(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2封止部は、前記積層体の前記他端側において、前記正極終端電極の縁部に接合された前記第1封止部である第4封止部に重複するように前記第4封止部上に設けられた第2重複部を含み、
前記第1重複部は、前記第1方向に沿った厚さが前記第2重複部の厚さよりも厚くされた部分を前記規制部として含む、
請求項1に記載の蓄電モジュール。
前記第2封止部は、前記積層体の前記他端側において、前記正極終端電極の縁部に接合された前記第1封止部である第4封止部に重複するように前記第4封止部上に設けられた第2重複部を含み、
前記第2重複部は、前記第1方向に交差する前記積層体の側面上における前記第2封止部の厚さ以上の厚さを有する第2部分を含む、
請求項6に記載の蓄電モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のバイポーラ電池にあっては、例えば内圧が上昇したとき、中間部に位置するバイポーラ電極においては荷重がキャンセルされるものの、最外部のバイポーラ電極においては荷重がキャンセルされず、集電体及び樹脂群の変形のおそれがある。その場合、樹脂群と集電体との間に隙間が生じて電解液の漏液が発生したり、樹脂群の破損が生じたりする場合がある。特に、最外部に負極層が位置しており、且つ、電解液がアルカリ水溶液からなる場合には、いわゆるアルカリクリープ現象によって、当該隙間からの電解液の漏液が発生しやすくなる。このような状況にあっては、上記のバイポーラ電池といった蓄電モジュールにあっては、漏液や破損を抑制して信頼性を向上することが望ましい。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、信頼性を向上可能な蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、第1方向に沿って積層された複数の電極を含む積層体と、電極の縁部を包囲するように積層体に設けられた封止体と、を備え、電極は、複数のバイポーラ電極と、負極終端電極と、正極終端電極と、を含み、バイポーラ電極は、電極板と、電極板の第1面に設けられた正極と、電極板の第1面の反対の第2面に設けられた負極と、を含み、負極終端電極は、電極板と第2面に設けられた負極とを含み、第2面が積層体の内側になるように、第1方向の積層体の一端に配置されており、正極終端電極は、電極板と第1面に設けられた正極とを含み、第1面が積層体の内側になるように、第1方向の積層体の他端に配置されており、封止体は、電極の縁部に接合された複数の第1封止部と、複数の第1封止部を外側から包囲するように第1封止部に接合された第2封止部と、を含み、第2封止部は、積層体の一端側において、負極終端電極の縁部に接合された第1封止部である第3封止部に重複するように第3封止部上に設けられた第1重複部を含み、第1重複部は、第1方向に沿った第3封止部の変形を規制するための規制部を含む。
【0007】
この蓄電モジュールにおいては、電極の積層体には封止体が設けられている。封止体は、それぞれの電極の縁部に接合された第1封止部と、第1封止部を包囲するように設けられた第2封止部と、を含む。一方、電極の積層体の一端には、電極板と負極とを含む負極終端電極が配置されている。また、第2封止部は、負極終端電極の縁部に接合された第1封止部である第3封止部に重複するように第3封止部上に設けられた第1重複部を含む。そして、第1重複部は、第3封止部の変形を規制するための規制部を含む。このため、少なくとも負極終端電極側において、封止体等の変形が抑制され、漏液や破損が抑制される。よって、この蓄電モジュールによれば、信頼性が向上される。
【0008】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールにおいては、第2封止部は、積層体の他端側において、正極終端電極の縁部に接合された第1封止部である第4封止部に重複するように第4封止部上に設けられた第2重複部を含み、第1重複部は、第1方向に沿った厚さが第2重複部の厚さよりも厚くされた部分を規制部として含んでもよい。この場合、簡単な構成により信頼性を向上可能である。
【0009】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールにおいては、第1方向に沿った第1重複部の厚さは、300μm以上3mm以下であってもよい。
【0010】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、積層体の一端側に配置され、第1方向に沿って積層体に拘束荷重を付加する拘束部材を備え、第1方向に沿った規制部の厚さは、第1方向についての当該規制部の外縁が拘束部材の外縁よりも積層体の内側に位置する範囲において、第1方向に沿った第1封止部の厚さの2倍以上であってもよい。この場合、大型化を避けつつ信頼性を確実に向上可能である。
【0011】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールにおいては、第1重複部は、負極終端電極の電極板にさらに重複するように、積層体の内側に向けて延在する部分を規制部として含んでもよい。この場合にも、簡単か構成により信頼性を向上可能である。
【0012】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、第1方向に沿って積層された複数の電極を含む積層体と、電極の縁部を包囲するように積層体に設けられた封止体と、を備え、電極は、複数のバイポーラ電極と、負極終端電極と、正極終端電極と、を含み、バイポーラ電極は、電極板と、電極板の第1面に設けられた正極と、電極板の第1面の反対の第2面に設けられた負極と、を含み、負極終端電極は、電極板と第2面に設けられた負極とを含み、第2面が積層体の内側になるように、第1方向の積層体の一端に配置されており、正極終端電極は、電極板と第1面に設けられた正極とを含み、第1面が積層体の内側になるように、第1方向の積層体の他端に配置されており、封止体は、電極の縁部に接合された複数の第1封止部と、複数の第1封止部を外側から包囲するように第1封止部に接合された第2封止部と、を含み、第2封止部は、積層体の一端側において、負極終端電極の縁部に接合された第1封止部である第3封止部に重複するように第3封止部上に設けられた第1重複部を含み、第1重複部は、積層体の第1方向に交差する側面上における第2封止部の厚さ以上の厚さを有する第1部分を含む。
【0013】
この蓄電モジュールにおいては、電極の積層体には封止体が設けられている。封止体は、それぞれの電極の縁部に接合された第1封止部と、第1封止部を包囲するように設けられた第2封止部と、を含む。一方、電極の積層体の一端には、電極板と負極とを含む負極終端電極が配置されている。また、第2封止部は、負極終端電極の縁部に接合された第1封止部である第3封止部に重複するように第3封止部上に設けられた第1重複部を含む。そして、第1重複部は、積層体の第1方向に交差する側面上における第2封止部の厚さ以上の厚さを有する第1部分を含む。このため、少なくとも負極終端電極側において、封止体等の変形が抑制され、漏液や破損が抑制される。よって、この蓄電モジュールによれば、信頼性が向上される。
【0014】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールにおいては、第2封止部は、積層体の他端側において、正極終端電極の縁部に接合された第1封止部である第4封止部に重複するように第4封止部上に設けられた第2重複部を含み、第2重複部は、第1方向に交差する積層体の側面上における第2封止部の厚さ以上の厚さを有する第2部分を含んでもよい。この場合、正極終端電極側においても、封止体等の変形が抑制され、漏液や破損が抑制される。よって、この蓄電モジュールによれば、信頼性が確実に向上される。
【0015】
ここで、蓄電モジュールにおいては、初回充電時に負極上で電解液の水に由来して水素が発生する。負極が水素吸蔵合金を含む場合には、この水素は負極に吸蔵される。しかしながら、通常使用時の内圧では水素を吸蔵している状態が不安定であるため、負極は一定量の水素を吐き出す。このため、内部空間には、水素が存在した状態となる。蓄電モジュールにあっては、当該水素が外部に透過すること(水素透過)を抑制する要求がある。
【0016】
そこで、本発明の一側面に係る蓄電モジュールにおいては、第1封止部は、第1方向からみて電極の縁部から電極の外側に延在する環状の延在部を含み、第1部分及び第2部分は、第1方向からみて延在部を覆うように環状に設けられていてもよい。
【0017】
この場合、第1封止部の延在部に対応する領域においては、第1方向からみて電極が介在されておらず、第1方向に沿って水素透過が生じやすいと考えられる。これに対して、この蓄電モジュールにおいては、第1方向からみて延在部に重複する領域において、相対的に厚みが大きな第1部分及び第2部分が設けられている。したがって、当該領域からの水素透過が抑制され、信頼性がより確実に向上される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、信頼性を向上可能な蓄電モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して蓄電モジュールの一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0021】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してその積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0022】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5と、を含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0023】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0024】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば、積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、
図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0025】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10と、によって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0026】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0027】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体(積層体)11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12と、を備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して、積層方向D(第1方向)に沿って積層された複数の電極(複数のバイポーラ電極14、単一の負極終端電極(電極)18、及び、単一の正極終端電極19)を含む。ここでは、電極積層体11の積層方向Dはモジュール積層体2の積層方向と一致している。電極積層体11は、積層方向Dに延びる側面11aを有している。
【0028】
バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の第1面15aに設けられた正極16、電極板15の第1面15aの反対の第2面15bに設けられた負極17を含んでいる。
正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合うさらに別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0029】
負極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の第2面15bに設けられた負極17を含んでいる。負極終端電極18は、その第2面15bが電極積層体11の内側(積層方向Dについての中心側)になるように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の第1面15aに設けられた正極16を含んでいる。正極終端電極19は、その第1面15aが電極積層体11の内側になるように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0030】
負極終端電極18の電極板15の第1面15aには、導電板5が接触している。また、正極終端電極19の電極板15の第2面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。拘束部材3からの拘束荷重は、導電板5を介して負極終端電極18及び正極終端電極19から電極積層体11に付加される。すなわち、導電板5は、積層方向Dに沿って電極積層体11に拘束荷重を付加する拘束部材でもある。
【0031】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の縁部(バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び、正極終端電極19の縁部)15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の第2面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の第1面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0032】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0033】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、縁部15cに接合(例えば溶着(以下同様))された複数の第1樹脂部(複数の第1封止部)21と、側面11aに沿って第1樹脂部21を外側から包囲するように第1樹脂部21に接合された単一の第2樹脂部(第2封止部)22と、を有している。
【0034】
第1樹脂部21は、積層方向Dから見て、矩形環状をなし、縁部15cの全周にわたって連続的に設けられている。第1樹脂部21は、電極板15の第1面15aに接合されて気密に接合されている。第1樹脂部21は、例えば超音波又は熱によって接合されている。第1樹脂部21は所定の厚さ(積層方向Dの長さ)を有するフィルムである。電極板15の端面は、第1樹脂部21から露出している。第1樹脂部21の内側の一部は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の縁部15c同士の間に位置しており、外側の一部は、電極板15から外側に張り出している。第1樹脂部21は、当該外側の一部において第2樹脂部22に埋設されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1樹脂部21同士は、互いに離間している。
【0035】
第2樹脂部22は、電極積層体11及び第1樹脂部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2樹脂部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2樹脂部22は、積層方向Dを軸方向として延在する筒状(環状)を呈している。第2樹脂部22は、例えば、射出成型時の熱によって第1樹脂部21の外表面に接合されている。
【0036】
第2樹脂部22は、第1樹脂部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、バイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。
【0037】
第1樹脂部21及び第2樹脂部22は、例えば、絶縁性の樹脂であって、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等から構成され得る。
【0038】
図3は、電極板と第1樹脂部との接合界面を示す概略断面図である。
図3に示されるように、電極板15の表面は粗面化されている。ここでは、
図2に示される第1面15a、第2面15b及び端面を含む電極板15の表面全体が粗面化されている。電極板15の表面は、例えば、電解メッキ処理で複数の突起15pが形成されることにより粗面化されている。このように電極板15が粗面化されている場合、電極板15と第1樹脂部21との接合界面では、溶融状態の第1樹脂部21が粗面化により形成された凹部内に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15と第1樹脂部21との結合力を向上させることができる。少なくとも、第1面15aにおける縁部15cが粗面化されていれば、結合力向上の効果が得られる。突起15pは、例えば、基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。この場合、互いに隣接する突起15pの間の断面形状はアンダーカット形状となり、アンカー効果が生じ易い。なお、
図3は模式図であって、突起15pの形状及び密度等は特に限定されない。
【0039】
再び
図2を参照する。
図2に示されるように、第2樹脂部22は、積層方向Dにおける電極積層体11の一端側において、負極終端電極18の縁部15cに接合された第1樹脂部21である第3樹脂部(第3封止部)23に重複するように、第3樹脂部23上に設けられた第1重複部22aを含む。第1重複部22aは、積層方向Dからみて、矩形環状に形成されており、第3樹脂部23の外縁部の全周にわたって重複している。第1重複部22aは、第3樹脂部23の外表面に接合されて気密に接合されている。
【0040】
また、第2樹脂部22は、積層方向Dにおける電極積層体11の他端側において、正極終端電極19の縁部15cに接合された第1樹脂部21である第4樹脂部(第4封止部)24に重複するように、第4樹脂部24上に設けられた第2重複部22bを含む。第2重複部22bは、積層方向Dからみて、矩形環状に形成されており、第4樹脂部24の外縁部の全周にわたって重複している。第2重複部22bは、第4樹脂部24の外表面に接合されて気密に接合されている。
【0041】
積層方向Dに沿った第1重複部22aの厚さTaは、積層方向Dに沿った第2重複部22bの厚さTbよりも大きい。これにより、第1重複部22aの全体としての剛性が、第2重複部22bの全体としての剛性よりも大きくされ、第1重複部22aが相対的に変形しにくくされている。この結果、第1重複部22aには、積層方向Dに沿った第3樹脂部23の変形を規制するための規制部25が構成されることになる。すなわち、第1重複部22aは、積層方向Dに沿った厚さTaが第2重複部22bの厚さTbよりも厚くされた部分を規制部25として含む。ここでは、第1重複部22aの全体が、略同一の厚さとされ、規制部25とされている。
【0042】
ここでは、積層方向Dに沿っての規制部25の厚さ(すなわち、第1重複部22aの厚さTa)は、積層方向Dに沿っての第1樹脂部21の厚さT21の2倍以上である。ただし、積層方向Dについての規制部25の外縁25eは、積層方向Dについての導電板5の外縁5eよりも電極積層体11の内側に位置する。すなわち、規制部25の厚さは、当該規制部25の外縁25eが導電板5の外縁5eよりも電極積層体11の内側に位置する範囲において、第1樹脂部21の厚さT21の2倍以上である。なお、ここでは、積層方向Dからみて、第1重複部22a(すなわち規制部25)は、電極板15に重複していない。
【0043】
一例として、厚さTaは、300μm以上3mm以下である。厚さTaが3mmよりも大きいと、積層方向Dに沿った導電板5の厚さを超えるおそれがある。その場合には、次のような問題が生じ得る。すなわち、導電板5を介した蓄電モジュール4同士の電気的な接続が困難になる。導電板5を用いた蓄電モジュール4の放熱性(冷却性)が低下する。さらに、蓄電モジュール4が大型化する。第1樹脂部21及び第2樹脂部22への荷重の集中により劣化が促進される(面で均一に圧力を受けにくくなる)。換言すれば、厚さTaを3mm以下とすることにより、上記の問題が生じることを抑制できる。
【0044】
一方、厚さTaが300μm以上である(厚さTbの2倍以上である)場合には、導電板5を設置する際に位置決めをしやすくなる。また、この場合には、耐圧強度を十分に確保可能であり、変形を確実に規制できる。
【0045】
引き続いて、蓄電装置1の製造方法の一例について説明する。この方法では、まず、上記の蓄電モジュール4を製造する。蓄電モジュール4の製造方法は、一次成形工程と、積層工程と、二次成形工程と、注入工程と、を備える。一次成形工程では、所定数のバイポーラ電極14と負極終端電極18及び正極終端電極19を用意し、それぞれの電極板15の縁部15cの第1面15aに第1樹脂部21を接合する。
【0046】
積層工程では、第1樹脂部21が電極板15の縁部15c同士の間に配置されるように、セパレータ13を介してバイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19を積層することにより、電極積層体11を形成する。二次成形工程では、射出成形の金型(不図示)内に電極積層体11を配置した後、金型内に溶融樹脂を射出することにより、第1樹脂部21を包囲するように第2樹脂部22を形成する。これにより、電極積層体11の側面11aに封止体12が形成される。注入工程では、二次成形工程の後、バイポーラ電極14,14間の内部空間Vに電解液を注入する。これにより、蓄電モジュール4が得られる。
【0047】
その後、得られた蓄電モジュール4と導電板5とを積層してモジュール積層体2を形成すると共に、拘束部材3によってモジュール積層体2を拘束する工程等を経て、蓄電装置1が製造される。
【0048】
続いて、蓄電モジュール4の作用・効果について説明する。
図4は、比較例に係る蓄電モジュールの一部拡大断面図である。
図5は、比較例に係る蓄電モジュールで生じる問題点を説明するための図である。
図4,5に示される例では、封止体12に代えて封止体12Aが用いられている。封止体12Aは、第2樹脂部22に代えて第2樹脂部22Aを有している。第2樹脂部22Aの第1重複部22Aaは、第2樹脂部22の第1重複部22aと比較して薄く、規制部25が設けられていない。
【0049】
このため、内圧の上昇に伴って負極終端電極18の電極板15に荷重が付加されると、当該電極板15に接合された第1樹脂部21が変形するおそれがある。この場合、第1樹脂部21と電極板15との間に隙間が生じ(例えば、
図5に示されるように、電極板15と第1樹脂部21との間に隙間Wが形成され)、当該隙間を介して電解液Lの漏液が生じるおそれがある。また、第1樹脂部21の変形が大きくなると、第1樹脂部21の破損が生じる可能性もなる。電解液Lの漏液については、特に、負極終端電極18側において、アルカリクリープ現象に起因して生じやすい。
【0050】
蓄電モジュールでは、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液Lが負極終端電極18の電極板15上を伝わり、封止体12Aの第1樹脂部21と電極板15との間の隙間Wを通って電極板15の第1面15a側に滲み出ることがある。
図4には、アルカリクリープ現象における電解液Lの移動経路が矢印Aで示されている。このアルカリクリープ現象は、電気化学的な要因と流体現象等により、蓄電装置の充電時及び放電時並びに無負荷時において生じ得る。アルカリクリープ現象は、負極電位、水分、及び電解液Lの通り道がそれぞれ存在することにより生じる。
【0051】
これに対して、蓄電モジュール4によれば、アルカリクリープ現象に起因した漏液や第1樹脂部21の破損を抑制し、信頼性を向上可能である。すなわち、蓄電モジュール4においては、電極積層体11には封止体12が設けられている。封止体12は、それぞれの電極(バイポーラ電極14、負極終端電極18、正極終端電極19)の縁部15cに接合された第1樹脂部21と、第1樹脂部21を包囲するように設けられた第2樹脂部22と、を含む。一方、電極積層体11の一端には負極終端電極18が配置されている。また、第2樹脂部22は、負極終端電極18の縁部15cに接合された第1樹脂部21である第3樹脂部23に重複するように第3樹脂部23上に設けられた第1重複部22aを含む。そして、第1重複部22aは、第3樹脂部23の変形を規制するための規制部25を含む。このため、少なくとも負極終端電極18側において、第1樹脂部21等の変形が抑制され、漏液や破損が抑制される。よって、この蓄電モジュール4によれば、信頼性が向上される。
【0052】
また、蓄電モジュール4においては、第2樹脂部22は、電極積層体11の他端側において、正極終端電極19の縁部15cに接合された第1樹脂部21である第4樹脂部24に重複するように第4樹脂部24上に設けられた第2重複部22bを含む。そして、第1重複部22aは、積層方向Dに沿った厚さTaが第2重複部22bの厚さTbよりも厚くされた部分を規制部25として含んでいる。このため、簡単な構成により信頼性を向上可能である。
【0053】
さらに、蓄電モジュール4は、電極積層体11の一端側に配置され、積層方向Dに沿って電極積層体11に拘束荷重を付加する導電板5を備える。そして、積層方向Dに沿った規制部25の厚さTaは、積層方向Dについての当該規制部25の外縁25eが導電板5の外縁5eよりも電極積層体11の内側に位置する範囲において、積層方向Dに沿った第1樹脂部21の厚さT21の2倍以上である。このため、大型化を避けつつ信頼性を確実に向上可能である。
【0054】
以上の実施形態は、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの一実施形態について説明したものである。したがって、本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、上記の蓄電モジュール4に限定されず、各請求項の要旨を変更しない範囲において任意に蓄電モジュール4を変形したものとすることができる。引き続いて、蓄電モジュール4の変形例について説明する。
【0055】
図6は、変形例に係る蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図6に示されるように、ここでは、積層方向Dからみて、第1重複部22aが、第1樹脂部21に加えて、負極終端電極18の電極板15(縁部15c)にさらに重複するように、電極積層体11の内側に向けて延在する部分を規制部26として含む。また、積層方向Dからみて、第1重複部22aが、第1樹脂部21に加えて、正極終端電極19の電極板15(縁部15c)にさらに重複するように、電極積層体11の内側に向けて延在する部分を規制部26として含む。これらの規制部26によっても、簡単な構成により第1樹脂部21の変形を規制して信頼性を向上可能である。また、ここでは、正極終端電極19側の第2重複部22bについても、第1樹脂部21の変形を規制するための規制部26が設けられているので、信頼性をより向上可能である。
【0056】
さらに、
図2に示される蓄電モジュール4と
図6に示される蓄電モジュール4との間において、互いに構成を互いに重複して採用することも可能である。すなわち、
図2に示される蓄電モジュール4において、第1重複部22aと同様に、第2重複部22bも規制部25を備えていてもよい。その場合、第1重複部22aの厚さTaと第2重複部22bの厚さTbとが実質的に同一になり得る。
【0057】
また、
図2に示される蓄電モジュール4において、第1重複部22a及び/又は第2重複部22bが、その厚さを維持したまま、さらに電極板15に重複するように電極積層体11の内側に向けて延在してもよい。この場合、第1重複部22aは規制部25と規制部26との機能を併せ持つことになり、第2重複部22bは規制部26としての機能を有することになる。さらには、第2重複部22bが、規制部25と規制部26との機能を併せ持つように厚さ及び延在長を設定してもよい。
【0058】
ここで、
図7は、別の変形例に係る蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図7に示される蓄電モジュール4においては、第1重複部22aは、第1部分P1を有している。また、第2重複部22bは、第2部分P2を有している。第1部分P1及び第2部分P2は、積層方向D(第1方向)からみて環状に形成されている。第1部分P1及び第2部分P2は、電極積層体11の積層方向Dに交差する側面11a上における第2樹脂部22の厚さ(積層方向Dに交差する方向に沿った寸法)以上の厚さを有する部分である。
【0059】
図8は、
図7の要部拡大図である。
図8に示されるように、第1樹脂部21は、積層方向Dからみて、電極(ここでは負極終端電極18)の電極板15の縁部15cから電極の外側に延在する環状の延在部21pを含む。延在部21pは、積層方向Dからみて、電極板15の外側の端面15eと、第2樹脂部22の内側面22eとの間の領域Rに重複する部分である。内側面22eは、端面15eに対向する面である。領域Rには、電極板15が配置されていない。
【0060】
第1部分P1は、積層方向Dからみて延在部21pを覆うように環状に設けられている。第1部分P1の厚さ(積層方向Dに沿った寸法)TPは、電極積層体11の側面11a上における第2樹脂部22の厚さTS以上である。ここでは、第1部分P1は、第1重複部22aの一部に設けられている(全体に設けられていてもよい)。したがって、第1重複部22aの基部と第1部分P1との間には、角部Cが設けられている。このため、領域Rから外部に至る最短距離は、延在部21pの外縁部から角部Cまでの距離DPとなる場合がある。この場合、距離DPが、厚さTS以上である。厚さTP及び距離DPは、例えば、300μm以上3mm以下である。なお、
図8及び
図8を参照した第1部分P1の説明は、第2部分P2についても同様である。第1部分P1及び第2部分P2は、上述した規制部として機能し得る。
【0061】
以上のように、この例に係る蓄電モジュール4においては、電極積層体11には封止体12が設けられている。封止体12は、それぞれの電極の縁部15cに接合された第1樹脂部21と、第1樹脂部21を包囲するように設けられた第2樹脂部22と、を含む。一方、電極積層体11の一端には、電極板15と負極17とを含む負極終端電極18が配置されている。また、第2樹脂部22は、負極終端電極18の縁部15cに接合された第1樹脂部21である第3樹脂部23に重複するように第3樹脂部23上に設けられた第1重複部22aを含む。
【0062】
そして、第1重複部22aは、電極積層体11の積層方向Dに交差する側面11a上における第2樹脂部22の厚さTS以上の厚さTPを有する第1部分P1を含む。このため、少なくとも負極終端電極18側において、封止体12等の変形が抑制され、漏液や破損が抑制される。よって、この例の蓄電モジュール4によっても、信頼性が向上される。
【0063】
また、この例に係る蓄電モジュール4においては、第2樹脂部22は、電極積層体11の他端側において、正極終端電極19の縁部15cに接合された第1樹脂部21である第4樹脂部24に重複するように第4樹脂部24上に設けられた第2重複部22bを含む。第2重複部22bは、積層方向Dに交差する電極積層体11の側面11a上における第2樹脂部22の厚さTS以上の厚さを有する第2部分P2を含んでいる。このため、正極終端電極19側においても、封止体12等の変形が抑制され、漏液や破損が抑制される。よって、この例の蓄電モジュール4によれば、信頼性が確実に向上される。
【0064】
ここで、蓄電モジュールにおいては、初回充電時に負極上で電解液の水に由来して水素が発生する。負極が水素吸蔵合金を含む場合には、この水素は負極に吸蔵される。しかしながら、通常使用時の内圧では水素を吸蔵している状態が不安定であるため、負極は一定量の水素を吐き出す。このため、内部空間には、水素が存在した状態となる。蓄電モジュールにあっては、当該水素が外部に透過すること(水素透過)を抑制する要求がある。
【0065】
この例に係る蓄電モジュール4においては、第1樹脂部21は、積層方向Dからみて電極の縁部15cから電極の外側に延在する環状の延在部21pを含む。そして、第1部分P1及び第2部分P2は、積層方向Dからみて延在部21pを覆うように環状に設けられている。
【0066】
このため、延在部21pに対応する領域Rにおいては、積層方向Dからみて電極が介在されておらず、積層方向Dに沿って水素透過が生じやすいと考えられる。これに対して、この例の蓄電モジュール4においては、積層方向Dからみて延在部21pに重複する領域Rにおいて、相対的に厚みが大きな第1部分P1及び第2部分P2が設けられている。したがって、当該領域Rからの水素透過が抑制され、信頼性がより確実に向上される。