(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転軸(RA)の方向に沿って見たときに、前記第1通路(41)と前記第2通路(42)とは離れており、前記第1通路(41)は、前記固定側ラップの前記巻き終わり部(22e)よりも、前記可動側ラップの前記巻き終わり部(32e)に近い、
請求項2に記載のスクロール圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のスクロール圧縮機では、吸入されたガス冷媒が、回転軸を挟んで互いに反対側に位置する2つの冷媒導入口を上向きに流れ、圧縮機構に吸入される。しかし、回転軸を挟んで反対側にそれぞれ冷媒導入口が存在していると、軸受などの摺動部分に供給される冷凍機油が、冷媒導入口を上向きに流れるガス冷媒によって巻き上がり、圧縮機から外に冷凍機油が持ち出される現象(油上がり現象)が助長される。この油上がり現象は、なるべく抑制されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点のスクロール圧縮機は、対称ラップ構造のスクロール圧縮機であって、固定スクロールと、可動スクロールと、クランク軸と、を備える。固定スクロールは、固定側平板と、渦巻状の固定側ラップと、を有する。固定側ラップは、固定側平板の表面から延びる。可動スクロールは、可動側平板と、渦巻状の可動側ラップと、を有する。可動側ラップは、可動側平板の表面から延びる。クランク軸は、回転軸を中心として回転し、可動スクロールを駆動する。第1圧縮室は、固定側平板の表面、可動側平板の表面、固定側ラップの内周面、及び、可動側ラップの外周面によって、形成される。第2圧縮室は、固定側平板の表面、可動側平板の表面、固定側ラップの外周面、及び、可動側ラップの内周面によって、形成される。固定スクロールには、第1通路が形成されている。第1通路は、外部から吸入されたガス冷媒を第1圧縮室及び第2圧縮室に導くための、冷媒の流路である。可動スクロールには、第2通路が形成されている。第2通路は、外部から吸入されたガス冷媒を第1圧縮室に導くための、冷媒の流路である。第1圧縮室には、第1通路を通ったガス冷媒と、第2通路を通ったガス冷媒と、が流れる。第2圧縮室には、第1通路を通ったガス冷媒、が流れる。
【0005】
第1観点のスクロール圧縮機では、第1通路を通ったガス冷媒は、第1圧縮室及び第2圧縮室に流れる。第2通路を通ったガス冷媒は、第1圧縮室に流れる。第1通路は、固定スクロールに形成され、第2通路は、可動スクロールに形成されている。このため、第2通路の配置の自由度が上がり、油上がり現象が抑えられる場所に第2通路を設けることができる。
【0006】
第2観点のスクロール圧縮機は、第1観点のスクロール圧縮機であって、固定側ラップ及び可動側ラップは、回転軸の方向に延びている。固定側ラップの内周面は、固定側ラップの巻き始め部から、固定側ラップの巻き終わり部まで、連続している。固定側ラップの巻き始め部は、固定側ラップの中心に近く、固定側ラップの巻き終わり部は、固定側ラップの中心から遠い。可動側ラップの外周面は、可動側ラップの巻き始め部から、可動側ラップの巻き終わり部まで、連続している。可動側ラップの巻き始め部は、可動側ラップの中心に近く、可動側ラップの巻き終わり部は、可動側ラップの中心から遠い。回転軸の方向に沿って見たときに、可動スクロールに形成されている第2通路は、可動側ラップの巻き終わり部よりも、固定側ラップの巻き終わり部に近い。
【0007】
第2観点のスクロール圧縮機では、第1圧縮室に流れるガス冷媒の量と第2圧縮室に流れるガス冷媒の量との差を、小さくすることができる。
【0008】
第3観点のスクロール圧縮機は、第1観点又は第2観点のスクロール圧縮機であって、固定側ラップ及び可動側ラップは、回転軸の方向に延びている。回転軸の方向に沿って見たときに、可動側平板の外縁の50%以上は、仮想円に沿っている。回転軸の方向に沿って見たときに、可動スクロールに形成されている第2通路は、仮想円の内側(可動側ラップの中心側)に位置する。
【0009】
第3観点のスクロール圧縮機では、第2通路を内側に寄せているため、スクロール圧縮機の内部空間のうち側壁の内面に沿って流れ落ちることが多い冷凍機油が、第2通路に流れていくガス冷媒によって巻き上げられる現象が抑えられる。
【0010】
第4観点のスクロール圧縮機は、第1観点から第3観点のいずれかのスクロール圧縮機であって、固定スクロールに形成されている第1通路は、穴又は切り欠きである。
【0011】
第4観点のスクロール圧縮機では、固定側平板の形状を変えたり加工したりすることによって、容易に第1通路を形成することができる。
【0012】
第5観点のスクロール圧縮機は、第2観点のスクロール圧縮機であって、第1圧縮室の入口は、固定側ラップの巻き終わり部と可動側ラップの外周面との間の隙間(第1隙間)である。この第1隙間は、可動スクロールの旋回によって、その面積が増減する。固定スクロールは、圧縮室を構成しない壁部、をさらに有している。第1圧縮室の入口と、固定スクロールに形成されている第1通路との間には、第3通路が形成される。第3通路は、外部から吸入されたガス冷媒を第1圧縮室に導くための、ガス冷媒の流路である。第3通路は、固定側平板の表面、可動側平板の表面、圧縮室を構成しない可動側ラップの外周面、及び、固定スクロールの壁部の内面、によって囲まれている。第3通路は、下流部と上流部とを含む。下流部は、第1圧縮室の入口に近い。上流部は、固定スクロールに形成されている第1通路に近い。第1通路を通ったガス冷媒は、第3通路の上流部及び下流部を経由して、第1圧縮室に流れる。第2通路を通ったガス冷媒は、第3通路の下流部を経由して、第1圧縮室に流れる。
【0013】
第5観点のスクロール圧縮機では、第3通路が存在するため、第1圧縮室に流れるガス冷媒の量と第2圧縮室に流れるガス冷媒の量との差、を小さくすることができる。
【0014】
第6観点のスクロール圧縮機は、第5観点のスクロール圧縮機であって、可動側平板と、固定スクロールの壁部の端面とは、対向している。可動側平板と、固定スクロールの壁部の端面との間には、回転軸の方向に隙間(第2隙間)が存在する。この第2隙間は、第1通路及び第2通路を介さずに、ガス冷媒を第3通路に導く。
【0015】
第1隙間の断面積を、S1、
第2通路の、第3通路との境界における断面積を、Sa、
第3通路の、最も通路面積が小さい箇所における断面積を、Sb、
第2隙間の断面積を、Sc、
としたときに、以下の式1が満たされる。
式1:S1<Sa+Sb+Sc
【0016】
第6観点のスクロール圧縮機では、式1が満たされるように、第1圧縮室に流れるガス冷媒が通過する流路の断面積であるSa,Sb,Scが決められるため、第1圧縮室に流れるガス冷媒の量が少なくなることが抑制される。この結果、第1圧縮室に流れるガス冷媒の量と第2圧縮室に流れるガス冷媒の量との差を、更に小さくすることができる。
【0017】
第7観点のスクロール圧縮機は、第2観点のスクロール圧縮機であって、回転軸の方向に沿って見たときに、第1通路と第2通路とは離れている。第1通路は、固定側ラップの巻き終わり部よりも、可動側ラップの巻き終わり部に近い。
【0018】
第7観点のスクロール圧縮機では、第1通路が可動側ラップの巻き終わり部に近く、第1通路から第2圧縮室に流れるガス冷媒の圧力損失は小さい。一方、第1圧縮室には、第1通路を通ったガス冷媒と、第2通路を通ったガス冷媒と、が流れるため、ガス冷媒の圧力損失が大きくなっても第1圧縮室に流れるガス冷媒の量を確保することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、スクロール圧縮機10の縦断面図を示す。以下、スクロール圧縮機10における方向や配置を説明するため、「上」、「下」等の表現を用いる場合があるが、特に断りの無い場合、
図1を基準に「上」、「下」等の表現を用いる。
【0021】
(1)全体構成
スクロール圧縮機10は、冷媒を循環させる冷凍サイクルを備える冷凍装置において、冷媒の圧縮を行う機器である。スクロール圧縮機10は、例えば、空気調和装置の室外機に搭載され、空気調和装置の冷媒回路の一部を構成する。スクロール圧縮機10は、冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。冷媒は、例えばHFC冷媒のR32である。なお、R32は冷媒の種類の例示に過ぎず、スクロール圧縮機10の圧縮対象である冷媒は、R32以外でもよい。
【0022】
スクロール圧縮機10は、いわゆる全密閉型の圧縮機である。また、スクロール圧縮機10は、対称ラップ構造の圧縮機である。
【0023】
スクロール圧縮機10は、
図1に示されるように、ケーシング11、圧縮機構12、モータ60及びクランク軸70を主に備える。
【0024】
(2)詳細構成
(2−1)ケーシング
スクロール圧縮機10は、縦長の円筒状のケーシング11を有する(
図1参照)。
【0025】
ケーシング11は、上下が開口した円筒部材11bと、円筒部材11bの上端及び下端にそれぞれ配置される上蓋11a及び下蓋11cと、を有する。円筒部材11bと、上蓋11a及び下蓋11cとは、気密を保つように溶接により固定される。
【0026】
ケーシング11は、圧縮機構12、モータ60、クランク軸70等の、スクロール圧縮機10を構成する各部品を収容する。
【0027】
ケーシング11の内部空間の上部には、圧縮機構12が配置される。圧縮機構12の固定スクロール20(後述)は、ケーシング11に固定されている。圧縮機構12の下方には、モータ60が配置されている。ケーシング11の内部空間の底部には、油溜め部15が形成されている。油溜め部15には、圧縮機構12やクランク軸70の摺動部分を潤滑するための冷凍機油が溜められている。
【0028】
ケーシング11の内部空間は、圧縮機構12の上方部分を除いて、外部から低圧のガス冷媒を吸入する低圧空間LPSとなっている。言い換えれば、低圧空間LPSは、スクロール圧縮機10がその一部を構成する空気調和装置の冷媒回路から、冷媒が流入する空間である。スクロール圧縮機10は、いわゆる低圧シェル型(低圧ドーム型とも言う)のスクロール圧縮機である。
【0029】
ケーシング11の円筒部材11bには、図示しない吸入管が取り付けられている。ケーシング11の上蓋11aには、圧縮後のガス冷媒を外部に吐出する吐出管が取り付けられている。
【0030】
(2−2)モータ
モータ60は、後述する圧縮機構12の可動スクロール30を駆動する。モータ60は、環状のステータ61と、ロータ62とを有する(
図1参照)。
【0031】
ステータ61は、ケーシング11の円筒部材11bの内面に固定されている。ステータ61には、コイルが巻き回されている。
【0032】
ロータ62は、円筒状の部材である。ロータ62は、環状のステータ61の内側に、僅かな隙間(エアギャップ)を空けて回転自在に収容されている。ロータ62の中空部には、クランク軸70が挿通されている。ロータ62は、クランク軸70を介して可動スクロール30と連結されている。モータ60が運転されると、ロータ62が回転し、クランク軸70を介してロータ62と連結された可動スクロール30に力が伝わる。これにより、可動スクロール30が旋回運動する。
【0033】
(2−3)クランク軸
クランク軸70は、ケーシング11の内部を上下方向に延びている。クランク軸70は、モータ60のロータ62と、後述する圧縮機構12の可動スクロール30とを連結する。クランク軸70は、モータ60の駆動力を可動スクロール30に伝達する。
【0034】
クランク軸70は、偏芯部71と、主軸72と、を主に有する(
図1参照)。偏芯部71は、主軸72の上端に配置されている。偏芯部71の中心軸は、主軸72の中心軸に対して偏心している。主軸72の中心軸は、クランク軸70の回転軸RAである。偏芯部71は、可動スクロール30のボス部33(
図3B参照)の内部に配置された軸受メタルに挿入される。偏芯部71がボス部33に挿入され、可動スクロール30とクランク軸70とが連結された状態で、偏芯部71の中心軸は、可動スクロール30の中心を通過する。
【0035】
主軸72は、上部軸受72a及び下部軸受72bによって、回転自在に軸支されている。また、主軸72は、上部軸受72aと下部軸受72bとの間で、モータ60のロータ62に挿通され連結される。
【0036】
クランク軸70の内部には、図示しない油通路が形成されている。油溜め部15に貯留されている冷凍機油は、クランク軸70の下端に設けられたポンプにより汲み上げられ、ケーシング11内の各部品の摺動部分に供給される。
【0037】
(2−4)圧縮機構
圧縮機構12は、主に、固定スクロール20と、可動スクロール30と、オルダム継手と、を有する。可動スクロール30と固定スクロール20とは、組み合わされて第1圧縮室A及び第2圧縮室Bを形成する(
図4B、
図4Eなどを参照)。
【0038】
圧縮機構12は、第1圧縮室A及び第2圧縮室Bで冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒を吐出する。
【0039】
圧縮機構12は、対称ラップ構造である。対称ラップ構造の圧縮機構12では、第1圧縮室Aと第2圧縮室Bとが、点対称に形成される(
図4Eなどを参照)。第1圧縮室Aは、平面視において、後述する可動スクロール30の可動側ラップ32の外周面32aと、後述する固定スクロール20の固定側ラップ22の内周面22bと、によって囲まれて形成される。第2圧縮室Bは、平面視において、可動側ラップ32の内周面32bと、固定側ラップ22の外周面22aと、によって囲まれて形成される。そして、対称ラップ構造の圧縮機構12では、同じタイミングで第1圧縮室A及び第2圧縮室Bにおける圧縮が開始される。また、対称ラップ構造の圧縮機構12では、可動側ラップ32の巻き終わり角と固定側ラップ22の巻き終わり角とが同一である。
【0040】
オルダム継手は、可動スクロール30の下方に配置され、可動スクロール30の自転を規制して、可動スクロール30を固定スクロール20に対して公転させる。
【0041】
以下に、固定スクロール20及び可動スクロール30について、詳細に説明する。
【0042】
(2−4−1)固定スクロール
固定スクロール20は、
図2A〜
図2G及び
図6A〜
図6Bに示すように、円板状の固定側平板21と、固定側ラップ22と有する。
【0043】
固定側ラップ22は、固定側平板21の表面21aから、回転軸RAに沿って下方に延びる(
図6A参照)。固定側ラップ22は、平面視において、固定スクロール20の中心付近の巻き始め部22dから、外周側の巻き終わり部22eまで、渦巻状に形成されている(
図2A参照)。固定側ラップ22の渦巻き形状は、例えばインボリュート曲線で形成されている。固定側ラップ22の内周面22bは、固定側ラップ22の巻き始め部22dから、固定側ラップ22の巻き終わり部22eまで、連続している。固定側ラップ22の巻き始め部22dは、固定側ラップ22の中心22cに近く、固定側ラップ22の巻き終わり部22eは、固定側ラップ22の中心22cから遠い。固定側ラップ22は、後述する可動スクロール30の可動側ラップ32と組み合わされて圧縮室A,Bを形成する。具体的には、固定スクロール20と可動スクロール30とは、固定側平板21の表面21aと後述する可動側平板31の表面31aとが対向する状態で組み合わされ、固定側平板21と、固定側ラップ22と、可動側ラップ32と、後述する可動スクロール30の可動側平板31と、に囲まれた圧縮室A,Bを形成する(
図4E参照)。可動スクロール30が固定スクロール20に対して旋回すると、
図1に示す低圧空間LPSから圧縮室A,Bに流入した冷媒は、中央側の圧縮室A,Bへと移動するにつれ圧縮されて、圧力が上昇する。
【0044】
固定側平板21の略中心には、圧縮機構12により圧縮された冷媒を吐出する吐出ポート21bが形成されている(
図2A参照)。吐出ポート21bは、固定側平板21を厚さ方向(上下方向)に貫通して形成されている。吐出ポート21bは、圧縮機構12の中央側の圧縮室A,Bと連通する。固定側平板21の上方には、吐出ポート21bを開閉する吐出弁が取り付けられている。吐出ポート21bが連通する圧縮室A,Bの圧力が、吐出管の内部圧力に比べて所定値以上大きくなったときに、吐出弁が開き、吐出ポート21bから吐出管へと冷媒が流れる。
【0045】
固定スクロール20には、低圧空間LPSの冷媒を圧縮室A,Bに導くための第1通路41が形成されている。第1通路41は、
図2Aや
図2Gに示すように、固定側平板21に形成された穴(開口)である。
【0046】
また、固定スクロール20は、その外周部分に、圧縮室を構成しない壁部23を有している。壁部23の内面23aは、固定側ラップ22の巻き終わり部22eの内周面22bと連続する面であり、
図4B等に示すように、圧縮室を構成しない可動スクロール30の可動側ラップ32の外周面32aと対向する。
【0047】
(2−4−2)可動スクロール
可動スクロール30は、
図3A〜
図3G及び
図6A〜
図6Bなどに示すように、可動側平板31と、可動側ラップ32と、可動側平板31の裏面(下面)から下方に延びるボス部33と、を主に有する。可動側ラップ32の歯先(上端)と固定側平板21の表面21aとの間には、チップシールが設けられてもよい。
【0048】
可動側平板31の表面(上面)31aは、固定側平板21の表面21aと対向する。可動側ラップ32は、可動側平板31の表面31aから、回転軸RAに沿って上側に延びる(
図6A参照)。可動側ラップ32は、平面視において、可動スクロール30の中心32c付近の巻き始め部32dから、可動スクロール30の外周側の巻き終わり部32eまで、渦巻状に形成されている。可動側ラップ32の渦巻き形状は、例えばインボリュート曲線で形成されている。
【0049】
なお、ここでは、可動スクロール30の中心32cは、可動側ラップ32を構成するインボリュート曲線の基礎円の中心である。また、可動スクロール30の中心32cは、ボス部33に挿入されるクランク軸70の偏芯部71の中心軸が通過する点である。
【0050】
可動側ラップ32の外周面32aは、可動側ラップ32の巻き始め部32dから、可動側ラップ32の巻き終わり部32eまで、連続している。可動側ラップ32の巻き始め部32dは、可動側ラップ32の中心32cに近く、可動側ラップ32の巻き終わり部32eは、可動側ラップ32の中心32cから遠い。
【0051】
回転軸RAの方向に沿って見たときに、可動スクロール30の可動側平板31の外縁31bは、
図3Aに示すように、概ね仮想円VCに沿っている。仮想円VCは、可動側平板31の外縁31bの50%以上が沿う、仮想の平面視における円である。
【0052】
また、可動スクロール30には、
図3Aに示すように、後述する第2通路42となる切り欠きが形成されている。第2通路42となる切り欠きは、仮想円VCに対して内側に切り欠かれている。したがって、第2通路42は、必然的に仮想円VCの内側に位置することになる。
【0053】
(2−4−3)固定スクロールと可動スクロールとを組み合わせた状態
組み合わせた状態の固定スクロール20及び可動スクロール30を、
図4A及び
図4Bに示す。
図4Aは、両ラップ22,32が噛み合った状態の固定スクロール20及び可動スクロール30の正面図である。
図4Bは、
図4Aの高さ位置IV−Bにおける、固定スクロール20と可動スクロール30とによって形成される圧縮室A,B及び冷媒導入通路(第1通路41,第2通路42)の、あるタイミングにおける状態、を示す図である。なお、
図4A〜
図4Eや
図5A〜
図5Cでは、固定スクロール20と可動スクロール30との区別を理解しやすいように、固定スクロール20は実線で示し、可動スクロール30は2点鎖線で示している。また、
図4Aや
図5A〜
図5Cでは、圧縮室A,Bへ流れ込むガス冷媒の流れを、理解を容易にするために太字の矢印で示している。
【0054】
圧縮室A,Bのうち、第1圧縮室Aは、固定側平板21の表面21a、可動側平板31の表面31a、固定側ラップ22の内周面22b、及び、可動側ラップ32の外周面32aによって、形成される圧縮室である。圧縮室A,Bのうち、第2圧縮室Bは、固定側平板21の表面21a、可動側平板31の表面31a、固定側ラップ22の外周面22a、及び、可動側ラップ32の内周面32bによって、形成される圧縮室である。
【0055】
第1圧縮室Aの入口A1は、
図4Bや
図5Cに示すように、固定側ラップ22の巻き終わり部22eと可動側ラップ32の外周面32aとの間の隙間(第1隙間G1)である。この第1隙間G1は、可動スクロール30の旋回によって、その面積が増減する。
【0056】
(2−4−3−1)第1通路
固定スクロール20には、上述の第1通路41が形成されている。第1通路41は、外部から吸入されたガス冷媒を第1圧縮室A及び第2圧縮室Bに導くための、冷媒の流路である。第1通路41は、固定スクロール20に可動スクロール30が組み合わされても、流路面積は殆ど変わらず、多くのガス冷媒を可動側ラップ32の巻き終わり部32eの周囲の空間に導く。言い換えると、可動側ラップ32の巻き終わり部32eの周囲の空間には、第1通路41によって殆ど抵抗を受けることなく、低圧空間LPSから冷媒が流れ込む。
【0057】
(2−4−3−2)第2通路
一方、可動スクロール30には、第2通路42が形成されている。第2通路42は、外部から低圧空間LPSに吸入されたガス冷媒を、第1圧縮室Aに導くための流路である。この第2通路42は、
図4Bや
図5Bに示すように、可動スクロール30と固定スクロール20が組み合わされた状態において、固定スクロール20の壁部23の内面23aの内側で且つ可動スクロール30の可動側平板31の切り欠き部分の外面の外側のエリアである。言い換えると、固定スクロール20の壁部23の内面23aの内側で且つ可動スクロール30の可動側平板31の切り欠き部分の外面の外側のエリアの面積が、第2通路42の面積である。仮に、可動スクロール30の可動側平板31を切り欠かなければ、第2通路42は存在しなくなる。ここでは、可動スクロール30の可動側平板31を切り欠いて、仮想円VCよりも内側に第2通路42となる空間を可動側平板31に形成したので、可動スクロール30及び固定スクロール20を組み合わせた状態において第2通路42が出現している。
【0058】
なお、
図5Bに示す第2通路42は、可動スクロール30の固定スクロール20に対する相対位置が所定状態のときの通路であり、可動スクロール30が旋回すれば、例えば
図4Cや
図4Dに示すように、その通路の平面視形状や面積は変化する。
【0059】
この第2通路42を通ったガス冷媒は、以下で説明する第3通路43に入り、他の経路を通ってきたガス冷媒と合流して第1圧縮室Aへと流れる。
【0060】
(2−4−3−3)第3通路及び第2隙間
図4Bや
図5Aに示すように、第1圧縮室Aの入口A1と、固定スクロール20に形成されている第1通路41との間には、第3通路43が形成される。第3通路43は、外部から低圧空間LPSに吸入されたガス冷媒を第1圧縮室Aに導くための流路である。第3通路43は、
図4B、
図5A、
図6B等に示すように、固定側平板21の表面21a、可動側平板31の表面31a、圧縮室を構成しない可動側ラップ32の外周面32a、及び、固定スクロール20の壁部23の内面23a、によって囲まれている。第3通路43は、下流部43bと上流部43aとを含む。下流部43bは、第1圧縮室Aの入口A1に近い。上流部43aは、固定スクロール20に形成されている第1通路41に近い。第1通路41を通ったガス冷媒は、第3通路43の上流部43a及び下流部43bを経由して、第1圧縮室Aに流れる。第2通路42を通ったガス冷媒は、第3通路43の下流部43bを経由して、第1圧縮室Aに流れる。
【0061】
また、第3通路43には、
図5AにおいてP1〜P2で示す角度範囲において形成されている第2隙間G2からもガス冷媒が流れ込む。
図6Bに示すように、可動側平板31と、固定スクロール20の壁部23の端面23bとは、対向している。そして、可動側平板31と、固定スクロール20の壁部23の端面23bとの間には、回転軸RAの方向に隙間(第2隙間G2)が存在する。この第2隙間G2は、第1通路41及び第2通路42を介さずに、ガス冷媒を第3通路43に導く。
【0062】
第1隙間G1の断面積を、S1、
第2通路42の、第3通路43との境界における断面積を、Sa、
第3通路43の、最も通路面積が小さい箇所P3(
図5Bを参照)における断面積を、Sb、
第2隙間G2の断面積を、Sc、
としたときに、以下の式1が満たされている。
式1:S1<Sa+Sb+Sc
【0063】
なお、第2隙間G2は、第3通路43の圧縮室Aの入口A1の手前まで存在するが、
図6Aに示すように、圧縮室Aのエリアにおいては存在しない。圧縮室Aのエリアに第2隙間G2があると、ガス冷媒の圧縮ができないからである。
【0064】
(2−4−3−4)第1、第2通路の平面的な配置
回転軸RAの方向に沿って見たときに、第1通路41と第2通路42とは離れている。
図4Bに示すように、第1通路41は、固定側ラップ22の巻き終わり部22eよりも、可動側ラップ32の巻き終わり部32eに近い。
【0065】
回転軸RAの方向に沿って見たときに、可動スクロール30に形成されている第2通路42は、
図4Bや
図5Bに示すように、可動側ラップ32の巻き終わり部32eよりも、固定側ラップ22の巻き終わり部22eに近い。
【0066】
回転軸RAの方向に沿って見たときに、
図3Aから明らかなように、可動スクロール30に形成されている第2通路42は、仮想円VCの内側(可動側ラップ32の中心32c側)に位置している。このため、スクロール圧縮機10では、第2通路42が、ケーシング11の円筒部材11bから離れる。
【0067】
(3)スクロール圧縮機の動作
スクロール圧縮機10の動作について説明する。
【0068】
モータ60が駆動されると、ロータ62が回転し、ロータ62と連結されたクランク軸70も回転する。クランク軸70が回転すると、オルダム継手の働きにより、可動スクロール30は自転せずに、固定スクロール20に対して公転する。そして、吸入管から低圧空間LPSに流入した冷凍サイクルにおける低圧の冷媒が、第1通路41、第2通路42、第2隙間G2及び第3通路43を通過して、圧縮機構12の周縁側の圧縮室A,Bに吸入される。第1圧縮室Aには、第1通路41、第2通路42及び第2隙間G2から第3通路43に流入したガス冷媒が、入口A1から入ってくる。第2圧縮室Bには、平面視において近傍に位置する第1通路41から、ガス冷媒が入ってくる。
【0069】
可動スクロール30が公転するのに従い、低圧空間LPSと圧縮室A,Bとは連通しなくなる(
図4Eの状態を参照)。さらに可動スクロール30が公転して圧縮室A,Bの容積が減少するのに伴って、圧縮室A,Bの圧力が上昇する。冷媒の圧力は、周縁側(外側)の圧縮室A,Bから、中央側(内側)の圧縮室A,Bへ移動するにつれ上昇し、最終的に冷凍サイクルにおける高圧となる。圧縮機構12によって圧縮された冷媒は、固定側平板21の吐出ポート21bから吐出される。
【0070】
(4)特徴
(4−1)
スクロール圧縮機10は、対称ラップ構造のスクロール圧縮機であって、固定スクロール20と、可動スクロール30と、クランク軸70と、を備える。固定スクロール20は、固定側平板21と、渦巻状の固定側ラップ22と、を有する。固定側ラップ22は、固定側平板21の表面21aから下向きに延びる。可動スクロール30は、可動側平板31と、渦巻状の可動側ラップ32と、を有する。可動側ラップ32は、可動側平板31の表面31aから上向きに延びる。クランク軸70は、回転軸RAを中心として回転し、可動スクロール30を駆動する。第1圧縮室Aは、固定側平板21の表面21a、可動側平板31の表面31a、固定側ラップ22の内周面22b、及び、可動側ラップ32の外周面32aによって、形成される。第2圧縮室Bは、固定側平板21の表面21a、可動側平板31の表面31a、固定側ラップ22の外周面22a、及び、可動側ラップ32の内周面32bによって、形成される。固定スクロール20には、第1通路41が形成されている。第1通路41は、外部から吸入されたガス冷媒を第1圧縮室A及び第2圧縮室Bに導くための、冷媒の流路である。可動スクロール30には、第2通路42が形成されている。第2通路42は、外部から吸入されたガス冷媒を第1圧縮室Aに導くための、冷媒の流路である。第1圧縮室Aには、第1通路41を通ったガス冷媒と、第2通路42を通ったガス冷媒と、が流れる。第2圧縮室Bには、第1通路41を通ったガス冷媒、が流れる。
【0071】
スクロール圧縮機10では、第1通路41を通ったガス冷媒は、第1圧縮室A及び第2圧縮室Bに流れる。第2通路42を通ったガス冷媒は、第1圧縮室Aに流れる。第1通路41は、固定スクロール20に形成され、第2通路42は、可動スクロール30に形成されている。このため、回転軸RAを挟んで第1通路41の反対側に第2通路42を配置する必要がなく、第2通路42の配置の自由度が上がる。そして、
図2A、
図3A、
図5Bに示すような位置に第2通路42を配置し、第1通路41を補完する形でガス冷媒を流す第2通路42のサイズ(
図5Bを参照)を採用している。このため、スクロール圧縮機10では、
図1に示す低圧空間LPSの両側(第1通路41の側及びその反対側)においてガス冷媒が速い流速で上向きに流れる現象が抑えられ、その結果、油上がり現象が抑制されるようになっている。
【0072】
(4−2)
スクロール圧縮機10では、回転軸RAの方向に沿って見たときに、可動スクロール30に形成されている第2通路42が、
図4Bや
図5Bに示すように、可動側ラップ32の巻き終わり部32eよりも、固定側ラップ22の巻き終わり部22eに近い。
【0073】
第1通路41から可動側ラップ32の巻き終わり部32eの内側及び外側に流れるガス冷媒は、一方は殆ど圧力損失なく第2圧縮室Bに流れ、他方は第3通路43を通って第1圧縮室Aに流れる。しかし、
図4Bや
図5Aに示すように、第3通路43は長く且つ流路面積も狭いところがあるため、第1圧縮室Aに流れるガス冷媒の量が足りない傾向となる。それを補う第2通路42が、ここでは、可動側ラップ32の巻き終わり部32eよりも、固定側ラップ22の巻き終わり部22eに近い。したがって、スクロール圧縮機10では、第1圧縮室Aに流れるガス冷媒の量と第2圧縮室Bに流れるガス冷媒の量との差が、小さくなっている。
【0074】
なお、
図5Bに示す第2通路42は、可動スクロール30の固定スクロール20に対する相対位置が所定状態のときの通路であり、上述のとおり、可動スクロール30が旋回すれば、例えば
図4Cや
図4Dに示すように、その通路の平面視形状や面積は変化する。但し、低圧空間LPSから第1圧縮室Aにガス冷媒を導いている第2通路42は、可動スクロール30の固定スクロール20に対する相対位置に関わらず、常に、可動側ラップ32の巻き終わり部32eよりも、固定側ラップ22の巻き終わり部22eに近い。第2通路42は、回転軸RAの方向に沿って見たときに、固定スクロール20の壁部23の内面23aの内側で且つ可動スクロール30の可動側平板31の切り欠き部分の外面の外側のエリアである。この第2通路42の回転軸RAの方向視における流路面積の中心(断面の重心)は、常に、可動側ラップ32の巻き終わり部32eよりも、固定側ラップ22の巻き終わり部22eに近い。
【0075】
(4−3)
回転軸RAの方向に沿って見たときに、スクロール圧縮機10の可動スクロール30の可動側平板31の外縁31bは、
図3Aに示すように、概ね仮想円VCに沿っている。仮想円VCは、可動側平板31の外縁31bの50%以上が沿う、仮想の平面視における円である。そして、回転軸RAの方向に沿って見たときに、可動スクロール30に形成されている第2通路42は、仮想円VCの内側(可動側ラップ32の中心32c側)に位置している。このため、スクロール圧縮機10では、第2通路42が、ケーシング11の円筒部材11bから離れる。これにより、ケーシング11の円筒部材11bの内面に沿って下向きに流れる冷凍機油が、第2通路42に流れ込むガス冷媒によって巻き上げられる現象が抑制されている。
【0076】
(4−4)
固定スクロール20に形成されている第1通路41は、
図2Aや
図2Gに示すように、固定側平板21に形成された穴(開口)である。したがって、鋳造や機械加工において、固定スクロール20に容易に第1通路41を形成することができている。
【0077】
(4−5)
スクロール圧縮機10では、第1圧縮室Aの入口A1は、固定側ラップ22の巻き終わり部22eと可動側ラップ32の外周面32aとの間の隙間(第1隙間G1)である。この第1隙間G1は、可動スクロール30の旋回によって、その面積が増減する。第1圧縮室Aの入口A1と、固定スクロール20に形成されている第1通路41との間には、第3通路43が形成される。第3通路43は、外部から吸入されたガス冷媒を第1圧縮室Aに導くための、ガス冷媒の流路である。第3通路43は、
図4Bや
図5Aに示すように、固定側平板21の表面21a、可動側平板31の表面31a、圧縮室を構成しない可動側ラップ32の外周面32a、及び、固定スクロール20の壁部23の内面23a、によって囲まれている。第3通路43は、下流部43bと上流部43aとを含む。下流部43bは、第1圧縮室Aの入口A1に近い。上流部43aは、固定スクロール20に形成されている第1通路41に近い。第1通路41を通ったガス冷媒は、第3通路43の上流部43a及び下流部43bを経由して、第1圧縮室Aに流れる。第2通路42を通ったガス冷媒は、第3通路43の下流部43bを経由して、第1圧縮室Aに流れる。
【0078】
このように、スクロール圧縮機10では第3通路43が存在するため、固定スクロール20に形成されている第1通路41を流れてきたガス冷媒の一部を、第2圧縮室Bではなく第1圧縮室Aに導くことができる。このため、第1通路41に比べて第2通路42が小さく、第2通路42を流れるガス冷媒の量が少ないスクロール圧縮機10であっても、第1圧縮室Aに流れるガス冷媒の量と第2圧縮室Bに流れるガス冷媒の量との差を小さくすることができている。
【0079】
(4−6)
スクロール圧縮機10では、
図6Bに示すように、可動側平板31と、固定スクロール20の壁部23の端面23bとは、対向している。そして、可動側平板31と、固定スクロール20の壁部23の端面23bとの間には、回転軸RAの方向に隙間(第2隙間G2)が存在する。この第2隙間G2は、第1通路41及び第2通路42を介さずに、ガス冷媒を第3通路43に導く。
【0080】
第1隙間G1の断面積を、S1、
第2通路42の、第3通路43との境界における断面積を、Sa、
第3通路43の、最も通路面積が小さい箇所P3(
図5Bを参照)における断面積を、Sb、
第2隙間G2の断面積を、Sc、
としたときに、以下の式1が満たされている。
式1:S1<Sa+Sb+Sc
【0081】
スクロール圧縮機10では、式1が満たされるように、第1圧縮室Aに流れるガス冷媒が通過する流路の断面積であるSa,Sb,Scが決められるため、第1圧縮室Aに流れるガス冷媒の量が確保される。この結果、第1圧縮室Aに流れるガス冷媒の量と第2圧縮室Bに流れるガス冷媒の量との差を極めて小さくすることができている。
【0082】
(4−7)
スクロール圧縮機10では、回転軸RAの方向に沿って見たときに、第1通路41と第2通路42とは離れている。第1通路41は、固定側ラップ22の巻き終わり部22eよりも、可動側ラップ32の巻き終わり部32eに近い。
【0083】
言い換えると、スクロール圧縮機10では、第1通路41が可動側ラップ32の巻き終わり部32eに近く、第1通路41から第2圧縮室Bに流れるガス冷媒の圧力損失は小さい。一方、第1圧縮室Aには、第1通路41を通ったガス冷媒と、第2通路42を通ったガス冷媒と、が流れる。このため、ガス冷媒の圧力損失が大きくなっても第1圧縮室Aに流れるガス冷媒の量を確保することができている。
【0084】
(5)変形例
(5−1)
上記実施形態では、固定スクロール20に形成されている第1通路41は、
図2Aや
図2Gに示すように、穴である。しかし、穴ではなく、切り欠きによって第1通路41を形成してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、
図3Aに示すように、可動スクロール30の可動側平板31に、第2通路42となる切り欠きを形成している。しかし、切り欠きではなく、可動スクロール30の可動側平板31に、細長い開口を形成してもよい。
【0086】
(5−2)
以上、スクロール圧縮機の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。