(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スライドシートがスライドする際には、スライドシートに設けられた受電コイルの位置が給電コイルに対して移動する。このように給電コイルに対して受電コイルの位置が移動した場合に、給電に適した位置に受電コイルが配されないと給電効率の悪化が懸念される。
【0005】
本明細書に記載された技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、給電効率の悪化を抑制することが可能な給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載された給電システムは、車体の床部に設けられたレールに対してスライド移動可能なシートへの給電システムであって、前記床部に設けられた送電部と、前記シートに対して固定され、前記送電部からの電力を当該送電部に対向する正規位置において受電可能な受電部と、前記受電部が前記正規位置にないときに、前記受電部を前記正規位置に移動させる移動手段と、を備える。
本構成によれば、受電部が正規位置にないときには移動手段により、受電部を正規位置に移動して送電部からの電力を受電部で受電することが可能になるため、給電効率の悪化を抑制することが可能となる。
【0007】
本明細書に記載された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記シートは、前記受電部が受電した電力を蓄電する蓄電部を備え、前記移動手段は、前記蓄電部の電力で前記受電部を前記正規位置に移動させる。
このようにすれば、シートをスライドさせた際に送電部から受電部への給電が途切れる場合には、蓄電部の電力で受電部を正規位置に移動することができる。
【0008】
前記蓄電部から前記移動手段への電力供給をオンオフする給電スイッチと、前記給電スイッチのオンオフを制御する制御手段と、を備える。
【0009】
ユーザによりシートの移動に関する操作が可能な操作手段を備え、前記制御手段は、前記操作手段の操作に応じて前記給電スイッチのオンオフを制御する。
【0010】
前記移動手段は、前記シートに対して前記受電部を移動させる受電移動部である。
このようにすれば、受電移動部がシートに対して受電部を移動させることにより、ユーザが所望の位置にスライドさせたシートを更に移動させなくても受電部が正規位置において送電部から受電することが可能になる。
【0011】
前記受電部の位置を検出可能な位置検出部を備え、前記移動手段は、前記位置検出部の検出結果に基づいて前記受電部を前記正規位置に移動させる。
【0012】
ユーザによりシートの移動を停止させる操作が可能な操作手段と、前記操作手段により前記シートの移動を停止させる操作がされたときに、前記シートに対して前記受電部を移動させるように前記受電移動部を制御する制御手段と、を備える。
このようにすれば、シートの移動の停止時に受電部が移動するため、例えばシートの移動時に受電部を移動させる構成と比較して受電部の正規位置への位置合わせを容易に行うことができる。
【0013】
前記移動手段は、前記シートに設けられている。
このようにすれば、車体側に移動手段を設ける構成と比較して車体側の利用可能なスペースを大きくすることができる。
【0014】
複数の前記送電部を備え、前記床部には、前記シートのスライド方向に沿って前記複数の送電部が並んで配されている。
このようにすれば、シートのスライド移動に応じて受電部に給電する複数の送電部を切り替えることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に記載された技術によれば、給電システムについて給電効率の悪化を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
実施形態1について、
図1〜
図10を参照しつつ説明する。
本実施形態の給電システム10は、例えば自動車等の車両に搭載され、シート40に搭載された電装品39A,39B等に電力を供給するものである。以下では、
図1のX方向を前方、Y方向を左方、Z方向を上方として説明する。
【0018】
車両には、
図1,
図4に示すように、車体の乗員室の床部11(
図1では車体の床部の一部を図示)の上に一対のレール12,12が固定されており、一対のレール12,12に対してシート40が前後方向にスライド可能とされている。シート40は車両に複数備えられており、乗員が座る座部41を備え、座部41の下側には、
図2に示すように、シート40を支持する金属製の脚部43を有する。脚部43は、上部が座部41に固定され、下部の拡径された部分がレール12,12に対してスライド可能に挿通されている。複数のシート40のうちの一部又は全部には、例えば、電動リクライニング装置、シートヒータ、タッチパネル等のディスプレイ、エアコン、乗員の着座の有無を検出するセンサ、シートベルトの装着の有無を検出するセンサなどの各種電装品(
図6〜
図9では電装品39A,39Bを図示し、他の電装品は省略)が備えられている。各種電装品39A,39Bには、後述する給電システム10により電力が供給される。各レール12,12は、例えば、スチール、アルミニウム等の金属からなり、共に、角筒状であって直線状に延びており、通し孔12Aが前後方向の全長に亘って形成されている。
【0019】
座部41の下面側には、
図3,
図5に示すように、シート40の座部41に対してスライド可能なコイル移動部35A(「受電移動部」の一例)と、コイル移動部35Aの下面に固定される受電コイル30(「受電部」の一例)とが設けられている。シート40の下面には例えば前後方向に延びる軸部42が固定されており、コイル移動部35Aは、例えばモータを備え、モータの駆動により軸部42に沿って前後方向(
図3の矢印方向)に移動可能とされる。受電コイル30は、コイル移動部35Aの下面に、例えばネジ留めや接着剤等による種々の固定手段により固定される。
【0020】
車体側には、
図6に示すように、バッテリ15と、ECU(Electronic Control Unit)等に備えられる車体側制御部16と、ユーザが設定等を操作可能な車体側操作部17と、複数の送電コイル20A〜20C(「送電部」の一例。
図6〜8では、送電コイル20A〜20Cを図示し、他の送電コイル20D〜20Hは省略)と、バッテリ15の直流を交流の高周波に変換して複数の送電コイル20A〜20Cに出力する電力変換部18と、電力変換部18と各送電コイル20A〜20Cとの間に配される送電スイッチ19A〜19Cとを備える。車体側制御部16は、アンテナ部14Aから信号を送受信可能とされている。車体側操作部17は、シート40の外部の操作パネル等から各種の操作が可能とされている。
【0021】
(給電システム10)
給電システム10は、
図6に示すように、複数の送電コイル20A〜20Hと、いずれかの送電コイル20A〜20Hからの電力を送電コイル20A〜20Hに対向する正規位置において受電可能な一つの受電コイル30と、受電コイル30が受電した電力を直流に変換する電力変換部31と、受電コイル30が受電した電力を蓄電する蓄電部32と、受電コイル30を送電コイル20A〜20Hに対向する正規位置に移動させる移動手段33と、複数の電装品39A,39Bと、シート側制御部36(「制御手段」の一例)と、を備える。シート側制御部36は、アンテナ部14B及びシート側操作部37(「操作手段」の一例)に対して信号の送受信が可能とされており、蓄電部32からの電力供給をオンオフする給電スイッチ38や移動手段33に制御信号を送信する。シート側操作部37は、ユーザの操作によりシート40をスライドさせるためのスライドスイッチが例えばシート40のアームレスト等の任意の箇所に設けられている。
【0022】
複数の送電コイル20A〜20Hは、前後方向に等間隔で並べられており、各送電コイル20A〜20Hは、電線が渦巻き状に巻回されており、渦巻きの最外周からは送電コイル20A〜20Hの並び方向に沿って電線が延びている。電線は例えば銅線がエナメル等の絶縁層で被覆されたものを用いることができる。各送電コイル20A〜20Hは、例えば合成樹脂で一体的に保持され、床部11の上面に例えばネジ留めや接着剤等による公知の固定手段により固定される。電線は、車体の床上(のマットやパネル等の下)や床下に配索されたワイヤーハーネスを介して例えばECU(Electronic Control Unit)等の機器に接続される。
【0023】
受電コイル30は、電線が渦巻き状に巻回されており、渦巻きの最外周からは電線がシート40側の電力変換部31等に延びている。受電コイル30は、例えばフェライト等の磁性体や合成樹脂等からなるコイル保持部により渦巻きの形状が保持されるようにしてもよい。電線は例えば銅線がエナメル等の絶縁層で被覆されたものが用いられる。
【0024】
蓄電部32は、シート40内に備えられ、例えばリチウムイオン二次電池等のバッテリやキャパシタ等から構成することができる。蓄電部32は、受電コイル30から電力供給を受けている。蓄電部32は、シート側制御部36の制御によりオンオフ可能な給電スイッチ38を介してシート側制御部36や複数の電装品39A,39B等に電力を供給する。
【0025】
移動手段33は、シート40内に備えられており、シート40をスライド移動させるシート移動部34(「移動手段33」の一例)と、シート40に対して受電コイル30の位置を調節する位置調整部35とを備える。シート移動部34は、シート40をスライドさせる駆動モータを備えている。駆動モータは蓄電部32に対して給電スイッチ38を介して接続されており、蓄電部32からの電力でシート40をスライド移動させる。
【0026】
位置調整部35は、受電コイル30を送電コイル20A〜20Hと対向する正規位置に移動させるコイル移動部35A(「移動手段33」の一例)と、受電コイル30の位置を検出する位置検出部35Bとを備える。コイル移動部35Aは、例えば、ボールねじを用いることができ、この場合、ネジ軸としての軸部42(
図3)とナット(図示しない)とを備え、蓄電部32からの電力で回転するモータの駆動によりネジ軸が回転し、ナットに固定されたシート40を軸部42の軸方向にスライド移動させることができる。なお、これに限られず、例えば、軸部の周りに巻回したソレノイドに通電して軸部を軸方向に移動させる構成としてもよい。また、コイル移動部35A(ボールねじとする場合にナット)と受電コイル30とは例えば一体で動くように構成することができる。
【0027】
位置検出部35Bは、例えばセンサ等を備え、センサ等により検出した送電コイル20A〜20H及び受電コイル30の位置に応じて、例えば送電コイル20A〜20Hの軸(渦巻きの中心)と、受電コイル30の軸(渦巻きの中心)との距離を検出し、この検出したコイル間の距離に応じてコイル移動部35Aを移動させる信号をコイル移動部35Aに出力する。なお、位置検出部35Bは、これに限られず、送電コイル20A〜20Hと受電コイル30との間の位置関係を検出可能なセンサ等の公知の検出手段を用いてもよい。
【0028】
次に、給電システム10による給電について
図6〜
図10を参照しつつ説明する。
図6に示すように、受電コイル30が送電コイル20Bに対して正規位置で対向する状態では、送電コイル20B及び受電コイル30を介して車体側からシート40の蓄電部32等に電力が供給されている。ここで、シート側制御部36は、ユーザにより、シート側操作部37の(前方移動の)スライドスイッチがオンされたことを検出すると(S1で「YES」)、蓄電部32からシート移動部34に給電するための給電スイッチ38をオンする(S2)。これにより、蓄電部32の電力でシート移動部34が駆動し、シート40が前方にスライド移動する。ここで、
図7に示すように、シート40がスライド移動すると、シート40の受電コイル30についてもスライド移動するため、受電コイル30が送電コイル20Bに対向する正規位置から移動して送電コイル20Bから給電できない状態となる。このときは蓄電部32の電力により、シート移動部34及び電装品39A,39Bの動作が継続される。ユーザは、シート40を所望の位置(
図7の位置)までスライド移動させると、シート側操作部37のスライドスイッチをオフする。シート側制御部36は、スライドスイッチがオフされたことを検出すると(S3で「YES」)、
図8に示すように、シート移動部34に給電する給電スイッチ38をオフする(S4)。これにより、シート40のスライド移動が停止する。
【0029】
次にシート側制御部36は、位置調整部35に給電する給電スイッチ38をオンし(S5)、位置検出部35Bにより受電コイル30の位置を検出する。受電コイル30がいずれかの送電コイル20A,20Bに対向して給電可能な正規位置にない場合には(S6で「NO」)、
図8に示すように、コイル移動部35Aを駆動して受電コイル30をスライド移動させる(S7)。
図9に示すように、位置検出部35Bは、受電コイル30が正規位置に移動したことを検出すると(S6で「YES」)、位置調整部35に給電する給電スイッチ38をオフし(S8)、コイル移動部35Aの駆動を停止させる。また、シート側制御部36から車体側制御部16にアンテナ部14A,14Bを介して制御信号が出力され、車体側制御部16により送電コイル20A〜20Hに送電するための送電スイッチ19Bが送電スイッチ19Aに切り替えられ、受電コイル30は、対向する送電コイル20Aから受電可能となる。なお、送電スイッチ19A〜19Cの切り替えのタイミングはこれに限られず、例えばシート40のスライド移動の開始時やシート40の所定距離移動時に送電スイッチ19A〜19Cを切替えてもよい。
【0030】
本実施形態の作用、効果について説明する。
給電システム10は、車体の床部11に設けられたレール12,12に対してスライド移動可能なシート40への給電システム10であって、床部11に設けられた送電コイル20A〜20H(送電部)と、シート40に対して固定され、送電コイル20A〜20Hからの電力を当該送電コイル20A〜20Hに対向する正規位置において受電可能な受電コイル30(受電部)と、受電コイル30が正規位置にないときに、受電コイル30を正規位置に移動させる移動手段33と、を備える。
本実施形態によれば、受電コイル30が正規位置にないときには移動手段33により、受電コイル30を正規位置に移動して送電コイル20A〜20Hからの電力を受電コイル30で受電することが可能になるため、給電効率の悪化を抑制することが可能となる。また、給電効率の悪化が抑制されるため、コイルの発熱を抑制することが可能になる。
【0031】
また、シート40は、受電コイル30が受電した電力を蓄電する蓄電部32を備え、移動手段33は、蓄電部32の電力で受電コイル30を正規位置に移動させる。
このようにすれば、シート40をスライドさせた際に送電コイル20A〜20Hから受電コイル30への給電が途切れる場合には、蓄電部32の電力で受電コイル30を正規位置に移動することができる。
【0032】
また、移動手段33は、シート40に対して受電コイル30を移動させるコイル移動部35A(受電移動部)である。
このようにすれば、コイル移動部35Aがシート40に対して受電コイル30を移動させることにより、ユーザが所望の位置にスライドさせたシート40を更に移動させなくても受電コイル30が正規位置において送電コイル20A〜20Hから受電することが可能になる。
【0033】
ユーザによりシート40の移動を停止させる操作が可能なシート側操作部37(操作手段)と、シート側操作部37によりシート40の移動を停止させる操作がされたときに、シート40に対して受電コイル30を移動させるようにコイル移動部35Aを制御するシート側制御部36(制御手段)と、を備える。
このようにすれば、シート40の移動の停止時に受電コイル30が移動するため、例えばシート40の移動時に受電コイル30を移動させる構成と比較して受電コイル30の正規位置への位置合わせを容易に行うことができる。
【0034】
また、移動手段33は、シート40に設けられている。
このようにすれば、車体側に移動手段33を設ける構成と比較して車体側の利用可能なスペースを大きくすることができる。
【0035】
また、複数の送電コイル20A〜20Hを備え、床部11には、シート40のスライド方向に沿って複数の送電コイル20A〜20Hが並んで配されている。
このようにすれば、シート40のスライド移動に応じて受電コイル30に給電する複数の送電コイル20A〜20Hを切り替えることが可能になる。
【0036】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、送電コイルと受電コイルとにより送受電を行う方式としたが、これに限られず、例えば、キャパシタなどの他の公知の非接触の送受電方式を用いた送電部及び受電部を用いてもよい。
【0037】
(2)送電コイル20A〜20Hの数は上記実施形態の数に限られず、送電コイルの数が異なる構成としてもよい。また、受電コイルは一つとしたが、これに限られない。例えば、一つの送電コイルを備え、複数の受電コイルにより受電されるようにしてもよい。
【0038】
(3)シート移動部34及びコイル移動部35Aは、シート40内に設けられる構成としたが、これに限られず、シート移動部34及びコイル移動部35Aの少なくとも一方が車体側に設けられる構成としてもよい。
【0039】
(4)シート40内に蓄電部32を備える構成としたが、これに限られず、シート40内に蓄電部32を備えない構成としてもよい。例えば、受電コイル30が正規位置にないときには車体側のバッテリ15及び移動手段により受電コイル30を正規位置に移動させるようにしてもよい。
【0040】
(5)シート側操作部37のスライドスイッチの操作によりシート40がスライド移動する構成としたが、これに限られない。例えば、車体側操作部17のスライドスイッチの操作によりシート40がスライド移動する構成としてもよい。また、ユーザが手動によりシート40を押してシート40をスライド移動させる構成としてもよい。
【0041】
(6)本実施形態では、送電コイル20A〜20Hと受電コイル30とが同軸で対向する位置を正規位置としたが、これに限られず、送電コイル20A〜20Hの軸と受電コイル30の軸との間が給電可能な程度に互いに離間した位置を正規位置としてもよい。