(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
真空断熱材の断熱性能を長期に渡って維持するためには、外被材にガスバリア性に優れたフィルムを使用することによって、外部からのガス侵入を防ぎ、真空断熱材内部の真空度を維持する必要がある。
【0003】
このため、従来は、外被材にはアルミニウム箔などの金属箔を含むフィルムが広く使用されてきた。しかし、金属箔を含むフィルムを真空断熱材に使用すると、金属箔を通じての熱の回り込み(ヒートブリッジ)が発生するため、本来の断熱性能が得られないという課題があった。
【0004】
このヒートブリッジ現象を解決するために、バリア層として、アルミニウム箔層の代わりに、比較的に熱伝導率が小さいステンレス箔層を用いる方法、セラミック蒸着フィルム層を用いる方法、アルミニウム蒸着フィルム層を用いる方法などが知られている。
【0005】
更に、特許文献1のように、ガスバリア性とヒートブリッジとの両方を考慮して、真空断熱材の表裏のいずれか一方の外被材はガスバリア層としてアルミニウム箔層を構成層中に有する積層フィルムを用いるものである。他方の外被材として、ガスバリア層として無機酸化物蒸着層を多層有するバリアフィルム層を構成層中に少なくとも2層有する積層フィルムを用いるものもある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図で、
図2は、本発明の実施の形態1における真空断熱材の斜視図である。
【0016】
<構造>
図1において、真空断熱材11は外被材12と第1繊維体13と第2繊維体14と吸着剤15から構成されている。寸法16は第2繊維体14のはみ出し長さを表す。
【0017】
外被材12は、真空断熱材11の真空度を維持するもので、最内層の熱溶着用の低密度ポリエチレンフィルムと、ガスおよび水分の浸透を抑制するバリア層としてのアルミニウムを蒸着により成膜したポリアクリル酸系樹脂フィルムとアルミニウムを蒸着により成膜したPETフィルムとの二重構造と、最外層の保護としてナイロンフィルムを設けた構成である。
【0018】
なお、熱溶着フィルムとしては特に指定するものではないが、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等の熱可塑性樹脂、或いはそれらの混合体が使用できる。
【0019】
また、ガスバリアフィルムとしては、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等の基材に、アルミニウムや銅等の金属やアルミナやシリカ等の金属酸化物を蒸着したフィルム等が使用できる。
【0020】
また、表面保護フィルムとしては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等従来公知の材料が使用できる。厚みは0.1mm程度である。
【0021】
第1繊維体13と第2繊維体14は、1つの直方体形状である第2繊維体14を、2つの直方体の第1繊維体13で挟んでいる。第2繊維体14は、第1繊維体13より、平面視で大きい。そのため、平面視で、第2繊維体14は、第1繊維体13周囲より、はみ出している。
【0022】
第1繊維体13と第2繊維体14とも、外被材12を支持するもので、ガラス繊維から構成される成形体である。なお、第1繊維体13と第2繊維体14の材料として熱伝導率の低い材料が用いられ、発泡体や粉粒体、繊維体とされたものが利用できる。例えば、発泡体としては、連続気泡のウレタンフォームやスチレンフォーム、フェノールフォーム等が挙げられる。粉粒体としては、無機系、有機系のものが挙がられ、各種フォーム材を粉砕したものや、シリカ、アルミナ、パーライト等が挙げられる。繊維体としては、無機系、有機系のものが挙げられ、グラスファイバー、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー等が挙げられる。
【0023】
また、第1繊維体13と第2繊維体14に採用される材料としては、熱容量の比較的に低いウレタンフォーム等の発泡体またはこれの粉粒体を採用するようにしてもよい。さらには、上記した各種の発泡体や粉粒体、繊維体を混合して用いるようにしてもよい。
【0024】
また、第1繊維体13と第2繊維体14の材料は異なる材料を使用してもよい。
【0025】
また、本実施の形態1では第1繊維体13と第2繊維体14とを別部材にて構成しているが、第1繊維体13から除去加工をすることで同様の形状を作成した一体成形体としてもよい。
【0026】
吸着剤15は、ガスや水蒸気の侵入による気体熱伝導成分の増加を抑制するためのもので、ゼオライトや酸化カルシウム等で構成される。第1繊維体13の角部に配置し、第1繊維体13とともに減圧密封する。吸着剤15は、必須の要素でなく、用いることが好ましい。
【0027】
<効果>
真空断熱材11の製造上で、先に外被材12の3辺を熱溶着して袋状の外被材12を製造する。このため、第1繊維体13を後入れできるように外被材12の重なる所の寸法に少し余裕を設けている。この余裕の部分を利用して中央に第2繊維体14を入れることにより、外被材12の伝熱経路を長くして、外被材12のヒートブリッジを低減させることを可能にする。
【0028】
第2繊維体14の厚みが厚いほど、または、はみ出しの寸法16が長いほど、外被材12のヒートブリッジの低減効果が顕著になる。一方、実用上の観点で考えると、本実施の形態は、第2繊維体14のはみ出し寸法16が5mm〜10mm程度が望ましい。また、外被材12のヒレ部(寸法16で示す部分)は折り曲げて使用するため、第2繊維体14が折り曲げできるように厚みは2mm程度が望ましい。
【0029】
<製造方法>
真空断熱材11の製造方法を説明する。
【0030】
図3は、製造フローチャート図である。
図4は、
図3の製造フローチャートに対応する製造工程を説明する平面図である。
【0031】
Step1、
図4(a)は、外被材12の3辺を溶着することである。外被材12として、次の3層を積層したものである。最内層の熱溶着用の低密度ポリエチレンフィルムと、ガスおよび水分の浸透を抑制するバリア層としてのアルミニウムを蒸着により成膜したポリアクリル酸系樹脂フィルムとアルミニウムを蒸着により成膜したPETフィルムとの二重構造と、最外層の保護としてナイロンフィルムとを設けた3層構成のものを使用した。
長方形に切ったラミネートフィルムの対向する辺の熱溶着同士を、向かい合わせて一辺を熱溶着し、次にもう一辺を熱溶着して、袋状の外被材12を製造する。
【0032】
Step2、
図4(b)は、第1繊維体13と第2繊維体14の作製である。ガラス繊維のシートを加熱圧縮により成形した後、使用サイズに切断し、第1繊維体13を2枚と、第2繊維体14を1枚とを得る。そして、第2繊維体14を2枚の第1繊維体13の間に配置する。
【0033】
Step3、
図4(c)は、第1繊維体13と吸着剤15を外被材袋に挿入することである。第1繊維体13と第2繊維体14が一体となって、吸着剤15と一緒に外被材12を挿入する。
【0034】
Step4、
図4(d)は、真空引きと開口部を溶着することである。未封口の真空断熱材をチャンバー内に設置し、内部を10Pa以下まで減圧した後、開口部を熱溶着して真空断熱材11を得る。
【0035】
結果、真空断熱材11は、側面の外周が、上下の外被材12が積層され、接合されている。その内周に、第2繊維体14が、上下の外被材12で覆われている。一番内周は、第1繊維体13が、上下の外被材12で覆われている。
【0036】
<評価>
次に、本発明の実施の形態1の効果をシミュレーションにより確認した。シミュレーション条件を表1に示し、シミュレーション結果を表2に示す。なお、真空断熱材11の上下の両面の温度差を20Kとし、側面の境界条件を断熱と設定し、輻射を考慮しないように設定した。また外被材12の両方は性能が最も良いアルミニウム蒸着のものを用いた。
【0037】
表1、表2に示す上段の比較例と記載したものは、既存の真空断熱材に対応する。下段の実施例と記載したものは、本実施形態の真空断熱材11に対応する。比較例と実施例とは、全体の芯材厚みが同じ10mmであるもののとし、内部構成は異なる。比較例の10mmの第1繊維体13の1枚に対して、実施例は4mmの第1繊維体13の2枚と2mmの第2繊維体14の1枚で構成される。
【0040】
シミュレーションで得られた結果は、表2に示す通りである。比較例では、外被材12の単位面積を通過する熱量は0.4Wである。一方、本実施例では、外被材12の単位面積を通過する熱量は0.2Wである。
【0041】
つまり、実施例の真空断熱材11は、比較例に対して、外被材12のヒートブリッジが50%も改善した。尚、この結果は外被材12として、面内方向の熱伝導率が低くなる中間層にアルミニウムを蒸着により成膜したシートを用いた場合についての評価結果である。外被材12の中間層としてアルミ箔を用いる場合では、更に、改善される。
【0042】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における真空断熱材の断面図である。
【0043】
<構造>
実施の形態2の真空断熱材41は、実施の形態1の真空断熱材11に対して、第2繊維体44が中空形状であることが異なる。記載しない事項は実施の形態1と同様である。
【0044】
第2繊維体44は、額縁状で四角形の中空を持つ。この中空部分に第1繊維体43が挿入される。
【0045】
<効果>
実施の形態1の効果とともに、以下の効果がある。
【0046】
なお、第2繊維体44は、第1繊維体43の中空部分にはめこまれる。第2繊維体44は、第1繊維体43の中空部分にはめこまれ、第1繊維体43の内部に入り込んでいない。このため、実施する場合に、第2繊維体44の部分が、第1繊維体43に対して、変形しやすく、使用しやすい。
【0047】
<製造方法>
真空断熱材41の製造方法を説明する。
【0048】
製造フローを
図6、その時の製造工程を
図7(a)〜
図7(d)にて示す。製造フローは実施の形態1と同様である。異なる点のみ説明する。Step2、
図7(b)の芯材の作成において、第2繊維体44を第1繊維体43の中央まではめ込むことが異なる。
【0049】
それ以外は、実施の形態1の製造方法と同様である。
【0050】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における真空断熱材の断面図である。
【0051】
<構造>
実施の形態3の真空断熱材61は、実施の形態1の真空断熱材11に対して、第2繊維体64が第1繊維体63の一番下に位置することが異なる。記載しない事項は実施の形態1と同様である。
【0052】
<効果>
第2繊維体64が第1繊維体63より平面視で大きい。このため、外被材12の伝熱経路が長くなり、外被材12のヒートブリッジを低減させることを可能にした。また、第2繊維体64が第1繊維体13の一番下に位置する構造なので製造しやすい。
【0053】
<製法>
真空断熱材61の製造方法を説明する。
【0054】
製造フローを
図9、その時の製造工程を
図10(a)〜
図10(d)にて示す。実施の形態1の製造フローと順序が異なる。記載しない事項は、実施の形態1の製造方法と同様である。
【0055】
Step1、
図10(a)は、第1繊維体63と第2繊維体64の作製である。ガラス繊維のシートを加熱圧縮により成形した後、使用サイズに切断し、第1繊維体63を2枚と、第2繊維体64を得る。
【0056】
Step2、
図10(b)は、第1繊維体63と第2繊維体64を、吸着剤15と共に2枚の外被材12の間に配置する。
【0057】
Step3、
図10(c)は、外被材12の3辺を溶着する。
【0058】
Step4、
図10(d)は、真空引きと開口部を溶着することである。未封口の真空断熱材をチャンバー内に設置し、内部を10Pa以下まで減圧した後、開口部を熱溶着して真空断熱材61を得る。
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4における真空断熱材の断面図の一例である。
【0059】
<構造>
実施の形態4の真空断熱材81は、実施の形態1の真空断熱材11に対して、第2繊維体84が異なる。
【0060】
第2繊維体84は、ストリップ状形状、または、板状形状である。第2繊維体84は、第1繊維体83の四側面のうち、少なくとも1面に挟みこまれる、または、埋め込まれる。
図11は、2つの第2繊維体84a、84bが第1繊維体13の対向する2面に挟みこまれた、または、埋め込まれた断面図である。第2繊維体84a、84bは、一端が、第1繊維体83の内部に位置し、他端が、第1繊維体13の外部に位置する。記載しない事項は実施の形態1と同様である。
【0061】
第2繊維体84は、2面だけでなく、1面、3面、4面でもよい。さらに、1辺に1つでなく、複数の第2繊維体84があってもよい。
【0062】
第2繊維体84は、面の中央でなくとも、面の下部、上部でもよい。
【0063】
<効果>
この構造では、第2繊維体84があることで、真空断熱材11の側面に凸部ができる。この凸部により、外被材12の伝熱経路が長くなり、外被材12のヒートブリッジを低減させることを可能にした。
【0064】
<製法>
図12、13で、真空断熱材81の製造方法を説明する。
【0065】
製造フローを
図12で示す。製造工程を
図13に示す。製造フロー、製造工程は実施の形態1と同様である。異なる点のみ説明する。Step2の芯材の作成(
図12(b))において、第2繊維体84を第1繊維体83の四辺の内、少なくとも一辺に挟み込む。
【0066】
ここで、挟み込む方法は、2つの方法がある。一つ目は、第1繊維体13に、凹部を形成し、第2繊維体84を入れ込むことである。二つ目は、第1繊維体13の厚み方向の中央に切り込みを入れて、第2繊維体84を切り込みした所に入れ込む方法である。こ場合、第2繊維体84を入れ込んだ部分の真空断熱材81の厚みが厚くなり、断熱性能が高い。二つ目の方法が好ましい。
真空断熱材81を得る。
図12は第2繊維体84が第1繊維体13の二辺の端部に挟みこむ製造フローである。
【0067】
(実施の形態5)
図14は、本発明の実施の形態1における真空断熱材11の断面図の一例である。実施の形態1との違いは、寸法16の部分を折り曲げていることである。
【0068】
寸法16は、第1繊維体13の周辺部分に位置する第2繊維体14の部分である。この部分は、真空断熱材11から吐出した部分であり、各種機器に真空断熱材11を配置する時、障害となる。この寸法16の部分を第1繊維体13側に折り曲げると直方体形状となり、機器などに配置しやすい。
【0069】
なお、実施の形態2〜4の真空断熱材も同様に、寸法16を折り曲げることができる。
【0070】
(全体として)
実施の形態は、組み合わせることができる。なお、真空断熱材以外の断熱材にも、この発明は応用できる。