(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、
図1〜
図7を用いて、第1実施形態に係るプレス成形品の製造方法(以下、単に「プレス方法」という)について説明する。第1実施形態のプレス方法では、第1工程において、素材金属板に曲げ加工及びトリム加工を施して中間成形品20が形成され、第2工程において、中間成形品20に曲げ加工を施して最終成形品であるプレス成形品10が形成される。
以下、始めにプレス成形品10及び中間成形品20の構成について説明し、次いで、プレス方法及び該プレス方法に用いられるプレス装置30について説明する。なお、図面において同一の部材などには同一の符号を付しており、以下の説明において同一部材について先に説明したものは、適宜説明を省略している。
【0017】
(プレス成形品について)
図4を用いてプレス成形品10の構成について説明する。なお、以下の説明では、
図4に示される矢印A1及びA2の方向をプレス成形品10の上下方向とし、矢印B1及びB2の方向をプレス成形品10の前後方向とし、矢印C1及びC2の方向をプレス成形品10の幅方向としている。
【0018】
プレス成形品10は、例えば、引張強度が440MPa以上の高強度鋼板によって構成された自動車用部品(例えば、サスペンションの一部を構成するロアアーム等)である。なお、
図4では、プレス成形品10の一部のみを図示している。このプレス成形品10は、天板12と、天板12の外周部(縁部)の部位において下側へ屈曲し且つ該外周部から下側へ延出したフランジ14と、を含んで構成されている。天板12は、上下方向を板厚方向とした略平板状に形成されている。天板12の外周縁部の一部には、上方から見て天板12の内側へ凸となる凹状の「凹状縁部」としての凹状外周部12Aが形成されている。この凹状外周部12Aは、前後方向に略直線状に延在された第1直線外周部12A1と、幅方向に略直線状に延在された第2直線外周部12A2と、第1直線外周部12A1及び第2直線外周部12A2を接続し且つ略円弧状に湾曲された湾曲外周部12A3と、を含んで構成されている。
【0019】
フランジ14は、天板12の凹状外周部12Aの部位において下側(
図4の矢印A2方向側であり、天板12の板厚方向一方側)へ屈曲した縦フランジ16と、縦フランジ16の先端部において屈曲し且つ縦フランジ16の板厚方向における天板12とは反対側(上方から見て天板12の外側)へ延出した先端フランジ18と、を含んで構成されている。すなわち、第1実施形態では、縦フランジ16と先端フランジ18とを含む全体をフランジ14としている。この先端フランジ18は、上方から見て、凹状外周部12Aに沿って延在すると共に、天板12と略平行に配置されている。そして、縦フランジ16において湾曲外周部12A3に接続された部分を湾曲縦フランジ16Aとし、先端フランジ18において湾曲縦フランジ16Aに接続された部分を湾曲先端フランジ18Aとしている。また、以下の説明では、プレス成形品10の板厚方向一方側の面を内表面と称し、プレス成形品10の板厚方向他方側の面を外表面と称している。
【0020】
(中間成形品について)
図5を用いて中間成形品20について説明する。なお、
図5に示される矢印A1及びA2を中間成形品20の上下方向とし、矢印B1及びB2の方向を中間成形品20の前後方向とし、矢印C1及びC2の方向を中間成形品20の幅方向としている。そして、中間成形品20の上下方向、前後方向、幅方向は、プレス成形品10の上下方向、前後方向、幅方向にそれぞれ一致している。さらに、
図5では、中間成形品20の一部のみを図示している。
【0021】
中間成形品20は、プレス成形品10の天板12に対応する中間天板22と、プレス成形品10のフランジ14の基端部となる中間縦フランジ26と、を含んで構成されている。また、中間成形品20は、中間縦フランジ26の先端部において中間縦フランジ26の板厚方向の中間天板22とは反対側へ屈曲し、且つ中間縦フランジ26の先端部から延出した中間先端フランジ28Aを有している。そして、中間成形品20では、中間縦フランジ26の高さ寸法(換言すると、上下寸法)H2が、プレス成形品10の縦フランジ16の高さ寸法(換言すると、上下寸法)H1よりも小さくなっている。また、中間先端フランジ28Aの幅寸法(換言すると、中間縦フランジ26からの延出長さ)W2が、プレス成形品10の先端フランジ18の幅寸法(換言すると、縦フランジ16からの延出長さ)W1よりも大きくなっている。さらに、中間縦フランジ26と中間先端フランジ28Aとの境界部分は、屈曲部24である。
【0022】
さらに、第1実施形態では、後述するプレス方法の第1工程の終期において、トリム加工によって中間先端フランジ28Aが形成されるようになっている。以下、中間フランジのトリム加工前とトリム加工後とを区別するために、トリム加工前の中間先端フランジに符号28Bを付して、トリム加工後の中間先端フランジに符号28Aを付している。そして、
図6に示されるように、トリム加工前の中間先端フランジ28Bでは、中間先端フランジ28Bの外周縁部が、上下方向から見て、中間縦フランジ26の前後方向一方側(
図6の矢印B2側)の端部から幅方向一方側(
図6の矢印C1側)に沿って延出している。このため、トリム加工前の中間先端フランジ28Bの面積が、トリム加工後の中間先端フランジ28Aの面積よりも大きくなっている。換言すると、中間先端フランジ28Bは、中間先端フランジ28Aに対して余肉部(
図5の二点鎖線で示される部分)が付与された形状になっている。そして、以下の説明では、中間成形品20の板厚方向一方側の面を内表面と称し、プレス成形品10の板厚方向他方側の面を外表面と称している。
【0023】
(プレス成形品の製造方法について)
次に、プレス成形品の製造方法について説明する。プレス成形品の製造方法では、プレス装置30を用いてプレス成形品10を製造する。初めに、
図1〜
図3を用いて、プレス装置30について説明する。なお、
図1〜
図3では、矢印A1及びA2をプレス装置30の上下方向としている。そして、プレス装置30の上下方向とプレス成形品10及び中間成形品20の上下方向とが一致している。また、
図1〜
図3は、
図4に示されるプレス成形品10の1−1線位置における縦断面図として図示している。
【0024】
プレス装置30は、素材金属板P(鋼板)に曲げ加工を施して中間成形品20を成形するための第1プレス型32(
図1参照)と、中間成形品20に曲げ加工を施してプレス成形品10を成形するための第2プレス型34(
図3参照)と、を含んで構成されている。以下、それぞれのプレス型について説明する。
【0025】
(第1プレス型について)
図1に示されるように、第1プレス型32は、第1プレス型32の上側部分を構成する第1ダイ40と、第1プレス型32の下側部分を構成する第1パンチ50と、を含んで構成されている。そして、第1ダイ40及び第1パンチ50が、上下方向に対向して配置されている。
【0026】
第1ダイ40は、中間成形品20の外表面(板厚方向他方側の面)に対応した成形面を有している。具体的には、第1ダイ40は、中間成形品20の中間天板22を成形するための天板成形面40Aと、中間縦フランジ26を成形するための縦フランジ成形面40Bと、中間先端フランジ28Bを成形するための先端フランジ成形面40Cと、を有している。
また、第1ダイ40の下端部には、先端フランジ成形面40Cに対して縦フランジ成形面40Bとは反対側の位置において、ダイ側トリムナイフ42が一体に設けられている。このダイ側トリムナイフ42は、先端フランジ成形面40Cに対して下側へ突出しており、ダイ側トリムナイフ42の下端部には、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの外周縁部をせん断(切断)して中間先端フランジ28Aを形成するための「トリム刃」としての第1トリム刃42Aが設けられている。すなわち、第1トリム刃42Aは、中間成形品20のトリム加工後の中間先端フランジ28Aの外周縁部に対応した形状に形成されている。
【0027】
また、第1ダイ40は、第1移動装置36に連結されている。この第1移動装置36は、例えば油圧装置、電動駆動装置等によって構成されており、第1ダイ40が、第1移動装置36によって上下方向(第1パンチ50に対して接離する方向)に移動可能に構成されている。
【0028】
第1パンチ50は、第1ダイ40の下側に配置されている。第1パンチ50は、中間成形品20の内表面(板厚方向一方側の面)に対応した成形面を有している。具体的には、第1パンチ50は、第1ダイ40の天板成形面40Aに対応する天板成形面50Aと、縦フランジ成形面40Bに対応する縦フランジ成形面50Bと、先端フランジ成形面40Cに対応する先端フランジ成形面50Cと、を有している。
また、第1パンチ50の先端フランジ成形面50Cが形成された部分には、パンチ側トリムナイフ52が一体に設けられており、パンチ側トリムナイフ52の側面52Aは、中間成形品20のトリム加工後の中間先端フランジ28Aの外周縁部に対応した形状に形成されている。さらに、パンチ側トリムナイフ52の上端部には、第2トリム刃52Bが設けられており、第2トリム刃52Bは、中間成形品20のトリム加工前の中間先端フランジ28Bの外周縁部を第1ダイ40の第1トリム刃42Aと協働してせん断(切断)する部分である。
【0029】
(第2プレス型について)
図3(A)に示されるように、第2プレス型34は、第2プレス型34の上側部分を構成する第2ダイ60と、第2プレス型34の下側部分を構成する第2パンチ70と、を含んで構成されている。そして、第2ダイ60及び第2パンチ70が、上下方向に対向して配置されている。
【0030】
第2ダイ60は、プレス成形品10の外表面(板厚方向他方側の面)に対応した成形面を有している。具体的には、第2ダイ60は、プレス成形品10の天板12を成形するための天板成形面60Aと、縦フランジ16を成形するための縦フランジ成形面60Bと、先端フランジ18を成形するための先端フランジ成形面60Cと、を有している。
【0031】
また、第2ダイ60は、第2移動装置38に連結されている。この第2移動装置38は、第1移動装置36と同様に、例えば油圧装置、電動駆動装置等によって構成されており、第2ダイ60が、第2移動装置38によって上下方向(第2パンチ70に対して接離する方向)に移動可能に構成されている。
【0032】
第2パンチ70は、第2ダイ60の下側に配置されている。この第2パンチ70は、プレス成形品10の内表面(板厚方向一方側の面)に対応した成形面を有している。具体的には、第2パンチ70は、第2ダイ60の天板成形面60Aに対応する天板成形面70Aと、縦フランジ成形面60Bに対応する縦フランジ成形面70Bと、先端フランジ成形面60Cに対応する先端フランジ成形面70Cと、を有している。
【0033】
次に、第1実施形態に係るプレス方法について説明しつつ、第1実施形態の作用及び効果を説明する。第1実施形態に係るプレス方法は、以下に示す第1工程及び第2工程を有している。
【0034】
図1に示されるように、第1工程の初期では、第1移動装置36によって第1ダイ40が第1パンチ50に対して上側へ離間された状態に保持されている。この状態において、素材金属板Pを第1パンチ50の天板成形面50A上に設置(セット)する。そして、
図2(A)に示されるように、第1移動装置36によって第1ダイ40を第1パンチ50に対して下側へ相対移動させて、中間成形品20の中間縦フランジ26に対応する部分を第1ダイ40及び第1パンチ50によって成形する。
図2(B)に示されるように、第1ダイ40が下死点に到達すると、中間成形品20の中間縦フランジ26が形成されると共に、第1ダイ40の天板成形面40Aと第1パンチ50の天板成形面50Aとが素材金属板Pを挟持加圧して、中間成形品20の中間天板22が形成される。またこのときには、第1ダイ40の先端フランジ成形面40Cと第1パンチ50の先端フランジ成形面50Cとが素材金属板Pを挟持加圧して、中間成形品20の中間先端フランジ28Bが形成される。
【0035】
さらに、第1工程の終期(詳しくは、第1ダイ40が下死点に到達する直前から第1ダイ40が下死点に到達するまでの期間)では、中間成形品20に対してトリム加工が施される。具体的には、第1ダイ40が下死点に到達する直前(換言すると、第1ダイ40の下死点に対して素材金属板Pの板厚分だけ手前)において、第1ダイ40の第1トリム刃42Aと第1パンチ50の第2トリム刃52Bとが協働して、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの外周縁部をせん断して、中間先端フランジ28Bの一部を除去する。これにより、中間成形品20の中間先端フランジ28Aが形成される。すなわち、第1工程では、中間成形品20の中間先端フランジ28Bを形成しつつ、該中間先端フランジ28Bの一部を除去して中間先端フランジ28Aを形成する。
【0036】
図3(A)に示されるように、第2工程の初期では、第2移動装置38によって第2ダイ60が第2パンチ70に対して上側へ離間された状態で保持されている。この状態において、中間成形品20の中間天板22を第2パンチ70の天板成形面70A上に設置(セット)する。この状態から、第2移動装置38によって第2ダイ60を下側へ移動させて、第2ダイ60の先端フランジ成形面60Cによって中間成形品20の中間先端フランジ28Aを下側へ押し込む。このとき、中間成形品20の中間先端フランジ28Aと中間縦フランジ26との間の屈曲部24を下側へ曲げ伸ばしながら(換言すると、屈曲部24の位置を下側へずらしながら)、プレス成形品10の縦フランジ16及び先端フランジ18を成形する。そして、
図3(B)に示されるように、第2ダイ60が下死点に到達することで、プレス成形品10が形成される。
【0037】
以上説明したように、第1実施形態のプレス方法では、第1工程において素材金属板Pに曲げ加工を施して、プレス成形品10の縦フランジ16よりも高さの低い中間縦フランジ26を形成すると共に、中間先端フランジ28Bを形成する。しかも、第1工程の終期において、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの一部を除去して、中間先端フランジ28Bよりも面積の小さい中間先端フランジ28Aを形成する。さらに、第2工程において中間成形品20に対して曲げ加工を施して、中間縦フランジ26及び中間先端フランジ28Aの間の屈曲部24を曲げ伸ばして、プレス成形品10を形成する。これにより、プレス成形後におけるプレス成形品10のフランジ14(縦フランジ16及び先端フランジ18)の板厚減少率が高くなることを抑制できる。以下、この点について、比較例1及び比較例2のプレス方法と比較しつつ説明する。
【0038】
(比較例)
まず、比較例1及び比較例2のプレス方法について説明する。比較例1のプレス方法では、第1実施形態のプレス方法に対して、第1工程におけるトリム加工が省略されている。すなわち、比較例1の第2工程では、面積の大きい中間先端フランジ28Bを有する中間成形品20を用いてプレス成形品10を製造するようになっている。
【0039】
一方、比較例2の製造方法では、第1実施形態のプレス方法とは、異なる形状の素材金属板Pを用いて中間成形品20を形成するようになっている。具体的には、第1工程の完了後の中間成形品20において、面積の小さい中間先端フランジ28Aが形成されるように、素材金属板Pの外形形状が予め設定されている。このため、比較例2においても、第1実施形態のプレス方法に対して、第1工程のトリム加工が省略されている。
【0040】
ここで、上記第1工程及び第2工程を経てプレス成形品10を成形する過程では、素材金属板Pにおけるプレス成形品10の縦フランジ16に対応する部分が、上下方向に伸ばされながら形成される。このため、プレス成形品10の縦フランジ16の板厚が、素材金属板Pの板厚に対して減少する。また、プレス成形品10の先端フランジ18は湾曲先端フランジ18Aを有しているため、上記第1工程及び第2工程を経てプレス成形品10を成形する過程では、素材金属板Pにおける先端フランジ18に対応する部分が伸びフランジ成形される。すなわち、成形後の先端フランジ18は、その周方向(
図4の矢印D方向)に引張られた状態にされる。このため、プレス成形品10の先端フランジ18の板厚が、素材金属板Pの板厚に対して減少する。そして、プレス成形品10における縦フランジ16及び先端フランジ18における板厚減少率は、第1工程及び第2工程における各々の板厚減少率の累積になる。
【0041】
(比較例1)
上記比較例1のプレス方法では、第1工程後の中間成形品20において、第1実施形態の中間先端フランジ28Aと比べて面積の大きい中間先端フランジ28Bが形成される。そして、中間先端フランジ28Bは、第1実施形態の中間先端フランジ28Aに対して余肉部(
図5の二点鎖線は、余肉部の縁を示している。)を有する形状になっているといえる。このため、比較例1では、第1工程において中間先端フランジ28Bが伸びフランジ成形されても、第1工程後の中間成形品20における中間先端フランジ28Bに生じる板厚減少率を低くすることができる。
【0042】
しかしながら、比較例1のプレス方法では、面積の大きい(余肉部を有した状態の)中間先端フランジ28Bを有する中間成形品20を用いて第2工程が行われる。このため、第2工程において、第2ダイ60の先端フランジ成形面60Cが中間先端フランジ28Bを押し込むときの第2ダイ60と中間先端フランジ28Bとの接触面積が大きくなる。これにより、第2ダイ60の先端フランジ成形面60Cが中間先端フランジ28Bを押し込むときの第2ダイ60と中間先端フランジ28Bとの間の接触抵抗が比較的大きくなり、第2工程において、中間先端フランジ28Bの材料が中間縦フランジ26側(
図3(A)及び
図5に示される矢印E方向側)へ流入することが抑制される。したがって、第2工程完了後における、プレス成形品10の縦フランジ16の板厚減少率が高くなる傾向になる。以上により、比較例1のプレス方法では、プレス成形品10の先端フランジ18に対する板厚減少率を低くできるものの、縦フランジ16に対する板厚減少率が高くなる傾向になる。具体的には、
図4に示される、縦フランジ16のa部における板厚減少率が高くなる。
【0043】
(比較例2)
次に、比較例2のプレス方法では、第1工程後の中間成形品20において、第1実施形態の中間先端フランジ28Bと比べて面積の小さい中間先端フランジ28Aが形成される。すなわち、中間成形品20の中間先端フランジ28Aが、第1実施形態の中間先端フランジ28Bの余肉部を切り欠いた形状になるように形成される。このため、比較例2では、第1工程において中間先端フランジ28Aが伸びフランジ成形されると、第1工程後の中間成形品20における中間先端フランジ28Aに生じる板厚減少率が高くなる。
【0044】
しかしながら、比較例2のプレス方法では、面積の小さい(余肉部を切り欠いた状態の)中間先端フランジ28Aを有する中間成形品20を用いて第2工程が行われる。このため、第2工程において、第2ダイ60の先端フランジ成形面60Cが中間先端フランジ28Aを押し込むときの第2ダイ60と中間先端フランジ28Aとの接触面積が小さくなる。これにより、第2ダイ60の先端フランジ成形面60Cが中間先端フランジ28Aを押し込むときの第2ダイ60と中間先端フランジ28Aとの間の接触抵抗が小さくなり、第2工程中において、中間先端フランジ28Aの材料が中間縦フランジ26側(
図3(A)及び
図5に示される矢印E方向側)へ流入されるようになる。したがって、第2工程完了後における、プレス成形品10の縦フランジ16の板厚減少率を低くすることができる。以上により、比較例2のプレス方法では、プレス成形品10の縦フランジ16に対する板厚減少率を低くできるものの、先端フランジ18に対する板厚減少率が高くなる傾向になる。具体的には、
図4に示される、先端フランジ18のb部における板厚減少率が高くなる。
【0045】
(第1実施形態の効果)
これらに対して、第1実施形態のプレス方法では、第1工程の終期までは、面積の大きい中間先端フランジ28Bを有する中間成形品20が形成される。このため、上記比較例1と同様に、第1工程後の中間成形品20における中間先端フランジ28Bに対する板厚減少率を低くすることができる。そして、第2工程の開始前において、中間先端フランジ28Bの一部を除去して中間先端フランジ28Aを形成する。このため、第2工程において、面積の小さい中間先端フランジ28Aを有する中間成形品20を用いてプレス成形品10を形成することができる。これにより、上記比較例2と同様に、第2工程における縦フランジ16に対する板厚減少率を低くすることができる。以上により、第1実施形態のプレス方法では、第1工程(換言すると、プレス方法の前期)において、プレス成形品10の先端フランジ18に対する板厚減少率を低くして、且つ第2工程(換言すると、プレス方法の後期)において、縦フランジ16に対する板厚減少率を低くすることができる。すなわち、縦フランジ16の板厚減少率と先端フランジ18の板厚減少率とのバランスをとるように、プレス成形品10を形成することができる。換言すると、縦フランジ16及び先端フランジ18の一方の板厚減少率が極端に高くならないように、フランジ14に生じる板厚減少率を分散させて、フランジ14(縦フランジ16及び先端フランジ18)における最大板厚減少率を低くすることができる。したがって、フランジ14(縦フランジ16及び先端フランジ18)の割れの発生を効果的に抑制することができる。
【0046】
なお、第1実施形態のプレス方法では、
図15(A)に示されるように、第1工程の終期までの工程、すなわち面積の大きい中間先端フランジ28Bを有する中間成形品20を形成する工程が、本開示の「トリム前成形工程」に相当する。また、第1工程の終期において中間先端フランジ28Bの一部を除去して中間先端フランジ28Aを形成する工程が、本開示の「トリム工程」に相当する。また、第2工程において面積の小さい中間先端フランジ28Aを有する中間成形品20を用いてプレス成形品10を形成する工程が、本開示の「トリム後成形工程」に相当する。
【0047】
以下、比較例1、比較例2、及び第1実施形態のプレス方法によってプレス成形品10を製造したときの、シミュレーションによって求めた縦フランジ16及び先端フランジ18における最大板厚減少率を、
図7に示されるグラフを用いて説明する。なお、
図7に示されるグラフの横軸は、縦フランジ16における最大板厚減少率(%)を示しており、縦軸は、先端フランジ18における最大板厚減少率(%)を示している。そして、
図7にて一点鎖線で示される縦軸に沿った線L1が、縦フランジ16において割れの生じる最大板厚減少率の領域と、割れの生じない最大板厚減少率の領域との境界を示す境界線である。また、
図7にて一点鎖線で示される横軸に沿った線L2が、先端フランジ18において割れの生じる最大板厚減少率の領域と、割れの生じない最大板厚減少率の領域との境界を示す境界線である。すなわち、境界線L1及び境界線L2の少なくとも一方に対して板厚減少率の大きい領域F(
図7においてドットにて示された領域)がフランジ14に割れの生じる領域である。一方、境界線L1及び境界線L2に対して板厚減少率の小さい領域Gがフランジ14に割れの生じない領域である。なお、当該境界線L1及び境界線L2は穴広げ試験などの一般的な材料試験方法によって求めたものである。
【0048】
そして、
図7では、比較例1、比較例2、及び第1実施形態のデータが、それぞれ、四角印(比較例1)、丸印(比較例2)、及び三角印(第1実施形態)でプロットされている。また、それぞれのデータは、上述のように、縦フランジ16及び先端フランジ18における最大板厚減少率を示している。なお、
図7では、引張強度が980Mpa、板厚が2.9mmの高強度鋼板を用いてプレス成形品10を成形したときのシミュレーションの結果を示している。また、該シミュレーションでは、プレス成形品10の湾曲外周部12A3の半径を40mmに設定し、縦フランジ16の高さ寸法H1を60mmに設定し、先端フランジ18の幅寸法W1を8mmに設定した。また、中間成形品20では、中間縦フランジ26の高さ寸法H2を45mmに設定し、中間先端フランジ28Aの幅寸法W2を25mmに設定した。さらに、該シミュレーションにおいて、縦フランジ16では、
図4にて示されるa部付近において板厚減少率が最大となることが確認され、先端フランジ18では、
図4にて示されるb部付近において板厚減少率が最大となることが確認された。
【0049】
そして、
図7に示されるように、比較例1では、縦フランジ16における最大板厚減少率が約45%であり、先端フランジ18における最大板厚減少率が約9%であることが確認された。これにより、比較例1では、先端フランジ18における最大板厚減少率が境界線L2に対して低くなるものの、縦フランジ16における最大板厚減少率が境界線L1に対して高くなることが解る。また、比較例2では、縦フランジ16における最大板厚減少率が約23%であり、先端フランジ18における最大板厚減少率が約32%であることが確認された。これにより、比較例2では、縦フランジ16における最大板厚減少率は境界線L1に対して低くなるものの、先端フランジ18における最大板厚減少率が境界線L2に対して高くなることが解る。したがって、比較例1及び比較例2のそれぞれのデータは、フランジ14に割れの生じる領域Fに位置しているため、縦フランジ16又は先端フランジ18に割れが発生することになる。
【0050】
一方、第1実施形態では、縦フランジ16における最大板厚減少率が約20%であり、先端フランジ18における最大板厚減少率が約18%であることが確認された。これにより、第1実施形態では、縦フランジ16における最大板厚減少率及び先端フランジ18における最大板厚減少率の一方が極端に高くなることを抑制できることが解る。しかも、第1実施形態では、縦フランジ16における最大板厚減少率が境界線L1に対して低くなり、先端フランジ18における最大板厚減少率が境界線L2に対して低くなることが解る。つまり、第1実施形態のデータがフランジ14に割れの生じない領域G側に位置している。このため、第1実施形態のプレス方法によれば、縦フランジ16又は先端フランジ18において、割れを発生させることなく、プレス成形品10を形成できることが解る。以上により、第1実施形態のプレス方法によれば、フランジ14(縦フランジ16及び先端フランジ18)の割れの発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
また、第1実施形態のプレス方法では、中間先端フランジ28Bに対するトリム加工が第1工程内で行われる。このため、プレス方法における工数の増加を抑制しつつ、面積の小さい中間先端フランジ28Aを形成することができる。
【0052】
また、第1実施形態のプレス方法では、トリム加工が第1工程の終期にて行われる。すなわち、第1工程の終期までは、中間成形品20において、面積の大きい中間先端フランジ28Bが形成される。このため、中間成形品20の中間先端フランジ28Aにおける板厚減少率が高くなることを抑制でき、ひいてはプレス成形品10の先端フランジ18における板厚減少が高くなることを抑制できる。
【0053】
(第1実施形態の変形例:絞り)
なお、第1実施形態のプレス方法では、第1工程において素材金属板Pに曲げ加工を施して中間成形品20を形成し、第2工程において中間成形品20に曲げ加工を施してプレス成形品10を形成する構成になっている。これに代えて、第1工程において素材金属板Pに絞り加工を施して中間成形品20を成形してもよい。また、第2工程において中間成形品20に対して絞り加工を施して、プレス成形品10を成形してもよい。以下、第1工程を絞り加工にした場合と、第2工程を絞り加工にした場合と、について説明する。
【0054】
図8及び
図9を用いて、第1工程において絞り加工を行う場合の第1プレス型32について説明する。
図8に示されるように、この場合の第1プレス型32は、第1プレス型32の上側部分を構成する第1ダイ40と、第1プレス型32の下側部分を構成する第1パンチ50、第1ブランクホルダ80、及び下側トリム型部84と、を含んで構成されている。
【0055】
第1ダイ40は、第1実施形態と同様に、中間成形品20の中間天板22を成形するための天板成形面40Aと、中間縦フランジ26を成形するための縦フランジ成形面40Bと、中間先端フランジ28Bを成形するための先端フランジ成形面40Cと、を有している。
また、第1ダイ40における先端フランジ成形面40Cが形成された部分にダイ側トリムナイフ42が一体に設けられており、ダイ側トリムナイフ42の下端部に第1トリム刃42Aが設けられている。さらに、ダイ側トリムナイフ42に対して縦フランジ成形面40Bとは反対側の部分には、後述する下側トリム型部84を収容可能にする凹部44が形成されている。そして、ダイ側トリムナイフ42の第1トリム刃42Aが、後述する下側トリム型部84の第2トリム刃84Aと協働して中間成形品20に対してトリム加工を施すようになっている。なお、第1ダイ40には、第1実施形態と同様に、第1移動装置36が連結されている。
【0056】
第1パンチ50は、第1ダイ40の下側に配置され、第1ダイ40の天板成形面40Aに対応する天板成形面50Aと、縦フランジ成形面40Bに対応する縦フランジ成形面50Bと、を有している。
【0057】
第1ブランクホルダ80は、第1ダイ40の先端フランジ成形面40Cの下側に配置され、先端フランジ成形面40Cと上下方向に対向して配置されている。第1ブランクホルダ80の上面は、ブランク加圧面80Aであり、ブランク加圧面80Aは、上下(プレス)方向に直交する。また、第1ブランクホルダ80には、第1加圧装置82が連結されている。この第1加圧装置82は、例えば油圧装置、電動駆動装置等によって構成され、第1ブランクホルダ80が、第1加圧装置82によって上下方向(第1パンチ50に対して接離する方向)に移動可能である。
【0058】
下側トリム型部84は、第1ダイ40の凹部44の下側に配置されている。この下側トリム型部84の上端部には、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの先端部を切断して、中間先端フランジ28Aを形成する「トリム刃」として第2トリム刃84Aが設けられている。第2トリム刃84Aは、中間成形品20のトリム加工後の中間先端フランジ28Aの外周縁部に対応した形状に形成されている。
【0059】
そして、第1工程において絞り加工を施す場合では、
図8に示されるように、素材金属板Pを第1パンチ50の天板成形面50A上に設置(セット)する。次に、第1移動装置36及び第1加圧装置82を作動させて、第1ダイ40の先端フランジ成形面40Cと第1ブランクホルダ80のブランク加圧面80Aとによって、素材金属板Pを挟持する。そして、
図9(A)に示されるように、第1移動装置36及び第1加圧装置82を作動させて、第1ダイ40及び第1ブランクホルダ80によって素材金属板Pを挟持した状態を維持しながら、第1ダイ40及び第1ブランクホルダ80を第1パンチ50に対して下側へ相対移動させて、中間成形品20の中間縦フランジ26に対応する部分を形成する。更に、
図9(B)に示されるように、第1ダイ40が下死点に到達すると、第1ダイ40の天板成形面40Aと第2パンチ70の天板成形面50Aとが素材金属板Pの中間天板22に対応する部分を挟持加圧して、中間成形品20の中間天板22が形成される。
【0060】
さらに、第1工程の終期(詳しくは、第1ダイ40が下死点に到達する直前から第1ダイ40が下死点に到達するまでの期間)では、中間成形品20に対してトリム加工が施される。具体的には、第1ダイ40が下死点に到達する直前において、第1ダイ40(のダイ側トリムナイフ42)の第1トリム刃42Aと下側トリム型部84の第2トリム刃84Aとが協働して、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの外周縁部をせん断する。これにより、中間成形品20において中間先端フランジ28Aが形成される。以上により、第1工程において、絞り加工によって中間成形品20を形成することができる。
【0061】
(絞り;第2プレス型)
次に、
図10を用いて、第2工程において絞り加工を行う場合の第2プレス型34について説明する。
図10(A)に示されるように、この場合の第2プレス型34は、第2プレス型34の上側部分を構成する第2ダイ60と、第2プレス型34の下側部分を構成する第2パンチ70及び第2ブランクホルダ90と、を含んで構成されている。
【0062】
第2ダイ60は、第1実施形態と同様に、プレス成形品10の天板12を成形するための天板成形面60Aと、縦フランジ16を成形するための縦フランジ成形面60Bと、先端フランジ18を成形するための先端フランジ成形面60Cと、を有している。
【0063】
第2パンチ70は、第2ダイ60の下側に配置されて、第2ダイ60の天板成形面60Aに対応する天板成形面70Aと、縦フランジ成形面60Bに対応する縦フランジ成形面70Bと、を含んで構成されている。
【0064】
第2ブランクホルダ90は、第2ダイ60の先端フランジ成形面60Cの下側に配置されて、先端フランジ成形面60Cと上下方向に対向して配置されている。また、第2ブランクホルダ90の上面がブランク加圧面90Aとされており、ブランク加圧面90Aは上下方向に対して直交する面に沿って配置されている。さらに、第2ブランクホルダ90には、第2加圧装置92が連結されている。この第2加圧装置92は、例えば油圧装置、電動駆動装置等によって構成されており、第2ブランクホルダ90が、第2加圧装置92によって上下方向(第2ダイ60に対して接離する方向)に移動可能に構成されている。
【0065】
そして、第2工程において絞り加工を施す場合では、初めに第2移動装置38によって第2ダイ60を第2パンチ70に対して上側へ離間された状態に保持する。また、第2ブランクホルダ90が、第2加圧装置92によって、中間成形品20の中間先端フランジ28Aの下面に隣接した状態に保持される。この状態において、中間成形品20の中間天板22を第2パンチ70の天板成形面70A上に設置(セット)する。そして、第2移動装置38によって第2ダイ60を下側へ移動させて、第2ダイ60の先端フランジ成形面60Cと第2ブランクホルダ90のブランク加圧面90Aとによって中間成形品20の中間先端フランジ28Aを加圧挟持する。そして、第2移動装置38及び第2加圧装置92を作動させて、第2ダイ60及び第2ブランクホルダ90によって中間成形品20の中間先端フランジ28Aを挟持した状態を維持したまま、第2ダイ60及び第2ブランクホルダ90を第2パンチ70に対して相対的に下側へ移動させる。これにより、中間成形品20の中間先端フランジ28Aと中間縦フランジ26との間の屈曲部24を下側へ移動させながら、プレス成形品10の縦フランジ16を形成する。
図10(B)に示されるように、第2ダイ60が下死点に到達すると、第2ダイ60の天板成形面60A及び第2パンチ70の天板成形面70Aによって、プレス成形品10の天板12が加圧挟持されて、プレス成形品10が形成される。以上により、第2工程において、絞り加工によってプレス成形品10を形成することができる。
【0066】
また、第1実施形態のプレス方法において、第1工程を
図8及び
図9に示される第1プレス型32を用いた絞り加工の工程とし、第2工程を
図10に示される第2プレス型34を用いた絞り加工の工程とする場合には、以下のようにすることが望ましい。すなわち、第1工程における第1ブランクホルダ80及び第1ダイ40による素材金属板Pに対する加圧力を、第2工程における第2ブランクホルダ90と第2ダイ60による中間成形品20に対する加圧力に比べて高く設定することが望ましい。つまり、第1工程では、素材金属板Pの中間天板22側の素材を、中間縦フランジ26側へ流入させて、中間縦フランジ26を成形する。このため、第1工程中では、第1ダイ40の天板成形面40Aと縦フランジ成形面40Bとの境界部である肩部に対して素材金属板Pが相対的に移動するのに対して、第1ダイ40の縦フランジ成形面40Bと先端フランジ成形面40Cとの境界部である肩部に対して素材金属板Pは相対的に略移動しない構成になる。これに対して、第2工程では、前述したように、中間先端フランジ28Aの材料が中間縦フランジ26側へ流入されながらプレス成形品10の縦フランジ16が成形される。このため、第2工程中では、第2ダイ60の縦フランジ成形面60Bと先端フランジ成形面60Cとの境界部である肩部に対して中間成形品20が相対的に移動するのに対して、第2ダイ60の天板成形面60Aと縦フランジ成形面60Bと境界部である肩部に対して中間成形品20は相対的に略移動しない構成になる。したがって、上述のように、第1工程における第1ブランクホルダ80及び第1ダイ40による素材金属板Pに対する加圧力を、第2工程における第2ブランクホルダ90と第2ダイ60による中間成形品20に対する加圧力に比べて高く設定することが望ましい。
【0067】
また、プレス成形品10の先端フランジ18における板厚減少を抑制するという観点からすると、上述の第1実施形態(
図15(A)参照)のように、第1工程の終期において、中間成形品20にトリム加工を施すことが望ましいが、第1工程におけるトリム加工を施すタイミングは、任意に設定することができる。例えば、
図8に示される第1プレス型32を例にすると、第2トリム刃84A(下側トリム型部84の上端部)の位置を上側にずらすことで、中間先端フランジ28Bに対するトリム加工を施すタイミングを第1実施形態と比べて早くしてもよい。つまり、
図15(B)に示されるように、第1工程の途中でトリム工程を行い、トリム後成形工程の一部(前半の一部)を第1工程内で行ってもよい。
【0068】
また、第1実施形態の第1プレス型32では、ダイ側トリムナイフ42が第1ダイ40に一体に設けられ、パンチ側トリムナイフ52が第1パンチ50に一体に設けられている。これに代えて、ダイ側トリムナイフ42と第1ダイ40とを別体に構成して、ダイ側トリムナイフ42を第1ダイ40に着脱可能に固定させてもよい。また、パンチ側トリムナイフ52と第1パンチ50とを別体に構成して、パンチ側トリムナイフ52を第1パンチ50に着脱可能に固定させてもよい。
【0069】
また、第1実施形態のプレス方法では、第1工程において第1プレス型32の第1トリム刃42Aを用いて、中間先端フランジ28Bをせん断して、中間先端フランジ28Bの一部を除去している。これに代えて、第1工程後の中間成形品20の中間先端フランジ28Bをレーザーなどによって切断して、中間先端フランジ28Bの一部を除去してもよい。また、第1工程後の中間成形品20の中間先端フランジ28Bをガス溶断して、中間先端フランジ28Bの一部を除去してもよい。つまり、
図15(C)に示されるように、第1工程の終了後であって第2工程の開始前にトリム工程を行ってもよい。この場合、第1工程の全部がトリム前成形工程となり、第2工程の全部がトリム後成形工程となる。
【0070】
また、第1実施形態では、プレス成形品10のフランジ14が縦フランジ16及び先端フランジ18によって構成されているが、プレス成形品10のフランジ14を縦フランジ16のみによって構成してもよい。この場合には、第2プレス型34における第2ダイ60の縦フランジ成形面60B及び第2パンチ70における縦フランジ成形面70Bを第1実施形態と比べて下方側へ延ばして、プレス方法の第2工程において、中間成形品20の中間先端フランジ28Aが縦フランジ16の先端部を構成するように成形してもよい。この場合でも、成形後のフランジ14(縦フランジ16)における割れを効果的に抑制することができる。
【0071】
―1工程化―
以上説明した第1実施形態及びその変形例では、第1プレス型32を用いた第1工程と、第2プレス型34を用いた第2工程と、の2工程(2回のプレス工程)により、素材金属板Pからプレス成形品10を成形する方法を説明した。
しかし、
図15(D)に示されるように、1つ(同一)のプレス型を用いた1工程(1回のプレス工程)により、素材金属板Pからプレス成形品10を成形(製造)してもよい。
以下まず、第2実施形態として、1工程(1回のプレス工程)により、素材金属板Pに曲げ加工及びトリム加工を施してプレス成形品10を成形するためのプレス装置130を説明する。その後、第3実施形態として、1工程(1回のプレス工程)により、素材金属板Pに絞り加工及びトリム加工を施してプレス成形品10を成形するためのプレス装置130を説明する。
【0072】
〔第2実施形態:1工程曲げプレス型について〕
図11Aに示されるように、第2実施形態のプレス装置130は、1工程曲げプレス型132(以下、単に「プレス型132」)を備えている。プレス型132は、プレス型132の上側部分を構成するダイ140と、プレス型132の下側部分を構成するパンチ150と、を含んで構成されている。そして、ダイ140及びパンチ150が、上下方向に対向して配置されている。
【0073】
(ダイ)
ダイ140は、プレス成形品10の外表面(板厚方向他方側の面)に対応した成形面を有している。具体的には、ダイ140は、プレス成形品10の天板12を成形するための天板成形面140Aと、縦フランジ16を成形するための縦フランジ成形面140Bと、先端フランジ18を成形するための先端フランジ成形面140Cと、を有している。
ダイ140の縦フランジ成形面140Bと先端フランジ成形面140Cとの境界部が「ダイ肩」である。
【0074】
また、ダイ140の下端部には、先端フランジ成形面140Cに対して縦フランジ成形面140Bとは反対側の位置において、ダイ側トリムナイフ142が一体に設けられている。このダイ側トリムナイフ142は、先端フランジ成形面140Cに対して下側へ突出されている。ダイ側トリムナイフ142の下端部には、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの外周縁部をせん断(切断)して中間先端フランジ28Aを形成するための「トリム刃」としての第1トリム刃142Aが設けられている。このようにして、第1トリム刃142Aが、ダイ140のダイ肩に対して下方向(プレス方向)へ離間して設けられている(
図11Aの離間距離α参照)。第1トリム刃142Aは、後述するパンチ側トリムナイフ152の第2トリム刃152Bとすれ違う位置に配置されており、中間成形品20のトリム加工後の中間先端フランジ28Aの外周縁部に対応した形状に形成されている。
【0075】
また、先端フランジ成形面140Cとダイ側トリムナイフ142との間には、第1トリム刃142Aにより中間先端フランジ28Bをせん断する際に中間先端フランジ28Bを押さえるためのパッド141が設けられている。具体的には、ダイ140の先端フランジ成形面140C(「板押さえ面」)には、パッド141が収容可能な穴が形成されており、この穴にパッド141が出し入れ自在に収容されている。
【0076】
また、ダイ140は、第1移動装置36に連結されている。この第1移動装置36は、例えば油圧装置、電動駆動装置等によって構成されており、ダイ140が、第1移動装置36によって上下方向(パンチ150に対して接離する方向)に移動可能に構成されている。
【0077】
(パンチ)
パンチ150は、プレス成形品10の内表面(板厚方向一方側の面)に対応した成形面を有している。具体的には、パンチ150は、ダイ140の天板成形面140Aに対応する「頂面」としての天板成形面150Aと、縦フランジ成形面140Bに対応する縦フランジ成形面150Bと、先端フランジ成形面140Cに対応する先端フランジ成形面150Cと、を有している。
【0078】
(凹状縁部)
つまり、パンチ150の天板成形面150Aは、プレス成形品10の天板12の内表面に対応した形状とされており、パンチ150の縦フランジ成形面150Bは、プレス成形品10の縦フランジ16の内表面に対応した形状とされている。よって、パンチ150の天板成形面150A(「頂面」)と縦フランジ成形面150Bとの境界部(すなわち「頂面の縁」)は、プレス成形品10の凹状外周部12Aの内表面に対応した形状とされており、上方から見て天板成形面150Aの内側へ凸となる凹状の「凹状縁部」となっている。
なお、
図11A〜11Dに示されている断面は、この凹状縁部の延在方向に対して垂直な断面である。すなわち、天板成形面150Aと縦フランジ成形面150Bの境界のパンチ肩の稜線(凹状縁部)は
図11A〜11Dの紙面を貫通する方向に延在し、天板成形面150A側に凸に湾曲する。
【0079】
また、パンチ150の先端フランジ成形面150Cが形成された部分、すなわち先端フランジ成形面150Cのうち縦フランジ成形面150Bから離れる側の端部には、パンチ側トリムナイフ152が一体に設けられており、パンチ側トリムナイフ152の側面152Aは、中間成形品20のトリム加工後の中間先端フランジ28Aの外周縁部に対応した形状に形成されている。さらに、パンチ側トリムナイフ152の上端部には、第2トリム刃152Bが設けられている。このようにして、第2トリム刃152Bがパンチ150の端部に設けられている。第2トリム刃152Bは、中間成形品20のトリム加工前の中間先端フランジ28Bの外周縁部をダイ140の第1トリム刃142Aと協働してせん断(切断)する部分である。
【0080】
(プレス方向の寸法関係)
図11Aに示されるように、ダイ140の縦フランジ成形面140Bと先端フランジ成形面140Cとの境界部(ダイ肩)に対する第1トリム刃142Aのプレス方向(下方向)への離間距離(以下、単に「第1トリム刃142Aの離間距離」)をαとし、ダイ140の縦フランジ成形面140Bのプレス方向の寸法(以下、「ダイ穴深さ」)をβとした場合、第1トリム刃142Aの離間距離αはダイ穴深さβよりも小さく設定されている(α<β)。
なお、ダイ140の縦フランジ成形面140Bのプレス方向の寸法βは、パンチ150の縦フランジ成形面150Bのプレス方向の寸法と一致しており、また、プレス成形品10の縦フランジの高さ寸法H1に対応している。
【0081】
(プレス方法)
次に、第2実施形態のプレス装置130を用いたプレス方法について説明する。
【0082】
図11Aに示されるように、まず、第1移動装置36によってダイ140がパンチ150に対して上側へ離間された状態に保持される。この状態において、素材金属板Pをパンチ150の天板成形面150A上に設置(セット)する。
【0083】
(トリム前成形工程)
そして、
図11Bに示されるように、第1移動装置36によってダイ140をパンチ150に対して下側へ相対移動させて、中間成形品20の中間縦フランジ26に対応する部分をダイ140及びパンチ150によって成形する。
なお、
図11Bには、ダイ140の第1トリム刃142Aが中間成形品20の中間先端フランジ28Bに接触した瞬間(すなわち、トリム工程の直前)の状態が示されている。この状態では、パッド141により、パンチ側トリムナイフ152の上面に中間成形品20の中間先端フランジ28Bが押さえられている。
【0084】
(トリム工程)
次に、
図11Cに示されるように、中間成形品20に対してトリム加工が施される。具体的には、ダイ140の第1トリム刃142Aとパンチ150の第2トリム刃152Bとが協働して、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの外周縁部をせん断し、中間先端フランジ28Bの一部を除去する。これにより、中間成形品20の中間先端フランジ28Aが形成される。
【0085】
なお、
図11Cに示されるトリム工程の直後では、ダイ140の天板成形面140Aとパンチ150の天板成形面150Aとが上下方向(プレス方向)に離間された状態となっており、ダイ140の先端フランジ成形面140Cとパンチ150の先端フランジ成形面150Cとが上下方向(プレス方向)に離間された状態となっている。この離間距離は、ダイ肩に対する第1トリム刃142Aの離間距離α(
図11A参照)と略一致する。
【0086】
(トリム後成形工程)
この状態から、第1移動装置36によってダイ140をさらに下側へ移動させて、ダイ140の先端フランジ成形面140Cによって中間成形品20の中間先端フランジ28Aを下側へ押し込む。このとき、中間成形品20の中間先端フランジ28Aと中間縦フランジ26との間の屈曲部24を下側へ曲げ伸ばしながら(換言すると、屈曲部24の位置を下側へずらしながら)、プレス成形品10の縦フランジ16及び先端フランジ18を成形する。
【0087】
そして、
図11Dに示されるように、ダイ140が下死点に到達することで、プレス成形品10が形成される。具体的には、プレス成形品10の縦フランジ16が形成されると共に、ダイ140の天板成形面140Aとパンチ150の天板成形面150Aとが素材金属板Pを挟持加圧して、プレス成形品10の天板12が形成される。またこのときには、ダイ140の先端フランジ成形面140Cとパンチ150の先端フランジ成形面150Cとが素材金属板Pを挟持加圧して、プレス成形品10の先端フランジ18が形成される。
【0088】
以上説明した第2実施形態のプレス方法では、プレス型132を用いた一回のプレス工程により、第1実施形態と同様に、縦フランジ16の板厚減少率と先端フランジ18の板厚減少率とのバランスをとるようにしてプレス成形品10を形成することができる。
すなわち、
図11A〜11Bに示されるトリム前成形工程で、素材金属板Pに曲げ加工を施して、プレス成形品10の縦フランジ16よりも高さの低い中間縦フランジ26を形成すると共に、面積の大きい中間先端フランジ28Bを形成する。そして、
図11B〜11Cに示されるトリム工程で、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの一部を除去して、中間先端フランジ28Bよりも面積の小さい中間先端フランジ28Aを形成する。さらに、
図11C〜11Dに示されるトリム後成形工程で、中間成形品20に対して曲げ加工を施して、中間縦フランジ26及び中間先端フランジ28Aの間の屈曲部24を曲げ伸ばして、プレス成形品10を形成する。
その結果、第2実施形態のプレス方法でも、トリム前成形工程においてプレス成形品10の先端フランジ18に対する板厚減少率を低くして、且つ、トリム後成形工程において縦フランジ16に対する板厚減少率を低くすることができる。すなわち、縦フランジ16の板厚減少率と先端フランジ18の板厚減少率とのバランスをとるように、プレス成形品10を形成することができる。
【0089】
なお、上述の第2実施形態において、ダイ140の第1トリム刃142Aとプレス方向(上下方向)に対向するようにブランクホルダを配置してもよい。この場合、プレス工程の開始時にダイ側トリムナイフ142の下面とブランクホルダとの間に素材金属板Pを挟持し、挟持した状態を保ちながら、ダイ140及びブランクホルダを下方に移動させる。
【0090】
〔第3実施形態〕
次に、
図12A〜12Dを用いて、一工程のプレス工程による絞り加工及びトリム加工を施してプレス成形品10を製造するための第3実施形態のプレス装置130について説明する。
【0091】
図12Aに示されるように、第3実施形態のプレス装置130は、1工程絞りプレス型132(以下、単に「プレス型132」)を備えている。1工程絞りプレス型132は、プレス型132の上側部分を構成するダイ140と、プレス型132の下側部分を構成するパンチ150、第1ブランクホルダ80、及び下側トリム型部84と、を含んで構成されている。
【0092】
(ダイ)
ダイ140は、プレス成形品10の外表面(板厚方向他方側の面)に対応した成形面を有している。具体的には、ダイ140は、プレス成形品10の天板12を成形するための天板成形面140Aと、縦フランジ16を成形するための縦フランジ成形面140Bと、先端フランジ18を成形するための先端フランジ成形面140Cと、を有している。
ダイ140の縦フランジ成形面140Bと先端フランジ成形面140Cとの境界部が「ダイ肩」とされている。
【0093】
また、ダイ140における先端フランジ成形面140Cが形成された部分にダイ側トリムナイフ142が一体に設けられており、ダイ側トリムナイフ142の下端部に第1トリム刃142Aが設けられている。このようにして、第1トリム刃142Aが、ダイ140のダイ肩と反対側の肩部に設けられている。そして、ダイ側トリムナイフ142の第1トリム刃142Aが、後述する下側トリム型部84の第2トリム刃84Aと協働して中間成形品20の中間先端フランジ20Bをせん断するようになっている。なお、ダイ140には、第2実施形態と同様に、第1移動装置36が連結されている。
【0094】
また、ダイ140の先端フランジ成形面140Cに対して縦フランジ成形面140Bと反対側、すなわちダイ穴とは反対側にはパッド141が設けられている。パッド141は、第1トリム刃142Aに隣接して配置されており、第1トリム刃142Aにより中間先端フランジ28Bをせん断する際に中間先端フランジ28Bの先端部を押さえる部分とされている(
図12B参照)。
【0095】
(パンチ)
一方、パンチ150は、ダイ140の天板成形面140Aに対応する「頂面」としての天板成形面150Aと、縦フランジ成形面140Bに対応する縦フランジ成形面150Bと、を有している。
パンチ150の天板成形面150Aと縦フランジ成形面150Bとの境界部が、パンチ150の「頂面の縁」又は「パンチ肩」とされている。パンチ150の頂面の縁は、プレス成形品10の凹状外周部12Aの内表面に対応した形状とされており、上方から見て天板成形面150Aの内側へ凸となる凹状の「凹状縁部」となっている。
【0096】
第1ブランクホルダ80は、ダイ140の先端フランジ成形面140Cの下側に配置されて、先端フランジ成形面140C(「板押さえ面」)と上下方向に対向して配置されている。第1ブランクホルダ80の上面は、ブランク加圧面80Aとされており、ブランク加圧面80Aは、上下方向に直交する方向に沿った面とされている。また、第1ブランクホルダ80には、第1加圧装置82が連結されている。この第1加圧装置82は、例えば油圧装置、電動駆動装置等によって構成されており、第1ブランクホルダ80が、第1加圧装置82によって上下方向(パンチ150に対して接離する方向)に移動可能に構成されている。
【0097】
下側トリム型部84は、ダイ140のパッド141の下側に配置されている。この下側トリム型部84の上端部には、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの先端部を切断して、中間先端フランジ28Aを形成する「トリム刃」として第2トリム刃84Aが設けられている。すなわち、第2トリム刃84Aは、ダイ140の第1トリム刃142Aとすれ違う位置に配置されており、中間成形品20のトリム加工後の中間先端フランジ28Aの外周縁部に対応した形状に形成されている。
【0098】
(プレス方向の寸法関係)
図12Aに示されるように、第2トリム刃84Aのパンチ肩(頂面の縁、パンチ150の天板成形面150Aと縦フランジ成形面150Bとの境界部)に対するプレス方向(下方向)への離間距離をγとし、ダイ140の縦フランジ成形面140Bのプレス方向の寸法(すなわち「ダイ穴深さ」)をβとした場合、第2トリム刃84Aのパンチ肩に対する離間距離γは、ダイ穴深さβよりも小さく設定されている(γ<β)。
なお、ダイ140の縦フランジ成形面140Bのプレス方向の寸法βは、プレス成形品10の縦フランジの高さ寸法H1に対応している。
【0099】
<プレス方法>
次に、第3実施形態のプレス装置130を用いたプレス方法について説明する。
【0100】
(トリム前成形工程)
図12Aに示されるように、まず、素材金属板Pをパンチ150の天板成形面150A上に設置(セット)する。そして、第1移動装置36及び第1加圧装置82を作動させて、ダイ140の先端フランジ成形面140Cと第1ブランクホルダ80のブランク加圧面80Aとによって、素材金属板Pを挟持する。そして、
図12Bに示されるように、第1移動装置36及び第1加圧装置82を作動させて、ダイ140及び第1ブランクホルダ80によって素材金属板Pを挟持した状態を維持しながら、ダイ140及び第1ブランクホルダ80をパンチ150に対して下側へ相対移動させて、中間成形品20の中間縦フランジ26に対応する部分を形成する。
なお、
図12Bには、下側トリム型部84の第2トリム刃84Aが中間成形品20の中間先端フランジ28Bに接触した瞬間(すなわち、トリム工程の直前)の状態が示されている。この状態では、パッド141により、下側トリム型部84の上面に中間成形品20の中間先端フランジ28Bの先端部が押さえられている。
【0101】
(トリム工程)
次に、
図12Cに示されるように、中間成形品20に対してトリム加工が施される。具体的には、ダイ140の第1トリム刃142Aと下側トリム型部84の第2トリム刃84Aとが協働して、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの外周縁部をせん断して、中間先端フランジ28Bの一部を除去する。これにより、中間成形品20の中間先端フランジ28Aが形成される。
【0102】
なお、
図12Cに示されるトリム工程の直後では、ダイ140の天板成形面140Aとパンチ150の天板成形面150Aとが上下方向(プレス方向)に離間された状態となっている。この離間距離は、ダイ穴深さβと第2トリム刃84Aのパンチ肩に対する離間距離γとの寸法差β−γと略一致する(
図12A参照)。
【0103】
(トリム後成形工程)
この状態から、第1移動装置36によってダイ140をさらに下側へ移動させて、ダイ140の先端フランジ成形面140Cと第1ブランクホルダ80のブランク加圧面80Aとによって中間成形品20の中間先端フランジ28Aを加圧挟持した状態を維持したまま、ダイ140及び第1ブランクホルダ80をパンチ150に対して相対的に下側へ移動させる。このとき、中間成形品20の中間先端フランジ28Aと中間縦フランジ26との間の屈曲部24を下側へ曲げ伸ばしながら(換言すると、屈曲部24の位置を下側へずらしながら)、プレス成形品10の縦フランジ16及び先端フランジ18を成形する。
図12Dに示されるように、ダイ140が下死点に到達すると、ダイ140の天板成形面140A及びパンチ150の天板成形面150Aによって、プレス成形品10の天板12が加圧挟持されて、プレス成形品10が形成される。
【0104】
以上説明した第3実施形態のプレス方法では、プレス型132を用いた一回のプレス工程により、第1実施形態と同様に、縦フランジ16の板厚減少率と先端フランジ18の板厚減少率とのバランスをとるようにしてプレス成形品10を形成することができる。
【0105】
すなわち、
図12A〜12Bに示されるトリム前成形工程で、素材金属板Pに絞り加工を施して、プレス成形品10の縦フランジ16よりも高さの低い中間縦フランジ26を形成すると共に、面積の大きい中間先端フランジ28Bを形成する。そして、
図12B〜12Cに示されるトリム工程で、中間成形品20の中間先端フランジ28Bの一部を除去して、中間先端フランジ28Bよりも面積の小さい中間先端フランジ28Aを形成する。さらに、
図12C〜12Dに示されるトリム後成形工程で、中間成形品20に対して絞り加工を施して、中間縦フランジ26及び中間先端フランジ28Aの間の屈曲部24を曲げ伸ばして、プレス成形品10を形成する。
その結果、第3実施形態のプレス方法でも、トリム前成形工程においてプレス成形品10の先端フランジ18に対する板厚減少率を低くして、且つ、トリム後成形工程において縦フランジ16に対する板厚減少率を低くすることができる。すなわち、縦フランジ16の板厚減少率と先端フランジ18の板厚減少率とのバランスをとるように、プレス成形品10を形成することができる。
【0106】
〔第4実施形態〕
最後に、
図13A、13Bを用いて、第4実施形態のプレス装置230について説明する。
【0107】
第4実施形態のプレス装置230を用いれば、1工程(1回のプレス工程)で、プレス工程の途中に2回のトリム加工を行いつつ、素材金属板Pから中間成形品20を経由してプレス成形品10を成形することができる。
【0108】
〔補足説明〕
なお、上述の各実施形態では、プレス成形品10が一箇所のフランジ14を有する構成になっているが、プレス成形品10の構成はこれに限らない。例えば、プレス成形品10が一対のフランジ14を有する構成にして、一対のフランジ14が形成された部位におけるプレス成形品10の断面形状を、溝状やハット形状にしてもよい。さらに、プレス成形品10の天板12に凹部又は凸部等の形状を追加してもよい。
【0109】
また、上述の各実施形態では、プレス成形品10の凹状外周部12Aが、第1直線外周部12A1、第2直線外周部12A2、及び湾曲外周部12A3を含んで構成されているが、凹状外周部12Aの構成は、これに限らない。すなわち、プレス成形品10のフランジ14が伸びフランジ成形されるように、凹状外周部12Aが、少なくとも湾曲外周部12A3を含む構成にされていればよい。
【0110】
また、上述の各実施形態では、フランジ14がプレス成形品10の外周部を構成しているが、フランジ14のプレス成形品10における位置や形状は任意に設定することができる。すなわち、フランジ14が伸びフランジ成形されるフランジであれば、フランジ14のプレス成形品10における位置や形状を任意に設定できる。例えば、
図11に示されるように、天板12の所定の部位において、フランジ14を天板12から下側へ延出された略有底円筒状に形成してもよい。この場合には、略円形状を成す凹状縁部12Bが天板12に形成されて、略円筒状を成す縦フランジ16が天板12の凹状縁部12Bの部位において下側へ屈曲される。また、先端フランジ18が、縦フランジ16の先端部(下端部)において屈曲され且つ縦フランジ16の板厚方向における天板12とは反対側(すなわち、円筒状を成す縦フランジ16の径方向内側)へ延出されて、略円環板状に形成される。