特許第6874707号(P6874707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874707
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両のスライドドア装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/06 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   B60J5/06 H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-22816(P2018-22816)
(22)【出願日】2018年2月13日
(65)【公開番号】特開2019-137248(P2019-137248A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 吉信
(72)【発明者】
【氏名】山下 真
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−324471(JP,A)
【文献】 特開2009−144487(JP,A)
【文献】 特開2011−256655(JP,A)
【文献】 実開昭58−079680(JP,U)
【文献】 実開昭58−079681(JP,U)
【文献】 実開昭56−140685(JP,U)
【文献】 米国特許第06328374(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに設けられたレールに対してスライドドアに設けられたガイドローラユニットの転動ローラが嵌合しており、前記転動ローラが前記レールの車幅方向における端部に形成された側板部のガイド面に沿って転動することで前記スライドドアが車幅方向からガイドされながらスライドして前記車両ボディのドア開口部を開閉する車両のスライドドア装置であって、
前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にある状態で、前記転動ローラを前記レールの側板部のガイド面から離す離隔機構が設けられており、
前記離隔機構は、前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にあるときに、前記スライドドアが移動中のときよりも前記レールのガイド面と前記転動ローラ間の隙間を大きくする車両のスライドドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のスライドドア装置であって、
前記離隔機構は、前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にあるときに前記転動ローラと前記レールのガイド面とを非接触状態に保持する車両のスライドドア装置。
【請求項3】
車両ボディに設けられたレールに対してスライドドアに設けられたガイドローラユニットの転動ローラが嵌合しており、前記転動ローラが前記レールのガイド面に沿って転動することで前記スライドドアがスライドして前記車両ボディのドア開口部を開閉する車両のスライドドア装置であって、
前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にある状態で、前記転動ローラを前記レールのガイド面から離す離隔機構が設けられており、
前記レールは、前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にあるときに前記転動ローラが嵌合するレール端部と、前記スライドドアが前記全閉位置近傍から開方向に移動する際に前記転動ローラが嵌合するレール本体部とを備え、前記レール端部の幅寸法が前記レール本体部の幅寸法よりも大きく設定されており、
前記離隔機構は、前記スライドドアが前記全閉位置近傍から前記全閉位置まで前記レール本体部の延長上を移動できるように、前記スライドドアを前記車両ボディに対して位置決めすることにより、前記レール端部のガイド面と前記転動ローラ間に隙間を形成させる車両のスライドドア装置。
【請求項4】
車両ボディに設けられたレールに対してスライドドアに設けられたガイドローラユニットの転動ローラが嵌合しており、前記転動ローラが前記レールのガイド面に沿って転動することで前記スライドドアがスライドして前記車両ボディのドア開口部を開閉する車両のスライドドア装置であって、
前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にある状態で、前記転動ローラを前記レールのガイド面から離す離隔機構が設けられており、
前記離隔機構は、前記レールに設けられており、前記スライドドア側の転動ローラが全閉位置まで移動する過程で、その転動ローラの回転中心軸を前記レールの幅方向における中央側にガイドして、前記転動ローラを前記レールのガイド面から離すガイド部材を備えている車両のスライドドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディに設けられたレールに対してスライドドアに設けられたガイドローラユニットの転動ローラが嵌合し、前記転動ローラが前記レールのガイド面に沿って転動することで前記スライドドアがスライドして前記車両ボディのドア開口部を開閉する車両のスライドドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関する従来の車両のスライドドア装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のスライドドア装置は、図10に示すように、車両ボディ100に設けられたアッパーレール103とセンターレール104とロアレール106とを備えている。そして、各レール103,104,106には、スライドドア110の上端部、中央部及び下端部にそれぞれ設けられたガイドローラユニット113,114,115の転動ローラ113r(図11図12参照)が各レール103,104,106に沿って転動可能なように連結されている。また、スライドドア110の中央部と下端部とのガイドローラユニット114,115には、スライドドア110の自重を支える支持ローラ(図示省略)が設けられている。これにより、スライドドア110は、ガイドローラユニット114,115の支持ローラに自重を支えられた状態で各レール103,104,106に沿ってドア開口部の開閉方向にスライドが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−128272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、スライドドア110は、車両ボディ100とレール103,104,106及びガイドローラユニット113,114,115を介して連結される構成である。このため、例えば、車両走行中に車両ボディ100に対して路面からの振動が加わると、車両ボディ100とスライドドア110とが個別に振動する。即ち、車両ボディ100に対してスライドドア110が相対的に振動する。ここで、図11図12に示すように、スライドドア110の上部ガイドローラユニット113には、支持ローラが設けられておらず転動ローラ113rのみでアッパーレール103と連結されているため、スライドドア110の上部で前記振動が比較的大きくなる。このため、アッパーレール103のガイド面103eと上部ガイドローラユニット113の転動ローラ113r間で付着と滑りとが繰り返されるスティックスリップ現象が発生し、スライドドア110の上部で車両走行時の異音が大きくなる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、スライドドアにおいて転動ローラとレールのガイド面間のスティックスリップ現象に起因する異音の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両ボディに設けられたレールに対してスライドドアに設けられたガイドローラユニットの転動ローラが嵌合しており、前記転動ローラが前記レールの車幅方向における端部に形成された側板部のガイド面に沿って転動することで前記スライドドアが車幅方向からガイドされながらスライドして前記車両ボディのドア開口部を開閉する車両のスライドドア装置であって、前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にある状態で、前記転動ローラを前記レールの側板部のガイド面から離す離隔機構が設けられており、前記離隔機構は、前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にあるときに、前記スライドドアが移動中のときよりも前記レールのガイド面と前記転動ローラ間の隙間を大きくする。
【0007】
本発明によると、スライドドアがドア開口部の全閉位置にある状態では、スライドドア側の転動ローラが車両ボディ側のレールのガイド面から離れている。このため、車両走行時に車両ボディに対してスライドドアが相対的に振動しても、転動ローラとレールのガイド面間でスティックスリップ現象が発生しない。したがって、車両走行時にスライドドアの位置で異音の発生を抑えることができる。
【0009】
第2の発明によると、離隔機構は、スライドドアがドア開口部の全閉位置にあるときに転動ローラとレールのガイド面とを非接触状態に保持する。
【0010】
第3の発明は、車両ボディに設けられたレールに対してスライドドアに設けられたガイドローラユニットの転動ローラが嵌合しており、前記転動ローラが前記レールのガイド面に沿って転動することで前記スライドドアがスライドして前記車両ボディのドア開口部を開閉する車両のスライドドア装置であって、前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にある状態で、前記転動ローラを前記レールのガイド面から離す離隔機構が設けられており、前記レールは、前記スライドドアがドア開口部の全閉位置にあるときに転動ローラが嵌合するレール端部と、前記スライドドアが前記全閉位置近傍から開方向に移動する際に前記転動ローラが嵌合するレール本体部とを備え、前記レール端部の幅寸法が前記レール本体部の幅寸法よりも大きく設定されており、離隔機構は、前記スライドドアが前記全閉位置近傍から前記全閉位置まで前記レール本体部の延長上を移動できるように、前記スライドドアを前記車両ボディに対して位置決めすることにより、前記レール端部のガイド面と前記転動ローラ間に隙間を形成させる。このため、スライドドアが全閉位置にあるときにレール端部のガイド面と転動ローラ間に隙間が形成されても、離隔機構によりスライドドアが支持される。
【0011】
第4の発明は、車両ボディに設けられたレールに対してスライドドアに設けられたガイドローラユニットの転動ローラが嵌合しており、前記転動ローラが前記レールのガイド面に沿って転動することで前記スライドドアがスライドして前記車両ボディのドア開口部を開閉する車両のスライドドア装置であって、前記スライドドアが前記ドア開口部の全閉位置にある状態で、前記転動ローラを前記レールのガイド面から離す離隔機構が設けられており、前記離隔機構は、前記レールに設けられており、前記スライドドア側の転動ローラが全閉位置まで移動する過程で、その転動ローラの回転中心軸を前記レールの幅方向における中央側にガイドして、前記転動ローラを前記レールのガイド面から離すガイド部材を備えている。このため、スライドドアが全閉位置にあるときにレールのガイド面と転動ローラ間に隙間が形成されても、レールのガイド部材、及び転動ローラの回転中心軸によりスライドドアが支持される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、スライドドアにおいて転動ローラとレールのガイド面間のスティックスリップ現象に起因する異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係るスライドドア装置を備える車両の模式斜視図である。
図2】車両ボディのルーフサイド部の縦断面図(図1のII-II矢視断面図)である。
図3】本実施形態に係るスライドドア装置においてスライドドアが全閉位置にあるときの平面図(図1のIII矢視平面図)である。
図4】前記スライドドア装置においてスライドドアが全閉位置にあるときのアッパーレールと転動ローラとの関係を表す縦断面図(図3のIV-IV矢視断面図)である。
図5】前記スライドドア装置においてスライドドアが全閉位置から離れた位置にあるときの平面図である。
図6】前記スライドドア装置においてスライドドアが全閉位置から離れた位置にあるときのアッパーレールと転動ローラとの関係を表す縦断面図(図5のVI-VI矢視断面図)である。
図7】変更例に係るスライドドア装置のアッパーレールを表す平面図である。
図8】変更例に係るスライドドア装置においてスライドドアが全閉位置にあるときのアッパーレールと転動ローラとの関係を表す平断面図である。
図9】変更例に係るスライドドア装置においてスライドドアが全閉位置にあるときのアッパーレールと転動ローラとの関係を表す縦断面図(図8のIX-IX断面図)である。
図10】従来のスライドドア装置を備える車両の模式側面図である。
図11】前記スライドドア装置の上部ガイドローラユニットとアッパーレールとを表す斜視図である。
図12】前記スライドドア装置の上部ガイドローラユニットとアッパーレールとを表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、図1図9に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のスライドドア装置について説明する。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、本実施形態に係るスライドドア装置を備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<車両のスライドドア装置20の概要について>
スライドドア装置20は、図1に示すように、後部座席に対応する位置に形成された車両ボディ10のリヤドア開口部12(以下、ドア開口部12という)を開閉する装置である。スライドドア装置20は、スライドドア21と、そのスライドドア21を前後スライド可能に支持する車両ボディ10側のアッパーガイドレール16、ロアガイドレール17、センターガイドレール18とを備えている。
【0016】
アッパーガイドレール16とロアガイドレール17とは、図1に示すように、車両ボディ10のドア開口部12の上辺と下辺とに設けられており、センターガイドレール18は前記ドア開口部12の後側の高さ方向中央位置に設けられている。各ガイドレール16,17,18は車両前後方向に延びており、各ガイドレール16,17,18の前部が車幅方向内側(右側)に湾曲している。このため、各ガイドレール16,17,18の前部を、以後、前端湾曲部16w,17w,18wと呼ぶことにする。
【0017】
各ガイドレール16,17,18には、スライドドア21の上端部、下端部及び中央部にそれぞれ設けられたガイドローラユニット23,24,25が各ガイドレール16,17,18に沿って移動可能な状態で連結されている。これにより、スライドドア21は車両ボディ10の外側で各ガイドレール16,17,18に沿って前後スライドが可能になる。また、スライドドア21が前端位置(全閉位置)に近づくと、上端部、下端部及び中央部のガイドローラユニット23,24,25が各ガイドレール16,17,18の前端湾曲部16w,17w,18wに沿って移動する。これにより、スライドドア21は、車両ボディ10の外側からドア開口部12の内側に引き込まれるようになる。
【0018】
<スライドドア21の上部支持構造について>
車両ボディ10のルーフ部15の左右両側には、図2に示すように、筒状のルーフサイド部15rが車両前後方向に延びるように形成されている。そして、左側のルーフサイド部15rの下側には、アッパーガイドレール16を収納するレール用凹部14が形成されており、そのレール用凹部14の下側に前記ドア開口部12が形成されている。アッパーガイドレール16は、断面略逆U字形に形成されており、そのアッパーガイドレール16の天井板部160tがルーフサイド部15rの下面に水平に取付けられている。アッパーガイドレール16は、図1に示すように、ドア開口部12の上辺に沿って車両前後方向に延びる直線部16sと、上記したように、車幅方向内側(右側)に湾曲する前端湾曲部16w(図3参照)とを備えている。
【0019】
そして、図2図3に示すように、スライドドア21の上部に設けられたガイドローラユニット23の転動ローラ232がアッパーガイドレール16の直線部16sと前端湾曲部16wとのガイド面160gに沿って転動可能なように、そのアッパーガイドレール16に嵌合している。上記構成により、スライドドア21が前端位置(全閉位置)に近づき、転動ローラ232がアッパーガイドレール16の前端湾曲部16wのガイド面160gに沿って転動することで、スライドドア21はドア開口部12の内側に引き込まれるようになる。
【0020】
車両ボディ10のドア開口部12の周縁には、図2に示すように、主ウエザーストリップ12wが取付けられている。主ウエザーストリップ12wは、ドア開口部12の形状に合わせて略角枠状に形成されており、全閉位置のスライドドア21と車両ボディ10間をシールする。また、ルーフサイド部15rの下側でレール用凹部14の入口側には上部ウエザーストリップ15wが取付けられている。上部ウエザーストリップ15wは、スライドドア21とルーフサイド部15rとの見切り隙Mを通過した雨水がレール用凹部14内に入らないようにするためのシール材である。
【0021】
<位置決め機構30について>
スライドドア21と車両ボディ10間には、図3に示すように、全閉位置でスライドドア21の前上部を車両ボディ10の定位置に位置決めするための位置決め機構30が設けられている。位置決め機構30は、スライドドア21のガイドローラユニット23の前側に固定された位置決めピン31を備えている。位置決めピン31は、円柱形をした先細のピンであり、その位置決めピン31の基端部がガイドローラユニット23の前側に固定されている。また、位置決め機構30は、車両ボディ10のドア開口部12の壁面12kにボルトB止めされた筒状部材34を備えている。筒状部材34には、位置決めピン31が挿通されるほぼ円形の貫通穴34hが軸心方向に形成されている。
【0022】
そして、位置決め機構30の位置決めピン31の軸心と筒状部材34の軸心とがアッパーガイドレール16の前端湾曲部16wと平行になるように位置決めされている。また、図5に示すように、スライドドア21側の転動ローラ232がアッパーガイドレール16の前端湾曲部16wのレール本体部163(後記する)の位置にある状態で、位置決め機構30の位置決めピン31と筒状部材34の貫通穴34hとがほぼ同軸に保持される。これにより、スライドドア21が全閉位置までスライドする過程で位置決めピン31が筒状部材34の貫通穴34hに挿入されて、車両ボディ10に対するスライドドア21の位置決めが行われる。
【0023】
<アッパーガイドレール16の構成について>
アッパーガイドレール16は、図2に示すように、車幅方向外側の外側板部(図番省略)と、天井板部160tと、車幅方向内側の内側板部(図番省略)とにより断面逆U字形に形成されている。そして、アッパーガイドレール16の外側板部の内側面が前記ガイド面160gとなっており、前記内側板部の内側面160eがガイド面160gと平行に形成されている。アッパーガイドレール16は、上記したように、直線部16sと前端湾曲部16wとを備えている。そして、アッパーガイドレール16の前端湾曲部16wが、図3図6に示すように、直線部16sと等しいサイズのレール本体部163と、そのレール本体部163よりも幅寸法が寸法Sxだけ大きいレール端部165とから構成されている。即ち、アッパーガイドレール16が本発明のレールに相当し、アッパーガイドレール16の直線部16sと前端湾曲部16wのレール本体部163とが本発明のレール本体部に相当する。
【0024】
アッパーガイドレール16の前端湾曲部16wのレール本体部163とレール端部165とは、図3図5に示すように、互いに連続する内側面160eを備えている。そして、前端湾曲部16wのレール本体部163のガイド面160gとレール端部165のガイド面160gとの間にレール幅寸法を変化させる段差状の傾斜側面160kが形成されている。
【0025】
ここで、図5に示すように、スライドドア21側の転動ローラ232が前端湾曲部16wのレール本体部163の位置にある状態では、図6に示すように、転動ローラ232がレール本体部163のガイド面160gに当接しており、転動ローラ232と内側面160e間には微小隙S0が形成される。この状態で、位置決め機構30の位置決めピン31は、筒状部材34の貫通穴34hとほぼ同軸に保持されて、その筒状部材34から離れている。図5に示す状態からスライドドア21が全閉位置近傍まで移動すると、転動ローラ232がレール本体部163のガイド面160gと傾斜側面160kとの境界位置Kまで移動する。そして、転動ローラ232がレール本体部163のガイド面160gと傾斜側面160kとの境界位置Kにある状態で、位置決め機構30の位置決めピン31の先端が筒状部材34の貫通穴34hに挿入される。
【0026】
これにより、スライドドア21が全閉位置近傍で全閉位置方向の力を受けると、位置決め機構30の位置決めピン31が筒状部材34の貫通穴34hに挿入される動作により、スライドドア21は全閉位置近傍から全閉位置までガイドされる。また、前記位置決め機構30の動作により、全閉位置でスライドドア21の前上部が車両ボディ10の定位置に位置決めされる。さらに、スライドドア21が全閉位置近傍から全閉位置まで移動する過程で、転動ローラ232は前端湾曲部16wの傾斜側面160k、及びレール端部165のガイド面160gから離れるようになる。そして、スライドドア21が全閉位置に到達した状態で、図3図4に示すように、転動ローラ232と前端湾曲部16w(レール端部165)のガイド面160g間に寸法Sxの隙間が形成される。即ち、前記位置決め機構30が本発明の離隔機構に相当する。
【0027】
<スライドドア装置20の動作について>
上記したスライドドア装置20では、スライドドア21が全閉位置近傍から全閉位置まで移動する過程で、位置決め機構30の位置決めピン31が筒状部材34の貫通穴34hに挿入されて、車両ボディ10に対するスライドドア21の位置決めが行われる。また、スライドドア21が全閉位置近傍から全閉位置まで移動する過程で、転動ローラ232は前端湾曲部16wの傾斜側面160k、及びレール端部165のガイド面160gから離れるようになる。このため、例えば、車両走行中に車両ボディ10に対してスライドドア21が位置決め機構30のクリアランス分だけ相対的に振動しても、転動ローラ232とアッパーガイドレール16のガイド面160g間で付着と滑りとが繰り返されるスティックスリップ現象が発生しない。この結果、車両走行中にスライドドア21の上部位置での異音発生を抑えることができる。
【0028】
<本実施形態に係るスライドドア装置20の長所について>
本実施形態に係るスライドドア装置20によると、スライドドア21がドア開口部12の全閉位置にある状態では、スライドドア21側の転動ローラ232が車両ボディ10側のアッパーガイドレール16(レール)のガイド面160gから離れている。このため、車両走行時に車両ボディ10に対してスライドドア21が相対的に振動しても、転動ローラ232とアッパーガイドレール16のガイド面160g間でスティックスリップ現象が発生せず、異音の発生を抑えることができる。
【0029】
[変更例]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図3に示すように、アッパーガイドレール16のレール端部165とレール本体部163との幅寸法を変え、さらに位置決め機構30を設けることで、スライドドア21の全閉位置でレール端部165のガイド面160gと転動ローラ232間に隙間Sxを設ける例を示した。しかし、図7に示すように、アッパーガイドレール16の前端湾曲部16wの端部に略V字形の溝43を備えるガイド部材40を設けることでアッパーガイドレール16のガイド面160gと転動ローラ232間に隙間Sxを形成することができる。即ち、ガイド部材40の溝43はアッパーガイドレール16の幅方向中央位置で最も深くなるように形成されており、図8に示すように、溝43の最深部に転動ローラ232の回転中心軸232jが径方向から嵌合するように構成されている。
【0030】
これにより、スライドドア21がアッパーガイドレール16に沿って全閉位置まで移動する過程で、転動ローラ232の回転中心軸232jがガイド部材40の溝43の傾斜面43kに沿って最深部まで移動する。これにより、転動ローラ232がアッパーガイドレール16の幅方向中央に導かれ、図9に示すように、転動ローラ232とアッパーガイドレール16のガイド面160g間に隙間Sxが形成される。このように、転動ローラ232の回転中心軸232jがガイド部材40の溝43と嵌合し、アッパーガイドレール16の幅方向中央に位置決めされる構成のため、前記位置決め機構30を省略することが可能になる。即ち、転動ローラ232の回転中心軸232jとガイド部材40とが本発明の離隔機構に相当する。
【0031】
ここで、本実施形態では、スライドドア21が全閉位置にある状態でアッパーガイドレール16のガイド面160gと転動ローラ232間に隙間Sxを形成することで、ガイド面160gと転動ローラ232間のスティックスリップ現象を防止する例を示した。しかし、例えば、アッパーガイドレール16のガイド面160gの所定位置に開口等を設け、スライドドア21が全閉位置にある状態で転動ローラ232がガイド面160gから離れるようにすることも可能である。また、本実施形態では、アッパーガイドレール16とスライドドア21の上端部の転動ローラ232について例示したが、センターガイドレール18、ロアガイドレール17とスライドドア21の中央部、下端部の転動ローラに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・・車両ボディ
12・・・・ドア開口部
16・・・・アッパーガイドレール(レール)
16w・・・前端湾曲部
160g・・ガイド面
160k・・傾斜側面
163・・・レール本体部
165・・・レール端部
20・・・・スライドドア装置
21・・・・スライドドア
23・・・・ガイドローラユニット
232・・・転動ローラ
232j・・回転中心軸(離隔機構)
30・・・・位置決め機構(離隔機構)
40・・・・ガイド部材(離隔機構)
Sx・・・・隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12