(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、口腔用組成物において、歯と歯の隙間のバイオフィルムに対する除去効果の向上が望まれた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、口腔バイオフィルム除去効果、特に歯と歯の隙間のバイオフィルムに対する除去効果が優れる、α−オレフィンスルホン酸塩含有の口腔バイオフィルム除去剤及びこれを含有する歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)α−オレフィンスルホン酸塩に、(B)平均粒径が50〜400μmである水不溶性顆粒、特にシリカ顆粒を併用すると、特に歯と歯の隙間のバイオフィルムに対するバイオフィルム除去効果が優れ、口腔バイオフィルム除去剤として有効であることを知見した。また、この(A)及び(B)成分を歯磨剤組成物に配合することで、口腔バイオフィルム除去効果が向上し、特に歯と歯の隙間のバイオフィルムに対する除去効果が優れ、かつ歯面のツルツル感を満足に付与し、高い清掃実感を与えることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
更に詳述すると、口腔用組成物、中でも1回当たりの使用量が1g程度と比較的少なく、口腔内で使用中には唾液で希釈されるため薬効を十分に発揮させ難い歯磨剤組成物において、α−オレフィンスルホン酸塩によるバイオフィルム除去効果は十分ではなく、その効果を高めるために配合量を増やすと製剤の味が悪くなったり、舌がピリピリするような刺激を感じやすくなる。また、水不溶性顆粒には物理的な清掃力が期待できるものの、それによるバイオフィルム除去効果は十分ではなく、一方で、その添加量が増えるにつれて歯磨き時の違和感が強くなって使用感が低下したり、製剤が固くなって容器から押し出し難くなるといった使用性の問題が発生する。これに対して、本発明では(A)成分に(B)成分を組み合わせると、意外にも、両成分が相乗的に作用して前記のような使用感、使用性の問題を生じさせることなく、特に歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果が向上し、また同時に、歯磨きによって歯面が十分に清掃されてきれいになったと実感し得るツルツルとした感覚を満足に付与することもできる。この場合、(A)及び(B)成分の組み合わせによって、α−オレフィンスルホン酸塩又は水不溶性顆粒の単独使用を超えてバイオフィルム除去効果が格段に高まり、上記の格別顕著な作用効果を与える。
よって、本発明によれば、歯列の歯表面のみならず、歯と歯の隙間に存在するバイオフィルムまでも除去する優れたバイオフィルム除去効果と、歯磨きによって歯面が十分に清掃されたという満足な効果実感とを同時に付与することが可能となる。
【0009】
なお、特許文献3、4(特開2014−94923号公報、特開2015−117206号公報)は、特定の歯磨剤用顆粒による、歯垢や汚れの除去能及び泡性能の向上であり、具体的に顆粒をα−オレフィンスルホン酸塩に組み合わせることの記載がない。特許文献3、4から、α−オレフィンスルホン酸塩と水不溶性顆粒とを組み合わせることで相乗的に上記バイオフィルム除去効果が向上することは想起できない。
【0010】
従って、本発明は、下記の歯磨剤組成物及び口腔バイオフィルム除去剤を提供する。
〔1〕
(A)α−オレフィンスルホン酸塩と、(B)平均粒径が50〜400μmである水不溶性顆粒とを含有してなることを特徴とする歯磨剤組成物。
〔2〕
(B)成分の平均粒径が50〜250μmである〔1〕記載の歯磨剤組成物。
〔3〕
(B)成分の水不溶性顆粒が、平均崩壊強度10〜200g/個のシリカ顆粒である〔1〕又は〔2〕記載の歯磨剤組成物。
〔4〕
(B)成分の水不溶性顆粒が、平均粒径が80〜150μmであり、かつ平均崩壊強度が10〜50g/個のシリカ顆粒である〔3〕記載の歯磨剤組成物。
〔5〕
(A)成分を0.05〜1.5質量%、(B)成分を0.1〜10質量%含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
〔6〕
(B)/(A)が質量比として1〜60である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
〔7〕
更に、(C)粘結剤を0.1〜5質量%含有する〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
〔8〕
(C)粘結剤が、少なくともキサンタンガムを含む〔7〕記載の歯磨剤組成物。
〔9〕
(A)α−オレフィンスルホン酸塩と、(B)平均粒径が50〜400μmである水不溶性顆粒とからなる口腔バイオフィルム除去剤。
〔10〕
(B)成分の水不溶性顆粒が、平均崩壊強度10〜200g/個のシリカ顆粒である〔9〕記載の口腔バイオフィルム除去剤。
〔11〕
(B)/(A)が質量比として1〜60である〔9〕又は〔10〕記載の口腔バイオフィルム除去剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、口腔バイオフィルム除去効果、特に歯と歯の隙間のバイオフィルムに対する除去効果が優れ、かつ歯面のツルツル感を満足に付与して高い清掃実感を与える、α−オレフィンスルホン酸塩含有の歯磨剤組成物及び口腔バイオフィルム除去剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔バイオフィルム除去剤及び歯磨剤組成物は、(A)α−オレフィンスルホン酸塩及び(B)平均粒径が50〜400μmである水不溶性顆粒を併用する。
【0013】
(A)α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数が14〜16のα−オレフィンスルホン酸のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩を用いることができ、好ましくは炭素数14のα−オレフィンスルホン酸塩、特にナトリウム塩(一般名;テトラデセンスルホン酸ナトリウム)である。これらは口腔用製剤に使用可能な市販品を入手することができ、例えばライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の商品名「KリポランPJ−400CJ」を使用し得る。
【0014】
(B)成分は、平均粒径が50〜400μmである水不溶性顆粒であり、好ましい平均粒径は50〜300μm、特に50〜250μm、とりわけ80〜150μmである。平均粒径が50μm未満であると、歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果が劣り、また、歯面のツルツル感付与効果が劣る。400μmを超えると、歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果が低下する。
なお、上記平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック粒度分布計、分散媒;水)を用いて測定し、測定値は体積平均を用いたメジアン径(d50)で算出した(以下同様。)。
【0015】
更に、水不溶性顆粒としては、崩壊性顆粒を用いることができ、その平均崩壊強度が好ましくは10〜200g/個、より好ましくは10〜50g/個である。平均崩壊強度が大きいほど、清掃性、バイオフィルム除去効果が向上するが、200g/個以下であることが、歯磨き中の違和感を抑えるには好適である。
なお、平均崩壊強度は、レオメーター(サン科学社製のサンレオメーターCR−200D)により、顆粒30個について1個ずつ自動破断強度測定値(顆粒1個を10mm/分の速度で圧縮した時に顆粒が崩壊するときの荷重)を測定した値の平均値である。
【0016】
(B)成分の水不溶性顆粒としては、上記物性を有する歯磨剤用顆粒を使用し得るが、特にシリカ顆粒が好適である。例えば、東ソー・シリカ(株)製の商品名 NIPGEL等の市販品を使用できる。
【0017】
(A)α−オレフィンスルホン酸塩と(B)特定の水不溶性顆粒との配合割合を示す(B)/(A)は、質量比として1〜60、特に1.3〜60が好ましく、より好ましくは1.5〜40、特に好ましくは2〜30である。この範囲内であると、口腔バイオフィルム除去効果がより優れる。
【0018】
本発明の口腔バイオフィルム除去剤は、口腔用組成物、特に歯磨剤組成物に好適に配合される。
この場合、(A)成分のα−オレフィンスルホン酸塩の配合量は、組成物全体の0.05〜1.5%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは0.1〜1.1%、更に好ましくは0.2〜1%である。配合量が多いほどバイオフィルム除去効果が向上し、0.05%以上であると歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果が十分に優れ、また、歯のツルツル感を十分に付与できる。1.5%以下であると、苦味、舌がピリピリするような刺激を感じるのを十分に防止できる。
【0019】
(B)成分の水不溶性顆粒の配合量は、組成物全体の0.1〜10%が好ましく、0.4〜8%がより好ましく、更に好ましくは1〜8%である。配合量が多いほどバイオフィルム除去効果、歯のツルツル感付与効果が向上し、0.1%以上であると、歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果が十分に優れ、また、歯のツルツル感を十分に付与できる。10%以下であると、使用時に違和感を感じるのを防止できる。
【0020】
更に、本発明では、(C)粘結剤が好適に配合される。粘結剤を配合すると、泡持ちが良くなることによって(B)成分の水不溶性顆粒の分散性が高まり、バイオフィルム除去効果及び歯のツルツル感付与効果がより向上する。
粘結剤としては、例えば、キサンタンガム等のガム類、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられるが、少なくともキサンタンガムを含むことが好ましい。
粘結剤を配合する場合、その組成物全体に対する配合量は、好ましくは0.1〜5%、より好ましくは0.2〜3%である。
【0021】
本発明の歯磨剤組成物は、液体、液状、ペースト状などの形態で練歯磨剤、液体歯磨剤、液状歯磨剤、潤製歯磨剤等として、特に練歯磨剤として調製できる。この場合、上記成分に加えて、剤型等に応じたその他の任意成分を本発明の効果を妨げない範囲で適宜配合できる。具体的に練歯磨剤では、(B)成分以外の研磨剤、粘稠剤、(A)成分以外の界面活性剤、更に必要により甘味剤、防腐剤、色素、香料、各種有効成分等を配合し得る。
【0022】
研磨剤として具体的には、沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系研磨剤、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム系研磨剤、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト等が挙げられる。これら研磨剤を配合する場合、その組成物全体に対する配合量は、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜30%である。
【0023】
粘稠剤としては、ソルビット、キシリット、エリスリトール等の糖アルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。粘稠剤の配合量は、通常、組成物全体の0〜70%、特に3〜50%である。
【0024】
界面活性剤としては、(A)成分以外のアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
例えば、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、N−ラウロイルタウリン塩、ラウロイルサルコシン塩などが挙げられ、塩としては溶解性等からナトリウム塩が好適である。両性界面活性剤としては、例えばN−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられ、脂肪酸の鎖長が炭素数12〜14のものが溶解性の点で好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸ポリグリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
これら界面活性剤の配合量は、組成物全体の0〜10%、特に0.1〜5%が好ましい。
【0025】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム等が挙げられる。防腐剤としては、安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステルなどが挙げられる。
色素としては、食用色素であるブリリアントブルー、タートラジン等、顔料の酸化チタンなどが挙げられる。
【0026】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、l−メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料など、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、組成物中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。上記香料素材を使用した賦香用香料は、組成物中に0.1〜2%使用するのが好ましい。
【0027】
有効成分としては、例えば、クロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩類、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム等の抗炎症剤、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、塩化リゾチーム等の酵素剤、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール等のビタミン類、塩化ナトリウム等の収斂剤、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物などを、薬剤学的に許容できる範囲で使用することができる。
【0028】
歯磨剤組成物は、通常、pH6〜10、特にpH6〜9の範囲が汎用的であり、本発明でも上記範囲内が好ましい。
なお、組成物のpHはpH調整剤を用いて調整してもよい。pH調整剤としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタミン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等の酸やアルカリを適量配合し得る。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0030】
[実施例、比較例]
表1〜3に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を常法によって調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。
なお、顆粒の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック粒度分布計、分散媒;水)を用いて測定し、測定値は体積平均を用いたメジアン径(d50)で算出した。平均崩壊強度は、レオメーター(サン科学社製のサンレオメーターCR−200D)により、顆粒30個について1個ずつ自動破断強度測定値(顆粒1個を10mm/分の速度で圧縮した時に顆粒が崩壊するときの荷重)を測定した値の平均値である。
【0031】
<歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果の評価方法>
(1)モデルバイオフィルム作製方法
幅1mm、深さ1mmの隙間のある未処置のハイドロキシアパタイト(HA)ペレットを0.45μmのフィルターでろ過したヒト無刺激唾液で4時間処理したものをモデルバイオフィルム作製の担体に用い、24穴マルチプレート(住友ベークライト(株)製)の底部に設置した。培養液には、ベイサルメディウムムチン培養液(BMM)
*1を用いた。
モデルバイオフィルムを作製するために使用した菌株は、American Type Culture Collectionより購入したアクチノマイセス ヴィスコサス(Actinomyces viscosus)ATCC43146、ベイヨネラ パルビュラ(Veillonella parvula)ATCC17745、フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)ATCC10953、ストレプトコッカス オラリス(Streptococcus oralis)ATCC10557、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)ATCC25175を用いた。これら5菌株は予めBMM3,000mLを入れたRotating Disk Reactor(培養槽)にそれぞれ1×10
7cfu/mL(cfu:colony forming units)になるように接種し、唾液処理したHA担体と共に37℃、嫌気的条件下(5vol%炭酸ガス、95vol%窒素)で24時間培養した。その後、同条件でBMM培地を置換率5vol%/時間の割合で連続的に供給し10日間培養を行い、HA表面に5菌株種混合のモデルバイオフィルムを形成させた。
【0032】
*1 BMMの組成:1リットル中の質量で表す。
プロテオースペプトン(Becton and Dickinson社
製): 4g/L
トリプトン(Becton and Dickinson社製):
2g/L
イーストエキス(Becton and Dickinson社製):
2g/L
ムチン(シグマ アルドリッチ ジャパン社製): 5g/L
ヘミン(シグマ アルドリッチ ジャパン社製): 2.5mg/L
ビタミンK(和光純薬工業(株)製): 0.5mg/L
KCl(和光純薬工業(株)製): 1g/L
システイン(和光純薬工業(株)製): 0.2g/L
蒸留水: 残
(全量が1Lになるようにメスアップし、121℃で20分間オートクレ
ーブした。)
【0033】
(2)モデルバイオフィルムの除去効果
バイオフィルムを形成させる前のHAの隙間以外の部分に白色のシールを貼り、隙間部分を色差計で測定した値を基準色としてL0とした。シールを剥がし、上記の方法でバイオフィルムを形成させた後、再びHAの隙間以外の部分に白色のシールを貼り、隙間部分を色差計で測定した値をL1とした。シールを剥がし、HA表面を、調製した歯磨剤1gを載せた歯ブラシで20回ブラッシングした後、流水で軽く洗浄、乾燥させた。再びHAの隙間以外の部分に白色のシールを貼り、隙間部分を色差計で測定した値をL2とした。次式によりバイオフィルム除去率を算出し、10回の平均値について、以下の評価基準で評価し、この評価結果から歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果を判断した。
バイオフィルム除去率(%)=
〔(L1−L2)/(L1−L0)〕×100
評価基準
◎:バイオフィルム除去率が80%以上
○:バイオフィルム除去率が60%以上80%未満
△:バイオフィルム除去率が40%以上60%未満
×:バイオフィルム除去率が40%未満
【0034】
<歯のツルツル感の評価方法>
被験者10名を用いて歯磨剤組成物1gを歯ブラシにのせ、ブラッシングした後の歯のツルツル感を下記評点基準によって判定した。10名の平均値を求め、下記評価基準で評価した。
なお、ここで、歯のツルツル感とは、歯面に舌を接触させた際に、歯磨きによって歯面が十分に清掃されてきれいになったと実感できるツルツルとした感覚である。
評点基準
5:歯のツルツル感を非常に感じる
4:歯のツルツル感をかなり感じる
3:歯のツルツル感をやや感じる
2:歯のツルツル感をわずかに感じる
1:歯のツルツル感を感じない
評価基準
◎:平均値が4.0点以上5.0点以下
○:平均値が3.0点以上4.0点未満
△:平均値が2.0点以上3.0点未満
×:平均値が2.0点未満
【0035】
【表1】
*;参考例
【0036】
【表2】
*;参考例
【0037】
【表3】
【0038】
表3の比較例に示すように、テトラデセンスルホン酸ナトリウム単独、又は顆粒単独では、歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果が低かった。また、テトラデセンスルホン酸ナトリウムに不適切な顆粒を組み合わせると、歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果は改善せず劣った。これに対して、表1、2に示す本発明の(A)、(B)成分を併用した歯磨剤組成物(実施例)は、歯と歯の隙間に対するバイオフィルム除去効果及び歯のツルツル感が優れた。
【0039】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)テトラデセンスルホン酸ナトリウム;
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名 Kリポラ
ンPJ−400CJ
(B)顆粒;東ソー・シリカ(株)製、商品名 NIPGEL、
平均崩壊強度10〜50g/個
顆粒B1:AYグレードをふるいにより分級し、平均粒径100μ
mになるよう集めた。
顆粒B2:AYグレードをふるいにより分級し、平均粒径80μm
になるよう集めた。
顆粒B3:AYグレードをふるいにより分級し、平均粒径150μ
mになるよう集めた。
顆粒B4:AYグレードをふるいにより分級し、平均粒径300μ
mになるよう集めた。
顆粒B5:AYグレードをふるいにより分級し、平均粒径500μ
mになるよう集めた(比較品)。
顆粒B6:AYグレードをふるいにより分級し、平均粒径40μm
になるよう集めた(比較品)。
無水ケイ酸(研磨性シリカ);多木化学(株)製、平均粒径20μm