特許第6874625号(P6874625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874625
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/514 20060101AFI20210510BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20210510BHJP
   H01R 31/08 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H01R13/514
   H01R13/42 F
   H01R31/08 Q
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-189954(P2017-189954)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-67562(P2019-67562A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 康平
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−181078(JP,A)
【文献】 実開昭63−111777(JP,U)
【文献】 特開2001−203026(JP,A)
【文献】 特開2016−058357(JP,A)
【文献】 実開平05−053154(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0141786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/514
H01R 13/518
H01R 13/42
H01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を収容可能なキャビティを有するサブハウジングが上下に3段以上積層されて構成された積層ハウジングを備えるコネクタであって、
前記積層ハウジングは、最上段に配される最上段サブハウジングと、最上段サブハウジングに対向して配される中段サブハウジングと、最下段に配される最下段サブハウジングと、を前記サブハウジングとして備え、
前記キャビティの上面側または下面側には、ランスが上下方向に撓み可能に形成され、前記ランスは前記端子に対して後方から係止することで、前記端子を前記キャビティに抜止状態に保持可能であり、
前記最上段サブハウジングの下面、前記中段サブハウジングの上面、および前記最下段サブハウジングの上面側には、前記キャビティを外方に連通させる抜止受部が形成され、前記キャビティは、前記抜止受部を通じて前記サブハウジングの外部に連通しており、
前記ランスは、前記サブハウジングにおいて、前記キャビティが前記抜止受部により外方に連通された側に設けられており、
前記最上段サブハウジングは、前記抜止受部を通じて前記中段サブハウジングの前記キャビティ内に進入するとともに同キャビティに収容された前記端子を抜け止めする抜止部を備え、
前記中段サブハウジングは、前記抜止受部を通じて前記最上段サブハウジングの前記キャビティ内に進入するとともに同キャビティに収容された前記端子を抜け止めする抜止部と、前記抜止受部を通じて前記最下段サブハウジングの前記キャビティ内に進入するとともに同キャビティに収容された前記端子を抜け止めする抜止部と、を備え
前記端子は、角筒部と、前記角筒部の後方に設けられ電線に接続された電線接続部と、を備え、
前記キャビティは、前記角筒部が収容される前側キャビティと、前記電線接続部が収容される後側キャビティと、を備え、
前記ランスは前記前側キャビティに配置され、前記抜止受部は前記後側キャビティに配置されているコネクタ。
【請求項2】
前記最上段サブハウジングと前記中段サブハウジングとが積層された状態において、前記最上段サブハウジングに配された前記抜止部と、前記中段サブハウジングに配された前記一対の抜止部とは、前後方向において同じ位置に配される請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記中段サブハウジングは、前記最上段サブハウジングに対向して配され前記端子を収容可能な第二段サブハウジングと、前記第二段サブハウジングと前記最下段サブハウジングの間に配され前記端子を収容可能な少なくとも一つの追加サブハウジングと、を備え、
前記追加サブハウジングの下面および前記第二段サブハウジングの下面には、それと対向して配された前記サブハウジングの内部に収容された端子を抜け止めする前記抜止部が互いに同一の抜止構造で設けられ、
前記追加サブハウジングの上面および前記最下段サブハウジングの上面には、それと対向して配された前記サブハウジングの前記抜止部を受け入れ可能な前記抜止受部が互いに同一の抜止受構造で設けられている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記積層ハウジングに前記端子の側方を覆う側壁をそれぞれ備えて互いに左右に並んで配置可能な第一コネクタと第二コネクタとを備え、
前記第一コネクタの前記側壁と前記第二コネクタの前記側壁には、前後方向において互いに異なる位置に誤結防止部が埋め込み形成され、
前記誤結防止部は、前記サブハウジング毎に設けられ、それぞれ所定の積層順において互いに嵌合可能となる形状とされている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のハウジングを積層して構成され、各ハウジング内に端子を備えるコネクタとして、例えば特許文献1のものが知られている。このコネクタは、互いに積層状態に組み付けられる第1ハウジング本体と第2ハウジング本体とを備えている。
【0003】
第1、第2ハウジング本体のそれぞれの内部には、左右に並び隔壁で仕切られた複数のキャビティが設けられ、各キャビティ内には端子金具が挿入されている。第1ハウジング本体において、第2ハウジング本体に対向して配される対向面には、各隔壁から第2ハウジング本体に向かって突出する抜止部と、各隔壁を凹ませた形態の抜止受部とが、左右に交互に並んで設けられている。また、第2ハウジング本体において、第1ハウジング本体に対向して配される対向面には、各隔壁から第1ハウジング本体に向かって突出する抜止部と、各隔壁を凹ませた形態の抜止受部とが、左右に交互に並んで設けられている。
【0004】
第1、第2ハウジングの組み付け時には、第1抜止部が第2抜止受部に嵌合挿入されるとともに、第2抜止部が第1抜止受部に嵌合挿入される。これにより、第1、第2抜止部がそれぞれ第2、第1端子金具に対向して係止可能に配置され、もって第1、第2端子金具の第1、第2キャビティから後方への抜け出しが確実に規制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−4737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしこの技術では、第1ハウジングと第2ハウジングとが互いの端子金具に係止することで各端子金具の抜け出しが規制されるため、ハウジングひいては端子金具を2段までしか積層することができない。
【0007】
これに対しては、例えばサブハウジングの上面側には係止孔を設けるとともに、下面に下方に突出する抜止部を設けた構成とし、このサブハウジングを3段以上積層する構成が考えられる。この場合、各抜止部をそれと対向して配されたサブハウジングの係止孔に上方から嵌合挿入させ、係止孔内の端子に係止させることで、最上段以外の端子を抜止することができる。しかしこの構成では、最上段に配されたサブハウジング内の端子は、他のサブハウジングによって抜止できない。したがって、端子を内部に収容せず最上段のサブハウジングに収容された端子を抜止するための抜止部のみを備えた構成品が別途必要となり、構成品数が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された技術に係るコネクタは、端子を収容可能なサブハウジングが上下に3段以上積層されて構成された積層ハウジングを備えるコネクタであって、前記積層ハウジングは、最上段に配される最上段サブハウジングと、最上段サブハウジングに対向して配される中段サブハウジングと、最下段に配される最下段サブハウジングと、を前記サブハウジングとして備え、前記最上段サブハウジングは、前記中段サブハウジングの内部に収容された前記端子を抜け止めする抜止部を備え、前記中段サブハウジングは、前記最上段サブハウジングの内部に収容された前記端子と前記最下段サブハウジングの内部に収容された前記端子とを抜け止めする少なくとも一対の抜止部を備えることに特徴を有する。
【0009】
この構成によれば、最上段サブハウジングが中段に配されたサブハウジングに収容された端子に係止するとともに、中段サブハウジングが、最上段サブハウジングに収容された端子と、中段サブハウジングの下面に対向して積層された最下段サブハウジングに収容された端子とに係止するから、3段のサブハウジングのみで構成された積層ハウジングにおいて各サブハウジングの内部に端子を収容することができる。
【0010】
本明細書に開示された技術に係る実施態様として、次の構成が好ましい。
【0011】
(1)前記最上段サブハウジングと前記中段サブハウジングとが積層された状態において、前記最上段サブハウジングに配された前記抜止部と、前記中段サブハウジングに配された前記一対の抜止部とは、前後方向において同じ位置に配される。
【0012】
この構成によれば、前後方向において同じ位置に配された各抜止部に対応して、端子を積層ハウジング内において前後方向の位置を揃えて配置することができる。したがって、コネクタを前後方向に大型化することなく各端子の抜け止めをすることができる。
【0013】
(2)前記中段サブハウジングは、前記最上段サブハウジングに対向して配され前記端子を収容可能な第二段サブハウジングと、前記第二段サブハウジングと前記最下段サブハウジングの間に配され前記端子を収容可能な少なくとも一つの追加サブハウジングと、を備え、前記追加サブハウジングの下面および前記第二段サブハウジングの下面には、それと対向して配された前記サブハウジングの内部に収容された端子を抜け止めする前記抜止部が互いに同一の抜止構造で設けられ、前記追加サブハウジングの上面および前記最下段サブハウジングの上面には、それと対向して配された前記サブハウジングの前記抜止部を受け入れ可能な抜止受部が互いに同一の抜止受構造で設けられている。
【0014】
この構成によれば、追加サブハウジングを任意の数だけ追加して積層することで、4段以上のサブハウジングのみで構成された積層ハウジングにおいて各サブハウジングの内部に端子を収容することができる。
【0015】
(3)前記積層ハウジングに前記端子の側方を覆う側壁をそれぞれ備えて互いに左右に並んで配置可能な第一コネクタと第二コネクタとを備え、前記第一コネクタの前記側壁と前記第二コネクタの前記側壁には、前後方向において互いに異なる位置に誤結防止部が埋め込み形成され、前記誤結防止部は、前記サブハウジング毎に設けられ、それぞれ所定の積層順において互いに嵌合可能となる形状とされている。
【0016】
この構成によれば、第一コネクタおよび第二コネクタにはサブコネクタ毎に異なる形状の誤結防止部が設けられているから、各サブコネクタを積層する際に、誤った積層順とされることを防ぐことができる。また、第一コネクタの誤結防止部と第二コネクタの誤結防止部とは前後方向において互いに異なる位置に形成されているから、両コネクタ間における各サブハウジングの取り違えを防ぐことができる。さらに、各誤結防止部は各コネクタにおいて端子を覆う側壁から突出しないから、誤結防止部を設けてもコネクタが大型化しない。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に開示された技術に係るコネクタによれば、端子を3段以上積層することが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1のコネクタと中継コネクタを示す斜視図
図2】コネクタを示す正面図
図3図2のA−A断面図
図4】最上段サブハウジングを示す斜視図
図5】中段サブハウジングを示す斜視図
図6】最下段サブハウジングを示す斜視図
図7】最上段サブハウジングの上面および下面を示す図
図8】中段サブハウジングの上面および下面を示す図
図9】最下段サブハウジングの上面および下面を示す図
図10】各サブハウジングが正規に積層された状態を示す図
図11】実施形態2のコネクタを示す斜視図
図12】追加サブハウジングを示す斜視図
図13】実施形態3のコネクタを示す斜視図
図14】コネクタの側面図
図15】コネクタの平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、実施形態1を図1から図10によって説明する。
【0020】
本実施形態のジョイントコネクタ10(コネクタの一例)は、車両内においてハーネス内における電線の接続に使用されるジョイントコネクタである。ジョイントコネクタ10は、図1に示すように、1つの中継コネクタ20の前後に設けられた嵌合凹部21のそれぞれに対して、2つが左右に並んで嵌合可能に形成されている。各ジョイントコネクタ10の内部には後述するように端子Tが収容されており、中継コネクタ20の内部には図示しない中継端子が収容されている。中継コネクタ20にジョイントコネクタ10を嵌合すると、コネクタ内の端子Tと中継コネクタ20内の中継端子とが導通可能に接続され、例えば1つのジョイントコネクタ10から入力された信号を他のジョイントコネクタ10に分岐して出力することができるようになっている。
【0021】
各ジョイントコネクタ10の天面には、上方に突出して前後に延びる1対のガイドリブ12が設けられている。各ガイドリブ12のうち、中継コネクタ20の嵌合凹部21に向かって左側に配される第一ジョイントコネクタ10Lのガイドリブ12Lと、右側に配される第二ジョイントコネクタ10Rのガイドリブ12Rは、中継コネクタ20への嵌合方向に直交する方向において互いに若干異なった位置に設けられている。これにより、中継コネクタ20内に挿入する際に第一ジョイントコネクタ10Lと第二ジョイントコネクタ10Rの取り違えを防ぐようになっている。なお、第一ジョイントコネクタ10Lと第二ジョイントコネクタ10Rのその他の構成は同一であるため、以下においては第一ジョイントコネクタ10Lのみについて説明し、他方については説明を省略する。
【0022】
第一ジョイントコネクタ10Lは、図1に示すように、合成樹脂製の積層ハウジング11を有し、この積層ハウジング11は3種類のサブハウジングS1,S2,S3(以下「各サブハウジングS1〜S3」といい、略してサブハウジングSという場合もある)を積層することにより構成されている。これらのサブハウジングSは、正規に積層された状態において上段側から順に、最上段サブハウジングS1,中段サブハウジングS2,最下段サブハウジングS3とされている。ここで、上下方向とは、各サブハウジングSの積層方向を基準として最上段サブハウジングS1側を上方とする。
【0023】
各サブハウジングSは、図2から図6に示すように、扁平な直方体形状をなしている。各サブハウジングSはそれぞれ、前後方向に貫通し幅方向に並んで配置された6つのキャビティ31と、各キャビティ31の間に配された5つの隔壁37と、を備えている。各キャビティ31は、図2に示すように、各サブハウジングS1〜S3が正規に積層された場合に、他のサブハウジングSの各キャビティ31と上下に並ぶように配されている。各キャビティ31には、後方から端子Tを収容可能である。
【0024】
各キャビティ31の上面側または下面側には、図3に示すように、ランス32が上下方向に撓み可能に形成されている。ランス32は端子Tに対して後方から係止することで、端子Tをキャビティ31に抜止状態に保持可能である。
【0025】
図4から図6に示すように、最上段サブハウジングS1の下面、中段サブハウジングS2の上面、および最下段サブハウジングS3の上面側には、各キャビティ31を外方に連通させる抜止受部34が形成されている。各キャビティ31は、抜止受部34を通じて各サブハウジングSの外部に連通している。なお、本実施形態においては、各抜止受部34は、各キャビティ31の幅方向における半分を外方に連通させている。
【0026】
また、最上段サブハウジングS1の下面、中段サブハウジングS2の上面、および中段サブハウジングS2の下面には、各サブハウジングSが正規に積層された場合に、対向して配されたサブハウジングS(以下「相手側サブハウジングS」ということがある)の抜止受部34を通じて相手側サブハウジングSのキャビティ31(以下、相手側キャビティ31という)内に進入する抜止部35が設けられている。抜止部35は、図10に示すように、隔壁37または各サブハウジングSの側壁38と連結して設けられている。なお、本実施形態においては、各抜止部35は、各キャビティ31の幅方向における半分を閉鎖しつつ、相手側キャビティ31に向かって真っ直ぐ突出している。抜止部35は、図3に示すように、キャビティ31に挿入された端子Tの角筒部に後方から係止することで、端子Tをキャビティ31に抜止状態に保持可能である。
【0027】
なお、前述のランス32は、図4から図6に示すように、各サブハウジングSにおいて、キャビティ31が抜止受部34により外方に連通された側(すなわち、最上段サブハウジングS1においては下面側、中段サブハウジングS2においては上面側、および最下段サブハウジングS3においては上面側)に設けられている。これにより、端子Tは、ランス32による係止と抜止部35による係止とにより、二重で抜止状態に保持される。
【0028】
最上段サブハウジングS1の下面には、図4(B)に示すように、抜止受部34と抜止部35とが左右に互い違いに並んで配されている。詳しくは、図7(B)に示すように、隣り合う2つのキャビティ31を幅方向における半分ずつ閉鎖して外方に突出する幅広抜止部35Cが2つ、互いから離間して配されている。その両側には、1つのみのキャビティ31の幅方向における半分を閉鎖して外方に突出する幅狭抜止部35Dが、各幅広抜止部35Cから離間して配されている。そして、各抜止部35C,35Dの各間隙に、隣り合う2つのキャビティ31を外方に連通させる幅広抜止受部34Cが配されている。なお以下においては、幅広抜止部35Cおよび幅狭抜止部35Dの構成およびそれらの配置関係を、下方抜止構造35Aという。
【0029】
これと対応して、中段サブハウジングS2の上面においては、図5(A)に示すように、抜止部35と抜止受部34とが左右に互い違いに並んで配されている。詳しくは、図8(A)に示すように、上述の幅広抜止受部34Cが2つ、互いから離間して配され、その両側には1つのみのキャビティ31を外方に連通させる幅狭抜止受部34Dが、各幅広抜止受部34Cから離間して配されている。そして、各抜止受部34C,34Dの間に、上述の幅広抜止部35Cが配されている。なお以下においては、幅広抜止受部34Cおよび幅狭抜止受部34Dの構成およびそれらの配置関係を、まとめて上方抜止受構造34Aという。
【0030】
中段サブハウジングS2の下面においては、図5(B)に示すように、抜止受部34は配されず、抜止部35が左右に間欠的に並んで配されている。詳しくは、図8(B)に示すように、抜止部35として最上段サブハウジングS1の下面(図7(B)参照)と同様の下方抜止構造35Aが配されるとともに、下方抜止構造35A内の間隙(すなわち各抜止部35C,35Dの間)には、中段サブハウジングS2の底壁と前後に連結して形成された下面閉鎖部36Lが配されている。下面閉鎖部36Lは、図10に示すように、左右方向の中央部が隔壁37と連結されるとともに、左右方向の両端部が各抜止部35C,35Dと連結されて、各抜止部35C,35Dとともに各キャビティ31を全幅に亘って閉鎖している。
【0031】
最下段サブハウジングS3の上面においては、図6(A)に示すように、抜止部35は配されず、抜止受部34が左右に間欠的に並んで配されている。詳しくは、図9(A)に示すように、抜止受部34として中段サブハウジングS2の上面(図8(A)参照)と同様の上方抜止受構造34Aが配されるとともに、上方抜止受構造34A内の間隙(すなわち各抜止受部34C,34Dの間)には、最下段サブハウジングS3の天井壁部と連結して形成された上面閉鎖部36Uが配されている。上面閉鎖部36Uは、図10に示すように、左右方向の中央部が隔壁37と連結され、各キャビティ31の幅方向における半分を閉鎖している。
【0032】
図10に示すように、各サブハウジングS内に端子Tが収容され、各サブハウジングS1〜S3が正規に積層された場合、最上段サブハウジングS1の各キャビティ31と中段サブハウジングS2の各キャビティ31の間においては、最上段サブハウジングS1の抜止部35と中段サブハウジングS2の抜止部35とが、左右に互い違いに並んでいる。そして、最上段サブハウジングS1の抜止部35が、中段サブハウジングS2のキャビティ31において端子Tの幅の略半分に係止するとともに、中段サブハウジングS2の抜止部35が最上段サブハウジングS1のキャビティ31において端子Tの幅の略半分に下方から係止している。
【0033】
また、中段サブハウジングS2の各キャビティ31と最下段サブハウジングS3の各キャビティ31の間においては、中段サブハウジングS2の下面閉鎖部36Lに対して最下段サブハウジングS3の上面閉鎖部36Uが当接し、中段サブハウジングS2からの荷重を隔壁37に伝えている。そして、中段サブハウジングS2の抜止部35が、最下段サブハウジングS3のキャビティ31において、端子Tの幅略半分に係止している。
【0034】
各サブハウジングS1〜S3が正規に積層された状態において、最上段サブハウジングS1の抜止部35、中段サブハウジングS2の上面の抜止部35、および下面の抜止部35は、図3に示すように、前後方向において前端位置が揃うように配置されている。
【0035】
このように、本実施形態に係るコネクタ10は、端子Tを収容可能なサブハウジングSが上下に3段以上積層されて構成された積層ハウジング11を備えるコネクタ10であって、前記積層ハウジング11は、最上段に配される最上段サブハウジングS1と、最上段サブハウジングS1に対向して配される中段サブハウジングS2と、最下段に配される最下段サブハウジングS3と、を前記サブハウジングSとして備え、前記最上段サブハウジングS1は、前記中段サブハウジングS2の内部に収容された前記端子Tを抜け止めする抜止部35を備え、前記中段サブハウジングS2は、前記最上段サブハウジングS1の内部に収容された前記端子Tと前記最下段サブハウジングS3の内部に収容された前記端子Tとを抜け止めする少なくとも一対の抜止部35を備える。
【0036】
この構成によれば、最上段サブハウジングS1が中段に配された中段サブハウジングS2に収容された端子Tに係止するとともに、中段サブハウジングS2が、最上段サブハウジングS1に収容された端子Tと、中段サブハウジングS2の下面に対向して積層された最下段サブハウジングS3に収容された端子Tとに係止するから、3段のサブハウジングSのみで構成された積層ハウジング11において各サブハウジングSの内部に端子Tを収容することができる。
【0037】
また、前記最上段サブハウジングS1と前記中段サブハウジングS2とが積層された状態において、前記最上段サブハウジングS1に配された前記抜止部35と、前記中段サブハウジングS2に配された前記一対の抜止部35とは、前後方向において同じ位置に配される。
【0038】
この構成によれば、前後方向において同じ位置に配された各抜止部35に対応して、端子Tを積層ハウジング内において前後方向の位置を揃えて配置することができる。したがって、コネクタ10を前後方向に大型化することなく各端子Tの抜け止めをすることができる。
【0039】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図11によって説明する。本実施形態のコネクタ110は、図11に示すように、実施形態1の積層ハウジング11に追加サブハウジングS4を追加し、4つのサブハウジングSを積層した構成としている。実施形態1と同じ構成、作用、および効果についてはその説明を省略するものとし、実施形態1と同じ構成については同一の名称および符号を用いるものとする。
【0040】
本実施形態の積層ハウジング111は、最上段サブハウジングS1と、中段サブハウジングS2(第二段サブハウジングの一例)と、追加サブハウジングS4と、最下段サブハウジングS3とを備えて構成されている。追加サブハウジングS4は、図11に示すように、扁平な直方体形状をなしている。追加サブハウジングS4は、前後方向に貫通し幅方向に並んで配置された6つのキャビティ31と、各キャビティ31の間に配された5つの隔壁37とを備えている。追加サブハウジングS4の各キャビティ31は、端子Tを収容可能である。
【0041】
追加サブハウジングS4の上面は、図12(A)に示すように、最下段サブハウジングS3の上面(図6(A)参照)と同様の構成となっている。すなわち、図9(A)に示すように、抜止受部34として上方抜止受構造34Aが設けられるとともに、上方抜止受構造34A内の間隙(すなわち各抜止受部34C,34Dの間)には、追加サブハウジングS4の天井壁部と連結して形成された上面閉鎖部36Uが設けられている。
【0042】
追加サブハウジングS4の下面は、図12(B)に示すように、中段サブハウジングS2の下面(図5(B)参照)と同様の構成となっている。すなわち、図8(B)に示すように、抜止部35として下方抜止構造35Aが設けられるとともに、下方抜止構造35A内の間隙(すなわち、抜止部35C、35Dの間)には、追加サブハウジングS4の底壁と連結して形成された下面閉鎖部36Lが設けられている。
【0043】
これにより、追加サブハウジングS4は、中段サブハウジングS2と最下段サブハウジングS3との間に追加可能となっている。言い換えれば、実施形態1で説明した中段サブハウジングS2は、本実施形態においては中段サブハウジングS2と1つの追加サブハウジングS4とによって構成され、全体としてその内部に2段の端子が収容されている。
【0044】
すなわち、各サブハウジングS1,S2,S4,S3が下方に向かってこの順で正規に積層された場合、中段サブハウジングS2の下面に設けられた下方抜止構造35Aが、追加サブハウジングS4の上面に設けられた上方抜止受構造34Aに嵌合する。これにより、追加サブハウジングS4内に収容された端子Tが、中段サブハウジングS2の抜止部35に係止されて抜け止めされる。同様に、追加サブハウジングS4の下面に設けられた下方抜止構造35Aが、最下段サブハウジングS3の上面に設けられた上方抜止受構造34Aに嵌合する。これにより、最下段サブハウジングS3内に収容された端子Tが、追加サブハウジングS4の抜止部35に係止されて抜止される。
【0045】
なお、積層ハウジング111における追加ハウジングの使用可能数は1つに限定されず、中段サブハウジングS2と最下段サブハウジングS3の間に任意の数の追加サブハウジングS4を追加して使用することが可能である。これにより、例えば上述のように積層された追加サブハウジングS4と最下段サブハウジングS3との間にさらに別の追加サブハウジングS4を1つ追加した場合、5つのサブハウジングSを積層してなる積層ハウジングとなる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、前記中段サブハウジングS2は、前記最上段サブハウジングS1に対向して配され前記端子Tを収容可能な第二段サブハウジングS2と、前記第二段サブハウジングS2と前記最下段サブハウジングS3の間に配され前記端子Tを収容可能な少なくとも一つの追加サブハウジングS4と、を備え、
前記追加サブハウジングS4の下面および前記第二段サブハウジングS2の下面には、それと対向して配された前記サブハウジングSの内部に収容された端子Tを抜け止めする前記抜止部35が互いに同一の抜止構造35Aで設けられ、
前記追加サブハウジングS4の上面および前記最下段サブハウジングS3の上面には、それと対向して配された前記サブハウジングSの前記抜止部35を受け入れ可能な抜止受部34が互いに同一の抜止受構造34Aで設けられている。
【0047】
この構成によれば、追加サブハウジングS4を任意の数だけ追加して積層することで、4段以上のサブハウジングSのみで構成された積層ハウジング111において各サブハウジングSの内部に端子Tを収容することができる。
【0048】
<実施形態3>
次に、本明細書に開示された技術に係る実施形態2を図13から図15によって説明する。本実施形態のコネクタ210は、実施形態1の第一ジョイントコネクタ10Lと第二ジョイントコネクタ10Rに、互いに異なる位置に誤結防止部240L,240Rを設け、各サブハウジングSを積層する際に左右に隣り合うサブハウジングS1〜S3の取り違えを防ぐ構成としたものである。実施形態1と対応する構成については、実施形態1の符号に200を足した符号を用いるものとする。実施形態1と同じ構成、作用、および効果についてはその説明を省略するものとし、実施形態1と同じ構成については同一の名称および符号を用いるものとする。
【0049】
本実施形態の第一ジョイントコネクタ210Lには、図13(B)に示すように、第一誤結防止部240Lが設けられ、第二ジョイントコネクタ210Rには、図13(A)に示すように、第二誤結防止部240Rが設けられている。第一誤結防止部240Lと第二誤結防止部240Rは、第一ジョイントコネクタ210Lと第二ジョイントコネクタ210Rとが前面を揃えて配置された状態において、前後方向において互いに異なる位置に設けられている。なお、第二誤結防止部240Rのその他の構成は第一誤結防止部240Lと同様であるため、以下においては第一誤結防止部240Lのみについて説明し、第二誤結防止部240Rの構成については符号のLをRに代えた図示のみとして説明を省略する。
【0050】
第一誤結防止部240Lは、側方突部241Lと、嵌合凹部242Lと、下方突部243Lとによって構成されている。そして、これらのうち一つまたは複数が、第一積層ハウジング211Lを構成する各第一サブハウジングS201L、S202L,S203Lのそれぞれに配されている。
【0051】
詳しくは、図14(B)に示すように、第一最上段サブハウジングS201Lの左右両側壁238Lには、図15(B)に示すように、側方突部241Lが下方に突出することなく外側方に突出して設けられている。
【0052】
第一中段サブハウジングS202Lの左右両側壁238Lには、嵌合凹部242Lと、下方突部243Lと、が設けられている。嵌合凹部242Lは、第一中段サブハウジングS202Lの両側壁238Lを内側に向かって陥没させた形状に形成され、上方に向かって開口して側方突部241Lを上方から受け入れ可能となっている。下方突部243Lは、第一中段サブハウジングS202Lの両側壁238Lの一部を外側方に突出させることなく下方に突出し、その突出形状は、嵌合凹部242Lに嵌合可能な形状とされている。
【0053】
第一最下段サブハウジングS203Lの左右両側壁238Lには、嵌合凹部242Lのみが設けられている。この嵌合凹部242Lは、第一中段サブハウジングS202Lに設けられた嵌合凹部242Lと同形状とされている。
【0054】
各第一サブハウジングS201L〜S203Lが正規に積層された状態において、第一最上段サブハウジングS201Lの側方突部241Lは、第一中段サブハウジングS202Lの嵌合凹部242Lに上方から嵌合している。第一中段サブハウジングS202Lの下方突部243Lは、第一最下段サブハウジングS203Lの嵌合凹部242Lに上方から嵌合している。各側方突部241Lの突出端は、第一中段サブハウジングS202Lの各側壁238Lと面一となっている。これにより、第一誤結防止部240Lは全体が第一積層ハウジング211Lの両側壁238から突出しない構成となっている。
【0055】
すなわち、本実施形態によれば、前記積層ハウジング211に前記端子Tの側方を覆う側壁238をそれぞれ備えて互いに左右に並んで配置可能な第一コネクタ210Lと第二コネクタ210Rとを備え、前記第一コネクタ210Lの前記側壁238Lと前記第二コネクタ210Rの前記側壁238Rには、前後方向において互いに異なる位置に誤結防止部240が埋め込み形成され、前記誤結防止部240は、前記サブハウジングS毎に設けられ、それぞれ所定の積層順において互いに嵌合可能となる形状とされている。
【0056】
この構成によれば、第一ジョイントコネクタ210Lおよび第二ジョイントコネクタ210RにはサブコネクタS毎に異なる形状の誤結防止部241〜243が設けられているから、各サブコネクタSを積層する際に、誤った積層順とされることを防ぐことができる。また、第一ジョイントコネクタ210Lの誤結防止部240Lと第二ジョイントコネクタ210Rの誤結防止部240Rとは前後方向において互いに異なる位置に形成されているから、両ジョイントコネクタ210R,210L間における各サブハウジングSの取り違えを防ぐことができる。さらに、各誤結防止部240は各ジョイントコネクタ210L、210Rにおいて端子Tを覆う側壁238L,248Rから突出しないから、誤結防止部240を設けてもジョイントコネクタ210R,210Lが大型化しない。
【0057】
<他の実施形態>
本明細書に開示された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような形態で実施することが可能である。
【0058】
(1)実施形態1〜3においては、各サブハウジングSの各抜止部35は各サブハウジングSが正規に積層された場合に前後方向において同じ位置に配される構成としたが、各抜止部は必ずしも前後方向において同じ位置に配されなくてもよい。また、各抜止部が各端子Tの幅方向における半分のみに係止する構成としなくてもよい。したがって、例えば、最上段サブハウジングの下面に設けられた各抜止部と、中段サブハウジングの上面に設けられた各抜止部を、前後方向において互い違いになるように配置してもよい。この場合は各抜止部が各端子の全幅に亘って係止することができるから、端子をより確実に抜止することができる。
【0059】
(2)実施形態1〜3においては、下方抜止構造35Aを、幅広抜止部35Cの両側に幅狭抜止部35Dを並べて設けた構造としたが、下方抜止構造35Aはこれに限らない。例えば、下方抜止構造を幅広抜止部のみによって構成してもよく、または幅狭抜止部のみによって構成してもよい。または、対向して配されたサブハウジング内の各端子を個別に全幅に亘って係止する全幅抜止部を複数設けてもよいし、または対向して配されたサブハウジング内のすべての端子に一括して係止する一括抜止部を一つ設けてもよい。
【0060】
(3)実施形態1〜3においては、最上段サブハウジングS1の下面の抜止部35を、中段サブハウジング(第二段サブハウジング)S2の下面と同様の下方抜止構造35Aとし、中段サブハウジング(第二段サブハウジング)S2の上面の抜止受部34を最下段サブハウジングS3の上面と同様の上方抜止構造34Aとしたが、最上段サブハウジングの下面の抜止部が中段サブハウジング(第二段サブハウジング)の下面と同じ構造である必要はなく、また中段サブハウジング(第二段サブハウジング)の上面の抜止受部が最下段サブハウジングの上面と同様の構造である必要はない。要は、追加サブハウジングを設けた場合、追加サブハウジングの上面の抜止受部が最下段サブハウジングの上面の抜止受部と同様の抜止受構造とされ、追加サブハウジングの下面の抜止部が第二段サブハウジングの下面の抜止部と同様の抜止構造とされればよい。
【符号の説明】
【0061】
10: ジョイントコネクタ(コネクタ)
11: 積層ハウジング
34: 抜止受部
34A: 上方抜止受構造(抜止受構造)
35: 抜止部
35A: 下方抜止構造(抜止構造)
210L: 第一ジョイントコネクタ(第一コネクタ)
210R: 第二ジョイントコネクタ(第二コネクタ)
238: 側壁
240(240L、240R): 誤結防止部
S: サブハウジング
S1: 最上段サブハウジング
S2: 中段サブハウジング(第二段サブハウジング)
S4: 追加サブハウジング
S3: 最下段サブハウジング
T: 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15