(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1相分離リレー回路がオンすると、前記第1中性点リレー回路はオフし、かつ、前記第1相分離リレー回路がオフすると、前記第1中性点リレー回路はオンする、請求項1に記載の電力変換装置。
前記第1相分離リレー回路がオフして前記第1中性点リレー回路がオンすると、前記各相の巻線の一端同士の接続によって前記各相の巻線の中性点が構成される、請求項2に記載の電力変換装置。
前記第2相分離リレー回路がオンすると、前記第2中性点リレー回路はオフし、かつ、前記第2相分離リレー回路がオフすると、前記第2中性点リレー回路はオンする、請求項5に記載の電力変換装置。
前記第1インバータが異常のとき、前記第1相分離リレー回路がオフして前記第1中性点リレー回路はオンし、かつ、前記第2相分離リレー回路がオンして前記第2中性点リレー回路はオフする、請求項6に記載の電力変換装置。
前記第1相分離リレー回路は、前記各相の巻線の一端と前記第1インバータとに接続されるn個の第1相分離リレーを含み、前記第2相分離リレー回路は、前記各相の巻線の他端と前記第2インバータとに接続されるn個の第2相分離リレーを含み、
前記第1中性点リレー回路は、各々の一端が共通の第1ノードに接続され、他端は前記各相の巻線の一端に接続されるn個の第1中性点リレーを含み、前記第2中性点リレー回路は、各々の一端が共通の第2ノードに接続され、他端は前記各相の巻線の他端に接続されるn個の第2中性点リレーを含む、請求項5から7のいずれかに記載の電力変換装置。
前記第1インバータのブリッジ回路が故障したスイッチング素子を含むとき、前記第1相分離リレー回路中のn個の第1相分離リレーは全てオフし、前記第1中性点リレー回路中のn個の第1中性点リレーは全てオンし、かつ、前記第2相分離リレー回路中のn個の第2相分離リレーは全てオンし、前記第2中性点リレー回路中のn個の第2中性点リレーは全てオフする、請求項8に記載の電力変換装置。
n相(nは3以上の整数)の巻線を有する電動モータを駆動し、各相の巻線の一端に接続される第1インバータおよび前記各相の巻線の他端に接続される第2インバータを備える電力変換装置に接続可能なリレーモジュールであって、
前記各相の巻線の一端と前記第1インバータとの接続および非接続を切替える第1相分離リレー回路と、
前記各相の巻線の一端に接続され、かつ、前記各相の巻線の一端同士の接続および非接続を切替える第1中性点リレー回路と、
を備えるリレーモジュール。
前記第1相分離リレー回路がオンすると、前記第1中性点リレー回路はオフし、かつ、前記第1相分離リレー回路がオフすると、前記第1中性点リレー回路はオンする、請求項15に記載のリレーモジュール。
前記第1相分離リレー回路がオフして前記第1中性点リレー回路がオンすると、前記各相の巻線の一端同士の接続によって前記各相の巻線の中性点が構成される、請求項16に記載のリレーモジュール。
前記第2相分離リレー回路がオンすると、前記第2中性点リレー回路はオフし、かつ、前記第2相分離リレー回路がオフすると、前記第2中性点リレー回路はオンする、請求項19に記載のリレーモジュール。
前記第1インバータが異常のとき、前記第1相分離リレー回路がオフして前記第1中性点リレー回路はオンし、かつ、前記第2相分離リレー回路がオンして前記第2中性点リレー回路はオフする、請求項20に記載のリレーモジュール。
前記第1相分離リレー回路は、前記各相の巻線の一端と前記第1インバータとに接続されるn個の第1相分離リレーを含み、前記第2相分離リレー回路は、前記各相の巻線の他端と前記第2インバータとに接続されるn個の第2相分離リレーを含み、
前記第1中性点リレー回路は、各々の一端が共通の第1ノードに接続され、他端は前記各相の巻線の一端に接続されるn個の第1中性点リレーを含み、前記第2中性点リレー回路は、各々の一端が共通の第2ノードに接続され、他端は前記各相の巻線の他端に接続されるn個の第2中性点リレーを含む、請求項19から21のいずれかに記載のリレーモジュール。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった本願発明者の知見を説明する。
【0016】
特許文献1の電力変換装置においては、電源およびGNDと、2つのインバータの各々とが常時接続されたままである。その構成上、電源と故障インバータとの接続を切り離すことはできない。本願発明者は、異常時に故障インバータにおいて中性点が構成されても、故障インバータは電源から電流を引き込んでしまうという課題を見出した。これにより、故障インバータにおいて電力損失が発生することとなる。
【0017】
電源と同様に、故障インバータとGNDとの接続を切り離すこともできない。本願発明者は、異常時に故障インバータにおいて中性点が構成されても、正常な方のインバータを通じて各相の巻線に供給される電流は、供給元のインバータには戻らずに、故障インバータからGNDに流れてしまうという課題を見出した。換言すると、駆動電流の閉ループを形成することは不可能となる。正常な方のインバータから各相の巻線に供給される電流は、供給元のインバータを通じてGNDに流れることが望ましい。
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電力変換装置、モータ駆動ユニット、電動パワーステアリング装置およびリレーモジュールの実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0019】
本願明細書においては、電源からの電力を、三相(U相、V相、W相)の巻線を有する三相モータに供給する電力に変換する電力変換装置を例にして、本開示の実施形態を説明する。ただし、四相または五相などのn相(nは4以上の整数)の巻線を有するn相モータに供給する電力に変換する電力変換装置も本開示の範疇である。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本実施形態による電力変換装置100の回路構成を模式的に示している。
【0021】
電力変換装置100は、第1インバータ110と、第1相分離リレー回路120と、第1中性点リレー回路130と、第2インバータ140と、第2相分離リレー回路150と、第2中性点リレー回路160とを備える。電力変換装置100は、電源からの電力を、種々のモータに供給する電力に変換することができる。モータ200は、例えば、三相交流モータである。モータ200は、U相の巻線M1、V相の巻線M2およびW相の巻線M3を備え、第1インバータ110と第2インバータ140とに接続される。具体的に説明すると、第1インバータ110はモータ200の各相の巻線の一端に接続され、第2インバータ140は各相の巻線の他端に接続される。本願明細書において、部品(構成要素)同士の間の「接続」とは、主に電気的な接続を意味する。
【0022】
第1インバータ110は、各相に対応した端子U_L、V_LおよびW_Lを有し、第2インバータ140は、各相に対応した端子U_R、V_RおよびW_Rを有する。第1インバータ110の端子U_Lは、U相の巻線M1の一端に接続され、端子V_Lは、V相の巻線M2の一端に接続され、端子W_Lは、W相の巻線M3の一端に接続される。第1インバータ110と同様に、第2インバータ140の端子U_Rは、U相の巻線M1の他端に接続され、端子V_Rは、V相の巻線M2の他端に接続され、端子W_Rは、W相の巻線M3の他端に接続される。このような結線は、いわゆるスター結線およびデルタ結線とは異なる。
【0023】
第1インバータ110(「ブリッジ回路L」と表記する場合がある。)は、3個のレグを有するブリッジ回路を含む。各レグは、ローサイドスイッチング素子およびハイサイドスイッチング素子を有する。
図1に示されるスイッチング素子111L、112Lおよび113Lがローサイドスイッチング素子であり、スイッチング素子111H、112Hおよび113Hはハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子として、例えば電界効果トランジスタ(典型的にはMOSFET)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いることができる。本願明細書において、インバータのスイッチング素子としてFETを用いる例を説明し、以下の説明ではスイッチング素子をFETと表記する場合がある。例えば、スイッチング素子111LはFET111Lと表記される。
【0024】
第1インバータ110は、U相、V相およびW相の各相の巻線に流れる電流を検出するための電流センサ170(
図4を参照)として、3個のシャント抵抗111R、112Rおよび113Rを備える。電流センサ170は、各シャント抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路(不図示)を含む。例えば、シャント抵抗111R、112Rおよび113Rは、第1インバータ110の3個のレグに含まれる3個のローサイドスイッチング素子とGNDとの間にそれぞれ接続される。具体的には、シャント抵抗111RはFET111LとGNDとの間に接続され、シャント抵抗112RはFET112LとGNDとの間に接続され、シャント抵抗113RはFET113LとGNDとの間に接続される。シャント抵抗の抵抗値は、例えば0.5mΩ〜1.0mΩ程度である。
【0025】
第1インバータ110と同様に、第2インバータ140(「ブリッジ回路R」と表記する場合がある。)は、3個のレグを有するブリッジ回路を含む。
図1に示されるFET141L、142Lおよび143Lがローサイドスイッチング素子であり、FET141H、142Hおよび143Hはハイサイドスイッチング素子である。また、第2インバータ140は、3個のシャント抵抗141R、142Rおよび143Rを備える。それらのシャント抵抗は、3個のレグに含まれる3個のローサイドスイッチング素子とGNDとの間に接続される。第1および第2インバータ110、140の各FETは、例えばマイクロコントローラまたは専用ドライバによって制御され得る。
【0026】
第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110との間に接続される。具体的に説明すると、第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110とに接続される3個の第1相分離リレー121、122および123を含む。第1相分離リレー121は、FET111Hおよび111Lの接続ノードとU相の巻線M1の一端との間に接続される。第1相分離リレー122は、FET112Hおよび112Lの接続ノードとV相の巻線M2の一端との間に接続される。第1相分離リレー123は、FET113Hおよび113Lの接続ノードとW相の巻線M3の一端との間に接続される。この回路構成により、第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110との接続および非接続を切替える。
【0027】
第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140との間に接続される。具体的に説明すると、第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140とに接続される3個の第2相分離リレー151、152および153を含む。第2相分離リレー151は、FET141Hおよび141Lの接続ノードとU相の巻線M1の他端との間に接続される。第2相分離リレー152は、FET142Hおよび142Lの接続ノードとV相の巻線M2の他端との間に接続される。第2相分離リレー153は、FET143Hおよび143Lの接続ノードとW相の巻線M3の他端との間に接続される。この回路構成により、第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140との接続および非接続を切替える。
【0028】
第1中性点リレー回路130は、各相の巻線の一端に接続される。第1中性点リレー回路130は、各々の一端が共通の第1ノードN1に接続され、他端は各相の巻線の一端に接続される3個の第1中性点リレー131、132および133を含む。具体的に説明すると、第1中性点リレー131の一端は第1ノードN1に接続され、他端はU相の巻線M1の一端に接続される。第1中性点リレー132の一端は第1ノードN1に接続され、他端はV相の巻線M2の一端に接続される。第1中性点リレー133の一端は第1ノードN1に接続され、他端はW相の巻線M3の一端に接続される。この回路構成により、第1中性点リレー回路130は、各相の巻線の一端同士の接続および非接続を切替える。
【0029】
第2中性点リレー回路160は、各相の巻線の他端に接続される。第2中性点リレー回路160は、各々の一端が共通の第2ノードN2に接続され、他端は各相の巻線の他端に接続される3個の第2中性点リレー161、162および163を含む。具体的に説明すると、第2中性点リレー161の一端は第2ノードN2に接続され、他端はU相の巻線M1の他端に接続される。第2中性点リレー162の一端は第2ノードN2に接続され、他端はV相の巻線M2の他端に接続される。第2中性点リレー163の一端は第2ノードN2に接続され、他端はW相の巻線M3の他端に接続される。この回路構成により、第2中性点リレー回路160は、各相の巻線の他端同士の接続および非接続を切替える。
【0030】
第1相分離リレー121、122、123、第1中性点リレー131、132、133、第2相分離リレー151、152、153、第2中性点リレー161、162および163のリレーのオンまたはオフは、例えばマイクロコントローラまたは専用ドライバによって制御され得る。これらのリレーとして、例えばFETまたはIGBTなどのトランジスタを広く用いることができる。また、リレーとして、メカニカルリレー、トライアックまたはサイリスタ等を用いても構わない。リレーとして、電気的な接続と非接続との切り替えが可能な任意の素子を用いることができる。本願明細書において、これらのリレーとしてFETを用いる例を説明し、以下の説明では、各リレーをFETと表記する。例えば、第1相分離リレー121、122および123は、FET121、122および123とそれぞれ表記される。
【0031】
電力変換装置100は、電源101とGNDとに接続される。具体的に説明すると、第1および第2インバータ110、140の各々は、電源101およびGNDに接続される。電源101から第1および第2インバータ110、140に電力が供給される。
【0032】
電源101は所定の電源電圧を生成する。電源101として、例えば直流電源が用いられる。ただし、電源101は、AC−DCコンバータおよびDC―DCコンバータであってもよいし、バッテリー(蓄電池)であっても良い。電源101は、第1および第2インバータ110、140に共通の単一電源であってもよいし、第1インバータ110用の第1電源および第2インバータ140用の第2電源を備えていてもよい。
【0033】
電源101と電力変換装置100との間にコイル102が設けられている。コイル102は、ノイズフィルタとして機能し、各インバータに供給する電圧波形に含まれる高周波ノイズ、または各インバータで発生する高周波ノイズを電源101側に流出させないように平滑化する。また、各インバータの電源端子には、コンデンサ103が接続されている。コンデンサ103は、いわゆるバイパスコンデンサであり、電圧リプルを抑制する。コンデンサ103は、例えば電解コンデンサであり、容量および使用する個数は設計仕様などによって適宜決定される。
【0034】
図1には、インバータ毎の各レグに1個のシャント抵抗を配置する構成を例示している。ただし、第1および第2インバータ110、140は、6個以下のシャント抵抗を備えることができる。6個以下のシャント抵抗は、第1および第2インバータ110、140が備える6個のレグのうちの6個以下のローサイドスイッチング素子とGNDとの間に接続され得る。さらにこれをn相モータに拡張すると、第1および第2インバータ110、140は、2n個以下のシャント抵抗を備えることができる。2n個以下のシャント抵抗は、第1および第2インバータ110、140が備える2n個のレグのうちの2n個以下のローサイドスイッチング素子とGNDとの間に接続され得る。
【0035】
図2は、本実施形態による電力変換装置100の他の回路構成を模式的に示している。第1または第2インバータ110、140の各レグと、巻線M1、M2およびM3との間に3つのシャント抵抗を配置することも可能である。例えば、第1インバータ110と巻線M1、M2およびM3の一端との間にシャント抵抗111R、112Rおよび113Rが配置され得る。また、例えば、図示されないが、シャント抵抗111R、112Rは第1インバータ110と巻線M1、M2の一端との間に配置され、シャント抵抗143Rは、第2インバータ140と巻線M3の他端との間に配置され得る。このような構成において、U、VおよびW相用に3個のシャント抵抗が配置されていれば十分であり、最低2個のシャント抵抗が配置されていればよい。
【0036】
図3は、本実施形態による電力変換装置100のさらなる他の回路構成を模式的に示している。例えば各インバータに、各相の巻線に共通のシャント抵抗を1つだけ配置してもよい。1個のシャント抵抗111Rは、例えば第1インバータ110のローサイド側のノードN3(各レグの接続点)とGNDとの間に接続され、他の1個のシャント抵抗141Rは、例えば第2インバータ140のローサイド側のノードN4とGNDとの間に接続され得る。なお、正常なインバータ側のシャント抵抗を使用してモータ電流は検出される。そのため、相分離リレー回路の配置に関係なく、モータ電流が検出できる位置にシャント抵抗を配置することができる。または、ローサイド側と同様に、1個のシャント抵抗111Rは、例えば第1インバータ110のハイサイド側のノードN5と電源101との間に接続され、他の1個のシャント抵抗141Rは、例えば第2インバータ140のハイサイド側のノードN6と電源101との間に接続される。このように、使用するシャント抵抗の数およびシャント抵抗の配置は、製品コストや設計仕様などを考慮して適宜決定される。
【0037】
図4は、電力変換装置100を備えるモータ駆動ユニット400の典型的なブロック構成を模式的に示している。
【0038】
モータ駆動ユニット400は、電力変換装置100、モータ200および制御回路300を備える。
【0039】
制御回路300は、例えば、電源回路310と、角度センサ320と、入力回路330と、マイクロコントローラ340と、駆動回路350と、ROM360とを備える。制御回路300は、電力変換装置100に接続され、電力変換装置100を制御することによりモータ200を駆動する。具体的には、制御回路300は、目的とするロータの位置、回転速度、および電流などを制御してクローズドループ制御を実現することができる。なお、制御回路300は、角度センサに代えてトルクセンサを備えてもよい。この場合、制御回路300は、目的とするモータトルクを制御することができる。
【0040】
電源回路310は、回路内の各ブロックに必要なDC電圧(例えば3V、5V)を生成する。角度センサ320は、例えばレゾルバやホールICである。角度センサ320は、モータ200のロータの回転角(以下、「回転信号」と表記する。)を検出し、回転信号をマイクロコントローラ340に出力する。入力回路330は、電流センサ170によって検出されたモータ電流値(以下、「実電流値」と表記する。)を受け取って、マイクロコントローラ340の入力レベルに実電流値のレベルを必要に応じて変換し、実電流値をマイクロコントローラ340に出力する。
【0041】
マイクロコントローラ340は、電力変換装置100の第1および第2インバータ110、140における各FETのスイッチング動作(ターンオンまたはターンオフ)を制御する。マイクロコントローラ340は、実電流値およびロータの回転信号などに従って目標電流値を設定してPWM信号を生成し、それを駆動回路350に出力する。また、例えばマイクロコントローラ340は、電力変換装置100における、第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150および第2中性点リレー回路160のオン・オフ状態を切替えることができる。または、駆動回路350がマイクロコントローラ340の制御の下で、各リレー回路のオン・オフ状態の切替えを実行してもよい。駆動回路350は、典型的にはゲートドライバである。駆動回路350は、第1および第2インバータ110、140における各FETのスイッチング動作を制御する制御信号(ゲート制御信号)をPWM信号に従って生成し、各FETのゲートに制御信号を与える。なお、マイクロコントローラ340は駆動回路350の機能を備えていてもよい。その場合、制御回路300に駆動回路350は存在しなくてよい。
【0042】
ROM360は、例えば書き込み可能なメモリ、書き換え可能なメモリまたは読み出し専用のメモリである。ROM360は、マイクロコントローラ340に電力変換装置100を制御させるための命令群を含む制御プログラムを格納している。例えば、制御プログラムはブート時にRAM(不図示)に一旦展開される。
【0043】
電力変換装置100には正常時および異常時の制御がある。制御回路300(主としてマイクロコントローラ340)は、電力変換装置100の制御を正常時の制御から異常時の制御に切替えることができる。制御の種類に応じて、第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150および第2中性点リレー回路160のオン・オフ状態が決定される。
【0044】
以下、各リレー回路のオン・オフ状態およびオン・オフ状態における第1および第2インバータ110、140とモータ200との電気的な接続関係を詳細に説明する。
【0045】
制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオンすると、第1中性点リレー回路130をオフし、かつ、第1相分離リレー回路120をオフすると、第1中性点リレー回路130をオンするように両方のリレー回路を択一的に制御する。ここで、「第1相分離リレー回路120をオンする」とは、FET121、122および123の全てをオンすることを意味し、「第1相分離リレー回路120をオフする」とは、FET121、122および123の全てをオフすることを意味する。また、「第1中性点リレー回路130をオンする」とは、FET131、132および133の全てをオンすることを意味し、「第1中性点リレー回路130をオフする」とは、FET131、132および133の全てをオフすることを意味する。
【0046】
第1相分離リレー回路120がオンすると、第1インバータ110は各相の巻線の一端に接続され、第1相分離リレー回路120がオフすると、第1インバータ110は各相の巻線の一端から切り離される。第1中性点リレー回路130がオンすると、各相の巻線の一端同士は接続され、第1中性点リレー回路130がオフすると、各相の巻線の一端同士は非接続となる。
【0047】
制御回路300は、第2相分離リレー回路150をオンすると、第2中性点リレー回路160をオフし、かつ、第2相分離リレー回路150をオフすると、第2中性点リレー回路160をオンするように両方のリレー回路を択一的に制御する。ここで、「第2相分離リレー回路150をオンする」とは、FET151、152および153の全てをオンすることを意味し、「第2相分離リレー回路150をオフする」とは、FET151、152および153の全てをオフすることを意味する。また、「第2中性点リレー回路160をオンする」とは、FET161、162および163の全てをオンすることを意味し、「第2中性点リレー回路160をオフする」とは、FET161、162および163の全てをオフすることを意味する。
【0048】
第2相分離リレー回路150がオンすると、第2インバータ140は各相の巻線の他端に接続され、第2相分離リレー回路150がオフすると、第2インバータ140は各相の巻線の他端から切り離される。第2中性点リレー回路160がオンすると、各相の巻線の他端同士は接続され、第2中性点リレー回路160がオフすると、各相の巻線の他端同士は非接続となる。
【0049】
(1.正常時の制御)
先ず、電力変換装置100の正常時の制御方法の具体例を説明する。上述したとおり、正常とは、第1および第2インバータ110、140の各FETに故障が生じていない状態を指す。
【0050】
正常時において、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオンして第1中性点リレー回路130をオフし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。これにより、第1および第2中性点リレー回路130、160は各相の巻線から切り離され、かつ、第1インバータ110は、第1相分離リレー回路120を介して各相の巻線の一端に接続されて、第2インバータ140は、第2相分離リレー回路150を介して各相の巻線の他端に接続される。この接続状態において、制御回路300は、第1および第2インバータ110、140の両方を用いて三相通電制御することによってモータ200を駆動する。具体的に、制御回路300は、第1インバータ110のFETと第2インバータ140のFETとを互いに逆位相(位相差=180°)でスイッチング制御することにより三相通電制御を行う。例えば、FET111L、111H、141Lおよび141Hを含むHブリッジに着目すると、FET111Lがオンすると、FET141Lはオフし、FET111Lがオフすると、FET141Lはオンする。これと同様に、FET111Hがオンすると、FET141Hはオフし、FET111Hがオフすると、FET141Hはオンする。
【0051】
図5は、正常時の三相通電制御に従って電力変換装置100を制御したときにモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示している。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。
図5の電流波形において、電気角30°毎に電流値をプロットしている。I
pkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表している。
【0052】
表1は、
図5の正弦波において電気角毎に、各インバータの端子に流れる電流値を示している。表1は、具体的に、第1インバータ110(ブリッジ回路L)の端子U_L、V_LおよびW_Lに流れる、電気角30°毎の電流値、および、第2インバータ140(ブリッジ回路R)の端子U_R、V_RおよびW_Rに流れる、電気角30°毎の電流値を示している。ここで、ブリッジ回路Lに対しては、ブリッジ回路Lの端子からブリッジ回路Rの端子に流れる電流方向を正の方向と定義する。
図5に示される電流の向きはこの定義に従う。また、ブリッジ回路Rに対しては、ブリッジ回路Rの端子からブリッジ回路Lの端子に流れる電流方向を正の方向と定義する。従って、ブリッジ回路Lの電流とブリッジ回路Rの電流との位相差は180°となる。表1において、電流値I
1の大きさは〔(3)
1/2/2〕*I
pkであり、電流値I
2の大きさはI
pk/2である。
【0054】
電気角0°において、U相の巻線M1には電流は流れない。V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
1の電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
1の電流が流れる。
【0055】
電気角30°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
2の電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
pkの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
2の電流が流れる。
【0056】
電気角60°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
1の電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
1の電流が流れる。W相の巻線M3には電流は流れない。
【0057】
電気角90°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
pkの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
2の電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
2の電流が流れる。
【0058】
電気角120°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
1の電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
1の電流が流れる。V相の巻線M2には電流は流れない。
【0059】
電気角150°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
2の電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
2の電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
pkの電流が流れる。
【0060】
電気角180°において、U相の巻線M1には電流は流れない。V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
1の電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
1の電流が流れる。
【0061】
電気角210°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
2の電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
pkの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
2の電流が流れる。
【0062】
電気角240°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
1の電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
1の電流が流れる。W相の巻線M3には電流は流れない。
【0063】
電気角270°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
pkの電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
2の電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
2の電流が流れる。
【0064】
電気角300°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
1の電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
1の電流が流れる。V相の巻線M2には電流は流れない。
【0065】
電気角330°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
2の電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路Lに大きさI
2の電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路Lからブリッジ回路Rに大きさI
pkの電流が流れる。
【0066】
本実施形態による三相通電制御によれば、電流の向きを考慮した三相の巻線に流れる電流の総和は電気角毎に常に「0」になる。例えば、制御回路300は、
図5に示される電流波形が得られるようなPWM制御によってブリッジ回路LおよびRの各FETのスイッチング動作を制御する。
【0067】
(2.異常時の制御)
電力変換装置100の異常時の制御方法の具体例を説明する。上述したように、異常とは主としてFETに故障が発生したことを意味する。FETの故障には、大きく分けて「オープン故障」と「ショート故障」とがある。「オープン故障」は、FETのソース−ドレイン間が開放する故障(換言すると、ソース−ドレイン間の抵抗rdsがハイインピーダンスになること)を指し、「ショート故障」は、FETのソース−ドレイン間が短絡する故障を指す。
【0068】
再び
図1を参照する。電力変換装置100の動作時において、通常は、2つのインバータにおける12個のFETの中から1つのFETがランダムに故障するランダム故障が発生すると考えられる。本開示は、主としてランダム故障が発生した場合における電力変換装置100の制御方法を対象としている。ただし、本開示は、複数のFETが連鎖的に故障した場合などの電力変換装置100の制御方法も対象とする。連鎖的な故障とは、例えば1つのレグのハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子に同時に発生する故障を意味する。
【0069】
電力変換装置100を長期間使用すると、ランダム故障が起こる可能性がある。なお、ランダム故障は、製造時に発生し得る製造故障とは異なるものである。2つのインバータにおける複数のFETのうちの1つでも故障すると、正常時の三相通電制御はもはや不可能となる。
【0070】
故障検知の一例として、駆動回路350は、FETのドレイン−ソース間の電圧Vdsを監視し、所定の閾値電圧とVdsとを比較することによって、FETの故障を検知する。閾値電圧は、例えば外部IC(不図示)とのデータ通信および外付け部品によって駆動回路350に設定される。駆動回路350は、マイクロコントローラ340のポートと接続され、故障検知信号をマイクロコントローラ340に通知する。例えば、駆動回路350は、FETの故障を検知すると、故障検知信号をアサートする。マイクロコントローラ340は、アサートされた故障検知信号を受信すると、駆動回路350の内部データを読み出して、2つのインバータにおける複数のFETの中でどのFETが故障しているのかを判別する。
【0071】
故障検知の他の一例として、マイクロコントローラ340は、モータの実電流値と目標電流値との差に基づいてFETの故障を検知することも可能である。ただし、故障検知は、これらの手法に限られず、故障検知に関する公知の手法を広く用いることができる。
【0072】
マイクロコントローラ340は、故障検知信号がアサートされると、電力変換装置100の制御を正常時の制御から異常時の制御に切替える。例えば、正常時から異常時に制御を切替えるタイミングは、故障検知信号がアサートされてから10msec〜30msec程度である。
【0073】
異常時の制御の説明において、2つのインバータのうちの第1インバータ110を故障インバータとして扱い、第2インバータ140を正常インバータとして扱う。なお、第2インバータ140が故障インバータである場合も、第1インバータ110と第2インバータ140の動作を逆にすることにより、同様に制御可能である。以下、ハイサイドスイッチング素子に故障が発生した場合と、ローサイドスイッチング素子に故障が発生した場合とに分けて制御を説明する。
【0074】
〔2−1.ハイサイドスイッチング素子の故障〕
第1インバータ110のハイサイドスイッチング素子(FET111H、112Hおよび113H)の中でFET111Hがオープン故障したとする。なお、FET112Hまたは113Hがオープン故障した場合においても、以下で説明する制御方法で電力変換装置100を制御することができる。
【0075】
FET111Hがオープン故障した場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。これにより、故障したFET111Hを含む第1インバータ110は、モータ200(つまり、各相の巻線の一端)から切り離されて、正常な方の第2インバータ140だけが、モータ200(つまり、各相の巻線の他端)に接続される。この接続状態で、第1中性点リレー回路130がオンすることにより第1ノードN1は、各相の巻線の中性点として機能する。本願明細書において、あるノードが中性点として機能することを、「中性点が構成される」と表現することとする。なお、第2中性点リレー回路160に中性点は構成されない。第1インバータ110において、故障したFET111H以外の他のFET112H、113H、111L、112Lおよび113Lは全てオフ状態にしておくことが望ましい。制御回路300は例えば、第1インバータ110において、故障したFET111H以外の他のFET112H、113H、111L、112Lおよび113Lを全てオフ状態にする。制御回路300は、中性点が第1中性点リレー回路130に構成された状態で第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動する。
【0076】
この制御によれば、第1相分離リレー回路120によって第1インバータ110をモータ200から切り離すことができ、かつ、第1中性点リレー回路130を用いて駆動電流の閉ループを形成することがきるので、異常時においても適切な電流制御が可能となる。
【0077】
図6は、例えばモータ電気角270°における異常時の制御に応じた電力変換装置100内の電流の流れを模式的に示している。3つの実線のそれぞれは、電源101からモータ200に流れる電流を表し、
図7は、異常時の制御に応じてモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を例示している。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。
【0078】
図6に示される状態において、第2インバータ140のFET141H、142Lおよび143Lはオン状態であり、FET141L、142Hおよび143Hはオフ状態である。第2インバータ140のFET141Hを流れた電流は、巻線M1および第1中性点リレー回路130のFET131を通って中性点に流れ込む。その電流の一部は、FET132を通って巻線M2に流れ、残りの電流は、FET133を通って巻線M3に流れる。巻線M2およびM3を流れた電流は、第2インバータ140のFET142Lおよび143Lをそれぞれ通ってGNDに流れる。
【0079】
FET111Hはオープン故障し、かつ、第1インバータ110の、FET111H以外のFET112H、113H、111L、112Lおよび113Lはオフ状態であるので、電源101から第1インバータ110に電流は流れ込まない。また、第1インバータ110は、第1相分離リレー回路120によってモータ200から切り離されるので、第2インバータ140から第1インバータ110に電流は流れない。
【0080】
表2は、
図7の電流波形における電気角毎に、第2インバータ140の端子に流れる電流値を例示している。表2は、具体的に、第2インバータ140(ブリッジ回路R)の端子U_R、V_RおよびW_Rに流れる、電気角30°毎の電流値を例示している。電流方向の定義は上述したとおりである。なお、電流方向の定義によって、
図7に示される電流値の正負の符号は、表2に示される電流値のそれとは逆の関係(位相差180°)になる。
【0082】
例えば、電気角30°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路L側からブリッジ回路Rに大きさI
2の電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路L側に大きさI
pkの電流が流れ、W相の巻線M3にはブリッジ回路L側からブリッジ回路Rに大きさI
2の電流が流れる。電気角60°において、U相の巻線M1にはブリッジ回路L側からブリッジ回路Rに大きさI
1の電流が流れ、V相の巻線M2にはブリッジ回路Rからブリッジ回路L側に大きさI
1の電流が流れる。W相の巻線M3には電流は流れない。中性点に流れ込む電流と中性点から流れ出る電流との総和は電気角毎に常に「0」になる。制御回路300は、例えば
図7に示される電流波形が得られるようなPWM制御によってブリッジ回路Rの各FETのスイッチング動作を制御する。
【0083】
表1および表2に示されるように、正常時および異常時の制御の間でモータ200に流れるモータ電流は電気角毎に変わらない。このため、異常時の制御において、正常時の制御におけるモータのアシストトルクが維持される。
【0084】
FET111Hがショート故障した場合も、オープン故障した場合と同様に、上述した制御方法に従って電力変換装置100を制御することができる。ショート故障の場合、FET111Hは常時オン状態となるが、第1相分離リレー回路120のFET121はオフ状態であり、かつ、FET111H以外のFET112H、113H、111L、112Lおよび113Lはオフ状態であるので、電源101から第1インバータ110に電流は流れ込まない。
【0085】
〔2−2.ローサイドスイッチング素子の故障〕
第1インバータ110のローサイドスイッチング素子(FET111L、112Lおよび113L)の中でFET111Lがオープン故障またはショート故障したとする。その場合の制御は、ハイサイドスイッチング素子が故障した場合の制御と同様である。つまり、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。さらに、制御回路300は、第1インバータ110において、故障したFET111L以外の他のFET111H、112H、113H、112Lおよび113Lを全てオフ状態にする。制御回路300は、中性点が第1中性点リレー回路130に構成された状態で第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動する。
【0086】
FET111Lが故障した場合、第1インバータ110の、FET111L以外のFET111H、112H、113H、112Lおよび113Lはオフ状態であるので、電源101から第1インバータ110に電流は流れ込まない。また、第1インバータ110は、第1相分離リレー回路120によってモータ200から切り離されるので、第2インバータ140から第1インバータ110に電流は流れない。なお、FET112Lまたは113Lが故障した場合においても、上述した制御方法で電力変換装置100を制御することができる。
【0087】
このように、第1インバータ110が故障したFETを少なくとも1つ含む場合、第1相分離リレー回路120を用いて第1インバータ110をモータ200から切り離すことができ、かつ、第1中性点リレー回路130によって第1ノードN1を各相の巻線の中性点として機能させることができる。
【0088】
図8を参照しながら、電力変換装置100の回路構成の変形例を説明する。
【0089】
本実施形態において、電力変換装置100は、2つの相分離リレー回路と、2つの中性点リレー回路とを備える。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、電力変換装置100は、第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130(一組のリレー回路)を備えていてもよい。換言すると、電力変換装置100の1つのインバータに一組のリレー回路を設けた構成も選択され得る。
【0090】
図8は、一組のリレー回路を備える電力変換装置100Aの回路構成を示している。一組のリレー回路に接続されたインバータ、つまり、第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130に接続された第1インバータ110が故障したとする。その場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンする。この回路構成によれば、故障インバータをモータ200から切り離すことができ、かつ、第1ノードN1を中性点として機能させることができる。制御回路300は、中性点が第1中性点リレー回路130に構成された状態で、正常な方の第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動することができる。
【0091】
本実施形態によれば、異常時の制御において、電力損失を抑制することができ、かつ、駆動電流の閉ループを形成することにより適切な電流制御が可能となる。
【0092】
(実施形態2)
次に、電力変換装置の異常時の動作の別の例を説明する。
図9は、本実施形態による電力変換装置100Bの回路構成を模式的に示している。
【0093】
上述した電力変換装置100は、第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150、第2中性点リレー回路160を備えていた。本実施形態による電力変換装置100Bは、第1相分離リレー回路120、第2相分離リレー回路150を備えているが、第1中性点リレー回路130、第2中性点リレー回路160を備えていない。なお、相分離リレーとしてトライアックを用いる場合は、電力変換装置100Bは、第2相分離リレー回路150を備えていなくてもよい。
【0094】
電力変換装置100Bは、モータ200のn相(nは3以上の整数)の巻線の一端と第1インバータ110との接続および非接続を切り替える少なくともn個の相分離リレーを備える。この例では、電力変換装置100Bは、モータ200の三相の巻線M1、M2、M3の一端と第1インバータ110との接続および非接続を切り替える3個の相分離リレー121、122、123を備える。また、電力変換装置100Bは、モータ200のn相の巻線の他端と第2インバータ140との接続および非接続を切り替えるn個の相分離リレーを備える。この例では、電力変換装置100Bは、モータ200の巻線M1、M2、M3の他端と第2インバータ140との接続および非接続を切り替える3個の相分離リレー151、152、153を備える。
【0095】
図10、
図11および
図12は、電力変換装置100Bが有する3個のHブリッジ181、182および183を示す図である。
【0096】
第1インバータ110は、レグ171、173および175を有する。レグ171は、FET111HとFET111Lを有する。レグ173は、FET112HとFET112Lを有する。レグ175は、FET113HとFET113Lを有する。
【0097】
第2インバータ140は、レグ172、174および176を有する。レグ172は、FET141HとFET141Lを有する。レグ174は、FET142HとFET142Lを有する。レグ176は、FET143HとFET143Lを有する。
【0098】
図10に示すHブリッジ181は、レグ171と巻線M1とレグ172とを有する。レグ171と巻線M1との間に相分離リレー121が配置される。レグ172と巻線M1との間に相分離リレー151が配置される。
図11に示すHブリッジ182は、レグ173と巻線M2とレグ174とを有する。レグ173と巻線M2との間に相分離リレー122が配置される。レグ174と巻線M2との間に相分離リレー152が配置される。
図12に示すHブリッジ183は、レグ175と巻線M3とレグ176とを有する。レグ175と巻線M3との間に相分離リレー123が配置される。レグ176と巻線M3との間に相分離リレー153が配置される。
【0099】
電力変換装置100Bは、正常時は上述した電力変換装置100と同様に、三相通電制御によって動作する。電力変換装置100Bでは、第1および第2インバータが有するFETの少なくとも1つに故障が発生した場合、三相通電制御による動作から二相通電制御による動作に切り替わる。
【0100】
電力変換装置100Bの異常時の動作の具体例を説明する。
図13は、電力変換装置100BにおけるU相のFETが故障した状態を示す図である。
図14は、電力変換装置100Bの動作を示すフローチャートである。
【0101】
FETの故障が検出されていない正常時、制御回路300は、第1インバータ110および第2インバータ140を三相通電制御する(ステップS101)。正常時の三相通電制御では、相分離リレー121、122、123、151、152、153はオン状態にある。
【0102】
駆動回路350は、第1インバータ110および第2インバータ140の各FETの故障の有無を監視する(ステップS102)。故障が検出されず(ステップS102でNo)、電力変換装置100Bの駆動を停止する命令が無い場合(ステップS103でNo)は、三相通電制御を継続する。三相通電制御の継続中において、電力変換装置100Bの駆動を停止する命令が入力された場合(ステップS103でYes)は、電力変換装置100Bの駆動を停止する。
【0103】
駆動回路350がFETの故障を検出した場合(ステップS102でYes)、制御回路300は、第1インバータ110および第2インバータ140の制御を、三相通電制御から二相通電制御に変更する(ステップS104)。このとき、三相のうちの故障したFETが接続される巻線の相と異なる他の二相を用いた二相通電制御を行う(ステップS105)。
【0104】
例えば、
図13に示すように、第1インバータ110のFET111Hが故障したとする。FET111Hの故障の種類は、ショート故障とオープン故障のいずれでもよい。このとき、制御回路300は、3個の相分離リレー121、122、123のうちの、故障したFET111Hが接続される巻線M1と第1インバータ110との接続および非接続を切り替える相分離リレー121をオフにする。制御回路300は、オフした相分離リレー121とは異なる残りの2個の相分離リレー122、123はオンする。また、巻線M1と第2インバータ140との接続および非接続を切り替える相分離リレー151をオフにする。残りの2個の相分離リレー152、153はオンする。
【0105】
制御回路300は、故障したFET111Hを含む故障したレグ171(
図10)と、故障したレグ171とHブリッジ181を構成するレグ172とは異なる他の4個のレグ173、174、175、176(
図11、
図12)を用いて、二相通電制御を実行する。すなわち、制御回路300は、故障したFET111Hを含むHブリッジ181(U相)とは異なる他の2個のHブリッジ182および183(V相およびW相)を用いて、二相通電制御を実行する。
【0106】
電力変換装置100Bの駆動を停止する命令が無い場合(ステップS106でNo)は、二相通電制御を継続する。電力変換装置100Bの駆動を停止する命令が入力された場合(ステップS106でYes)は、電力変換装置100Bの駆動を停止する。
【0107】
図15は、二相通電制御に従って電力変換装置100Bを制御したときにモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示している。この例では、U相を用いずにV相およびW相を用いて二相通電制御を行う。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。I
pkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表している。二相通電制御では、最大電流値および2つの相を流れる電流の位相差を調整してトルク等を変化させる。
【0108】
なお、二相通電制御時は、三相通電制御時と同じ電力をモータ200に供給するようにしてもよい。これにより、三相通電制御時に発生するトルクに近い大きさのトルクをモータ200に発生させることができる。
【0109】
この例では、故障したFET111Hを有するU相に設けられた相分離リレー121、151をオフにする。これにより、U相において逆起電力が発生した場合でも、回生電流が流れる電流経路を相分離リレー121、151が開放しているため、回生トルクの発生を防止し、残りの二相での駆動を継続することができる。
【0110】
FET111Hとは異なるHブリッジ181に含まれる他のFET111L、141H、141Lのいずれかが故障した場合も上記と同様に二相通電制御は可能である。
【0111】
このように、第1インバータ110および第2インバータ140が備えるFETの故障を検出した場合、第1インバータ110および第2インバータ140の制御を、三相通電制御から二相通電制御に変更する。これにより、第1インバータ110および第2インバータ140が備えるFETが故障した場合でも、モータ200の回転駆動を継続することができる。
【0112】
図16は、電力変換装置100BにおけるV相のFETが故障した状態を示す図である。この例では、第1インバータ110のFET112Lが故障している。FET112Lの故障の種類は、ショート故障とオープン故障のいずれでもよい。このとき、制御回路300は、3個の相分離リレー121、122、123のうちの、故障したFET112Lが接続される巻線M2と第1インバータ110との接続および非接続を切り替える相分離リレー122をオフにする。制御回路300は、オフした相分離リレー122とは異なる残りの2個の相分離リレー121、123はオンする。また、巻線M2と第2インバータ140との接続および非接続を切り替える相分離リレー152をオフにする。残りの2個の相分離リレー151、153はオンする。
【0113】
制御回路300は、故障したFET112Lを含む故障したレグ173(
図11)と、故障したレグ173とHブリッジ182を構成するレグ174とは異なる他の4個のレグ171、172、175、176(
図10、
図12)を用いて、二相通電制御を実行する。すなわち、制御回路300は、故障したFET112Lを含むHブリッジ182(V相)とは異なる他の2個のHブリッジ181および183(U相およびW相)を用いて、二相通電制御を実行する。
【0114】
図17は、二相通電制御に従って電力変換装置100Bを制御したときにモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示している。この例では、V相を用いずにU相およびW相を用いて二相通電制御を行う。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。I
pkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表している。
【0115】
なお、二相通電制御時は、三相通電制御時と同じ電力をモータ200に供給するようにしてもよい。これにより、三相通電制御時に発生するトルクに近い大きさのトルクをモータ200に発生させることができる。
【0116】
この例では、故障したFET112Lを有するV相に設けられた相分離リレー122、152をオフにする。これにより、V相において逆起電力が発生した場合でも、回生電流が流れる電流経路を相分離リレー122、152が開放しているため、回生トルクの発生を防止し、残りの二相での駆動を継続することができる。
【0117】
FET112Lとは異なるHブリッジ182に含まれる他のFET112H、142H、142Lのいずれかが故障した場合も上記と同様に二相通電制御は可能である。
【0118】
図18は、電力変換装置100BにおけるW相のFETが故障した状態を示す図である。この例では、第2インバータ140のFET143Hが故障している。FET143Hの故障の種類は、ショート故障とオープン故障のいずれでもよい。このとき、制御回路300は、3個の相分離リレー151、152、153のうちの、故障したFET143Hが接続される巻線M3と第2インバータ140との接続および非接続を切り替える相分離リレー153をオフにする。制御回路300は、オフした相分離リレー153とは異なる残りの2個の相分離リレー151、152はオンする。また、巻線M3と第1インバータ110との接続および非接続を切り替える相分離リレー123をオフにする。残りの2個の相分離リレー121、122はオンする。
【0119】
制御回路300は、故障したFET143Hを含む故障したレグ176(
図12)と、故障したレグ176とHブリッジ183を構成するレグ175とは異なる他の4個のレグ171、172、173、174(
図10、
図11)を用いて、二相通電制御を実行する。すなわち、制御回路300は、故障したFET143Hを含むHブリッジ183(W相)とは異なる他の2個のHブリッジ181および182(U相およびV相)を用いて、二相通電制御を実行する。
【0120】
図19は、二相通電制御に従って電力変換装置100Bを制御したときにモータ200のU相、V相およびW相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示している。この例では、W相を用いずにU相およびV相を用いて二相通電制御を行う。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。I
pkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表している。
【0121】
なお、二相通電制御時は、三相通電制御時と同じ電力をモータ200に供給するようにしてもよい。これにより、三相通電制御時に発生するトルクに近い大きさのトルクをモータ200に発生させることができる。
【0122】
この例では、故障したFET143Hを有するW相に設けられた相分離リレー123、153をオフにする。これにより、W相において逆起電力が発生した場合でも、回生電流が流れる電流経路を相分離リレー123、153が開放しているため、回生トルクの発生を防止し、残りの二相での駆動を継続することができる。
【0123】
FET143Hとは異なるHブリッジ183に含まれる他のFET113H、113L、143Lのいずれかが故障した場合も上記と同様に二相通電制御は可能である。
【0124】
なお、相分離リレー151、152、153は、第1インバータ110側に設けられてもよい。
図20は、電力変換装置100Bの回路構成の変形例を示している。この例では、相分離リレー121、122、123、151、152、153は、モータ200の巻線M1、M2、M3の一端と第1インバータ110との接続および非接続を切り替える。
【0125】
上述の実施形態の説明では、モータ200として三相モータを例示したが、モータ200は三相より多い相数のモータであってもよい。モータ200は、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するn相モータであり、例えば四相モータ、五相モータまたは六相モータであってもよい。モータ200のn相の巻線の一端と第1インバータ110との接続および非接続を切り替える少なくともn個の相分離リレーが電力変換装置100Bに設けられる。
【0126】
上述の説明では、FETの故障を検出した場合、三相通電制御から二相通電制御に変更していたが、故障時に駆動する相数は、正常時より一個少ない相数に限定されない。例えば、モータ200が五相モータである場合、五相通電制御から二相通電制御または三相通電制御に変更してもよい。
【0127】
モータ200が四相モータである場合も同様に、FETの故障を検出した場合、四相通電制御から三相通電制御に変更してもよいし、二相通電制御に変更してもよい。
【0128】
また、モータ200が六相モータである場合も同様に、FETの故障を検出した場合、六相通電制御から五相通電制御、四相通電制御、三相通電制御、二相通電制御のいずれかの制御に変更してもよい。
【0129】
このように、FETの故障を検出した場合、n相通電制御からm相通電制御に変更する。mは2以上n未満の整数である。FETの故障を検出した場合は、モータ200を回転駆動できる最低限の相数以上で駆動してもよい。例えば、ブラシレスモータであれば2相以上の相数で駆動することができる。故障時に使用する相数を適宜設定することによって、最適なモータ出力を選択できるとともに、モータ200のさらなる故障を抑制することができる。
【0130】
(実施形態3)
自動車等の車両は一般的に、電動パワーステアリング装置を備えている。電動パワーステアリング装置は、運転者がステアリングハンドルを操作することによって発生するステアリング系の操舵トルクを補助するための補助トルクを生成する。補助トルクは、補助トルク機構によって生成され、運転者の操作の負担を軽減することができる。例えば、補助トルク機構は、操舵トルクセンサ、ECU、モータおよび減速機構などを備える。操舵トルクセンサは、ステアリング系における操舵トルクを検出する。ECUは、操舵トルクセンサの検出信号に基づいて駆動信号を生成する。モータは、駆動信号に基づいて操舵トルクに応じた補助トルクを生成し、減速機構を介してステアリング系に補助トルクを伝達する。
【0131】
本開示のモータ駆動ユニット400は、電動パワーステアリング装置に好適に利用される。
図21は、本実施形態による電動パワーステアリング装置500の典型的な構成を模式的に示している。電動パワーステアリング装置500は、ステアリング系520および補助トルク機構540を備える。
【0132】
ステアリング系520は、例えば、ステアリングハンドル521、ステアリングシャフト522(「ステアリングコラム」とも称される。)、自在軸継手523A、523B、回転軸524(「ピニオン軸」または「入力軸」とも称される。)、ラックアンドピニオン機構525、ラック軸526、左右のボールジョイント552A、552B、タイロッド527A、527B、ナックル528A、528B、および左右の操舵車輪(例えば左右の前輪)529A、529Bを備える。ステアリングハンドル521は、ステアリングシャフト522と自在軸継手523A、523Bとを介して回転軸524に連結される。回転軸524にはラックアンドピニオン機構525を介してラック軸526が連結される。ラックアンドピニオン機構525は、回転軸524に設けられたピニオン531と、ラック軸526に設けられたラック532とを有する。ラック軸526の右端には、ボールジョイント552A、タイロッド527Aおよびナックル528Aをこの順番で介して右の操舵車輪529Aが連結される。右側と同様に、ラック軸526の左端には、ボールジョイント552B、タイロッド527Bおよびナックル528Bをこの順番で介して左の操舵車輪529Bが連結される。ここで、右側および左側は、座席に座った運転者から見た右側および左側にそれぞれ一致する。
【0133】
ステアリング系520によれば、運転者がステアリングハンドル521を操作することによって操舵トルクが発生し、ラックアンドピニオン機構525を介して左右の操舵車輪529A、529Bに伝わる。これにより、運転者は左右の操舵車輪529A、529Bを操作することができる。
【0134】
補助トルク機構540は、例えば、操舵トルクセンサ541、ECU542、モータ543、減速機構544および電力変換装置545を備える。補助トルク機構540は、ステアリングハンドル521から左右の操舵車輪529A、529Bに至るステアリング系520に補助トルクを与える。なお、補助トルクは「付加トルク」と称されることがある。
【0135】
ECU542として、実施形態1および2による制御回路300を用いることができ、電力変換装置545として、実施形態1および2による電力変換装置100、100A、100Bを用いることができる。また、モータ543は、実施形態1および2におけるモータ200に相当する。ECU542、モータ543および電力変換装置545を備える機電一体型ユニットとして、実施形態1および2によるモータ駆動ユニット400を好適に用いることができる。
【0136】
操舵トルクセンサ541は、ステアリングハンドル521によって付与されたステアリング系520の操舵トルクを検出する。ECU542は、操舵トルクセンサ541からの検出信号(以下、「トルク信号」と表記する。)に基づいてモータ543を駆動するための駆動信号を生成する。モータ543は、操舵トルクに応じた補助トルクを駆動信号に基づいて発生する。補助トルクは、減速機構544を介してステアリング系520の回転軸524に伝達される。減速機構544は、例えばウォームギヤ機構である。補助トルクはさらに、回転軸524からラックアンドピニオン機構525に伝達される。
【0137】
電動パワーステアリング装置500は、補助トルクがステアリング系520に付与される箇所によって、ピニオンアシスト型、ラックアシスト型、およびコラムアシスト型等に分類することができる。
図21には、ピニオンアシスト型の電動パワーステアリング装置500を示している。ただし、電動パワーステアリング装置500は、ラックアシスト型、コラムアシスト型等であってもよい。
【0138】
ECU542には、トルク信号だけでなく、例えば車速信号も入力され得る。外部機器560は例えば車速センサである。または、外部機器560は、例えばCAN(Controller Area Network)等の車内ネットワークで通信可能な他のECUであってもよい。ECU542のマイクロコントローラは、トルク信号や車速信号などに基づいてモータ543をベクトル制御またはPWM制御することができる。
【0139】
ECU542は、少なくともトルク信号に基づいて目標電流値を設定する。ECU542は、車速センサによって検出された車速信号を考慮し、さらに角度センサによって検出されたロータの回転信号を考慮して、目標電流値を設定することが好ましい。ECU542は、電流センサ(不図示)によって検出された実電流値が目標電流値に一致するように、モータ543の駆動信号、つまり、駆動電流を制御することができる。
【0140】
電動パワーステアリング装置500によれば、運転者の操舵トルクにモータ543の補助トルクを加えた複合トルクを利用してラック軸526によって左右の操舵車輪529A、529Bを操作することができる。特に、上述した機電一体型ユニットに、本開示のモータ駆動ユニット400を利用することにより、部品の品質が向上し、かつ、正常時および異常時のいずれにおいても適切な電流制御が可能となる、モータ駆動ユニットを備える電動パワーステアリング装置が提供される。
【0141】
(実施形態4)
図22は、本実施形態によるリレーモジュール600の回路構成を模式的に示している。
【0142】
リレーモジュール600は、第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150および第2中性点リレー回路160を備える。リレーモジュール600は、三相(U相、V相、W相)の巻線を有するモータ200を駆動する電力変換装置700であって、各相の巻線の一端に接続される第1インバータ110および各相の巻線の他端に接続される第2インバータ140を備える電力変換装置700に接続可能である。
【0143】
リレーモジュール600は、モータ200と電力変換装置700との間に電気的に接続される。第1相分離リレー回路120、第1中性点リレー回路130、第2相分離リレー回路150および第2中性点リレー回路160の各リレー回路の構造は、実施形態1で説明したとおりである。すなわち、第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110とに接続される3個のFET121、122および123を含み、第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140とに接続される3個のFET151、152および153を含む。第1中性点リレー回路130は、各々の一端が共通の第1ノードN1に接続され、他端は各相の巻線の一端に接続される3個のFET131、132および133を含み、第2中性点リレー回路160は、各々の一端が共通の第2ノードN2に接続され、他端は各相の巻線の他端に接続される3個のFET161、162および163を含む。
【0144】
第1相分離リレー回路120は、各相の巻線の一端と第1インバータ110との接続および非接続を切替え、第2相分離リレー回路150は、各相の巻線の他端と第2インバータ140との接続および非接続を切替える。第1中性点リレー回路130は、各相の巻線の一端同士の接続および非接続を切替え、第2中性点リレー回路160は、各相の巻線の他端同士の接続および非接続を切替える。
【0145】
リレーモジュール600において、第1相分離リレー回路120がオンすると、第1中性点リレー回路130はオフし、かつ、第1相分離リレー回路120がオフすると、第1中性点リレー回路130はオンする。第2相分離リレー回路150がオンすると、第2中性点リレー回路160はオフし、かつ、第2相分離リレー回路150がオフすると、第2中性点リレー回路160はオンする。リレーモジュール600、具体的には各リレー回路は、例えば外付け制御回路または専用ドライバによって制御され得る。外付け制御回路は、例えば実施形態1による制御回路300である。本実施形態において、リレーモジュール600は制御回路300によって制御される。
【0146】
正常時において、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオンして第1中性点リレー回路130をオフし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。なお、各リレー回路のオン・オフ状態およびオン・オフ状態における第1および第2インバータ110、140とモータ200との電気的な接続関係は、実施形態1で説明したとおりである。例えば、制御回路300は、
図5に示される電流波形が得られるようなPWM制御によって2つのインバータの各FETのスイッチング動作を制御することによりモータを駆動することができる。
【0147】
異常時において、第1インバータ110が故障しているとする。その場合、実施形態1と同様に、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンし、かつ、第2相分離リレー回路150をオンして第2中性点リレー回路160をオフする。この状態において、モータ200の各相の巻線の一端同士の接続によって各相の巻線の中性点がリレーモジュール600(具体的には第1中性点リレー回路130)に構成される。制御回路300は、中性点が構成された状態で第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動することができる。制御回路300は、例えば
図7に示される電流波形が得られるようなPWM制御によって第2インバータ140の各FETのスイッチング動作を制御する。このように、リレーモジュール600を用いて駆動電流の閉ループを形成することができるので、異常時においても適切な電流制御が可能となる。
【0148】
図23を参照しながら、リレーモジュール600の回路構成の変形例を説明する。
【0149】
本実施形態において、リレーモジュール600は、2つの相分離リレー回路と、2つの中性点リレー回路とを備える。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えばリレーモジュール600は、第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130(一組のリレー回路)を備えていてもよい。換言すると、電力変換装置100の1つのインバータ用に一組のリレー回路を設けた構成も選択され得る。
【0150】
図23は、一組のリレー回路を備えるリレーモジュール600Aの回路構成を示している。リレーモジュール600Aは、第1および第2インバータ110、140の一方とモータ200との間に接続されている。図示する例では、一組のリレー回路(つまり、第1相分離リレー回路120および第1中性点リレー回路130)を第1インバータ110に接続している。
【0151】
一組のリレー回路が接続されたインバータ、つまり、第1インバータが故障したとする。その場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路120をオフして第1中性点リレー回路130をオンする。制御回路300は、中性点が構成された状態で第2インバータ140を制御することによってモータ200を駆動することができる。この回路構成によれば、故障インバータをモータ200から切り離すことができ、かつ、第1ノードN1を中性点として機能させることができる。
【0152】
本実施形態によれば、電力変換装置700の異常時の制御において、電力損失を抑制することができ、かつ、駆動電流の閉ループを形成することにより適切な電流制御が可能となる。