(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る調理器について図を用いて説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る家庭用の製パン機1の全体斜視図を示している。この製パン機1の本体2は、有底筒状の外壁を有し、内側には上方へ開口した収容口2aが形成されている。そしてこの収容口2aを覆う蓋2bは、跳ね上げ式に開閉可能となるように上端側にヒンジ機構を介して枢着されている。収容口2aの下方には、調理対象物を投入するケース4が収容される有底筒状の焼成室2cを有している。
【0017】
ここで、本実施の形態に係る製パン機1では、IH式の加熱機構を採用した構成を例として示している。IH式の加熱機構においては、電磁誘導による加熱を効率良く行うために、加熱対象と加熱機構との距離(電磁誘導ギャップ)はできるだけ小さく、且つ、全周及び全面に亘って一定のものとしなければならない。
【0018】
一方、主として角型の食パンを焼く家庭用の製パン機1は、
図1に示したように、ケース4が断面略方形に形成されている。そして、このようにケース4の断面形状が略方形に形成されていると、ケース4と焼成室2cとが近接配置されているので、ケース4を回転させようとしても角が焼成室2cの内壁と干渉してしまう。
【0019】
したがって、IH式の加熱機構を備える製パン機1では、ケース4を本体2に対して固定する固定構造としてヘリコイド式の機構を採用できる程度には、ケース4と焼成室2cとの間に十分なクリアランスを設けることができない。そこで、本実施の形態に係る構成では、ケース4の上縁(開口面)の対向する2箇所に固定部8が設けられている(
図1では一方のみが表れている。)。
【0020】
この固定部8によって、収容されたケース4は本体2に対して固定可能である。固定部8は、本体側固定部10とケース側固定部12とからなる対で構成されており、ケース4を搬送するための可倒式の取手6は、ケース側固定部12に対して回動自在に取り付けられている。
【0021】
次に、これら固定部8を構成する本体側固定部10及びケース側固定部12について、個別に拡大図を用いて説明する。
【0022】
図2は、ケース側固定部12の拡大斜視図であり、
図2(a)は取手6が傾斜位置にある状態、
図2(b)は取手6が起立位置にある状態を示している。言い換えると、傾斜位置はケース開口面に対して第1所定角度以下であり、起立位置はケース開口面に対して第1所定角度よりも大きくなる位置である。具体的には、第1所定角度とは、ケース4と取手6との間に形成される角度のうち、蓋2bを閉じることができる最大の角度である。
【0023】
取手6がケース側固定部12に対して回動自在に設けられていることは上述したが、この回動中心の下方に出没可能な凸部12aが設けられている。そして、凸部12aが設けられている周辺の側面は他の側面よりも一段外側に突出して形成されているのが見て取れる。この凸部12aは取手6の回動位置に応じて突出状態及び退避状態が切り換えられる構成となっている。具体的には、
図2(a)のように取手6が傾斜位置にあるときに凸部12aは突出し、
図2(b)のように取手6が起立位置にあるときに凸部12aは退避するように連動する。
【0024】
取手6の回動中心近傍には、回動方向において両側に、取手6の回動を所定の範囲内に規制する回動規制部12bが形成されている。これにより、取手6は、収容状態では、ケース4の上縁に対して完全に倒伏状態とはならずに、特定の傾斜位置にて安定する。なお、内部の詳しい構造については後述する。
【0025】
図3は、本体側固定部10の拡大斜視図である。本体側固定部10には、上述のケース側固定部12の凸部12aが嵌合可能な凹部10aが中央に形成されている。この凹部10aの周辺の側面は、凸部12aの周辺の突出形成された側面と略同じ幅で凹状に形成されている。
【0026】
また、本体側固定部10の両端には、ケース側固定部12の長手方向の両端部を囲うことができるようにガイド壁10bが形成されている。
【0027】
このように構成されているので、対をなす凸部12a(
図2参照)及び凹部10a同士の位置決めが容易であるとともに、収容されたケース4を本体2の中で安定して保持することが可能である。
【0028】
続いて、固定部8の内部構造について
図4を用いて説明する。ここでは、説明の便宜のために本体側固定部10、ケース側固定部12共に、模式的に表しており、取手6は点線で表している。
【0029】
図4(a)は、ケース4上方から見た一部透視図であり、ケース側固定部12の凸部12aが本体側固定部10の凹部10aに係合した状態、すなわち、固定部8によってケース4が本体2にロックされた状態が示されている。本実施の形態に係る製パン機1では、取手6の回動位置が傾斜位置にあるときにロック状態となる。
【0030】
図4(a)中に点線で示したように、取手6は90度の曲げ加工により回動軸6aが形成されている。そして、この回動軸6aからさらに90度曲げ加工を施すことによって作用部6bが形成されている。このように、回動軸6aの長さだけオフセットされて、作用部6bは上方で回動する部分と略平行に形成されている。
【0031】
ケース側固定部12には、凸部12aと、この凸部12aに一体に形成された摺接部14(切換手段)が内蔵されている。この摺接部14は、凸部12aが突設されている側の頂点が丸め加工を施された略三角形状に形成されており、
図4(a)では斜線が施されている。回動軸6aは摺接部14よりも高い位置に配置されている。
【0032】
また、摺接部14は、取手6の揺動に伴って下方側で円弧状に振れる作用部6bが、その斜辺に干渉可能な位置に形成されている。
【0033】
図4(a)は、取手6が傾斜位置にある状態が示されており、作用部6bは摺接部14と離間した位置に振れている。これら凸部12a及び摺接部14は、2つのバネ16の収縮力によって外部に凸部12aが突出するように付勢されている。したがって、凸部12a及び摺接部14には、バネ16の収縮力だけが作用しており、凸部12aが本体側固定部10の凹部10aに嵌入した状態となっている。
【0034】
次に
図4(b)を参照して、
図4(b)には、取手6が起立位置(直立位置)にある状態が示されている。取手6の回動軸6aより上方と作用部6bとが略平行に形成されているので、
図4(b)ではそれぞれ断面円形の斜線領域で表されている。
【0035】
取手6がこの起立位置に達するまでに、作用部6bは摺接部14の斜辺上を摺動しながら、丸め加工が施された頂点へ乗り上げる。これにより、凸部12a及び摺接部14はバネ16の収縮力による付勢に抗して、相対的に、凸部12aが退避する方向へ押し遣られる。
【0036】
このように、取手6が起立位置に達すると、ケース側固定部12の凸部12aは、本体側固定部10の凹部10aから離脱し、ケース4は本体2に対して解除状態となる。
【0037】
以上のように構成されているので、ユーザが取手6を持ち上げると、起立位置まで回動した取手6によって固定部8の固定状態が自動的に解除される。
【0038】
また、ケース4を本体2に収容した後、取手6を傾斜位置まで回動させると、ケース4が本体2に対してロックされる。通常はこのようにユーザが意図的にロック状態を形成するために取手6を傾斜位置まで回動させるものである。
【0039】
しかし、万が一ロックさせることをユーザが忘れた場合や、傾斜位置までの角度が十分ではないにもかかわらずロックしたと思い込んでいる場合であっても、蓋2b(
図1を参照)を閉じることにより、必ずロック可能な傾斜位置(第1所定角度)に達するため、ロック忘れ防止ができる構成となっている。
【0040】
なお、上述の摺接部14は、取手6が何れの方向に回動した場合であっても傾斜配置を形成してロックできるように、起立位置を中心とした鏡面対称の構造となっている。これにより、ユーザが取手6を何れの側に傾けても安全且つ確実にロック状態を形成することが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態においては、取手6の円弧運動を凸部12aの進退運動へ変換し、ロック及び解除状態を切り換える切換手段として、摺接部14を利用する構成を例示した。
【0042】
すなわち、凸部12aと一体に構成され、円弧運動する取手6の一部と摺接可能であって、取手6が起立位置に向かうにつれて凸部12aを凹部10aから引き離すように形成された縁構造を有する摺接部14を、本実施の形態における切換手段と定義する。
【0043】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る製パン機21(調理器)について、図を用いて説明する。
【0044】
図5は、製パン機21の全体斜視図を示している。この製パン機21の本体22は、有底筒状の外壁を有し、内側には上方へ開口した収容口22aが形成されている。そしてこの収容口22aを覆う蓋22bは、跳ね上げ式に開閉可能となるように上端側にヒンジ機構を介して枢着されている。収容口22aの下方には、調理対象物を投入するケース24が収容される有底筒状の焼成室22cを有している。
【0045】
ここで、本実施の形態に係る製パン機21では、第1の実施の形態と同様に、IH式の加熱機構を採用した構成を例として示している。上述のように、IH式の加熱機構においては、電磁誘導による加熱を効率良く行うために、加熱対象と加熱機構との距離(電磁誘導ギャップ)はできるだけ小さく、且つ、全周及び全面に亘って一定のものとしなければならない。
【0046】
一方、主として角型の食パンを焼く家庭用の製パン機21は、
図5に示したように、ケース24が断面略方形に形成されている。そして、このようにケース24の断面形状が略方形に形成されていると、ケース24と焼成室22cとが近接配置されているので、ケース24を回転させようとしても角が焼成室22cの内壁と干渉してしまう。
【0047】
したがって、IH式の加熱機構を備える製パン機21では、ケース24を本体22に対して固定する固定構造としてヘリコイド式の機構を採用できる程度には、ケース24と焼成室22cとの間に十分なクリアランスを設けることができない。そこで、本実施の形態に係る構成では、ケース24の上縁(開口面)に対向する2箇所に固定部28が設けられている(
図5では一方のみが表れている。)。
【0048】
この固定部28によって、収容されたケース24は本体22に対して固定可能である。固定部28は、本体側固定部30とケース側固定部32とからなる対で構成されており、ケース24を搬送するための可倒式の取手26は、ケース側固定部32に対して回動自在に取り付けられている。
【0049】
次に、これら固定部28を構成する本体側固定部30及びケース側固定部32について、個別に拡大図を用いて説明する。
【0050】
図6は、ケース側固定部32の拡大斜視図である。取手26がケース側固定部32に対して回動自在に設けられていることは上述の通りである。本実施の形態に係る取手26は、第1の実施の形態に係る取手6における作用部6bに相当する構成は形成されておらず、後述する回動軸26aが90度の曲げ加工により形成されているのみである。
【0051】
ケース側固定部32の上面には、外側に2箇所の係合凹部32aが形成されている。また、本実施の形態に係るケース側固定部32においても、第1の実施の形態に係るケース側固定部12の回動規制部12bに相当する回動規制部32bが、取手26の回動中心近傍に形成されている。これにより、取手26は、収容状態では、ケース24の上縁に対して完全に倒伏状態とはならずに、特定の傾斜位置にて安定する。このケース側固定部32の詳しい内部構造については後述する。
【0052】
なお、傾斜位置とは、第1の実施の形態において定義したのと同様に、ケース開口面に対して第1所定角度以下となる位置である。これに対して起立位置は、ケース開口面に対して第1所定角度よりも大きくなる位置をいう。具体的には、第1所定角度とは、ケース24と取手26との間に形成される角度のうち、蓋22bを閉じることができる最大の角度である。
【0053】
図7は、本体側固定部30の拡大斜視図である。本体側固定部30には、上述のケース側固定部32の2箇所の係合凹部32aに嵌合可能な係合爪30aが設けられている。そして、これら係合爪30aの間には、取手26が摺接可能な摺接部34(切換手段)が設けられている。この摺接部34は、本体22にケース24が収容された状態において、取手26の回動軸26a(
図8参照)よりも高い位置になり、回動軸26aに近い部分と干渉可能となる。
【0054】
続いて、固定部28の内部構造について
図8を用いて説明する。ここでは、第1の実施の形態における
図4と同様に、説明の便宜のため、本体側固定部30、ケース側固定部32共に模式的に表すこととし、取手26は点線で表す。
【0055】
図8(a)は、ケース24上方から見た一部透視図であり、ケース側固定部32の係合凹部32aに、本体側固定部30の係合爪30aが係合した状態、すなわち、固定部28によってケース24が本体22にロックされた状態が示されている。取手26の回動位置が傾斜位置にあるときにロック状態となる構成は、
図1の製パン機1と同様である。
図8(a)中に点線で示したように、取手26は90度の曲げ加工により回動軸26aが形成されている。
【0056】
上述のように取手26のうち、回動軸26aの近傍が本体側固定部30から突出する摺接部34と摺接可能となる。したがって、この回動軸26aに繋がる近傍領域を便宜的に取手26の作用部26bと呼ぶこととする。摺接部34の中央には内側へ向けて凸部34aが突設されており、この凸部34aの両脇には回動軸26aの延びる方向に同じ高さで平坦部34bが形成されている。
【0057】
そして、摺接部34と2つの係合爪30aとは一体に構成されており、これら摺接部34及び係合爪30aは、本体側固定部30の内部に設けられた2つのバネ36の伸張力によってケース24(ケース側固定部32)側へ突出する方向へ付勢されている。
【0058】
図8(a)の状態では、取手26は傾斜位置にあり、摺接部34の平坦部34bと接している。ここでは、構造を簡略化してロック状態を明確に表すため、
図6においてケース側固定部32の上面に示した回動規制部32bについては、図示を省略しているが、本実施の形態においては、回動規制部32bによって規制される範囲内を回動する取手26は、回動規制部32bによって摺接部34上を外れないように構成されている。
【0059】
次に
図8(b)を参照して、
図8(b)には、取手26が起立位置にある状態が示されている。
図8(b)において、取手26は斜線を施された円形の部分(作用部26bを含む)と、これに直交する方向へ延びる回動軸26aとによって表されている。
【0060】
起立位置まで回動すると、取手26は摺接部34の凸部34aと干渉し、バネ36の伸張方向への付勢に抗して摺接部34と係合爪30aとをケース24から遠ざける。これにより、ケース側固定部32の係合凹部32aから本体側固定部30の係合爪30aが離脱し、固定部28によるケース24のロックが解除される。
【0061】
すなわち、係合爪30aと一体に構成され、円弧運動する取手26の一部と摺接可能であって、取手26が起立位置に向かうにつれて係合爪30aを係合凹部32aから引き離すように形成された縁構造(凸部34a)を有する摺接部34を、本実施の形態における切換手段と定義する。
【0062】
以上述べてきたように、第1及び第2の実施の形態に係る製パン機1、21の構成によれば、ユーザがロック及び解除のための操作を意識することなく、必要に応じて切り換えられるので、誤動作を防止できる。また、ケース4、24を本体2、22に確実に固定できるので、安定した動作が可能である。
【0063】
なお、第1及び第2の実施の形態に示した構成は本発明の一例であり、以下のような変形例も含まれる。
【0064】
例えば、第1の実施の形態において、取手6の先端に摺接部14に水平方向への進退運動をさせるための力を与える作用部6bを先端に設けた構成を示した。しかし、この例のように作用部が取手の上方に対してオフセットしている必要はなく、一直線上に延びる構造であっても構わない。
【0065】
また、第1の実施の形態において、回動軸6aよりも下方に摺接部14を設けた構成を例として示したが、回動軸6aよりも上方に摺接部14を設ける構成であっても良い。逆に、第2の実施の形態の場合は、摺接部を回動軸よりも下方に設ける構成であっても良い。
【0066】
また、第1及び第2の実施の形態において、摺接部(14、34)が取手(6、26)の起立位置を中心として鏡面対称となる構造を例として示した。しかし、少なくとも、起立位置においてロックが解除され、何れかの傾斜位置においてロック状態が形成される構造であれば、鏡面対称である必要はない。
【0067】
また、第1の実施の形態において、取手6は摺接部14の一側面(具体的には、外方の側面)のみに摺接する構造を例として示したが、これに限定する必要はない。例えば、摺接部が、起立位置における取手から内側へ向けて凸部に力を及ぼすような形状に湾曲形成された長孔で構成されていても同様の効果を得ることが可能である。この場合、長孔に対しては、外方及び内方の側面の何れも利用することができるので、バネ等を用いて付勢を与えなくても進退動をさせることが可能である。第2の実施の形態の場合も同様に、長孔を切換手段の摺接構造とすることが可能である。
【0068】
また、第1及び第2の実施の形態において、ケース側固定部(12、32)と本体側固定部(10、30)との係合のための凸部(12a、34a)又は係合爪(30a)が、摺接構造を有する切換手段と一体に構成されている例を示した。しかし、カム機構やリンク機構などの別部材同士の組み合わせにより切換手段を構成しても構わない。
【0069】
また、第1及び第2の実施の形態では、製パン機(1、21)を調理器の一例として示したが、可倒式の取手を内側のケースに備えている調理器であれば、製パン機に限定されるものではない。
【0070】
また、第1及び第2の実施の形態では、IH式の加熱機構を備えた製パン機1、21を例として示した。上述のように、IH式の加熱機構においては、ケース4、24と本体2、22との間に十分なクリアランスを取ることができないので、固定部8、28のような構成は特に有用である。しかし、焼成室2c、22cのスペースをコンパクトに設計することが出来るので、IH式の加熱機構以外の構成に対しても有用である。