特許第6874495号(P6874495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874495
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   A47J37/00 301
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-81183(P2017-81183)
(22)【出願日】2017年4月17日
(65)【公開番号】特開2018-175528(P2018-175528A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中原 健次
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−204861(JP,A)
【文献】 実開昭60−094085(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00−37/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌及び加熱が可能な加熱調理器であって、
調理対象物を格納する加熱用のケースと、
少なくとも一部が低熱伝導体又は断熱材で構成され、回転駆動力を伝達する回動部を有し、前記ケースに対して脱着自在に連結される連結部と、
前記連結部に対して脱着可能に連結され、回転駆動力を前記回動部に伝達する回転伝達機構と、
前記ケース内において前記回動部に連結され、前記調理対象物を攪拌する攪拌部と、
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
攪拌及び加熱が可能な加熱調理器であって、
調理対象物を格納する加熱用のケースと、
前記ケースの側面に対向する領域のみに配置されるヒーターと、
少なくとも一部が低熱伝導体又は断熱材で構成され、回転駆動力を伝達する回動部を有し、前記ケースに対して連結される連結部と、
前記連結部に対して脱着可能に連結され、回転駆動力を前記回動部に伝達する回転伝達機構と、
前記ケース内において前記回動部に連結され、前記調理対象物を攪拌する攪拌部と、を備え、
前記連結部は、前記ケースの底面よりも小さい熱伝導体を介して前記ケースと脱着自在に連結され、前記熱伝導体に対しても前記連結部が脱着自在であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
前記連結部の前記回動部は、前記攪拌部と脱着可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製パン機に代表されるような、調理対象物を攪拌する攪拌機構を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
調理対象物を攪拌する攪拌機構を備えた加熱調理器が多方面で利用されている。業務用途では、ソース、炒め物、佃煮などの調理や餡練りなどを行うことができる加熱攪拌機がある。
【0003】
一方、一般家庭では小麦粉等の材料を投入するだけで、生地の混練、発酵、焼き上げまでを全自動で行う製パン機が普及している。
【0004】
上記の加熱攪拌機や製パン機などの加熱調理器には、加熱すべき容器に近接して攪拌機構が備えられている。このため、攪拌機構が加熱容器に接するように配置されている場合は、攪拌機構の近傍には熱源を配置することができない。したがって、熱源に近い領域と攪拌機構が設けられている領域との間に加熱ムラが生じやすい。
【0005】
特に、製パン機では、焼き上げ段階で攪拌することができないので、焼きムラの問題が顕著になる。
【0006】
これに対して、加熱部の温度制御を改善することにより、焦げや焼きムラを減少させる加熱調理機についての開示がある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−062966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、加熱部の温度制御により焼きムラを減少させることができるものの、機構的に焼きムラを減少させる技術は開示されていない。
【0009】
そこで、本発明は、攪拌機構周辺と熱源周辺との加熱ムラを低減できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の加熱調理器は、攪拌及び加熱が可能な加熱調理器であって、調理対象物を格納する加熱用のケースと、少なくとも一部が低熱伝導体又は断熱材で構成され、回転駆動力を伝達する回動部を有し、前記ケースに対して脱着自在に連結される連結部と、前記連結部に対して脱着可能に連結され、回転駆動力を前記回動部に伝達する回転伝達機構と、前記ケース内において前記回動部に連結され、前記調理対象物を攪拌する攪拌部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の加熱調理器は、攪拌及び加熱が可能な加熱調理器であって、調理対象物を格納する加熱用のケースと、前記ケースの側面に対向する領域のみに配置されるヒーターと、少なくとも一部が低熱伝導体又は断熱材で構成され、回転駆動力を伝達する回動部を有し、前記ケースに対して連結される連結部と、前記連結部に対して脱着可能に連結され、回転駆動力を前記回動部に伝達する回転伝達機構と、前記ケース内において前記回動部に連結され、前記調理対象物を攪拌する攪拌部と、を備え、前記連結部は、前記ケースの底面よりも小さい熱伝導体を介して前記ケースと脱着自在に連結され、前記熱伝導体に対しても前記連結部が脱着自在であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の加熱調理器は、上記構成に加えて、前記連結部の前記回動部は、前記攪拌部と脱着可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、攪拌部に回転駆動力を伝達する回動部を有した連結部の少なくとも一部に低熱伝導体又は断熱材が用いられているので、ケースの熱が連結部を介して本体側に逃げ難い。これにより、ケース内において連結部が設けられている領域とその他の領域との間の加熱ムラを抑えることが可能となる。
【0014】
また、本発明によれば、上記の効果に加えて、熱伝導体を介して連結部がケースに連結されているため、連結部が設けられている領域において熱伝導体を介したケース内への熱伝導が促進される。これにより、さらに熱伝導体周辺、ひいては連結部周辺の加熱ムラを低減することが可能となる。
【0015】
また、本発明によれば、上記の効果に加えて、攪拌部が連結部の回動部と脱着可能に構成されているので、使用者が連結部をケースから分離すると、攪拌部が加熱調理によって調理対象物と固着している状態であれば、回動部が攪拌部から分離される。これにより、攪拌部が加熱調理によって調理対象物と固着した場合であっても、自由になった攪拌部とともに調理対象物を容易に取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る製パン機の中央縦断面図である。
図2図1の製パン機の連結部周辺を拡大した断面図である。
図3図1の製パン機の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る加熱調理器について図を用いて説明する。
【0018】
図1は、加熱調理器の一例として製パン機1の中央縦断面図を示している。なお、ここでは説明の便宜のため、発明の説明に関連した主要な構成のみを模式的に表している。
【0019】
製パン機1の本体2には跳ね上げ式の蓋2aが取り付けられている。調理対象物を投入する内側に配置されるケース4は、本体2の上方に開口した収容口2bから出し入れできる。
【0020】
ケース4の下方には、回転力を発生させるモーター12が備えられている。このモーター12で生じた回転力は、ベルト14を介して回転伝達機構16に伝達される。
【0021】
一方、ケース4の下端には、モーター12から伝達される回転力を受けるための連結部8が備えられている。この連結部8は、ケース4の底面に設けられた熱伝導体材料で構成された固定プレート10を介して脱着可能に設けられている。そして、連結部8が有する回転軸8aは、ケース4の底面を貫通して内側に突出するように配置されている。調理対象物である小麦粉等を攪拌するための羽根6は、このケース4の内側へ突設された回転軸8aに対して脱着可能に配置される。
【0022】
上述の回転伝達機構16は、連結部8と脱着可能に連結され、回転力を回転軸8aに伝達する。
【0023】
また、本体2には、ケース4の側面と対向する領域にヒーター18が設けられている。このヒーター18を利用して、発酵温度の調節や焼き上げが行われる。
【0024】
なお、ここではヒーター式の加熱機構を備えた構成を例として示しているが、IH式の加熱機構に対しても同様にあてはまる。
【0025】
次に、ヒーター18から与えられる熱の伝達作用について、図2を用いて説明する。図2は、連結部8の周辺を拡大した断面図である。
【0026】
ケース4の内側又は外側への熱の移動については、中抜きの矢印H1〜H3で示している。また、ケース4に沿った熱伝導については、点線の矢印H4で示している。このうち、矢印H1はヒーター18から受けた熱をそのままケース4の壁を通して内側へ伝達する熱の移動方向を表している。これに対して、矢印H2は、矢印H4の向きにケース4に沿って伝達された熱が下方からケース4に取り込まれる移動方向を表している。
【0027】
本実施の形態に係る製パン機1の構成では、上述のように、連結部8を取り付けるための固定プレート10がSUS材などの熱伝導体で構成されている。このため、連結部8が設けられているケース4中心近くまで効率良く熱が伝達されるので、ケース4側面と底面との間に焼きムラが生じ難い。
【0028】
さらに、本実施の形態に係る連結部8には、低熱伝導体材料が用いられている。このため、固定プレート10から連結部8側への熱の移動は、固定プレート10からケース4内への熱の移動よりも小さい。
【0029】
すなわち、図2中に矢印H3で表した熱の移動による連結部8を通じた放熱量が大幅に低減されるので、ケース4の底部側の温度の低下が抑えられ、この結果、焼きムラの発生を抑えることが可能となる。この低熱伝導体材料には、樹脂材の他、セラミック材を利用することができる。連結部8の全てを低熱伝導体で構成しなくても、少なくとも一部に利用されていれば、連結部8を介した放熱を効果的に抑えることが可能である。
【0030】
なお、上述のように、本実施の形態に係る構成については、ヒーター式の加熱機構をIH式の加熱機構に置き換えることも可能である。
【0031】
ところで、IH式の加熱機構においては、電磁誘導による加熱を効率良く行うために、加熱対象と加熱機構との距離(電磁誘導ギャップ)はできるだけ小さく、且つ、全周及び全面に亘って一定のものとしなければならない。
【0032】
一方、図2に示すように、加熱対象であるケース4と連結部8とは近接配置され、連結部8の少なくとも一部には誘導加熱が生じない樹脂材などの低熱伝導体材料が用いられている。
【0033】
すなわち、連結部8は、誘導加熱されやすいアルミ材などの熱伝導体材料で構成されている割合が少ないか、或いは、熱伝導体材料を含んでいないので、熱伝導体を通してケース4以外に熱が逃げることを効果的に抑えることができることに加えて、ケース4の加熱に直接的に寄与しない誘導加熱を抑えることができ、エネルギー効率に優れた加熱調理を行うことが可能である。
【0034】
次に、ケース4の周りの構成を分解した様子を図3に示す。図3から分かるように、本実施の形態に係る構成によれば、回転伝達機構16と連結部8との間を分離することができる。そして、連結部8の回転軸8aを羽根6と分離することにより、連結部8を回転軸
8aごとケース4から取り外すことが可能である。
【0035】
したがって、焼き上がったパンが羽根6と共に回転軸8aに固着してしまった場合であっても、ケース4の底部から回転軸8aを引き抜くことにより、パンと羽根6は、ケース4側との繋がりが断たれるので、パンを崩すことなく容易に取り出すことが可能である。
【0036】
また、本実施の形態に係る構成では、連結部8に低熱伝導体が用いられているので、把持し易い位置に樹脂材が用いられていると、使用者は火傷等の恐れもなく安全に取り外すことができる。
【0037】
さらに、本実施の形態に係る構成では、焼き上げ前に回転軸8aを引き抜くこともできるので、羽根6を取り出した状態で羽根痕のないパンを焼くことができる。この場合、回転軸8aが抜けた穴にはシリコン等のキャップを取り付けると平坦化が可能である上、手入れも容易になる。
【0038】
加えて、本実施の形態に係る構成では、低熱伝導体として樹脂材を利用しており、アルミダイキャスト材に比べて樹脂材の方が加工が容易なので、生産性の向上によるコストダウンが可能となる。
【0039】
なお、上記の実施の形態に示した構成は本発明の一例であり、以下のような変形例も含まれる。
【0040】
例えば、上記の実施の形態においては、製パン機1の構成について説明したが、製パン機1に限らず、加熱ムラを効果的に低減できるので、加熱機構を備えた調理器に広く適用できる。
【0041】
また、上記の実施の形態においては、連結部8の回転軸8a(回動部)がケース4及び攪拌部(羽根6)と脱着可能である構成は必須ではなく、少なくとも連結部8の一部が低熱伝導体で構成されていれば、加熱ムラを低減するという効果を得ることが可能である。
【0042】
また、上記の実施の形態においては、連結部8の少なくとも一部に低熱伝導体を用いた構成を例として示した。しかし、低熱伝導体の代わりに断熱材を用いても構わない。断熱材を用いることにより、さらに効率的にケース内への熱伝導を促すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の加熱調理器は、連結部が低熱伝導体で構成されていることにより加熱ムラを抑えることができる。このため、特に、加熱時に攪拌することのできない製パン機の分野において有用である。また、連結部の回転軸がケースから分離できるので、羽根と共に回転軸に固着した焼き上がりのパンを崩すことなく容易に取り出すことが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 製パン機(加熱調理器)
2 本体
2a 蓋
2b 収容口
4 ケース
6 羽根(攪拌部)
8 連結部
8a 回転軸(回動部)
10 固定プレート(熱伝導体)
12 モーター
14 ベルト
16 回転伝達機構
18 ヒーター
図1
図2
図3