(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面には、必要に応じてXYZ直交座標系が示されている。Z軸方向は例えば鉛直方向、X軸方向及びY方向は例えば水平方向である。
【0023】
(電極組立体の構成)
図1は、実施形態に係る電極組立体を備える蓄電装置の分解斜視図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った蓄電装置の断面図である。
図1及び
図2に示される蓄電装置1は、例えばリチウムイオン二次電池といった非水電解質二次電池又は電気二重層キャパシタである。
【0024】
図1及び
図2に示されるように、蓄電装置1は、例えば略直方体形状をなす中空のケース2と、ケース2内に収容された電極組立体3とを備えている。ケース2は、例えばアルミニウム等の金属によって形成されている。ケース2は、一方側において開口した本体部2aと、本体部2aの開口を塞ぐ蓋部2bとを有している。ケース2の内壁面上には、絶縁フィルム(図示せず)が設けられる。ケース2の内部には、例えば非水系(有機溶媒系)の電解液が注液されている。電極組立体3では、後述する正極11の正極活物質層15、負極12の負極活物質層18、及びセパレータ13が多孔質をなしており、その空孔内に、電解液が含浸されている。ケース2の蓋部2bには、正極端子5と負極端子6とが互いに離間して配置されている。正極端子5は、絶縁リング7を介してケース2に固定され、負極端子6は、絶縁リング8を介してケース2に固定されている。
【0025】
電極組立体3は、積層型の電極組立体である。電極組立体3は、複数の正極11(電極)と、複数の負極12(電極)と、正極11と負極12との間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成されている。セパレータ13内には、例えば正極11が収容されている。セパレータ13内に正極11が収容された状態で、複数の正極11と複数の負極12とがセパレータ13を介して交互に積層されている。
【0026】
正極11は、例えばアルミニウム箔からなる金属箔14と、金属箔14の両面に形成された正極活物質層15と、を有している。正極11の金属箔14は、矩形状の本体14aと、本体14aの一端から突出する矩形状のタブ14bと、を含む。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。正極活物質層15は、本体14aの両面において、少なくとも本体14aの中央部分に正極活物質が担持されて形成されている。
【0027】
正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。ここでは、一例として、タブ14bには、正極活物質が担持されていない。ただし、タブ14bにおける本体14a側の基端部分には、活物質が担持されている場合もある。
【0028】
タブ14bは、本体14aの上縁部から上方に延び、集電板16を介して正極端子5に接続されている。集電板16はタブ14bと正極端子5との間に配置されている。集電板16は、例えば、正極11の金属箔14と同一の材料から矩形平板状に構成される。積層された複数のタブ14bは、集電板16と、集電板16よりも薄い保護板23との間に配置される(
図3参照)。
【0029】
負極12は、例えば銅箔からなる金属箔17と、金属箔17の両面に形成された負極活物質層18と、を有している。負極12の金属箔17は、正極11の金属箔14と同様に、矩形状の本体17aと、本体17aの一端部から突出する矩形状のタブ17bと、を含む。負極活物質層18は、本体17aの両面において、少なくとも本体17aの中央部分に負極活物質が担持されて形成されている。負極活物質層18は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。
【0030】
負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。ここでは、一例として、タブ17bには、負極活物質が担持されていない。ただし、タブ17bにおける本体17a側の基端部分には、活物質が担持されている場合もある。
【0031】
タブ17bは、本体17aの上縁部から上方に延び、集電板19を介して負極端子6に接続されている。集電板19はタブ17bと負極端子6との間に配置されている。集電板19は、例えば、負極12の金属箔17と同一の材料から矩形平板状に構成される。積層された複数のタブ17bは、集電板19と、集電板19よりも薄い保護板27との間に配置される(
図3参照)。
【0032】
セパレータ13は、正極11を収容している。セパレータ13は、正極11及び負極12の積層方向からみて矩形状である。セパレータ13は、例えば、一対の長尺シート状のセパレータ部材を互いに溶着して袋状に形成される。セパレータ13の材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。
【0033】
図3は、実施形態に係る電極組立体の斜視図である。
図4は、
図3のIV−IV線に沿った電極組立体の断面図である。
図3に示される電極組立体3は、セパレータ13を介して互いに積層された複数の正極11及び複数の負極12を含む。複数の正極11のそれぞれは、XY平面に延在する本体14aと、本体14aの少なくとも一端からX軸方向に突出するタブ14bとを含む。タブ14bはX軸正方向に突出している。複数の負極12のそれぞれは、XY平面に延在する本体17aと、本体17aの少なくとも一端から突出するタブ17bとを含む。本実施形態では、タブ17bは、タブ14bと同様にX軸正方向に突出している。本体14a,17aは、互いに積層され、全体として電極本体20を構成する。電極本体20は側面Sを有する。本実施形態ではタブ14b及びタブ17bは本体14a及び本体17aの一端からそれぞれ同じ方向(X軸正方向)に突出しているので、側面Sは、積層された本体14a及びタブ14bの一端によって構成される。つまり、積層方向(Z軸方向)から見たときに、本体14aにおけるタブ14bが突出している一端と、本体17aにおけるタブ17bが突出している一端とは、いずれも電極本体20の側面Sに位置している。タブ14b,17bは、互いに積層されてタブ積層体21,25をそれぞれ構成する。すなわち、電極組立体3は、Z軸方向に積層された複数のタブ14bを有するタブ積層体21と、Z軸方向に積層された複数のタブ17bを有するタブ積層体25とを備える。タブ積層体21,25は、Y軸方向において、互いに離間して配列される。
【0034】
タブ積層体21は、タブ積層体21の積層方向(Z軸方向)に沿って延在するタブ積層体21の端面21a,21b,21cを備える。端面21a,21bは、タブ積層体21を挟む面であり、端面21cは端面21a,21bを繋ぐ面である。すなわち、端面21a,21bは、タブ積層体21を挟んで互いに反対側に配置されている。また、端面21a,21bは、XZ平面に沿う面である。また、端面21cは、タブ積層体21の先端に向かうに連れてタブ積層体21の厚みが小さくなるようにXY平面に対して傾斜した面である。
【0035】
タブ積層体21は、複数のタブ14b同士を接続する溶接部Wを有する。溶接部Wは、例えばタブ積層体21の端面21a,21bにそれぞれ位置する。溶接部Wは、端面21a,21bから内側に設けられる。溶接部Wは、端面21a,21bのうち一方にのみ位置してもよい。溶接部Wは、端面21a,21bに隣接する集電板16及び保護板23の内部まで延びている。端面21a,21bにおいて、溶接部WのX軸方向における長さは、保護板23のX軸方向における長さと略等しいか、又は保護板23のX軸方向における長さよりも短いことが好ましい。これにより、タブ積層体21のタブ14bがX軸方向において位置ずれした場合(例えば公差による位置ずれがある場合)であっても安定して溶接部Wを形成することができる。なお、溶接部WのX軸方向における長さが保護板23のX軸方向における長さと略等しい場合、位置ずれにより溶接部WがX軸方向において保護板23の外側にはみ出す可能性がある。また、溶接部WのX軸方向における長さが保護板23のX軸方向における長さよりも長い場合、溶接部WがX軸方向において保護板23の外側にはみ出す。それらの場合であっても、溶接部Wを形成することは可能である。
【0036】
タブ積層体21は、Z軸方向において、集電板16と保護板23との間に配置される。すなわち、集電板16、タブ積層体21及び保護板23は、Z軸方向において配列される。集電板16及び保護板23は例えば金属板である。保護板23は、集電板16と接触しておらず、保護板23と集電板16とは、タブ積層体21を積層方向に挟んで離間している。タブ積層体21は保護板23よりも厚く、集電板16はタブ積層体21よりも厚い。
【0037】
同様に、タブ積層体25は、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に沿って延在するタブ積層体25の端面25a,25b,25cを備える。端面25a,25bは、タブ積層体25を挟む面であり、端面25cは端面25a,25bを繋ぐ面である。すなわち、端面25a,25bは、タブ積層体25を挟んで互いに反対側に配置されている。また、端面25a,25bは、XZ平面に沿う面である。また、端面25cは、タブ積層体25の先端に向かうに連れてタブ積層体25の厚みが小さくなるようにXY平面に対して傾斜した面である。
【0038】
タブ積層体25は、複数のタブ17b同士を接続する溶接部Wを有する。溶接部Wは、例えばタブ積層体25の端面25a,25bにそれぞれ位置する。溶接部Wは、端面25a,25bから内側に設けられる。溶接部Wは、端面25a,25bのうち一方にのみ位置してもよい。溶接部Wは、端面25a,25bに隣接する集電板19及び保護板27の内部まで延びている。端面25a,25bにおいて、溶接部WのX軸方向における長さは、保護板27のX軸方向における長さと略等しいか、又は保護板27のX軸方向における長さよりも短いことが好ましい。これにより、タブ積層体25のタブ17bがX軸方向において位置ずれした場合(例えば公差による位置ずれがある場合)であっても安定して溶接部Wを形成することができる。なお、溶接部WのX軸方向における長さが保護板27のX軸方向における長さと略等しい場合、位置ずれにより溶接部WがX軸方向において保護板27の外側にはみ出す可能性がある。また、溶接部WのX軸方向における長さが保護板27のX軸方向における長さよりも長い場合、溶接部WがX軸方向において保護板27の外側にはみ出す。それらの場合であっても、溶接部Wを形成することは可能である。
【0039】
タブ積層体25は、Z軸方向において、集電板19と保護板27との間に配置される。すなわち、集電板19、タブ積層体25及び保護板27は、Z軸方向において配列される。集電板19及び保護板27は例えば金属板である。保護板27は、集電板19と接触しておらず、保護板27と集電板19とは、タブ積層体25を積層方向に挟んで離間している。タブ積層体25は保護板27よりも厚く、集電板19はタブ積層体25よりも厚い。
【0040】
上述のとおり、タブ積層体21,25はそれぞれ溶接部Wを有する。そのため、電極組立体3の製造工程には、タブ積層体21,25に溶接部Wを形成する工程が含まれる。溶接部Wを形成する時(溶接時)には、スパッタ粒子等の異物が発生し得る。スパッタ粒子は例えば金属粒子である。発生した異物が飛散して電極本体20に付着すると、電極組立体3の性能が変化してしまう可能性がある。例えば積層された本体14aと本体17aとの間に異物が侵入すると、本体14a及び本体17aが(つまり正極11及び負極12が)短絡するおそれがある。そこで、各実施形態では、後述の手法により、電極本体20への異物の付着の抑制を可能とする。
【0041】
(第1実施形態)
図5〜
図7は、第1実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程を示す図である。この実施形態では、
図3に示される電極組立体3は、例えば以下の方法により製造される。
【0042】
(タブ積層体を準備する工程)
まず、
図5に示されるように、積層された本体14a,17aを有する電極本体20、及び、積層されたタブ14b,17bを有し電極本体20の側面Sから突出する複数のタブ積層体21,25を準備する。例えば、まず、集電板16,19上にそれぞれタブ14b,17bを積層することによりタブ積層体21,25を形成する。その後、タブ積層体21,25上にそれぞれ保護板23,27を載置する。
【0043】
(カバーを設ける工程)
次に、電極本体20及びタブ積層体21,25を、載置台50上に配置する。載置台50において電極本体20及びタブ積層体21,25が載置される面が、載置面50aとして図示される。説明の便宜上、電極本体20において本体14a,17aの積層方向に直交する2つの面のうち、載置面50aに対向する面とは電極本体20を挟んで反対側に位置する面を主面20aと称し図示する。続いて、電極本体20を覆うように、カバー60を設ける。カバー60は、電極本体20がカバー60内に配置される一方で、タブ積層体21,25のうちの溶接部W(
図3)が形成される部分(溶接箇所)がカバー60外に配置されるように設けられる。カバー60は、側壁部61〜64と、それら4つの側壁部61〜64を繋ぐ天井部65とを有する。側壁部61は、電極本体20の側面Sを覆う部分である。側壁部62は、電極本体20の側面Sとは反対側の側面を覆う部分である。カバー60が設けられた状態で、側壁部61,62は、電極本体20の側面Sの面方向(YZ平面)に沿って延在する。側壁部63は、電極本体20において側面Sに直交する方向に延在するとともに本体14a,17aの積層方向に延在する2つの側面のうちの一方の側面を覆う部分である。側壁部64は、それら2つの側面のうちの他方の側面を覆う部分である。カバー60が設けられた状態で、側壁部63,64は、XZ平面に沿って延在する。天井部65は、電極本体20の主面20aを覆う部分である。カバー60が設けられた状態で、天井部65は、電極本体20の主面20aの面方向(XY平面)に沿って延在する。カバー60は、天井部65とは側壁部61〜64を挟んで反対側の位置に開口部を有する。カバー60は、カバー60の開口部が載置面50aに対向するように、載置台50上に載置される。
【0044】
側壁部61は、電極本体20の側面Sから突出するタブ積層体21,25をそれぞれ通すための開口部61a,61bを有する。このような開口部61a,61bをカバー60の側壁部61が有することによって、タブ積層体21,25の溶接箇所がカバー60外に配置されるように、カバー60を設けることができる。
【0045】
カバー60には、カバー60内にガスを流入させるための流入口71が設けられている。本実施形態では、流入口71は、カバー60のうちの天井部65に設けられている。この流入口71に供給するガスの詳細については、後に
図7を参照してあらためて説明する。カバー60には、タブ積層体21,25の溶接箇所に向かってカバー60内からガスを排出するための排出口72a,72b,73a,73b,74a,74b,75a,75bが設けられている。
【0046】
具体的に、排出口72a,72bは、タブ積層体25の端面25aの溶接箇所に向かって、カバー60内からガスを排出する。排出口73a,73bはタブ積層体25の端面25bの溶接箇所向かって、排出口74a,74bはタブ積層体21の端面21bの溶接箇所に向かって、排出口75a,75bはタブ積層体21の端面21aの溶接箇所に向かって、それぞれカバー60内からガスを排出する。排出口72a,72bは、Z軸正方向に間隔をあけて並んで配置されている。排出口72a,72bは、後述の
図7に示されるように、ガスの排出方向に向かって長さを有するパイプ形状を有している。この長さがあることで、ガスを溶接箇所の近くまで導き、溶接箇所に向けてより確実にガスを排出することができる。このような排出口72a,72bは、例えばノズルを用いて構成してもよい。なお、2つの排出口72a,72bのうち一方の排出口のみが設けられていてもよい。排出口73a,73b、排出口74a,74b、排出口75a,75bについても、排出口72a,72bと同様の配置及び構成とすることができる。
【0047】
(溶接部の形成工程)
次に、タブ積層体21,25に溶接部Wを形成する。溶接部Wを形成するための溶接の手法はとくに限定されないが、ここでは、エネルギービームを用いた溶接の手法を例に挙げて説明する。
図6に示されるように、タブ積層体25の端面25aにエネルギービームBを照射する。
図6(A)はX軸方向から見たタブ積層体21,25を示す図であり、
図6(B)はY軸方向から見たタブ積層体25を示す図である。タブ積層体21は、例えば治具42により保護板23を介して押圧されるが、押圧されなくてもよい。同様に、タブ積層体25は、例えば治具44により保護板27を介して押圧されるが、押圧されなくてもよい。
【0048】
エネルギービームBは、照射装置30からタブ積層体25の端面25aに向けて照射される。照射装置30は、例えばレンズ及びガルバノミラーを含むスキャナヘッドである。スキャナヘッドにはファイバを介してビーム発生装置が接続される。照射装置30は、例えばプリズム等の屈折式の光学系から構成されてもよい。エネルギービームBは、溶接を行うことができる高エネルギービームである。エネルギービームBは、例えばレーザービーム又は電子ビームである。エネルギービームBの照射は、不活性ガスの雰囲気中で行われる。不活性ガスは、例えば先に説明した排出口72a,72b(
図5)から供給することができる。
【0049】
エネルギービームBは、例えば治具44により集電板19及び保護板27を介してタブ積層体25をZ軸方向に押圧した状態でタブ積層体25の端面25aに照射される。
【0050】
エネルギービームBは、タブ積層体25の端面25aにおいて、Z軸方向に交差する方向(X軸方向)に沿って走査される。エネルギービームBをZ軸方向に変位させながらX軸方向に沿って走査してもよい。例えば、エネルギービームBをZ軸方向に往復変位(ウォブリング)させながらX軸方向に沿って走査する。エネルギービームBの照射スポットのZ軸方向における変位量は、タブ積層体25の厚みよりも大きい。エネルギービームBの照射スポットは、タブ積層体25の端面25aにおいて、X軸方向に沿った軸線H1上の位置P1から位置P2まで移動する。例えば、位置P1,P2は、Z軸方向においてタブ積層体25の端面25aの中心に位置する。エネルギービームBは、例えば、タブ積層体25の端面25aにおいてX軸方向に沿って中心点を移動させ、当該中心点を中心にXZ平面においてエネルギービームBの照射スポットを回転させながら走査される。回転の直径がタブ積層体25の厚みよりも大きいと、タブ積層体25の端面25a、集電板19及び保護板27を全体的に溶接できるため好ましい。
【0051】
上述のようにエネルギービームBを照射することによって、先に説明した
図4に示されるように、タブ積層体25の端面25aに溶接部Wが形成される。
【0052】
本実施形態では、タブ積層体25の端面25aにエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成する際、カバー60の流入口71にガスが供給される。このように流入口71に供給されるガスの役割について、
図7を参照して説明する。
図7は、Y軸方向から見たカバー60内及びカバー60外でのガス(ガスGとして図示)の流れを概念的に示す図である。
図7には、カバー60の側壁部61に設けられた排出口72a,72b,73a,73b,74a,74b,75a,75bのうち、排出口72a,72bの部分が示される。ガスGは、流入口71を介してカバー60に流入する。ガスGは、ガス供給源76から供給される。ガスGの種類はとくに限定されないが、エネルギービームBを照射して溶接を行う場合には、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスを用いるとよい。ガス供給源76によるガスGの供給の量及び供給のタイミング等は、制御装置77によって制御される。例えば、ガスGを流入口71に連続供給することもできるし、パルス状に供給(間欠供給)することもできる。パルス状にガスGを供給することによって、連続供給する場合よりも、ガスGの供給量を減らすことができる。
【0053】
ガス供給源76から流入口71に供給されたガスGは、流入口71からカバー60内に流入する。ガスGがカバー60内に流入した分だけカバー60内の圧力がカバー60外の圧力よりも高くなる(つまり陽圧となる)。カバー60外の圧力は略大気圧であってもよく、その場合には、カバー60内の圧力を大気圧よりも大きくすることで、カバー60内の圧力を陽圧とすることができる。
【0054】
カバー60内の圧力が陽圧となるので、カバー60内に供給されたガスG(或いはもともとカバー60内にあった気体)は、排出口72a,72bを介して、タブ積層体25の端面25aの溶接箇所に向かって排出される。ここでの溶接箇所は、上述のエネルギービームBが照射される部分である。排出口72a,72bのうち、下側(Z軸負方向側)に位置している排出口72bからは、横方向(Z軸方向の高さが変わらないように進む方向)にガスGが排出される。排出口72a,72bのうち、上側(Z軸正方向側)に位置している排出口72aからは、斜め下方向に向かってガスGが排出される。
【0055】
排出口72a,72bを介してカバー60外に排出されたガスGは、溶接箇所に吹き付けられる。この時、溶接箇所でスパッタ粒子等の異物が発生していれば、発生した異物は、溶接箇所に吹き付けられたガスGによって、電極本体20から遠ざかるように運ばれる。ガスGによって運ばれた異物は、ガスGとともに吸引されて取り除かれる。
図7に示す例では、ガスGは、カバー60とはタブ積層体25を挟んで反対側に配置されたガイド90に到達する。ガイド90は、ガスGを収集して上方(Z軸正方向)に案内するように、例えば、タブ積層体25側に開口しZ軸方向に延在する半パイプ形状を有する。ガイド90によって上方に案内されたガスGは、吸引管92の吸引口91に到達し、吸引される。
【0056】
このように、本実施形態では、カバー60の流入口71にガスGを供給しつつ、タブ積層体25の端面25aにエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成する。
【0057】
再び
図6に戻り、次に、タブ積層体25の端面25aと同様に、タブ積層体21の端面21bにもエネルギービームBを照射することにより、タブ積層体21の端面21bに溶接部Wを形成する(
図4参照)。このときにも、カバー60内が陽圧となるように、流入口71にガスGを供給する。カバー60内のガスは、排出口74a,74bを介して、タブ積層体21の端面21bに向かって排出される。次に、タブ積層体25の端面25bにも同様にエネルギービームBを照射することにより、タブ積層体25の端面25bに溶接部Wを形成する(
図4参照)。このときにも、カバー60内が陽圧となるように、流入口71にガスGを供給する。カバー60内のガスGは、排出口73a,73bを介して、タブ積層体25の端面25bの溶接箇所に向かって排出される。次に、タブ積層体21の端面21aにも同様にエネルギービームBを照射することにより、タブ積層体21の端面21aに溶接部Wを形成する(
図4参照)。このときにも、カバー60内が陽圧となるように、流入口71にガスGを供給する。カバー60内のガスGは、排出口75a,75bを介して、タブ積層体21の端面21aの溶接箇所に向かって排出される。
【0058】
上記工程を経ることによって、電極組立体3が製造される。その後、タブ積層体21,25を折り曲げた電極組立体3をケース2内に収容し、蓄電装置1を製造することができる。
【0059】
以上説明したように、上記の電極組立体3の製造方法では、電極本体20がカバー60内に配置される一方でタブ積層体21,25の溶接箇所がカバー60外に配置されるようにカバー60が設けられる。このように電極本体20を覆うカバー60を設けることによって、溶接時に発生したスパッタ粒子等の異物の電極本体20への付着を抑制することができる。
【0060】
ここで、溶接箇所で発生した異物が、カバー60の隙間を通ってカバー60内に侵入してしまう可能性もある。例えば、先に説明した
図5の例では、カバー60と載置台50との間に隙間が生じる可能性がある。また、カバー60の側壁部61における開口部61a,61bにおいて、タブ積層体21,25とカバー60の側壁部61との間に隙間が生じる可能性がある。
【0061】
そこで、上記の電極組立体3の製造方法では、カバー60には、カバー60内にガスGを流入させるための流入口71が設けられている。タブ積層体21,25に溶接部Wを形成する工程では、カバー60内の圧力がカバー60外の圧力よりも高く(つまり陽圧と)なるように、流入口71にガスGが供給される。カバー60内の圧力が陽圧となっているので、溶接時に発生したスパッタ粒子等の異物は、カバー60の隙間を通ってカバー60内に侵入しにくくなる。よって、カバー60に隙間が生じていたとしても、電極本体20への異物の付着を抑制することができる。
【0062】
カバー60には、タブ積層体21,25の溶接箇所に向かってカバー60内からガスGを排出するための排出口72a,72b,73a,73b,74a,74b,75a,75bが設けられている。この場合、溶接時には、タブ積層体21,25の溶接箇所に向かってカバー60内からガスGが吹き付けられるので、溶接箇所において発生した異物がカバー60内(つまり電極本体20)に向かって飛散することを抑制できる。この効果は、一つの溶接箇所に対して少なくとも一つの排出口が設けられていることにより得ることができる。例えばタブ積層体25の端面25aの溶接箇所に対しては、排出口72a及び排出口72bの少なくとも一方が設けられていればよい。両方の排出口72a,72bが設けられていれば、それら複数の排出口からガスを吹き付けることによって、異物が電極本体20に向かって飛散することをさらに抑制することができる。
【0063】
溶接部Wを形成する工程では、排出口72a,72b、73a、73b,74a,74b,75a,75bから排出されたガスGを吸引してもよい。これにより、溶接時に発生した異物をガスGとともに吸引して取り除くことができる。
【0064】
溶接部Wを形成する工程では、流入口71にガスGをパルス状に供給してもよい。これにより、ガスGを連続供給する場合よりも、ガスGの供給量を減らすことができる。
【0065】
排出口72a,72b、73a、73b,74a,74b,75a,75bを介して溶接箇所に吹き付けられるガスGとして、窒素ガス及びアルゴンガス等の不活性ガスを用いることにより、溶接時の酸化等を防止することもできる。つまり、ガスGをシールドガス(アシストガス等とも称される)として用いることができる。
【0066】
カバー60の材質として樹脂を採用すれば、溶接時にカバー60の表面から金属性の異物が発生することを防ぐこともできる。
【0067】
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0068】
上記実施形態では、エネルギービームを照射することでタブ積層体に溶接部を形成する例について説明したが、例えば抵抗溶接、超音波溶接等によってタブ積層体に溶接部を形成してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、一つの流入口がカバーに設けられている例について説明したが、複数の流入口がカバーに設けられていてもよい。また、流入口を設ける位置は、カバー内にガスを流入させることができる位置であればよく、とくに限定されるものではない。
【0070】
また、上記実施形態では、積層型の電極組立体においてタブ積層体に溶接部を形成する例について説明したが、例えば巻回型の電極組立体において巻回されたタブのうち積層状態となっている部分に溶接部を形成する場合でも、同様の手法により溶接時に電極本体への異物の付着を抑制できる。
【0071】
また、上記実施形態では、2つのタブ14b及びタブ17bがそれぞれの本体14a及び本体17aの一端から同じ方向に突出している例について説明したが、2つのタブ14b,17bが異なる方向に突出していてもよい。例えば、積層方向から見たときに、一方の本体14aにおけるタブ14bが突出している一端と、他方の本体17aにおけるタブ17bが突出している一端とが、電極本体20の側面S及び側面Sに対向する側面の2つの側面にそれぞれ位置していてもよい。この場合、一方のタブ積層体21は電極本体20の一方の側面Sから突出し、他方のタブ積層体25は電極本体20の他方の(側面Sとは反対側の)側面から、一方のタブ積層体25の突出方向とは反対の方向に突出する。このような構成においては、さらに、各タブ14b,17bの幅(
図3に示される例ではY軸方向の長さ)が、本体14a,17aの幅と同じであってもよい。この場合、例えば矩形状の金属箔の一部に正極活物質層を形成することによって、金属箔のうちの正極活物質層を形成した部分を本体14aとし、正極活物質層が形成されていない残りの部分をタブ14bとすることができる。同様に、矩形状の金属箔の一部に負極活物質層を形成することによって、金属箔のうちの負極活物質層を形成した部分を本体17aとし、負極活物質層が形成されていない残りの部分をタブ17bとすることができる。
【0072】
(第2実施形態)
図8及び
図9は、第2実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程を示す図である。この実施形態では、
図3に示される電極組立体3は、例えば以下の方法により製造される。
【0073】
(タブ積層体を準備する工程)
まず、
図8に示されるように、タブ積層体21,25を準備する。タブ積層体21,25の準備については、先に
図5を参照して説明した例と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0074】
(カバーを設ける工程)
次に、電極本体20及びタブ積層体21,25を、載置台50上に配置する。タブ積層体21,25の載置台50上への配置については、先に
図5を参照して説明した例と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。続いて、電極本体20を覆うように、カバー60Aを設ける。カバー60Aは、カバー60(
図5)と同様に、側壁部61〜64と、天井部65とを有しており、電極本体20を覆うように設けられる。カバー60Aは、カバー60と比較して、排出口72a,72b,73a,73b,74a,74b,75a,75bが設けられていない一方で、ノズル81〜84及び供給管86〜89が設けられている点で相違する。
【0075】
ノズル81〜84は、基端が側壁部61の内壁面に接し、先端がカバー60A外に配置されるように、側壁部61に設けられる。ノズル81〜84は、タブ積層体21,25のうちの溶接部Wが形成される部分(溶接箇所)に向かってガスを吹き出す吹出口81a,82a,83a,84aをそれぞれ先端に有する。供給管86〜89は、対応するノズル81〜84の基端にガスを供給するガス供給管である。
図8に示される例では、各供給管86〜89は、側壁部61に沿う方向(Z軸方向)を長手方向とする。各供給管86〜89の長手方向に直交する断面形状は、例えば略矩形状である。
【0076】
具体的に、ノズル81は、供給管86から供給されるガスを、吹出口81aからタブ積層体25の端面25aの溶接箇所に吹き付ける。同様に、ノズル82は供給管87から供給されるガスを吹出口82aからタブ積層体25の端面25bの溶接箇所に、ノズル83は供給管88から供給されるガスを吹出口83aからタブ積層体21の端面21bの溶接箇所に、ノズル84は供給管89から供給されるガスを吹出口84aからタブ積層体21の端面21aの溶接箇所に、それぞれ吹き付ける。各ノズル81〜84は、後述の
図9に示されるように、ガスの排出方向に向かって長さを有するパイプ形状を有している。この長さがあることで各ノズル81〜84の吹出口81a,82a,83a,84aが溶接箇所に近づくので、ガスを溶接箇所の近くまで導き、溶接箇所に向けてより確実にガスを吹き付けることができる。供給管86〜89の詳細については、後に
図9を参照して改めて説明する。
【0077】
(溶接部の形成工程)
次に、タブ積層体21,25に溶接部Wを形成する。エネルギービームの照射による溶接部Wの形成については、先に
図6を参照して説明した例と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。なお、不活性ガスは、先に説明した供給管86及びノズル81(
図8)を介して供給することができる。
【0078】
本実施形態では、タブ積層体25の端面25aにエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成する際、供給管86を介してノズル81にガスが供給される。このように供給管86に供給されるガスの役割について、
図9を参照して説明する。
図9は、Y軸方向から見たガス(ガスGとして図示)の流れを概念的に示す図である。
図9には、カバー60Aに設けられたノズル81〜84及び供給管86〜89のうち、ノズル81及び供給管86の部分が示される。ガスGは、供給管86からノズル81に供給される。ガスGには、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスを用いるとよい。
【0079】
供給管86は、第1の部分861と第2の部分862とを含む。第1の部分861は、供給管86のうちの吹出口81a側に位置する部分である。第1の部分861は、カバー60A内に位置している。第1の部分861は、カバー60Aの側壁部61に沿って上方から下方に向かって(Z軸負方向に)延在している。第1の部分861において、供給管86の一部がカバー60Aの一部で構成されてもよい。本実施形態では、第1の部分861は、その一部として側壁部861aを有している。この側壁部861aは、カバー60Aの側壁部61の一部を用いて構成されている。第1の部分861は、ノズル81の基端に接続される開口部861bを有している。この開口部861bを介して、第1の部分861からノズル81にガスGが供給される。
【0080】
第2の部分862は、第1の部分861を挟んでノズル81とは反対側に位置する部分である。第2の部分862は、カバー60A外に位置している。第2の部分862には、第1の部分861とは反対側から、ガスGが供給される。ガスGは、例えばガス供給源(図示せず)から供給される。
【0081】
ノズル81は、カバー60Aの側壁部61に設けられている。より具体的には、ノズル81は、側壁部61のうちの、電極本体20の側面S(
図7参照)と対向する部分に設けられている。この位置にノズル81が設けられることによって、ノズル81から横方向(Z軸方向の高さが変わらないように進む方向)にガスGが吹き付けられる。
【0082】
ノズル82〜84、供給管87〜89(
図8参照)についても、ノズル81、供給管86と同様の配置及び構成とすることができる。
【0083】
供給管86からノズル81に供給されたガスは、ノズル81を介して溶接箇所に吹き付けられる。上述のような不活性ガスであるガスGが溶接箇所に吹き付けられることによって、溶接時の酸化等を防止することができる。つまり、ガスGをシールドガス(アシストガス等とも称される)として用いることができる。また、溶接時に、溶接箇所でスパッタ粒子等の異物が発生していれば、発生した異物は、溶接箇所に吹き付けられたガスGによって、電極本体20から遠ざかるように運ばれる。ガスGによって運ばれた異物は、ガスGとともに吸引されて取り除かれる。
図9に示す例では、ガスGは、カバー60とはタブ積層体25を挟んで反対側に配置されたガイド90に到達する。ガイド90は、ガスGを収集して上方(Z軸正方向)に案内するように、例えば、タブ積層体25側に開口しZ軸方向に延在する半パイプ形状を有する。ガイド90によって上方に案内されたガスGは、吸引管92の吸引口91に到達し、吸引される。
【0084】
このように、本実施形態では、カバー60に設けられた供給管86及びノズル81を介して溶接箇所にガスGを吹き付けるとともに、タブ積層体25の端面25aにエネルギービームBを照射して溶接部Wを形成する。
【0085】
以上説明した供給管86とカバー60Aとは一体形成されていてもよい。その場合、供給管86及びカバー60Aの材質は同じものとすることができる。材質の例は樹脂である。供給管86及びカバー60Aの材質として樹脂を採用することにより、溶接時に供給管86及びカバー60Aの表面から金属粒子等の異物が発生することを防ぐこともできる。供給管86及びカバー60の材質として樹脂を採用することにより、供給管86及びカバー60Aを一体成形することもできる。
【0086】
図6を参照し、タブ積層体25の端面25aと同様に、タブ積層体21の端面21bにもエネルギービームBを照射することにより、タブ積層体21の端面21bに溶接部Wを形成する(
図4参照)。このときには、供給管88から供給されるガスを、ノズル83がタブ積層体21の端面21bに吹き付ける。次に、タブ積層体25の端面25bにも同様にエネルギービームBを照射することにより、タブ積層体25の端面25bに溶接部Wを形成する(
図4参照)。このときには、供給管87から供給されるガスを、ノズル82がタブ積層体25の端面25bの溶接箇所に吹き付ける。次に、タブ積層体21の端面21aにも同様にエネルギービームBを照射することにより、タブ積層体21の端面21aに溶接部Wを形成する(
図4参照)。このときには、供給管89から供給されるガスを、ノズル84がタブ積層体21の端面21aの溶接箇所に吹き付ける。
【0087】
上記工程を経ることによって、電極組立体3が製造される。その後、タブ積層体21,25を折り曲げた電極組立体3をケース2内に収容し、蓄電装置1を製造することができる。
【0088】
以上説明したように、上記の電極組立体3の製造方法では、電極本体20がカバー60A内に配置される一方でタブ積層体21,25の溶接箇所がカバー60A外に配置されるようにカバー60Aが設けられる。このように電極本体20を覆うカバー60Aを設けることによって、溶接時に発生したスパッタ粒子等の異物の電極本体20への付着を抑制することができる。
【0089】
ここで、電極本体20を覆うカバー60Aを設けると、電極本体20とタブ積層体21,25の溶接箇所との間のスペース(クリアランス)が狭くなる。このスペースが狭くなると、タブ積層体21,25の溶接箇所よりも電極本体20側にノズルの吹出口が配置されるように供給管を設けることが困難になり、上述の酸化等の防止効果及び異物を電極本体20から遠ざける効果が得られなくなるおそれがある。
【0090】
そこで、上記の電極組立体3の製造方法では、カバー60Aに、吹出口81a,82a,83a,84aを有するノズル81〜84、及び供給管86〜89が設けられている。供給管86〜89の吹出口81a,82a,83a,84a側の部分(例えば供給管86の第1の部分861)は、カバー60A内に設けられていてもよい。これにより、電極本体20をカバー60Aで覆うだけで、タブ積層体21,25の溶接箇所よりも電極本体20側にノズル81〜84の吹出口81a,82a,83a,84aが配置されるように供給管86〜89を設けることができる。よって、電極本体20への異物の付着を抑制しつつ、タブ積層体21,25の溶接箇所にガスを効果的に(例えば、アシストガスとしての機能を発揮し、発生した異物を電極本体20から遠ざけるように)供給することができる。また、ノズル81〜84を設けるスペースが確保されているので、例えばノズルの向きを調整することも容易となる。
【0091】
カバー60Aは、電極本体20の側面Sを覆う側壁部61を有し、ノズル81〜84の吹出口81a,82a,83a,84aは、側壁部61に設けられている。これにより、ノズル81〜84をタブ積層体21,25の溶接箇所の近くに設けることができる。側壁部61のうち溶接箇所と同じ高さに位置する部分にノズル81〜84を設ければ、吹出口81a,82a,83a,84aをさらに溶接箇所に近づけやすくなる。
【0092】
供給管86の第1の部分861において、供給管86の側壁部861aがカバー60Aの側壁部61で構成されていてもよい。これにより、カバー60A内に占める供給管86のスペースを低減することができるので、供給管86をカバー60A内に設け易くなる。供給管87〜89についても同様である。
【0093】
供給管86〜89とカバー60Aとが一体形成されていてもよい。供給管86〜89とカバー60Aとが分離していると、それらを別々に配置することによる位置ずれが生じる可能性があるが、供給管86〜89とカバー60Aとが一体形成されていることにより、そのような位置ずれの問題が生じず、取扱いも容易となる。また、供給管86〜89及びカバー60Aの製作に掛かる手間又はコストを低減することができる。
【0094】
ノズル81〜84、及び供給管86〜89が設けられているカバーにも、先に説明したカバー60(
図5等参照)と同様に、ガスが供給される流入口71が設けられてよい。
図10に示される例では、カバー60Bには、ノズル81〜84、供給管86〜89が設けられているだけでなく、流入口71も設けられている。流入口71に供給されるガスの役割については前述のとおりであるのでここでは説明を繰り返さない。供給管86〜89によってノズル81〜84に供給されるガスの種類と、流入口71に供給されるガスの種類とは同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0095】
以上、本発明の第2実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0096】
上記実施形態では、供給管の吹出口側の部分(例えば供給管86の第1の部分861)が、カバー内に設けられている例について説明した。ただし、供給管全体が、カバー外に設けられていてもよい。
図11に示される例では、供給管86に代えて、供給管86Aがカバー60C外に設けられている。供給管86Aは、供給管86と同様の機能を有する。
図11には示されないが、供給管86A以外にも、供給管87〜89と同様の機能を有する他の供給管がカバー60C外に設けられている。カバー60Cにおいて供給管86Aが設けられる部分には、供給管86Aの一部が埋め込まれるように、凹部が形成されていてよい。これにより、供給管86Aのカバー60Cへの取り付けを容易にできる。また、カバー60C外において供給管86Aの占めるスペースを削減することができる。なお、供給管86Aの一部が、カバー60Cの側壁部61で構成されていてもよい。これによっても、カバー60C外における供給管86Aの占めるスペースを低減することができるので、供給管86Aをカバー60Cに設け易くなる。他の供給管についても同様である。カバー60Cにも、カバー60Bと同様に、流入口71が設けられてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、ノズルの数と同じ数の供給管が設けられ、各ノズルに、対応する供給管からガスが供給される例について説明したが、ノズルの数と供給管の数は同じでなくてもよい。供給管の数は、ノズルの数よりも少なくてもよい。その場合には、例えば、2つ以上のノズルが一つの供給管から供給されるガスを共用する構成を採用することもできる。また、上記実施形態では、一つの溶接箇所に対して一つのノズルが設けられている例について説明したが、一つの溶接箇所に対して複数のノズルが設けられてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、ノズルの吹出口から溶接箇所にガスを吹き付ける例について説明したが、ノズルを用いることなく溶接箇所にガスを吹き付けてもよい。例えば、カバーの側壁部に吹出口を直接設けることによって、当該吹出口から溶接箇所にガスを吹き付けることもできる。
【0099】
また、上記実施形態では、積層型の電極組立体においてタブ積層体に溶接部を形成する例について説明したが、例えば巻回型の電極組立体において巻回されたタブのうち積層状態となっている部分に溶接部を形成する場合でも、同様の手法により溶接時にガスを供給することができる。
【0100】
また、上記実施形態では、2つのタブ14b及びタブ17bがそれぞれの本体14a及び本体17aの一端から同じ方向に突出している例について説明したが、2つのタブ14b,17bが異なる方向に突出していてもよい。例えば、積層方向から見たときに、一方の本体14aにおけるタブ14bが突出している一端と、他方の本体17aにおけるタブ17bが突出している一端とが、電極本体20の側面S及び側面Sに対向する側面の2つの側面にそれぞれ位置していてもよい。この場合、一方のタブ積層体21は電極本体20の一方の側面Sから突出し、他方のタブ積層体25は電極本体20の他方の(側面Sとは反対側の)側面から、一方のタブ積層体25の突出方向とは反対の方向に突出する。このような構成においては、さらに、各タブ14b,17bの幅(
図3に示される例ではY軸方向の長さ)が、本体14a,17aの幅と同じであってもよい。この場合、例えば矩形状の金属箔の一部に正極活物質層を形成することによって、金属箔のうちの正極活物質層を形成した部分を本体14aとし、正極活物質層が形成されていない残りの部分をタブ14bとすることができる。同様に、矩形状の金属箔の一部に負極活物質層を形成することによって、金属箔のうちの負極活物質層を形成した部分を本体17aとし、負極活物質層が形成されていない残りの部分をタブ17bとすることができる。
【0101】
また、上記実施形態では、電極本体20をカバー60Aで覆う手法について説明したが、これに代えて、電極本体20の側面Sと、タブ積層体21,25の溶接箇所とを仕切る仕切部を設ける手法が用いられてもよい。
図12は、そのような手法を実現するための変形例に係る電極組立体の製造方法の一工程(仕切部を設ける工程)を示す図である。この仕切部を設ける工程は、先に説明したカバーを設ける工程(
図9)と比較して、カバー60Aを設ける代わりに、仕切部100を、電極本体20とタブ積層体21,25の溶接箇所とが仕切部100を挟んで反対側に位置するように設ける点において相違する。
【0102】
上述のように設けられた仕切部100は、電極本体20と、タブ積層体21,25の溶接箇所とを仕切る板であってもよい。仕切部100の材質は、上述のカバー60Aの材質と同様であってよい。仕切部100の構成は、先に
図8及び
図9を参照して説明したカバー60Aの側壁部61と同様であってよい。すなわち、仕切部100は、電極本体20の側面Sを覆う部分であり、側面Sの面方向(YZ平面)に沿って延在する。
図12には図示されないが、仕切部100は、側壁部61(
図8)と同様に、電極本体20の側面Sから突出するタブ積層体21,25をそれぞれ通すための開口部61a,61bを有する。また、仕切部100には、側壁部61と同様にノズル81〜84及び供給管86〜89が設けられている。なお、
図12には、仕切部100に設けられたノズル81〜84及び供給管86〜89のうち、ノズル81及び供給管86の部分が示される。仕切部100に設けられるノズル81〜84の位置は、カバー60Aの側壁部61に設けられるノズル81〜84の位置と同様であってよい。供給管86〜89のノズル81〜84側の部分は、仕切部100の電極本体20側の部分に沿って設けられ、Z軸方向を長手方向とする。具体的に、供給管86の場合、供給管86の第1の部分861の有する側壁部861aが、仕切部100の一部を用いて構成されている。供給管87〜89についても同様であってよい。供給管86からノズル81に供給されたガスGは、ノズル81を介して溶接箇所に吹き付けられ、その後、吸引口91によって吸引される。
【0103】
上記の変形例に係る電極組立体3の製造方法では、電極本体20の側面Sと、タブ積層体21,25の溶接箇所とを仕切る仕切部100が設けられる。これにより、溶接時に発生したスパッタ粒子等の異物の電極本体20への付着を抑制することができる。そして、仕切部100には、先に説明したカバー60Aの側壁部61と同様に、吹出口81a,82a,83a,84aを有するノズル81〜84、及び供給管86〜89が設けられている。よって、仕切部100を設けることによっても、カバー60Aを設ける場合と同様に、電極本体20への異物の付着を抑制しつつ、タブ積層体21,25の溶接箇所にガスを効果的に供給することができる。なお、各供給管のノズル側の部分は、仕切部100の溶接箇所側に設けられてもよい。この場合、供給管のノズル側の部分は、仕切部100の溶接箇所側の部分に沿って設けられ、Z軸方向を長手方向とする。仕切部100において供給管が設けられる部分には、供給管の一部が埋め込まれるように、凹部が形成されていてもよい。
【0104】
上記各実施形態では、タブ積層体の端面にエネルギービームを照射して溶接箇所を形成する例について説明した。ただし、エネルギービームの照射位置は、タブ積層体の端面に限定されない。
図13に示される例では、タブ積層体21を押圧する保護板23Aが、例えばその中央部分に孔23aを有している。エネルギービームは、保護板23Aの孔23aを通り、上方から下方(Z軸正方向側からZ軸負方向側)に向けて、タブ積層体21の上面に照射される。これにより、タブ積層体21の上面から下面に向かって、保護板23Aの孔23aに対応する部分に溶接部が形成される。溶接部は、Z軸方向から見たときに、溶接部の縁がタブ積層体21の端面21a,21b,21cから離間するように形成される。従って、端面21a,21b,21cには溶接部が形成されない。同様に、タブ積層体25を押圧する保護板27Aが、例えばその中央部分に孔27aを有している。エネルギービームは、保護板27Aの有する孔27aを通り、上方から下方に向けて、タブ積層体25の上面に照射される。タブ積層体25の上面から下面に向かって、保護板27Aの孔27aに対応する部分に溶接部が形成される。溶接部は、Z軸方向から見たときに、溶接部の縁がタブ積層体25の端面25a,25b,25cから離間するように形成される。従って、端面25a,25b,25cには溶接部が形成されない。以上のようにタブ積層体21,25に溶接部を形成する場合には、例えばカバー60に代えて、カバー60Dが用いられる。カバー60Dは、カバー60と比較して、排出口72a,72b,73a,73b,74a,74b,75a,75bに代えて排出口72c,73c,74c,75cが設けられている点で相違する。排出口72c,73cは、カバー60Dの側壁部61におけるタブ積層体25の上面または保護板27Aの上面よりも高い位置に設けられており、その位置からタブ積層体25の溶接箇所に向かってガスを排出する。排出口72c,73cは、Y軸方向に間隔をあけて並んで配置されている。排出口74c,75cは、カバー60Dの側壁部61におけるタブ積層体21の上面または保護板23Aの上面よりも高い位置に設けられており、その位置からタブ積層体21の溶接箇所に向かってガスを排出する。排出口74c,75cは、Y軸方向に間隔をあけて並んで配置されている。なお、各タブ積層体21,25に対して設けられる排出口の数は、
図13に示される例に限定されない。
【0105】
また、上記各実施形態では、タブ積層体を抑える保護板にも溶接部が形成される例について説明した。ただし、保護板に溶接部を形成せず、溶接完了後に、保護板をタブ積層体から取り外すようにしてもよい。保護板は、例えば先に
図6を参照して説明した治具42,44と同様に、治具として用いられてもよい。
【0106】
(第3実施形態)
電極本体への異物の付着を抑制する手法として、溶接時に、溶接箇所において電極本体とは反対側に向かう気流を生じさせるという手法を用いてもよい。
図14に示される例では、電極本体20から、タブ積層体21,25の溶接箇所に向かって気流が生じている。溶接時には、少なくとも電極本体20の後方から前方に向かう気流が生じている。溶接箇所(タブ積層体21,25)における気流の向きは、上方から下方に向かうように、水平方向に対して傾斜した向きであってよい。気流は、ガスを吹き出すノズルをさまざまな場所に設けることによって生じさせることができる。
【0107】
図15は、ノズルの配置の例を示す図である。
図15に示される例では、ガスGを吹き出す複数のノズル110が配置されている。各ノズル110を区別し得るよう、各ノズルには、ノズル111〜114の別の符号も付している。以下、電極本体20から見てタブ積層体21,25側を前方と称し、反対側を後方と称して説明する。
【0108】
3つのノズル111は、電極本体20の後方に配置され、前方に向かってガスGを吹き出す。ノズル111は、例えば電極本体の斜め上に配置される。これにより、電極本体20の上面に沿って後方から前方に向かう気流が生じる。
【0109】
2つのノズル112は、電極本体の斜め後方にそれぞれ配置され、前方に向かってガスGを吹き出す。これにより、電極本体20の側面に沿って後方から前方に向かう気流が生じる。
【0110】
2つのノズル113は、電極本体の斜め前方にそれぞれ配置され、タブ積層体21,25に向かってガスGを吹き出す。これにより、電極本体20の側面Sに沿ってタブ積層体21の端面21a及びタブ積層体25の端面25aに向かう気流が生じる。
【0111】
さらに、タブ積層体25の端面25aにエネルギービームを照射して溶接部を形成する際には、3つのノズル114が用いられてもよい。3つのノズル114は、タブ積層体25の付近において、電極本体20の上方に円弧状に並んで配置される。ノズル114と同様のノズルが、他の端面に対して設けられていてもよいし、ノズル114が移動可能となっており、エネルギービームが照射される端面にノズル114からのガスGが吹きつけられるように、ノズル114を移動させてもよい。
【0112】
溶接箇所において発生し得るスパッタ粒子等の異物は、ガスGによって運ばれ、吸引管92によって吸引される。
【0113】
なお、
図15に示すように複数のノズル110を設けるのではなく、大きな風口を有する単一の送風機を、電極本体20の後方に設けてもよい。
【0114】
なお、先に説明したようにカバーを設けるか仕切部を設けるとともに、上述のように気流を生じさせてもよい。これにより、異物が電極本体に向かって飛散することをさらに抑制することができる。