(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エポキシ基含有モノ(メタ)アクリレートを含むモノマー成分のラジカル重合体(a1)とα,β−不飽和カルボン酸(a2)との反応物であり、水酸基濃度が2mmol/g以上、(メタ)アクリル当量が400g/eq以下の(メタ)アクリル共重合体(A)、
少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基濃度が0.1mmol/g以上の多官能(メタ)アクリレート(B)、
多官能イソシアネート(C)、及び
無機微粒子(F)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であり、
(F)成分としてアルミナナノ粒子を含み、
(F)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量に対して固形分換算で0.1質量%以上10質量%以下である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(A)成分及び(B)成分と(C)成分との固形分の質量比が[(A)+(B)]/(C)=60/40〜99/1である請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、
エポキシ基含有モノ(メタ)アクリレートを含むモノマー成分のラジカル重合体(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう。)とα,β−不飽和カルボン酸(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう。)との反応物であり、水酸基濃度が2mmol/g以上、(メタ)アクリル当量が400g/eq以下の(メタ)アクリル共重合体(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)、
少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基濃度が0.1mmol/g以上の多官能(メタ)アクリレート(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)、及び
多官能イソシアネート(C)(以下、「(C)成分」ともいう。)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ともいう。)
に関する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートのことである。また、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルのことである。さらに、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルのことである。
【0015】
<(A)成分>
(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分との反応物であり、水酸基濃度が2mmol/g以上、(メタ)アクリル当量が400g/eq以下の(メタ)アクリル共重合体のことである。(A)成分として共重合体は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0016】
<(a1)成分>
(a1)成分は、エポキシ基含有モノ(メタ)アクリレートを含むモノマー成分のラジカル重合体である。
【0017】
エポキシ基を含有するモノ(メタ)アクリレート(以下、「(a1−1)成分」ともいう。)として各種公知のものを使用できる。(a1−1)成分として、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチル(メタ)アクリル酸グリシジル、α−n−プロピル(メタ)アクリル酸グリシジル、α−n−ブチル(メタ)アクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸[(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1−イル]メチル等が例示される。(a1−1)成分として例示された物質及び(a1−1)成分として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。(a1−1)成分は、入手容易性や耐擦傷性の面から、好ましくはグリシジル(メタ)アクリレートである。
【0018】
(a1)成分の構成モノマーには(a1−1)成分の他にエポキシ基を含有しない共重合可能なモノマー(以下、「(a1−2)成分」ともいう。)を同時に含んでもよい。
【0019】
(a1−2)成分として各種公知のものを使用できる。(a1−2)成分として、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン等の芳香族含有モノ(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アルケニル無水コハク酸、アルカジエニル無水コハク酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、いずれか一方の末端に1つ以上の不飽和二重結合を有し、エポキシ基及びカルボキシル基を含有しないマクロモノマー等が例示される。(a1−2)成分として例示された物質及び(a1−2)成分として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
いずれか一方の末端に1つ以上の不飽和二重結合を有し、エポキシ基及びカルボキシル基を含有しないマクロモノマーとして、(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー、ポリシロキサンのマクロモノマー、(メタ)アクリル酸エステルのマクロモノマー、スチレンのマクロモノマー、(メタ)アクリルアミドのマクロモノマー、アクリロニトリルのマクロモノマー等が例示される。
【0021】
上記、マクロモノマーとして、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(製品名「マクロモノマーAA−6」、「マクロモノマーAB−6」、東亞合成(株)製)、ポリシロキサンのマクロモノマー(製品名「サイラプレーンFM−0711」、「サイラプレーンFM−0721」、JNC(株)製)、(メタ)アクリル酸エステルのマクロモノマー(製品名「ブレンマーPME−4000」、「ブレンマーPSE−1300」、日油(株)製)等が例示される。
【0022】
<(a2)成分>
(a2)成分は、α,β−不飽和カルボン酸である。
【0023】
本明細書においてα,β−不飽和カルボン酸とは、カルボキシル基の隣に位置する炭素(α炭素)と、さらに隣の炭素(β炭素)との間に不飽和結合を有する物質のことである。
【0024】
(a2)成分として、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(a2)成分として、α,β−不飽和モノカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸等が例示される。
【0025】
α,β−不飽和モノカルボン酸として、(メタ)アクリル酸等が例示される。α,β−不飽和ジカルボン酸として、イタコン酸、マレイン酸等が例示される。(a2)成分として例示された物質及び(a2)成分として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。(a2)成分は、樹脂組成物を完全硬化させて得た塗膜(以下、「硬化物」ともいう。)の耐擦傷性が良好であることから、好ましくはα,β−不飽和モノカルボン酸であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0026】
(a1)成分及び(a2)成分の固形分の質量比は、特に限定されないが、通常(a1)/(a2)=10/90〜90/10程度である。
【0027】
(A)成分の水酸基濃度は、部分硬化した塗膜の加工性及びタック性に優れることから好ましくは2mmol/g以上であり、より好ましくは2mmol/g以上5mmol/g以下である。(A)成分の水酸基濃度は、部分硬化した塗膜のタック性にさらに優れることも考慮に入れると、さらに好ましくは3mmol/g以上5mmol/g以下である。(A)成分の水酸基濃度が2mmol/g未満である場合、詳細な機構は不明であるが、部分硬化した塗膜のタック性が悪くなるため、好ましくない。
【0028】
本明細書において水酸基濃度とは、水酸基濃度を算出したい1つ以上の成分1g中に含有される水酸基の割合を示しており、「水酸基数/1つ以上の成分の分子量」で算出することができる。
【0029】
(A)成分の(メタ)アクリル当量は、硬化物や積層体が高い硬度を示し、優れた耐擦傷性を示すことから、好ましくは400g/eq以下であり、より好ましくは150g/eq以上400g/eq以下であり、さらに好ましくは150g/eq以上350g/eq以下であり、特に好ましくは200g/eq以上350g/eq以下である。(A)成分の(メタ)アクリル当量が400g/eqを越す場合、詳細な機構は不明であるが、硬化物や積層体の耐擦傷性や鉛筆硬度が悪くなるため、好ましくない。
【0030】
本明細書において(メタ)アクリル当量とは、(メタ)アクリル基1つあたりの分子量で示され、「分子量/官能基数」で算出することができる。
【0031】
(A)成分の重量平均分子量は、特に限定されないが、硬化物や積層体が耐ブロッキング性に優れ、樹脂組成物が好ましい粘度を呈することから、好ましくは10,000以上200,000以下である。
【0032】
本明細書において重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値である。
【0033】
<(A)成分の合成方法>
(A)成分の合成方法として、特に限定されず、各種公知の方法を使用できる。(A)成分の合成方法として、(a1)成分に(a2)成分を、30分以上12時間以内、50℃以上200℃以下において反応させる方法等が例示される。
【0034】
<(B)成分>
(B)成分は、少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基(H
2C=CR−C(=O)−(Rは水素又はメチル基))を有し、水酸基濃度が0.1mmol/g以上の多官能(メタ)アクリレートである。
【0035】
(B)成分として、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(B)成分として、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0036】
トリ(メタ)アクリレートとして、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0037】
テトラ(メタ)アクリレートとして、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0038】
ペンタ(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0039】
ヘキサ(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0040】
ポリ(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0041】
本明細書において、ポリ(メタ)アクリレートとは、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する物質の混合物である。
【0042】
(B)成分として例示された物質及び(B)成分として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
(B)成分は、硬化物や積層体の耐擦傷性に優れることから、好ましくはポリ(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくはジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートである。
【0044】
(B)成分として、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、特に限定されないが、ペンタエリスリトールトリアクリレート((製品名「A−TMM−3」、「A−TMM−3L」、新中村化学工業(株)製)、(製品名「Miramer M301」、MIWON社製)、(製品名「アロニックスM−309」、東亞合成(株)製))、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(製品名「アロニックスM−408」、東亞合成(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(製品名「SR399」、巴工業(株)製)、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの混合物)((製品名「KAYARAD DPHA」、日本化薬(株)製)、(製品名「A−9550」、新中村化学工業(株)製)、(製品名「アロニックスM−403」、「アロニックスM−400」、「アロニックスM−402」、「アロニックスM−404」、「アロニックスM−405」、「アロニックスM−406」、東亜合成(株)製))、トリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(製品名「ビスコート#802, TriPEA」、大阪有機化学工業(株)製)等が例示される。
【0045】
(B)成分の水酸基濃度は、硬化物や積層体が透明性に優れることから、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.1mmol/g以上2mmol/g以下であり、さらにより好ましくは1mmol/g以上2mmol/g以下であり、特に好ましくは1.5mmol/g以上2mmol/g以下である。
【0046】
(B)成分の(メタ)アクリロイル基数は、部分硬化した塗膜のタック性や硬化物や積層体の耐擦傷性に優れることから、少なくとも3つであり、より好ましくは3つ以上6つ以下である。
【0047】
(A)成分及び(B)成分の固形分の質量比は、部分硬化した塗膜のタック性や加工性に優れることから、好ましくは30/70〜99/1であり、より好ましくは30/70〜97/3であり、さらに好ましくは35/65〜97/3である。
【0048】
(A)成分と(B)成分の合計含有量は、特に限定されないが、部分硬化した塗膜の加工性に優れることから、樹脂組成物の総量に対して好ましくは固形分換算で60質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは固形分換算で70質量%以上99質量%以下である。
【0049】
<(A)成分と(B)成分の混合物の作製方法>
(A)成分と(B)成分の混合物は、通常(A)成分及び(B)成分を常温下において混合することで得られる。
【0050】
<(C)成分>
(C)成分は、多官能イソシアネートである。多官能イソシアネートとは、イソシアネート基(−N=C=O)を2以上有するものを指す。
【0051】
(C)成分として、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(C)成分として、直鎖状脂肪族多官能イソシアネート、分枝状脂肪族多官能イソシアネート、脂環族多官能イソシアネート、芳香族多官能イソシアネート等が例示される。
【0052】
直鎖状脂肪族多官能イソシアネートとして、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が例示される。
【0053】
分枝状脂肪族多官能イソシアネートとして、ジイソシアナトヘキサン酸メチル、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0054】
脂環族多官能イソシアネートとして、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイルビス(メチレン)ジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイルジイソシアネート、ノルボルネンメタンジイソシアネート等が例示される。
【0055】
芳香族多官能イソシアネートとして、トルエンジイソシアネート、メチリジントリス(イソシアナトベンゼン)、キシレンジイソシアネート、ジイソシアナトナフタレン等が例示される。
【0056】
(C)成分として例示された物質及び(C)成分として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、これら1種同士、或いは2種以上の重合体を使用することができる。(C)成分の重合体であるポリイソシアネートとして、ヌレート体、アダクト体、アロファネート体等が例示される。
【0057】
(C)成分は、部分硬化する際の反応性に優れることから、好ましくは直鎖状脂肪族多官能イソシアネートの重合体であり、より好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートの重合体である。
【0058】
(C)成分として、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、特に限定されないが、ヘキサメチレンジイソシアネート(製品コード「H0324」、東京化成工業(株)製)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(製品コード「T1176」、東京化成工業(株)製)、ジシクロヘキシルメタン4,4´−ジイソシアネート(製品コード「D2380」、東京化成工業(株)製)、イソホロンジイソシアネート(製品コード「I0314」、東京化成工業(株)製)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(製品コード「B1538」、東京化成工業(株)製)、ノルボルネンメタンジイソシアネート(製品名「ノルボルネンメタンジイソシアネート」、HANGZHOU BROWN BIO PHARM社製)、トルエン−2,4−ジイソシアネート(製品コード「T0263」、東京化成工業(株)製)、キシレンジイソシアネート(製品コード「X0022」、東京化成工業(株)製)、ジイソシアナトナフタレン(製品コード「N0168」、東京化成工業(株)製)、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(製品名「コロネートHXR」、「コロネートHK」、「コロネート2770」、東ソー(株)製)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(製品名「スタビオ PDI」、三井化学(株)製)等が例示される。
【0059】
(A)成分及び(B)成分と(C)成分との固形分の質量比([(A)成分+(B)成分]/(C)成分)は、特に限定されないが、部分硬化した塗膜の加工性に優れることから、好ましくは[(A)+(B)]/(C)=60/40〜99/1であり、より好ましくは75/25〜98/2である。
【0060】
<樹脂組成物の作製方法>
樹脂組成物の作製方法として、特に限定されず、各種公知の方法を用いることができる。樹脂組成物の作製方法として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を適量配合し、不揮発分を調節するために有機溶媒で希釈調製し、均一に混合する方法等が例示される。
【0061】
<(D)成分>
樹脂組成物に、さらに光重合開始剤(D)(以下、「(D)成分」ともいう。)を含んでいてもよい。(D)成分は、紫外線等のエネルギー線によってフリーラジカルを発生する化合物である。樹脂組成物に(D)成分を含有することで、樹脂組成物を硬化させる性能(以下、「硬化性」ともいう。)に優れる。
【0062】
(D)成分として、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(D)成分として、ラジカル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、アニオン系光重合開始剤等が例示される。
【0063】
ラジカル系光重合開始剤として、アルキルフェノン型光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤、オキシムエステル型光重合開始剤等が例示される。
【0064】
アルキルフェノン型光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルジメチルケタール、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニルケトン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のα−アミノアルキルフェノン等が例示される。
【0065】
アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が例示される。
【0066】
水素引き抜き型光重合開始剤として、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が例示される。
【0067】
オキシムエステル型光重合開始剤として、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等が例示される。
【0068】
カチオン系光重合開始剤として、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)及びプロピレンカーボネートの混合物、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリアリールスルフォニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が例示される。
【0069】
アニオン系光重合開始剤として、コバルトアミン系錯体、o−ニトロベンジルアルコールカルバミン酸エステル、オキシムエステル等が例示される。
【0070】
(D)成分として例示された物質及び(D)成分として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
(D)成分は、特に硬化性に優れるため、好ましくはラジカル系光重合開始剤であり、より好ましくはアルキルフェノン型光重合開始剤であり、さらに好ましくはα−ヒドロキシアルキルフェノンであり、特に好ましくは1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、及び/又は1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトンである。
【0072】
(D)成分として、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、特に限定されないが、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(製品名「Omnirad(以下、「オムニラッド」ともいう。) 651」、IGM Resins社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(製品名「Omnirad 2959」、IGM Resins社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名「Omnirad127」、IGM Resins社製)、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニルケトン(製品名「Omnirad184」、IGM Resins社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名「Omnirad907」、IGM Resins社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(製品名「Omnirad369E」、IGM Resins社製)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(製品名「Omnirad 379EG」、IGM Resins社製)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(製品名「Omnirad TPO H」、IGM Resins社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(製品名「Omnirad819」、IGM Resins社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(製品名「Omnirad MBF」、IGM Resins社製)、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](製品名「IRGACURE OXE 01」、BASFジャパン(株)製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(製品名「IRGACURE OXE 02」、BASFジャパン(株)製)、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−) 及びプロピレンカーボネートの混合物(製品名「Omnicat(以下、「オムニキャット」ともいう。) 250」、IGM Resins社製)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート(製品名「Omnicat270」、IGM Resins社製)、トリアリールスルフォニウム テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(製品名「IRGACURE 290」、BASFジャパン(株)製)等が例示される。
【0073】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、完全硬化させる際の硬化性に優れることから、樹脂組成物の総量に対して好ましくは固形分換算で0.1質量%以上15質量%以下、より好ましくは固形分換算で0.2質量%以上10質量%以下である。
【0074】
<(E)成分>
樹脂組成物に、さらにフッ素含有化合物(E)(以下、「(E)成分」ともいう。)を含んでいてもよい。樹脂組成物に(E)成分を含有することで、特に硬化物や積層体の耐擦傷性に優れ、さらにレベリング性(塗工性)、撥水性、撥油性、防汚性及び指滑り性に優れる。
【0075】
(E)成分として、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(E)成分として、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸若しくはその塩、パーフルオロアルキル基含有スルホン酸若しくはその塩又はパーフルオロアルキル基含有リン酸若しくはそのリン酸エステル等のパーフルオロアルキル基含有化合物、上記のパーフルオロアルキル基をパーフルオロアルケニル基に置き換えたパーフルオロアルケニル基含有化合物、上記のパーフルオロアルキル基をパーフルオロエーテル基に置き換えたパーフルオロエーテル基含有化合物、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基・親油性基・カルボキシル基含有オリゴマー、含フッ素基・UV反応性基含有オリゴマー等が例示される。
【0076】
(E)成分として例示された物質及び(E)成分として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、これら1種同士、或いは2種以上の重合体を使用することができる。
【0077】
(E)成分は、硬化物の耐擦傷性、撥水性、撥油性、防汚性等に優れることから、好ましくは含フッ素基・UV反応性基含有オリゴマーである。
【0078】
(E)成分として、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、パーフルオロブタンスルホン酸塩(製品名「メガファック F−114」、DIC(株)製)、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩(製品名「メガファック F−410」、DIC(株)製)、パーフルオロアルキル基・リン酸基含有リン酸エステル(製品名「メガファック F−510」、DIC(株)製)、変性パーフルオロポリエーテル((製品名「オプツールDAC−HP」、ダイキン工業(株)製)、(製品名「KY−108」、「KY−164」、「X−71−195」、「KY−1900」、信越化学工業(株)製))、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー(製品名「メガファック F−281」、「メガファック F−253」、「メガファック F−251」、以上DIC(株)製)、含フッ素基・親水性基含有オリゴマー(製品名「メガファック F−430」、「メガファック F−551」、「メガファック F−552」、DIC(株)製)、含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー(製品名「メガファック F−477」、DIC(株)製)、含フッ素基・親水性基・親油性基・カルボキシル基含有オリゴマー(製品名「メガファック F−570」、DIC(株)製)、含フッ素基・UV反応性基含有オリゴマー((製品名「メガファック RS−56」、「メガファック RS−90」、「メガファック RS−75」、DIC(株)製)、(製品名「KY−1203」、信越化学工業(株)製))等が例示される。
【0079】
(E)成分の含有量は、特に限定されないが、硬化物の耐擦傷性に優れることから、樹脂組成物の総量に対して好ましくは固形分換算で0.05質量%以上10質量%以下、より好ましくは固形分換算で0.1質量%以上10質量%以下である。
【0080】
<(F)成分>
樹脂組成物に、さらに無機微粒子(F)(以下、「(F)成分」ともいう。)を含んでいてもよい。樹脂組成物に(F)成分を含有することで、硬化物や積層体が耐擦傷性に優れる。
【0081】
(F)成分として、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(F)成分として、酸化亜鉛ナノ粒子、シリカナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化セリウムナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化ジルコニウムナノ粒子、亜酸化銅ナノ粒子等が例示される。
【0082】
(F)成分として例示された物質及び(F)成分として公知のものを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
(F)成分は、硬化物の耐擦傷性が優れることから、好ましくはアルミナナノ粒子である。
【0084】
(F)成分として、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、酸化亜鉛ナノ粒子(製品名「NANOBYK−3840」、BYK社製)、シリカナノ粒子(製品名「NANOBYK−3650」、「NANOBYK−3652」、BYK社製)、アルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3603」、「NANOBYK−3610」、BYK社製)、酸化セリウムナノ粒子(製品名「酸化セリウム(IV)ナノ粒子(10nm)」、富士フィルムワコーケミカル(株)製)、酸化鉄ナノ粒子(製品名「酸化鉄(II,III)、磁性ナノ粒子溶液」、SIGMA−ALDRICH社製)、酸化チタンナノ粒子(製品名「TTO−51(A)」、「TTO−55(C)」、石原産業(株)製)、酸化ジルコニウムナノ粒子(製品名「Zirconeo−Cp」、「Zirconeo−Rp」、「Zirconeo−Cw」、「Zirconeo−Ck」、(株)アイテック製)、亜酸化銅ナノ粒子(製品名「FRC−N10」、古河ケミカルズ(株)製)等が例示される。
【0085】
(F)成分の含有量は、特に限定されないが、硬化物の耐擦傷性が優れることから、樹脂組成物の総量に対して好ましくは固形分換算で0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは固形分換算で0.1質量%以上10質量%以下である。
【0086】
<(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分を含有する樹脂組成物の作製方法>
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分を含有する樹脂組成物の作製方法としては、特に限定されず、各種公知の方法を使用することができる。そのような方法としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分を適量配合し、不揮発分を調節するために有機溶媒で希釈調製し、均一に混合する方法等が例示される。
【0087】
<その他配合可能な剤>
樹脂組成物には、更に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等の各種公知の樹脂、反応性希釈モノマー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコーン系添加剤、帯電防止剤、防曇剤、レオロジーコントロール剤、充填剤、離型剤、難燃剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、消泡剤、着色剤、安定剤、顔料、表面調整剤、各種溶剤、各種触媒及び光増感剤等から選択される1種以上の剤を配合できる。
【0088】
<部分硬化した塗膜>
樹脂組成物を加熱することで部分硬化させた(以下、当該処理を「加熱処理工程」ともいう。)塗膜もまた本発明の1つである。本発明の部分硬化した塗膜は、クラックを生じることなく深絞り加工などの複雑な形状の成形物表面に積層することができる。
【0089】
フィルム状の樹脂組成物を加熱することにより、樹脂組成物は熱架橋反応生成物となる。この熱架橋反応生成物はタックフリーの状態にあるため、フィルム状の熱架橋反応生成物上に他の層を刷り重ねたり、フィルムを巻き取ったりすることが容易になる。この加熱しただけの段階では、樹脂組成物に含まれるエチレン性不飽和基は架橋されていないので、樹脂組成物は完全には架橋硬化していない。換言すれば部分硬化の状態となる。したがって、フィルム状の熱架橋反応生成物は成形品の曲面に適応でき、クラックを生じない程度の可撓性を有する。また、部分硬化させた塗膜にマット形状を有するフィルムを貼り付けて形状を転写することや汚れ防止のための保護フィルムを貼り付けることもできる。
【0090】
当該塗膜の厚みは特に限定されないが、好ましくは1μm以上1,000μm以下であり、さらに好ましくは3μm以上500μm以下である。厚みをこの範囲とすることで、部分硬化した塗膜の加工性や硬化物の耐擦傷性を向上させることができる。
【0091】
樹脂組成物の塗工方法として、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が例示される。なお、塗工量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の質量が1g/m
2以上1,000g/m
2以下、好ましくは3g/m
2以上500g/m
2以下になる範囲である。
【0092】
加熱処理工程の方法として、各種公知の方法を使用できる。加熱処理工程の方法として(A)成分、及び(B)成分と(C)成分との反応性の観点から、好ましくは100℃以上150℃以下で1分以上30分以内加熱する方法等が例示される。
【0093】
樹脂組成物を加熱処理工程によって硬化してなる塗膜の破断伸度は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは40%以上300%以下である。
【0094】
本発明において塗膜の破断伸度とは、塗膜を伸ばす前の状態を0%としたとき、0%の塗膜の長さ(cm)から伸びた長さ(cm)の割合を指す。具体的には、テンシロン万能試験機(製品名「RTG−1250」、(株)エー・アンド・デイ製)等の市販の引張試験機を用いて、150℃で加熱しながら速度100mm/minで引張り、試料にクラックが見られるときの長さ及び引張る前の試料の長さを用いて下記式から算出する。
破断伸度(%)=100×(L−Lo)/Lo
Lo:引張る前の試料の長さ
L:クラックが見られ始めたときの試料の長さ
【0095】
<硬化物>
加熱処理工程を経た塗膜に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより得られる硬化物もまた本発明の1つである。
【0096】
紫外線照射により硬化させる方法として、各種公知の方法を使用できる。紫外線照射により硬化させる方法として、150nm以上450nm以下の波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ又はLED等を用いて、10mJ/cm
2以上10,000mJ/cm
2以下程度照射する方法等が例示される。
【0097】
<積層体>
本発明は、加熱処理工程を経た塗膜を基材の少なくとも一つの面に貼り付け、さらに紫外線等の活性エネルギー線を照射して完全に硬化してなる積層体でもある。部分硬化した塗膜を完全に硬化することで、基材に傷付き難さを付与することができる。
【0098】
<成形物>
樹脂組成物の適用例として、各種公知の物品へのハードコート層の形成が例示される。
【0099】
当該物品として、各種公知の物品が例示される。当該物品として、冷蔵庫、テレビ又はエアコン等の家電製品の本体及びそのリモコン、携帯電話、スマートフォン、タブレット又はパソコン等の情報端末の筐体及びディスプレイ、並びに自動車部品又は自動車内装材等のプラスチック成形品が例示される。特に、情報端末の筐体に対して使用することが想定される。
【0100】
<適用可能な基材>
樹脂組成物を、金属、プラスチック、フィルム又はガラス等の各種基材に適用できる。
【0101】
各種基材として、各種公知のものを使用できる。各種基材として、金属、プラスチック、フィルム、ガラス又はその他の樹脂等が例示される。
【0102】
金属として、鉄、アルミニウム、アルミめっき鋼板、ティンフリー鋼板(TFS)、ステンレス鋼板、リン酸亜鉛処理鋼板、亜鉛・亜鉛合金めっき鋼板(ボンデ鋼板)の処理鋼板等が例示される。
【0103】
プラスチックとして、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル(PE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル、FRP等が例示される。
【0104】
フィルムとして、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が例示される。
【0105】
その他の基材として、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等が例示される。
【実施例】
【0106】
以下に、合成例、実施例、比較例、評価例及び比較評価例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明で、部および%は質量基準である。
【0107】
本実施例において重量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
(GPC測定条件)
機種 :製品名「HLC−8220」(東ソー(株)製)
カラム :製品名「TSKgel SuperHM−L」(東ソー(株)製)×3本
展開溶媒:テトラヒドロフラン(以下、「THF」ともいう。)
【0108】
<合成例1:(A−1)成分の合成>
撹拌装置、冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」ともいう。)32.6部、酢酸ブチル48.6部及びアゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」ともいう。)1.5部を仕込んだ後、窒素流気下で約100℃になるまで昇温し、10時間保温した。反応終了後、60℃まで冷却しアクリル酸(以下、「AA」ともいう。)16.6部、メトキノン0.5部及びトリフェニルフォスフィン0.1部を仕込み、空気バブリング下にて、110℃まで昇温させ9時間反応させて、樹脂固形分50%の(メタ)アクリル共重合体溶液(以下、「(A−1)成分」ともいう。)を得た。得られた(メタ)アクリル共重合体は、水酸基濃度4.7mmol/g、アクリル当量214g/eq、重量平均分子量(GPC法によるポリスチレン換算値)30,000であった。
【0109】
<合成例2:(A−2)成分の合成>
撹拌装置、冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA16.3部、メタクリル酸メチル16.3部、酢酸ブチル48.6部及びAIBN2.0部を仕込んだ後、窒素流気下で約100℃になるまで昇温し、10時間保温した。反応終了後、60℃まで冷却しAA8.3部、メトキノン0.5部及びトリフェニルフォスフィン0.1部を仕込み、空気バブリング下にて、110℃まで昇温させ9時間反応させて、樹脂固形分50%の(メタ)アクリル共重合体溶液(以下、「(A−2)成分」ともいう。)を得た。得られた(メタ)アクリル共重合体は、水酸基濃度2.8mmol/g、アクリル当量356g/eq、重量平均分子量(GPC法によるポリスチレン換算値)10,000であった。
【0110】
<合成例3:(A−3)成分の合成>
撹拌装置、冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA8.2部、メタクリル酸メチル24.6部、酢酸ブチル48.6部及びAIBN2.0部を仕込んだ後、窒素流気下で約100℃になるまで昇温し、10時間保温した。反応終了後、60℃まで冷却しAA4.2部、メトキノン0.5部及びトリフェニルフォスフィン0.1部を仕込み、空気バブリング下にて、110℃まで昇温させ9時間反応させて、樹脂固形分50%の(メタ)アクリル共重合体溶液(以下、「(A−3)成分」ともいう。)を得た。得られた(メタ)アクリル共重合体は、水酸基濃度1.6mmol/g、アクリル当量635g/eq、重量平均分子量(GPC法によるポリスチレン換算値)10,000であった。
【0111】
<実施例1:樹脂組成物(1)の調製>
(A−1)成分140.0部に、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(製品名「アロニックスM−403」、東亞合成(株)製、水酸基濃度1.6mmol/g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)(以下、「(B−1)成分」ともいう。)30.0部、ポリイソシアネート(製品名「コロネートHK」、東ソー(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとしたポリイソシアネート)(以下、「(C−1)成分」ともいう。)10.0部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン(製品名「Omnirad 184」、IGM Resins社製)(以下、「(D)成分」ともいう。)5.0部、フッ素含有化合物(製品名「メガファック RS−90」、DIC(株)製)(以下、「(E)成分」ともいう。)2.0部、アルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」、BYK社製)(以下、「(F)成分」ともいう。)14.0部、触媒としてジオクチルスズジラウレート(以下、「(G)成分」ともいう。)0.02部を配合し、不揮発分が20%になるようにメチルエチルケトンで希釈調製し、均一に混合して樹脂組成物を得た。
【0112】
<実施例2〜13:樹脂組成物(2)〜(13)の調製>
下記の表1に示す組成に変更した以外は実施例1と同様に操作し、樹脂組成物(2)〜(13)を調製した。
【0113】
<比較例1〜6:樹脂組成物(C1)〜(C6)の調製>
下記の表2に示す組成に変更した以外は実施例1と同様に操作し、樹脂組成物(C1)〜(C6)を調製した。
【0114】
<評価例1−1:部分硬化した塗膜(1)の作製>
基材(ポリメタクリル酸メチル製、厚さ0.400mm)の表面にバーコーター(型番「No.24」、第一理化(株)製)を用いて樹脂組成物(1)を、膜厚約5μmで塗布し、120℃の循風乾燥機中で2分間乾燥し、樹脂組成物を加熱することで部分硬化した塗膜(1)を形成した。
【0115】
<評価例1−2:硬化物(1)の作製>
部分硬化した塗膜(1)を高圧水銀灯(出力120W/cm)を用いて、照射距離15cm、ベルトスピード7m/min、積算照射量300mJ/cm
2の条件で硬化させて、硬化物(1)を作製した。
【0116】
<評価例2−1〜13−1:部分硬化した塗膜(2)〜(13)の作製>
樹脂組成物(1)を樹脂組成物(2)〜(13)に変更した以外は評価例1−1と同様に操作し、部分硬化した塗膜(2)〜(13)を作製した。
【0117】
<評価例2−2〜13−2:硬化物(2)〜(13)の作製>
部分硬化した塗膜(1)を部分硬化した塗膜(2)〜(13)に変更した以外は評価例1−2と同様に操作し、硬化物(2)〜(13)を作製した。
【0118】
<比較評価例1−1〜6−1:部分硬化した塗膜(C1)〜(C6)の作製>
樹脂組成物(1)を樹脂組成物(C1)〜(C6)に変更した以外は評価例1−1と同様に操作し、部分硬化した塗膜(C1)〜(C6)を作製した。
【0119】
<比較評価例1−2〜6−2:硬化物(C1)〜(C6)の作製>
部分硬化した塗膜(1)を部分硬化した塗膜(C1)〜(C6)に変更した以外は評価例1−2と同様に操作し、硬化物(C1)〜(C6)を作製した。
【0120】
<性能評価:耐擦傷性>
硬化物(1)〜(13)及び(C1)〜(C6)を市販の測定装置(製品名「平面摩耗試験機」、(株)大栄科学精機製作所製)にセットし、スチールウール(番手「#0000」、等級「極細」、日本スチールウール(株)製)を用いて、硬化物表面を1kg荷重で1000回往復擦傷した。下記の基準に従って、できた傷の本数から積層体の耐擦傷性を評価した。
○:傷3本未満
△:傷3本以上、10本未満
×:傷10本以上
【0121】
<性能評価:加工性>
部分硬化した塗膜(1)〜(13)及び(C1)〜(C6)を長さ13cm、幅1.5cmで切り出した試験片を150℃の循風乾燥機中で延伸し、破断伸度を評価した。
◎:破断伸度が100%以上300%以下
○:破断伸度が40%以上100%未満
×:破断伸度が40%未満、若しくは熱硬化膜作製不可
【0122】
<性能評価:タック性>
部分硬化した塗膜(1)〜(13)及び(C1)〜(C6)を指触し、塗膜表面に指の跡の有無を評価した。
○:指の跡無し
×:指の跡有り
【0123】
<性能評価:透明性>
市販の測定装置(製品名「ヘイズメーター」、型名「HM−150」、(株)村上色彩技術研究所製)を使用して硬化物(1)〜(13)及び(C1)〜(C6)におけるヘイズ値を測定し、各硬化物の透明性を評価した。なお、ヘイズ値の測定は、JIS K 7136:2000に準拠して測定した。
【0124】
樹脂組成物(1)〜(13)の組成及び各性能評価の結果を表1に示す。また、樹脂組成物(C1)〜(C6)の組成及び各性能評価の結果を表2に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
表1〜表2中の用語の意味は下記のとおりである。
(A−1):合成例1で得られた(メタ)アクリル共重合体溶液(水酸基濃度4.7mmol/g、アクリル当量214g/eq)
(A−2):合成例2で得られた(メタ)アクリル共重合体溶液(水酸基濃度2.8mmol/g、アクリル当量356g/eq)
(A−3):合成例3で得られた(メタ)アクリル共重合体溶液(水酸基濃度1.6mmol/g、アクリル当量635g/eq)
(B−1):ジペンタエリスリトールポリアクリレート(製品名「アロニックスM−403」、東亞合成(株)製、水酸基濃度1.6mmol/g、5−6官能)
(B−2):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(製品名「Miramer M600」、東洋ケミカルズ(株)製、水酸基濃度0.08mmol/g、6官能)
(B−3):ジプロピレングリコールジアクリレート(製品名「MiramerM222」、東洋ケミカルズ(株)製、水酸基濃度0.44mmol/g、2官能)
(C−1):ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(製品名「コロネートHK」、東ソー(株)製)
(C−2):ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(製品名「コロネートHL」、東ソー(株)製)
(C−3):ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(製品名「コロネート2770」、東ソー(株)製)