(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突出部領域の一部は、前記標章表示領域に近づくように前記平滑面領域のタイヤ周上の配置範囲内に延びており、前記突出部領域の前記配置範囲内に延びた部分は、タイヤ径方向の外側及び内側で、前記平滑面領域と接する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記リッジ領域における前記リッジの突出先端は、タイヤ径方向の同じ位置において、前記平滑面領域の面に対して前記サイドウォールの内部の側に窪んだ位置にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記サイドウォールパターンにより、タイヤが車輌に装着されている場合における装飾部の上部と下部との双方の視認性を向上することができる、とされている。
【0006】
しかし、このような空気入りタイヤを、タクシーに装着した場合、サイドウォール表面の模様のみならず、サイドウォール表面に設けられた空気入りタイヤの標章も摩耗して、識別が困難になる場合も多い。具体的には、タクシーは、乗客を拾う際に歩道側の車輪を道路の縁石ぎりぎりに近づけようとするので、一般の乗用車に比べて、縁石に接触する回数は多い。このため、標章が見えなくなるまで擦れることがある。
空気入りタイヤのサイドウォール表面が摩耗して標章が識別できない状態になった場合、空気入りタイヤに気を配って管理していないタクシー等とお客に不安を与え易い他、タイヤの新品交換時に同じ製造者の同じ製品を購入することが困難になる場合もある。
【0007】
そこで、本発明は、サイド摩耗が進んでも標章が摩耗し難い耐サイド摩耗性が向上した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、サイドウォールにサイド模様を有する空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤの前記サイドウォールの表面は、
前記空気入りタイヤを識別するための標章を表示した、タイヤ周上の少なくとも2箇所に設けられた標章表示領域と、
前記標章表示領域のそれぞれを囲むように、タイヤ周上の少なくとも2箇所に設けられた平滑面領域と、
タイヤ周方向の、前記平滑面領域の前記2箇所の間に少なくとも設けられ、タイヤ径方向の内側から外側に延びる複数のリッジが間隔をあけてタイヤ周方向に設けられたリッジ領域と、
前記平滑面領域の表面に対して該表面の法線方向に突出し、タイヤ周方向に延びて前記平滑面領域の間を結ぶ突出部領域と、を備え、
前記リッジ領域の一部は、前記突出部領域によってタイヤ径方向の外側と内側に分断された外側領域と内側領域とを備え
、
前記標章表示領域は、前記標章の要素を縁取る縁取りリッジを備え、
前記縁取りリッジの前記平滑面領域の表面からの突出高さは、前記突出部領域における前記突出部領域の突出先端の前記平滑面領域の表面からの突出高さと同等か、前記突出先端の前記突出高さに比べて低く、
前記標章表示領域の端と前記突出部領域の端との間の、タイヤ周方向に沿った最も近い離間距離の、タイヤ回転中心からみた見込み角度は、1度〜10度である。
また、本発明の他の一態様も、サイドウォールにサイド模様を有する空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤの前記サイドウォールの表面は、
前記空気入りタイヤを識別するための標章を表示した、タイヤ周上の少なくとも2箇所に設けられた標章表示領域と、
前記標章表示領域のそれぞれを囲むように、タイヤ周上の少なくとも2箇所に設けられた平滑面領域と、
タイヤ周方向の、前記平滑面領域の前記2箇所の間に少なくとも設けられ、タイヤ径方向の内側から外側に延びる複数のリッジが間隔をあけてタイヤ周方向に設けられたリッジ領域と、
前記平滑面領域の表面に対して該表面の法線方向に突出し、タイヤ周方向に延びて前記平滑面領域の間を結ぶ突出部領域と、を備え、
前記リッジ領域の一部は、前記突出部領域によってタイヤ径方向の外側と内側に分断された外側領域と内側領域とを備え、
前記標章表示領域は、前記標章の要素を縁取る縁取りリッジを備え、
前記縁取りリッジの前記平滑面領域の表面からの突出高さは、前記突出部領域における前記突出部領域の突出先端の前記平滑面領域の表面からの突出高さに比べて低い。
【0009】
タイヤ周方向に延びる前記突出部領域は、タイヤ径方向の同じ位置にある、ことが好ましい。
【0010】
前記突出部領域は、一定の幅でタイヤ周方向に延びており、
タイヤ周方向に延びる前記突出部領域の幅中心位置は、タイヤ径方向に関して、タイヤ最大幅となるタイヤ径方向の最大幅位置から、前記空気入りタイヤのビード先端から前記空気入りタイヤのトレッド部の最外径位置までのタイヤ断面高さの15%離れた範囲内にある、ことが好ましい。
【0011】
前記突出部領域の突出先端の面は、平面あるいはタイヤ径方向に沿って円弧状をなした湾曲面である、ことが好ましい。
【0012】
前記突出部領域の突出先端は平面であって、前記平面のタイヤ径方向の幅の寸法は、前記空気入りタイヤのビード先端から前記空気入りタイヤのトレッド部の最外径位置までのタイヤ断面高さの1%〜15%である、ことが好ましい。
【0014】
前記縁取りリッジに囲まれた領域内に一方向に延び複数のリッジが一定の間隔で設けられている、ことが好ましい。
【0015】
前記突出部領域の一部は、前記標章表示領域に近づくように前記平滑面領域のタイヤ周上の配置範囲内に延びており、前記突出部領域の前記配置範囲内に延びた部分は、タイヤ径方向の外側及び内側で、前記平滑面領域と接する、ことが好ましい。
【0017】
前記リッジ領域における前記リッジの突出先端は、タイヤ径方向の同じ位置において、前記平滑面領域の面に対して前記サイドウォールの内部の側に窪んだ位置にある、ことが好ましい。
【0018】
前記空気入りタイヤは、一対のビードコアと、前記ビードコアの間に設けられ、タイヤ幅方向の両端部が前記ビードコアで折り返されたカーカスプライと、を備え、
前記突出部領域のタイヤ径方向の中心位置は、前記カーカスプライの両端部の折り返された先端のタイヤ径方向の位置に対してタイヤ径方向外側に位置し、前記突出部領域のタイヤ径方向の中心位置と、前記カーカスプライの両端部の折り返された先端のタイヤ径方向の位置との間の距離は、ビード先端から前記空気入りタイヤのトレッド部の最外径位置までのタイヤ断面高さの1%〜20%である、ことが好ましい。
【0019】
前記突出部領域は、タイヤ周方向の前記平滑面領域の間において、少なくとも2つ以上に分断されるように設けられている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上述の空気入りタイヤによれば、サイド摩耗が進んでも標章が摩耗し難い耐サイド摩耗性が向上した空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態の空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)について詳細に説明する。
【0023】
以下に説明する実施形態の空気入りタイヤは、例えば、乗用車用タイヤ、より具体的には、タクシー用タイヤに適用するが、小型トラック用タイヤあるいはバス・トラック用タイヤに適用することもできる。以下説明する本実施形態の空気入りタイヤは乗用車用タイヤのうち、タクシー用タイヤである。
【0024】
タイヤ幅方向は、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向である。タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を表すタイヤセンターラインCL(
図1参照)から離れる側である。また、タイヤ幅方向内側は、タイヤ幅方向において、タイヤセンターラインCLに近づく側である。タイヤ周方向は、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。タイヤ径方向は、空気入りタイヤの回転軸に直交する方向である。タイヤ径方向外側は、前記回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ径方向内側は、前記回転軸に近づく側をいう。
【0025】
本明細書で言うタイヤ断面高さ及びタイヤの最大幅位置は、タイヤを正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、タイヤに荷重を加えない無負荷状態のときのタイヤ断面形状におけるタイヤ断面高さ及び最大幅位置をいう。
「正規リム」とは、タイヤが基づく規格を含む規格体系において、その規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMA(Japan Automobile Tyre Manufacturers Association)であれば標準リム、TRA(The Tire and Rim Association)であれば“Design Rim”、ETRTO(The European Tire and Rim Technical Organization)であれば“Measuring Rim”である。「正規内圧」とは、タイヤが基づく規格を含む規格体系において、その規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。
【0026】
(タイヤ構造)
図1は、一実施形態のタイヤ10のプロファイル断面図である。タイヤ10は、トレッドパターンを有するトレッド部10Tと、一対のビード部10Bと、トレッド部10Tの両側に設けられ、一対のビード部10Bとトレッド部10Tに接続される一対のサイド部10Sと、を備える。
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ12と、ベルト14と、ビードコア16とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
【0027】
カーカスプライ12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材で構成されている。カーカスプライ12は、ビードコア16の周りに巻きまわされてタイヤ径方向外側に延びている。カーカスプライ12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるベルト14が設けられている。ベルト14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材で構成され、下層のベルト材14aが上層のベルト材14bに比べてタイヤ幅方向の幅が長い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードの傾斜方向は互いに逆方向である。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ12の膨張を抑制する。
【0028】
ベルト14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム部材18が設けられ、トレッドゴム部材18の両端部には、サイドゴム部材20が接続されてサイド部10Sを形成している。サイドゴム部材20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわしたカーカスプライ12の巻きまわした後の部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム部材26が設けられている。
この他に、ベルト材14bとトレッドゴム部材18との間には、ベルト14のタイヤ径方向外側からベルト14を覆う、有機繊維をゴムで被覆した2層のベルトカバー30を備える。
【0029】
タイヤ10のトレッドパターンは、
図1に示されるように、タイヤ周上を一周するようにタイヤ周方向に延びる周方向主溝40,42a,42b,44a,44bを有し、周方向主溝44aと周方向主溝44bの間の領域には、タイヤ幅方向に延びる図示されないラグ溝を有し、周方向主溝44a,44bのタイヤ幅方向の外側のショルダー部には、ショルダーラグ溝46a,46bを有する。タイヤセンターラインCLは、周方向主溝40を通る。本発明のタイヤのトレッドパターンの一実施形態によれば、周方向主溝40,42a,42b,44a,44b、ラグ溝、及びショルダーラグ溝46a,46bを有する上記トレッドパターン以外のトレッドパターンであってもよい。
【0030】
(サイドウォールのパターン)
図2は、サイド部10Sの表面の一例を示した図である。
図3は、サイド部10Sのサイドウォール表面の模様(パターン)の一部を拡大した拡大図である。
サイド部10Sのサイドウォール表面は、標章表示領域50と、平滑面領域52と、リッジ領域54と、突出部領域56と、を主に備える。
【0031】
標章表示領域50は、空気入りタイヤ10を識別するための標章を表示した領域であり、タイヤ周上の少なくとも2箇所に設けられている。
図2に示す例では、“Y”を変形した文字あるいは符号と“YOKOHAMA”の文字を組み合わせた標章(登録商標)と、“TAXI TOURING”の標章(登録商標)を表した標章表示領域が設けられている。“Y”を変形した文字あるいは符号と“YOKOHAMA”の文字を組み合わせた標章(登録商標)は、タイヤ周上に2箇所設けられ、具体的には、互いにタイヤ周上の反対側の位置(対応する文字あるいは符号が、タイヤ回転中心Oの周りに角度180度ずれた位置)に設けられている。
【0032】
平滑面領域52は、標章表示領域50を囲む平滑な面で形成された領域である。より具体的には、平滑面領域52は、標章表示領域50の文字や符号等の各要素を囲むように設けられる。「平滑」とは、リッジ、突起、凹部が意図して設けられていないことを意味する。平滑面領域52は、タイヤ周上の少なくとも2箇所に設けられている。
図2に示す例では、平滑面領域52は、3つの標章表示領域50に対応して3箇所に設けられている。
【0033】
リッジ領域54は、タイヤ径方向の内側から外側に延びる複数のリッジ54aが間隔をあけてタイヤ周方向に設けられた領域である。
図3に示す一例では、リッジ54aは、タイヤ径方向に沿って延びているが、タイヤ径方向あるいはタイヤ周方向に傾斜して延びていてもよい。リッジ領域54は、タイヤ周方向の2つの平滑面領域52の間に少なくとも設けられる。
図2に示す例では、平滑面領域52はタイヤ周上に3箇所設けられて、2つの平滑面領域52に挟まれるリッジ領域54がタイヤ周上に3箇所設けられている。ここで、リッジ領域54は、タイヤ周方向の2つの平滑面領域52の間に少なくとも設けられるとは、タイヤ周方向の2つの平滑面領域52の間の領域全体にリッジ領域54が設けられることのほか、上記領域の一部にリッジ領域54が設けられてもよいことを意味する。
【0034】
突出部領域56は、平滑面領域52の表面に対してこの表面の法線方向に突出し、タイヤ周方向に延びて2つの平滑面領域52の間を結ぶ領域である。
図2に示すように、リッジ領域54は、突出部領域56によってタイヤ径方向の外側と内側に分断された外側領域54bと内側領域54cとを備える。したがって、リッジ54aは、突出部領域56によって途切れている。
【0035】
一実施形態によれば、
図2に示すように、突出部領域56は、タイヤ周方向に帯状に、あるいは線状に延びた形状であり、2つの平滑面領域52の間を結ぶ1つの帯状あるいは線状の突出部領域56である。別の一実施形態によれば、突出部領域56は、帯状に、あるいは線状に延びた形状であるが、タイヤ周方向の2つの平滑面領域52の間を破線のように、少なくとも2つ以上に分断されて設けられてもよい。この場合、分断された突出部領域56の間は、リッジ領域54となっている。この場合においても、リッジ領域54の一部は、突出部領域56によってタイヤ径方向の外側と内側に分断された外側領域と内側領域とを備える。
【0036】
このように、実施形態では、突出部領域56が平滑面領域52の表面に対してこの表面の法線方向に突出し、タイヤ周方向に延びて平滑面領域52の間を結ぶので、平滑面領域52に囲まれた標章表示領域50は、縁石等にサイドウォール表面が接触して縁石等によって擦られても、突出部領域56が縁石等に主に擦られることになり、標章表示領域50が縁石等に擦られる可能性は小さくなる。このため、標章表示領域が摩耗して識別性が低下する可能性は抑制される。すなわち、サイド摩耗が進んでも標章が摩耗し難い耐サイド摩耗性が向上した空気入りタイヤを提供することができる。
なお、標章表示領域50の摩耗を抑制するために、例えば、リッジ領域54のリッジの先端の高さを高くすることも考えられるが、リッジの先端の高さを高くするとリッジによる凹凸寸法は大きくなり、耐オゾンクラック性は低下する。タイヤ10は長期間使用するので、耐オゾンクラック性は重要である。特に、タクシー用空気入りタイヤの場合、タクシー用空気入りタイヤは、一般の乗用車に比べて長時間走行して外光に晒されるので、耐オゾンクラック性を確保することは特に重要である。この点から突出部領域56を設けることにより、リッジの先端の高さを高くする必要がなくなり、後述する実施例からわかるように耐オゾンクラック性を少なくとも従来と同様に維持することができる。
【0037】
一実施形態によれば、
図2に示すように、タイヤ周方向に延びる突出部領域56は、タイヤ径方向の同じ位置にあることが好ましい。突出部領域56が設けられていても、標章表示領域50がわずかに摩耗する場合もある。この場合、突出部領域56がタイヤ周上で、タイヤ径方向の同じ位置にあるので、突出部領域56により、タイヤ周上で同程度に摩耗が進行する。このため、標章表示領域50が均等に摩耗し、部分的に摩耗することが生じ難い。したがって、サイドウォール表面を見る者は、サイドウォール表面が摩耗していることを気づき難い。
【0038】
一実施形態によれば、
図2に示すように、タイヤ周方向に延びる突出部領域56は、一定の幅でタイヤ周方向に延びており、この突出部領域56の幅方向の中心位置C(
図3参照)は、タイヤ径方向に関して、タイヤ最大幅となるタイヤ径方向の最大幅位置A(
図1参照)から、タイヤ10のビード先端16Aからタイヤ10のトレッド部の最外径位置までのタイヤ断面高さH(
図1参照)の15%、タイヤ径方向の外側あるいは内側に離れた範囲R(
図1参照)内にあることが好ましい。すなわち、タイヤ径方向に沿った中心位置Cと最大幅位置Aとの間の距離ACは、タイヤ断面高さHの15%以下であることが好ましい。距離ACは、タイヤ断面高さHの8%以下であることがより好ましい。距離ACは、タイヤ断面高さHの5%以下であることがよりいっそう好ましい。
サイド部10Sは、最大幅位置Aにおいて最も縁石等に接触し易いため、範囲R内に突出部領域56が設けられることで、突出部領域56が縁石等に最も接触し易くなり、これに伴って、標章表示領域50が摩耗することを抑制することができる。
【0039】
突出部領域56のタイヤ径方向に沿った断面において、突出部領域56の突出先端の面は、平面あるいはタイヤ径方向に沿って円弧状をなした湾曲面であってもよい。平面の場合、縁石等と接触する面積が大きくなり、突出部領域56は縁石等によって潰れ難くなるので、標章表示領域50が縁石等に接触する可能性は小さくなるので、突出部領域56の突出先端の面は平面であることが好ましい。しかし、突出部領域56の突出先端の面は円弧状をなした湾曲面であることも、標章表示領域50が縁石等に接触する可能性は従来に比べて小さくなるので、好ましい。
【0040】
一実施形態によれば、突出部領域56の突出先端は平面であって、平面のタイヤ径方向の幅w(
図3参照)は、タイヤ10のビード先端から空気入りタイヤのトレッド部の最外径位置までのタイヤ断面高さH(
図1参照)の1%〜15%であることが好ましい。幅wは、タイヤ断面高さHの5%〜15%であることがより好ましい。突出部領域56の平面の幅を15%より大きくすると耐オゾンクラック性が低下し好ましくない。
【0041】
一実施形態によれば、標章表示領域50は、
図3に示すように、標章の要素である文字や記号あるいは文字の一部や記号の一部等を縁取る縁取りリッジ50aを備える。
図3は、標章表示領域50、平滑面領域52、及びリッジ領域54、及び突出部領域56の配置の一例を拡大して示す図である。
図4は、突出部領域54と標章表示領域50の縁取りリッジ50aの突出高さを説明する図である。
図4に示すように、縁取りリッジ50aの平滑面領域53の表面からの突出高さH1は、突出部領域56における突出部領域56の突出先端の平滑面領域52の表面からの突出高さH2に比べて低いことが好ましい。また、突出高さH1は、突出高さH2と同じであることも好ましい。サイドウォール表面が縁石等と接触して擦られる場合、縁石等と接触する部分は、突出部領域56の突出先端であり、縁取りリッジ50aが縁石等と接触して擦られることは生じ難い。このため、標章表示領域50は摩耗し難い。
【0042】
一実施形態によれば、
図3に示すように、縁取りリッジ50aに囲まれた領域内に一方向に延び複数のリッジ50bが一定の間隔で設けられていることが好ましい。
図3に示す例では、リッジ領域54のリッジと同じ方向であるタイヤ径方向に延びている。これにより、部材、例えばベルトカバーのエッジが標章表示領域50の文字の部分まで延びて、この部材の端末が、標章表示領域50の文字の部分に位置している場合においても、この部材にサイドゴム部材20をしっかりと圧着させることができる。
【0043】
一実施形態によれば、
図3に示すように、突出部領域56の一部である部分56aは、標章表示領域50に近づくように平滑面領域52のタイヤ周上の配置範囲内に延びており、突出部領域56の部分56aはタイヤ径方向の外側及び内側で、平滑面領域と接することが好ましい。いいかえると、突出部領域56の一部は、平滑面領域52の領域内に進入するように、タイヤ周方向に延びている。これにより、突出部領域56は、標章表示領域50に近づくので、標章表示領域50が縁石等によって擦られることは少なくなり、標章表示領域50の摩耗は抑制される。
【0044】
また、一実施形態によれば、標章表示領域50の端と突出部領域56の端との間の、タイヤ周方向に沿った最も近い離間距離の、タイヤ回転中心Oからみた見込み角度φ(
図2参照)は、1度〜10度であることが好ましい。見込み角度φは、1度〜7度であることがより好ましい。見込み角度φは、1度〜5度であることがよりいっそう好ましい。これにより、突出部領域56は、標章表示領域50に近づくので、標章表示領域50が縁石等によって擦られることは少なくなり、標章表示領域50の摩耗は抑制される。見込み角度φが1度未満であると、突出部領域56の端が標章表示領域50の端に近づきすぎて、標章の識別の際に突出部領域56の端が目障りになる。見込み角度φが15度を越えると、標章表示領域50の摩耗の抑制は小さくなる。
【0045】
一実施形態によれば、リッジ領域54におけるリッジの突出先端は、平滑面領域52の面に対して、タイヤ径方向の同じ位置において、サイドウォールの内部の側に窪んだ位置にあることが好ましい。これにより、サイド模様として視認され易いリッジ領域54が縁石等によって擦られることにより生じる磨耗が抑制され易くなる。
【0046】
一実施形態によれば、タイヤ10の突出部領域56のタイヤ径方向の中心位置、すなわち突出部領域56の幅方向の中心位置C(
図3参照)は、カーカスプライ12の両端部の折り返された先端のタイヤ径方向の位置B(
図1参照)に対してタイヤ径方向外側にあり、中心位置Cと位置Bとの間のタイヤ径方向に沿った距離BCは、ビード先端16Aからタイヤのトレッド部の最外径位置までのタイヤ断面高さHの1%〜20%であることが好ましい。距離BCは、タイヤ断面高さHの1%〜15%であることがより好ましく、1%〜10%であることがよりいっそう好ましい。これにより、サイド部10Sの突出部領域56周囲の剛性は高くなり、サイド部10Sが縁石等と接触しても、サイド部10Sの突出部領域56周囲のせん断剛性が向上することにより、サイド部10Sの突出部領域56周囲の変形は抑制され、縁石等は突出部領域56の先端と集中して接触するので、標章表示領域50の摩耗を抑制することができる。
【0047】
(実施例、従来例)
実施形態の効果を調べるために、
図1に示すタイヤの構造を備え、
図2に示すサイドウォールのパターンを有するタイヤを実施例として作製した。作製したタイヤのサイズは、195/65R15である。作製したタイヤの評価は、作製した4本のタイヤを試験車両としてクシー車両に装着して(装着リム:15×6.0J,タイヤ空気圧:前輪及び後輪220kPa)、耐サイド摩耗性を評価した。一方、耐オゾンクラック性は、室内ドラムを用いて試験をして評価した。
【0048】
耐サイド摩耗性の評価については、試験車両を高さ150mmの縁石に左前輪が擦るように、所定の角度で進入(速度25km/時)して停止を10回繰り返した後の標章の摩耗の有無を50人の観察者が観察することで評価を行った。
耐サイド摩耗性の評価については、
・50人中48人以上の観察者が摩耗無し、と判断するとき、評点105とし、
・50人中45人以上47人以下の観察者が摩耗無し、と判断するとき、評点104とし、
・50人中40人以上44人以下の観察者が摩耗無し、と判断するとき、評点103とし、
・50人中35人以上39人以下の観察者が摩耗無し、と判断するとき、評点102とし、
・50人中30人以上34人以下の観察者が摩耗無し、と判断するとき、評点101とし、
・50人中25人以上29人以下の観察者が摩耗無し、と判断するとき、評点100とし、
・50人中24人以下の観察者が摩耗無し、と判断するとき、評点98とした。評点が高いほど、耐サイド摩耗性が優れていることを示す。
【0049】
一方、耐オゾンクラック性については、サイド部にオゾン濃度100(pphm)のオゾンを照射しながら、速度80km/時、荷重450kgfの条件で、室内ドラム上を走行させ、2500km走行後のオゾンクラックの合計長さを計測した。計測したオゾンクラック(深さ1mm以上)の合計長さのうち、従来例の合計長さの逆数を基準として、各実施例の合計長さの逆数を指数化して評価した。指数が高いほど、合計長さが短く、耐オゾンクラック性に優れていることを示す。
【0050】
従来例のタイヤは、実施例と同じタイヤサイズで同じタイヤ構造を備えるが、サイド部10Sは、
図2に示すサイドパターンのうち、突出部領域56が設けられない形態とした。
下記表1〜4には、各実施例の仕様と、耐サイド摩耗性の評価結果を示す。耐オゾンクラック性については、実施例1では指数99であり、これ以外の実施例の指数も99以上であった。なお、指数99は、対オゾンクラック性において、指数100と性能差がない程度であることを意味する。したがって、各実施例の耐オゾンクラック性は、少なくとも、従来例と同等であることがわかった。
【0051】
下記表1〜4において、“タイヤ径方向の距離AC/タイヤ断面高さH”は、上述した突出部領域56の中心位置Cとタイヤ10の最大幅位置Aとの間のタイヤ径方向に沿った距離ACをタイヤ断面高さHで割った値である。“タイヤ径方向の距離BC/タイヤ断面高さH”は、上述したタイヤ径方向に沿った突出部領域56の中心位置Cとカーカスプライ12の両端部の折り返された先端の位置Bとの間のタイヤ径方向に沿った距離BCをタイヤ断面高さHで割った値である。マイナスの値は、中心位置Cが最大幅位置Aあるいは位置Bに対してタイヤ径方向内側にあることを意味し、プラスの値(マイナスの符号がない値)は、中心位置Cが最大幅位置Aあるいは位置Bに対してタイヤ径方向外側にあることを意味する。
実施例1〜18において、突出部領域56の突出高さH2は2mmとし、標章表示領域50の縁取りリッジ50aの突出高さH1は0.5mmとした。実施例19では、突出高さH2は0.5mmとし、突出高さH1は2mmとした。
表1〜4中の“←”は、左欄の内容を示すことを意味する。
【0056】
従来例1及び実施例1〜14の比較より、突出部領域を設けることにより、耐サイド摩耗性が向上することがわかる。
実施例1〜6より、距離ACは、タイヤ断面高さHの15%以下であることが、耐サイド摩耗性を向上させる点で好ましいことがわかる。
実施例7〜10より、距離BCは、タイヤ断面高さHの1〜20%であることが、耐サイド摩耗性を向上させる点で好ましいことがわかる。
実施例11〜14より、見込み角度φは、1〜10度であることが、耐サイド摩耗性を向上させる点で好ましいことがわかる。
実施例15〜18より、突出部領域の幅wは、タイヤ断面高さHの1〜15%であることが、耐サイド摩耗性を向上させる点で好ましいことがわかる。
また、突出部領域の突出高さH2は、標章表示領域の縁取りリッジの突出高さH1より高いことが、耐サイド摩耗性を向上させる点で好ましいことがわかる。
【0057】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更してもよいのはもちろんである。