(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874596
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】プリズム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/04 20060101AFI20210510BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
G02B5/04 F
G02B6/42
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-161772(P2017-161772)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-40063(P2019-40063A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 充
【審査官】
植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/130586(WO,A1)
【文献】
特開2014−137410(JP,A)
【文献】
特開2009−151051(JP,A)
【文献】
特表2015−530628(JP,A)
【文献】
特表2005−537521(JP,A)
【文献】
特開2005−37659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00− 5/136
G02B 6/34
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する入射面と、
入射した光が反射する反射面と、
光を出射する出射面とを備え、
前記出射面が、前記入射面に直交する方向に対して傾斜しており、
前記入射面に略直交する方向に延びる底面を有する支持台が、前記出射面側に設けられており、前記底面に対して、前記出射面が傾斜している、プリズム。
【請求項2】
前記入射面と前記出射面とがなす角が鋭角である、請求項1に記載のプリズム。
【請求項3】
前記出射面が前記入射面に直交する方向に対して傾斜している傾斜角度が5°以上、15°以下である、請求項2に記載のプリズム。
【請求項4】
前記入射面にレンズが設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリズム。
【請求項5】
前記入射面、前記反射面及び前記出射面を接続し、かつ対向し合う第1の側面及び第2の側面をさらに備え、
前記第1の側面と前記第2の側面とを結ぶ方向に、前記レンズが一列に複数設けられている、請求項4に記載のプリズム。
【請求項6】
前記出射面の反対側に、把持部が設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリズム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学素子間を光学的に結合する素子として、プリズムが用いられている。このようなプリズムの一例が下記の特許文献1に開示されている。特許文献1においては、プリズムは、出射面が面型光素子に対向するように配置されている。プリズムの入射面には、光ファイバーが接合されている。光ファイバーから出射された光は、プリズム内を通り、面型光素子に受光される。このプリズムの出射面には、面型光素子に集光するために、レンズが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013−099685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
面型光素子の受光面においては、一部の光は反射する。そのため、特許文献1の光モジュールにおいては、反射した光がプリズムの出射面から再度入射することがあった。再度プリズムに入射した光は、面型光素子に向かい光がプリズム内を進む経路を逆行し、光ファイバーに至ることがあった。このような戻り光が、光モジュールの特性に影響を及ぼすおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、戻り光を十分に抑制することができるプリズムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリズムは、光が入射する入射面と、入射した光が反射する反射面と、光を出射する出射面とを備え、出射面が、入射面に直交する方向に対して傾斜している。
【0007】
入射面と出射面とがなす角が鋭角であることが好ましい。出射面が入射面に直交する方向に対して傾斜している傾斜角度が5°以上、15°以下であることがより好ましい。
【0008】
入射面にレンズが設けられていることが好ましい。
【0009】
入射面、反射面及び出射面を接続し、かつ対向し合う第1の側面及び第2の側面がさらに備えられており、第1の側面と第2の側面とを結ぶ方向に、レンズが一列に複数設けられていてもよい。
【0010】
入射面に略直交する方向に延びる底面を有する支持台が、出射面側に設けられていることが好ましい。
【0011】
出射面の反対側に、把持部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプリズムによれば、戻り光を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態のプリズムを示す模式的斜視図である。
【
図2】
図1中のI−I線に沿うプリズムの模式的断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態において、プリズムから出射された光が受光素子において反射される例を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の変形例のプリズムを示す模式的斜視図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態のプリズムを示す模式的斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態のプリズムが把持される例を模式的に示す、第1の側面側から見た図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態のプリズムが把持される例を模式的に示す、入射面側から見た図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態のプリズムを示す模式的斜視図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態の変形例のプリズムを示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のプリズムを示す模式的斜視図である。
図2は、
図1中のI−I線に沿うプリズムの模式的断面図である。
図1に示すように、プリズム1は、光が入射する入射面2と、入射した光が反射する反射面3と、光を出射する出射面4とを備える。
図2に示すように、光源102から出射された光はプリズム1を通り、例えば、受光素子103に受光される。
【0016】
図1に戻り、プリズム1は、第1の側面5及び第2の側面6と、対向面7とをさらに備える。第1の側面5及び第2の側面6は対向し合っており、かつ入射面2、反射面3及び出射面4を接続している。対向面7は入射面2に対向しており、かつ反射面3、出射面4、第1の側面5及び第2の側面6を接続している。
【0017】
なお、プリズム1は対向面7を有していなくともよく、反射面3と出射面4とが直接的に接続されていてもよい。もっとも、プリズム1は対向面7を有することが好ましい。反射面3と出射面4とを結ぶ方向に沿う対向面7を有することにより、図示しない位置調整用の治具等にプリズム1を押し当てて位置調整を行うことが可能となり、実装時の光軸調整をより一層容易に行うことができる。
【0018】
入射面2には複数のレンズ8が設けられている。各レンズ8は凸レンズである。具体的には、複数のレンズ8は、第1の側面5と第2の側面6とを結ぶ方向に一列に設けられている。このように、本実施形態のプリズム1はプリズムレンズアレイである。各レンズ8により、プリズム1に入射した光を集光させることができる。なお、レンズ8の個数は特に限定されない。また、レンズ8は必ずしも設けられていなくともよい。
【0019】
出射面4側には支持台9A,9Bが設けられている。支持台9Aは入射面2に略直交する方向に延びる底面19Aを有する。同様に、支持台9Bも入射面2に略直交する方向に延びる底面19Bを有する。プリズム1は、例えば、受光素子を有する光モジュールに実装される。このとき、プリズム1は、支持台9A,9Bの底面19A,19B側から光モジュールに実装される。
【0020】
支持台9A,9Bは、プリズム1の他の部分と一体的に形成されている。本実施形態においては、支持台9Aの表面は、入射面2、第1の側面5及び対向面7と一体的に形成されている。支持台9Bの表面は、入射面2、第2の側面6及び対向面7と一体的に形成されている。
【0021】
なお、支持台9A,9Bの配置や形状は上記に限定されない。例えば、支持台9A,9Bは、入射面2、第1の側面5、第2の側面6及び対向面7よりも内側に形成されていてもよい。あるいは、出射面4側から見て、コの字状等の形状を有する1つの支持台が設けられていてもよい。プリズム1は支持台9A,9Bを有していなくともよい。この場合には、例えば、第1の側面5または第2の側面6が、光モジュールの他の部品等に接合される。
【0022】
ここで、プリズム1が実装される実装面をx方向及びy方向に延びる面とし、実装面に垂直な方向をz方向とする。入射面2はz方向及びy方向に延びている。
【0023】
本実施形態の特徴は、
図2に示すように、出射面4が入射面2に直交する方向に対して傾斜していることにある。これにより、z方向から傾斜した方向に、出射面4から光Lを出射させることができる。よって、
図3に示すように、受光素子103の受光面から光Lの一部が反射しても、光Lが受光面に入射した方向とは異なる方向に反射されることとなる。従って、戻り光を十分に抑制することができる。これにより、プリズム1が搭載される光モジュールの光学的特性等に対する戻り光による影響を、効果的に抑制することができる。
【0024】
図2に示す、入射面2と出射面4とがなす角は、鋭角であることが好ましい。この場合には、プリズム1から離れる方向に光Lを出射面4から出射させることができる。よって、受光素子103から反射した光がプリズム1に再度入射することを抑制することができる。
【0025】
出射面4が入射面2に直交する方向に対して傾斜している傾斜角度θ1は、3°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましい。傾斜角度θ1が小さすぎると、戻り光を十分に抑制することができないおそれがある。一方で、傾斜角度θ1は、17°以下であることが好ましく、15°以下であることがより好ましい。傾斜角度θ1が大きすぎると、光Lがz方向に対して大きい角度で出射されることとなる。そのため、受光素子103とプリズム1との距離を長くすることを要し、光モジュール全体としての小型化が困難となるおそれがある。
【0026】
反射面3が入射面2に直交する方向に対して傾斜している傾斜角度θ2は、30°以上、43°以下であることが好ましく、32°以上、41°以下であることがより好ましい。この場合には、入射した光を反射面3においてより一層全反射させ易い。よって、プリズム1に屈折率が低いガラスを用いた場合においても、入射した光を全反射させることができ、受光素子103に至るまでの光の減衰を効果的に抑制することができる。このように、プリズム1に用いる材料の選択肢を広げることができる。
【0027】
一方で、反射面3の傾斜角度θ2は、47°以上、60°以下であることが好ましく、49°以上、57°以下であることがより好ましい。それによって、x方向におけるプリズム1の厚みを低減することができ、プリズム1をより一層小型化することができる。なお、傾斜角度θ2が大きすぎると、光源102から入射した光が反射面3において全反射せず、反射面3から出射され易くなるおそれがある。ここで、反射面3には反射膜が設けられていてもよい。もっとも、傾斜角度θ2を、光源102から入射された光が反射面3から出射され難い上記範囲内とすることにより、受光素子103に至るまでの光の減衰を効果的に抑制することができる。
【0028】
レンズ8は入射面2に設けられていることが好ましい。それによって、入射面2に入射する光がコリメート光以外の光であっても、光がプリズム1に入射する際に集光することができるため、反射面3や出射面4における光学有効面を限定することができ、部品形状の自由度を向上させたり、生産上の歩留りを向上させたりすることができる。なお、レンズ8は、入射面2及び出射面4の両方に設けられていてもよく、あるいは、出射面4のみに設けられていてもよい。
【0029】
図1に示す本実施形態のように、プリズム1は支持台9A,9Bを有することが好ましい。この場合には、光モジュールに実装するに際し、支持台9A,9Bの底面19A,19B側からプリズム1を載置すればよい。よって、プリズム1を容易に実装することができる。ここで、実装するための部品の点数が多くなるほど、プリズム1の位置ずれが生じる要素は増えることとなる。本実施形態においては、支持台9A,9Bは他の部分と一体的に形成されているため、プリズム1を実装するための部品の点数を削減することができる。よって、プリズム1を実装する際の位置精度を高めることができる。
【0030】
図4は、第1の実施形態の変形例のプリズムを示す模式的斜視図である。本変形例のプリズム21は、入射面2と反射面3とを接続する面25を有する。このように、入射面2、反射面3、出射面4、第1の側面5、第2の側面6及び対向面7以外の面が設けられていてもよい。
【0031】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態のプリズムを示す模式的斜視図である。本実施形態は、出射面4の反対側に把持部36が設けられている点において、第1の実施形態と異なる。把持部36は入射面2が延びるz方向に延びている。
【0032】
把持部36の表面は、入射面2、第1の側面5及び第2の側面6と一体的に設けられている。なお、把持部36は、入射面2、第1の側面5及び第2の側面6の内側に設けられていてもよい。
【0033】
図6は、第2の実施形態のプリズムが把持される例を模式的に示す、第1の側面側から見た図である。
図7は、第2の実施形態のプリズムが把持される例を模式的に示す、入射面側から見た図である。
【0034】
図6及び
図7に示すように、プリズム31の把持部36がアーム104により把持されている。
図7に示すように、本実施形態では、把持部36は第1の側面5と第2の側面6とを接続するように設けられている。把持部36のy方向に沿う長さは、プリズム31のy方向に沿う全長と同じである。よって、アーム104によりプリズム31を把持する部分の面積を大きくすることができる。従って、プリズム31をより確実に把持することができるため、プリズム31を容易に実装することができ、かつ実装する際の位置精度を高めることができる。加えて、アーム104によりプリズム31を把持する力が狭い面積に集中し難いため、プリズム31に割れや欠けが生じ難い。
【0035】
本実施形態においても、出射面4が入射面2に直交する方向に対して傾斜している。よって、z方向から傾斜した方向に、出射面4から光を出射させることができ、戻り光を十分に抑制することができる。
【0036】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態のプリズムを示す模式的斜視図である。本実施形態は、入射面2に突起部47A,47Bが設けられている点において第2の実施形態と異なる。
【0037】
突起部47A,47Bはz方向に延びている。突起部47Aは入射面2から支持台9A近傍に至っている。突起部47Bは入射面2から支持台9B近傍に至っている。突起部47A,47Bは把持部36には至っていない。入射面2に直交する、x方向及びy方向に延びる平面に沿う突起部47A,47Bの断面形状は、特に限定されないが、本実施形態では三角形である。なお、突起部47A,47Bの上記断面形状は、例えば、略矩形状や略半円形状等であってもよい。
【0038】
プリズム41の実装に際し、突起部47A,47Bを基準とすることにより、容易にアライメントすることができる。よって、プリズム41を実装する際の位置精度を効果的に高めることができる。加えて、突起部47A,47Bは把持部36に至っていないため、第2の実施形態と同様に、アームによりプリズム41を把持する際に、突起部47Aや突起部47Bとの物理的干渉を回避することができ、安定的に把持する部分の面積を十分に確保することができる。
【0039】
本実施形態においても、出射面4が入射面2に直交する方向に対して傾斜している。よって、z方向から傾斜した方向に、出射面4から光を出射させることができ、戻り光を十分に抑制することができる。
【0040】
図9は、第3の実施形態の変形例のプリズムを示す模式的斜視図である。本変形例においては、突起部57A,57Bは把持部36に至っている。この場合には、アームによりプリズム51を把持する際に、把持部36における突起部57Aと突起部57Bとの間をアーム等により把持すればよい。突起部57A,57Bの位置は特に限定されず、例えば、支持台9A,9Bのみに設けられていてもよい。あるいは、例えば、2つの突起部が把持部36に設けられており、他の2つの突起部が支持台9A,9Bに設けられていてもよい。突起部が1つのみであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…プリズム
2…入射面
3…反射面
4…出射面
5,6…第1,第2の側面
7…対向面
8…レンズ
9A,9B…支持台
19A,19B…底面
21…プリズム
25…面
31…プリズム
36…把持部
41…プリズム
47A,47B…突起部
51…プリズム
57A,57B…突起部
102…光源
103…受光素子
104…アーム