特許第6874527号(P6874527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874527
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】後処理装置の固定方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20210510BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F01N3/28 301V
   B60K13/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-104532(P2017-104532)
(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-200015(P2018-200015A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】深津 尋
(72)【発明者】
【氏名】須田 江介
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0054128(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0065597(US,A1)
【文献】 特開2008−232070(JP,A)
【文献】 特開2000−345825(JP,A)
【文献】 特開2011−043078(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104712409(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
F01N 13/00〜13/20
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを浄化する後処理装置を車体フレームに固定する後処理装置の固定方法であって、
それぞれ軸部を有する第1マウント部材及び第2マウント部材が設けられた第1ブラケットが固定された前記車体フレームと、第1アーム部材及び第2アーム部材の長手方向の一端側が前記第1ブラケットと対向する一方で長手方向の他端側がそれぞれ固定された前記後処理装置とを準備する第1ステップと、
前記後処理装置及び前記車体フレームを正位置から反転した逆位置に保持した状態で、前記第1マウント部材の軸部と前記第1アーム部材の長手方向の一端側とを締結部材で固定すると共に、前記第2マウント部材の軸部を前記第2アーム部材の長手方向の一端側に設けられた溝部に位置決めさせる第2ステップと、
前記第2マウント部材の軸部が前記溝部に接触した状態で、前記逆位置に位置する前記後処理装置及び前記車体フレームを前記正位置へ反転させる第3ステップと、
前記後処理装置及び前記車体フレームを前記正位置に保持した状態で、前記第2マウント部材の軸部と前記第2アーム部材の長手方向の一端側とを締結部材で固定する第4ステップと、
を備える、後処理装置の固定方法。
【請求項2】
前記溝部は、前記第2マウント部材の前記軸部の周囲を囲むように形成されて側壁を有し、
前記第3ステップにおいて、前記側壁は、前記後処理装置及び前記車体フレームを前記正位置へ反転させる際に、前記軸部の軸方向への移動と、前記軸部の前記第2アーム部材の長手方向への移動とを規制している、
請求項1に記載の後処理装置の固定方法。
【請求項3】
前記第2ステップにおいて、前記後処理装置及び前記車体フレームが前記逆位置に位置する際には、前記溝部は、前記軸部の下方を支えており、
前記第3ステップにおいて、前記後処理装置及び前記車体フレームが前記正位置に位置する際には、前記溝部は、前記軸部の上方に接触している、
請求項2に記載の後処理装置の固定方法。
【請求項4】
前記第1ステップにおいて、前記車体フレームには、前記第1ブラケットから離間した位置において、第3アーム部材及び第4アーム部材の長手方向の一端側がそれぞれ連結された第2ブラケットが固定されており、
前記第2ステップにおいて、前記第3アーム部材の長手方向の他端側を前記後処理装置に締結部材で固定し、
前記第4ステップにおいて、前記第4アーム部材の長手方向の他端側を前記後処理装置に締結部材で固定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の後処理装置の固定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスの後処理装置の車体フレームに対する固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両には、エンジンの排気ガスを浄化するために、排気ガスの後処理装置が設けられている。後処理装置は、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)や、排気ガス中の窒素酸化物(NO)を選択的に還元浄化するSCR(Selective Catalytic Reduction)を含む。
【0003】
また、トラック等のフレーム構造の車両においては、上記の後処理装置が、アーム部材やブラケットを介して車体フレームに固定されている。なお、トラック等の車両では、固定作業を円滑に行う観点等から、後処理装置及び車体フレームを正位置(完成時の位置)と、正位置から反転した逆位置とでそれぞれ固定作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−138680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、後処理装置を車体フレームに固定する構造として、後処理装置に取り付けられた複数のアーム部材と、車体フレームに取り付けられたブラケットに設けられた複数のマウント部材の軸部とをそれぞれ固定する構造が提案されている。上記の構造の場合には、例えば、逆位置の状態で一組のアーム部材と軸部を固定した後に、逆位置から正位置へ反転して、正位置の状態で他の組のアーム部材と軸部を固定する。
【0006】
しかし、上述した反転時に、他の組のアーム部材と軸部が、後処理装置の自重またはマウント部材の撓み等に起因して、位置ずれを引き起こす恐れがある。この結果、正位置での他の組のアーム部材と軸部との固定作業を適切に行えない恐れがある。
【0007】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、後処理装置の車体フレームに固定するために反転する際の位置ずれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様においては、排気ガスを浄化する後処理装置を車体フレームに固定する後処理装置の固定方法であって、それぞれ軸部を有する第1マウント部材及び第2マウント部材が設けられた第1ブラケットが固定された前記車体フレームと、第1アーム部材及び第2アーム部材の長手方向の一端側が前記第1ブラケットと対向する一方で長手方向の他端側がそれぞれ固定された前記後処理装置とを準備する第1ステップと、前記後処理装置及び前記車体フレームを正位置から反転した逆位置に保持した状態で、前記第1マウント部材の軸部と前記第1アーム部材の長手方向の一端側とを締結部材で固定すると共に、前記第2マウント部材の軸部を前記第2アーム部材の長手方向の一端側に設けられた溝部に位置決めさせる第2ステップと、前記第2マウント部材の軸部が前記溝部に接触した状態で、前記逆位置に位置する前記後処理装置及び前記車体フレームを前記正位置へ反転させる第3ステップと、前記後処理装置及び前記車体フレームを前記正位置に保持した状態で、前記第2マウント部材の軸部と前記第2アーム部材の長手方向の一端側とを締結部材で固定する第4ステップと、を備える、後処理装置の固定方法を提供する。
上記の後処理装置の固定方法によれば、後処理装置及び車体フレームの逆位置から正位置への反転時に、第2アーム部材の溝部が、第2マウント部材の軸部に接触して、軸部の移動を規制している。これにより、後処理装置及び車体フレームが正位置に位置する際に、後処理装置に固定された第2前方アーム部材と車体フレームに固定された第2マウント部材との位置ずれを抑制できる。
【0009】
また、前記溝部は、前記第2マウント部材の前記軸部の周囲を囲むように形成されて側壁を有し、前記第3ステップにおいて、前記側壁は、前記後処理装置及び前記車体フレームを前記正位置へ反転させる際に、前記軸部の軸方向への移動と、前記軸部の前記第2アーム部材の長手方向への移動とを規制していることとしてもよい。
【0010】
また、前記第2ステップにおいて、前記後処理装置及び前記車体フレームが前記逆位置に位置する際には、前記溝部は、前記軸部の下方を支えており、前記第3ステップにおいて、前記後処理装置及び前記車体フレームが前記正位置に位置する際には、前記溝部は、前記軸部の上方に接触していることとしてもよい。
【0011】
また、前記第1ステップにおいて、前記車体フレームには、前記第1ブラケットから離間した位置において、第3アーム部材及び第4アーム部材の長手方向の一端側がそれぞれ連結された第2ブラケットが固定されており、前記第2ステップにおいて、前記第3アーム部材の長手方向の他端側を前記後処理装置に締結部材で固定し、前記第4ステップにおいて、前記第4アーム部材の長手方向の他端側を前記後処理装置に締結部材で固定することとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、後処理装置の車体フレームに固定するために反転する際の位置ずれを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車体フレーム10に対する後処理装置20の取り付け構造の一例を説明するための模式図である。
図2】車体フレーム10に対する後処理装置20の取り付け構造の一例を説明するための模式図である。
図3】前方ブラケット32及び後方ブラケット34の構成の一例を説明するための模式図である。
図4】マウント部材52の構成を説明するための模式図である。
図5】溝部80の構成を説明するための模式図である。
図6】後処理装置20の固定方法を説明するためのフローチャートである。
図7】逆位置に位置する車体フレーム10及び後処理装置20を示す模式図である。
図8】軸部52aと溝部80の関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<後処理装置の取り付け構造>
図1図3を参照しながら、車体フレーム10に対する後処理装置20の取り付け構造について説明する。
【0015】
図1及び図2は、車体フレーム10に対する後処理装置20の取り付け構造の一例を説明するための模式図である。図3は、前方ブラケット32及び後方ブラケット34の構成の一例を説明するための模式図である。なお、図2には、図1のA方向から見た車体フレーム10及び後処理装置20が示されている。また、図3では、後方アーム部材44、45が、後方ブラケット34との関係を説明するために示されている。
【0016】
車体フレーム10は、車両(一例としてトラック)を支える骨格である。車体フレーム10は、具体的には、車両の前後方向に延びているコ字状の断面形状を有するサイドフレームである。すなわち、車体フレーム10の長手方向が、車両の前後方向に沿っている。車体フレーム10には、エンジン等が取り付けられている。
【0017】
後処理装置20は、エンジンの排気ガスを浄化する排気浄化装置である。後処理装置20は、エンジンからの排気ガスが流れる排気通路(不図示)に設けられている。後処理装置20は、排気通路から排気ガスが流入する流入口(図1に示す流入口20a)と、浄化した排気ガスを排気通路へ流出する流出口(不図示)とを有する。
【0018】
後処理装置20は、長方体形状に形成された薄板から成る筐体部21を有する。筐体部21は、車幅方向に沿った四隅(例えば、図1に示す前上方隅部22、後上方隅部24)を有する。四隅は、例えばR形状になっている。後処理装置20は、筐体部21の内部に、排気ガス中の粒子状物質を捕集するDPFや、排気ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化するSCRを含む。
【0019】
後処理装置20は、車体フレーム10に取り付けられている。具体的には、後処理装置20の筐体部21が、前方ブラケット32、後方ブラケット34、前方アーム部材42、43、及び後方アーム部材44、45を介して、車体フレーム10に固定されている。なお、本実施形態では、前方ブラケット32が第1ブラケットに該当し、後方ブラケット34が第2ブラケットに該当する。また、前方アーム部材43が第1アーム部材に該当し、前方アーム部材42が第2アーム部材に該当し、後方アーム部材45が第3アーム部材に該当し、後方アーム部材44が第4アーム部材に該当する。
【0020】
前方ブラケット32は、図3に示すように、車両の前後方向(すなわち、車体フレーム10の長手方向)において前方に位置するブラケットである。前方ブラケット32は、締結部材60によって車体フレーム10に固定されている。
【0021】
前方ブラケット32には、図3に示すように、マウント部材52を保持している保持部33aと、マウント部材53を保持している保持部33bとが設けられている。保持部33aは、前方ブラケット32の長手方向の一端側に位置し、保持部33bは、前方ブラケット32の長手方向の他端側に位置している。
【0022】
マウント部材52、53は、後処理装置20の振動を吸収する機能を有する。マウント部材52とマウント部材53は、同様な構成なので、ここではマウント部材52の構成について説明する。
【0023】
図4は、マウント部材52の構成を説明するための模式図である。図4では、説明の便宜上、保持部33aが省略されている。マウント部材52は、図4に示すように、軸部52aと、軸部52aを覆っている弾性部52bとを有する。弾性部52bは、保持部33a(図3)の穴部と嵌合している。軸部52aの軸方向は、図3に示すように、車両の前後方向に平行である。これにより、マウント部材52、53は、軸方向に直交する上下方向及び車幅方向における後処理装置20の振動を吸収する。また、軸部52aは、前方アーム部材42の溝部80に締結部材60によって固定されている。
【0024】
図5は、溝部80の構成を説明するための模式図である。図5には、図4に示す溝部80を下側から見た構成が示されている。溝部80は、軸部52aより若干大きく形成されている。溝部80は、底面81と、側壁82、83と、貫通孔84とを有する。
底面81は、軸部52aと接触している平面である。側壁82、83は、軸部52aの軸方向の端部を囲む壁であり、軸部52aの移動を規制する。側壁82は、軸部52aの軸方向に平行な壁であり、側壁83は軸方向に直交する壁である。貫通孔84は、締結部材60が挿通する孔である。
【0025】
後方ブラケット34は、図3に示すように、車両の前後方向において後方に位置するブラケットである。後方ブラケット34は、締結部材60によって車体フレーム10に固定されている。
【0026】
前方アーム部材42、43は、図2に示すように、車体フレーム10の車幅方向に沿って延在している。前方アーム部材42は上下方向において上方に位置し、前方アーム部材43は下方に位置している。そして、前方アーム部材42は、後処理装置20の前上方隅部22を支持し、前方アーム部材43は、後処理装置20の前下方隅部23を支持している。前上方隅部22及び前下方隅部23は、後処理装置20の隅部でない部分に比べて剛性が高い。このように、前方アーム部材42、43は、後処理装置20の剛性の高い部分を支持しているので、後処理装置20を安定して支持しやすい。
【0027】
前方アーム部材42の長手方向の一端側の連結部42aは、図2に示すように、マウント部材52を介して前方ブラケット32に連結されている。連結部42aは、締結部材60によってマウント部材52の軸部52aと固定されている。前方アーム部材42の長手方向の他端側42bは、後処理装置20の固定部22aの空洞に挿入された状態で、締結部材60によって固定されている。
【0028】
前方アーム部材43の長手方向の一端側の連結部43aは、図2に示すように、マウント部材53を介して前方ブラケット32に連結されている。連結部43aは、締結部材60によってマウント部材53の軸部53aと固定されている。このように、前方アーム部材43は、前方ブラケット32に片持ち支持されている。前方アーム部材43の長手方向の他端側43bは、後処理装置20の固定部23aの空洞に挿入された状態で、締結部材60によって固定されている。
【0029】
後方アーム部材44、45は、車体フレーム10の車幅方向に沿って延在している(図1参照)。後方アーム部材44は上下方向において上方に位置し、後方アーム部材45は下方に位置している(図3参照)。そして、後方アーム部材44は、後処理装置20の後上方隅部24を支持し、後方アーム部材45は、後処理装置20の後下方隅部(不図示)を支持している。
【0030】
後方アーム部材44の長手方向の一端側の連結部44aは、図1に示すように、後方ブラケット34に連結されている。連結部44aは、マウント部材54を保持しており、マウント部材54は、後方ブラケット34に締結部材60によって締結されている。後方アーム部材44の長手方向の他端側44bは、後処理装置20の固定部24aの空洞に挿入された状態で、締結部材60によって固定されている。
【0031】
後方アーム部材45の長手方向の一端側の連結部45a(図7参照)は、後方ブラケット35に連結されている。連結部45aは、マウント部材55を保持している。ここで、マウント部材55は、軸方向が前後方向に平行なマウント部材52、53、54とは異なり、軸方向が上下方向に平行になるように配置されている。そして、マウント部材55は、後方ブラケット34に締結部材60によって締結されている。マウント部材55は、軸方向に直交する前後方向及び車幅方向における後処理装置20の振動を吸収する。後方アーム部材45の長手方向の他端側45bは、後方アーム部材44と同様に、後処理装置20の固定部25aに固定されている。
【0032】
上述した構成の車両では、製造時の固定作業を円滑に行う観点等から、後処理装置20及び車体フレーム10を図1に示す正位置(完成時の位置)と、正位置から反転した逆位置とでそれぞれ固定作業が行われる。例えば、前方ブラケット32に連結される前方アーム部材42、43のうちの前方アーム部材43が、後処理装置20及び車体フレーム10が逆位置に位置する際にマウント部材53を介して前方ブラケット32に固定される。その後、正位置に反転して、前方アーム部材42が、マウント部材52を介して前方ブラケット32に固定される。
【0033】
しかし、上記の反転時に、固定されていない前方アーム部材42とマウント部材52の軸部52aが、後処理装置20の自重、マウント部材52の撓み、反転時に発生する遠心力等に起因して、位置ずれを引き起こす恐れがある。
これに対して、本実施形態では、詳細は後述するが、逆位置の際に軸部52aが前方アーム部材42に設けられた溝部に収まることで位置決めされ、正位置への反転時に溝部が軸部52aに接触して軸部52aの位置ずれを抑制している。
【0034】
<後処理装置の固定方法>
図6を参照しながら、車両の製造時の後処理装置20の車体フレーム10に対する固定方法について説明する。
【0035】
図6は、後処理装置20の固定方法を説明するためのフローチャートである。
図6のフローチャートは、製造ライン上で、図1に示す正位置に対して反転している逆位置に位置する車体フレーム10と後処理装置20が対向しているところから開始される(ステップS102)。
【0036】
図7は、逆位置に位置する車体フレーム10及び後処理装置20を示す模式図である。図7に示すように、車体フレーム10には、前方ブラケット32及び後方ブラケット34が固定されている。また、後方ブラケット34には、後方アーム部材44、45の長手方向の他端側がマウント部材54、55を介して固定されている。一方で、後処理装置20には、前方アーム部材42、43の長手方向の一端側がそれぞれ固定されている。また、マウント部材52、53は、前方ブラケット32に保持されている。
【0037】
次に、後処理装置20を車幅方向に移動して、逆位置での固定作業を行う(ステップS104)。具体的には、図7に示すように、後処理装置20を矢印の示す方向に移動させる。そして、逆位置での固定作業において、マウント部材53の軸部53aと前方アーム部材43の連結部43aとを締結部材60によって固定する。一方で、マウント部材52の軸部52aを、前方アーム部材42の連結部42aに設けられた溝部80に位置決めさせる。
【0038】
図8は、軸部52aと溝部80の関係を説明するための模式図である。溝部80は、図8(a)に示すように、軸部52aの軸方向の両端側を下方から支えている。軸部52aは、軸部53aとは異なり、前方アーム部材42の連結部42aに固定されていない。また、逆位置での固定作業において、後方アーム部材45の長手方向の他端側45bを、後処理装置20の固定部25aに挿通した状態で締結部材60によって固定させる。一方で、後方アーム部材44の長手方向の他端側44bは、後処理装置20の固定部24aに挿通しているが、固定されていない。
【0039】
次に、後処理装置20及び車体フレーム10を、逆位置から正位置へ向かって反転させる(ステップS106)。すなわち、逆位置に位置する後処理装置20及び車体フレーム10を180度回転させて、図8(b)に示すように正位置へ位置させる。
反転する際に、固定されていない軸部52aは、溝部80に接触している。そして、軸部52aが溝部80の側壁82、83に接触することで、反転時に固定されていない軸部52aの前後方向(軸部52aの軸方向)及び車幅方向(前方アーム部材42の長手方向)の移動(反転の際の遠心力または後処理の自重またはマウント部材の撓みによる軸部52aのずれ)が規制される。これにより、後処理装置20のマウント部材52に対する前後方向及び車幅方向にずれることを抑制できる。
【0040】
また、反転前に軸部52aを支えていた溝部80は、反転に伴い軸部52aの上方に位置し、軸部52aに支えられる(図8(b)参照)。これにより、反転の際に後処理装置20が上下方向において下方にずれることを防止できる。
【0041】
次に、正位置での固定作業を行う(ステップS108)。
正位置での固定作業において、図8(c)に示すように、マウント部材52の軸部52aと、前方アーム部材42の溝部80が設けられた連結部42aとを、締結部材60で固定させる。また、第2固定作業において、後方アーム部材44の長手方向の他端側44bを、後処理装置20の固定部24aと固定させる。これにより、後処理装置20の車体フレーム10に対する固定作業が完了する。
【0042】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態においては、車体フレーム10及び後処理装置20を逆位置にした状態で、前方アーム部材43とマウント部材53を締結部材60で固定する一方で、マウント部材52の軸部52aを前方アーム部材42の溝部80に位置決めさせる。その後、溝部80の側壁82、83が軸部52aに接触した状態で、車体フレーム10及び後処理装置20を正位置へ反転させ、正位置の状態で前方アーム部材42とマウント部材52とを締結部材60で固定させる。
上記の固定方法によれば、後処理装置20及び車体フレーム10の逆位置から正位置への反転時に、前方アーム部材42の溝部80が、マウント部材52の軸部52aに接触して、軸部52aの移動を規制している。これにより、後処理装置20及び車体フレーム10が正位置に位置する際に、後処理装置20に固定された前方アーム部材42と車体フレーム10に固定されたマウント部材52との位置ずれを抑制できる。
【0043】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0044】
10 車体フレーム
20 後処理装置
32 前方ブラケット
34 後方ブラケット
42、43 前方アーム部材
44、45 後方アーム部材
52、53 マウント部材
52a、53a 軸部
60 締結部材
80 溝部
82、83 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8