(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記注入跡は、前記外側樹脂部における、前記反対側面を覆う部位であって、前記中子樹脂部を介して前記ナットと対向する部位の表面に形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
前記注入跡は、前記外側樹脂部における、前記反対側面を覆う部位であって、前記中子樹脂部の前記貫通穴と対向する部位の表面に形成されている、請求項3に記載のコネクタ。
複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部と、前記中子樹脂部に対向して配置された1つ又は複数のナットとを成形型内に配置し、前記成形型内に、前記中子樹脂部及び前記ナットを覆う外側樹脂部を構成する樹脂材料を注入して、インサート成形を行うコネクタの製造方法であって、
前記成形型内において、前記中子樹脂部と前記ナットとを対向させ、
前記成形型における、前記樹脂材料のゲートを、前記中子樹脂部における、前記ナットと対向するナット対向面とは反対側に位置する反対側面に対向させ、前記ゲートから前記反対側面に向けて前記樹脂材料を注入する、コネクタの製造方法。
前記ゲートを、前記反対側面における、前記ナットの投影位置に対向させ、前記ゲートから注入される前記樹脂材料を、前記反対側面における、前記ナットの投影位置に衝突させる、請求項5に記載のコネクタの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、インサート成形品の成形時に、上型と下型とによって形成されたキャビティ内に溶融樹脂が注入されるときに、次の課題が生じる。すなわち、貫通ナットは、下型によって支持されるだけである。そのため、上型のゲートからキャビティ内に注入される溶融樹脂が蓋部材に衝突するときには、蓋部材及び貫通ナットの姿勢が下型に対して傾くおそれがある。
【0007】
また、特許文献2においては、下型にナットを固定するために、下型に対して回転可能な可動部としての止め具を下型に設ける必要がある。そのため、インサート成形を行うための下型の構造が複雑になる。
【0008】
また、特許文献1においては、蓋部材は樹脂によって覆われる必要があるため、上型によって蓋部材を支持することはできない。また、特許文献2においても、ナットは樹脂によって覆われる必要があるため、ナットを上型によって支持することはできない。従って、簡単な構造の成形型によって、位置及び姿勢の精度が高く維持されたナットを有するコネクタを成形するためには、更なる工夫が必要とされる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、簡単な構造の成形型によって成形することができ、ナットの位置及び姿勢の精度が高く維持されたコネクタ及びその製造方法を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、複数のコネクタ端子と、
複数の前記コネクタ端子の両端部を突出させるとともに前記両端部を除く中間部を埋設する中子樹脂部と、
前記中子樹脂部のナット対向面に対向して配置され、前記ナット対向面に対向する側とは反対側に位置する外側端面から形成されたネジ穴を有する1つ又は複数のナットと、
前記中子樹脂部の一部と前記ナットの前記外側端面とを露出させる状態で、前記中子樹脂部及び前記ナットを覆う外側樹脂部と、を備え、
前記外側樹脂部における、前記中子樹脂部の、前記ナット対向面とは反対側に位置する反対側面を覆う部位の表面には、前記外側樹脂部の成形時における注入跡が形成されている、コネクタにある。
【0011】
本発明の他の態様は、複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部と、前記中子樹脂部に対向して配置された1つ又は複数のナットとを成形型内に配置し、前記成形型内に、前記中子樹脂部及び前記ナットを覆う外側樹脂部を構成する樹脂材料を注入して、インサート成形を行うコネクタの製造方法であって、
前記成形型内において、前記中子樹脂部と前記ナットとを対向させ、
前記成形型における、前記樹脂材料のゲートを、前記中子樹脂部における、前記ナットと対向するナット対向面とは反対側に位置する反対側面に対向させ、前記ゲートから前記反対側面に向けて前記樹脂材料を注入する、コネクタの製造方法にある。
【発明の効果】
【0012】
前記一態様のコネクタは、外側樹脂部のインサート成形を行う際に、複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部をインサート部品として利用して、成形されたものである。
中子樹脂部は、複数のコネクタ端子を成形型に配置し、成形型内に中子樹脂部を構成する樹脂材料を注入して成形することができる。また、コネクタは、複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部及びナットを成形型内に配置し、成形型内に外側樹脂部を構成する樹脂材料を注入して成形することができる。このコネクタの成形を行う際には、中子樹脂部を、ナットの姿勢を規定の姿勢に保つために利用することができる。
【0013】
コネクタにおいては、中子樹脂部のナット対向面には、1つ又は複数のナットが配置されており、中子樹脂部の一部とナットの外側端面とは外部に露出されている。また、中子樹脂部の反対側面を覆う、外側樹脂部の部位の表面には、外側樹脂部の成形時における注入跡が形成されている。
【0014】
外側樹脂部の表面に露出された中子樹脂部の一部は、成形型内に外側樹脂部を成形する際に、この成形型に中子樹脂部を保持するために利用された部位である。また、ナットの外側端面は、成形型内に外側樹脂部を成形する際に、この成形型にナットを保持するために利用される。そして、ナットは、成形型に保持された中子樹脂部によっても、その姿勢が変化しないように支えられる。
【0015】
また、外側樹脂部の注入跡は、成形型に設けられたゲートから、外側樹脂部を成形するための樹脂材料を成形型内へ注入するために利用された部位である。成形型内に外側樹脂部を成形する際には、中子樹脂部及びナットが成形型内に配置される。このとき、成形型内への中子樹脂部及びナットの配置が可能であるためには、中子樹脂部とナットとは、成形型によって完全には挟み込まれない。つまり、中子樹脂部とナットとの間には微小な隙間が形成される。そして、ナットは、成形型内を流れる樹脂材料によって姿勢が変化するおそれがある。
【0016】
そこで、ゲートから中子樹脂部の反対側面に向けて、外側樹脂部を構成する樹脂材料を注入することにより、中子樹脂部を介してナットを成形型へ押さえ付けることができる。また、後述するように、中子樹脂部に貫通穴が形成されている場合には、樹脂材料の注入によって、貫通穴を利用してナットを成形型へ直接押さえ付けることができる。そして、樹脂材料の注入時の圧力を利用して、成形型とナットとの間に隙間が形成されないようにする。これにより、外側樹脂部の成形によって製造されたコネクタにおいては、ナットの姿勢が目標とする規定の姿勢に保たれることになる。
【0017】
また、外側樹脂部を成形する際に、ナットは、成形型に形成された突起等の形状変化部によって位置決めされる。そして、このナットの位置決めを行う形状変化部は、成形型に対して回転、スライド等の動作が可能な可動部とする必要はなく、成形型の形状が変化して形成されたものである。これにより、成形型の構造が複雑になることが防止される。
【0018】
それ故、前記一態様のコネクタは、簡単な構造の成形型によって成形することができ、ナットの位置及び姿勢の精度を高く維持して成形することができる。
【0019】
前記他の態様のコネクタの製造方法は、前記一態様のコネクタの製造に適した方法である。そして、このコネクタの製造方法によれば、簡単な構造の成形型によって、ナットの位置及び姿勢の精度を高く維持して、コネクタを成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述したコネクタ及びその製造方法にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のコネクタ1は、
図1〜
図5に示すように、複数のコネクタ端子3、中子樹脂部2A,2B、ナット4及び外側樹脂部5を備える。コネクタ端子3は、導電性の導体から構成されている。中子樹脂部2A,2Bは、複数のコネクタ端子3の両端部31,32を突出させるとともに、複数のコネクタ端子3の両端部31,32を除く中間部33を埋設するものである。
【0022】
図1、
図4及び
図5に示すように、ナット4は、中子樹脂部2Aのナット対向面21Aに対向して複数(本形態では2つ)配置されている。ナット4は、ナット対向面21Aに対向する側とは反対側に位置する外側端面41から形成されたネジ穴40を有する。外側樹脂部5は、中子樹脂部2A,2Bの一部としての露出面25とナット4の外側端面41とを露出させる状態で、中子樹脂部2A,2B及びナット4を覆うものである。外側樹脂部5における、中子樹脂部2A,2Bの、ナット対向面21Aとは反対側に位置する反対側面22Bを覆う部位の表面には、外側樹脂部5の成形時における注入跡51が形成されている。
【0023】
以下に、本形態のコネクタ1及びその製造方法について詳説する。
本形態のコネクタ1は、自動車の電動パワーステアリングにおける電気配線に使用されるものである。コネクタ1は、電動パワーステアリングに用いられるモータ、各種センサ等の電子制御機器を制御装置に配線するための配線接続部として用いられる。
図4及び
図5に示すように、コネクタ1は、内蔵される複数のナット4を用いて、制御装置の制御基板71に取り付けられる。コネクタ1におけるナット4のネジ穴40には、制御基板71側に配置されたボルトのネジ部が螺合される。
【0024】
図示は省略するが、本形態のコネクタ1には、電動パワーステアリングのケースに取り付けられる取付部が形成されている。この取付部は、外側樹脂部5によって形成されており、電動パワーステアリングのモータの端部の周囲に配置されるよう円環状に形成されている。取付部には、取付部を電動パワーステアリングのケースに取り付けるための別のナットが埋設されている。なお、コネクタ1は、電動パワーステアリング以外の種々の機械部品に用いることができる。
【0025】
本形態のコネクタ1のコネクタケースは、中子樹脂部2A,2Bと外側樹脂部5とによって形成されている。コネクタケースは、別途成形された中子樹脂部2A,2Bを用いて、外側樹脂部5のインサート成形を行うことによって形成されている。中子樹脂部2A,2Bを構成する樹脂材料と、外側樹脂部5を構成する樹脂材料とは、同種の熱可塑性樹脂からなる。なお、中子樹脂部2A,2Bを構成する樹脂材料の種類と、外側樹脂部5を構成する樹脂材料の種類とは、互いに異なっていてもよい。
【0026】
図1〜
図5に示すように、コネクタ1においては、制御基板71に取り付けられる側を裏側D2といい、裏側D2とは反対側を表側D1という。表側D1と裏側D2とを形成する方向を取付方向Dという。コネクタ1の表側D1においては、複数のコネクタ端子3の一端部31が配置されるとともに、複数のコネクタ端子3の一端部31によって、雌コネクタ72が接続される接続部11が形成されている。本形態のコネクタ1においては、2つの接続部11が形成されている。接続部11におけるケース部52は、外側樹脂部5によって形成されている。
【0027】
(中子樹脂部2A,2B,コネクタ端子3)
図1及び
図5に示すように、コネクタ1においては、ナット4が対向して配置される中子樹脂部2A,2Bの他に、ナット4が対向して配置されない別の中子樹脂部2Dも配置されている。各中子樹脂部2A,2B,2Dは、コネクタ1の外側樹脂部5を成形する前に、複数のコネクタ端子3を配置してインサート成形したものである。各中子樹脂部2A,2B,2Dは、複数のコネクタ端子3の配列状態を固定するために用いられる。中子樹脂部2A,2B,2Dを用いることにより、複数のコネクタ端子3が配列されたコネクタ1の製造を容易にすることができる。
【0028】
図1に示すように、複数のコネクタ端子3は、その両端部31,32が中子樹脂部2A,2Bから突出する雄端子として形成されている。
図4及び
図5に示すように、複数のコネクタ端子3の一端部31は、雌コネクタ72との接続のために使用され、複数のコネクタ端子3の他端部32は、制御基板71に取り付けられる。中子樹脂部2A,2Bには、適宜間隔を空けて互いに平行な状態で並ぶ複数のコネクタ端子3が配置されている。
【0029】
同図に示すように、本形態の各中子樹脂部2A,2Bには、所定本数のコネクタ端子3が2段に並ぶ状態で配置されている。中子樹脂部2A,2Bは、2段に並ぶコネクタ端子3が配置されたコネクタ1の成形を容易にするために、第1中子樹脂部2Aと第2中子樹脂部2Bとの2段に分かれて成形されている。第1中子樹脂部2Aは、ナット4に対向するナット対向面21Aを有する。第2中子樹脂部2Bは、第1中子樹脂部2Aに対する取付方向Dの表側D1に対向して配置されている。なお、別の中子樹脂部2Dも、中子樹脂部2A,2Bと同様に2段に分かれて成形されている。
【0030】
複数のコネクタ端子3における、各中子樹脂部2A,2B,2Dから突出する両端部31,32は、取付方向Dに平行に配置されている。
図3に示すように、複数のコネクタ端子3における、中子樹脂部2A,2B,2Dに埋設された中間部33は、取付方向Dに平行な状態から取付方向Dに直交する状態に屈曲している。
【0031】
図1に示すように、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bは、複数のコネクタ端子3の中間部33の多くの部位を覆っている。第2中子樹脂部2Bにおける複数のコネクタ端子3の中間部33の一部は、穴部26によって第2中子樹脂部2Bから露出し、外側樹脂部5内に埋設される。
図4及び
図5に示すように、第1中子樹脂部2Aにおける、複数のコネクタ端子3の中間部33を覆う部分には、ナット4と対向する対向凸部23が形成されている。
【0032】
本形態の第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aは、対向凸部23の先端に形成されている。また、第1中子樹脂部2Aの反対側面22Aは、ナット対向面21Aに対して平行に形成されている。第1中子樹脂部2Aにおける、複数のコネクタ端子3の中間部33を覆う部分と、第2中子樹脂部2Bにおける、複数のコネクタ端子3の中間部33を覆う部分とは互いに平行に配置されている。第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bは、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aに対して平行に形成されている。
【0033】
ナット対向面21Aと反対側面22A,22Bとは、必ずしも平行になっている必要はない。ナット対向面21A及び反対側面22A,22Bは、ナット4の内側端面42の外形を、コネクタ1の取付方向Dに沿って第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bに投影したときに、この外径の投影範囲内に存在する面であればよい。
【0034】
図1及び
図4に示すように、複数のコネクタ端子3は、モータ、センサ等の電子制御機器の制御用の端子として使用される。コネクタ1においては、コネクタ端子3の断面積よりも大きな断面積を有する電源用の端子(バスバー)3Cも配置されている。電源用の端子3Cは、インサート成形によって電源用中子樹脂部2Cに配置されている。電源用の端子3Cの両端部は、電源用中子樹脂部2Cから突出しており、電源用の端子3Cの中間部は、電源用中子樹脂部2Cに埋設されている。電源用中子樹脂部2Cにおける、電源用の端子3Cの中間部を覆う部分は、第1中子樹脂部2Aの取付方向Dの裏側D2に対向して配置されている。
【0035】
(ナット4)
図4及び
図5に示すように、ナット4は、貫通しない、凹状のネジ穴40を有する袋状ナットによって構成されている。言い換えれば、ナット4の外側端面41には、ネジ穴40の開口部401が配置されており、ナット4の内側端面42には、ネジ穴40を閉塞する底部402が配置されている。第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aには、ナット4の底部402が対向している。
【0036】
ナット4は、コネクタ1の取付方向Dの裏側D2に、外側端面41におけるネジ穴40の開口部401を露出する状態で、コネクタ1に配置されている。ナット4は、その強度を高めるために、金属材料によって構成されている。本形態の第1中子樹脂部2Aにおけるナット対向面21Aは、第1中子樹脂部2Aにおける、コネクタ1の取付方向Dの裏側D2に配置された面となる。
【0037】
(外側樹脂部5)
図1及び
図2に示すように、外側樹脂部5は、コネクタケースにおける、中子樹脂部2A,2B以外の部分を形成するものであり、コネクタケースの外形形状を形成する樹脂の部分である。コネクタ1においては、中子樹脂部2A,2Bと外側樹脂部5とが一体化されており、コネクタ1の外部から中子樹脂部2A,2Bと外側樹脂部5とを区別することは難しい。
【0038】
ただし、コネクタ1を切断したときには、中子樹脂部2A,2Bと外側樹脂部5との間の境界位置を確認することができる。この境界位置には、中子樹脂部2A,2Bが成形されたときの樹脂の表面層が配置される。この表面層は、硬度が高くなる等の、他の部位に比べて異なる性質を有することが多い。このことによっても、コネクタケース内に中子樹脂部2A,2Bが形成されていることを確認することができる。
【0039】
(成形型6)
次に、コネクタ1の製造方法において用いられる成形型6について説明する。
コネクタ1の外側樹脂部5は、射出成形を行うことによって成形される。射出成形を行う際には、溶融樹脂を射出する射出シリンダー等を備えた射出成形機と、
図6及び
図7に示すように、射出シリンダーから射出される溶融樹脂が供給される成形型6とが用いられる。溶融樹脂は、外側樹脂部5を構成する樹脂材料が溶融したものである。成形型6は、成形後の成形品を取り出し可能にするために一対の型部61,62と、スライド型部63とに分割されている。
【0040】
図6及び
図7に示すように、外側樹脂部5の成形を行う際には、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B、電源用中子樹脂部2C、別の中子樹脂部2D及びナット4は、成形型6内に配置される。そして、
図8及び
図9に示すように、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B、電源用中子樹脂部2C、別の中子樹脂部2D及びナット4は、外側樹脂部5を構成する樹脂材料によるインサート成形を行った際に、外側樹脂部5に配置される。
【0041】
図6及び
図7に示すように、一対の型部61,62は、射出成形機の射出シリンダーの端部に配置された射出ノズルが配置されるノズル側型部61と、ノズル側型部61との間に、溶融樹脂が充填されるキャビティ60を形成する対向側型部62とからなる。ノズル側型部61には、キャビティ60への溶融樹脂の注入口を形成するゲート611が形成されている。
【0042】
本形態のゲート611は、ノズル側型部61における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bとしての取付方向Dの表側D1の表面に対向する位置に形成されている。より具体的には、ゲート611は、ノズル側型部61における、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bを介して各ナット4と対向する位置に、それぞれ形成されている。なお、スライド型部63は、一対の型部61,62のみの型開きによっては、成形後のコネクタ1の取り出しができないために使用される。
【0043】
また、ノズル側型部61及び対向側型部62には、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dを保持して、各型部61,62に対する各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの位置決めを行うための中子保持部612が形成されている。各型部61,62に中子保持部612が形成されていることにより、外側樹脂部5の成形を行う際に、成形型6における、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの位置が保持される。
【0044】
各型部61,62に中子保持部612を形成するときには、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dを各型部61,62に接触させ、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dのコネクタ端子3又は電源用の端子3Cが各型部61,62に接触しないようにすることができる。また、各型部61,62の中子保持部612によって保持される、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの部位は、外側樹脂部5の表面に露出される各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの一部としての露出面25を形成する。
【0045】
図10には、コネクタ1の取付方向Dの表側D1における、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの露出面25と、この露出面25に対応する、ノズル側型部61の中子保持部612とを示す。また、
図11には、コネクタ1の取付方向Dの裏側D2における、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの露出面25と、この露出面25に対応する、対向側型部62の中子保持部612とを示す。
【0046】
図6及び
図7に示すように、本形態の対向側型部62には、ナット4の外側端面41の近傍の外周を保持するナット保持部621が形成されている。ナット保持部621は、対向側型部62の成形面からキャビティ60に向けて突出して形成されている。ナット4の外側端面41及び外側端面41の近傍の外周は、ナット保持部621によって保持されることによって、成形後の外側樹脂部5の表面に露出される。なお、ナット保持部621は、ナット4のネジ穴40を保持する形状、あるいはナット4の外側端面41及び外側端面41の近傍の外周と、ナット4のネジ穴40とを保持する形状に形成してもよい。
【0047】
(注入跡51)
図12に示すように、外側樹脂部5の表面に形成された注入跡51は、ノズル側型部61のゲート611に配置された樹脂材料(溶融樹脂)の跡として形成されている。ゲート611に配置されて固化した樹脂材料の部分は、各型部61,62,63によるキャビティ60から、外側樹脂部5が固化して製造されたコネクタ1が取り出されるときに切除される。この切除を行った後には、ゲート611の断面形状を有する注入跡51が、外側樹脂部5の表面に注入跡51として残る。なお、ゲート611における樹脂材料の部分は、製造後のコネクタ1がキャビティ60から取り出された後に切除してもよい。
【0048】
図4及び
図5に示すように、本形態の注入跡51は、外側樹脂部5における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bを覆う部位であって、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bを介してナット4と対向する部位の表面に形成されている。この注入跡51の形成位置により、
図8及び
図9に示すように、ゲート611から第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bに加わる樹脂材料の注入時の圧力Pは、ナット4と対向する位置に加えられたと認知することができる。これにより、コネクタ1におけるナット4の姿勢が、より確実に目標とする規定の姿勢に保たれていると判断することができる。
【0049】
(製造方法)
次に、コネクタ1の製造方法について詳説する。
本形態のコネクタ1の製造方法においては、射出成形機及び成形型6を用い、各中子樹脂部2A,2B,2C,2D及びナット4をインサート部品として外側樹脂部5を成形し、コネクタ1を得る。
【0050】
コネクタ1の製造に当たっては、予備工程として、複数のコネクタ端子3が配置された成形型内に樹脂材料が注入されて、第1中子樹脂部2Aが成形される。また、複数のコネクタ端子3が配置された成形型内に樹脂材料が注入されて、第2中子樹脂部2Bが成形される。また、複数の電源用の端子3Cが配置された成形型内に樹脂材料が注入されて、電源用中子樹脂部2Cが成形される。さらに、複数のコネクタ端子3が配置された成形型内に樹脂材料が注入されて、別の中子樹脂部2Dが成形される。
【0051】
次いで、成形工程として、
図6及び
図7に示すように、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B、電源用中子樹脂部2C、別の中子樹脂部2Dが、各型部61,62の成形面における各中子保持部612に保持される。また、各ナット4が、対向側型部62の成形面における各ナット保持部621に保持される。そして、ノズル側型部61が対向側型部62に対して相対的に接近して、ノズル側型部61と対向側型部62とが組み合わさり、成形型6のキャビティ60が形成される。
【0052】
このとき、キャビティ60においては、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aに対して各ナット4の内側端面42が対向する。また、ノズル側型部61の各ゲート611が、第2中子樹脂部2Bにおける反対側面22Bに対向する。より具体的には、ノズル側型部61の各ゲート611が、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、ナット4の投影位置に対向する。言い換えれば、各ナット4の内側端面42が、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bを介してノズル側型部61の各ゲート611に対向する。
【0053】
ここで、ナット4の投影位置とは、ナット4の内側端面42の外形を、コネクタ1の取付方向Dに沿って第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bに投影したときに、この反対側面22Bに投影される内側端面42の外形の投影範囲とすることができる。各ゲート611とナット4の投影位置とが対向する状態においては、ノズル側型部61のゲート611の形成範囲の少なくとも一部と、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、内側端面42の外形の投影範囲の少なくとも一部とが、取付方向Dから見たときに互いに重なっていればよい。
【0054】
次いで、
図8及び
図9に示すように、射出成形機の射出シリンダー及び射出ノズルから、ノズル側型部61の各ゲート611へ、溶融した樹脂材料が供給される。このとき、樹脂材料は、ゲート611から、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bに向けて吐出され(注入され)、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、ナット4の投影位置に衝突する。
【0055】
これにより、樹脂材料の注入時の圧力Pを、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを介してナット4の内側端面42に作用させることができる。そして、樹脂材料の注入時の圧力Pによって、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを介してナット4を対向側型部62へ押さえ付けることができる。また、対向側型部62のナット保持部621からナット4が動かないようにすることができる。そのため、対向側型部62のナット保持部621におけるナット4の姿勢を、目標とする規定の姿勢に保つことができる。
【0056】
そして、成形型6のキャビティ60内に樹脂材料が充填され、キャビティ60内の樹脂材料が、所定の射出圧力に維持されて固化する。その結果、樹脂材料によって外側樹脂部5が成形され、キャビティ60内に、各コネクタ端子3、各電源用の端子3C、各中子樹脂部2A,2B,2C,2D、ナット4等を内蔵するコネクタ1が成形される。その後、
図12に示すように、ノズル側型部61が対向側型部62に対して相対的に離隔され、キャビティ60内からコネクタ1が取り出される。
【0057】
(作用効果)
本形態のコネクタ1は、外側樹脂部5のインサート成形を行う際に、複数のコネクタ端子3が配置された中子樹脂部2A,2Bをインサート部品として利用して、成形されたものである。成形されたコネクタ1においては、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aには、2つのナット4が配置されており、各中子樹脂部2A,2Bの露出面25とナット4の外側端面41とは外部に露出されている。また、外側樹脂部5における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bを覆う部位であって、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bを介してナット4と対向する部位の表面には、外側樹脂部5の成形時における注入跡51が形成されている。
【0058】
外側樹脂部5の表面に露出された各中子樹脂部2A,2Bの露出面25は、キャビティ60内に外側樹脂部5を成形する際に、各型部61,62の各中子保持部612に各中子樹脂部2A,2Bを保持するために利用された部位である。また、各ナット4の外側端面41は、キャビティ60内に外側樹脂部5を成形する際に、対向側型部62の各ナット保持部621にナット4を保持するために利用される。そして、各ナット4は、各中子保持部612に保持された第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bによっても、その姿勢が変化しないように支えられる。
【0059】
また、外側樹脂部5の注入跡51は、ノズル側型部61に設けられたゲート611から、外側樹脂部5を成形するための樹脂材料をキャビティ60内へ注入するために利用された部位である。キャビティ60内に外側樹脂部5を成形する際には、各中子樹脂部2A,2B及び各ナット4が各型部61,62の各保持部612,621に保持される。このとき、各型部61,62への第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B及びナット4の配置が可能であるためには、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B及びナット4は、一対の型部61,62によって完全には挟み込まれない。
【0060】
つまり、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aとナット4の内側端面42との間、第1中子樹脂部2Aと第2中子樹脂部2Bとの間には微小な隙間が形成される。そして、ナット保持部621に保持されたナット4は、キャビティ60内を流れる樹脂材料によってナット保持部621から若干動いて、ナット保持部621に対する姿勢が変化し、ナット保持部621に対して傾くおそれがある。
【0061】
そこで、各ゲート611から、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、ナット4の投影位置に樹脂材料を衝突させることにより、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを介して各ナット4を対向側型部62へ効果的に押さえ付けることができる。言い換えれば、樹脂材料の注入時の圧力Pを利用して、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを微小な隙間の範囲内で、各ナット4の側へ位置ずれさせることができる。これにより、外側樹脂部5の成形によって製造されたコネクタ1においては、ナット4の姿勢が目標とする規定の姿勢に保たれることになる。
【0062】
また、外側樹脂部5を成形する際に、ナット4は、対向側型部62に形成された、形状変化部としてのナット保持部621によって位置決めされる。このナット保持部621は、対向側型部62に対して回転、スライド等の動作が可能な可動部とする必要はなく、対向側型部62の形状が変化して形成されたものである。これにより、成形型6の構造が複雑になることが防止される。
【0063】
それ故、本形態のコネクタ1は、簡単な構造の成形型6によって成形することができ、ナット4の位置及び姿勢の精度を高く維持して成形することができる。また、本形態のコネクタ1の製造方法によれば、簡単な構造の成形型6によって、ナット4の位置及び姿勢の精度を高く維持して、コネクタ1を成形することができる。
【0064】
(他の構成)
本形態のノズル側型部61の各ゲート611は、前述したように、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、各ナット4の投影位置に対向させた。これ以外にも、各ゲート611は、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける適宜箇所に対向させることもできる。この場合にも、ゲート611からキャビティ60内に注入される樹脂材料によって、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを介して、各ナット4を対向側型部62へ押さえ付けることができる。また、この場合には、注入跡51は、外側樹脂部5における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bを覆う部位の適宜箇所に形成される。
【0065】
また、ナット4と対向して配置される中子樹脂部2A,2Bは、複数のコネクタ端子3が2段の状態で配置されず、1段の状態で配置される場合には、第1中子樹脂部2Aと第2中子樹脂部2Bとに分かれていなくてもよい。また、例えば、複数のコネクタ端子3が3段の状態で設けられる場合には、中子樹脂部は、各段に対応して、互いに重なる3つの中子樹脂部によって形成することができる。
【0066】
<実施形態2>
本形態のコネクタ1においては、ナット4の姿勢を、より確実に規定の姿勢に維持するために、
図13及び
図14に示すように、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bに、外側樹脂部5が充填される貫通穴27を形成している。
【0067】
同図に示すように、本形態の第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bにおける、ナット4と対向する部位には、ナット4に向かって貫通する貫通穴27が形成されている。第1中子樹脂部2Aの貫通穴27は、対向凸部23のナット対向面21Aから反対側面22Aまで貫通して形成されている。第2中子樹脂部2Bの貫通穴27は、第1中子樹脂部2Aの貫通穴27と対向する位置において貫通して形成されている。
【0068】
第1中子樹脂部2Aの貫通穴27と第2中子樹脂部2Bの貫通穴27とには、外側樹脂部5が連続して充填されている。また、本形態の注入跡51は、外側樹脂部5における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bを覆う部位であって、第2中子樹脂部2Bの貫通穴27と対向する部位の表面に形成されている。
【0069】
本形態において用いる射出成形機及び成形型6は、実施形態1の場合と同様である。
【0070】
本形態のコネクタ1の製造方法においては、外側樹脂部5を成形する際に、成形型6のキャビティ60内に、ノズル側型部61のゲート611から樹脂材料が注入される際の作用が、実施形態1の場合と異なる。
【0071】
本形態においては、成形工程として、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B、ナット4等が、各型部61,62の成形面における各保持部612,621に保持された後、各型部61,62,63によってキャビティ60が形成されたときには、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bの各貫通穴27に対して、各ナット4の内側端面42が対向する。また、ノズル側型部61の各ゲート611が、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bの各貫通穴27に対向する。言い換えれば、各ナット4の内側端面42が、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bの各貫通穴27を介してノズル側型部61の各ゲート611に対向する。
【0072】
各ゲート611と第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bの各貫通穴27とが対向する状態においては、ノズル側型部61のゲート611の形成範囲の少なくとも一部と、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bの各貫通穴27の少なくとも一部とが、取付方向Dにおいて互いに重なっていればよい。
【0073】
次いで、
図15及び
図16に示すように、射出成形機の射出シリンダー及び射出ノズルから、ノズル側型部61の各ゲート611へ、溶融した樹脂材料が供給される。このとき、樹脂材料は、ゲート611から、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bの各貫通穴27に向けて吐出され(注入され)、各貫通穴27内に入ってナット4の内側端面42に衝突する。
【0074】
これにより、樹脂材料の注入時の圧力Pを、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aの各貫通穴27を利用して、ナット4の内側端面42に直接作用させることができる。そして、樹脂材料の注入時の圧力Pによって、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aの各貫通穴27を利用して、ナット4を対向側型部62へ直接押さえ付けることができる。また、対向側型部62のナット保持部621からナット4が動かないようにすることができる。そのため、対向側型部62のナット保持部621におけるナット4の姿勢を、目標とする規定の姿勢に、より確実に保つことができる。
【0075】
本形態のコネクタ1及びその製造方法におけるその他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0076】
本形態のノズル側型部61の各ゲート611は、前述したように、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bの各貫通穴27に対向させた。これ以外にも、各ゲート611は、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、貫通穴27の周辺の位置に対向させることもできる。この場合にも、ゲート611からキャビティ60内に注入される樹脂材料によって、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aの各貫通穴27を利用して、各ナット4を対向側型部62へ直接押さえ付けることができる。また、この場合には、注入跡51は、外側樹脂部5における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bを覆う部位の、貫通穴27に対向する位置の周辺に形成される。
【0077】
また、ナット4と対向して配置される中子樹脂部は、実施形態1の場合と同様に、第1中子樹脂部2Aと第2中子樹脂部2Bとに分かれていなくてもよい。また、ナット4と対向して配置される中子樹脂部は、互いに重なる3つ以上の中子樹脂部によって形成してもよい。
【0078】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。