【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および−を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“−”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“−”を付けることで負の指数をあらわしている。
【0021】
(実施の形態1)
本発明にかかる半導体装置は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製された炭化珪素半導体装置について、MOSFETを例に説明する。
図1Aは、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【0022】
図1Aに示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、n
+型炭化珪素基板(第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板)1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)、にn型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1ワイドバンドギャップ半導体層)2が堆積されている。
【0023】
n
+型炭化珪素基板1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。n型炭化珪素エピタキシャル層2は、n
+型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている低濃度n型ドリフト層である。n型炭化珪素エピタキシャル層2の、n
+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域(第1導電型の領域)5が形成されている。n型高濃度領域5は、n
+型炭化珪素基板1よりも低くn型炭化珪素エピタキシャル層2よりも高い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている高濃度n型ドリフト層である。以下、n
+型炭化珪素基板1とn型炭化珪素エピタキシャル層2と後述するp型ベース層(第2導電型ワイドバンドギャップ半導体層)6とを併せて炭化珪素半導体基体とする。
【0024】
図1Aに示すように、n
+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体の裏面)には、裏面電極(ドレイン電極)13が設けられている。裏面電極13は、ドレイン電極を構成する。裏面電極13の表面には、ドレイン電極パッド15が設けられている。
【0025】
炭化珪素半導体基体の第1主面側(p型ベース層6側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ16は、p型ベース層6のn
+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面からp型ベース層6を貫通してn型高濃度領域5に達する。トレンチ16の内壁に沿って、トレンチ16の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、トレンチ16内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極10が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極10が、n型炭化珪素エピタキシャル層2およびp型ベース層6と絶縁されている。ゲート電極10の一部は、トレンチ16の上方(ソース電極パッド14側)からソース電極パッド14側に突出していてもよい。
【0026】
n型炭化珪素エピタキシャル層2のn
+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面層には、第1p
+型ベース領域(第2導電型の第1ベース領域)3と第2p
+型ベース領域(第2導電型の第2ベース領域)4が選択的に設けられている。第1p
+型ベース領域3は、トレンチ16の底部よりもドレイン側に深い位置にまで達している。第1p
+型ベース領域3の下端部(ドレイン側端部)は、トレンチ16の底部よりもドレイン側に位置する。第2p
+型ベース領域4の下端部は、トレンチ16の底部よりもドレイン側に位置する。第2p
+型ベース領域4は、トレンチ16の底部と深さ方向zに対向する位置に形成される。第2p
+型ベース領域4の幅は、トレンチ16の幅よりも広い。トレンチ16の底部は、第2p
+型ベース領域4に達してもよいし、p型ベース層6と第2p
+型ベース領域4に挟まれたn型高濃度領域5内に位置し、第2p
+型ベース領域4と接触していなくてもよい。第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4は、例えばアルミニウム(Al)がドーピングされている。
【0027】
第1p
+型ベース領域3の一部17をトレンチ16側に延在させることで第2p
+型ベース領域4に接続した構造となっている。この場合、第1p
+型ベース領域3の一部17(
図2参照)は、第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4とが並ぶ方向(以下、第1方向とする)xと直交する方向(以下、第2方向とする)yに、n型高濃度領域5と交互に繰り返し配置された平面レイアウトを有していてもよい。第1,2p型ベース領域3,4の平面レイアウトの一例を
図2に示す。
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の平面レイアウトの一例を示す平面図である。この場合、
図1Aは、
図2の切断線A−A’における断面構造となる。
図1Bは、
図2の切断線B−B’における断面構造である。
図2は、
図1A,1Bの切断線C−Cにおける平面レイアウトである。
図2には、第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4との境界を縦点線で示し、これら第1,2p型ベース領域3,4が第1p
+型ベース領域3の一部17によって接続された状態を示す(ハッチングされた部分)。
【0028】
図2のように、トレンチ16の底部よりもドレイン側において、第1p
+型ベース領域3の一部17は、例えば、第1方向xの両側のトレンチ16側に延在し、第2p
+型ベース領域4の一部と接続している。第2方向yに隣り合う第1p
+型ベース領域3の一部17同士の間には、n型高濃度領域5のドレイン側の部分5aが配置される。すなわち、第1p
+型ベース領域3の一部17(第1,2p型ベース領域3,4が接続する部分)は、n型高濃度領域5のドレイン側の部分5aを挟んで、第2方向yに周期的に配置される。そして、第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4とは平面視で格子状のレイアウトとなっている。n型高濃度領域5は、第1p
+型ベース領域3の一部17とp型ベース層6との間に延在する。すなわち、トレンチ16の側壁に露出される部分において、p型ベース層6と第1,2p型ベース領域3,4との間にn型高濃度領域5のソース側の部分5bが配置され、トレンチ16の側面の一部がn型領域で覆われる(
図1B)。これにより、第2p
+型ベース領域4とn型炭化珪素エピタキシャル層2の接合部分でアバランシェ降伏が起こったときに発生するホールを効率よくソース電極12に退避させることができ、ゲート絶縁膜9への負担を軽減されるため、信頼性が向上する。
【0029】
n型炭化珪素エピタキシャル層2の基体第1主面側には、p型ベース層(第2導電型のワイドバンドギャップ半導体層)6が設けられている。p型ベース層6は、第1p
+型ベース領域3に接する。p型ベース層6の不純物濃度は、例えば第1p
+型ベース領域3の不純物濃度よりも低くてもよい。これにより、閾値電圧を下げるためにp型ベース層6の濃度を下げても、p型ベース層6の空乏層の広がりを抑えることでパンチスルーによる耐圧低下を回避することができる。p型ベース層6の内部には、基体第1主面側にn
+ソース領域(第1導電型のソース領域)7およびp
++コンタクト領域(第2導電型のコンタクト領域)8が選択的に設けられている。また、n
+ソース領域7およびp
++コンタクト領域8は互いに接する。また、n型炭化珪素エピタキシャル層2の基体第1主面側の表面層の第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4に挟まれた領域と、p型ベース層6と第2p
+型ベース領域4に挟まれた領域にn型高濃度領域5が設けられている。
【0030】
図1Aでは、2つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0031】
層間絶縁膜11は、炭化珪素半導体基体の第1主面側の全面に、トレンチに埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。ソース電極12は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n
+ソース領域7およびp
++コンタクト領域8に接する。ソース電極12は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極12上には、ソース電極パッド14が設けられている。
【0032】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図3〜
図8は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。
【0033】
まず、n型の炭化珪素でできたn
+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn
+型炭化珪素基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子をドーピングしながら炭化珪素でできた第1n型炭化珪素エピタキシャル層(第1の第1導電型ワイドバンドギャップ半導体層)2aを、例えば30μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。この第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aは、n型炭化珪素エピタキシャル層2となる。ここまでの状態が
図3に示されている。
【0034】
次に、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないマスクを、例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてイオン注入法によってp型の不純物、例えばアルミニウム原子をイオン注入する。それによって、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の第1p型領域(第2導電型の第1半導体領域)3aと第2p
+型ベース領域(第2導電型の第2半導体領域)4が、例えば隣り合う第1p型領域3aと第2p
+型ベース領域4との間の距離が1.5μm程度となるように、形成される。第1p型領域3aと第2p
+型ベース領域4を形成するためのイオン注入時のドーズ量を、例えば不純物濃度が5×10
18/cm
3程度となるように設定してもよい。また、第1p型領域3aと第2p
+型ベース領域4とが、平面視で格子状のレイアウトとなるように形成してもよい。
【0035】
次に、第1p型領域3aと第2p
+型ベース領域4を形成するためのイオン注入時に用いたマスクを除去する。そして、イオン注入法によってn型の不純物、例えば窒素原子をイオン注入する。それによって、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面層の、第1p型領域3aと第2p
+型ベース領域4との間に、例えば深さ0.5μm以下程度の第1n型領域(第1導電型の第1領域)5aが形成される。第1n型領域5aを形成するためのイオン注入時のドーズ量を、例えば不純物濃度が1×10
17/cm
3程度となるように設定してもよい。ここまでの状態が
図4に示されている。
【0036】
次に、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、n型の不純物、例えば窒素原子をドーピングしながら第2n型炭化珪素エピタキシャル層(第2の第1導電型ワイドバンドギャップ半導体層)2bを、例えば0.5μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。この第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bと第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aを合わせてn型炭化珪素エピタキシャル層2となる。第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bを形成するためのエピタキシャル成長の条件を、例えば第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの不純物濃度が3×10
15/cm
3程度となるように設定してもよい。
【0037】
次に、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないマスクを、例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてイオン注入法によってp型の不純物、例えばアルミニウム原子をイオン注入する。それによって、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の第2p型領域(第2導電型の第3半導体領域)3bが、例えば第1p型領域3aの上部に重なるように形成される。この第2p型領域3bと第1p型領域3aを合わせて第1p
+型ベース領域3となる。第2p型領域3bを形成するためのイオン注入時のドーズ量を、例えば不純物濃度が5×10
18/cm
3程度となるように設定してもよい。次に、第2p型領域3bを形成するためのイオン注入時に用いたマスクを除去する。そして、イオン注入法によってn型の不純物、例えば窒素原子をイオン注入する。それによって、第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面層の一部に、第1p型領域3a、第2p
+型ベース領域4、第1n型領域5aに接するように、例えば深さ0.5μm程度の第2n型領域(第1導電型の第2領域)5bが形成される。第2n型領域5bを設けるためのイオン注入時のドーズ量を、例えば不純物濃度が1×10
17/cm
3程度となるように設定してもよい。この第2n型領域5bと第1n型領域5aを合わせてn型高濃度領域5となる。ここまでの状態が
図5に示されている。
【0038】
次に、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面(すなわち第1p
+型ベース領域3および第2n型領域5bの表面)上に、p型の不純物、例えばアルミニウム原子をドーピングしながらp型ベース層(第2導電型のワイドバンドギャップ半導体層)6を、例えば1.3μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。p型ベース層6を形成するためのエピタキシャル成長の条件を、例えば不純物濃度が第1p
+型ベース領域3の不純物濃度よりも低い4×10
17/cm
3程度となるように設定してもよい。ここまでの工程により、n
+型炭化珪素基板1上にn型炭化珪素エピタキシャル層2およびp型ベース層6を積層してなる炭化珪素半導体基体が形成される。
【0039】
次に、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないマスクを例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてイオン注入法によってn型の不純物、例えばリン(P)をイオン注入する。それによって、p型ベース層6の表面層の一部にn
+ソース領域(第1導電型のソース領域)7が形成される。n
+ソース領域7を形成するためのイオン注入時のドーズ量を、例えば第1p
+型ベース領域3よりも不純物濃度が高くなるように設定してもよい。次に、n
+ソース領域7を形成するためのイオン注入時に用いたマスクを除去する。そして、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないマスクを例えば酸化膜で形成し、この酸化膜をマスクとしてp型ベース層6の表面上にp型の不純物、例えばアルミニウムをイオン注入する。それによって、p型ベース層6の表面領域の一部にp
++コンタクト領域(第2導電型のコンタクト領域)8が形成される。p
++コンタクト領域8を形成するためのイオン注入時のドーズ量を、例えば第2p
+型ベース領域4よりも不純物濃度が高くなるように設定してもよい。続いて、p
++コンタクト領域8を形成するためのイオン注入時に用いたマスクを除去する。n
+ソース領域7を形成するためのイオン注入と、p
++コンタクト領域8を形成するためのイオン注入と、の順序を入れ替えてもよい。ここまでの状態が
図6に示されている。
【0040】
次に、熱処理(アニール)を行って、例えば第1p型領域3a、第2p型領域3b、n
+ソース領域7、p
++コンタクト領域8を活性化させる。熱処理の温度は、例えば1700℃程度であってもよい。熱処理の時間は、例えば2分程度であってもよい。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
【0041】
次に、p型ベース層6の表面(すなわちn
+ソース領域7およびp
++コンタクト領域8の表面)上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないマスクを例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてドライエッチング等によってn
+ソース領域7およびp型ベース層6を貫通してn型高濃度領域5に達するトレンチ16を形成する。トレンチ16の底部は、第2p
+型ベース領域4に達してもよいし、p型ベース層6と第2p
+型ベース領域4に挟まれたn型高濃度領域5内に位置していてもよい。続いて、トレンチ16を形成するために用いたマスクを除去する。ここまでの状態が
図7に示されている。
【0042】
次に、n
+ソース領域7およびp
++コンタクト領域8の表面と、トレンチ16の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0043】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を形成する。この多結晶シリコン層はトレンチ16内を埋めるように形成する。この多結晶シリコン層をパターニングして、トレンチ16内部に残すことによって、ゲート電極10が形成される。ゲート電極10の一部は、トレンチ16の上方(ソース電極パッド14側)からソース電極パッド14側に突出していてもよい。
【0044】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をパターニングして選択的に除去することによって、コンタクトホールを形成し、n
+ソース領域7およびp
++コンタクト領域8を露出させる。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。ここまでの状態が
図8に示されている。
【0045】
次いで、コンタクトホール内および層間絶縁膜11の上にソース電極12となる導電性の膜を形成する。この導電性の膜を選択的に除去して、例えばコンタクトホール内にのみソース電極12を残す。
【0046】
次いで、n
+型炭化珪素基板1の第2主面上に、例えばニッケル(Ni)膜でできたドレイン電極13を形成する。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、n
+型炭化珪素基板1とドレイン電極13とをオーミック接合する。
【0047】
次に、例えばスパッタ法によって、ソース電極12および層間絶縁膜11を覆うように、例えばアルミニウム膜を、厚さが例えば5μm程度になるように、設ける。その後、アルミニウム膜を選択的に除去して、素子全体の活性部を覆うように残すことによって、ソース電極パッド14を形成する。
【0048】
次に、ドレイン電極13の表面に、例えばチタン(Ti)、ニッケルおよび金(Au)を順に積層することによって、ドレイン電極パッド15を形成する。以上のようにして、
図1に示す半導体装置が完成する。
【0049】
(実施例)
図9は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の実施例においてトレンチと第2p
+型ベース領域との横方向位置にズレが生じた状態の一例を示す断面図である。横方向とは、第1,2p型ベース領域3,4が並ぶ方向である。ここで、合わせズレ量101は、第2p
+型ベース領域4の中心とトレンチ16の中心との横方向の距離(単位:μm)であり、p型ベース領域幅102は、第2p
+型ベース領域4の幅(単位:μm)であり、トレンチ幅103は、トレンチ16の幅(単位:μm)である。
【0050】
図10は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の実施例のゲート絶縁膜最大電界強度特性示す特性図である。
図10は、トレンチ16直下の第2p
+型ベース領域4の合わせズレによって、トレンチ16の中心が第2p
+型ベース領域4の中心から横方向にシフトしたときのゲート絶縁膜9電界強度の変動をシミュレーションした結果である。
図10には、比較例の合わせズレに対するゲート絶縁膜9の最大電界強度の関係も示す。比較例の構造(不図示)として、p型ベース領域幅102を1μmとし、トレンチ幅103を1μmとした。比較例のp型ベース領域幅102以外の構成は、実施例と同様である。実施例の構造として、p型ベース領域幅102を2μmとし、トレンチ幅103を1μmとした。
【0051】
図10において、縦軸はゲート絶縁膜9の最大電界強度(単位:MV/cm)であり、横軸はトレンチ16と第2p
+型ベース領域4との横方向位置の合わせズレ量101である。
図10は、実施例と比較例とについて、ゲート絶縁膜9にかかる最大電界強度をシミュレーションした結果であり、ドレインに4000V印加したときの合わせズレ量101とゲート絶縁膜9の最大電界強度との関係の一例を示す特性図である。
図10に示すように、シミュレーションの結果、p型ベース領域幅102がトレンチ幅103よりも広い実施例は、p型ベース領域幅102がトレンチ幅103と同じ幅の比較例よりも、ドレイン側に電圧を印加したときのゲート絶縁膜9への最大電界強度が改善されることを確認した。
【0052】
図11は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の実施例のオン抵抗特性を示す特性図である。
図11には、比較例のオン抵抗特性も示す。
図11は、実施例と比較例とについて、オン抵抗特性を検証した結果であり、実施の形態1にかかる半導体装置の実施例と比較例とのオン抵抗特性の一例を示す特性図である。
図11において、縦軸はオン抵抗(単位:mΩcm
2)であり、横軸はp型ベース領域幅102(単位:μm)である。
図11に示すように、検証の結果、例えばp型ベース領域幅102を増やすとオン抵抗は増加するが、実施例のオン抵抗はp型ベース領域幅102=3μmの場合であっても比較例のオン抵抗から2%程度しか増加しないことを確認することができた。
図11において、p型ベース領域幅102=1μmのプロットが比較例であり、p型ベース領域幅102=1μm以外のプロットが実施例である。
【0053】
以上の検証結果より、p型ベース領域幅102をトレンチ幅103より広くすることで、オン抵抗の増加を抑えつつゲート絶縁膜9への電界強度を抑えることができる。
【0054】
なお、本実施の形態1においては、第2n型領域5bの形成をイオン注入で行う形態を示したが、第2n型領域5bとして第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bを形成してもよい。すなわち、第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bのエピタキシャル成長時に窒素の不純物濃度が第2n型領域5bの不純物濃度となるように設定し、イオン注入を省略する製造方法としても良い。また、n
+型炭化珪素基板1およびn型炭化珪素エピタキシャル層2を合わせて炭化珪素半導体基体とし、n型炭化珪素エピタキシャル層2の基体第1主面側の表面層にp型ベース層6をイオン注入により形成してもよい。また、n
+型炭化珪素基板1単体を炭化珪素半導体基体とし、n
+型炭化珪素基板1の第1主面側の表面層にMOSゲート構造を構成するすべての領域(n型高濃度領域5および第1,2p型ベース領域3,4を含む)をイオン注入により形成してもよい。
【0055】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、p型ベース層に接する第1p
+型ベース領域を設けることで、隣り合うトレンチ間に、トレンチの底部よりもドレイン側に近い位置に、第1p
+型ベース領域とn型ドリフト層とのpn接合を形成することができる。また、n型ドリフト層の内部に、トレンチ底部を囲むように、またはトレンチ底部よりも深くかつトレンチと深さ方向に対向するように、第2p
+型ベース領域を設けることで、トレンチの底部に近い位置に、第2p
+型ベース領域とn型ドリフト層とのpn接合を形成することができる。このように、第1,2p型ベース領域とn型ドリフト層とのpn接合を形成することで、トレンチ底部のゲート絶縁膜に高電界が印加されることを防止することができる。このため、ワイドバンドギャップ半導体を半導体材料として用いた場合においても高耐電圧化が可能となる。また、トレンチ幅よりも幅の広い第2p
+型ベース領域を設けることで、トレンチの底部のコーナー部の電界を緩和させることができるため、さらに耐電圧を高くすることができる。
【0056】
また、実施の形態1によれば、第1p
+型ベース領域の一部が前記トレンチ側に延在し、第2p
+型ベース領域に接続されていることで、第2p
+型ベース領域とn型炭化珪素エピタキシャル層の接合部分でアバランシェ降伏が起こったときに発生するホールを効率よくソース電極に退避させることができる。このため、耐電圧が高い状態で、オン抵抗を下げることができる。また、実施の形態1によれば、第2p
+型ベース領域の幅がトレンチの幅よりも広いことで、トレンチと第2p
+型ベース領域との横方向位置に合わせズレが生じたとしても、トレンチ底部の少なくとも一方のコーナー部を囲むように第2p
+型ベース領域が配置される。これにより、従来よりもゲート絶縁膜への最大電界強度が高く、かつオン抵抗を従来と同程度に維持した半導体装置を提供することができる。このため、エピタキシャル成長およびイオン注入、またはイオン注入のみで、耐電圧が高くかつオン抵抗の低い半導体装置を従来よりも簡易な製造方法で製造することができる。
【0057】
(実施の形態2)
図12は、本発明の実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
図12に示すように、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置は、n型炭化珪素エピタキシャル層2の内部に、第1p
+型ベース領域3の下端部(ドレイン側端部)に接するように第3p型領域3cを設けた構造である。第3p型領域3cは、p型ベース層6および第1p
+型ベース領域3とともにベース領域として機能する。
【0058】
第3p型領域3cの厚さは、例えば0.1μm〜0.5μm程度であってもよい、第3p型領域3cの幅は、第1p
+型ベース領域3の幅より狭く、例えば第1p
+型ベース領域3よりも0.1μm以上狭くてもよい。また、第3p型領域3cは、第1p
+型ベース領域3の側壁方向とn
+炭化珪素基板1の表面に平行な方向に沿って連続して同じ厚さで設けられていてもよく、n
+炭化珪素基板1側から俯瞰してみると周期的な点状の形状で設けられていてもよい。
【0059】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のその他の構成については、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0060】
(実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
図13は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。
図13に示すように、第1p型領域3a、第2p
+型ベース領域4、第1n型領域5aを形成した後、イオン注入時に用いたマスクを除去する。その後、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないマスクを、例えばレジストで形成する。そして、このレジストをマスクとしてイオン注入法によってp型の不純物、例えばアルミニウム原子をイオン注入する。それによって、
図13に示すように、第1p型領域3aの下部(ドレイン側端部)に、第1p型領域3aに接するように、例えば厚さ0.25μm程度の第3p型領域3cが、例えば幅1μm程度となるように、形成される。第3p型領域3cを形成する際のイオンのエネルギーを、例えば700keV、ドーズ量を、例えば1×10
14/cm
2程度となるように設定してもよい。
【0061】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のその他の製造方法については、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0062】
(実施例)
図14は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の実施例と比較例におけるアバランシェ降伏時の電流分布図である。
図14では、実施例として第3p型領域3cを形成した構造(
図14(b))と、比較例として第3p型領域3cを形成しない構造(
図14(a))によるアバランシェ降伏が起こったときの電流値の面内分布(断面図)の変化を評価した。
図14(a)に示すように、比較例ではゲート電極10直下の第2p
+型ベース領域4でアバランシェ降伏が起こり、ゲート電極10直下で電流が多く流れることが分かる。一方、
図14(b)に示すように、実施例ではアバランシェ降伏が第3p型領域3cで発生し、電流経路がn
+ソース領域7から第3p型領域3cを通過しドレイン側へ流れることが確認できる。同様の結果は、第3p型領域3cの厚さが0.1μm以上、幅が第1p
+型ベース領域3よりも0.1μm以上狭ければ起こる。
【0063】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、ワイドバンドギャップ半導体を半導体材料として用いた場合においても高耐電圧化が可能となる効果を奏する。また、実施の形態2によれば、第1p
+型ベース領域の下端部の少なくとも一部(第3p型領域)を第2p
+型ベース領域の下端部よりも深くすることで、アバランシェ降伏が起こったときに、ソース領域から第3p型領域を通過しドレイン側へ電流が流れる。このため、トレンチの底部のゲート絶縁膜の電界強度をさらに緩和させることができる。
【0064】
以上において本発明では、炭化珪素でできた炭化珪素基板の第1主面を(0001)面とし当該(0001)面上にMOSゲート構造を構成した場合を例に説明したが、これに限らず、ワイドバンドギャップ半導体の種類(例えば窒化ガリウム(GaN)など)、基板主面の面方位などを種々変更可能である。また、本発明では、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。