特許第6874489号(P6874489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874489
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】自走式布団掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   A47L9/28 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-79596(P2017-79596)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-175420(P2018-175420A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100115543
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 康男
(72)【発明者】
【氏名】大沢 章人
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−366228(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/181849(WO,A1)
【文献】 特表2017−502372(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3163179(JP,U)
【文献】 特開2014−000150(JP,A)
【文献】 特開2014−194729(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0362921(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0353959(US,A1)
【文献】 特許第2516914(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引手段を有する本体を布団面上で移動させる移動手段と、
前記移動手段を駆動させる駆動手段と、
前記本体の進行方向の外縁に設けられた照射点から進行方向前方の被清掃面に光ビームを照射することにより、前記被清掃面との距離を検出する距離センサと、
前記距離センサによって検出された距離が予め設定された距離を超えた場合に、前記移動手段を駆動して前記本体の進行方向を変更する制御手段と、を備え、
前記距離センサは、前記照射点から前記本体の底面を含む仮想平面へと下ろした垂線が前記仮想平面と交わる第1位置と、前記光ビームが前記仮想平面と交わる第2位置との距離が1cmから5cmの範囲内となるように構成され、
鉛直方向に対する前記本体の姿勢の傾きを示す傾斜角度を検出する傾斜センサをさらに備え、
前記傾斜センサによって検出された前記傾斜角度が閾値を超えた場合、前記制御手段は、前記移動手段を駆動して前記本体を前記進行方向に対して後退させる
ように構成され
前記移動手段は、前記本体の底面から下方に突出した一対の従動輪を含み、
前記本体は、前記移動手段に含まれる前記一対の従動輪以外の従動輪を備えておらず、
前記移動手段は、前記本体の底面の前記布団面に対向する側の面の少なくとも一部を前記布団面に接触させながら移動させるように構成されていることを特徴とする自走式布団掃除機。
【請求項2】
前記距離センサは、設置位置又は設置角度を変化させて前記第2位置を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自走式布団掃除機。
【請求項3】
前記距離センサは、光ビーム照射機と、光ビーム受光機と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自走式布団掃除機。
【請求項4】
前記光ビーム照射機は、赤外線を照射するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の自走式布団掃除機。
【請求項5】
前記距離センサは前記本体の外縁に複数設けられていることを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載の自走式布団掃除機。
【請求項6】
前記駆動手段に電力を供給するための電池を備えたことを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載の自走式布団掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式布団掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から作業用機器に走行機能を付加して、作業領域内を自動的に移動する移動装置が開発されている。特に、事前に経路を定めずに自律移動する移動装置については、床面の段差を検出して当該段差からの落下を回避するものがある。例えば、特許文献1の移動装置では、近赤外光等を用いた距離センサを本体の上部前方に斜めに取り付け、前方の床面までの距離を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2516914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の移動装置を布団などの柔軟性のある被清掃面上で移動させると、以下の問題が発生するおそれがある。すなわち、布団は厚みを有しているため、布団の縁部には段差又は傾斜面が形成される。このような布団面上を移動する装置は、距離センサによって布団の縁部の段差又は傾斜を検出して落下回避動作を行ったとしても、柔軟性のある布団が凹むことにより装置本体が傾斜してしまい、そのまま自重で布団面上から落下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、距離センサの取り付け位置を改善することにより、布団面上からの落下を回避した自律走行を可能とする自走式布団掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自走式布団掃除機は、吸引手段を有する本体を布団面上で移動させる移動手段と、移動手段を駆動させる駆動手段と、本体の進行方向の外縁に設けられた照射点から進行方向前方の被清掃面に光ビームを照射することにより、被清掃面との距離を検出する距離センサと、距離センサによって検出された距離が予め設定された距離を超えた場合に、移動手段を駆動して本体の進行方向を変更する制御手段と、を備え、距離センサは、照射点から本体の底面を含む仮想平面へと下ろした垂線が仮想平面と交わる第1位置と、光ビームが仮想平面と交わる第2位置との距離が1cmから5cmの範囲内となるように構成され、鉛直方向に対する本体の姿勢の傾きを示す傾斜角度を検出する傾斜センサをさらに備え、傾斜センサによって検出された傾斜角度が閾値を超えた場合、制御手段は、移動手段を駆動して本体を進行方向に対して後退させるように構成され、移動手段は、本体の底面から下方に突出した一対の従動輪を含み、本体は、移動手段に含まれる一対の従動輪以外の従動輪を備えておらず、移動手段は、本体の底面の布団面に対向する側の面の少なくとも一部を布団面に接触させながら移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自走式布団掃除機によれば、布団面上からの落下を回避した自律走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における自走式布団掃除機の内部構成を側面側から透視した模式図である。
図2】本実施の形態1における距離センサの斜視図である。
図3】本実施の形態1における自走式布団掃除機の制御ブロック図である。
図4】距離センサ11の出力特性の一例を示す図である。
図5】本体に設けられた距離センサの配置及び向きを説明するための図である。
図6】距離センサの検出領域に対する自走式布団掃除機の布団からの落下及びセンサの誤検出の発生確率の一例を示す図である。
図7】本体が布団の縁部付近に到達したときの動作の一例を説明するための図である。
図8】本体が布団の縁部付近に到達したときの動作の他の例を説明するための図である。
図9】本体の上に掛け布団がかけられた状態での動作の例を説明するための図である。
図10】複数の距離センサを備えた自走式布団掃除機を示す平面図である。
図11】複数の距離センサを備えた自走式布団掃除機の制御ブロック図である。
図12】距離センサの設置高さを変更した例を示す図である。
図13】距離センサの出力特性の他の例を示す図である。
図14】台からはみ出して敷かれた布団の上を本体が走行する様子を説明するための図である。
図15】実施の形態2における自走式布団掃除機の内部構成を側面側から透視した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合又は原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造は、特に明示した場合又は明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0010】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、実施の形態1における自走式布団掃除機の内部構成を側面側から透視した模式図である。なお、図1では、紙面左側を前方とし、紙面右側を後方とし、紙面上側を上方とし、紙面下側を下方とする。また、図1では、床面15上に敷き布団13が敷かれ、敷き布団13の上に自走式布団掃除機の本体1が配置されている様子を示している。
【0011】
この図に示すように、自走式布団掃除機の本体1はボディ2を備えている。ボディ2は、自走式布団掃除機の外枠を形成する部位である。ボディ2の内部には、自走式布団掃除機に備えられた各種の機器が設けられている。
【0012】
自走式布団掃除機の本体1は、制御手段3と、駆動手段4と、移動手段5と、電池6と、吸込手段7と、吸引手段8と、集塵手段9と、連通手段10と、操作部12とを備えている。制御手段3は、自走式布団掃除機の自律走行運転および清掃運転を制御するためのものである。移動手段5は、自走式布団掃除機の本体1を移動させるための機構であり、例えば車輪を含んで構成される。駆動手段4は、移動手段5を駆動して自走式布団掃除機の本体1を移動させるためのものであり、例えばモータにより構成される。制御手段3が駆動手段4の回転方向、回転速度等を制御することにより、自走式布団掃除機の本体1の移動方向、速度等が制御される。
【0013】
電池6は、本体1の各構成要素に電力を供給するためのものである。吸込手段7は、被清掃面上に存在する塵埃を掻き出して吸い込むためのものであり、例えば回転ブラシにより構成される。なお、被清掃面とは、自走式布団掃除機によって掃除される面であり、ここでは布団面を意味する。吸込手段7は、連通手段10を介して集塵手段9に接続されている。吸引手段8は空気とともに塵埃を吸引するためのものであり、例えばブロアモータにより構成される。吸引手段8が動作することによって吸込手段7から塵埃が吸い込まれる。吸込手段7から吸い込まれた塵埃は連通手段10を介して集塵手段9へと流通する。集塵手段9は、吸い込まれた塵埃を捕集する。また、自走式布団掃除機の本体1は、本体1に所望の動作をさせるための操作部12を有している。
【0014】
自走式布団掃除機の本体1は、吸引手段8を動作させた状態で駆動手段4を駆動させることにより、塵埃を吸込手段7から吸い込みながら布団面上を走行する。このとき、本体1の底面1aの布団面に対向する側の面の少なくとも一部は、布団面上に接触しながら走行する。移動手段5は、底面1aから下方に突出した一対の車輪であり、本体1の質量により布団に押し込まれて布団面との摩擦を維持する。このように、移動手段5を底面1aから下方に突出して構成することにより、底面1aの布団面に対向する側の面の少なくとも一部が柔らかい布団面上に接しながら走行することができる。したがって、移動手段5以外の従動輪のない構成でも、布団面上を安定的に走行することができる。また、後述する距離センサ11の布団面との距離の計測ばらつきを小さくすることができる。なお、移動手段5は被清掃面の布団の柔らかさによって突出量を調節可能な構成とすることが望ましい。
【0015】
自走式布団掃除機の本体1は、対象物との距離を検出するための距離センサ11を備えている。距離センサ11は、自走式布団掃除機の本体1の進行方向の外縁、つまり本体1の前方側の外縁に配置されている。図2は、本実施の形態1における距離センサ11の斜視図である。距離センサ11は、光ビーム照射機11aと光ビーム受光機11bとを有している。光ビーム照射機11aは、照射点11cから被清掃面に向けて光ビームを照射するためのものである。光ビーム受光機11bは、被清掃面により反射される反射光を受光するためのものである。光ビーム照射機11aと光ビーム受光機11bは、本体1の前方の外縁から進行方向前方の被清掃面に位置する検出領域に対向するように配置される。この図に示す例では、光ビーム照射機11aと光ビーム受光機11bは、鉛直軸に対して20°から30°前方を向くように配置される。なお、距離センサ11の配置については詳細を後述する。反射光の光量は、距離センサ11が検出領域に近接しているほど多くなる。制御手段3は、距離センサ11の光ビーム受光機11bが受光する光量のレベルを検出し、本体1と検出領域との位置関係を認識する。なお、照射機より照射される光ビームには、赤外線を用いることができる。赤外線による発光素子および受光素子は、既に広く世に出回っており入手性も良いため、本発明による自走式布団掃除機においても容易に採用することが可能である。また、赤外線を用いることにより、昼夜および室内の明るさの影響を受けずに距離の検出を行うことが可能である。
【0016】
図3は、本実施の形態1における自走式布団掃除機の制御ブロック図である。なお、この図における矢印の向きは、各種構成要素間における制御信号又は検出信号等が送信される向きを示している。操作部12から清掃運転の指示が出されると、本体1は清掃運転及び自律走行運転を開始する。電池6からは制御手段3へ電力が供給される。また、各種構成要素には、電池6から制御手段3を介して電力が供給される。制御手段3は、吸込手段7及び吸引手段8を駆動することにより、布団面の塵埃を吸引する清掃運転を行う。吸引した塵埃は集塵手段9に格納される。
【0017】
また、制御手段3には、距離センサ11の検出信号が入力される。制御手段3は、距離センサ11の検出信号に基づいて、本体1が布団上から落下しないように駆動手段4の動作を制御する自律走行運転を行う。ここで、距離センサ11は、照射点11cから検出領域までの距離Dに応じたアナログ電圧Vを出力する。図4は、距離センサ11の出力特性の一例を示す図である。この図に示す例では、距離センサ11の照射点11cから検出領域までの距離Dが大きくなるほど、出力されるアナログ電圧Vが小さな値に変化する特性が示されている。
【0018】
図4に示す出力特性では、距離Daが距離センサ11と布団面とが近接している場合の検出領域までの距離を表し、電圧Vaがこのときに出力される電圧を表している。制御手段3は、距離センサ11によって検出される電圧Vを常に監視している。距離センサ11から電圧Vaが出力されている間は、距離センサ11の照射点11cと検出領域の布団面との距離Dが距離Daに保たれていると判断することができる。一方、距離センサ11から出力される電圧Vが電圧Vaよりも小さな値となった場合には、距離Dが距離Daよりも大きくなったと判断することができる。この場合、本体1の進行方向前方に段差又は傾斜があると判断することができるので、そのまま自走式布団掃除機の走行を継続すると本体1が布団面上から落下する可能性がある。そこで、実施の形態1の自走式布団掃除機では、布団面からの落下のおそれのある距離Dの閾値Dxを制御手段3に予め記憶させておく。そして、制御手段3は、距離センサ11によって検出される電圧Vが閾値Dxに対応する電圧Vxより小さくなった場合に、本体1が布団から落下しないように移動手段5の挙動を変化させる。具体的には、制御手段3は、駆動手段4を制御して本体1の進行方向が逆転するように移動手段5を動作させる。このような制御によれば、本体1が布団から落下する前に本体1の進行方向を変化させることができるので、本体1が布団面から落下することを回避することができる。
【0019】
[実施の形態1の特徴]
次に、実施の形態1の自走式布団掃除機の特徴について説明する。距離センサ11は、本体1の進行方向の前方の布団面上のうち、光ビームが照射された検出領域との距離を検出する。距離センサ11の検出領域は、距離センサ11の配置及び向きによって変化する。実施の形態1の自走式布団掃除機は、距離センサ11の配置及びその検出領域に特徴を有している。
【0020】
図5は、本体1に設けられた距離センサ11の配置及び向きを説明するための図である。この図に示すように、距離センサ11は、照射点11cから本体1の底面1aを含む仮想平面Sへと下ろした垂線L1が仮想平面Sと交わる第1位置P1と、照射点11cから照射された光ビームが仮想平面Sと交わる第2位置P2との仮想距離Dvが、1cmから5cmの範囲内となるように、その配置及び向きが設定されている。
【0021】
図6は、仮想距離Dvに対する自走式布団掃除機の布団からの落下及びセンサの誤検出の発生確率の一例を示す図である。この図に示す例では、仮想距離Dvが1cmを下回ると、布団から落下する可能性が急激に高まることを示している。これは、布団面上は、床面等の平坦な面上と比較して本体1が不安定になり易いこと、及び布団の縁部付近は丸みを帯びており本体1が滑り落ち易いことに起因している。また、この図に示す例では、仮想距離Dvが5cmを上回ると、距離センサ11が誤検出する可能性が急激に高まることを示している。これは、布団面上は、床面等の平坦な面上と比較して凹凸が激しいことに起因している。実施の形態1の自走式布団掃除機では、上述した仮想距離Dvが1cmから5cmの範囲内となるように、距離センサ11の配置及び向きが設定されている。これにより、距離センサ11の誤検出を防ぎつつ本体1の布団面からの落下を抑制することが可能となる。
【0022】
次に、実施の形態1の自走式布団掃除機の具体的な動作について、幾つかの例示を参照しながら説明する。
【0023】
図7は、本体1が敷き布団13の縁部14付近に到達したときの動作の一例を説明するための図である。図7では、紙面左側を前方とし、紙面右側を後方とし、紙面上側を上方とし、紙面下側を下方とする。
【0024】
この図に示す例の敷き布団13は、縁部14が床面15に対して垂直方向に延びる平面で構成されている。制御手段3は本体1が敷き布団13の上を走行しながら清掃動作を行うように、駆動手段4、吸引手段8、吸込手段7及び移動手段5を制御している。本体1が縁部14に近づくことにより検出領域が敷き布団13の上から床面15に変化すると、距離センサ11からの距離DがDa(<Dx)からDc(>Dx)に変化する。制御手段3は、距離センサ11の出力がVa(>Vx)からVc(<Vx)に変化したことを受けて、本体1を、縁部14付近から後退させるように駆動手段4を制御する。これにより、本体1が敷き布団13から落下することを防止できる。
【0025】
図8は、本体1が敷き布団13の縁部14付近に到達したときの動作の他の例を説明するための図である。図8では、紙面左側を前方とし、紙面右側を後方とし、紙面上側を上方とし、紙面下側を下方とする。
【0026】
この図に示す例の敷き布団13は、縁部16が丸みを帯びて構成されている。丸みを帯びた縁部16に本体1が近づくと、本体1が傾斜してしまい、そのまま自重で落下してしまうおそれがある。本体1が縁部16に近づくことにより検出領域が敷き布団13の面上から縁部16に変化すると、距離センサ11からの距離DがDa(<Dx)からDbに変化する。実施の形態1の自走式布団掃除機では、閾値DxがDbより小さな値に設定されている。制御手段3は、距離センサ11の出力がVa(>Vx)からVc(<Vx)に変化したことを受けて、本体1を、縁部14付近から後退させるように駆動手段4を制御する。これにより、本体1が敷き布団13の縁部16から滑り落ちることを防止できる。
【0027】
図9は、本体1の上に掛け布団17がかけられた状態での動作の例を説明するための図である。図9では、紙面左側を前方とし、紙面右側を後方とし、紙面上側を上方とし、紙面下側を下方とする。なお、ここで言う掛け布団17は、敷布団又はマットレス等の上に置かれた布上のものを指している。具体的には、掛け布団17には、綿、羽毛、羊毛等の掛け布団だけではなく、毛布、タオルケット、本体1が潜り込める程に捲れ上がったシーツ又は衣類等も含むものとする。
【0028】
実施の形態1の自走式布団掃除機は、ボディ2の前方側の上面部2aが前方に向かうにつれて水平方向よりも下方側に傾斜する傾斜面によって構成されている。このような形状のボディ2の形状によれば、掛け布団17が掛けられた本体1が前方に移動する際に、掛け布団17が上方へと押し上げられる。掛け布団17が上方へと押し上げられると、敷き敷き布団13と掛け布団17との間に空間が形成される。これにより、本体1の前方の外縁に配置された距離センサ11の照射点11cと検出領域との間が掛け布団17によって遮られることを防ぐことができる。制御手段3は、距離センサ11の出力がVa(>Vx)からVc(<Vx)に変化したことを受けて、本体1を、縁部16付近から後退させるように駆動手段4を制御する。これにより、本体1が敷き布団13の縁部16から滑り落ちることを防止できる。
【0029】
ところで、上述した実施の形態1の自走式布団掃除機は、以下のように変形した形態を採用してもよい。
【0030】
実施の形態1の自走式布団掃除機は、複数の距離センサ11を備える構成を採用することができる。図10は、複数の距離センサを備えた自走式布団掃除機を示す平面図である。また、図11は、複数の距離センサを備えた自走式布団掃除機の制御ブロック図である。なお、図10では、紙面左側を前方とし、紙面右側を後方とし、紙面上側を右方とし、紙面下側を左方とする。図10に示す例では、本体1の外縁の前方中央、前方右、前方左、後方中央、後方右、及び後方左に、それぞれ距離センサ11が配置されている。図11に示すように、それぞれの距離センサ11の検出信号は、制御手段3に入力される。制御手段3は、複数の距離センサ11の検出信号のうち、本体1の進行方向に配置された距離センサ11の検出信号に基づいて、駆動手段4の動作を制御する。駆動手段4は、制御手段3からの制御情報に基づいて、本体1が布団上から落下しないように移動手段5を動作させる。これにより、本体1が前方以外の方向に移動している場合であっても布団面からの落下を防ぐことが可能となる。なお、距離センサ11の個数及び配置は上記の例に限られず、本体1の形状等に応じて適宜設定することができる。
【0031】
実施の形態1の自走式布団掃除機に配置された距離センサ11は、その位置又は設置角度を手動又は自動で可変可能に構成されていてもよい。図12は、距離センサの設置高さを変更した例を示す図である。距離センサ11の設置角度が同じであれば、設置位置が上方であるほど検出領域は本体1から遠い位置となる。また、距離センサ11の設置高さが同じであれば、水平面に対する設置角度が小さいほど検出領域は本体1から遠い位置となる。例えば、この図に示す自走式布団掃除機の例では、距離センサ11の設置高さを鉛直方向に1cmから5cmの範囲で可変可能に構成されている。このような構成によれば、被清掃面である布団面の硬さ又は厚さ等に応じて検出領域を調整することも可能となる。例えば、柔軟な布団面を掃除する場合には検出領域を遠ざけて落下のリスクを更に低減するといった使い方をすることもできる。なお、距離センサ11の設置高さを調整する場合には、第1位置P1と第2位置P2との仮想距離Dvが1cmから5cmの間となる範囲で調整する必要がある。そこで、距離センサ11設置位置は、仮想距離Dvが1cmから5cmの間となる範囲で調整可能に構成されていてもよい。また、距離センサ11は、設置位置に加えて又はこれに代えて設置角度を手動で又は自動で調整可能に構成されていてもよい。この場合においても、仮想距離Dvが1cmから5cmの間となるように、設置角度の範囲に制限を設けることとしてもよい。
【0032】
距離センサ11の出力特性は、図4に示すものに限られない。図13は、距離センサ11の出力特性の他の例を示す図である。この図に示す例では、距離センサ11の照射点11cから検出領域までの距離Dが大きくなるほど、出力されるアナログ電圧Vが大きな値に変化する特性が示されている。
【0033】
図13に示す特性では、距離センサ11から電圧Vaが出力されている間は、距離センサ11の照射点11cと検出領域の布団面との距離Dが距離Daに保たれていると判断することができる。一方、距離センサ11から出力される電圧Vが電圧Vaよりも大きな値となった場合には、距離Dが距離Daよりも大きくなったと判断することができる。距離Dが大きくなると自走式布団掃除機の本体1が布団面上から落下する可能性が高くなる。そこで、距離センサ11の出力特性が図13に示すものである場合には、制御手段3は、距離センサ11によって検出される電圧Vが閾値Dxに対応する電圧Vxより大きくなった場合に、本体1が布団から落下しないように移動手段5の挙動を変化させればよい。
【0034】
実施の形態2.
次に、実施の形態2の自走式布団掃除機について説明する。実施の形態2の自走式布団掃除機は、実施の形態1の自走式布団掃除機の構成に加えて傾斜センサを備えたことに特徴を有している。
【0035】
図14は、台からはみ出して敷かれた布団の上を本体が走行する様子を説明するための図である。図14では、紙面左側を前方とし、紙面右側を後方とし、紙面上側を上方とし、紙面下側を下方とする。この図に示す敷き布団13は、床面15に配置された台18の上において、丸みを帯びた縁部16が台18からはみ出した状態で敷かれている。この図のように、縁部16が空中に浮いた状態では、自走式布団掃除機の本体1が縁部16付近に到達して距離センサ11が距離Db(>閾値Dx)となる出力信号を発する前に、本体1が自重で落下してしまうおそれがある。
【0036】
図15は、実施の形態2における自走式布団掃除機の内部構成を側面側から透視した模式図である。なお、実施の形態2における自走式布団掃除機の構成において、実施の形態1における自走式布団掃除機と共通する要素には、共通の符号を付してその説明を省略する。また、図15では、紙面左側を前方とし、紙面右側を後方とし、紙面上側を上方とし、紙面下側を下方とする。実施の形態2の自走式布団掃除機は、本体1の内部に傾斜センサ19を備えている。傾斜センサ19は、鉛直方向に対する傾きに応じた出力を発するセンサである。傾斜センサ19が本体1に固定されることにより、本体1の鉛直方向に対する傾斜角度θを検出することが可能となる。
【0037】
図15に示す敷き布団13は、床面15に配置された台18の上において、丸みを帯びた縁部16が台18からはみ出した状態で敷かれている。距離センサ11は縁部16の下の状態を把握することができないため、本体1は空中に浮いた縁部16へと近づいてしまう。この場合、本体1は自重によってその前方が下方に傾いてしまい、布団から落下するおそれがある。
【0038】
実施の形態2の自走式布団掃除機では、制御手段3は、傾斜センサ19によって傾斜角度θを検出する。そして、制御手段3は、検出された傾斜角度θが傾斜角度の閾値θxを超えた場合に、本体1を、縁部16付近から後退させるように駆動手段4を制御する。閾値θxは、本体1が自重で落下しないための傾斜角度の限界値として、予め実験等で定められた値を用いることができる。これにより、本体1が敷き布団13から落下することが防がれる。
【0039】
このように、実施の形態2の自走式布団掃除機によれば、本体1の姿勢の傾きを検出する傾斜センサ19をさらに備えたので、敷き布団13がベッド又は台からはみ出た状態であっても本体1が布団面から落下することを防止する効果を奏する。
【符号の説明】
【0040】
1 本体、1a 底面、 2 ボディ、 2a 上面部、 3 制御手段、 4 駆動手段、 5 移動手段、 6 電池、 7 吸込手段、 8 吸引手段、 9 集塵手段、10 連通手段、 11 距離センサ、 11a 光ビーム照射機、 11b 光ビーム受光機、11c 照射点、 12 操作部、 19 傾斜センサ
図1
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