特許第6874516号(P6874516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6874516車両の運転制御システム及び車両の運転制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874516
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両の運転制御システム及び車両の運転制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20210510BHJP
   G08B 21/06 20060101ALI20210510BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20210510BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20210510BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G08G1/16 F
   G08B21/06
   G08G1/00 X
   B60W40/08
   A61B5/18
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-94575(P2017-94575)
(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公開番号】特開2018-190322(P2018-190322A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 康司
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−088497(JP,A)
【文献】 特開平04−250171(JP,A)
【文献】 特開2009−232990(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/022417(WO,A1)
【文献】 特開2017−004210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
G08G 1/00−99/00
A61B 5/18
G08B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自動走行させる機能を備えて構成される車両の運転制御システムにおいて、
この運転制御システムを制御する制御装置
前記車両の自動走行中に、車両の運転者の脳波または心拍を検出し、この運転者の脳波または心拍に関連する指標の内、さらに、運転者の眠気と相関関係のある指標を複数用いて、運転者の運転集中度を表す指標である集中度指標を予め設定した制御間隔毎に算出する制御を行い、
前記集中度指標が予め設定した設定集中度閾値以上である場合に、前記車両の自動走行を継続するか否かの継続意思を運転者に確認する通知をして、運転者の集中度の向上を促す制御を行い、前記通知により前記運転者からの継続意思が確認された場合に、前記車両の自動走行が継続される構成である車両の運転制御システム。
【請求項2】
前記自動運転継続用のスイッチを備え、
前記制御装置は、前記自動運転継続用のスイッチが操作されたときに、前記運転者からの継続意思が確認されたと判定する請求項1に記載の車両の運転制御システム。
【請求項3】
前記制御装置
前記継続意思を運転者に確認する通知をしたときから、前記継続意思が未確認の状態で予め設定した第1設定時間経過したときには、前記車両に備わる内燃機関への燃料噴射を停止して、前記車両の自動走行を解除する制御を行う構成である請求項1または2に記載の車両の運転制御システム。
【請求項4】
前記制御装置
前記車両の自動走行を解除したときから、前記継続意思が未確認の状態で予め設定した第2設定時間経過したときに、または、前記車両の速度が予め設定した設定車速以下となったときに、前記車両の非常点滅表示灯を点灯させながら前記車両を制動して停止させる制御を行う構成である請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の運転制御システム。
【請求項5】
前記運転者の眠気と相関関係のある指標、運転者の脳波α波の標準偏差、脳波β波の平均、心拍のピーク値間隔の平均及び心拍のピーク値間隔の標準偏差である構成である請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両の運転制御システム。
【請求項6】
車両を自動走行させる機能を備えて構成される車両の運転制御方法において、
前記車両の自動走行中に、車両の運転者の脳波または心拍を検出し、この運転者の脳波または心拍に関連する指標の内、さらに、運転者の眠気と相関関係のある指標を複数用いて、運転者の運転集中度を表す指標である集中度指標を予め設定した制御間隔毎に算出する制御を行い、
この算出した前記集中度指標が予め設定した設定集中度閾値以上であるか否かを判定し、
前記集中度指標が前記設定集中度閾値以上と判定した場合に、前記車両の自動走行を継続するか否かの継続意思を運転者に確認する通知をして、運転者の集中度の向上を促す制御を行い、
前記通知により前記運転者からの前記継続意思が確認された場合に、前記車両の自動走行を継続することを特徴とする車両の運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転制御システム及び車両の運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の操作に依らず、自動車に搭載された運転制御システムにより車両を自動運転する技術の研究開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、運転者の瞳幅又は心拍を用いて運転者の覚醒度を監視し、この覚醒度が低下した場合に周期的なオーディオ信号を運転者に送信する技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−215658号公報
【特許文献2】特開2014−515129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両をシステム側で自動運転して走行(自動走行)させているときは、運転者が運転操作から解放されているため、運転者が眠気を感じて運転に対する集中度(運転集中度)が低下しやすい。前方を走行する車両が急減速して前方の車両と自車両の車間距離が急激に短くなる等、突発的な状況が発生した場合で、車両の運転権限をシステムから運転者に強制的に委譲する必要があるときに、運転者の運転集中度が低下していると、運転者がこの委譲(運転切替)に必要な運転操作に遅れが生じてしまい、車両の運転権限をシステムから運転者に安全かつ迅速に委譲することが困難になる虞がある。そのため、車両の自動走行時でも運転者の運転集中度がある程度維持されることが重要となる。
【0006】
一方で、運転者の運転集中度をある程度維持するためには、この運転集中度を正確に把握する必要がある。特に車両の自動走行時は、運転集中度低下の主な要因は眠気であるので、運転集中度を運転者の眠気と密接に関連するものとして把握する必要がある。
【0007】
しかしながら、運転者の運転集中度を運転者の眠気を密接に反映させながら算出する手法は未だ確立されていない。
【0008】
本発明の目的は、車両の運転者の運転集中度を高精度で算出することができるとともに、車両の自動走行時でも運転者の運転集中度をある程度維持することができる車両の運転制御システム及び車両の運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の車両の運転制御システムは、車両を自動走行させる機能を備えて構成される車両の運転制御システムにおいて、この運転制御システムを制御する制御装置、前記車両の自動走行中に、車両の運転者の脳波または心拍を検出し、この運転者の脳波または心拍に関連する指標の内、さらに、運転者の眠気と相関関係のある指標を複数用いて、運転者の運転集中度を表す指標である集中度指標を予め設定した制御間隔毎に算出する制御を行い、前記集中度指標が予め設定した設定集中度閾値以上である場合に、前記車両の自動走行を継続するか否かの継続意思を運転者に確認する通知をして、運転者の集中度の向上を促す制御を行い、前記通知により前記運転者からの継続意思が確認された場合に、前記車両の自動走行が継続される構成である
【0010】
また、上記の目的を達成するための本発明の車両の運転制御方法は、車両を自動走行させる機能を備えて構成される車両の運転制御方法において、前記車両の自動走行中に、車両の運転者の脳波または心拍を検出し、この運転者の脳波または心拍に関連する指標の内、さらに、運転者の眠気と相関関係のある指標を複数用いて、運転者の運転集中度を表す指標である集中度指標を予め設定した制御間隔毎に算出する制御を行い、この算出した前記集中度指標が予め設定した設定集中度閾値以上であるか否かを判定し、前記集中度指標が前記設定集中度閾値以上と判定した場合に、前記車両の自動走行を継続するか否かの継続意思を運転者に確認する通知をして、運転者の集中度の向上を促す制御を行い、前記通知により前記運転者からの前記継続意思が確認された場合に、前記車両の自動走行を継続することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転者が眠気を感じやすい(漫然運転をし易い)車両の自動走行時に、車両の運転者の脳波または心拍を検出し、この運転者の眠気と密接に関連する複数の指標を用いて、運転者の運転集中度を表す指標である集中度指標を算出するので、この算出した集中度指標に基づいて運転者の運転集中度をある程度維持するための適切な対処を行うことが可能となり、車両の自動走行時でも運転者の運転集中度をある程度維持することができる。
【0012】
その結果、車両の運転権限をシステムから運転者に強制的に委譲する必要がある場合に、運転者の運転集中度はある程度維持されているので、運転者が適切な運転操作を行うことができ、車両の運転権限をシステムから運転者に安全かつ迅速に委譲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】集中度指標の推定値と眠気の強さの相関関係を示す図である。
図2】運転者の脳波α波の標準偏差と眠気の強さの相関関係を示す図である。
図3】運転者の脳波β波の平均と眠気の強さの相関関係を示す図である。
図4】運転者の心拍のピーク値間隔の平均と眠気の強さの相関関係を示す図である。
図5】運転者の心拍のピーク値間隔の標準偏差と眠気の強さの相関関係を示す図である。
図6】集中度指標の推定値と評定値の相関関係を示す図である。
図7】本発明の車両の運転制御方法の制御フローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の車両の運転制御システム及び車両の運転制御方法について図に示した実施形態に基づいて説明する。なお、本発明の車両の運転制御システム1を備える車両は、運転者の運転操作に依らず運転制御システム1に基づいて車両を走行させる自動走行機能を備えて構成されている。すなわち、車両の運転権限は、運転者または運転制御システム1のいずれか一方が有する。また、車両には、運転制御システム1を制御する制御装置2が備わる。
【0015】
本発明では、この制御装置2が、車両の自動走行中に、車両の運転者の脳波または心拍を検出し、この運転者の脳波または心拍に関連する指標の内、さらに、運転者の眠気と相関関係のある指標を複数(2つ以上)用いて、運転者の運転集中度を表す指標である集中度指標(複合指標)CIを予め設定した制御間隔(時間間隔、走行距離間隔等)毎に算出する制御を行う。図1に示すように、この集中度指標CIは運転者の眠気の強さと正の相関関係があり、運転者の眠気の強さが大きくなるにつれて集中度指標CIも大きくなる。
【0016】
また、この運転者の眠気と相関関係のある指標としては、運転者の脳波α波の標準偏差、脳波β波の平均、心拍のピーク値間隔の平均及び心拍のピーク値間隔の標準偏差を用いる。
【0017】
脳波α波は、運転者がリラックスしている状態のときに発生しやすい8〜13Hzの脳波である。運転者の意識がはっきりしているときは、脳波α波のある一定時間(予め実験等により設定された時間)に対しての偏差(脳波α波の標準偏差)が大きくなる。一方、運転者の意識が定かではなく眠気を感じているときは、脳波α波の標準偏差が小さくなる。すなわち、図2に示すように、脳波α波の標準偏差は運転者の眠気と負の相関関係があり、運転者の眠気の強さが大きくなるにつれて脳波α波の標準偏差は小さくなる。
【0018】
脳波β波は、運転者が活性状態(緊張状態)のときに発生しやすい13〜25Hzの脳波である。運転者は眠気を増すとその眠気を振り払おうと覚醒努力を始める。眠気が増すにつれて覚醒努力は高まり、運転者の緊張状態が高まることになる。このような状態において、脳波β波のある一定時間に対しての平均(脳波β波の平均)が大きくなる。すなわち、図3に示すように、脳波β波の平均は運転者の眠気と正の相関関係がある。
【0019】
なお、脳波α波及びβ波は、国際10−20法を用いて運転者の脳の中心部位(Cz部位)から導出された脳波をバンドパスフィルタを通して、対象周波数の時系列データとし、この対象周波数の活性度として算出される。国際10−20法とは、人間(運転者)の頭皮全体に等間隔に測定用電極を配置し、耳朶に基準電極を配置して、各測定用電極と基準電極の間の電位差を測定する方法である。
【0020】
心拍のピーク値間隔とは、心電図における心拍の隣り合う波のピークの間隔である。運転者が眠気を強く感じるにつれて、心拍は相対的に低くなることから、心拍のピーク値間隔は大きくなる。すなわち、図4に示すように、心拍のピーク値間隔は運転者の眠気と正の相関関係がある。
【0021】
心拍のピーク値間隔の標準偏差とは、心拍のピーク値間隔のある一定時間に対してのバラツキである。運転者が眠気を強く感じるにつれて、心拍のピーク値間隔は大きくなるが、運転者が意識を保とうとすることで、心拍のピーク値間隔のゆらぎが大きくなり、標準偏差は大きくなる。すなわち、図5に示すように、心拍のピーク値間隔の標準偏差は運転者の眠気と正の相関関係がある。
【0022】
以上の運転者の眠気と相関関係のある4つの指標、すなわち、運転者の脳波α波の標準偏差、脳波β波の平均、心拍のピーク値間隔の平均及び心拍のピーク値間隔の標準偏差を用いることで、その複合指標として算出される集中度指標CIを運転者の眠気を反映した指標とすることができる。
【0023】
集中度指標CIの算出方法について説明する。上記の4つの指標(運転者の脳波α波の標準偏差、脳波β波の平均、心拍のピーク値間隔の平均及び心拍のピーク値間隔の標準偏差)を用いて集中度指標CIを算出する場合、集中度指標CIの推定値yは例えば、下記の線形式を用いて算出する。この線形式は、切片の値をa、脳波α波の標準偏差値をx1、脳波β波の平均値をx2、心拍のピーク値間隔の平均値をx3、心拍のピーク値間隔の標準偏差値をx4、各係数をα1、α2、α3、α4として、「y=a+α1×x1+α2×x2+α3×x3+α4×x4」の形で表すことができる。a、α1、α2、α3、α4は実験等により予め設定される固定値であるので、測定値であるx1、x2、x3、x4をこの線形式に代入することで、集中度指標CIの推定値yは算出される。なお、係数α1はマイナスの値である。
【0024】
なお、図6に示すように、このように算出した集中度指標CIの推定値y1と、運転者の顔表情に基づく運転者の眠気の強さの推定値である評定値とはかなり近似した推移線となる。この2つの推定値の相関係数は0.7程度が得られることもあり、かなり強い正の相関がある。
【0025】
以上のように、本発明では、運転者が眠気を感じやすい(漫然運転をし易い)車両の自動走行時に、運転者の眠気と密接に関連する複数の指標を用いて、運転者の運転集中度を表す指標である集中度指標CIを算出するので、この算出した集中度指標CIに基づいて運転者の運転集中度をある程度維持するための適切な対処を行うことが可能となる。
【0026】
なお、集中度指標CIは、上記の4つの指標の他に、さらに、異なる運転者の生体指標や運転者の画像解析情報等を用いて算出するようにしてもよい。この場合、運転者の生体指標をx5、運転者の画像解析情報をx6、各係数をα5、α6として、「y=a+α1×x1+α2×x2+α3×x3+α4×x4+α5×x5+α6×x6」の線形式を用いて、集中度指標CIの推定値yを算出することとなる。
【0027】
生体指標は、例えば運転者の座圧変化を指標とすることが出来る。運転者の座面に埋め込まれた圧センサにより体圧分布の変化を求められる時、運転者が眠くなることで身体活動の低下した状態、すなわち相対的な圧変動が少なくなると考えられる。この時、運転者が眠気を強く感じるにつれて、圧の変化量は小さくなり、運転者の眠気と負の相関がある。
【0028】
運転者の画像解析情報は、車両の運転席に備えたカメラ等により撮影した運転者の顔写真を画像解析して得られる情報である。例えば、運転者の瞼の動きを検知して、眠気によって眼を閉じている割合が高まっている時、この画像解析情報の値は小さくなる。すなわち、運転者の画像解析情報は運転者の眠気と負の相関関係がある。
【0029】
次に、制御装置2が、算出した集中度指標CIに基づき、運転者が眠気を強く感じていると判定した場合に行う制御について説明する。制御装置2は、集中度指標CIの推定値yが予め設定した設定集中度閾値y1以上であるときには、車両の自動走行を継続するか否かの継続意思を運転者に確認して、運転者の集中度の向上を促す制御を行う。このように、車両の自動走行の継続意思確認を運転者に対して行うことで、運転者の眠気を解消して、運転者の集中度をある程度維持することができる。
【0030】
なお、車両の自動走行の継続意思の確認とは、車両の運転席に備えた音声装置からの音声またはテキスト表示パネルに表示されるテキストによる運転者への通知である。例えば、運転者の集中度低下が検出されたときにおける、「運転者の集中度低下が検出されました。自動運転を継続する場合には、自動運転継続用のスイッチを押してください。」等の運転者への通知が継続意思の確認にあたる。なお、運転者が自動運転継続用のスイッチを押した後は、「自動運転継続意思が確認されました。引き続き自動運転を継続します。」等の通知を運転者に対して行う。
【0031】
制御装置2は、車両の自動走行の継続意思を運転者に確認したときから、運転者が専用のスイッチを押す等の動作をすることもなく、継続意思が未確認の状態で予め設定した第1設定時間t1が経過したときには、車両に備わるエンジン(内燃機関)への燃料噴射を停止して、車両の自動走行を解除する制御を行う。
【0032】
このように、エンジンへの燃料噴射の停止及び車両の自動走行の解除を行い、車両を緩やかに減速させることで、運転者の眠気を解消して、運転者が自動走行の継続意思を示すための操作を行うことを可能とする。その結果、運転者の集中度をある程度維持した状態で車両の自動走行に復帰し、自動走行を継続することができる。
【0033】
そして、制御装置2は、車両の自動走行を解除したときから、運転者が未だ専用のスイッチを押す等の動作をすることなく、継続意思が未確認の状態で予め設定した第2設定時間t2が経過したときに、または、車両の速度vが予め設定した設定車速v1以下となったときに、車両の非常点滅表示灯(ハザードランプ)を点灯させながら車両を制動して強制的に停止させる制御を行う。なお、非常点滅表示灯点灯後は、運転者の操作があっても、強制的に車両を自動停止させることが安全上の観点から好ましい。
【0034】
このように、車両を緩やかに減速させても運転者の適切な反応を得られない場合は、車両の非常点滅表示灯を点灯させながら車両を制動して強制的に停止させるので、運転者が眠気を強く感じた状態で車両が走行することがなくなり、自車両と他の車両等の物体との衝突等の事故が未然に発生することを防止することができる。
【0035】
以上より、運転者の眠気を反映して算出した集中度指標CIに基づく適切な対処を行うことで、車両の自動走行時でも運転者の運転集中度をある程度維持することができる。その結果、車両の運転権限をシステムから運転者に強制的に委譲する必要がある場合に、運転者の運転集中度はある程度維持されているので、運転者が適切な運転操作を行うことができ、車両の運転権限をシステムから運転者に安全かつ迅速に委譲することができる。
【0036】
次に、上記の車両の運転制御システム1を基にした、本発明の車両の運転制御方法について、図7の制御フローを参照しながら説明する。図7の制御フローは、車両の自動走行中に予め設定した制御間隔が経過する毎に上級の制御フローより呼ばれる制御スローである。
【0037】
図7の制御フローがスタートすると、ステップS10にて、運転者の集中度指標CIの推定値yを算出する。ステップS10の制御を実施後、ステップS20に進む。ステップS20にて、ステップS10にて算出した推定値yが設定集中度閾値y1以上か否かを判定する。推定値yが設定集中度閾値y1未満である場合(NO)には、リターンに進んで、本制御フローを終了する。一方、推定値yが設定集中度閾値y1以上である場合(YES)には、ステップS30に進み、ステップS30にて、車両の自動走行を継続するか否かの継続意思を運転者に確認して、運転者の集中度の向上を促す。ステップS30の制御を実施後、ステップS40に進む。
【0038】
ステップS40にて、車両の自動走行の継続意思を運転者に確認したときから、運転者が専用のスイッチを押す等の動作をすることもなく、継続意思が未確認の状態で予め設定した第1設定時間t1が経過したか否かを判定する。第1設定時間t1が経過していない場合(NO)には、リターンに進んで、本制御フローを終了する。一方、第1設定時間t1が経過している場合(YES)には、ステップS50に進み、ステップS50にて、エンジンへの燃料噴射を停止して、車両の自動走行を解除する。ステップS50の制御を実施後、ステップS60に進む。
【0039】
ステップS60にて、車両の自動走行を解除したときから、運転者が未だ専用のスイッチを押す等の動作をすることなく、自動走行の継続意思が未確認の状態か否かを判定する。この判定は、車両の自動走行を解除したときから、継続意思が未確認の状態で予め設定した第2設定時間t2が経過したか否か、または、車両の速度vが予め設定した設定車速v1以下となったか否かで行う。自動走行の継続意思を確認されている場合(NO)には、リターンに進んで、本制御フローを終了する。一方、自動走行の継続意思が未確認の場合(YES)には、ステップS70に進み、ステップS70にて、車両の非常点滅表示灯(ハザードランプ)を点灯させながら車両を制動して強制的に停止させる。ステップS70の制御を実施後、リターンに進んで、本制御フローを終了する。
【0040】
以上より、本発明の車両の運転制御システム1を基にした車両の運転制御方法は、車両を自動走行させる機能を備えて構成される車両の運転制御方法において、車両の自動走行中に、車両の運転者の脳波または心拍を検出し、この運転者の脳波または心拍に関連する指標の内、さらに、運転者の眠気と相関関係のある指標を複数用いて、運転者の運転集中度を表す指標である集中度指標CIを予め設定した制御間隔毎に算出する制御を行うことを特徴とする方法となる。
【0041】
この方法によれば、上記の車両の運転制御システム1と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 車両の運転制御システム
2 制御装置
CI 集中度指標
y 集中度指標の推定値
y1 設定集中度閾値
v 車両の速度
v1 設定車速
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7