(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のマイクロコンピュータ装置では、メインマイコンおよびサブマイコンの電源電圧が共通である。このため、電源電圧の異常時には、両方のマイコンとも正常動作が困難となる。
【0005】
これに対して、複数の電源回路を配置して、複数のマイコン(制御回路)の一部ずつが異なる電源電圧によって動作する構成を採用することで、システムの信頼性を高めることが可能となる。
【0006】
しかしながら、上記のように複数の電源電圧によって複数のマイコンを作動させる構成では、一部の電源電圧のみが異常となった場合に、当該電源電圧を受けて動作する一部のマイコンが通常とは異なる制御動作を実行する虞がある。
【0007】
特に、燃焼装置のように燃料の燃焼に関連する機構が制御対象となる構成では、上記のような電源電圧異常下での制御が継続的に実行されないように、一部の電源電圧が異常であるときには、これを適切に検知することが求められる。
【0008】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、複数の電源電圧を用いて複数のマイクロコンピュータを動作させる構成を有する燃焼装置において、一部の電源電圧が異常であることを確実に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面では、燃焼装置は、動作電源電圧値が共通である複数のマイクロコンピュータによって燃焼機構を制御する燃焼装置であって、複数の電源回路と、電源電圧異常検知部とを備える。複数のマイクロコンピュータは、複数の電源回路のうちの第1の電源回路が生成する第1の電源電圧を受けて動作する第1のマイクロコンピュータと、複数の電源回路のうちの第2の電源回路が生成する第2の電源電圧を受けて動作する第2のマイクロコンピュータとを含む。電源電圧異常検知部は、第1の電源電圧の変化に従って変化する電圧と、第2の電源電圧との比を用いて、第1および第2の電源電圧の一方の電源電圧が異常であることを検知する。
【0010】
上記燃焼装置によれば、第1および第2のマイクロコンピュータが個別の電源回路による第1および第2の電源電圧によって動作するのでシステムの信頼性が高められるとともに、第1および第2の電源電圧の一方のみが異常であることを、第1の電源電圧に応じて変化する電圧を介して、第1および第2の電源電圧の比を監視することで検知することができる。この結果、複数の電源電圧を用いて複数のマイクロコンピュータを動作させる構成を有する燃焼装置において、一部の電源電圧が異常であることを確実に検知できる。
【0011】
好ましくは、燃料装置は、分圧回路をさらに備える。分圧回路は、第1の電源電圧を予め定められた分圧比で分圧する。電源電圧異常検知部は、第2の電源電圧に対する分圧回路の出力電圧の電圧比が、分圧比に対応して定められた基準値を含む所定範囲から外れた場合に、一方の電源電圧が異常であることを検知する。
【0012】
このような構成とすることにより、分圧回路の分圧比に従って定められる基準値を用いて、第2の電源電圧に対する分圧回路の出力電圧の電圧比から第1および第2の電源電圧の一方が異常であることを検知できる。
【0013】
また好ましくは、燃料装置は、第1の電源電圧の供給を受けて動作するセンサをさらに備える。電源電圧異常検知部は、第1の電源電圧に対するセンサの出力電圧の比と、第2の電源電圧に対するセンサの出力電圧の比とに基づいて、一方の電源電圧が異常であることを検知する。
【0014】
このような構成とすることにより、共通のセンサの出力電圧と、第1および第2の電源電圧との比を用いて、第1および第2の電源電圧の一方が異常であることを検知できる。
【0015】
さらに好ましくは、第1のマイクロコンピュータは、第1の電源電圧に対するセンサの出力電圧の比に従った第1のデジタル値を生成する第1の変換回路を有する。第2のマイクロコンピュータは、第2の電源電圧に対するセンサの出力電圧の比に従った第2のデジタル値を生成する第2の変換回路を有する。電源電圧異常検知部は、第1または第2のマイクロコンピュータによって構成されて、第1および第2のマイクロコンピュータ間での通信によって第1および第2のデジタル値を比較することによって、一方の電源電圧が異常であることを検知する。
【0016】
このような構成とすることにより、第1および第2のマイクロコンピュータに共通に入力されたセンサ出力電圧のA/D変換値を用いて、第1および第2の電源電圧の一方が異常であることを検知できる。したがって、通常の制御のために用いられるセンサの出力電圧が、第1および第2のマイクロコンピュータに入力される構成を流用して、分圧回路の配置や分圧電圧を入力するポート等の専用の構成を新たに設けることなく、電源電圧の異常を監視することができる。
【0017】
あるいは好ましくは、燃料装置は、第1の電源電圧の供給を受けて動作するセンサをさらに備える。センサは、出力電圧が既知の一定値に固定される特定のタイミングを有する。電源電圧異常検知部は、特定のタイミングにおいて、第2の電源電圧に対するセンサの出力電圧の電圧比が、既知の一定値に対応して定められた基準値を含む所定範囲から外れた場合に、一方の電源電圧が異常であることを検知する。
【0018】
このような構成とすることにより、出力電圧が既知の一定値に固定される特定のタイミングを有するセンサの出力電圧を用いて、当該センサの電源電圧とは異なる電源電圧で動作するマイクロコンピュータ単独で、第1および第2の電源電圧の一方が異常であることを検知できる。
【0019】
さらに好ましくは、分圧回路またはセンサの出力電圧は、第2のマイクロコンピュータに入力される。第2のマイクロコンピュータは、変換回路を有する。変換回路は、第2の電源電圧に対する、第2のマイクロコンピュータに入力された出力電圧の比に従ったデジタル値を生成する。電源電圧異常検知部は、第2のマイクロコンピュータによって構成されて、デジタル値が所定範囲から外れた場合に一方の電源電圧が異常であることを検知する。
【0020】
このような構成とすることにより、分圧回路またはセンサの出力電圧が入力された第2のマイクロコンピュータでのA/D変換値を用いて、第1および第2の電源電圧の一方が異常であることを検知できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、複数の電源電圧を用いて複数のマイクロコンピュータを動作させる構成を有する燃焼装置において、一部の電源電圧が異常である現象の発生を確実に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0024】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態に従う燃焼装置5の構成を説明する概略ブロック図である。
【0025】
図1を参照して、燃焼装置5は、複数の電源回路10および20と、複数のマイコン100および200と、燃焼機構500と、センサ600とを備える。なお、以下、本実施の形態では、マイコン100および200の構成要素も含み、電源電圧の異常検知機能に関連する構成のみが記載されている点について、確認的に記載する。
【0026】
燃焼機構500は、燃料の燃焼によって熱量を発生する機構を包括的に示すものであり、代表的には、給湯器におけるガスバーナおよび、ファンヒーターにおけるガスバーナまたは石油バーナ等によって構成される。燃焼機構500は、複数のマイクロコンピュータ(以下、単に「マイコン」とも称する)100および200によって動作を制御される。たとえば、マイコン100および200は、特許文献1と同様に、メインマイコンおよびサブマイコンとして燃焼機構500の動作を制御することができる。マイコン100および200の動作電源電圧値は共通(たとえば、DC5V)である。
【0027】
燃焼機構500には、センサ600が設けられる。センサ600は、たとえば燃焼機構500によって加熱された水の温度を検出するサーミスタや、バーナにおける燃焼有無を検出するための熱電対等によって構成される。センサ600の出力信号は、マイコン100および200の一方または両方に入力される。
【0028】
電源回路10および20には、電源配線6によって電源電圧VDが供給される。電源電圧VDは、図示しない電力変換回路によって、商用交流電源からのAC電力をDC電力に変換することによって発生される。電源回路10および20、ならびに、マイコン100および200は、共通の接地電圧GNDを供給する接地配線7に接続されて動作する。
【0029】
電源回路10は、電源電圧VDをDC/DC変換して電源電圧VcAを生成する。電源電圧VcAは、電源ライン11へ出力される。同様に、電源回路20は、電源電圧VDをDC/DC変換して電源電圧VcBを生成する。電源電圧VcBは、電源ライン21へ出力される。電源電圧VcAおよびVcBは、マイコン100,200の動作電源電圧値(たとえば、DC5V)に制御される。
【0030】
マイコン100は、電源ライン11より電源回路10からの電源電圧VcAを受けて動作する。マイコン100は、ポート101〜103を含む複数のポートと、アナログ/デジタル変換器(以下、「A/D変換器」とも称する)110と、CPU(Central Processing Unit)120とを有する。
【0031】
A/D変換器110は、マイコン100のいずれかのポートに入力されたアナログ電圧をデジタル値に変換する機能を有する。デジタル値は、nビット(n:2以上の整数)を用いて、当該アナログ電圧を2のn乗個の段階に量子化することによって得られる。具体的には、A/D変換器110は、マイコン100の電源電圧VcAに対する、入力アナログ電圧の比に従って、デジタル値を生成する。
【0032】
CPU120は、マイコン100へ入力されるセンサ信号のA/D変換値、および、図示しないユーザ指示を示す信号等に基づいて、燃焼装置5の動作をするための所定の制御処理を実行する。この制御処理の結果、燃焼装置5の各構成機器の制御指示が生成されて、マイコン100の他のポート(図示せず)から出力される。出力される制御指示には、燃焼機構の動作(燃焼の開始/停止、あるいは、発生熱量)を指示するための信号が含まれる。
【0033】
マイコン200は、電源ライン21より電源回路20からの電源電圧VcBを受けて動作する。マイコン200は、ポート201〜203を含む複数のポートと、A/D変換器」とも称する210と、CPU220とを有する。A/D変換器210およびCPU220は、A/D変換器110およびCPU120と同様の機能を有する。すなわち、A/D変換器210は、マイコン200の電源電圧VcBに対する、入力アナログ電圧の比に従って、デジタル値を生成する。
【0034】
マイコン100および200は、出力ポート102,202および入力ポート103,203によって、相互に通信可能である。すなわち、出力ポート102からの出力信号を入力ポート203で受信することにより、マイコン100からマイコン200へデータを伝送することができる。同様に、出力ポート202からの出力信号を入力ポート103で受信することにより、マイコン200からマイコン100へデータを伝送することができる。このように、マイコン100および200は、データ通信を実行しつつ、両者で燃焼機構500の動作を制御することができる。
【0035】
燃焼装置5では、複数のマイコン100および200によって分担して燃焼機構500を制御することで、各マイコンの演算負荷を抑制することができる。また、データ通信を活用して、一方のマイコンによる制御動作が正常であるかどうかを他方のマイコンで監視することも可能となる。あるいは、マイコン間で互いに機能をバックアップすることで、システムの安全性を向上することも可能となる。
【0036】
さらに、本実施の形態に従う燃焼装置5では、マイコン100および200が異なる電源電圧を用いるので、単一の電源回路が故障したことで、マイコン100,200の両方が動作を停止してしまうという現象を回避できる。すなわち、燃焼装置5では、一部の電源電圧が異常となっても、残りの正常な電源電圧によって動作するマイコンによって、電圧異常に対する停止処理を正常に実行できることが期待できる。
【0037】
一般的に、マイコン100,200については、電源電圧の動作保証電圧範囲がスペック値として予め定められている。すなわち、マイコン機能の一部として、電源電圧の異常時には、制御動作を停止することができる。
【0038】
しかしながら、電源電圧VcA,VcBが、当該動作保障電圧範囲から外れても何らかの原因でマイコン100,200が動作を停止しない場合には、マイコン100,200は、通常よりも上昇または低下した電源電圧VcAまたはVcBに従ってA/D変換されたデジタル値を用いて燃焼機構500を制御する虞がある。これにより、燃焼機構500が通常とは異なる動作を行なった結果、発生熱量に誤差が生じる等の影響が生じることが懸念される。
【0039】
なお、電源電圧の低下に対しては、マイコン100,200に対して、リセット回路150,250を配置することができる。
【0040】
たとえば、電源ライン11と接続されたリセット回路150は、電源電圧VcAが予め定められた下限電圧よりも低下するとリセット信号を発生する。リセット回路150からのリセット信号は、電源電圧VcAによって動作するマイコン100のポート101へ入力される。
【0041】
同様に、電源ライン21と接続されたリセット回路250は、電源電圧VcBが予め定められた下限電圧よりも低下するとリセット信号を発生する。リセット回路250からのリセット信号は、電源電圧VcBによって動作するマイコン200のポート201へ入力される。
【0042】
マイコン100および200は、リセット信号の入力に応答して初期化処理を実行するように予めプログラムされている。このため、電源電圧VcAおよび/またはVcBの低下に起因して、マイコン100および/または200によって、異常な制御処理が実行されることを防止できる。一方で、電源電圧の上昇に対しては、上記マイコン機能が作動しない場合には、燃焼機構500が通常とは異なる動作を行なうことが懸念される。
【0043】
したがって、本実施の形態に従う燃焼装置5は、マイコン100および200の少なくとも一方において、電源電圧VcA,VcBの一方が異常であること(以下、「電源電圧異常」とも称する)を自動検知する機能を具備するように構成される。
【0044】
燃焼装置5は、電源電圧VcAを分圧するための分圧回路300をさらに備える。分圧回路300は、電源ライン11上の電源電圧VcAに基づき、所定の分圧比kr(0<kr<1.0)に従って分圧電圧Vdvを発生する(Vdr=kr・VcA)。たとえば、分圧回路300は、直列接続された抵抗素子の電気抵抗比に従った分圧比krを有する。すなわち、分圧電圧Vdvは、電源電圧VcAの変化に従って変化する電圧であることが理解される。
【0045】
分圧回路300からの分圧電圧Vdvは、マイコン200のポート205へ入力されて、A/D変換器210によってデジタル値に変換される。
【0046】
図2は、電源上昇異常の発生時におけるA/D変換器の出力の変化を説明するための概念図である。
図2には、電源電圧VcAの分圧電圧VdvをA/D変換する、マイコン200のA/D変換器210の出力が示される。
【0047】
図2を参照して、A/D変換器210の出力値Ddv(以下、A/D変換値Ddvとも称する)は、マイコン200の電源電圧VcBに対する分圧電圧Vdvの電圧比kv(kv=Vdv/VcB)に従ったデジタル値となる。
【0048】
A/D変換値Ddvは、kv≧1.0のときは、Ddv=Dmaxに設定され、kv≦0のときは、Ddv=0に設定される。たとえば、n=8のときには、Dmax=255(“11111111”)である。0<kv<1.0のときには、A/D変換値Ddvは、kv・Dmaxを量子化した値に設定される。また、電圧比kvは、Vdv=kr/VcAより、下記式(1)に従って変形できる。
【0049】
kv=Vdv/VcB=kr・(VcA/VcB) …(1)
したがって、電源電圧VcAおよびVcBが同一レベルである場合には、電圧比kv=krであるので、A/D変換器210からは、kr・Dmaxを量子化したデジタル値Drが出力される(Ddv=Dr)。ここで、分圧比krは既知であるので、デジタル値Drは、予め定められた定数である。デジタル値Drは、電源電圧正常時における、A/D変換値Ddvの基準値に相当する。
【0050】
この状態から、電源電圧VcBが正常である一方で電源電圧VcAが正常レベルよりも上昇した場合、または、電源電圧VcAが正常レベルである一方で電源電圧VcBが正常レベルよりも低下した場合には、電圧比(VcA/VcB)が増加するので、A/D変換値Ddvは、基準値Drよりも大きくなる。
【0051】
反対に、電源電圧VcAが正常である一方で電源電圧VcBが正常レベルよりも上昇した場合、または、電源電圧VcBが正常レベルである一方で電源電圧VcAが正常レベルよりも低下した場合には、電圧比(VcA/VcB)が低下するので、A/D変換値Ddvは、基準値Drよりも小さくなる。
【0052】
したがって、分圧回路300の分圧比に対応させて設定された基準値Drを含む正常範囲Rdvを設定することができる。正常範囲Rdvは、量子化誤差や演算誤差に対するマージンを有するように設定することができる。正常範囲RdvにおけるA/D変換値Ddvの下限値D1および上限値D2を定めることによって、A/D変換値Ddvが正常範囲Rdvから外れた場合に、電源電圧VcA,VcBの一方が異常であることを検知できる。
【0053】
図3は、実施の形態1に従う電源電圧異常検知のための制御処理を説明するフローチャートである。
図1の構成例に従えば、
図3に示される制御処理は、マイコン200のCPU220によって、所定の周期で繰返し実行することができる。
【0054】
図3を参照して、CPU220は、ステップS100により、電源電圧VcAに基づく分圧電圧VdvのA/D変換値Ddvを、A/D変換器210から取得する。さらに、CPU220は、ステップS110により、A/D変換値Ddvを、予め定められた下限値D1および上限値D2(
図2)と比較する。
【0055】
CPU220は、Ddv>D2の場合(S120のYES判定時)には、ステップS140に処理を進めて、電源電圧異常を検知する。CPU220は、Ddv≦D2の場合(S120のNO判定時)には、Ddv<D1のとき(S130のYES判定時)には、ステップS150に処理を進めて、電源電圧異常を検知する。一方で、CPU220は、D1≦Ddv≦D2のとき(S130のNO判定時)には、ステップS160により、電源電圧VcAおよびVcBは正常であると判定する。
【0056】
CPU220は、ステップS140およびS150の各々において、マイコン100に対して、電源電圧異常が発生していることを通知する。これに応じて、マイコン100は、電源電圧異常時の処理、たとえば、燃焼機構500の動作停止を伴う燃焼装置5の停止処理を、メインマイコンとして実行することができる。さらに、マイコン200は、ステップS140およびS150の各々において、または、メインマイコン(マイコン100)からの指令に応じて、サブマイコンとしての燃焼装置5の停止処理を実行することができる。なお、当該停止処理においては、図示しないリモートコントローラの表示画面に出力されるエラーコード等によって、電源電圧異常の発生を報知する情報を出力することが好ましい。
【0057】
なお、電源電圧VcAおよびVcBについて、問題となる電圧低下の発生時にはリセット回路150,250が動作するように調整することによって、正常範囲Rdvの下限値D1および上限値D2については、電源電圧VcAおよびVcBの上昇異常の検知に特化した値に設定することができる。この場合には、ステップS140において、電源電圧VcAの上昇異常の発生を特定できるとともに、ステップS150において、電源電圧VcBの上昇異常の発生を特定することができる。逆に言えば、リセット回路150,250が配置されていなくても、
図3の制御処理によって、電源電圧VcAおよびVcBの一方が異常であることは検知可能である。
【0058】
このように、実施の形態1に従う燃焼装置によれば、電源電圧VcAの分圧電圧Vdvの、電源電圧VcBによるA/D変換値に基づいて、すなわち、電源電圧VcBと、電源電圧VcAの変化に従って変化する電圧との比を用いて、電源電圧VcAおよびVcBの一方が異常であることを検知できる。これにより、リセット回路150,250では対処できず、かつ、燃焼機構500の動作に悪影響を及ぼすおそれがある電源電圧異常を速やかに検知して、燃焼機構500の異常動作を防止できる。
【0059】
すなわち、
図1の構成例において、電源電圧VcAは「第1の電源電圧」に対応し、電源電圧VcBは「第2の電源電圧」に対応する。そして、マイコン100および電源回路10は、「第1のマイクロコンピュータ」および「第1の電源回路」にそれぞれ対応し、マイコン200および電源回路20は、「第2のマイクロコンピュータ」および「第2の電源回路」にそれぞれ対応する。また、「電源電圧異常検知部」はマイコン200の制御処理によって実現される。
【0060】
また、
図1の構成例とは反対に、電源電圧VcBを「第1の電源電圧」、電源電圧VcAを「第2の電源電圧」として、電源電圧VcAによって動作するマイコン100のA/D変換器110による、電源電圧VcBの分圧電圧のA/D変換値を用いて、マイコン100によって、
図3と同様の制御処理を実行することも可能である。
【0061】
[実施の形態2]
実施の形態1では、分圧電圧を用いることで電源電圧異常を監視できる一方で、当該監視機能のために分圧回路および分圧電圧を入力するためのポート205を追加配置することが必要となる。実施の形態2では、燃焼装置5の制御のためにマイコン100,200に共通に入力されるセンサ出力電圧を用いて、電源電圧異常を検知する構成例を説明する。
【0062】
図4には、実施の形態2に従う燃焼装置におけるセンサからマイコンへの信号入力に関する構成が記載される。実施の形態2に従う燃焼装置においても、
図4に記載される部分以外の構成は、
図1と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。すなわち、実施の形態1と同様に、マイコン100は電源電圧VcAによって動作する一方で、マイコン200は、電源電圧VcBによって動作する。
【0063】
図4を参照して、
図1に示されたセンサ600は、温度によって変化する電気抵抗値Rtを有するサーミスタ610を含む。サーミスタ610は、電源電圧VcAを供給する電源ライン11と接地配線7の間に、ノードNsを介して、抵抗素子(電気抵抗値R0)と直列に接続される。たとえば、サーミスタ610は、燃焼装置5の一例である給湯器において、燃焼機構500によって加熱された湯水を含む、給湯器からの出湯温度を検知するために配置される。
【0064】
ノードNsに発生するサーミスタ610からのセンサ出力電圧Vsnは、電源電圧VcAを、既知の電気抵抗値R0と、温度によって変化する電気抵抗値Rtとで分圧した電圧となるので、下記(2)式によって示すことができる。
【0065】
Vsn=VcA・Rt/(Rt+R0) …(2)
式(2)から、センサ出力電圧Vsnは、電源電圧VcAの変化に従って変化する電圧であることが理解される。
【0066】
センサ出力電圧Vsnは、マイコン100のポート106およびマイコン200のポート206に共通に入力される。A/D変換器110は、ポート106に入力されたセンサ出力電圧VsnのA/D変換値D1sを出力する。同様に、A/D変換器210は、ポート206に入力されたセンサ出力電圧VsnのA/D変換値D2sを出力する。
【0067】
図5は、実施の形態2に従う燃焼装置における共通のセンサ出力電圧に対するA/D変換器110および210のA/D変換値の挙動を示す概念図である。
【0068】
図5を参照して、マイコン100(A/D変換器110)でのA/D変換値D1sは、電源電圧VcAに対するセンサ出力電圧Vsnの電圧比kA(kA=Vsn/VcA)に従ったデジタル値となる。
【0069】
ここで、式(2)に示されたサーミスタ610に係る分圧比kt(kt=Rt/(Rt+R0))を用いると、kA=ktとなる。したがって、電源電圧VcAが変化しても、A/D変換値D1sは変化しない。
【0070】
一方で、マイコン200(A/D変換器210)でのA/D変換値D2sは、電源電圧VcBに対するセンサ出力電圧Vsnの電圧比kB(kB=Vsn/VcB)に従ったデジタル値となる。
【0071】
電圧比kBは、上記分圧比ktを用いると、kB=kt・(VcA/VcB)と示される。このため、A/D変換値D2sは、電源電圧VcBが正常である一方で電源電圧VcAが正常レベルよりも上昇した場合、または、電源電圧VcAが正常レベルである一方で電源電圧VcBが正常レベルよりも低下した場合には、(VcA/VcB)>1となるため、分圧比ktに従ったA/D変換値D1sよりも大きくなる。
【0072】
反対に、A/D変換値D2sは、電源電圧VcAが正常である一方で電源電圧VcBが正常レベルよりも上昇した場合、または、電源電圧VcBが正常レベルである一方で電源電圧VcAが正常レベルよりも低下した場合には、(VcA/VcB)<1となるため、分圧比ktに従ったA/D変換値D1sよりも小さくなる。
【0073】
したがって、実施の形態2に従う燃焼装置では、マイコン100および200間の通信を用いてA/D変換値D1sおよびD2sを比較することにより、A/D変換値D1sおよびD2sが異なる値と示したときに、電源電圧VcA,VcBの一方が異常であることを検知できる。
【0074】
図6は、実施の形態2に従う燃焼装置における電源電圧異常検知のための制御処理を説明するフローチャートである。
図6による制御処理は、マイコン100および200によて繰り返し実行される。また、
図6では、実施の形態1と同様に、マイコン200のCPU220によって、電源電圧異常が検知される。
【0075】
図6を参照して、マイコン100のCPU120は、ステップS200により、ポート106へ入力されたセンサ出力電圧VsnのA/D変換値D1sを、A/D変換器210から取得する。さらに、CPU120は、ステップS210により、A/D変換値D1sを出力ポート102からマイコン200(入力ポート203)へ送信する。この状態で、CPU220は、A/D変換値D1sの送信から所定時間が経過するまでを限度に、マイコン200からの電源電圧異常の検知結果の通知を待機する。
【0076】
一方で、マイコン200のCPU220は、ステップS300により、ポート206へ入力されたセンサ出力電圧VsnのA/D変換値D2sを、A/D変換器210から取得する。さらに、CPU220は、ステップS310により、マイコン100から送信されたA/D変換値D1sを受信すると、ステップS330により、A/D変換値D1sおよびD2sが一致しているかどうかを判定する。たとえば、ステップS330では、|D1s−D2s|<ε(ε:所定値)が成立するか否かが判定される。
【0077】
なお、ステップS200およびS300では、同期処理によって、共通のタイミングにおけるセンサ出力電圧Vsnに基づいて、A/D変換値D1sおよびD2sが取得される。あるいは、ステップS210において、A/D変換値D1sとともに当該値の取得タイミングに係る情報を、マイコン100からマイコン200へ送信することにより、ステップS330では、同一タイミングのセンサ出力電圧Vsnに基づくA/D変換値D1sおよびD2sを選定して比較対象とすることも可能である。
【0078】
CPU220は、A/D変換値D1sおよびD2sの間に判定値εを超える差が生じているとき(S330のYES判定時)には、ステップS340に処理を進めて、電源電圧異常を検知する。さらに、CPU220は、ステップS350により、電源電圧異常の発生を示す情報を、出力ポート202からマイコン100の入力ポート103へ伝送する。これにより、電源電圧異常の発生が、マイコン100に対して通知される。
【0079】
マイコン100のCPU120は、マイコン200からの電源電圧異常の通知が受信されると、ステップS220をYES判定として、ステップS230により電源電圧異常時の処理を実行する。たとえば、ステップS230では、上述のように、メインマイコンとしての、燃焼機構500の動作停止を伴う燃焼装置5の停止処理が実行される。
【0080】
同様に、CPU220は、ステップS360において、電源電圧異常時の処理、たとえば、サブマイコンとしての、燃焼機構500の動作停止を伴う燃焼装置5の停止処理を、メインマイコンとして実行する。なお、CPU220は、ステップS350(電源電圧異常の通知)の処理後待機して、メインマイコン(マイコン100)からの指令に応じて、ステップS360の処理を実行することも可能である。
【0081】
これに対して、CPU220は、A/D変換値D1sおよびD2sの差が判定値εよりも小さい場合には(S330のNO判定時)、ステップS340〜S360の処理をスキップして、電源電圧異常の通知、および、電源電圧異常時の処理を実行することなく、今回の周期における処理を終了する。
【0082】
CPU120(マイコン100)では、ステップS210(A/D変換値D1sの送信)後、所定時間が経過しても、電源電圧異常の通知が受信されないときは、ステップS220をNO判定として、ステップS230をスキップして、今回の周期における処理を終了する。
【0083】
なお、実施の形態1と同様にリセット回路150,250を調整することによって、
図6による制御処理を、電源電圧VcAおよびVcBの上昇異常の検知に特化することができる。この場合には、ステップS330のYES判定時には、D2s>D1sおよびD2s<D1sのいずれであるかをさらに判定することにより、D2s>D1sのときには電源電圧VcAの上昇異常を検知するとともに、D2s<D1sのときには電源電圧VcBの上昇異常を検知することができる。すなわち、実施の形態2においても、リセット回路150,250が配置されていなくても、
図6の制御処理によって、電源電圧VcAおよびVcBの一方が異常であることは検知可能である。
【0084】
なお、
図6の例では、マイコン100からマイコン200にA/D変換値を送信して、マイコン200でA/D変換値D1sおよびD2sの比較による、電源電圧異常の検知処理を実行したが、この例とは反対に、マイコン200からマイコン100にA/D変換値を送信して、マイコン100側でA/D変換値D1sおよびD2sの比較処理を実行することも可能である。
【0085】
実施の形態2に従う燃焼装置によれば、燃焼装置5の制御のためにマイコン100,200に共通に入力されるセンサ出力電圧Vsnを用いて、電源電圧異常監視のための回路(分圧回路)およびマイコンへの入力ポートを専用に配置することなく、実施の形態1と同様に、電源電圧VcAおよびVcBの一方が上昇する異常を検知できる。
【0086】
なお、
図6の構成において、マイコン200でのA/D変換値D2s(D2s=kt・(VcA/VcB))は、実施の形態1でのマイコン200でのA/D変換値Ddv(Ddv=kr・(VcA/VcB))と同様に、電源電圧VcBに対する電源電圧VcAの分圧電圧の変換値である。一方で、A/D変換値D2sは、分圧比ktがサーミスタ610の電気抵抗値Rtに従って変化する点が、固定された分圧比krに従うA/D変換値Ddvとは異なる。
【0087】
したがって、実施の形態2では、マイコン間通信を用いて、マイコン100,200の各々でのA/D変換値D1sおよびD2sを比較することによって、分圧比krが変化しても、電源電圧VcAおよびVcBの一方が上昇する異常を検知できる。すなわち、任意のタイミングで、電源電圧異常を検知することができる。
【0088】
言い換えると、電源電圧VcAによって動作するセンサであって、その出力電圧が既知の一定値となる特定のタイミング(たとえば、燃焼装置5の起動時)を有するものであれば、当該特定のタイミングにおいて、実施の形態1(
図3)と同様の電源電圧異常検知処理を、電源電圧VcBで動作するマイコン200によって実行することも可能である。
【0089】
図7には、実施の形態2に従う電源電圧異常検知のための制御処理の変形例を説明するフローチャートが示される。
図7に示す制御処理は、上記のような特定タイミングを有するセンサからの出力電圧がポート206へ入力される場合に実行することができる。
【0090】
図7を参照して、CPU220は、ステップS405により、センサ出力電圧Vsnを出力するセンサの特定タイミングであるか否かが判定される。たとえば、ステップS405は、燃焼装置5の起動シーケンス実行中の所定期間や、燃焼装置5の予め定められた制御タイミングにおいてYES判定とされる。上記特定タイミング以外では(ステップS405のNO判定時)、ステップS400以降の処理はスキップされて、電源電圧異常を検知するための処理は実行されない。
【0091】
CPU220は、特定タイミングにおいて(ステップS405のYES判定時)、
図2のステップS100〜S160と同様のステップS400〜S460を実行する。
【0092】
ステップS400では、ポート206へ入力されたセンサ出力電圧VsnのA/D変換値D2sが取得され、A/D変換値D2sを用いて、実施の形態1でのA/D変換値Ddvを用いたのと同様の判定が実行される。ステップS420、S430で用いられる、正常範囲Rdv(
図2)を設定するための下限値D1および上限値D2は、上述した、特定タイミングにおけるセンサからの出力電圧(既知の一定電圧)に対応した基準値を含むように予め定めることができる。
【0093】
このように、実施の形態2に従う燃焼装置では、電源電圧VcBに対する電源電圧VcAの分圧電圧の比(第1の電圧比)を用いて、あるいは、電源電圧VcAに対する電源電圧VcAの分圧電圧の比(第2の電圧比)をさらに用いて、電源電圧VcAおよびVcBの一方が上昇する異常を検知することができる。上述のように、センサ出力信号に係る第1の電圧比のみを用いる場合には、上記特定のタイミングのみで異常検知が可能である一方で、第1および第2の電圧比の両方を用いる場合には、任意のタイミングでの異常検知が可能である。
【0094】
[実施の形態2の変形例]
図8は、実施の形態2の変形例に従う構成を説明するための回路図である。
【0095】
図8を参照して、実施の形態2の変形例に係る構成では、
図1に示されたセンサ600は、バーナセンサ620を含む。バーナセンサ620は、燃焼機構500の一例であるバーナによる火炎の形成時および非形成時の間で出力電圧が微小に変化する熱電対によって構成することができる。
【0096】
増幅回路630は、電源電圧VcAによって動作するオペアンプ635および抵抗素子R1〜R5によって構成されて、バーナセンサ620の出力電圧を増幅したセンサ出力電圧Vsnを、信号線190へ出力する。したがって、電源電圧VcAが変化すると増幅回路630での増幅率が変化するので、バーナセンサ620の同一の出力電圧に対して、センサ出力電圧Vsnも変化する。このため、増幅回路630からのセンサ出力電圧Vsnについても、サーミスタ610からのセンサ出力電圧と同様に、電源電圧VcAの変化に従って変化することが理解される。
【0097】
信号線190は、マイコン100のポート106およびマイコン200のポート206と接続される。これにより、センサ出力電圧Vsnは、実施の形態2と同様に、マイコン100のポート106およびマイコン200のポート206に共通に入力される。入力されたセンサ出力電圧Vsnに対する、マイコン100および200による制御処理は、実施の形態2と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0098】
このように、増幅回路等によってセンサ出力電圧Vsnが生成される構成においても、実施の形態2と同様に、電源電圧異常監視のための回路(分圧回路)およびマイコンへの入力ポートを専用に配置することなく、電源電圧VcAおよびVcBの一方が異常であることを検知できる。
【0099】
なお、実施の形態2およびその変形例では、電源電圧VcAの変化に従って変化するセンサ出力電圧Vsnを用いて電源電圧異常を検知する例を説明した。すなわち、電源電圧VcAは「第1の電源電圧」に対応し、電源電圧VcBは「第2の電源電圧」に対応する。そして、マイコン100および電源回路10は、「第1のマイクロコンピュータ」および「第1の電源回路」にそれぞれ対応し、マイコン200および電源回路20は、「第2のマイクロコンピュータ」および「第2の電源回路」にそれぞれ対応する。
【0100】
一方で、
図4〜
図8の例とは反対に、電源電圧VcBによって動作するセンサからの出力電圧に基づいて、同様の電源電圧異常の検知処理を実行することも可能である。すなわち、電源電圧VcBを「第1の電源電圧」、電源電圧VcAを「第2の電源電圧」とし、マイコン100およびマイコン200のそれぞれを「第1のマイクロコンピュータ」および「第2のマイクロコンピュータ」とすることも可能である。この場合には、
図5におけるD1sおよびD2sの挙動が入れ替わるが、同様に、A/D変換値D1sおよびD2sの比較によって、電源電圧VcAおよびVcBの一方が異常であることを検知できる。また、
図7の制御処理は、電源電圧VcAによるセンサ出力電圧VsnのA/D変換値D1sを用いて、マイコン100(CPU120)により実行することができる。
【0101】
以上説明した本実施の形態に従う燃焼装置は、給湯器およびガスファンヒータ等、燃料燃焼を伴う燃焼機構が複数のマイクロコンピュータによって制御され、かつ、複数のマイクロコンピュータの一部ずつが異なる電源回路によって生成された電源電圧によって動作する構成であれば、共通に適用することが可能である。
【0102】
すなわち、マイクロコンピュータの個数は3以上であってもよく、電源回路の個数も3以上であってもよい。ただし、各マイクロコンピュータに対応して個別に電源回路が配置される構成は必須ではなく、複数の電源回路を備える構成において、複数の電源回路がそれぞれ生成した複数の電源電圧のうちの第1の電源電圧によって変化する電圧(分圧電圧またはセンサ出力電圧)を、他の第2の電源電圧で動作するマイコンに入力する構成とすれば、第1の電源電圧および第2の電源電圧の比に基づいて、実施の形態1または2で説明した電源電圧の異常検知を実現することができる。
【0103】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。