特許 6874581 移動式便器

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6874581

(24)【登録日】2021年4月26日

(45)【発行日】2021年5月19日

(54)【発明の名称】移動式便器

(51)【国際特許分類】

   E03D 11/02 20060101AFI20210510BHJP

   E03D 11/13 20060101ALI20210510BHJP

   A47K 11/04 20060101ALI20210510BHJP

【ＦＩ】

   E03D11/02 Z

   E03D11/13

   A47K11/04

【請求項の数】4

【全頁数】14

(21)【出願番号】特願2017-145813(P2017-145813)

(22)【出願日】2017年7月27日

(65)【公開番号】特開2019-27088(P2019-27088A)

(43)【公開日】2019年2月21日

【審査請求日】2020年5月25日

(73)【特許権者】

【識別番号】000010087

【氏名又は名称】ＴＯＴＯ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100108062

【弁理士】

【氏名又は名称】日向寺 雅彦

(74)【代理人】

【識別番号】100168332

【弁理士】

【氏名又は名称】小崎 純一

(74)【代理人】

【識別番号】100146592

【弁理士】

【氏名又は名称】市川 浩

(72)【発明者】

【氏名】堀内 啓史

(72)【発明者】

【氏名】岩本 晶吾

【審査官】 下井 功介

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１５−１９２８４７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１４−９５２４４（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１６−６１１０２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１６−２０４９７３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特許第６１４６５９７（ＪＰ，Ｂ１）

【文献】 特開２０１７−８２９０３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００６−２４９８５９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ａ４７Ｋ１１／００〜１１／１２

Ｅ０３Ｄ １／００〜１３／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

床面上を移動可能な移動式便器であって、
汚物を一時的に受け止めるボウル部を有する便器本体と、
前記便器本体を下方から支持する支持部と、前記便器本体の背面を保持する保持部と、を有するフレームユニットと、
前記便器本体を前記保持部に固定するための固定部と、
前記便器本体の後方であって前記固定部の上方において、前記便器本体の背面と前記保持部との間の前後方向における隙間を調整する調整部と、
を備えた移動式便器。

【請求項2】

前記調整部は、左右方向において複数設けられる請求項１記載の移動式便器。

【請求項3】

前記調整部は、前記便器本体の背面に突き当てられるねじを有する請求項１または２に記載の移動式便器。

【請求項4】

前記フレームと固定され、前記便器本体に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
前記便器本体と前記洗浄水供給手段とを接続する管と、
をさらに備え、
前記管は、前後方向において伸縮性を有する請求項１〜３のいずれか１つに記載の移動式便器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明の態様は、一般的に、移動式便器に関する。

【背景技術】

【0002】

床面上を移動可能な水洗式の移動式便器がある（特許文献１）。例えば、この移動式便器は、高齢者などの介護が必要な人の居室に設けられる。この移動式便器は、給水源と接続される給水管および下水と接続される排水管が可撓性を有する。そのため、介護が必要な人の居室内の状態や生活態様に合わせて、移動式便器を床面上において自由に移動させることができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１６−６１１０２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

この移動式便器の便器本体は、例えば、フレームユニットの上に設けられる。便器本体の構成は任意であるが、床置き用の便器をフレームユニットの上に設けると、着座面の位置が、便器本体下方のフレームユニットの高さだけ上昇してしまう。従って、既存の便器本体を移動式便器に適用しつつ、着座面の位置の変化を抑えるには、壁掛け用の便器本体を用いることが好ましい。壁掛け用の便器本体を用いる場合、便器本体の背面をフレームユニットに対して所望の高さで固定し、着座面の位置を調整することが可能となる。

【0005】

ただし、この場合、便器本体と、便器本体に着座する使用者と、の全ての荷重をフレームユニットによって支える場合、フレームユニットを強固に構成しなければならず、フレームユニットが大型化し、重量が増大する。この結果、移動式便器が大型化して居室内における専有面積が増大するとともに、移動式便器が重くなり、移動させることが困難となる。

【0006】

この課題に対して、発明者は、便器本体を下方からフレームユニットによって支持し、且つ便器本体の背面をフレームユニットと固定する構成を考案した。この構成によれば、フレームユニットに必要な強度を小さくし、移動式便器の小型化および軽量化が可能となる。

【0007】

一方で、便器本体については、製品ごとに形状や寸法の誤差が存在する。便器本体の底面をフレームユニットに沿わせて載置すると、便器本体の背面とフレームユニットとの間の隙間が製品ごとに変化する。例えば、便器本体の背面が前方に傾いている場合、便器本体の背面をフレームユニットに固定すると、便器本体の前端が浮き上がってしまう。便器本体の前端が浮き上がると、便器本体の上に使用者が着座した際に、便器本体背面側のフレームユニットに大きな力が加わり、フレームユニットが変形してしまう。

【0008】

本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便器本体の背面をフレームユニットに固定する際に、便器本体の前端の浮き上がりを防止できる移動式便器を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

第１の発明は、床面上を移動可能な移動式便器であって、汚物を一時的に受け止めるボウル部を有する便器本体と、前記便器本体を下方から支持する支持部と、前記便器本体の背面を保持する保持部と、を有するフレームユニットと、前記便器本体を前記保持部に固定するための固定部と、前記便器本体の後方であって前記固定部の上方において、前記便器本体の背面と前記保持部との間の前後方向における隙間を調整する調整部と、を備えた移動式便器である。

【0010】

この移動式便器によれば、便器本体を支持部の上面に沿わせて載置した状態で、便器本体ごとの寸法や形状のばらつきに応じて、便器本体の背面と保持部との間の前後方向における隙間を調整部により調整することができる。このため、便器本体の背面を固定部により保持部に固定した際に、便器本体の前端が浮き上がったり、浮き上がった便器本体に荷重が加えられてフレームユニットが変形したりすることを防止できる。

【0011】

第２の発明は、第１の発明において、前記調整部は、左右方向において複数設けられる移動式便器である。

【0012】

便器本体の背面は、誤差により、左側部の前後方向における位置と、右側部の前後方向における位置と、がずれる場合がある。この移動式便器によれば、この誤差を補償するように便器本体の背面と保持部との間の隙間を調整することができる。

【0013】

第３の発明は、第１または第２の発明において、前記調整部は、前記便器本体の背面に突き当てられるねじを有する移動式便器である。

【0014】

この移動式便器によれば、便器本体の背面と保持部との間の隙間をより細かく正確に調整することができる。

【0015】

第４の発明は、第１〜第３のいずれか１つの発明において、前記フレームと固定され、前記便器本体に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、前記便器本体と前記洗浄水供給手段とを接続する管と、をさらに備え、前記管は、前後方向において伸縮性を有する移動式便器である。

【0016】

この移動式便器によれば、便器本体の背面と保持部との間の前後方向における隙間の変化に応じて、管が前後方向に伸縮する。従って、便器本体の背面と保持部との間の隙間に拘わらず管を洗浄水供給手段と便器本体との間に接続することができ、移動式便器の組み立てが容易となる。

【発明の効果】

【0017】

本発明の態様によれば、便器本体の背面をフレームユニットに固定する際に、便器本体の前端の浮き上がりを防止できる移動式便器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】実施形態に係る移動式便器を表す斜視図である。

【図2】実施形態に係る移動式便器を表す断面図である。

【図3】実施形態に係る移動式便器の処理ユニットの概略構成を表す模式的断面図である。

【図4】実施形態に係る移動式便器の処理ユニットを表す斜視図である。

【図5】実施形態に係る移動式便器のフレームユニットを表す斜視図である。

【図6】実施形態に係る移動式便器の一部を表す斜視図である。

【図7】実施形態に係る移動式便器の一部を表す断面図である。

【図8】実施形態の効果を説明するための模式図である。

【図9】実施形態に係る移動式便器の管を表す側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0019】

以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、本願明細書では、実施形態の説明のために、「前方」、「後方」、「上方」、「下方」、「左側方」、および「右側方」を用いる。これらの方向は、収納部に背を向けて便器本体上の便座に着座した使用者から見た場合を基準とする。

【0020】

図１は、実施形態に係る移動式便器を表す斜視図である。
図１に表したように、移動式便器１は、洋風の腰掛便器本体（以下、単に便器本体という）１００および収納部２００を備える。便器本体１００は、台座１０２の上に載置される。収納部２００は、便器本体１００の後方に設けられる。

【0021】

収納部２００は、前面板２０２、一対の側面板２０４、天板２０６、および背面板２０８を有する。これらの板は、後述する移動式便器１のフレームユニットに取り付けられる。前面板２０２、一対の側面板２０４、天板２０６、および背面板２０８によって形成された内部空間には、便器本体１００と接続される種々の機器が収納される。

【0022】

天板２０６には、移動式便器１を操作するための操作部２１０が設けられる。また、収納部２００の左側面および右側面には、前方に向けて延びるアームレスト２１２が取り付けられる。

【0023】

図２は、実施形態に係る移動式便器を表す断面図である。
便器本体１００の上には、便座１１０、便蓋１１２、および機能部１１４が設けられる。機能部１１４は、便器本体１００の後部上方に設けられる。便座１１０および便蓋１１２は、機能部１１４に回動可能に取り付けられる。

【0024】

便器本体１００は、汚物を一時的に受け止めるボウル部１００ａを有する。使用者は、例えば、便座１１０に着座し、ボウル部１００ａに向けて排泄を行う。機能部１１４は、使用者のおしりなどの局部を洗浄する洗浄機能や、使用者の便座１１０への着座を検知する検知機能などを備える。

【0025】

移動式便器１の底面には、ストッパ１０４およびキャスタ１０６が設けられる。キャスタ１０６は、例えば、移動式便器１の後部底面に設けられる。アームレスト２１２を用いて移動式便器１の前端を持ち上げることで、キャスタ１０６が床面に接触し、移動式便器１を移動させることができる。

【0026】

収納部２００の内側には、タンク２２０、ホルダプレート２２２、管２２４、空気収納部２３０、背面カバー２３２、および処理ユニット３００が設けられる。タンク２２０は、処理ユニット３００の上方に設けられ、ホルダプレート２２２により保持される。空気収納部２３０は、可撓性を有するシート状材料から形成され、例えば、タンク２２０の後方に設けられる。空気収納部２３０は、後述するように、処理ユニット３００の内部と連通する。背面カバー２３２は、空気収納部２３０を後方から覆う。

【0027】

管２２４の一端は、タンク２２０と接続される。管２２４の他端は、便器本体１００の上部後方と接続される。タンク２２０に貯留された水が、ボウル部１００ａに供給されると、この水によってボウル部１００ａの汚物が流れされる。

【0028】

ボウル部１００ａの下端は、排出流路１２０の一端と接続される。排出流路１２０の他端は、管１２２の一端と接続される。管１２２の不図示の他端は、処理ユニット３００の不図示の流入口と接続される。ボウル部１００ａから流された水や汚物は、排出流路１２０および管１２２を経て、処理ユニット３００に流れる。

【0029】

図３は、実施形態に係る移動式便器の処理ユニットの概略構成を表す模式的断面図である。
便器本体１００の排出流路１２０よりも下流側の構成については任意であるが、水や汚物を効率的に下水道へ排出するためには、移動式便器１が後述する構成の処理ユニット３００を備えていることが望ましい。

【0030】

図３に表したように、処理ユニット３００は、貯留槽３１０、粉砕部３２０、圧送部３３０、および圧送配管３４０を有する。

【0031】

貯留槽３１０は、気密構造および水密構造を有する。粉砕部３２０は、貯留槽３１０内に設けられ、粉砕槽３２１を有する。貯留槽３１０の内部空間は、粉砕槽３２１よりも上流側の上流側空間３１１と、粉砕槽３２１よりも下流側の下流側空間３１２と、に分かれる。上流側空間３１１と下流側空間３１２は、粉砕槽３２１を通して連通する。

【0032】

貯留槽３１０は、管１２２と接続される流入口３１５を有する。上流側空間３１１には、流入口３１５を通して、水や汚物が流れ込み、上流側空間３１１および粉砕槽３２１で一時的に貯留される。

【0033】

粉砕槽３２１の上部側面には、通気口３２２が設けられる。粉砕槽３２１に水や汚物が流入すると、粉砕槽３２１内の空気は、この通気口３２２を通して貯留槽３１０の下流側空間３１２に流出する。貯留槽３１０の上部には、通気口３１６が設けられる。

【0034】

この通気口３１６は、ホース３１７を介して空気収納部２３０と接続される。粉砕槽３２１から空気が流出し、貯留槽３１０の圧力が上昇すると、貯留槽３１０の空気の一部は、通気口３１６を通して空気収納部２３０に流れる。

【0035】

粉砕槽３２１内の下方には、回転部３２４が設けられる。また、粉砕槽３２１の下方には、複数の開口３２５が設けられる。複数の開口３２５は、例えば、回転部３２４と対向する位置に設けられる。回転部３２４は、粉砕槽３２１内を上下方向に延びる回転軸３３３に取り付けられる。回転軸３３３は、モータ３３４と固定され、回転部３２４は、回転軸３３３を介してモータ３３４により回転される。

【0036】

回転部３２４は、円板３２６および突起３２７を有する。円板３２６は、粉砕槽３２１の底面に沿って設けられる。突起３２７は、円板３２６の上面に複数設けられる。回転部３２４が回転すると、粉砕槽３２１に貯留された水に含まれる汚物やトイレットペーパなどの固形物が、複数の突起３２７に引っ掛かり、粉砕される。粉砕された固形物は、水と撹拌されて流動性の高い汚水となる。

【0037】

開口３２５よりも小さな固形物を含む汚水は、開口３２５を通して貯留槽３１０の下流側空間３１２へ流れる。圧送部３３０は、下流側空間３１２に貯留された汚水を圧送する。圧送部３３０は、例えば、遠心式ポンプである。圧送部３３０は、ポンプ室３３１、インペラ３３２、回転軸３３３、およびモータ３３４を有する。

【0038】

ポンプ室３３１は、粉砕槽３２１の底面に設けられる。ポンプ室３３１は、粉砕槽３２１と離間して設けられても良い。インペラ３３２は、ポンプ室３３１内に設けられ、回転軸３３３に取り付けられる。インペラ３３２は、複数の羽根３３２ａを有する。複数の羽根３３２ａは、例えば、それぞれが同じ形状を有し、平面視において回転軸３３３を中心として点対称に配置される。

【0039】

インペラ３３２は、回転軸３３３を介して、モータ３３４により回転される。モータ３３４は、例えば、ＤＣブラシレスモータである。モータ３３４は、貯留槽３１０の外部に設けることができる。モータ３３４は、例えば、ケーシング３３５に収納され、貯留槽３１０の上面に設けられる。モータ３３４によりインペラ３３２が回転すると、貯留槽３１０の下流側空間３１２内にある汚水がポンプ室３３１の開口３３１ａを通してポンプ室３３１内に流入し、圧送配管３４０に圧送される。

【0040】

汚水が圧送部３３０により圧送されると、貯留槽３１０内の水位が下がる。これにより、貯留槽３１０内の空気の体積が増加し、貯留槽３１０内の空気圧が低下する。そのため、空気収納部２３０内の空気の一部が、ホース３１７および通気口３１６を通して貯留槽３１０内に流入する。

【0041】

図４は、実施形態に係る移動式便器の処理ユニットを表す斜視図である。
処理ユニット３００の上面には、ホース３１７と圧送配管３４０が引き出される。ホース３１７の他端は、ジョイント３１８が取り付けられる。ジョイント３１８は、空気収納部２３０の下面に固定される。圧送配管３４０は、例えば、処理ユニット３００の前方に引き回され、処理ユニット３００の左右方向における中央付近を通り、後方へ引き出される。

【0042】

また、処理ユニット３００の周りには、上水道などの給水源と接続される給水配管３５０が引き回される。処理ユニット３００の側方には、電磁弁３５２を備えた分岐金具３５４が設けられる。分岐金具３５４は、給水配管３５０と接続される。分岐金具３５４には、不図示の複数のホースが接続される。これらのホースは、機能部１１４および処理ユニット３００上方のタンク２２０と接続され、これらのホースを介して機能部１１４およびタンク２２０に水が供給される。

【0043】

圧送配管３４０および給水配管３５０は、それぞれ、居室の壁面などに設けられる、排水コンセントおよび給水コンセントに接続される。圧送配管３４０および給水配管３５０は、可撓性を有する。このため、排水コンセントおよび給水コンセントの位置に拘わらず、移動式便器１を床面上において自由に移動させることができる。

【0044】

処理ユニット３００の上面には、粉砕槽３２１の一部およびケーシング３３５が露出する。これらを上方に引き上げることで、粉砕部３２０および圧送部３３０を処理ユニット３００から取り出すことができる。処理ユニット３００のメンテナンス時には、粉砕部３２０および圧送部３３０を引き上げ、処理ユニット３００の内部の確認や、これらの機器の点検や修理、交換などを行う。

【0045】

さらに、処理ユニット３００の上面には、点検口３５６が設けられる。点検口３５６は、上流側空間３１１に通じる。点検口３５６の蓋を開けることで、上流側空間３１１や粉砕槽３２１を確認し、異物の確認や除去を行うことができる。

【0046】

また、処理ユニット３００の上面には、例えば、制御部３６０が設けられる。制御部３６０は、機能部１１４や処理ユニット３００の動作を制御する。制御部３６０は、筐体３６１を有し、筐体３６１が処理ユニット３００の上面に固定される。この他に、処理ユニット３００の上面には、制御部３６０を囲うカバーや、ケーシング３３５およびホース３１７などを囲うカバーなどがさらに設けられても良い。処理ユニット３００は、ベースプレート３７０の上に固定される。

【0047】

図５は、実施形態に係る移動式便器のフレームユニットを表す斜視図である。
実施形態に係る移動式便器１は、図５に表したフレームユニット４００をさらに備える。フレームユニット４００は、ベースフレーム４０２、横フレーム４０４、補強フレーム４０６、縦フレーム４０８、支柱４１０、保持部４１２、補強フレーム４１４、左ガイドフレーム４２０、および右ガイドフレーム４３０を有する。

【0048】

ベースフレーム４０２は、前後方向に延びている。ベースフレーム４０２は、左右方向において複数設けられる。それぞれのベースフレーム４０２の底面には、ストッパ１０４が設けられる。ストッパ１０４は、ベースフレーム４０２の底面に形成されたねじ穴に螺合される。このため、ストッパ１０４をベースフレーム４０２に対して回転させることで、床面に対するベースフレーム４０２の上下方向における位置を変化させ、便座１１０の高さを調整することができる。

【0049】

横フレーム４０４は、左右方向に延び、複数のベースフレーム４０２に連結される。横フレーム４０４は、例えば、前後方向において複数設けられる。補強フレーム４０６は、前後方向に延び、ベースフレーム４０２同士の間において横フレーム４０４と固定される。

【0050】

複数のベースフレーム４０２、複数の横フレーム４０４、および複数の補強フレーム４０６は、支持部４０１を構成する。図１に表した台座１０２は、支持部４０１の上に設けられる。従って、台座１０２の上に載置された便器本体１００は、支持部４０１によって下方から支持される。

【0051】

縦フレーム４０８は、上下方向に延び、左右方向において複数設けられる。複数の縦フレーム４０８が、それぞれ、左側方に位置するベースフレーム４０２の後部と、右側方に位置するベースフレーム４０２の後部と、に固定される。支柱４１０は、縦フレーム４０８の上端同士を連結する。保持部４１２は、支柱４１０の下方において、複数の縦フレーム４０８と固定される。保持部４１２は、後述する固定部１４０を介して、便器本体１００の背面を保持する。

【0052】

左ガイドフレーム４２０は、前後方向に延び、左側方のベースフレーム４０２の後端と固定される。右ガイドフレーム４３０は、前後方向に延び、右側方のベースフレーム４０２の後端と固定される。補強フレーム４１４は、左右方向に延び、左ガイドフレーム４２０の前部および右ガイドフレーム４３０の前部と固定される。左ガイドフレーム４２０の底面および右ガイドフレーム４３０の底面には、それぞれ、キャスタ１０６が取り付けられる。ベースプレート３７０は、左ガイドフレーム４２０および右ガイドフレーム４３０の上に設けられる。

【0053】

図６は、実施形態に係る移動式便器の一部を表す斜視図である。
図７は、実施形態に係る移動式便器の一部を表す断面図である。
実施形態に係る移動式便器１の便器本体１００には、例えば、壁掛け用の便器が用いられる。床置き用の便器本体は、便器本体の固定が、便器本体の底面と床面との間で行われる。これに対して、壁掛け用の便器本体は、便器本体の固定が、便器本体１００の背面と壁面（この例では保持部４１２）との間で行われる。

【0054】

実施形態に係る移動式便器１は、便器本体１００の背面を保持部４１２によって保持および固定するための固定部１４０を備える。また、移動式便器１は、固定部１４０の上方に設けられる調整部１５０をさらに備える。

【0055】

図６および図７（ａ）に表したように、固定部１４０は、ねじ（ボルト）１４１およびナット１４２を有する。例えば、一対のナット１４２が、便器本体１００の背面および便器本体１００内部に固定される。ねじ１４１は、保持部４１２の背面側から、保持部４１２の孔を通して、ナット１４２と螺合される。これにより、便器本体１００の背面が、保持部４１２によって保持されて固定される。

【0056】

調整部１５０は、ねじ（ボルト）１５１およびナット１５２を有する。例えば、一対のナット１５２が、それぞれ、保持部４１２の前面および背面に固定される。ねじ１５１は、保持部４１２の背面側から、ナット１５２と螺合されつつ、保持部４１２の孔を挿通し、便器本体１００の背面に突き当てられる。

【0057】

図７（ｂ）に表したように、固定部１４０および調整部１５０のそれぞれは、左右方向において複数設けられる。例えば、一対の固定部１４０が同じ高さに設けられ、一対の調整部１５０が同じ高さに設けられる。一対の固定部１４０は、例えば、平面視において調整部１５０同士の間に設けられる。

【0058】

調整部１５０は、便器本体１００と保持部４１２との間の前後方向における隙間を調整し、調整した隙間を保つために設けられる。以下で、移動式便器１を組み立てる際の手順の一部を例示する。

【0059】

まず、フレームユニット４００を組み立てる。このとき、保持部４１２（保持部）に、調整部１５０のナット１５２を取り付ける。次に、複数のベースフレーム４０２、複数の横フレーム４０４、および複数の補強フレーム４０６を含む支持部４０１の上に、台座１０２を固定する。続いて、台座１０２の上に便器本体１００を載置する。このとき、便器本体１００は、保持部４１２から離間させて、台座１０２の上に載置する。

【0060】

次に、台座１０２の上面に沿って便器本体１００を後方へ移動させ、便器本体１００の背面に固定されたナット１４２へ、保持部４１２を通して、ねじ１４１を仮締めする。続いて、保持部４１２に固定されたナット１５２にねじ１５１を通して、ねじ１５１の先端を便器本体１００の背面に接触させる。これにより、便器本体１００と保持部４１２との間の前後方向における隙間が調整される。

【0061】

この状態で、ナット１４２にねじ１４１を本締めし、保持部４１２に便器本体１００を強固に固定する。このとき、便器本体１００の背面には、ねじ１５１が突き当てられているため、便器本体１００の背面と保持部４１２との間の調整された隙間が変化せずに保たれる。続いて、便器本体１００の後方にタンク２２０を設け、タンク２２０と便器本体１００の背面と、を管２２４により接続する。その後、便器本体１００の背面と保持部４１２との隙間は、コーキングなどにより埋め込まれても良い。

【0062】

図８は、実施形態の効果を説明するための模式図である。
便器本体１００の寸法や形状には、誤差が存在する。特に便器本体１００が陶器製である場合、誤差はより大きくなる。

【0063】

例えば、図８（ａ）に表したように、便器本体１００の底面に対して、便器本体１００の背面が前方に傾いている場合がある。この場合、調整部１５０を用いずに、固定部１４０によって便器本体１００を保持部４１２に取り付けると、図８（ｂ）に表したように、便器本体１００の背面が保持部４１２に沿って固定され、便器本体１００の前端が台座１０２から浮き上がってしまう。この状態で、使用者が便器本体１００の上（便座１１０）に着座すると、図８（ｃ）に表したように、フレームユニット４００が変形し、前方へ傾斜する可能性がある。

【0064】

この課題に対して、本実施形態に係る移動式便器１は、固定部１４０よりも上方に設けられる調整部１５０を備える。調整部１５０を用いることで、上述したように、便器本体１００の背面と保持部４１２との間の隙間を調整し、かつ調整した隙間を保つことが可能となる。従って、図８（ａ）に表したような便器本体１００を強く締結した場合であっても、図８（ｄ）に表したように、便器本体１００の前端の浮き上がりを防止することができる。

【0065】

便器本体１００の底面に対して、便器本体１００の背面が後方に傾いている場合は、固定部１４０を締結した際に、便器本体１００の背面が保持部４１２に沿うように便器本体１００に力が働き、便器本体１００の前端が下方に向けて移動しようとする。しかし、便器本体１００は、支持部４０１および台座１０２によって下方から支持されるため、固定部１４０を強く締結しても、便器本体１００の背面は保持部４１２に沿わず、便器本体１００の前端は下方に移動しない。

【0066】

また、調整部１５０が、便器本体１００の背面に突き当てられることで、便器本体１００の背面が、上下方向において固定部１４０と調整部１５０の複数の点で支持され、便器本体１００ががたつくことを防止できる。

【0067】

調整部１５０は、固定部１４０よりも上方に設けられることが望ましい。調整部１５０が固定部１４０よりも下方に設けられる場合、背面が前方に傾斜した便器本体１００を保持部４１２に固定すると、便器本体１００の前端が浮き上がってしまうためである。

【0068】

なお、便器本体１００を取り付ける際などに、便器本体１００から支持部４０１に向けて大きな力が加えられると、便器本体１００や、支持部４０１、台座１０２などに破損が生じる可能性がある。この破損を防止するために、便器本体１００と支持部４０１（台座１０２）との間に、緩衝部材が設けられても良い。

【0069】

調整部１５０は、図７（ｂ）に表したように、左右方向において複数設けられることが望ましい。便器本体１００の背面は、誤差により、左側部の前後方向における位置と、右側部の前後方向における位置と、がずれる場合がある。調整部１５０が左右方向において複数設けられることで、この誤差を補償するように便器本体１００の背面と保持部４１２との間の隙間を調整することができる。

【0070】

調整部１５０は、図６および図７に表したように、便器本体１００の背面に突き当てられるねじ１５１を有することが望ましい。ねじ１５１を回すことで、便器本体１００の背面と保持部４１２との間の隙間をより細かく正確に調整することができるためである。

【0071】

図９は、実施形態に係る移動式便器の管を表す側面図である。
タンク２２０（洗浄水供給手段）は、フレームユニット４００と固定されるホルダプレート２２２の上に設けられる。すなわち、タンク２２０は、直接的または間接的に、フレームユニット４００と固定される。このため、調整部１５０により、便器本体１００の背面と保持部４１２との間の前後方向における隙間を調整すると、便器本体１００の背面とタンク２２０との間の前後方向における距離も変化する。そこで、実施形態に係る移動式便器１は、前後方向において伸縮性を有する管２２４を備えることが望ましい。

【0072】

例えば、図９に表したように、管２２４の後部は上方に延びて不図示のタンク２２０と接続され、管２２４の前部は前方に延びて便器本体１００の背面と接続される。この管２２４の前部には、蛇腹状に形成された部分が設けられており、前後方向において伸縮性を有する。このため、便器本体１００の背面と保持部４１２との間の前後方向における隙間の変化に応じて、管２２４の一部が前後方向に伸縮する。従って、便器本体１００の背面と保持部４１２との間の隙間に拘わらず管２２４をタンク２２０と便器本体１００との間に接続することができ、移動式便器１の組み立てが容易となる。

【0073】

以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、移動式便器１などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。

【符号の説明】

【0074】

１ 移動式便器、 １００ 便器本体、 １００ａ ボウル部、 １０２ 台座、 １０４ ストッパ、 １０６ キャスタ、 １１０ 便座、 １１２ 便蓋、 １１４ 機能部、 １２０ 排出流路、 １２２ 管、 １４０ 固定部、 １４１ ねじ、 １４２ ナット、 １５０ 調整部、 １５１ ねじ、 １５２ ナット、 ２００ 収納部、 ２０２ 前面板、 ２０４ 側面板、 ２０６ 天板、 ２０８ 背面板、 ２１０ 操作部、 ２１２ アームレスト、 ２２０ タンク、 ２２２ ホルダプレート、 ２２４ 管、 ２３０ 空気収納部、 ２３２ 背面カバー、 ３００ 処理ユニット、 ３１０ 貯留槽、 ３１１ 上流側空間、 ３１２ 下流側空間、 ３１５ 流入口、 ３１６ 通気口、 ３１７ ホース、 ３１８ ジョイント、 ３２０ 粉砕部、 ３２１ 粉砕槽、 ３２２ 通気口、 ３２４ 回転部、 ３２５ 開口、 ３２６ 円板、 ３２７ 突起、 ３３０ 圧送部、 ３３１ ポンプ室、 ３３１ａ 開口、 ３３２ インペラ、 ３３２ａ 羽根、 ３３３ 回転軸、 ３３４ モータ、 ３３５ ケーシング、 ３４０ 圧送配管、 ３５０ 給水配管、 ３５２ 電磁弁、 ３５４ 分岐金具、 ３５６ 点検口、 ３６０ 制御部、 ３６１ 筐体、 ３７０ ベースプレート、 ４００ フレームユニット、 ４０１ 支持部、 ４０２ ベースフレーム、 ４０４ 横フレーム、 ４０６ 補強フレーム、 ４０８ 縦フレーム、 ４１０ 支柱、 ４１２ 保持部、 ４１４ 補強フレーム、 ４２０ 左ガイドフレーム、 ４３０ 右ガイドフレーム

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】