転に駆動するとともに、添加弁10を開閉制御する。これによりDCU80は添加弁10から尿素水を吸い戻す。この際のDCU80の添加弁10の開閉周波数は後述する。DCU80が開閉制御部に相当する。
【0073】
なお添加装置100は、
図1に示すように尿素水圧を検出する圧力センサ91と、尿素水の温度を検出する温度センサ92を有する。これら圧力センサ91と温度センサ92の検出信号はDCU80に入力される。
【0074】
上記したようにエンジン300が燃焼駆動を停止した後、添加弁10内の尿素水を吸い戻す。この際、添加弁10内に尿素水が残留する。以下、添加弁10内に尿素水が残留する理由を
図5〜
図8に基づいて説明する。
【0075】
添加弁10に残留している尿素水を吸い戻す際に、上記したようにDCU80は添加弁10を開閉制御する。尿素水が吸い戻されるのは、
図5に示すように添加弁10が開弁状態の時である。添加弁10が開弁状態になると、尿素水流路21が噴射孔25aを介して排気管310と連通される。これにより、
図5に実線矢印で示す方向に尿素水が流れる。
【0076】
しかしながら尿素水は自重と粘性を有する。そのため、
図5と
図6においてドットハッチングで尿素水を示すように、単に添加弁10を開弁状態にして添加弁10内に負圧を発生するだけでは、添加弁10内に尿素水が残留することになる。この尿素水が残留しやすい場所は、尿素水の流動抵抗の高い場所である。それは、例えば添加弁10内における流通面積の狭い場所である。また、流通路を構成しない袋小路である。
【0077】
図6に示すように、添加弁10が開弁状態になると可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとが接触し、空隙通路を介した第1流通路31と第2流通路32との連通が遮断される。これにより空隙通路を介した第2流通路32から第1流通路31への尿素水の流動が妨げられる。特に、可動コア56とボディ20との間に構成される第2流通路32内の尿素水の吸い戻しが妨げられる。また、固定コア55とボディ20との間の隘路55b内の尿素水の吸い戻しが困難になる。
【0078】
以上に示したように、添加弁10内では尿素水の流動抵抗の高い場所や流通路を構成しない袋小路がある。そのため、添加弁10を開弁状態に維持して負圧を発生しただけでは、添加弁10内の尿素水を効果的に吸い戻すことができない。
【0079】
図7と
図8に、本発明者が添加弁10を開弁状態に維持して負圧を発生させた場合の尿素水残存率の実験結果を示す。ひし形は実験の実測値を示している。実線は最小二乗法などを用いて得られた実測値に対する近似線を示している。
【0080】
図7と
図8の縦軸は、添加弁10内が尿素水で満たされた状態での添加弁10内の尿素水残存量に対する尿素水残存率を示している。したがって添加弁10内が尿素水で満たされている場合、尿素水残存率は1.0になる。
【0081】
図7の横軸は時間を示している。
図8の横軸は圧力を示している。したがって
図7は添加弁10内の尿素水残存率の時間依存性を示している。
図8は添加弁10内の尿素水残存率の圧力依存性を示している。
【0082】
この実験では、ボディ20の中心軸CAを鉛直方向に沿わせている。そのため、x−y平面が水平面に沿い、z方向が鉛直方向に沿っている。添加弁10の排気管310への尿素水の添加方向が重力の作用方向と同一方向である。添加弁10内の尿素水の吸い戻し方向は重力の作用方向とは逆向きである。
【0083】
図7に示すように吸い戻しの始めにおいては、尿素水残存率は急激に減少する。しかしながら10秒も経過すると尿素水残存率の変化がゆるくなる。その後は、50秒経過しても尿素水残存率はほとんど変化しなくなる。なおこの実験では負圧を0.5barにしている。
【0084】
図8に、吸い戻し始めてから10秒経過した後の尿素水残存率の圧力依存性を示す。ここに示されるように、負圧が0.5bar〜0.7barの場合、尿素水残存率はほとんど変わらない。
【0085】
このように、本発明者の実験でも確かめられるように、添加弁10を開弁状態に維持して負圧を発生しただけでは、添加弁10内の尿素水を効果的に吸い戻すことができない。
【0086】
これに対して添加装置100は、尿素水の流動性を加味して、添加弁10を開閉制御する。
【0087】
図9に、本発明者が添加弁10を開弁状態と閉弁状態に切り換えて負圧を発生させた場合の添加弁10内の尿素水残存率の実験結果を示す。ひし形は実験の実測値、実線は実測値に対する近似線を示している。
【0088】
DCU80は添加弁10を開閉制御するために、デジタルの制御信号によってコネクタ52に流す電流を制御している。この制御信号のHiレベルとLoレベルの一方によってコネクタ52に電流が流れる。そのため、制御信号のHiレベルとLoレベルの一方によって、添加弁10は開弁状態および閉弁状態の一方になる。また制御信号のHiレベルとLoレベルの他方によって添加弁10は開弁状態および閉弁状態の他方になる。本実施形態では、制御信号がHiレベルの場合に添加弁10は開弁状態になる。制御信号がLoレベルの場合に添加弁10は閉弁状態になる。
【0089】
この実験では、制御信号のデューティ比を50%に設定している。したがって開弁時間と閉弁時間とは等しくなっている。またこの実験では、DCU80は制御信号を10秒だけ出力している。同様にして、DCU80はポンプ70に逆回転する指令信号を10秒だけ出力している。そのため添加弁10内の尿素水の吸い戻し時間は10秒になっている。負圧は、
図7の実験と同様にして0.5bar(0.05MPa)に設定している。
【0090】
制御信号のデューティ比は、開弁時間と閉弁時間の合計時間に対する開弁時間の比率を示している。したがって例えばデューティ比25%の場合、合計時間に対する開弁時間の比率は25%になる。換言すれば、合計時間に対する閉弁時間の比率は75%になる。また、例えばデューティ比75%の場合、合計時間に対する開弁時間の比率は75%になる。換言すれば、合計時間に対する閉弁時間の比率は25%になる。
【0091】
図9の縦軸は、吸い戻しの間、添加弁10を開弁状態に維持した場合における、添加弁10内の尿素水残存量に対する尿素水残存率を示している。したがって
図9は、添加弁10を開弁状態に維持する場合と比べて、尿素水残存量がどの程度改善されるのかを示している。
【0092】
図9の横軸は、制御信号の開閉周波数を示している。換言すれば、
図9の横軸は、添加弁10の開弁状態と閉弁状態の切り換え頻度を示している。さらに言いかえれば、
図9の横軸は、制御信号の1パルス周期当たりの開弁時間と閉弁時間それぞれの変化量を示している。開閉周波数が高くなれば、1パルス周期当たりの開弁時間と閉弁時間それぞれは短くなる。逆に開閉周波数が低くなれば、1パルス周期当たりの開弁時間と閉弁時間それぞれは長くなる。
【0093】
なおこの実験においても、ボディ20の中心軸CAを鉛直方向に沿わせている。添加弁10における尿素水の吸い戻し方向は重力の作用方向とは逆向きである。そのため尿素水の自重による流動は、尿素水の吸い戻し方向とは逆向きである。
【0094】
図9に示すように、開閉周波数を0から高めると尿素水残存率は急激に減少する。開閉周波数がおよそ1.0Hzの時に尿素水残存率は最小になる。1.0Hzよりも開閉周波数が高まると、徐々に尿素水残存率の減少度合いが低まる。開閉周波数がおよそ20.0Hzを超えると尿素水残存率はほぼ一定になる。このように開閉周波数が20.0Hzを超えると、吸い戻し時間が10秒では、添加弁10を開弁状態に維持した場合と尿素水残存率が同程度になる。
【0095】
図9に示すように、開閉周波数がおよそ0.5Hz〜10.0Hzの間においては、尿素水残存率は0.8以下になることが期待される。このように制御信号の開閉周波数を調整することで、尿素水の残存率を低くすることができる。換言すれば、開閉周波数の1パルス周期当たりの開弁時間と閉弁時間それぞれを調整することで、尿素水の残存率を低くすることができる。
【0096】
次に、添加弁10を開閉制御することで、添加弁10の尿素水残存率が低くなる理由を
図10と
図11に基づいて説明する。
【0097】
図10と
図11それぞれの(a)欄では、添加弁10は閉弁状態であり、添加弁10内は尿素水で満たされている。この状態から、
図10と
図11それぞれの(b)欄に示すように添加弁10が開弁される。そして添加弁10内に負圧が発生される。これにより添加弁10内の尿素水は配管90側へと吸い戻される。
【0098】
尿素水は第1連通孔33と第2連通孔34の少なくとも一方を介して弁体30の中空へ流動する。すなわち尿素水は第1連通孔33と第2連通孔34を介して第1流通路31へ流動する。この第1流通路31内の尿素水は、圧入部材26と固定コア55の構成する中空へ流れるとともに、導入部24の中空へも流れる。そして導入部24の尿素水はフィルタ24aを介して配管90に流入し、ポンプ70を介して尿素水タンク60に戻される。
【0099】
しかしながら
図10の(b)欄に明示するように、口端部25bと弁体30の第2連通孔34の縁部との間などの狭い隙間では、尿素水の粘性(表面張力)や自重と負圧とが釣り合い、第2連通孔34側へと尿素水が流れなくなる。
【0100】
また
図11の(b)欄に明示するように、可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとが接触し、空隙通路を介した第1流通路31と第2流通路32との連通が遮断される。そのため、可動コア56とボディ20との間に構成される第2流通路32内の尿素水が、第1流通路31側へと流動し難くなる。また隘路55bの尿素水が流動しなくなる。さらに言えば、可動コア56の取り付け部57の下面57aの尿素水は、表面張力や自重と負圧との釣り合いにより、取り付け部57の開口部側へと流動しなくなる。以上に示したように、単に添加弁10を開弁するだけでは、添加弁10内の尿素水の残存量が減少しなくなる。
【0101】
次に、
図10と
図11それぞれの(c)欄に示すように、添加弁10を閉弁する。この添加弁10の閉弁により、
図10の(c)欄に示すように、口端部25bと弁体30の第2連通孔34の縁部との間などの狭い隙間においても、毛細管現象や自重のため、破線矢印で示すように尿素水は第2連通孔34側へと流れる。この尿素水の毛細管現象や自重による流動は、尿素水の流動性に依存する。すなわち、尿素水の粘性や表面張力に依存する。さらに言いかえれば、尿素水の濃度と温度に依存する。
【0102】
尿素水の流動性が高い場合、閉弁時間が短くとも、上記した隙間を介して、尿素水が第2連通孔34側へと流動する。しかしながら尿素水の流動性が低い場合、閉弁時間が短いと、上記した隙間を介して、尿素水は第2連通孔34側へと流動し難くなる。
【0103】
また添加弁10の閉弁により、
図11の(c)欄に示すように、可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとが離れ、空隙通路を介して第1流通路31と第2流通路32とが連通される。このため、毛細管現象などのために、破線矢印で示すように可動コア56とボディ20との間に構成される第2流通路32内の尿素水が空隙通路を介して可動コア56の中空側へと流れる。また取り付け部57の下面57aの尿素水も、毛細管現象などのために、取り付け部57の開口部側へと流動する。
【0104】
尿素水の流動性が高い場合、閉弁時間が短くとも、空隙通路を介して、尿素水が可動コア56の中空側へと流動する。また取り付け部57の開口部側へと尿素水が流動する。しかしながら尿素水の流動性が低い場合、閉弁時間が短いと、空隙通路を介して、尿素水は可動コア56の中空側へと流動し難くなる。取り付け部57の開口部側へと尿素水は流動し難くなる。
【0105】
以上に示したように、吸い戻すのに適した場所(流動抵抗の低い場所)に尿素水を流動させるためには、閉弁時間を尿素水の流動性に応じて決定することが重要となる。このように尿素水の流動性を加味した閉弁時間は、上記の
図9に示されている。すなわち、デューティ比50%の場合、制御信号の開閉周波数をおよそ0.5Hz〜10.0Hzの間に設定することが
図9に示されている。
【0106】
図10と
図11それぞれの(d)欄に示すように、添加弁10を開弁する。すると、
図10の(d)欄に示すように、添加弁10の閉弁時において第2連通孔34側に流動してきた尿素水が、第1流通路31を介して吸い戻される。また
図11の(d)欄に示すように、添加弁10の閉弁時において可動コア56の中空側、取り付け部57の開口部側に流動してきた尿素水が、固定コア55の中空を介して吸い戻される。
【0107】
図10と
図11それぞれの(e)欄に示すように、再び添加弁10を閉弁する。これにより
図10の(e)欄において破線矢印で示すように残留尿素水は第2連通孔34側へと流動する。また
図11の(e)欄において破線矢印で示すように残留尿素水は可動コア56の中空側と取り付け部57の開口部側へと流動する。
【0108】
以上に示したように添加弁10の開弁と閉弁とを、尿素水の吸い戻しと尿素水自身の流動とが促進されるように繰り返す。これにより、
図10と
図11それぞれの(f)欄に示すように、添加弁10内における尿素水の残存量が低減される。
【0109】
図9では、デューティ比50%の場合に、制御信号の開閉周波数をおよそ0.5Hz〜10.0Hzの間に設定することで、吸い戻し時間10秒において、尿素水残存率を0.8以下にできることを示した。しかしながら、上記したように、尿素水の残存量を減少するには、閉弁時間を尿素水の流動性に応じて決定すればよい。そのため、
図9の実験結果に基づいて、デューティ比と開閉周波数とを設定することで、尿素水残存率を0.8以下にできる。
【0110】
例えばデューティ比25%で、開弁時間と閉弁時間の比が1:3の場合、デューティ比50%と比べて、閉弁時間が1.5倍になる。この場合、開閉周波数を1.5倍にしても、デューティ比50%の場合と同等の閉弁時間を確保することができる。そのため、開閉周波数として、およそ0.75Hz〜15.0Hzを採用することができる、とみなせる。
【0111】
さらに例示すれば、例えばデューティ比75%で、開弁時間と閉弁時間の比が3:1の場合、デューティ比50%と比べて、閉弁時間が0.5倍になる。この場合、開閉周波数を0.5倍にすることで、デューティ比50%の場合と同等の閉弁時間を確保することができる。すなわち、開閉周波数として、およそ0.25Hz〜5.0Hzを採用することができる、とみなせる。
【0112】
以上に示した尿素水の流動性に対応するデューティ比、そのデューティ比に対応する開閉周波数をDCU80は記憶している。
【0113】
なお、上記した尿素残存率0.8という値は、本発明者が実験で扱った添加弁10の内部構造に依存する値である。添加弁10の内部構造が異なれば、当然として尿素水残存率は0.8とは異なる値を示すことが予想される。さらに言えば、添加弁10の重力の作用方向に対する添加弁10の配置角度によっても、尿素水残存率は0.8から異なる値になることが予想される。しかしながら尿素水の流動性を加味して添加弁10を開閉することで、尿素水残存率を1.0よりも低くすることができる、と期待できる。すなわち、上記したようにデューティ比50%の場合に、制御信号の開閉周波数をおよそ0.5Hz〜10.0Hzの間に設定することで、尿素水残存率を1.0よりも低くすることができる、と期待できる。
【0114】
次に、DCU80による尿素水の吸い戻し処理を、
図12と
図13に基づいて説明する。
【0115】
図12の時間t0において、エンジン300は燃焼駆動状態である。そのため、添加装置100は排気管310への尿素水噴射を実施している。逆に添加装置100は尿素水の吸い戻しを停止している。添加弁10内の尿素水圧は、正圧の噴射圧になっている。この噴射圧は、DCU80がポンプ70を正回転させることで成される。
【0116】
なお、この時間t0は、エンジン300の停止直前である。DCU80が生成する添加弁10の制御信号はLoレベルになっている。このLoレベルの際、電磁部50は磁気回路を形成しない。そのために添加弁10は閉弁状態になっている。逆に制御信号がHiレベルの場合、電磁部50は磁気回路を形成する。そのために添加弁10は開弁状態になる。
【0117】
図12では弁体30のz方向の移動をニードルリフトによって示している。制御信号がLoレベルの場合、ニードルリフトは最小になり、添加弁10は閉弁状態になる。制御信号がHiレベルの場合、ニードルリフトは最大になり、添加弁10は開弁状態になる。
【0118】
時間t1に至ると、エンジン300は燃焼駆動状態を停止する。そのために排気管310に排ガスが流動しなくなる。添加装置100は排気管310への尿素水噴射を停止する。この際、添加装置100は尿素水の吸い戻しをまだ実施しない。DCU80はポンプ70の回転制御を停止する。これにより添加弁10内の尿素水圧は噴射圧から減圧する。添加弁10の制御信号はLoレベル、ニードルリフトは閉弁状態になっている。
【0119】
時間t2に至ると、尿素水圧が大気圧まで減少する。この際にDCU80はポンプ70を逆回転させる。これにより尿素水圧は徐々に低下する。なお、DCU80はエンジン300の燃焼駆動が停止するとすぐに、ポンプ70を逆回転し始めてもよい。
【0120】
時間t3に至ると、尿素水圧は吸い戻し圧になる。するとDCU80は添加弁10に制御信号を出力する。この際、DCU80は温度センサ92より尿素水の温度を取得する。そして予め記憶している尿素水の濃度とその取得した温度により、尿素水の流動性を判定する。次いでDCU80は、その尿素水の流動性に応じた制御信号のデューティ比と開閉周波数とを読み出す。DCU80はその読み出したデューティ比と開閉周波数とに応じた制御信号によって、添加弁10を開閉制御する。これによりニードルリフトを閉弁状態と開弁状態とに切り換える。
【0121】
なお、DCU80はポンプ70を逆回転し始めてから第1所定時間経過後に、制御信号を出力してもよい。この第1所定時間は、ポンプ70の逆回転によって尿素水圧が例えば0.5barの吸い戻し圧になることの期待される時間である。
図13では、第1所定時間経過後に制御信号を出力する処理を例示している。
【0122】
図12に示すように、添加弁10が開状態になると、尿素水圧は低下する。しかしながら添加弁10が閉状態になると、尿素水圧が吸い戻し圧に回復する。このように添加弁10の開閉制御によって尿素水圧が吸い戻し圧に回復するように、制御信号のデューティ比は設定される。例えばデューティ比を95%などに設定して開弁時間を閉弁時間よりも長くすると、尿素水圧が吸い戻し圧に回復しなくなる。そのため、尿素水の吸い戻しを効率的に行うことができなくなる虞がある。したがって制御信号のデューティ比としては、尿素水圧が吸い戻し圧に回復する、例えば25%〜75%などを採用するのが好適となる。
【0123】
時間t3から第2所定時間経過して、時間t4に至ると、DCU80は制御信号の出力を停止する。この第2所定時間は、添加弁10内の尿素水の残存率が十分に低くなることの期待される時間である。
図9に示す縦軸で言えば、尿素水残存率が0.8以下になることの期待される時間である。
【0124】
時間t3から第3所定時間経過して、時間t5に至ると、添加弁10はポンプ70の逆回転制御を停止する。この第3所定時間は第2所定時間よりも長い時間である。なお、時間t4において、DCU80はポンプ70の逆回転制御を停止してもよい。
【0125】
次に、
図13に基づいてDCU80の尿素水の吸い戻し処理を説明する。先ずステップS10においてDCU80はエンジン300が燃焼駆動を停止した否かを判定する。またDCU80はポンプ70の正回転が停止したか否かを判定する。エンジン300が燃焼駆動を停止し、ポンプ70の正回転が停止したと判定すると、DCU80はステップS20へと進む。エンジン300の燃焼駆動の停止、ポンプ70の正回転の停止のいずれも成立しない場合、DCU80はステップS10を繰り返して待機状態になる。
【0126】
ステップS20へ進むとDCU80は、ポンプ70を逆回転制御し始める。この後にDCU80はステップS30へと進む。
【0127】
ステップS30へと進むと、DCU80は第1所定時間経過したか否かを判定する。換言すれば、DCU80は尿素水圧が吸い戻し圧になったか否かを判定する。第1所定時間が経過したと判定した場合、DCU80はステップS40へと進む。第1所定時間が経過していないと判定した場合、DCU80はステップS30を繰り返し、待機状態になる。
【0128】
ステップS40へ進むとDCU80は、添加弁10に制御信号を出力する。この際、DCU80は尿素水の流動性を判定し、その尿素水の流動性に応じた制御信号のデューティ比と開閉周波数とを読み出す。DCU80は読み出したデューティ比と開閉周波数とに応じた制御信号を添加弁10に出力する。この後にDCU80はステップS50へと進む。
【0129】
ステップS50へと進むと、DCU80は第2所定時間経過したか否かを判定する。換言すれば、添加弁10内の尿素水の残存率が十分に低くなったか否かを判定する。第2所定時間が経過したと判定した場合、DCU80はステップS60へと進む。第2所定時間が経過していないと判定した場合、DCU80はステップS50を繰り返し、待機状態になる。
【0130】
ステップS60へ進むとDCU80は、制御信号の出力を停止する。そしてDCU80はステップS70へと進む。
【0131】
ステップS70へと進むと、DCU80は第3所定時間経過したか否かを判定する。第3所定時間が経過したと判定した場合、DCU80はステップS80へと進む。第3所定時間が経過していないと判定した場合、DCU80はステップS70を繰り返し、待機状態になる。なお、このステップS70は省略してもよい。
【0132】
ステップS80へ進むとDCU80は、ポンプ70の逆回転制御を停止する。そしてDCU80は吸い戻し処理を終了する。
【0133】
次に、本実施形態に係る添加装置100の作用効果を説明する。上記したようにDCU80は、尿素水の流動性(粘性や表面張力)に基づいて添加弁10を開閉制御する。すなわちDCU80は、尿素水の濃度と尿素水の温度により尿素水の流動性を判定する。そしてDCU80は、その尿素水の流動性に応じた制御信号のデューティ比と開閉周波数とを、例えば
図9に示すデューティ比50%に対する開閉周波数0.5Hz〜10.0Hzに決定する。これにより尿素水の吸い戻しが効果的に行われる。すなわち、尿素水の添加弁10の残存量を減らしつつ、尿素水を早く吸い戻すことができる。
【0134】
本発明者は、特許第5841826号公報と同様にして、デューティ比95%で、開弁時間と閉弁時間の比を19:1として、特に尿素水の流動性を加味して決定することなく添加弁10を開閉制御する実験を行った。この場合、
図9と同様にして効果的に尿素水を吸い戻すのに67秒〜200秒かかることが判明した。このように尿素水の流動性を加味せずに閉弁時間を短く設定すると、尿素水を吸い戻すのに時間がかかり、効果的に尿素水を吸い戻すことができなくなる。以上に示したように、本実施形態に係る添加装置100は、デューティ比95%で開閉周波数を特に尿素水の流動性を加味して決定することなく添加弁10を開閉制御する構成と比べて、尿素水を効率的に吸い戻すことができる。
【0135】
なお、上記したように、尿素水の流動性が低い場合、尿素水の流動時間を確保するべく、添加弁10の閉弁時間を長くするとよい。したがってDCU80は、尿素水の流動性が低まると、制御信号のデューティ比を下げることで、閉弁時間を長くする。またDCU80は制御信号の開閉周波数を低くすることで、閉弁時間を長くする。これとは逆に、尿素水の流動性が高まると、DCU80は制御信号のデューティ比を上げることで、開弁時間を長くする。またDCU80は制御信号の開閉周波数を高くすることで、開弁時間を長くする。これにより吸い戻し時間を確保する。以上に示した対応を行うことができるように、DCU80には予め尿素水の流動性に応じた制御信号のデューティ比と開閉周波数とが記憶されている。
【0136】
なお、DCU80は、制御信号を出力している際に、温度センサ92から尿素水の温度を取得して、その取得した温度に基づいて尿素水の流動性を継続して判定してもよい。そしてDCU80はその判定した流動性に基づいて、制御信号のデューティ比および開閉周波数の少なくとも一方を調整してもよい。すなわちDCU80は温度に基づいて制御信号のデューティ比および開閉周波数の少なくとも一方をフィードバック制御してもよい。具体的に言えば、尿素水の温度が低くなると、DCU80はディーティ比を下げる。またDCU80は開閉周波数を低める。これとは逆に、尿素水の温度が高くなると、DCU80はディーティ比を上げる。またDCU80は開閉周波数を高める。
【0137】
これによれば、尿素水の温度変化によって、尿素水の流動性が変化したとしても、それに追随して、閉弁時間を調整することができる。このため、尿素水を効率的に吸い戻すことができる。
【0138】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0139】
本実施形態では、予め記憶されている尿素水の濃度を用いて、制御信号のデューティ比と開閉周波数を決定する例を示した。すなわち、尿素水の濃度は一定であると見なして、制御信号のデューティ比と開閉周波数を決定する例を示した。しかしながら尿素水の濃度が変化する場合、それによっても尿素水の流動性が変化するので、尿素水の濃度の変化に応じて、制御信号のデューティ比と開閉周波数の少なくとも一方を決定してもよい。具体的に言えば、DCU80は尿素水の濃度が高くなると、ディーティ比を下げる。またDCU80は開閉周波数を低める。これとは逆に、DCU80は尿素水の濃度が低くなると、ディーティ比を上げる。またDCU80は開閉周波数を高める。
【0140】
本実施形態では、DCU80は尿素水の流動性に基づいて、制御信号のデューティ比と開閉周波数それぞれを決定する例を示した。しかしながらDCU80は尿素水の流動性に基づいて、制御信号のデューティ比と開閉周波数の一方を決定するだけでもよい。すなわちDCU80は尿素水の流動性に基づいて、制御信号のデューティ比と開閉周波数の一方を決定し、制御信号のデューティ比と開閉周波数の他方を固定値としてもよい。
【0141】
また本実施形態では、DCU80は温度センサ92より尿素水の温度を取得し、予め記憶している尿素水の濃度とその取得した温度により、尿素水の流動性を判定する例を示した。しかしながらDCU80は単に予め記憶している尿素水の濃度によって尿素水の流動性を判定してもよい。この場合、DCU80は尿素水に対応する制御信号のデューティ比と開閉周波数を予め定めておく。すなわちDCU80は尿素水の濃度に基づく流動性を加味して制御信号のデューティ比と開閉周波数を予め定めるものの、尿素水の流動性の変動に応じて制御信号のデューティ比と開閉周波数を定めない。これによっても、尿素水の濃度によって決定される尿素水の流動性を加味せずに制御信号のデューティ比と開閉周波数が定められた構成と比べて、尿素水を効率的に吸い戻すことができる。
【0142】
上記したように、尿素水を噴射する際の添加弁10の開閉制御の周波数は0.5Hz〜3.0Hzである。また、例示した尿素水を効果的に吸い戻す開閉制御の周波数は0.25Hz〜15.0Hzの間である。このように噴射時の開閉周波数は、吸い戻し時の開閉周波数に含まれる。したがって、制御信号の開閉周波数を尿素水の噴射時と吸い戻し時とで同一にしつつ、噴射時と吸い戻し時とでデューティ比を変更してもよい。なお、噴射時の制御信号のデューティ比としては、特に限定されないが、例えば50%を採用することができる。この場合、例えば制御信号のデューティ比を50%、開閉周波数を3.0Hzとして、尿素水の噴射時と吸い戻し時とで制御信号を同一にしてもよい。