特許第6874601号(P6874601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874601
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20210510BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20210510BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F17/00 D
   H01F41/04 B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-162946(P2017-162946)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-41033(P2019-41033A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年4月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月21日に、Texas Instrumentsに対してサンプルを提供
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
(72)【発明者】
【氏名】名取 光夫
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−251541(JP,A)
【文献】 特開平07−161583(JP,A)
【文献】 特開2016−197624(JP,A)
【文献】 特開2017−098326(JP,A)
【文献】 特開2004−260008(JP,A)
【文献】 特開2016−143759(JP,A)
【文献】 特開平04−133509(JP,A)
【文献】 特開2012−114444(JP,A)
【文献】 特開2017−011185(JP,A)
【文献】 特開2016−032050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0341758(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0263309(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0131792(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0379750(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0035476(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 41/04
H01F 27/02
H01F 27/32
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルパターンと、
軸方向における一方側から前記コイルパターンを覆う下部領域に設けられた第1の磁性樹脂層と、
前記コイルパターンに囲まれた内径領域、前記コイルパターンを囲む外周領域、並びに、前記軸方向における他方側から前記コイルパターンを覆う上部領域に設けられた第2の磁性樹脂層と、を備え、
前記第1及び第2の磁性樹脂層は金属磁性粒子を含み、
前記第2の磁性樹脂層と対向する前記第1の磁性樹脂層の内表面からは、前記金属磁性粒子の複数の切断面が露出していることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1の磁性樹脂層の前記内表面から前記金属磁性粒子の前記切断面が露出する割合は、断面視で20%以上、80%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記金属磁性粒子の表面に絶縁コート層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の磁性樹脂層と対向する前記第2の磁性樹脂層の内表面からは、前記金属磁性粒子の複数の切断面が露出していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1の磁性樹脂層と前記第2の磁性樹脂層は、互いに同じ材料からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1及び第2の磁性樹脂層に含まれる前記金属磁性粒子は、互いに粒度分布の異なる複数の粒径を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1の磁性樹脂層の内表面とは反対側に位置する外表面は、前記内表面よりも表面粗さが大きいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1の磁性樹脂層の前記内表面と前記第2の磁性樹脂層の前記内表面との間に設けられた絶縁ギャップ層をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
キャリア板上にコイルパターンを形成する工程と、
前記コイルパターンに囲まれた内径領域、前記コイルパターンを囲む外周領域、並びに、軸方向における一方側から前記コイルパターンを覆う上部領域に、金属磁性粒子を含む第2の磁性樹脂層を形成する工程と、
金属磁性粒子を含む第1の磁性樹脂層を用意し、前記第1の磁性樹脂層の内表面から前記金属磁性粒子の切断面が露出するよう、前記内表面を研磨する工程と、
前記キャリア板を剥離した後、前記第1の磁性樹脂層の前記内表面が前記第2の磁性樹脂層と向かい合うよう、前記第1の磁性樹脂層を形成する工程と、を備えることを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項10】
前記第2の磁性樹脂層を形成する工程は、前記第2の磁性樹脂層の内表面から前記金属磁性粒子の切断面が露出するよう前記内表面を研磨する工程と、前記第2の磁性樹脂層の前記内表面が前記キャリア板と向かい合うよう前記第2の磁性樹脂層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項11】
前記キャリア板には絶縁ギャップ層が支持されており、前記コイルパターンを形成する工程は、前記絶縁ギャップ層の表面にコイルパターンを形成することにより行うことを特徴とする請求項9又は10に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、コイルパターンを埋め込む磁性樹脂層を備えたコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性樹脂層にコイルパターンが埋め込まれてなるコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1に記載されたコイル部品は、コイルパターンの下部領域に設けられた磁性樹脂層と、コイルパターンの内径領域、外周領域および上部領域に設けられた磁性樹脂層を備えており、これら2つの磁性樹脂層によってコイルパターンが埋め込まれた構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−114444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁性樹脂層は、フェライト粉や金属磁性粒子などの磁性粉を含有する樹脂からなる複合部材であるため、2つの磁性樹脂層の界面同士を直接接触させ、或いは、絶縁ギャップ層などを介して対向させると、界面部分において磁性粉の密度が低下し、磁性樹脂層の透磁率が局所的に低下するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、磁性樹脂層の透磁率の局所的な低下が防止されたコイル部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、コイルパターンと、軸方向における一方側からコイルパターンを覆う下部領域に設けられた第1の磁性樹脂層と、コイルパターンに囲まれた内径領域、コイルパターンを囲む外周領域、並びに、軸方向における他方側からコイルパターンを覆う上部領域に設けられた第2の磁性樹脂層とを備え、第1及び第2の磁性樹脂層は金属磁性粒子を含み、第2の磁性樹脂層と対向する第1の磁性樹脂層の内表面からは、金属磁性粒子の複数の切断面が露出していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1の磁性樹脂層の内表面から金属磁性粒子の複数の切断面が露出していることから、第1の磁性樹脂層の内表面近傍における透磁率の局所的な低下を防止することができる。第1の磁性樹脂層の内表面から金属磁性粒子の切断面が露出する割合は、断面視で20%以上、80%以下であっても構わない。
【0008】
本発明においては、金属磁性粒子の表面に絶縁コート層が形成されていても構わない。これによれば、第1の磁性樹脂層の体積抵抗を十分に高抵抗化することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1の磁性樹脂層と対向する第2の磁性樹脂層の内表面からは、金属磁性粒子の複数の切断面が露出していても構わない。これによれば、第2の磁性樹脂層の内表面近傍における透磁率の局所的な低下についても防止することができる。
【0010】
本発明において、第1の磁性樹脂層と第2の磁性樹脂層は、互いに同じ材料からなるものであっても構わない。これによれば、材料コストを低減することが可能となる。
【0011】
本発明において、第1及び第2の磁性樹脂層に含まれる金属磁性粒子は、互いに粒度分布の異なる複数の粒径を有していても構わない。これによれば、第1及び第2の磁性樹脂層に金属磁性粒子をより高充填することが可能となる。
【0012】
本発明において、第1の磁性樹脂層の内表面とは反対側に位置する外表面は、内表面よりも表面粗さが大きくても構わない。これによれば、外表面からの放熱性を高めることが可能となる。
【0013】
本発明によるコイル部品は、第1の磁性樹脂層の内表面と第2の磁性樹脂層の内表面との間に設けられた絶縁ギャップ層をさらに備えていても構わない。これによれば、絶縁ギャップ層が磁気ギャップとして機能することから、磁気飽和を抑制することが可能となる。
【0014】
本発明によるコイル部品の製造方法は、キャリア板上にコイルパターンを形成する工程と、コイルパターンに囲まれた内径領域、コイルパターンを囲む外周領域、並びに、軸方向における一方側からコイルパターンを覆う上部領域に、金属磁性粒子を含む第2の磁性樹脂層を形成する工程と、金属磁性粒子を含む第1の磁性樹脂層を用意し、第1の磁性樹脂層の内表面から金属磁性粒子の切断面が露出するよう、内表面を研磨する工程と、キャリア板を剥離した後、第1の磁性樹脂層の内表面が第2の磁性樹脂層と向かい合うよう、前記第1の磁性樹脂層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、第1の磁性樹脂層の内表面近傍における金属磁性粒子の密度が他の領域における密度と同等程度に維持されることから、第1の磁性樹脂層の内表面近傍における透磁率の局所的な低下を防止することができる。
【0016】
本発明において、第2の磁性樹脂層を形成する工程は、第2の磁性樹脂層の内表面から金属磁性粒子の切断面が露出するよう内表面を研磨する工程と、第2の磁性樹脂層の内表面がキャリア板と向かい合うよう第2の磁性樹脂層を形成する工程を含んでいても構わない。これによれば、第2の磁性樹脂層の内表面近傍における金属磁性粒子の密度が他の領域における密度と同等程度に維持されることから、第2の磁性樹脂層の内表面近傍における透磁率の局所的な低下を防止することができる。
【0017】
本発明において、キャリア板には絶縁ギャップ層が支持されており、コイルパターンを形成する工程は、絶縁ギャップ層の表面にコイルパターンを形成することにより行っても構わない。これによれば、第1の磁性樹脂層と第2の磁性樹脂層との間に磁気ギャップとなる絶縁ギャップ層を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、磁性樹脂層の透磁率の局所的な低下が防止されたコイル部品及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す斜視図である。
図2図2は、コイル部品10の断面図である。
図3図3は、図2に示す領域Aの拡大図である。
図4図4は、コイル部品10の製造工程を説明するための工程図である。
図5図5は、コイル部品10の製造工程を説明するための工程図である。
図6図6は、コイル部品10の製造工程を説明するための工程図である。
図7図7は、コイル部品10の製造工程を説明するための工程図である。
図8図8は、コイル部品10の製造工程を説明するための工程図である。
図9図9は、コイル部品10の製造工程を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す斜視図である。
【0022】
本実施形態によるコイル部品10は電源回路用のインダクタとして用いることが好適な表面実装型のチップ部品であり、図1に示すように、第1及び第2の磁性樹脂層11,12を有する。第1及び第2の磁性樹脂層11,12には、後述するコイルパターンが埋め込まれており、コイルパターンの一端が第1の外部端子E1に接続され、コイルパターンの他端が第2の外部端子E2に接続される。但し、本発明によるコイル部品が表面実装型のチップ部品であることは必須でなく、回路基板に埋め込むタイプのチップ部品であっても構わない。
【0023】
第1及び第2の磁性樹脂層11,12は、金属磁性粒子を含有する樹脂からなる複合部材であり、コイルパターンに電流を流すことによって生じる磁束の磁路を構成する。金属磁性粒子としては、パーマロイ系材料を用いることが好適である。また、樹脂としては、液状又は粉体である半硬化状態のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。第1及び第2の磁性樹脂層11,12は、互いに同じ材料からなるものであっても構わないし、互いに異なる材料からなるものであっても構わない。第1及び第2の磁性樹脂層11,12の材料として互いに同じ材料を用いれば、材料コストを低減することが可能となる。
【0024】
本実施形態によるコイル部品10は、一般的な積層コイル部品とは異なり、積層方向であるz方向が回路基板と平行となるよう立てて実装される。具体的には、xz面を構成する面が実装面S1として用いられる。そして、実装面S1には、第1の外部端子E1及び第2の外部端子E2が設けられる。第1の外部端子E1は、実装面S1からyz面を構成する側面S2に亘って連続的に形成され、第2の外部端子E2は、実装面S1からyz面を構成する側面S3に亘って連続的に形成される。
【0025】
図2は、本実施形態によるコイル部品10の断面図である。
【0026】
図2に示すように、第1及び第2の磁性樹脂層11,12には、銅(Cu)などの良導体からなるコイルパターンCが埋め込まれている。本実施形態においては、コイルパターンCが4層構造を有しており、各層は2ターンのスパイラル形状を有している。これにより、コイルパターンCは合計で8ターン構成となる。また、コイルパターンCの表面は、絶縁ギャップ層30及び層間絶縁層41〜44によって覆われ、これによって第1及び第2の磁性樹脂層11,12との接触が防止されている。
【0027】
第1の磁性樹脂層11は、軸方向(z方向)における一方側からコイルパターンCを覆う下部領域21に設けられている。一方、第2の磁性樹脂層12は、コイルパターンCに囲まれた内径領域22、コイルパターンCを囲む外周領域23、並びに、軸方向における他方側からコイルパターンCを覆う上部領域24に設けられている。そして、第1の磁性樹脂層11と第2の磁性樹脂層12との間には、絶縁ギャップ層30が設けられている。
【0028】
絶縁ギャップ層30は樹脂などの非磁性材料からなり、第1の磁性樹脂層11と第2の磁性樹脂層12との間に磁気ギャップを形成することによって、磁気飽和を防止する役割を果たす。但し、本発明において絶縁ギャップ層30を設けることは必須でなく、第1の磁性樹脂層11と第2の磁性樹脂層12が直接接触していても構わない。
【0029】
図3は、図2に示す領域Aの拡大図である。
【0030】
図3に示すように、第1及び第2の磁性樹脂層11,12は、樹脂材料Rに多数の金属磁性粒子Mが分散された構成を有している。金属磁性粒子Mのサイズについては特に限定されないが、互いに粒度分布の異なる複数の粒径を有していることが好ましい。これによれば、樹脂材料Rに金属磁性粒子Mをより高充填することが可能となる。金属磁性粒子Mの形状についても特に限定されないが、より高充填するためには球形であることが好ましい。金属磁性粒子Mの表面は、絶縁コート層Iが形成されていることが好ましい。これによれば、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の体積抵抗を十分に確保することが可能となる。
【0031】
第1の磁性樹脂層11の内表面11a及び第2の磁性樹脂層12の内表面12aにおいては、絶縁コート層Iの表面ではなく、球形である金属磁性粒子Mの切断面が露出している。つまり、内表面11a,12aの近傍においては金属磁性粒子Mが切断されており、その切断面が内表面11a,12aに露出している。ここで、内表面11aとは、絶縁ギャップ層30の裏面32と接する面であり、第2の磁性樹脂層12と対向する面を指す。同様に、内表面12aとは、絶縁ギャップ層30の表面31と接する面であり、第1の磁性樹脂層11と対向する面を指す。
【0032】
このように、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の内表面11a,12aの近傍においては金属磁性粒子Mが切断されており、その切断面が露出していることから、金属磁性粒子Mが切断されていない場合と比べ、内表面11a,12aの近傍における金属磁性粒子Mの密度が高められる。つまり、同じ金属磁性粒子Mは、第1の磁性樹脂層11と第2の磁性樹脂層12の両方には存在し得ないため、内表面11a,12aの近傍において金属磁性粒子Mが切断されていない場合、内表面11a,12aの近傍において金属磁性粒子Mの密度が低下し、局所的に透磁率が低下する。しかしながら、本実施形態においては、内表面11a,12aの近傍において金属磁性粒子Mが切断され、その切断面が内表面11a,12aから露出する構成を有していることから、金属磁性粒子Mの密度が確保され、局所的な透磁率が低下を防止することが可能となる。
【0033】
具体的には、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の内表面11a,12aにおいては、金属磁性粒子Mが露出する割合が断面視で20%以上、80%以下であることが好ましい。例えば、図3に示す断面において、第1の磁性樹脂層11の内表面11aに露出する金属磁性粒子Mの長さLmの合計値は、当該断面の長さLの20%以上、80%以下である。これに対し、内表面11a,12aの近傍において金属磁性粒子Mが切断されていない場合、金属磁性粒子Mを高充填した場合であっても、金属磁性粒子Mの露出割合は20%未満となり、内表面11a,12aの近傍において透磁率が低下する。一方、金属磁性粒子Mの充填率には限界があるため、内表面11a,12aの近傍において金属磁性粒子Mが切断されている場合であっても、金属磁性粒子Mの露出割合を80%超とすることは困難である。
【0034】
図3に示す構造は、後述する製造プロセスにおいて、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の内表面11a,12aを研磨することによって得られる。このため、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の内表面11a,12aは、表面粗さが小さい。これに対し、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の他の面、例えば、内表面11a,12aとは反対側に位置する外表面は研磨されておらず、したがって内表面11a,12aよりも表面粗さが大きい。これによれば、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の表面積が増大することから、高い放熱性を確保することが可能となる。
【0035】
このように、本実施形態によるコイル部品10は、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の内表面11a,12aにおいて金属磁性粒子Mの切断面が露出していることから、局所的な透磁率の低下を防止することが可能となる。但し、本発明において、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の内表面11a,12aの両方において金属磁性粒子Mの切断面を露出させることは必須でなく、少なくとも、第1の磁性樹脂層11の内表面11aにおいて金属磁性粒子Mの切断面が露出していれば足りる。
【0036】
次に、本実施形態によるコイル部品10の製造方法について説明する。
【0037】
図4図9は、本実施形態によるコイル部品10の製造工程を説明するための工程図である。
【0038】
まず、図4(a)に示すように、所定の強度を有するキャリア板50を用意し、その上面に絶縁ギャップ層30を形成する。キャリア板50の材料については、所定の機械的強度を確保できる限り特に限定されず、ガラスやフェライトなどを用いることができる。また、絶縁ギャップ層30の形成方法についても特に限定されず、スピンコート法や印刷法によってキャリア板50の表面に樹脂材料を塗布することによって形成しても構わないし、あらかじめフィルム状に成型した絶縁ギャップ層30をキャリア板50に貼り付けても構わない。
【0039】
次に、図4(b)に示すように、絶縁ギャップ層30の表面31にコイルパターンCを構成する1層目の導体層C1を形成する。導体層C1の形成方法としては、スパッタリング法などの薄膜プロセスを用いて下地金属膜を形成した後、電解メッキ法を用いて所望の膜厚までメッキ成長させることが好ましい。以降に形成するコイルパターンCの2層目〜4層目の導体層C2〜C4の形成方法も同様である。
【0040】
次に、図4(c)に示すように、1層目の導体層C1を覆う層間絶縁層41を形成した後、層間絶縁層41の上面に2層目の導体層C2を形成する。その後、図5(a)〜図5(c)に示すように、この工程を繰り返すことによって、層間絶縁層41〜44と、コイルパターンCの導体層C1〜C4を交互に形成する。
【0041】
次に、図6(a)に示すように、ミリング又はドライエッチングを行うことにより、平面視でコイルパターンCの内径領域22及び外周領域23に相当する部分の層間絶縁膜41〜44を除去する。この時、第1の磁性樹脂層11と第2の磁性樹脂層12の間に絶縁ギャップ層30を残存させる場合には、絶縁ギャップ層30を除去してはならない。これにより、コイルパターンCに囲まれた内径領域22、並びに、コイルパターンCの外側に位置する外周領域23に空間が形成される。
【0042】
次に、図6(b)に示すように、PET樹脂などからなるフィルム51上に保持された半硬化状態の第2の磁性樹脂層12を用意し、第2の磁性樹脂層12の内表面12aから金属磁性粒子Mの切断面が露出するよう内表面12aを研磨する。
【0043】
その後、図6(c)に示すように、第2の磁性樹脂層12の内表面12aがキャリア板50と向かい合うようにプレスする。これにより、コイルパターンCの内径領域22、外周領域23及び上部領域24に第2の磁性樹脂層12が形成されるとともに、第2の磁性樹脂層12に含まれる金属磁性粒子Mの切断面が絶縁ギャップ層30の表面31と接する構造が得られる。或いは、層間絶縁膜41〜44の除去によって形成された空間に、金属磁性粒子を含有する樹脂からなる半硬化状態の複合部材を印刷法によって埋め込んでも構わない。但し、この場合には、第2の磁性樹脂層12に含まれる金属磁性粒子Mは切断されず、内表面12aにおける金属磁性粒子Mの密度は低下する。
【0044】
次に、図7(a)に示すように、フィルム51を剥離した後、第2の磁性樹脂層12をプレスすることによって、コイルパターンCの内径領域22や外周領域23に生じている隙間を第2の磁性樹脂層12によって完全に埋める。
【0045】
次に、図7(b)に示すように、接着剤61を介して第2の磁性樹脂層12にサポート板60を貼り付けた後、図7(c)に示すようにキャリア板50を剥離する。キャリア板50を剥離する方法としては、機械的な剥離、或いは、レーザー照射による熱剥離を挙げることができる。これにより、絶縁ギャップ層30の裏面32が露出した状態となる。尚、サポート板60は、キャリア板50を剥離する工程における支持部材であり、キャリア板50を剥離する工程において全体を支持する必要がない場合には、サポート板60を貼り付ける必要はない。
【0046】
次に、図8(a)に示すように、サポート板60を剥離した後、図8(b)に示すように上下反転させる。そして、PET樹脂などからなるフィルム52上に保持された半硬化状態の第1の磁性樹脂層11を用意し、第1の磁性樹脂層11の内表面11aから金属磁性粒子Mの切断面が露出するよう内表面11aを研磨する。
【0047】
その後、図8(c)に示すように、第1の磁性樹脂層11の内表面11aがキャリア板50と向かい合うようにプレスする。これにより、絶縁ギャップ層30の裏面32に第1の磁性樹脂層11が形成され、第1の磁性樹脂層11に含まれる金属磁性粒子Mの切断面が絶縁ギャップ層30の裏面32と接する構造が得られる。
【0048】
次に、図9(a)に示すように、第1及び第2の磁性樹脂層11,12をプレスすることによって、第1及び第2の磁性樹脂層11,12に圧力を加える。その後、半硬化状態である第1及び第2の磁性樹脂層11,12に熱や紫外線を与えることによって、第1及び第2の磁性樹脂層11,12を完全に硬化させる。その後、フィルム52を剥離する。
【0049】
そして、図9(b)に示すように、ダイシングによって個片化を行った後、図1に示す端子電極E1,E2を形成すれば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。
【0050】
このように、本実施形態によれば、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の内表面11a,12aを研磨した後にプレスを行っていることから、内表面11a,12aから金属磁性粒子Mの断面が露出した状態を得ることができる。これにより、第1及び第2の磁性樹脂層11,12の内表面11a,12aの内表面近傍における透磁率の局所的な低下を防止することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0052】
例えば、上記実施形態におけるコイル部品は、8ターンのスパイラルパターンからなるコイルパターンCを備えているが、本発明においてコイルパターンの具体的なパターン形状がこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
10 コイル部品
11 第1の磁性樹脂層
11a 第1の磁性樹脂層の内表面
12 第2の磁性樹脂層
12a 第2の磁性樹脂層の内表面
21 下部領域
22 内径領域
23 外周領域
24 上部領域
30 絶縁ギャップ層
31 絶縁ギャップ層の表面
32 絶縁ギャップ層の裏面
41〜44 層間絶縁層
50 キャリア板
51,52 フィルム
60 サポート板
61 接着剤
C コイルパターン
C1〜C4 導体層
E1,E2 端子電極
I 絶縁コート層
M 金属磁性粒子
R 樹脂材料
S1 実装面
S2,S3 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9