(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動圧縮機用インバータモジュールの部品点数を削減することが望まれている。
本発明の目的は、部品点数を削減することができる電動圧縮機用インバータモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電動圧縮機用インバータモジュールは、モータによって駆動する電動圧縮機に搭載される電動圧縮機用インバータモジュールであって、基板と、前記基板に設けられたインバータ回路と、前記モータに設けられた気密端子に電気的に接続される出力コネクタと、を備え、前記インバータ回路は、交流電力を出力するための出力バスバーを備え、前記出力コネクタと、前記出力バスバーとが一体に形成されている。
【0006】
これによれば、出力バスバーと、出力コネクタとが一体に形成されることで、これらは単一の部品となる。出力バスバーと、出力コネクタとを別体とする場合に比べると、部品点数を削減することができる。
【0007】
上記電動圧縮機用インバータモジュールについて、前記出力コネクタは、前記出力バスバーに連設された平板部と、前記気密端子が挿入される筒状部と、を備えていてもよい。
これによれば、筒状部に気密端子を挿入することで、出力コネクタと気密端子とを電気的に接続することができる。
【0008】
上記電動圧縮機用インバータモジュールについて、前記インバータ回路を囲むように設けられた樹脂ケースを備え、前記平板部は、前記樹脂ケースに埋め込まれていてもよい。
これによれば、平板部に板厚方向に向けた力が加わっても、平板部が変形しにくい。
【0009】
上記電動圧縮機用インバータモジュールについて、前記出力バスバーは、前記インバータ回路を構成する半導体素子及び導体パターンに直接接合されていてもよい。
これによれば、半導体素子及び導体パターンと、出力バスバーとをワイヤを介して接続する場合に比べて、部品点数の削減が図られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品点数を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、電動圧縮機用インバータモジュールの一実施形態について説明する。
図1に示すように、電動圧縮機10は、シャフト11と、シャフト11の回転により駆動する圧縮機構(例えば、スクロール圧縮機構)12と、シャフト11を回転させるモータ20と、モータ20に設けられた気密端子25と、ハウジング30と、カバー35と、を備える。
【0013】
ハウジング30は、有底筒状の第1ハウジング31と、第1ハウジング31の開口部に設けられる有蓋円筒状の第2ハウジング32と、を備える。第1ハウジング31は、第1ハウジング31内に冷媒を流入させる流入口33を備える。第1ハウジング31の底部は、第1ハウジング31の軸線方向に貫通する孔34を備える。
【0014】
圧縮機構12、及び、モータ20は、第1ハウジング31に収容されている。カバー35は、ハウジング30の外面に取り付けられることで、ハウジング30の外面とカバー35に囲まれる領域に収容領域Sを区画している。本実施形態において、カバー35は第1ハウジング31の底部に取り付けられている。孔34は、第1ハウジング31内と、収容領域Sとを連通させている。
【0015】
モータ20は、三相交流モータである。モータ20は、シャフト11に固定されたロータ21と、ロータ21の外側に配置されるものであって第1ハウジング31の内面に固定されたステータ22と、を備える。ステータ22は、円筒形状のステータコア23と、ステータコア23に捲回されたコイル24と、を備える。コイル24には、気密端子25が接続されている。気密端子25を介してコイル24に電流が流れることによって、ロータ21とシャフト11とが一体的に回転する。
【0016】
気密端子25は、第1ハウジング31の気密性を保ちつつ、第1ハウジング31の外部に延びている。気密端子25は、3相(U相、V相、及び、W相)のコイル24に対応して3つの導電部材26(
図1では1つのみ図示)を備える。各導電部材26は、円柱状の金属端子である。各導電部材26は、孔34に挿通されている。これにより、各導電部材26の一部は、孔34から収容領域S内に突出している。
【0017】
気密端子25は、各導電部材26を支持する支持プレート27を備える。各導電部材26は、支持プレート27を貫通している。各導電部材26と支持プレート27との間には、図示しない絶縁部材が介在されている。支持プレート27は、収容領域S内に配置されている。
【0018】
電動圧縮機10には、モータ20のコイル24に交流電力を供給するための電動圧縮機用インバータモジュール(以下、インバータモジュールと称する)40が搭載されている。インバータモジュール40は、バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換して出力する。インバータモジュール40から出力された交流電力は、気密端子25を介してコイル24に供給され、これにより電動圧縮機10が駆動する。以下、インバータモジュール40について詳細に説明する。
【0019】
図2、及び、
図3に示すように、インバータモジュール40は、基板41と、基板41に設けられたインバータ回路42と、樹脂ケース101と、出力コネクタ91,92,93と、を備える。本実施形態の基板41は、扇状である。
【0020】
樹脂ケース101は、枠部102と、枠部102の外面から突出する突出部103と、を備える。枠部102は、インバータ回路42を囲むように基板41に設置されている。図示は省略するが、枠部102の内側には、封止樹脂(ポッティング樹脂)が設けられている。突出部103は、3相(U相、V相、及び、W相)に対応して3つ設けられている。各突出部103は、貫通孔104を備える。貫通孔104は、基板41の板厚方向に貫通している。
【0021】
インバータ回路42は、6つのスイッチング素子Q1〜Q6と、6つのダイオードD1〜D6と、基板41に設けられた導体パターン43〜54と、配線用電極61〜63と、シャント抵抗Rs1〜Rs3と、を備える。本実施形態において、スイッチング素子Q1〜Q6、及び、ダイオードD1〜D6が半導体素子となる。
【0022】
本実施形態では、スイッチング素子Q1〜Q6としてIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、上アーム用のスイッチング素子であり、スイッチング素子Q2,Q4,Q6の下アーム用スイッチング素子である。
【0023】
複数の導体パターン43〜54は、例えば、銅などの金属によって形成されている。スイッチング素子Q1と、ダイオードD1とは、導体パターン43に接合されている。スイッチング素子Q2と、ダイオードD2とは、導体パターン43に隣り合う導体パターン44に接合されている。
【0024】
スイッチング素子Q3と、ダイオードD3とは、導体パターン45に接合されている。スイッチング素子Q4と、ダイオードD4とは、導体パターン45に隣り合う導体パターン46に接合されている。
【0025】
スイッチング素子Q5と、ダイオードD5とは、導体パターン47に接合されている。スイッチング素子Q6と、ダイオードD6とは、導体パターン47に隣り合う導体パターン48に接合されている。なお、各導体パターン43〜48には、各スイッチング素子Q1〜Q6のコレクタ電極、及び、ダイオードD1〜D6のカソードが接続されている。
【0026】
2つの導体パターン49,50には、シャント抵抗(チップ抵抗器)Rs1が接合されている。2つの導体パターン51,52にはシャント抵抗(チップ抵抗器)Rs2が接合されている。2つの導体パターン53、54にはシャント抵抗(チップ抵抗器)Rs3が接合されている。
【0027】
配線用電極61は、スイッチング素子Q2、ダイオードD2、及び、導体パターン50に直接接合されている。配線用電極62は、スイッチング素子Q4、ダイオードD4、及び、導体パターン52に直接接合されている。配線用電極63は、スイッチング素子Q6、ダイオードD6、及び、導体パターン54に直接接合されている。各配線用電極61〜63は、スイッチング素子Q2,Q4,Q6のエミッタ電極、及び、ダイオードD2,D4,D6のアノードに接続されている。
【0028】
インバータ回路42は、6つの制御端子56を備える。制御端子56は、それぞれ、各スイッチング素子Q1〜Q6のゲート電極に電気的に接続される。そして、制御端子56に接続される制御装置により、各スイッチング素子Q1〜Q6はオン/オフ制御される。
【0029】
インバータ回路42は、負極用端子64と、正極用端子65と、出力バスバー71、76,81と、を備える。負極用端子64は導体パターン49,51,53に接合されている。正極用端子65は、導体パターン43,45,47に接合されている。負極用端子64には、バッテリの負極が接続され、正極用端子65にはバッテリの正極が接続される。
【0030】
出力バスバー71は、スイッチング素子Q1に直接接合される第1接続部72と、ダイオードD2に直接接合される第2接続部73と、導体パターン44に直接接合される第3接続部74と、出力部75と、を備える。出力バスバー76は、スイッチング素子Q3に直接接合される第1接続部77と、ダイオードD3に直接接合される第2接続部78と、導体パターン46に直接接合される第3接続部79と、出力部80と、を備える。出力バスバー81は、スイッチング素子Q5に直接接合される第1接続部82と、ダイオードD5に直接接合される第2接続部83と、導体パターン48に直接接合される第3接続部84と、出力部85と、を備える。出力バスバー71,76,81は、スイッチング素子Q1,Q3,Q5、ダイオードD1,D3,D5、及び、導体パターン44,46,48に直接接合されており、所謂、DLB(ダイレクト・リード・ボンディング)によって接合されているといえる。なお、出力バスバー71,76,81は、スイッチング素子Q1,Q3,Q5のエミッタ電極、及び、ダイオードD1,D3,D5のアノードに接続されている。
【0031】
各出力バスバー71,76,81の出力部75,80,85は、それぞれ、基板41の面に沿って、基板41の外縁よりも外側に突出している。
出力バスバー71の出力部75には、出力コネクタ91が一体に形成されている。出力バスバー76の出力部80には、出力コネクタ92が一体に形成されている。出力バスバー81の出力部85には、出力コネクタ93が一体に形成されている。
【0032】
なお、「一体」とは、出力バスバーと出力コネクタとを溶接などで接合することで一体化したものを示すものではなく、出力バスバー71,76,81と出力コネクタ91,92,93とが継目無く繋がっていることを示す。インバータモジュール40は、出力バスバー71,76,81と出力コネクタ91,92,93とを含む接続部材L1,L2,L3を備えているといえる。この接続部材L1,L2,L3の一部が出力バスバー71,76,81であり、接続部材L1,L2,L3の一部が出力コネクタ91,92,93となる。
【0033】
図3、及び、
図4に示すように、出力コネクタ91は、出力バスバー71に連設された平板部94と、平板部94の板厚方向に延びる筒状部95と、を備える。同様に、出力コネクタ92は、平板部96と、筒状部97と、を備える。出力コネクタ93は、平板部98と、筒状部99と、を備える。本実施形態の筒状部95,97,99は、円筒状である。筒状部95,97,99の内周面に囲まれる孔は、平板部94,96,98の板厚方向に貫通している。筒状部95,97,99は、平板部94,96,98に対して、導電部材26が挿入される側とは反対側に突出するように形成されている。出力コネクタ91,92,93は、出力バスバー71,76,81にバーリング加工を施すことで形成することができる。
【0034】
出力バスバー71の一部、及び、出力コネクタ91の一部は、樹脂ケース101に埋め込まれている。具体的にいえば、出力バスバー71の出力部75は、枠部102及び突出部103に埋め込まれている。出力コネクタ91の平板部94の周縁部は突出部103に埋め込まれている。一方で、出力コネクタ91の筒状部95は、貫通孔104内に位置しており、樹脂ケース101に埋め込まれていない。筒状部95の軸線方向と、貫通孔104の軸線方向とは一致している。接続部材(出力バスバー71及び出力コネクタ91)L1は、樹脂ケース101の製造に際して、インサート成型を行うことで樹脂ケース101に埋め込まれる。出力バスバー76,81の出力部80,85についても、出力バスバー71と同様の態様で樹脂ケース101に埋め込まれている。出力コネクタ92,93の平板部96,98についても、出力コネクタ91と同様の態様で樹脂ケース101に埋め込まれている。
【0035】
図5に示すように、出力コネクタ91の筒状部95には気密端子25の導電部材26が挿入される。筒状部95の内面と、導電部材26の外面とが接触することで、出力コネクタ91と気密端子25とは電気的に接続される。同様に、出力コネクタ92,93の筒状部97,99にも気密端子25の導電部材26が挿入され、出力コネクタ92,93と気密端子25とが電気的に接続される。これにより、インバータモジュール40と、モータ20のコイル24とは電気的に接続され、出力バスバー71から出力される交流電力がコイル24に供給可能となる。
【0036】
次に、本実施形態のインバータモジュール40の作用について説明する。まず、比較例の電動圧縮機用インバータモジュールについて説明する。
図6に示すように、比較例の電動圧縮機用インバータモジュール200は、出力バスバー201と、出力コネクタ202とを備える。出力コネクタ202は、円筒状の筒状部203と、筒状部203の軸線方向の一端に設けられた蓋204と、を備える。蓋204は、有底円筒状である。筒状部203は、蓋204に圧入されている。これにより、筒状部203と蓋204とは一体化されている。出力バスバー201は、基板205から蓋204と向かい合う位置にまで延びている。出力バスバー201と、出力コネクタ202とは溶接されることで一体化されている。
【0037】
出力バスバー201と、出力コネクタ202とを溶接する際には、出力バスバー201と、出力コネクタ202とを個別に樹脂ケース206にインサート成型する。そして、インサート成型により樹脂ケース206に埋め込まれた出力バスバー201と、出力コネクタ202とを溶接する。
【0038】
これに対して、本実施形態のインバータモジュール40は、出力バスバー71、76,81と出力コネクタ91,92,93とが一体であるため、溶接を行うことで出力バスバー71、76,81と出力コネクタ91,92,93とを一体化する必要がない。
【0039】
したがって、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)気密端子25が電気的に接続される出力コネクタ91,92,93と、出力バスバー71,76,81とは一体に形成されており、単一の部品(接続部材L1,L2,L3)である。出力コネクタ91,92,93と、出力バスバー71,76,81とを別体とする場合に比べて部品点数を削減することができる。
【0040】
(2)仮に、出力コネクタと、出力バスバーとが別体の場合、溶接などにより両者を接合する必要があり、製造工程が増加する。出力コネクタ91,92,93と出力バスバー71,76,81とを一体とすることで、出力コネクタ91,92,93と出力バスバー71,76,81を接合する必要がなく、インバータモジュール40の製造工程を少なくすることができる。したがって、インバータモジュール40の製造コストの削減が図られる。
【0041】
(3)出力コネクタと、出力バスバーとを接合する場合、出力コネクタの品質管理、出力バスバーの品質管理に加えて、接合箇所の品質管理を行う必要がある。即ち、個別の部品の品質管理に加えて、接合箇所の品質管理を行う必要があり、品質管理が煩雑になる。これに対し、出力バスバー71,76,81と出力コネクタ91,92,93とが一体に形成されている場合、接合箇所の品質管理を行う必要がなく、接続部材L1,L2,L3の品質管理を行えばよい。このため、品質管理が容易になる。
【0042】
(4)出力コネクタ91,92,93は、平板部94,96,98と、筒状部95,97,99と、を備える。筒状部95,97,99には、気密端子25が挿入可能であり、気密端子25を筒状部95,97,99に挿入することで出力コネクタ91,92,93と、気密端子25とを接続することができる。また、気密端子25が挿入される部分を筒状部95,97,99とすることで、気密端子25と出力コネクタ91,92,93との接触面積を確保しやすい。
【0043】
(5)平板部94,96,98は、樹脂ケース101の突出部103に埋め込まれている。このため、平板部94,96,98に板厚方向への力が加わった場合でも、平板部94,96,98が変形しにくい。このため、筒状部95,97,99に気密端子25を挿入する際に、挿入を行いやすい。
【0044】
(6)出力バスバー71,76,81は、スイッチング素子Q1,Q3,Q5、ダイオードD1,D3,D4、及び、導体パターン44,46,48に直接接合されている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5、ダイオードD1,D3,D4、及び、導体パターン44,46,48に接合されたワイヤを出力バスバーに接合する場合に比べると、部品点数を削減することができる。また、ワイヤを用いる場合に比べて、品質管理が容易になる。
【0045】
(7)出力バスバー71,76,81と、出力コネクタ91,92,93とを一体とすることで、出力バスバーと出力コネクタとを接合する場合に比べて、接続部材L1,L2,L3の抵抗値を低減させることができる。
【0046】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図7に示すように、出力バスバー120は、ワイヤ110を介してスイッチング素子Q1,Q3,Q5、ダイオードD1,D3,D4、及び、導体パターン44,46,48に接合されていてもよい。この場合、出力バスバー120は、出力部121を備える。そして、出力部121には、スイッチング素子Q1,Q3,Q5、ダイオードD1,D3,D4、及び、導体パターン44,46,48のそれぞれに接続されたワイヤ110が接合される。この場合であっても、出力バスバー120と出力コネクタ91とを一体に形成することで、部品点数の削減が図られる。
【0047】
○出力コネクタ91,92,93は、樹脂ケース101に埋め込まれていなくてもよい。この場合、突出部103には、出力バスバー71,76,81のみが埋め込まれることになる。
【0048】
○出力コネクタ91,92,93の形状は、気密端子25と電気的に接続可能な形状であればよい。例えば、出力コネクタ91,92,93は、平板部94,96.98に気密端子25が挿入される孔を設けた形状でもよく、筒状部95,97,99を備えていなくてもよい。
【0049】
○筒状部95,97,99は、筒状であればよく、多角筒状であってもよい。この場合、導電部材26の形状を筒状部95,97,99の形状に合わせて変更してもよい。
○圧縮機構としては、遠心圧縮機構(インペラ)など、モータ20によって駆動されるものであればよい。
【0050】
○樹脂ケース101は、突出部103を備えていなくてもよい。
○スイッチング素子Q1〜Q6としては、MOSFETなどを用いてもよい。