【文献】
株式会社ニレコ,プロセス制御装置,株式会社ニレコ,2005年,URL,http://www.nireco.jp/product/process/050101-lasermarker.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗布手段は、ノズルにより遠隔から前記下地塗料を塗布する方法と、刷毛またはローラーを前記鋼材に接触させて前記下地塗料を塗布する方法との何れかの方法で、前記下地塗料を、前記鋼材の所定の領域に塗布することを特徴とする請求項1又は2に記載のマーキングシステム。
前記マーキング作成手段は、前記下地塗料が塗布された状態の前記鋼材の表面に対してレーザー光を照射することにより、前記下地塗料の一部の剥離、炭化、および熱変色の少なくとも1つを実行することで、文字、記号、2次元コード、およびバーコードの少なくとも1つを含む情報を作成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のマーキングシステム。
前記下地塗料は、その耐熱温度が、前記鋼材の上限温度および前記加熱手段による加熱後の前記鋼材の温度よりも高い塗料であり、且つ、前記レーザー光によって剥離、炭化、および熱変色の少なくとも1つが可能な塗料であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のマーキングシステム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態では、冷間・熱間ラインにおいて、棒鋼の端面に対し、当該棒鋼の識別情報等が記録された2次元コードをレーザーマーキングする場合を例に挙げて説明する。尚、冷間とは、前工程で加熱がされていない棒鋼が常温のことをいい、熱間とは前工程で例えば再結晶温度以上に加熱がされている棒鋼が高温状態のことをいう。高温とは、所定の値(例えば、250℃〜400℃の範囲で予め定められた温度等)以上の温度のことである。本実施形態では、高温とは、250℃以上の温度であるとする。また、常温とは、高温よりも低い所定の範囲(例えば、0℃以上100℃以下の範囲、0℃以上250℃未満の範囲等)の温度のことである。また、マーキングは、2次元コード以外にも、例えば、文字、記号、またはバーコードであってもよい。また、これらの少なくとも2つを組み合わせてもよい。
【0011】
図1は、レーザーマーキングシステムの構成の一例を示す図である。尚、各図に示すx、y、z座標は、各図における向きの関係を示すためのものである。また、○の中に●が示されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×が示されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。また、各図においては、表記の都合上、各部の構成を必要に応じて簡略化または省略する。
レーザーマーキングシステムは、材料搬送機構110、材固定架台120、プロセス制御装置130、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、およびレーザーマーカー180を有する。
【0012】
材料搬送機構110は、例えば、ウォーキングビームを有する。第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bは、同じものであり、
図1に示すように、棒鋼100a〜100cの長手方向(y軸方向)において間隔を有した状態で配置される。棒鋼100a〜100cは、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bにより支持される。
【0013】
材料搬送機構110(ウォーキングビーム)は、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bに置かれている複数の棒鋼100a〜100cをその下側から上方(z軸の正の方向))に持ち上げ、下流側(x軸の正の方向)に複数の棒鋼100a〜100cをそれぞれ移動させることを繰り返し行う。以上のようにして複数の棒鋼100a〜100cは、材料搬送機構110で搬送される。以下の説明では、棒鋼に関し、特定の棒鋼100a〜100cのことを示さない場合、これらを必要に応じて、棒鋼100と表記する。
【0014】
そして、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、およびレーザーマーカー180の正面に位置する所定の場所に棒鋼100が搬送されると、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、およびレーザーマーカー180はそれぞれ、当該棒鋼100に対して後述する処理を行う。
図1では、表記の都合上、塗料吹付機構160の正面に置かれている複数の棒鋼を棒鋼群100Aとして示し、インダクションヒーター170の正面に置かれている複数の棒鋼を棒鋼群100Bとして示し、レーザーマーカー180の正面に置かれている複数の棒鋼を棒鋼群100Cとして示す。尚、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bは、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、およびレーザーマーカー180の正面に位置する所定の場所で棒鋼100を支持・固定するように構成されるのが好ましい。
【0015】
本実施形態では、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、レーザーマーカー180の順に棒鋼100に対する処理を行う。このような順番にすることで、塗料吹付機構160によって塗布された塗料が端面加熱によって焼き付けられた後に、レーザーマーキングを行い、マーキングの品質を向上させる。すなわち、インダクションヒーター170は、棒鋼100の表面の加熱を行うものの、棒鋼100の芯(内部)までは加熱できないため、棒鋼100はすぐに冷める。したがって、下地塗料を乾燥させるために、塗料吹付機構160による下地塗料の塗布後に、インダクションヒーター170による加熱を行う。よって、本実施形態では、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、レーザーマーカー180の順に棒鋼100に対する処理を行う。
【0016】
プロセス制御装置130は、冷間・熱間ラインの操業を管理するための情報処理装置である。プロセス制御装置130は、複数の棒鋼100の搬送状態の情報を搬送機構制御装置111に出力する。また、プロセス制御装置130は、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、レーザーマーカー180における処理に必要な情報を、それぞれ、塗料吹付制御装置161、インダクションヒーター制御装置171、レーザーマーカー制御装置181に対して出力する。
【0017】
搬送機構制御装置111は、複数の棒鋼100の搬送状態の情報から、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、およびレーザーマーカー180の動作開始タイミングをそれぞれ導出する。搬送機構制御装置111は、動作開始タイミングになると、塗料吹付制御装置161、インダクションヒーター制御装置171、レーザーマーカー制御装置181に、それぞれ、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、レーザーマーカー180の動作の開始の指示を行う。塗料吹付制御装置161、インダクションヒーター制御装置171、レーザーマーカー制御装置181は、それぞれ、この動作の開始の指示に基づいて、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、レーザーマーカー180の動作を開始させ、プロセス制御装置130からの指示に従って、塗料吹付機構160、インダクションヒーター170、レーザーマーカー180の動作を制御する。
【0018】
図2は、塗料吹付装置の具体的な構成の一例を示す図である。尚、
図2では、材料搬送機構110および第2の材固定架台120bの表記を省略すると共に、棒鋼100については、それらの長手方向(=y軸方向)の半分の領域のみを示す。また、
図2では、2つの第1の材固定架台120a1、120a2が、搬送方向(=x軸方向)において並べられる場合を例に挙げて示す。
図2において、塗料吹付装置は、塗料吹付機構160と塗料吹付制御装置161とを有する。塗料吹付機構160は、塗料吹付ノズル162a〜162dとノズル位置制御機構部163とを有する。
【0019】
ノズル位置制御機構部163は、プロセス制御装置130から指示を受けた場所に塗料吹付ノズル162a〜162dを移動させる。プロセス制御装置130から指示を受けた場所に移動すると、塗料吹付ノズル162a〜162dは、棒鋼100a〜100pのうち、自身の正面に置かれている棒鋼100の端面に下地塗料の吹付を行う。塗料吹付ノズル162a〜162dの高さ方向(=z軸方向)の位置と、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bに置かれている棒鋼100の高さ方向(=z軸方向)の位置とは、略同じであるものとする。尚、ノズル位置制御機構部163は、塗料吹付ノズル162a〜162dを上下左右に動かして塗料吹付ノズル162a〜162dから下地塗料の吹付を行わせることで、ノズルの数よりも多い本数の棒鋼100へ下地塗料の吹付を行うことも可能である。
【0020】
本実施形態では、下地塗料は耐熱性、耐候性に優れた水溶性の塗料である。有機溶媒を用いた塗料は、可燃物であったり、人体に有害な物質が含まれていたり、ノズルが詰まりやすくなったりする等の作業性の低下の原因となる。そこで、本実施形態では、下地塗料として、水溶性の塗料を用いることとする。これにより、有機溶媒を用いた塗料を用いることによる作業性の低下を防止することができる。例えば、下地塗料として、株式会社ニレコ製NRC1000という高温用耐熱塗料を用いることができる。水溶性の塗料は、媒質に可燃物を用いないために危険物では無く取扱容易であるが、常温では乾燥しにくいため、所定の温度以上でなければ鋼材に固着しにくく、冷間の棒鋼に対するマーキングには適さないという課題がある。本実施形態では、インダクションヒーター170により棒鋼を加熱することにより、例え冷間の棒鋼に対してでも、適切に下地塗料を固着させることができる。ただし、棒鋼100や後述するインダクションヒーター170の熱によって、下地塗料が剥離せず(即ち、下地塗料の耐熱温度が、インダクションヒーター170による加熱後の棒鋼100の温度よりも高く)、且つ、後述するレーザー光発生装置182によるレーザー光によって、下地塗料の剥離、炭化、および熱変色の少なくとも1つが可能な高温用耐熱塗料であれば、下地塗料は、株式会社ニレコ製NRC1000に限定されない。尚、下地塗料の耐熱温度は、棒鋼100の上限温度(仕様上の棒鋼100の温度の上限値)よりも高いものとする。また、
図2では、吹付け時間短縮のために、4台の塗料吹付ノズル162a〜162dを用いて下地塗料の吹付けを行うシステムとして提示しているが、1台の塗料吹付ノズルで行ってもよい。
【0021】
図3は、下地塗料の吹付けを行う際の各装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
ステップS301において、プロセス制御装置130は、材料搬送指示を搬送機構制御装置111に対して行う。材料搬送指示を受けると、ステップS302において、材料搬送機構110は、搬送機構制御装置111による制御に従って、複数の棒鋼100のそれぞれを、現在位置よりも下流側の位置に移動させ、当該位置で棒鋼100が支持・固定された状態で一定時間停止する。
【0022】
ステップS302における棒鋼100の搬送と並行して、ステップS303において、プロセス制御装置130は、棒鋼100のサイズや本数、材有位置を含む塗料吹付指示を塗料吹付制御装置161に対して行う。材有位置とは、棒鋼100が置かれている位置である。塗料吹付制御装置161が塗料吹付指示を受けると、ステップS304において、塗料吹付機構160は、塗料吹付制御装置161による制御に従って、塗料吹付準備を行う。
【0023】
ステップS302において、複数の棒鋼100のそれぞれにおける材固定架台120の位置が変更され、複数の棒鋼100の搬送が完了すると、搬送機構制御装置111は、棒鋼搬送完了を、塗料吹付制御装置161に対して指示する。塗料吹付制御装置161が棒鋼搬送完了の指示を受けると、ステップS305において、ノズル位置制御機構部163は、塗料吹付制御装置161によるノズル位置制御に従って、プロセス制御装置130より指示された材有位置と対向する所定の位置(塗料吹付機構160の正面の所定の位置にある棒鋼100の端面の前)に、塗料吹付ノズル162a〜162dの少なくとも何れか1つを動かす。
【0024】
そして、ステップS306において、棒鋼100の正面にある塗料吹付ノズル162a、162b、162c、または162dは、当該棒鋼100へ下地塗料の吹付けを行う。この手順を複数回繰り返すことで、複数の棒鋼100のそれぞれにおける材固定架台120の位置が変更され、複数の棒鋼100の搬送が完了すると、搬送機構制御装置111は、棒鋼搬送完了を、塗料吹付制御装置161に対して指示する。
【0025】
そして、ステップS307において、塗料吹付制御装置161は、ステップS305およびS306のプロセスを、プロセス制御装置130にて指示された本数(吹付指示本数)分行った否かを判定する。そして、ステップS305およびS306のプロセスが、プロセス制御装置130にて指示された本数分行われるまで、ステップS305〜S307の処理が繰り返される。そして、ステップS305およびS306のプロセスが、プロセス制御装置130にて指示された本数分行われると、塗料吹付制御装置161は、プロセス制御装置130に吹付完了を伝送する。ステップS308において、プロセス制御装置130が、吹付完了を受けると、
図3のフローチャートによる処理が終了する。
【0026】
図4は、インダクションヒーター170の具体的な構成の一例を示す図である。尚、
図4では、材料搬送機構110および第2の材固定架台120bの表記を省略すると共に、棒鋼100については、それらの長手方向(=y軸方向)の半分の領域のみを示す。インダクションヒーター170は、インダクションヒーターコイル172を有する。インダクションヒーターコイル172は、そのコイル面(巻軸に垂直な面)が、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bにより支持されている棒鋼100の端面と略正対するように配置される。インダクションヒーター制御装置171による制御に従って、インダクションヒーターコイル172に交流電流が流れると、インダクションヒーターコイル172から発生する磁束が、インダクションヒーターコイル172の正面に位置する棒鋼100の端面を貫く。これにより棒鋼100の端面に当該磁束を打ち消すように渦電流が流れる。この渦電流により、棒鋼100の端面は、材固定架台120により支持されている状態で誘導加熱される。加熱後の温度条件によっては残留応力の解放も行うことができる。
図4に示すように本実施形態では、同時刻において、インダクションヒーターコイル172から発生する磁束が、複数の棒鋼100a〜100pの端面を貫くようにし、当該複数の棒鋼100a〜100pの端面を同時に誘導加熱することができるようにしている。インダクションヒーターコイル172による加熱時間や加熱後の棒鋼100の温度は、下地塗料の仕様温度範囲に合致するようにオフラインで調整される。
【0027】
ここで、後述するレーザーマーカー180により棒鋼100の端面にレーザー光が照射される前に、棒鋼100の端面の温度が下地塗料を乾燥させることができるような温度になるように、インダクションヒーターコイル172に流す交流電流の実効値および周波数が決定されるのが好ましい。棒鋼100の端面の温度は、加熱時間にも依存するので、加熱時間との兼ね合いで交流電流の実効値および周波数が決定される。
【0028】
図5は、棒鋼100を誘導加熱する際の各装置の動作の一例を説明するフローチャートである。ここで、棒鋼100が高温であれば、インダクションヒーター170による加熱を行わなくてもよい。例えば、インダクションヒーター制御装置171は、プロセス制御装置130から、搬送される棒鋼100の温度に関する情報を受け取り、この情報に基づいて、インダクションヒーター170による加熱を行うか否かを判断する。尚、ここでいう高温は、後述するレーザーマーカー180により棒鋼100の端面にレーザー光が照射される前に、下地塗料を乾燥させることができる所定の温度以上であることが好ましい。所定の温度として、例えば、インダクションヒーター170による加熱後の棒鋼100の温度の想定値(目標値)を採用することができる。しかし、この段階での棒鋼100の温度が不明の場合には、低温・高温にかかわらずインダクションヒーター170による加熱を行うことで、塗料や焼付を確実に行うことができる。
【0029】
ステップS501において、プロセス制御装置130は、材料搬送指示を搬送機構制御装置111に対して行う。材料搬送指示を受けると、ステップS502において、材料搬送機構110は、搬送機構制御装置111による制御に従って、複数の棒鋼100のそれぞれを、現在位置よりも下流側の位置に移動させ、当該位置で棒鋼100が支持・固定された状態で一定時間停止する。尚、このステップS501、S502は、
図4のステップS301、S302と同じである。すなわち、
図3のステップS301、S302を実行するとステップS501、S502も実行されていることになる。
【0030】
ステップS502において複数の棒鋼100のそれぞれにおける材固定架台120の位置が変更され、複数の棒鋼100の搬送が完了すると、ステップS503において、搬送機構制御装置111は、インダクションヒーター制御装置171に加熱時間を指示する。この指示を受けると、ステップS504において、インダクションヒーター170は、インダクションヒーター制御装置171による制御に従って、棒鋼100の誘導加熱を開始し、搬送機構制御装置111から指示された加熱時間が経過すると、ステップS505において、インダクションヒーター170は、インダクションヒーター制御装置171による制御に従って、棒鋼100の誘導加熱を完了する。尚、インダクションヒーター170による加熱を行うか否かの判断が行われる場合、搬送機構制御装置111は、加熱を行うと判断された複数の棒鋼100の搬送が完了すると、インダクションヒーター制御装置171に加熱時間として0を上回る時間を指示する。このようにして、加熱を行うと判断された複数の棒鋼100を加熱することができる。一方、搬送機構制御装置111は、加熱を行わないと判断された複数の棒鋼100の搬送が完了すると、インダクションヒーター制御装置171に加熱時間として0を指示する。このようにして、加熱を行わないと判断された複数の棒鋼100を加熱しないようにすることができる。
【0031】
図6は、レーザーマーカー180の具体的な構成の一例を示す図である。尚、
図6では、材料搬送機構110および第2の材固定架台120bの表記を省略すると共に、棒鋼100については、それらの長手方向(=y軸方向)の半分の領域のみを示す。また、
図6では、2つの第1の材固定架台120a1、120a2が、搬送方向(=x軸方向)において並べられる場合を例に挙げて示す。
図6において、レーザーマーカー180は、レーザー光発生装置182a〜182dと、材料端面検出装置183a〜183bとを有する。
【0032】
レーザー光発生装置182a〜182dは、下地塗料が吹き付けられ、且つ、インダクションヒーター170により加熱された棒鋼100の端面に対して、レーザー光を走査しながら照射して、下地塗料の一部が、剥離、炭化、および熱変色の少なくとも何れか1つを起こすようにすることにより、棒鋼100の端面に2次元コードを作成する。
図7では、マーキング時間短縮のため、4台のレーザー光発生装置182a〜182dを用いてマーキングを行うシステムとして提示しているが、1台のレーザー光発生装置で行ってもよい。また、レーザー光として、波長が10μm程度で出力が30Wのクラス4のCO2レーザーを用いる。ただし、レーザー光は、下地塗料に対し、剥離、炭化、および熱変色の少なくとも1つを実現できるものであれば、このようなものに限定されない。
【0033】
材料端面検出装置183a、183bは、それぞれ、レーザー光発生装置182a〜182b、182c〜182dによるレーザー光の照射位置に棒鋼100の端面が位置したことを検出する。材料端面検出装置183a、183bは、例えば、光学的な手段を用いることにより棒鋼100の端面の位置を検出することができる。材料端面検出装置183a、183bは、例えば、特許文献2に記載されているように公知の技術で実現することができるので、その詳細な説明を省略する。尚、レーザー光発生装置182a〜182dの高さ方向(=z軸方向)の位置と、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bに置かれている棒鋼100の高さ方向(=z軸方向)の位置とは、略同じであるものとする。
【0034】
以上のように棒鋼100が材固定架台120により支持されている状態で、レーザーマーカー制御装置181による制御のもと、材料端面検出装置183a、183bにて棒鋼100の位置を検出し、検出した位置に、レーザー光発生装置182a〜182dからレーザー光を照射することにより、棒鋼100の端面に2次元コードのマーキングを行う。
【0035】
図7は、レーザーマーキングを行う際の各装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
ステップS701において、プロセス制御装置130は、材料搬送指示を搬送機構制御装置111に対して行う。材料搬送指示を受けると、ステップS702において、材料搬送機構110は、搬送機構制御装置111による制御に従って、複数の棒鋼100のそれぞれを、現在位置よりも下流側の位置に移動させ、当該位置で棒鋼100が支持・固定された状態で一定時間停止する。尚、このステップS701、S702は、
図3のステップS301、S302および
図5のステップS501、502と同じである。すなわち、
図3のステップS301、S302を実行すると
図5のステップS501、502およびステップS701、S702も実行されていることになる。
ここで、一定時間としては、棒鋼100の端面に対する下地塗料の吹き付け時間、棒鋼100の端面に対する加熱時間、およびレーザー光による2次元コードの作成時間のうち、最も長い時間が設定される。
【0036】
ステップS702における棒鋼100の搬送と並行して、ステップS703において、プロセス制御装置130は、棒鋼100のサイズや本数、材有位置、マーキング情報(印字情報など)を含むレーザー光照射指示をレーザーマーカー制御装置181に対して行う。レーザーマーカー制御装置181がレーザー光照射指示を受けると、ステップS704において、レーザーマーカー180は、レーザーマーカー制御装置181による指示に従って、レーザー光の照射準備を行う。
【0037】
ステップS702において、複数の棒鋼100のそれぞれにおける材固定架台120の位置が変更され、複数の棒鋼100の搬送が完了すると、搬送機構制御装置111は、棒鋼搬送完了を、レーザーマーカー制御装置181に対して指示する。レーザーマーカー制御装置181が棒鋼搬送完了の指示を受けると、ステップS705において、材料端面検出装置183は、この棒鋼搬送完了の指示に合わせて、レーザーマーカー制御装置181の管理のもと、棒鋼100の端面の位置の検出を行う。そして、ステップS706において、レーザーマーカー180は、レーザーマーカー制御装置181による制御に従って、材料端面検出装置183で検出した位置に、レーザー光を照射して、下地塗料の一部の剥離、炭化、および熱変色の少なくとも何れか1つを行うことにより、2次元コードのマーキングを行う。レーザー光による2次元コードのマーキングが完了したところで、レーザーマーカー制御装置181は、プロセス制御装置130に、レーザーマーカー完了をプロセス制御装置130に伝送する。ステップS707において、プロセス制御装置130が、レーザーマーカー完了を受けると、
図7のフローチャートによる処理が終了する。
【0038】
以上のように本実施形態では、棒鋼100の端面に下地塗料を塗布した後、棒鋼100の端面を誘導加熱する。このようにして下地塗料を乾燥させた後、棒鋼100の端面にレーザー光を照射して下地塗料の一部に対して、剥離、炭化、および熱変色の少なくとも何れか1つを行うことにより、2次元コードを作成する。したがって、下字塗料の乾燥と焼付を瞬時に行うことができる。よって、作業性の低下を防止しつつ、冷間から熱間までの様々な複数の温度帯の棒鋼100に対し、同一の塗料(一種類の塗料)により高い品質のマーキングを実現することができる。例えば、冷間の棒鋼は、常温の温度帯となり、熱間の棒鋼は、常温を上回る温度帯となる。これに加えて設備の省コスト化および省スペース化を実現することができる。
また、下地塗料を誘導加熱するので、乾燥時に下地塗料が拡散することを抑制することができる。
【0039】
本実施形態では、マーキングの作成対象となる鋼材が棒鋼形状である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、マーキングの作成対象となる鋼材は棒鋼形状に限定されない。例えば、マーキングの作成対象となる鋼材は、棒鋼以外の条鋼、鋼片やスラブ、鋼板であってもよい。棒鋼以外の条鋼については、その長手方向の端面にマーキングするのが好ましい。
また、本実施形態では、マーキングの作成対象となる鋼材に対し、下地塗料の塗布、インダクションヒーターによる誘導加熱、およびレーザーマーキングを一つの停止タイミングで行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、マーキングの作成対象となる鋼材に対し、別々のタイミングで、下地塗料の塗布、インダクションヒーターによる誘導加熱、およびレーザーマーキングを行うようにしてもよい。この様にする場合、塗料吹付機構160に対する材料搬送機構と、インダクションヒーター170に対する材料搬送機構と、レーザーマーカー180に対する材料搬送機構とを独立した材料搬送機構とする。また、インダクションヒーターでの加熱タイミングにおいては材料を停止させなくても構わない。また、マーキングの作成対象となる鋼材に対し、下地塗料の塗布、インダクションヒーターによる誘導加熱、およびレーザーマーキングを一つの停止タイミングで行う場合、下地塗料の吹き付け、誘導加熱、およびレーザーマーキングを1つの装置で行うようにしても構わない。
【0040】
また、本実施形態では、塗料吹付ノズル162a〜162dにより遠隔から棒鋼100の端面に対し下地塗料を塗布する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、棒鋼100の端面に対し下地塗料を塗布する方法は、このような方法に限定されない。例えば、刷毛を棒鋼100の端面に接触させて下地塗料を塗布してもよいし、ローラーを棒鋼100の端面に接触させて下地塗料を塗布してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、インダクションヒーター170が棒鋼100の表面付近のみを加熱する場合を例に挙げて説明した。インダクションヒーター170を用いれば、加熱の際に、棒鋼100に対して風を発生させることがなくなるので、下地塗料にムラが生じることを抑制することができるので好ましい。しかしながら、棒鋼100の加熱は、必ずしもインダクションヒーター170である必要はない。例えば、輻射熱を利用した加熱炉を用いてもよい。また、棒鋼100を十分に加熱(例えば棒鋼100の内部まで加熱)することができる場合、棒鋼100の加熱が終了してから下地塗料の吹付けを開始するまでの時間を短くすることができる場合、またはそれらの両者が可能な場合には、インダクションヒーター170、塗料吹付機構160、レーザーマーカー180の順に棒鋼100に対する処理を行ってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、下地塗料の吹き付け、誘導加熱、およびレーザーマーキングを行う場合を例に挙げて説明したが、
図8に示すようにマーキングシステムを構成してもよい。
図8は、マーキングシステムの構成の変形例を示す図である。
図8に示すように、塗料吹付機構160の上流側にブラシ装置150を配置すると共に、ブラシ装置150の上流側に面すり装置140を配置する。すなわち、塗料吹付機構160の上流に、面すり装置140やブラシ装置150を設けて、棒鋼100の端面の性状の改善を行ってもよい。これらの端面への処置は端面を加工してマーキング(下地塗料)を損傷させる可能性があるため、マーキングの前に完了させることが望ましい。
【0043】
面すり装置140は、自身の正面に位置する所定の場所に搬送された棒鋼100に形成されているバリを除去する。面すり装置140は、例えば、ヤスリを有する。面すり制御装置141による制御に従って、棒鋼100の端部にヤスリを回転させながら接触させた状態で、棒鋼100の端部に沿って移動させることにより、棒鋼100の端部に形成されているバリを除去する。この動作は、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bで棒鋼100が支持・固定された状態で一定時間停止している間に実行される。
【0044】
ブラシ装置150は、面すり装置140によりバリが除去された後、自身の正面に位置する所定の場所に棒鋼100が搬送されると、棒鋼100の端面を含む領域の付着物を除去する。ブラシ装置150は、例えば、ブラシを有する。ブラシ制御装置151による制御に従って、棒鋼100の端面を含む領域に接触させた状態でブラシを動かすことにより、棒鋼100の端面を含む領域の付着物を除去する。この動作は、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bで棒鋼100が支持・固定された状態で一定時間停止している間に実行される。
尚、面すり装置140による面すりと、ブラシ装置150による付着物の除去のうち、何れか一方のみを行うようにしてもよい。面すりすることで端面性状が改善し、マーキングの品質の向上が可能である。
【0045】
尚、
図8では、表記の都合上、面すり装置140の正面に置かれている複数の棒鋼を棒鋼群100Aとして示し、ブラシ装置150の正面に置かれている複数の棒鋼を棒鋼群100Bとして示し、塗料吹付機構160の正面に置かれている複数の棒鋼を棒鋼群100Cとして示し、インダクションヒーター170の正面に置かれている複数の棒鋼を棒鋼群100Dとして示し、レーザーマーカー180の正面に置かれている複数の棒鋼を棒鋼群100Eとして示す。尚、第1の材固定架台120aおよび第2の材固定架台120bは、面すり装置140およびブラシ装置150の正面に位置する所定の場所で棒鋼100を支持・固定するように構成されるのが好ましい。
【0046】
次に、実施例を説明する。
本実施形態では、細径(端面の直径19mm)の棒鋼100と太径(端面の直径120mm)の棒鋼100とをそれぞれ2本ずつ用意し、それぞれ常温の状態で、塗料吹付装置(塗料吹付機構160)により下地塗料を塗布した。それぞれ棒鋼100は、端面の直径以外は同じ条件で製造されたものである。下地塗料は、何れも、株式会社ニレコ製NRC1000である。また、何れの場合でも塗料吹付装置による下地塗料の吹付条件は同じである。
【0047】
下地塗料を塗布した2本の細径の棒鋼100のうち、1本についてはインダクションヒーター170により100℃以上に加熱した後、レーザーマーカー180により、下地塗料の部分に対して2次元コードを作成した。下地塗料を塗布した2本の細径の棒鋼100のうち、もう1本についてはインダクションヒーター170による加熱を行わずに、レーザーマーカー180により、下地塗料の部分に対して2次元コードを作成した。
【0048】
同様に、下地塗料を塗布した2本の太径の棒鋼100のうち、1本についてはインダクションヒーター170により100℃以上に加熱した後、レーザーマーカー180により、下地塗料の部分に対して2次元コードを作成した。下地塗料を塗布した2本の太径の棒鋼100のうち、もう1本についてはインダクションヒーター170による加熱を行わずに、レーザーマーカー180により、下地塗料の部分に対して2次元コードを作成した。
【0049】
以上のようにしてマーキングを行った後、24時間常温で放置した。その後、細径および太径の棒鋼100の端面のそれぞれに水をかけた。その結果、細径の棒鋼100については、インダクションヒーター170による加熱を行わなかった場合、下地塗料が水に溶けて流れてしまった。マーキング部は残っているものの地肌の黒色との差がほとんど無くなり見難い2次元コードとなった。一方、細径の棒鋼100に対してインダクションヒーター170による加熱を行った場合、下地塗料が溶けずに、白い下地とマーキング部の黒色とのコントラストが明瞭にあらわれた。太径の棒鋼100については、インダクションヒーター170による加熱を行わなかった場合、下地塗料が残っているものの、溶けだした下地塗料が2次元コードにかかってしまい一部が見えなくなった。それに対して太径の棒鋼100に対してインダクションヒーター170による加熱を行った場合、下字塗料が固着して溶けださずに、2次元コードが明瞭にマーキングされた。
【0050】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明の実施形態のうち、搬送機構制御装置111、プロセス制御装置130、塗料吹付制御装置161、インダクションヒーター制御装置171、およびレーザーマーカー制御装置181で行われる処理は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。