(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Nrateを算出するために、NrateとParamMとの関係を示す関数を求める関数決定方法であって、
Nrateは、基準鋼板と相手鋼板とのスポット溶接において形成されるナゲットの寸法に関するパラメータを示し、
ParamMは、前記基準鋼板の化学成分及び前記相手鋼板の化学成分に関するパラメータを示し、
前記基準鋼板の厚みと前記相手鋼板の厚みとは等しく、
前記基準鋼板及び前記相手鋼板は、第1元素ないし第n元素を含有し、
nは、1以上の整数を示し、
式(1)が成立しており、
【数1】
sum(m)は、前記基準鋼板に含まれる第m元素の質量%と前記相手鋼板に含まれる第m元素の質量%との合計を示し、
a(m)は、sum(m)の係数を示し、
mは、1以上n以下の整数を示し、
前記関数決定方法は、
それぞれがsum(1)ないしsum(n)及びNrateを含む複数の基本情報群を準備する情報準備ステップと、
それぞれがa(1)ないしa(n)を含む複数の係数群を準備する係数準備ステップと、
前記係数準備ステップで準備した前記複数の係数群の内のいずれか1つの係数群を前記式(1)に代入し、前記情報準備ステップで準備した前記複数の基本情報群を前記式(1)に代入して、それぞれがNrate及びParamMを含む複数の計算結果群を得る第1計算ステップと、
前記第1計算ステップで得た前記複数の計算結果群に基づいて、NrateとParamMとの関係を示す近似関数を作成する近似関数作成ステップと、
前記第1計算ステップ及び前記近似関数作成ステップを前記係数準備ステップで準備した前記複数の係数群毎に行って、複数の前記近似関数を作成する反復ステップと、
前記複数の近似関数の中から最適な近似関数をNrateとParamMとの関係を示す関数と決定する関数決定ステップと、
を備える、関数決定方法。
Nrateを算出するために、NrateとParamMとの関係を示す関数を求める関数決定装置であって、
Nrateは、基準鋼板と相手鋼板とのスポット溶接において形成されるナゲットの直径と前記ナゲットの厚みとに関するパラメータを示し、
ParamMは、前記基準鋼板の化学成分及び前記相手鋼板の化学成分に関するパラメータを示し、
前記基準鋼板の厚みと前記相手鋼板の厚みとは等しく、
前記基準鋼板及び前記相手鋼板は、第1元素ないし第n元素を含有し、
nは、1以上の整数を示し、
式(1)が成立しており、
【数2】
sum(m)は、前記基準鋼板に含まれる第m元素の質量%と前記相手鋼板に含まれる第m元素の質量%との合計を示し、
a(m)は、sum(m)の係数を示し、
mは、1以上n以下の整数を示し、
前記関数決定装置は、
それぞれがsum(1)ないしsum(n)及びNrateを含む複数の基本情報群を記憶する第1記憶部と、
それぞれがa(1)ないしa(n)を含む複数の係数群を記憶する第2記憶部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記複数の係数群の内のいずれか1つの係数群を前記式(1)に代入し、前記複数の基本情報群を前記式(1)に代入して、それぞれがNrate及びParamMを含む複数の計算結果群を得る第1計算ステップと、
前記第1計算ステップで得た前記複数の計算結果群に基づいて、NrateとParamMとの関係を示す近似関数を作成する近似関数作成ステップと、
前記第1計算ステップ及び前記近似関数作成ステップを前記複数の係数群毎に行って、複数の前記近似関数を作成する反復ステップと、
前記複数の近似関数の中から最適な近似関数をNrateとParamMとの関係を示す関数と決定する関数決定ステップと、
を実行する、関数決定装置。
Nrateを算出するために、NrateとParamMとの関係を示す関数を求める関数決定プログラムであって、
Nrateは、基準鋼板と相手鋼板とのスポット溶接において形成されるナゲットの直径と前記ナゲットの厚みとに関するパラメータを示し、
ParamMは、前記基準鋼板の化学成分及び前記相手鋼板の化学成分に関するパラメータを示し、
前記基準鋼板の厚みと前記相手鋼板の厚みとは等しく、
前記基準鋼板及び前記相手鋼板は、第1元素ないし第n元素を含有し、
nは、1以上の整数を示し、
式(1)が成立しており、
【数3】
sum(m)は、前記基準鋼板に含まれる第m元素の質量%と前記相手鋼板に含まれる第m元素の質量%との合計を示し、
a(m)は、sum(m)の係数を示し、
mは、1以上n以下の整数を示し、
前記関数決定プログラムは、
それぞれがsum(1)ないしsum(n)及びNrateを含む複数の基本情報群を準備する情報準備ステップと、
それぞれがa(1)ないしa(n)を含む複数の係数群を準備する係数準備ステップと、
前記係数準備ステップで準備した前記複数の係数群の内のいずれか1つの係数群を前記式(1)に代入し、前記情報準備ステップで準備した前記複数の基本情報群を前記式(1)に代入して、それぞれがNrate及びParamMを含む複数の計算結果群を得る第1計算ステップと、
前記第1計算ステップで得た前記複数の計算結果群に基づいて、NrateとParamMとの関係を示す近似関数を作成する近似関数作成ステップと、
前記第1計算ステップ及び前記近似関数作成ステップを前記係数準備ステップで準備した前記複数の係数群毎に行って、複数の前記近似関数を作成する反復ステップと、
前記複数の近似関数の中から最適な近似関数をNrateとParamMとの関係を示す関数と決定する関数決定ステップと、
をコンピュータに実行させる、関数決定プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載のナゲットの直径の算出方法では、基準材の化学成分又は相手材の化学成分が変わった場合には、再度、ナゲットの成長を有限要素法によって解析する必要がある。ただし、有限要素法による解析では、解析モデル作成や計算処理等に長い時間と多くの労力が必要である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、スポット溶接によるナゲットの寸法に関するパラメータの計算を簡素化できる関数決定方法、関数決定装置、関数決定プログラム及び破断予測プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態である関数決定方法は、
Nrateを算出するために、NrateとParamMとの関係を示す関数を求める関数決定方法であって、
Nrateは、基準鋼板と相手鋼板とのスポット溶接において形成されるナゲットの寸法に関するパラメータを示し、
ParamMは、基準鋼板の化学成分及び相手鋼板の化学成分に関するパラメータを示し、
基準鋼板の厚みと相手鋼板の厚みとは等しく、
基準鋼板及び相手鋼板は、第1元素ないし第n元素を含有し、
nは、1以上の整数を示し、
式(1)が成立しており、
【数1】
sum(m)は、基準鋼板に含まれる第m元素の質量%と相手鋼板に含まれる第m元素の質量%との合計を示し、
a(m)は、sum(m)の係数を示し、
mは、1以上n以下の整数を示し、
関数決定方法は、
それぞれがsum(1)ないしsum(n)及びNrateを含む複数の基本情報群を準備する情報準備ステップと、
それぞれがa(1)ないしa(n)を含む複数の係数群を準備する係数準備ステップと、
係数準備ステップで準備した複数の係数群の内のいずれか1つの係数群を式(1)に代入し、情報準備ステップで準備した複数の基本情報群を式(1)に代入して、それぞれがNrate及びParamMを含む複数の計算結果群を得る第1計算ステップと、
第1計算ステップで得た複数の計算結果群に基づいて、NrateとParamMとの関係を示す近似関数を作成する近似関数作成ステップと、
第1計算ステップ及び近似関数作成ステップを係数準備ステップで準備した複数の係数群毎に行って、複数の近似関数を作成する反復ステップと、
複数の近似関数の中から最適な近似関数をNrateとParamMとの関係を示す関数と決定する関数決定ステップと、
を備える。
【0007】
本発明の第2の形態に係る関数決定装置は、
Nrateを算出するために、NrateとParamMとの関係を示す関数を求める関数決定装置であって、
Nrateは、基準鋼板と相手鋼板とのスポット溶接において形成されるナゲットの直径とナゲットの厚みとに関するパラメータを示し、
ParamMは、基準鋼板の化学成分及び相手鋼板の化学成分に関するパラメータを示し、
基準鋼板の厚みと相手鋼板の厚みとは等しく、
基準鋼板及び相手鋼板は、第1元素ないし第n元素を含有し、
nは、1以上の整数を示し、
式(1)が成立しており、
【数2】
sum(m)は、基準鋼板に含まれる第m元素の質量%と相手鋼板に含まれる第m元素の質量%との合計を示し、
a(m)は、sum(m)の係数を示し、
mは、1以上n以下の整数を示し、
関数決定装置は、
それぞれがsum(1)ないしsum(n)及びNrateを含む複数の基本情報群を記憶する第1記憶部と、
それぞれがa(1)ないしa(n)を含む複数の係数群を記憶する第2記憶部と、
制御部と、
を備え、
制御部は、
複数の係数群の内のいずれか1つの係数群を式(1)に代入し、複数の基本情報群を式(1)に代入して、それぞれがNrate及びParamMを含む複数の計算結果群を得る第1計算ステップと、
第1計算ステップで得た複数の計算結果群に基づいて、NrateとParamMとの関係を示す近似関数を作成する近似関数作成ステップと、
第1計算ステップ及び近似関数作成ステップを複数の係数群毎に行って、複数の近似関数を作成する反復ステップと、
複数の近似関数の中から最適な近似関数をNrateとParamMとの関係を示す関数と決定する関数決定ステップと、
を実行する。
【0008】
本発明の第3の形態に係る関数決定プログラムは、
Nrateを算出するために、NrateとParamMとの関係を示す関数を求める関数決定プログラムであって、
Nrateは、基準鋼板と相手鋼板とのスポット溶接において形成されるナゲットの直径とナゲットの厚みとに関するパラメータを示し、
ParamMは、基準鋼板の化学成分及び相手鋼板の化学成分に関するパラメータを示し、
基準鋼板の厚みと相手鋼板の厚みとは等しく、
基準鋼板及び相手鋼板は、第1元素ないし第n元素を含有し、
nは、1以上の整数を示し、
式(1)が成立しており、
【数3】
sum(m)は、基準鋼板に含まれる第m元素の質量%と相手鋼板に含まれる第m元素の質量%との合計を示し、
a(m)は、sum(m)の係数を示し、
mは、1以上n以下の整数を示し、
関数決定プログラムは、
それぞれがsum(1)ないしsum(n)及びNrateを含む複数の基本情報群を準備する情報準備ステップと、
それぞれがa(1)ないしa(n)を含む複数の係数群を準備する係数準備ステップと、
係数準備ステップで準備した複数の係数群の内のいずれか1つの係数群を式(1)に代入し、情報準備ステップで準備した複数の基本情報群を式(1)に代入して、それぞれがNrate及びParamMを含む複数の計算結果群を得る第1計算ステップと、
第1計算ステップで得た複数の計算結果群に基づいて、NrateとParamMとの関係を示す近似関数を作成する近似関数作成ステップと、
第1計算ステップ及び近似関数作成ステップを係数準備ステップで準備した複数の係数群毎に行って、複数の近似関数を作成する反復ステップと、
複数の近似関数の中から最適な近似関数をNrateとParamMとの関係を示す関数と決定する関数決定ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【0009】
本発明の第4の形態に係る破断予測プログラムは、
ナゲットの破断予測を実行する破断予測プログラムであって、
請求項7に記載の関数決定プログラムの前記関数決定ステップで決定した関数に対応する前記係数群が代入された前記式(1)に対して、Nrateの算出対象である基準鋼板及び相手鋼板のsum(1)ないしsum(m)を代入してParamMを算出する第2計算ステップと、
前記第2計算ステップで算出したParamMを前記関数決定ステップで決定した関数に代入して、Nrateを算出する第3計算ステップと、
前記第3計算ステップで算出したNrateを用いて、前記ナゲットの破断予測を実行する解析ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スポット溶接によるナゲットの寸法に関するパラメータの計算を簡素化できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[はじめに]
以下に、本発明の一実施形態に係る関数決定方法、関数決定装置、関数決定プログラム及び破断予測プログラムについて説明する。関数決定プログラムは、関数決定装置において実行されるプログラムである。関数決定方法は、関数決定装置が関数決定プログラムを実行することにより行う方法である。破断予測プログラムは、関数決定装置において実行されるプログラムである。
【0013】
図1は、基準鋼板10と相手鋼板12とがスポット溶接された部分の構造を示す断面図である。
図1に示すように、基準鋼板10と相手鋼板12とが抵抗スポット溶接(以下、スポット溶接)されると、ナゲット14が形成される。ナゲット14は、基準鋼板10の一部と相手鋼板12の一部とが溶融して混合した後に凝固することにより形成され、溶融部とも呼ばれる。
【0014】
ナゲット14の破断予測解析を行うためには、ナゲット14の寸法(例えば、直径や厚み等)を特定することが重要である。ナゲット14の寸法を特定する方法としては、ナゲット14の成長を有限要素法によって解析して求める方法や、実験により求める方法等が挙げられる。しかしながら、いずれの方法であっても、長い時間及び多くの労力が必要となる。
【0015】
そこで、本願発明者は、より短い時間及びより少ない労力によりナゲット14の寸法を算出する方法を検討した結果、基準鋼板10の化学成分とナゲット14の寸法との間に相関性があり、相手鋼板12の化学成分とナゲット14の寸法との間に相関性があることを知見した。より詳細には、基準鋼板10の強度及び/又は相手鋼板12の強度が高くなるにしたがって、スポット溶接位置における基準鋼板10と相手鋼板12との接触状態が面接触から点接触に近づく。これにより、スポット溶接位置における基準鋼板10と相手鋼板12との接触面積が小さくなる。そのため、スポット溶接位置における抵抗値が高くなり、スポット溶接位置における発熱量も多くなる。その結果、基準鋼板10の強度及び相手鋼板12の強度が高くなるにしたがって、ナゲット14の成長速度も速くなる。
【0016】
ここで、鉄鋼材料では、炭素以外の元素が鉄鋼材料の材料特性値に及ぼす影響力を炭素量に換算した炭素当量という指標がある。鉄鋼材料では、鉄鋼材料の化学成分と鉄鋼材料の材料特性値との間に相関性があると考えられており、炭素当量と鉄鋼材料の材料特性値との間に相関性があると考えられている。すなわち、基準鋼板10の化学成分と基準鋼板10の強度との間、及び、相手鋼板12の化学成分と相手鋼板12の強度との間にそれぞれ相関性があると考えられる。
【0017】
ナゲット14の成長は、基準鋼板10の強度にも相手鋼板12の強度にも依存するため、基準鋼板10の化学成分及び相手鋼板12の化学成分の影響を受けるものと考えられる。ナゲット14の寸法は、ナゲット14の成長の結果として定まる値である。そこで、本願発明者は、基準鋼板10の化学成分及び相手鋼板12の化学成分とナゲット14の寸法との間に相関性があることを知見した。そして、本願発明者は、ナゲット14の寸法に関するパラメータと、基準鋼板10の化学成分及び相手鋼板12の化学成分に関するパラメータとの関係を示す関数を求める関数決定方法を導き出した。これにより、基準鋼板10の化学成分及び相手鋼板12の化学成分をこの関数に代入することで、ナゲット14の寸法に関するパラメータを算出することができる。
【0018】
なお、以下に説明する関数決定方法、関数決定装置、関数決定プログラム及び破断予測プログラムにおいて、基準鋼板10の厚みと相手鋼板12の厚みとは等しいことが前提となっている。
【0019】
[関数決定装置]
次に、関数決定方法を実行するための関数決定装置20の構成について図面を参照しながら説明する。
図2は、関数決定装置20の構成を示すブロック図である。
図3Aは、関数決定装置20の制御部22が実行するフローチャートである。
図3Bは、
図3AのステップS7のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0020】
関数決定装置20は、Nrateを算出するために、NrateとParamMとの関係を示す関数F0を求める。Nrateは、ナゲット14の寸法に関するパラメータであり、具体的には、ナゲット14の直径に対するナゲット14の厚みの比率(以下、形状比率と呼ぶ)である。ナゲット14の直径は、基準鋼板10と相手鋼板12との接合面上でのナゲット14の最大幅である。ナゲット14の厚みは、基準鋼板10と相手鋼板12とが重なっている方向におけるナゲット14の最大幅である。ParamMは、基準鋼板10の化学成分及び相手鋼板12の化学成分に関するパラメータであり、例えば、以下の式(A)に示される。式(A)に示す例では、基準鋼板10及び相手鋼板12は、Fe(鉄)、C(炭素)、Si(珪素)及びMn(マンガン)を含有する。
【0021】
ParamM=a(C)×sum(C)+a(Si)×sum(Si)+a(Mn)×sum(Mn) (A)
【0022】
sum(C)は、基準鋼板10に含まれるCの質量%と相手鋼板12に含まれるCの質量%との合計を示す。sum(Si)は、基準鋼板10に含まれるSiの質量%と相手鋼板12に含まれるSiの質量%との合計を示す。sum(Mn)は、基準鋼板10に含まれるMnの質量%と相手鋼板12に含まれるMnの質量%との合計を示す。
【0023】
a(C)、a(Si)及びa(Mn)はそれぞれ、sum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)の係数であり、0.01以上1以下の数値である。a(C)、a(Si)及びa(Mn)は、関数決定装置20により求められる値である。
【0024】
また、ParamMとNrateとの間には、式(B)が成立する。
【0025】
Nrate=b1×ln(ParamM)+b2 (B)
【0026】
b1,b2は、係数であり、関数決定装置20により求められる値である。すなわち、関数決定装置20により、a(C)、a(Si)、a(Mn)、b1及びb2を求めることにより、NrateとParamMとの関係を示す関数F0を決定する。関数F0とは、式(A)及び式(B)を指す。これにより、基準鋼板10の化学成分及び相手鋼板12の化学成分が分かれば、式(A)及び式(B)を用いてナゲット14の形状比率を算出できるようになる。
【0027】
次に、関数決定装置20の構成について説明する。関数決定装置20は、
図2に示すように、制御部22、表示部24、入力部26及び記憶部28を備える。関数決定装置20は、例えば、パーソナルコンピュータである。制御部22は、例えば、CPUである。表示部24は、例えば、ディスプレイである。入力部26は、例えば、マウス及びキーボードの組み合わせである。記憶部28は、例えば、ハードディスクやメモリやDVD等の記録媒体等である。
【0028】
以上のような関数決定装置20では、記憶部28が関数決定プログラムを記憶している。関数決定プログラムは、例えば、市販の表計算ソフトに関数決定方法の演算手順を示すマクロがプログラミングされることにより実現される。また、関数決定プログラムは、専用のソフトウエアにより実現されてもよい。制御部22は、関数決定プログラムを実行することにより、関数決定方法を実行する。
【0029】
記憶部28は、表1に示す鋼板(1)〜(8)の材料情報を記憶している。表1は、鋼板(1)〜(8)の材料情報の一例を示した表である。鋼板(1)〜(8)は、基準鋼板10又は相手鋼板12として用いられる鋼板である。鋼板(1)〜(8)は、Fe(鉄)、C(第1元素の一例)、Si(第2元素の一例)及びMn(第3元素の一例)を含有する。材料情報は、C、Si及びMnの質量%、引っ張り強度及び厚みである。ただし、鋼板(1)〜(8)は、Fe、C、Si及びMn以外に他の元素(例えば、Mo(モリブデン)やCr(クロム)やNi(ニッケル)等)を含んでもよい。なお、表1に示す鋼板(1)〜(8)の材料情報は、既知の情報である。鋼板(1)〜(8)の材料情報については、公知の試験装置、分析装置等を用いて特定してもよいし、文献データやミルシート等を用いて特定してもよい。
【0031】
鋼板(1)〜(8)は、例えば、自動車用鋼板である。鋼板(1)〜(8)が自動車用鋼板である場合、C、Si、Mn、Mo、Cr及びNiの含有量は例えば以下の通りである。
【0032】
C:0.001質量%以上0.4質量%以下
Si:0.001質量%以上4.0質量%以下
Mn:0.01質量%以上4.0質量%以下
Mo:0質量%以上0.5質量%以下
Cr:0質量%以上1.0質量%以下
Ni:0質量%以上0.1質量%以下
【0033】
次に、
図3A及び
図3Bを参照しながら、関数決定装置20の動作について説明する。まず、制御部22は、基準鋼板10と相手鋼板12との組み合わせ毎に基本情報群(1)〜(14)を準備する(ステップS1・情報準備ステップ)。表2は、基準情報群(1)〜(14)の一例を示した表である。記憶部28(第1記憶部の一例)は、表2に示す情報を記憶している。基本情報群(1)〜(14)はそれぞれ、sum(C)、sum(Si)、sum(Mn)及びNrateを含む。具体的には、制御部22は、表1の鋼板(1)〜(8)の材料情報に基づいて、sum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)を計算し、記憶部28に記憶させる。Nrateは、本関数決定プログラムの実行前に、有限要素法を用いた解析や実験等により求められた値である。Nrateは、例えば、ユーザが入力部26により解析結果や実験結果を関数決定装置20に入力することで記憶部28に記憶されてもよい。また、Nrateは、予め、記憶部28に記憶されていてもよい。なお、基準鋼板10と相手鋼板12との組み合わせを14通りとしているので基本情報群は14個存在する。しかしながら、基準鋼板10と相手鋼板12との組み合わせは14通りより多くてもよいし14通りより少なくてもよい。この場合、基準鋼板10と相手鋼板12との組み合わせの数と同数の基本情報群が存在する。
【0035】
次に、制御部22は、係数群(1)〜(216)を準備する(ステップS2・係数準備ステップ)。表3は、係数群(1)〜(216)の一例を示した表である。記憶部28(第2記憶部の一例)は、表3の情報を記憶している。係数群(1)〜(216)はそれぞれ、a(C)、a(Si)及びa(Mn)を含む。a(C)、a(Si)及びa(Mn)は、0.01以上1以下の値である。本実施形態では、制御部22は、a(C)、a(Si)及びa(Mn)のそれぞれに、「0.01」,「0.2」,「0.4」,「0.6」,「0.8」,「1」の6通りの値を設定する。故に、216個(すなわち、6
3個)の係数群が存在する。ただし、a(C)、a(Si)及びa(Mn)のそれぞれに設定される値は6通りに限らない。制御部22は、準備した係数群(1)〜(216)を記憶部28に記憶させる。
【0037】
次に、制御部22は、記憶部28が記憶している係数群(1)のa(C)、a(Si)及びa(Mn)を式(A)に代入し、記憶部28が記憶している基準情報群(1)のsum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)を式(A)に代入して、ParamMを算出する(ステップS3・第1計算ステップ)。以下では、係数群(x)(xは1〜216の整数)及び基準情報群(y)(yは1〜14の整数)を用いて得たParamMと基準情報群(y)のNrateとの組み合わせを、計算結果群(x,y)と呼ぶ。制御部22は、同様の計算を基準情報群(2)〜(14)に対しても行って、計算結果群(1,2)〜(1,14)を算出する。ステップS3において、制御部22は、計算結果群(1,1)〜(1,14)を得る。
【0038】
次に、制御部22は、計算結果群(1,1)〜(1,14)をグラフ(1)にプロットする。
図4は、NrateとParamMとの関係の一例を示す図である。
図4において、グラフ(1)は、計算結果群(1,1)〜(1,14)のグラフであり、グラフ(2)は、計算結果群(2,1)〜(2,14)のグラフであり、グラフ(216)は、計算結果群(216,1)〜(216,14)のグラフである。グラフの縦軸はNrateを示し、グラフの横軸はParamMを示す。グラフ(1)には、計算結果群(1,1)〜(1,14)の14個の点がプロットされていることが分かる。
【0039】
次に、制御部22は、計算結果群(1,1)〜(1,14)に基づいて、NrateとParamMとの関係を示す近似関数F1(
図4参照)を作成する(ステップS4・近似関数作成ステップ)。近似関数F1は、例えば、最小二乗法により求められ、式(B)で示される。ステップS4により、係数群(1)に対するb1,b2が求まる。なお、式(B)は、近似関数F1の一例であり、例えば、1次関数で示されてもよいし、2次以上の関数で示されてもよい。
【0040】
この後、制御部22は、近似関数F1〜F216の全ての作成を完了したか否かを判定する(ステップS5・反復ステップ)。近似関数F1〜F216の作成を完了した場合には、ステップS6に進む。近似関数F1〜F216の作成を完了していない場合には、ステップS3に戻る。この場合、制御部22は、係数群毎にステップS3,S4を行って、近似関数F1〜F216の内の未作成である近似関数を作成する。
【0041】
近似関数F1〜F216の作成を完了した場合、制御部22は、
図5Aに示すように、近似関数F1〜F216の中から最適な近似関数をNrateとParamMとの関係を示す関数F0と決定する(ステップS6・関数決定ステップ)。関数F0は、マスターカーブとも呼ばれる。
図5Aは、関数F0を示す図である。縦軸はNrateを示し、横軸はParamMを示す。最適な近似関数の決定には、例えば、最小二乗法を用いる。この場合、制御部22は、ステップS3において得た計算結果群(1,1)〜(1,14)とステップS4で得た近似関数F1との差の二乗和(1)を算出する。同様に、制御部22は、計算結果群(2,1)〜(2,14)、(3,1)〜(3,14)、・・・、(216,1)〜(216,14)及びステップS4で得た近似関数F2〜F216についても二乗和(2)〜(216)を算出する。そして、制御部22は、二乗和(1)〜(216)の中から最小の二乗和を決定する。更に、制御部22は、最小の二乗和に対応する近似関数を関数F0と決定する。また、制御部22は、最小の二乗和に対応する係数群をa(C)、a(Si)、a(Mn)と決定する。これにより、式(A)及び式(B)におけるa(C)、a(Si)、a(Mn)、b1及びb2が求まる。例えば、本実施形態では、b1は0.034であり、b2は0.36である。
【0042】
次に、制御部22は、ナゲット14の形状比率を算出する(ステップS7)。具体的には、制御部22は、ステップS6において求められたa(C)、a(Si)、a(Mn)、b1及びb2を式(A)及び式(B)に代入する。次に、制御部22は、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報を準備する。Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報は既知の情報である。Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報については、公知の試験装置、分析装置等を用いて特定してもよいし、文献データやミルシート等を用いて特定してもよい。そして、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報は、例えば、入力部26を介して入力される。更に、制御部22は、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報を用いて、sum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)を算出する。次に、制御部22は、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12のsum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)を式(A)に代入して、ParamMを算出する(ステップS7−1・第2計算ステップ)。更に、制御部22は、算出したParamMを式(B)に代入して、基準鋼板10及び相手鋼板12のNrateを算出する(ステップS7−2・第3計算ステップ)。これにより、本処理は終了する。
【0043】
この後、制御部22は、ステップS7−2において算出したNrateを用いて、ナゲット14の変形抵抗曲線及び破断限界値の計算を行ってもよい。
【0044】
(効果)
以上のように構成された関数決定装置20、関数決定方法及び関数決定プログラムによれば、スポット溶接によるナゲット14の形状比率の計算を簡素化できる。より詳細には、関数決定装置20では、制御部22は、関数決定プログラムの実行前に有限要素法を用いた解析や実験等により求められたNrateを用いて、NrateとParamMとの関係を示す近似関数F1〜F216を作成する。制御部22は、近似関数F1〜F216の中から最適な近似関数をNrateとParamMとの関係を示す関数F0と決定する。これにより、制御部22は、ナゲット14の形状比率の算出対象である基準鋼板10の化学成分及び相手鋼板12の化学成分が分かっていれば、算出対象である基準鋼板10と相手鋼板12との組み合わせが基本情報群に存在せず、これらの組み合わせのNrateが不明であったとしても、関数F0を用いてナゲット14の形状比率を算出することができる。すなわち、制御部22は、関数F0の決定後には、新たに有限要素法による解析や実験等を行うことなく、ナゲット14の形状比率を算出することができる。その結果、関数決定装置20、関数決定方法及び関数決定プログラムによれば、スポット溶接によるナゲット14の形状比率の計算を簡素化できる。
【0045】
[破断予測プログラム]
以下に、破断予測プログラムについて図面を参照しながら説明する。
図5Bは、関数決定装置20の制御部22が実行するフローチャートである。
【0046】
破断予測プログラムは、関数決定装置20において決定した関数F0を用いて、ナゲット14の破断予測を実行するためのプログラムである。破断予測プログラムは、記憶部28に記憶されており、制御部22により実行される。また、記憶部28は、破断予測プログラムの一部として関数F0を記憶している。したがって、記憶部28は、ステップS6で決定した関数F0に対応する係数群a(C)、a(Si)及びa(Mn)が代入された式(A)を記憶すると共に、ステップS6において求めたb1,b2が代入された式(B)を破断予測プログラムの一部として記憶している。
【0047】
制御部22は、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12のsum(1)ないしsum(m)を、記憶部28が記憶している式(A)に代入してParamMを算出する(ステップS11・第2計算ステップ)。具体的には、制御部22は、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報を準備する。Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報は既知の情報である。Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報については、公知の試験装置、分析装置等を用いて特定してもよいし、文献データやミルシート等を用いて特定してもよい。そして、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報は、例えば、入力部26を介して入力される。更に、制御部22は、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12の材料情報を用いて、sum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)を算出する。次に、制御部22は、Nrateの算出対象である基準鋼板10及び相手鋼板12のsum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)を記憶部28が記憶している式(A)に代入する。
【0048】
次に、制御部22は、算出したParamMを記憶部28が記憶している式(B)に代入して、基準鋼板10及び相手鋼板12のNrateを算出する(ステップS12・第3計算ステップ)。
【0049】
最後に、制御部22は、ステップS12において算出したNrateを用いて、公知の手法(例えば、非特許文献1の方法)によりナゲット14の破断予測を実行する(ステップS13・解析ステップ)。これにより本処理は終了する。
【0050】
以上のように構成された破断予測プログラムによれば、ナゲット14の破断予測の計算を簡素化できる。より詳細には、破断予測プログラムでは、制御部22は、関数決定装置20、関数決定方法及び関数決定プログラムが決定した関数F0を用いて、ナゲット14の形状比率を算出する。更に、制御部22は、ナゲット14の形状比率を用いて、ナゲット14の破断予測を実行する。そのため、ナゲット14の形状比率の算出のために、有限要素法による解析や実験などを行う必要がない。その結果、破断予測プログラムによれば、ナゲット14の破断予測の計算を簡素化できる。
【0051】
なお、破断予測プログラムは、関数決定装置20において実行される。しかしながら、破断予測プログラムは、関数決定プログラムが実行される関数決定装置20以外の計算機において実行されてもよい。
【実施例】
【0052】
本願発明者は、関数決定装置20、関数決定方法及び関数決定プログラムの効果を確認するために、以下に説明するコンピュータシミュレーション及び実験を行った。
【0053】
本発明者は、2通りのコンピュータシミュレーションを行って、590MPa級の引っ張り強さを有する基準鋼板10と980MPa級の引っ張り強さを有する相手鋼板12とに形成されるナゲット14の形状比率を算出した。基準鋼板10の厚み及び相手鋼板12の厚みは共に1.2mmである。コンピュータシミュレーション(1)は、従来の有限要素法による解析である。コンピュータシミュレーション(2)は、本実施形態に係る関数決定方法による解析である。以下に、sum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)を示す。
【0054】
sum(C):0.24質量%
sum(Si):0.13質量%
sum(Mn):5.04質量%
【0055】
コンピュータシミュレーション(1)では、Nrateは0.41であった。一方、コンピュータシミュレーション(2)では、ParamMが2.77であり、Nrateが0.39であった。よって、コンピュータシミュレーション(1)とコンピュータシミュレーション(2)との間で、ナゲット14の形状比率がほぼ一致した。これにより、関数決定装置20、関数決定方法及び関数決定プログラムでは、有限要素法による解析よりも簡素な計算により、有限要素法による解析と同等の精度の結果を得ることができることが分かった。
【0056】
次に、本願発明者は、以下に説明する実験(1)、実験(2)、コンピュータシミュレーション(3)及びコンピュータシミュレーション(4)を行った。
図6Aは、実験(1)に用いたサンプル(1)の斜視図である。また、
図6Aは、コンピュータシミュレーション(3)に用いた解析モデル(1)の斜視図でもある。
図6Bは、解析モデル(1)のナゲット34近傍の解析メッシュデータである。
図7Aは、実験(2)に用いたサンプル(2)の斜視図である。また、
図7Aは、コンピュータシミュレーション(4)に用いた解析モデル(2)の斜視図でもある。
図7Bは、解析モデル(2)のナゲット44近傍の解析メッシュデータである。
図6A及び
図7Aは、基準鋼板30,40及び相手鋼板32,42の幅方向の中央の位置においてカットした図である。基準鋼板30,40及び相手鋼板32,42の幅方向の中央には、ナゲット34,44が位置する。
【0057】
サンプル(1)及び解析モデル(1)は、
図6Aに示すように、L字継手構造を有する。L字継手構造では、剥離負荷が主体となる。実験(1)では、相手鋼板32の下端を固定した状態で、基準鋼板30の上端を上方に引っ張る静的引っ張り試験を行って、最大荷重を測定した。また、コンピュータシミュレーション(3)では、実験(1)の静的引っ張り試験の有限要素法による解析を行って、最大荷重を算出した。解析モデル(1)では、
図6Bに示すように、母材36、HAZ(Heat Affected Zone)37及びナゲット38を定義した。母材36及びHAZ37の変形抵抗曲線及び破断限界値には、基準鋼板30及び相手鋼板32の変形抵抗曲線及び破断限界値を設定した。ナゲット38の変形抵抗曲線及び破断限界値には、関数決定装置20により求めたナゲット38の形状比率を用いて計算した変形抵抗曲線及び破断限界値を設定した。基準鋼板30及び相手鋼板32のヤング率を206GPaとし、基準鋼板30及び相手鋼板32のポアソン比を0.3とした。
【0058】
サンプル(2)及び解析モデル(2)は、
図7Aに示すように、せん断継手構造を有する。せん断継手構造では、せん断負荷が主体となる。実験(2)では、基準鋼板40の後端を固定した状態で、相手鋼板42の前端を前方に引っ張る静的引っ張り試験を行って、最大荷重を測定した。また、コンピュータシミュレーション(4)では、実験(2)の静的引っ張り試験の有限要素法による解析を行って、最大荷重を算出した。解析モデル(2)では、
図7Bに示すように、母材46、HAZ(Heat Affected Zone)47及びナゲット48を定義した。母材46及びHAZ47の変形抵抗曲線及び破断限界値には、基準鋼板40及び相手鋼板42の変形抵抗曲線及び破断限界値を設定した。ナゲット48の変形抵抗曲線及び破断限界値には、関数決定装置20により求めたナゲット48の形状比率を用いて計算した変形抵抗曲線及び破断限界値を設定した。基準鋼板40及び相手鋼板42のヤング率を206GPaとし、基準鋼板40及び相手鋼板42のポアソン比を0.3とした。
【0059】
表4は、シミュレーション結果及び実験結果を示した表である。
【0060】
【表4】
【0061】
表4に示すように、コンピュータシミュレーション(3)の結果と実験(1)の結果とが近い値となっていることが分かる。同様に、コンピュータシミュレーション(4)の結果と実験(2)の結果とが近い値となっていることが分かる。以上より、関数決定装置20、関数決定方法及び関数決定プログラムでは、実験結果に近い高い精度の結果を得ることができることが分かった。
【0062】
(その他の実施形態)
本発明に係る関数決定方法、関数決定装置、関数決定プログラム及び破断予測プログラムは、前記実施形態に係る関数決定方法、関数決定装置20、関数決定プログラム及び破断予測プログラムに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0063】
なお、ナゲット14の寸法に関するパラメータの一例として、ナゲット14の形状比率を用いた。そして、ナゲット形状比率は、ナゲット14の直径に対するナゲット14の厚みの比率であるとした。しかしながら、ナゲット14の形状比率はこれに限らない。ナゲット14の形状比率は、ナゲット14の寸法に関するパラメータであればよい。したがって、ナゲット14の形状比率は、例えば、ナゲット14の厚みに対するナゲット14の直径の比率であってもよい。また、ナゲット14の寸法に関するパラメータは、ナゲット14の厚みそのものやナゲット14の直径そのものであってもよい。
【0064】
ParamMには、C、Si及びMnの含有量が考慮される。そのため、ParamMは、sum(C)、sum(Si)及びsum(Mn)により表現される。しかしながら、ParamMには、C、Si及びMn以外の化学成分が考慮されてもよい。以下に、ParamMに、第1元素ないし第n元素が考慮されている場合を例に挙げて説明する。この場合、式(A)を一般化した式として式(1)が成立する。
【0065】
【数4】
【0066】
sum(m)は、基準鋼板に含まれる第m元素の質量%と相手鋼板に含まれる第m元素の質量%との合計の値を示す。a(m)は、sum(m)の係数を示す。mは、1以上n以下の整数を示す。制御部22は、式(A)を一般化した式(1)を用いて、ParamMを算出する。
【0067】
また、制御部22は、ステップS6における最適な近似関数の決定には、最小二乗法を用いる。しかしながら、制御部22は、最小二乗法以外の手法により、最適な近似関数を決定してもよい。制御部22は、ステップS3において得た計算結果群(1,1)〜(1,14)、(2,1)〜(2,14)、・・・、(216,1)〜(216,14)とステップS4で得た近似関数F1〜F216との差に基づいて、関数F0を決定してもよい。例えば、制御部22は、ステップS3において得た計算結果群(1,1)〜(1,14)とステップS4で得た近似関数F1との差の絶対値の和(以下、絶対値和(1))を算出する。更に、制御部22は、計算結果群(2,1)〜(2,14)、(3,1)〜(3,14)、・・・、(216,1)〜(216,14)及びステップS4で得た近似関数F2〜F216についても絶対値和(2)〜(216)を算出する。そして、制御部22は、絶対値和(1)〜(216)の中から最小の絶対値和を決定する。更に、制御部22は、最小の絶対値和に対応する近似関数を関数F0と決定する。